(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】水性多液型塗料組成物および塗装物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20241129BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20241129BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20241129BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20241129BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241129BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20241129BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D175/04
C09D5/02
B05D1/36 B
B05D7/24 301U
B05D7/24 302T
B32B27/26
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2024528571
(86)(22)【出願日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2024002250
【審査請求日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/035702
(32)【優先日】2023-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023013411
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 優壮
(72)【発明者】
【氏名】石河 智之
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 愛作
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】地蔵堂 梓
(72)【発明者】
【氏名】福井 魁人
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】荒木 禎人
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064958(WO,A1)
【文献】特開2013-053304(JP,A)
【文献】特表2003-525967(JP,A)
【文献】特開2022-185278(JP,A)
【文献】特開2019-056019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有樹脂(A)およびメラミン樹脂(B)を含む第1液と、
親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含み、
前記水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
前記メラミン樹脂(B)は、前記第1液中で溶解しているかあるいは平均粒子径が1μm未満であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超であり、
前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方であり
、
前記メラミン樹脂(B)の固形分質量は、前記水酸基含有樹脂(A)の固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である、水性多液型塗料組成物。
【請求項2】
水酸基含有樹脂(A)、メラミン樹脂(B)およびポリウレタン樹脂(C)を含む第1液と、
親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含み、
前記水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
前記メラミン樹脂(B)は、前記第1液中で溶解しているかあるいは平均粒子径が1μm未満であり、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超であり、
前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方であり
、
前記メラミン樹脂(B)の固形分質量は、前記水酸基含有樹脂(A)の固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である、水性多液型塗料組成物。
【請求項3】
前記イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)は、少なくともアニオン変性ポリイソシアネート化合物を含む、請求項1または2記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(C)は、水酸基価が30mgKOH/g以下である、請求項2記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項5】
前記水酸基含有樹脂(A)は、酸価が5mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である、請求項1または2記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項6】
前記メラミン樹脂(B)は、溶解パラメータが9以上15以下である、請求項1または2記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項7】
前記メラミン樹脂(B)の固形分質量は、前記水酸基含有樹脂(A)および前記ポリウレタン樹脂(C)の合計固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である、請求項2に記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項8】
前記メラミン樹脂(B)が有するイミノ基およびメチロール基と、前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基との当量比(イミノ基およびメチロール基/イソシアネート基)が、
0.07以上
0.44以下である、請求項1記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項9】
前記メラミン樹脂(B)が有するイミノ基およびメチロール基と、前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基との当量比(イミノ基およびメチロール基/イソシアネート基)が、0.22以上1.13以下である、請求項2記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項10】
前記メラミン樹脂(B)の数平均分子量は、300以上3000以下である、請求項1または2記載の水性多液型塗料組成物。
【請求項11】
被塗物上に、請求項1または2記載の水性多液型塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
【請求項12】
被塗物上に、請求項1または2記載の水性多液型塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜上に、第2水性塗料組成物を塗装して、未硬化の第2塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第2塗膜上にクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜、前記未硬化の第2塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
【請求項13】
前記被塗物は、金属部および樹脂部を含む、請求項11記載の塗装物品の製造方法。
【請求項14】
前記被塗物は、金属部および樹脂部を含む、請求項12記載の塗装物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性多液型塗料組成物および塗装物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の技術分野において、自然環境への配慮が求められている。そのため、省エネルギー化を目的として、塗装の際の加熱温度を低くしたり、加熱時間を短縮したりする方法が開発されている。例えば、特許文献1は、水酸基含有アクリル樹脂を含む主剤(I)と、アニオン性親水基含有ポリイソシアネート化合物および/またはノニオン性親水基含有ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤(II)と、を含む水性多液型塗料組成物を提案している。特許文献1では、60℃の低温で塗膜を硬化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、上記の水性多液型塗料組成物は、乾燥性、塗料の取扱作業性、貯蔵性、耐候性に優れる。しかしながら、上記の水性多液型塗料組成物から得られる塗膜は硬度が低く、艶感に劣り、さらにはスプレーダストが生じ得る。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、低温硬化可能でありながら、高い硬度を有し、艶感に優れ、スプレーダストが抑制された塗膜を得ることのできる水性多液型塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
水酸基含有樹脂(A)およびメラミン樹脂(B)を含む第1液と、
親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含み、
前記水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
前記メラミン樹脂(B)は、前記第1液中で溶解しているかあるいは平均粒子径が1μm未満であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超であり、
前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方である、水性多液型塗料組成物。
[2]
水酸基含有樹脂(A)、メラミン樹脂(B)およびポリウレタン樹脂(C)を含む第1液と、
親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含み、
前記水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
前記メラミン樹脂(B)は、前記第1液中で溶解しているかあるいは平均粒子径が1μm未満であり、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超であり、
前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方である、水性多液型塗料組成物。
[3]
前記イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)は、少なくともアニオン変性ポリイソシアネート化合物を含む、上記[1]または[2]の水性多液型塗料組成物。
[4]
前記ポリウレタン樹脂(C)は、水酸基価が30mgKOH/g以下である、上記[2]の水性多液型塗料組成物。
[5]
前記水酸基含有樹脂(A)は、酸価が5mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である、上記[1]~[4]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[6]
前記メラミン樹脂(B)は、溶解パラメータが9以上15以下である、上記[1]~[5]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[7]
前記メラミン樹脂(B)の固形分質量は、前記水酸基含有樹脂(A)の固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である、上記[1]~[6]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[8]
前記メラミン樹脂(B)の固形分質量は、前記水酸基含有樹脂(A)および前記ポリウレタン樹脂(C)の合計固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である、上記[2]に記載の水性多液型塗料組成物。
[9]
前記メラミン樹脂(B)が有するイミノ基およびメチロール基と、前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基との当量比(イミノ基およびメチロール基/イソシアネート基)が、0.2以上1.1以下である上記[1]~[8]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[10]
前記メラミン樹脂(B)の数平均分子量は、300以上3000以下である上記[1]~[9]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[11]
被塗物上に、上記[1]~[10]いずれかの水性多液型塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
[12]
被塗物上に、上記[1]~[10]いずれかの水性多液型塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜上に、第2水性塗料組成物を塗装して、未硬化の第2塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第2塗膜上にクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜、前記未硬化の第2塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
[13]
前記被塗物は、金属部および樹脂部を含む、上記[11]または上記[12]の塗装物品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低温硬化可能でありながら、高い硬度を有し、艶感に優れ、スプレーダストが抑制された塗膜を形成することができる水性塗料組成物、および、この水性塗料組成物を用いた塗装物品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
[水性多液型塗料組成物]
第1実施形態に係る水性多液型塗料組成物(以下、単に水性塗料組成物と称する場合がある。)は、水酸基含有樹脂(A)およびメラミン樹脂(B)を含む第1液と、親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含む。水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方である。メラミン樹脂(B)は、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超である。親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物の少なくとも一方である。
【0009】
メラミン樹脂は、一般に、水酸基含有樹脂の硬化剤として使用される。ただし、メラミン樹脂と水酸基含有樹脂との反応は、高温下(例えば、140℃)で生じるため、メラミン樹脂は、低温硬化させる塗料組成物の硬化剤としては適していない。そのため、低温硬化型の塗料組成物には、硬化剤として、通常、反応性の高いポリイソシアネート化合物が使用される。しかしながら、このような塗料組成物を用いた塗膜の硬度は低くなり易い。
【0010】
本開示では、メラミン樹脂を、水酸基含有樹脂と直接的に架橋構造を形成するための硬化剤(本開示の第2液に対応)ではなく、主剤(本開示の第1液に対応)の一部として用いる。すなわち、メラミン樹脂を、水酸基含有樹脂とともに、ポリイソシアネート化合物と反応を生じる物質として使用する。メラミン樹脂とポリイソシアネート化合物とは、低温であっても反応することができる。そのため、本開示に係る水性塗料組成物を低温で加熱すると、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物との反応、および、メラミン樹脂とポリイソシアネート化合物との反応が起こる。メラミン樹脂は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応するイミノ基および/またはメチロール基を、トリアジン環1個当たり平均で1超有している。そのため、水酸基含有樹脂と結合した複数のポリイソシアネート化合物と、メラミン樹脂との反応も生じ得る。つまり、メラミン樹脂は、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋構造の中に取り込まれ、例えば、水酸基含有樹脂-ポリイソシアネート化合物-メラミン樹脂-ポリイソシアネート化合物-水酸基含有樹脂の架橋構造が形成される。このように、メラミン樹脂が有する、平面構造であって剛直なトリアジン環が架橋構造内に取り込まれることで、得られる塗膜の硬度が高くなる。
【0011】
さらに、メラミン樹脂が主剤の一部として含まれることにより、スプレーダストが抑制されることが判明した。スプレーダストは、吹き付け塗装の際、被塗物に塗着しなかった塗料組成物が空中に飛散して液滴となり、これが被塗物に付着することにより形成される、塗膜表面の凸部である。スプレーダストは、典型的には、液滴に含まれる溶媒が蒸発する過程で形成され、塗膜と液滴とが馴染まなかったことにより生じる。そのため、スプレーダストは、塗料組成物(液滴)が高粘度であるほど、形成され易い。メラミン樹脂は一般に低分子量である。そのため、メラミン樹脂を含む塗料組成物の粘度は低く抑えられており、その結果、スプレーダストの形成が抑制されると考えられる。
【0012】
本開示では、硬化剤として、上記の通り、親水性ポリイソシアネート化合物(D)を用いる。親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、分子中に、親水基と、2個以上のイソシアネート基とを有する。
【0013】
塗膜は、硬化剤と主剤とが反応することにより形成されるため、硬化剤の塗料組成物中における分散状態は、塗膜の平滑性に反映される。本開示で用いられる親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、水性の塗料組成物中において、疎水性の部分を親水基部分が取り囲むミセルのような形態で存在しており、高度に分散している。そのため、得られる塗膜は優れた平滑性を有する。平滑な塗膜は、艶感に優れる。
【0014】
本明細書において、「イソシアネート基」は、ブロックされていない遊離イソシアネート基を意味する。イソシアネート基がブロックされていないことにより、低温硬化が可能となる。親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、具体的には、水分散性のポリイソシアネート化合物である。
【0015】
水性塗料組成物は、第1液および第2液を含む多液型である。水性塗料組成物は、さらにその他の成分を含む第3液を含んでもよい。水性塗料組成物は、当業者において通常用いられる方法を用いて調製される。水性塗料組成物は、第1液と第2液とを混合することによって調製することができる。他の一態様において、水性塗料組成物は、第1液と第2液と、さらには第3液とを混合することによって、調製することができる。混合方法としては、ニーダーまたはロール等を用いた混練混合法、サンドグラインドミルまたはディスパー等を用いた分散混合法が挙げられる。
【0016】
水性塗料組成物は、溶媒として水を含む。水性塗料組成物において、溶媒に占める水の割合は、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、100質量%であってよい。
【0017】
本開示に係る水性塗料組成物は、低温硬化可能である。本開示に係る水性塗料組成物は、例えば、70℃以上110℃以下の温度で硬化され得る。硬化温度は、75℃以上であってよく、80℃以上であってよい。硬化温度は、105℃以下であってよく、100℃以下であってよく、95℃以下であってよく、90℃以下であってよい。
【0018】
以下、固形分は不揮発分とも言われる。水性塗料組成物の固形分は、具体例には、水性塗料組成物から溶媒を除いた全成分である。
【0019】
(第1液)
第1液は、水酸基含有樹脂(A)およびメラミン樹脂(B)を含む。
【0020】
(A)水酸基含有樹脂
水酸基含有樹脂(A)は、塗膜のベースとなる樹脂(塗膜形成成分)である。塗膜形成成分は、水性塗料組成物に含まれている他の成分と化学的に反応して、塗膜、すなわち樹脂被膜を構成する。水酸基含有樹脂(A)は、親水性ポリイソシアネート化合物(D)と反応して、架橋構造を形成する。水酸基含有樹脂(A)によって、十分な硬度を有する塗膜が得られる。
【0021】
水酸基含有樹脂(A)は、1分子内に1以上(典型的には、2以上)の水酸基を有する。水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方である。
【0022】
水酸基含有樹脂(A)の水酸基価(OHV)は、例えば、20mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。水酸基含有樹脂(A)の水酸基価が20mgKOH/g以上であると、塗膜の破断強度が高くなり易い。水酸基含有樹脂(A)の水酸基価が180mgKOH/g以下であると、塗膜の親水化が抑制されて、耐水性が向上し易い。水酸基含有樹脂(A)の水酸基価は、30mgKOH/g以上であってよく、40mgKOH/g以上であってよい。水酸基含有樹脂(A)の水酸基価は、150mgKOH/g以下であってよく、140mgKOH/g以下であってよく、100mgKOH/g以下であってよく、80mgKOH/g以下であってよい。
【0023】
水酸基含有樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-20℃以上100℃以下である。水酸基含有樹脂(A)のTgが-20℃以上であると、得られる塗膜の破断強度および硬度が向上し易い。水酸基含有樹脂(A)のTgが100℃以下であると、水性塗料組成物の速乾性が向上し易い。水酸基含有樹脂(A)のTgは、-15℃以上であってよい。水酸基含有樹脂(A)のTgは、90℃以下であってよく、80℃以下であってよく、70℃以下であってよく、50℃以下であってよい。
【0024】
Tgは、樹脂の原料モノマーの種類および量から計算によって求めてよい。Tgは、示差走査型熱量計(DSC)によって測定されてもよい。
【0025】
水酸基含有樹脂(A)は、酸価(AV)が5mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であってよい。水酸基含有樹脂(A)の酸価が5mgKOH/g以上であると、得られる塗膜の硬度が向上し易い。水酸基含有樹脂(A)の酸価が70mgKOH/g以下であると、得られる塗膜の耐水性が向上し得る。水酸基含有樹脂(A)の酸価は、7mgKOH/g以上であってよく、10mgKOH/g以上であってよい。水酸基含有樹脂(A)の酸価は、60mgKOH/g以下であってよく、50mgKOH/g以下であってよく、40mgKOH/g以下であってよい。
【0026】
水酸基価および酸価は、固形分質量を基準として求められる。水酸基価および酸価は、JIS K 0070:1992に記載される公知の方法によって測定することができる。水酸基価および酸価は、対象の樹脂の原料モノマー中の不飽和モノマーの配合量から算出されてもよい。
【0027】
硬度の観点から、水酸基含有樹脂(A)は、水酸基価が20mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であり、Tgが-20℃以上100℃以下であり、かつ、酸価が5mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であってよい。
【0028】
水酸基含有樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、2,000以上50,000以下であってよい。Mwは、ポリスチレンを標準とするGPC法において決定される。
【0029】
水酸基含有樹脂(A)が第1液中に分散している場合、その平均粒子径は、例えば、50nm以上500nm以下であってよい。水酸基含有樹脂(A)の平均粒子径が上記範囲であると、塗料安定性が向上し、得られる塗膜の平滑性も向上する。水酸基含有樹脂(A)の平均粒子径は、80nm以上であってよい。水酸基含有樹脂(A)の平均粒子径は、300nm以下であってよい。
【0030】
水酸基含有樹脂(A)の平均粒子径は、JIS Z 8825に準拠したレーザー回折・散乱法により測定される。この測定には、例えば、レーザードップラー式粒度分析計を用いることができる。具体例としては、マイクロトラックUPA150(日機装社製)が挙げられる。水酸基含有樹脂(A)の平均粒子径は、イオン交換水を用いて樹脂固形分濃度0.01質量%に希釈した試料を用いて測定される。
【0031】
(A1)水酸基含有アクリル樹脂
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、例えば、水酸基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーと、これ以外のα,β-エチレン性不飽和モノマーとを、公知の方法で重合させることによって製造できる。市販の水酸基含有アクリル樹脂を用いてもよい。
【0032】
一態様において、水酸基含有アクリル樹脂(A1)はエマルションであってよい。エマルション形態の水酸基含有アクリル樹脂(水酸基含有アクリル樹脂エマルション)は、コア部と、コア部の表面の少なくとも一部を被覆するシェル部と、を含む多層構造であってよく、単層構造であってよい。
【0033】
水酸基含有アクリル樹脂エマルションは、上記のモノマーの混合物を、エマルション重合することによって調製される。エマルション重合は、当業者において一般的に行われる重合方法によって実施され得る。具体的には、エマルション重合は、水、および必要に応じてアルコールなどの有機溶媒を含む水性媒体中に、乳化剤を混合し、加熱攪拌下において、上記モノマー混合物および重合開始剤を滴下することにより実施される。モノマー混合物、乳化剤および水性媒体を予め混合し、乳化して得られた乳化混合物を滴下することにより、エマルション重合を行うこともできる。重合開始剤、乳化剤などは、当業者に公知のものを特に限定されることなく用いることができる。
【0034】
水酸基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタリルアルコール、および、これらとε-カプロラクトンとの付加物が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸およびアクリル酸の両方を含む。
【0036】
上記以外のα,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸又はこれらのジカルボン酸モノエステル等;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸-n、i及びt-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸アリル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸-n、i及びt-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等の重合性アミド化合物;重合性芳香族化合物、重合性ニトリル、重合性アルキレンオキシド化合物、多官能ビニル化合物、重合性アミン化合物、α-オレフィン、ジエン、重合性カルボニル化合物、重合性アルコキシシリル化合物等の重合性のその他の化合物が挙げられる。
【0037】
水酸基含有アクリル樹脂エマルションの平均粒子径は、例えば、50nm以上500nm以下であってよい。水酸基含有アクリル樹脂エマルションの平均粒子径が上記範囲であると、塗料安定性が向上し、得られる塗膜の平滑性も向上する。水酸基含有アクリル樹脂エマルションの平均粒子径は、80nm以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂エマルションの平均粒子径は、300nm以下であってよい。
【0038】
一態様において、水酸基含有アクリル樹脂(A1)は水溶性であってよい。水溶性の水酸基含有アクリル樹脂(水酸基含有水溶性アクリル樹脂)は、例えば、上記モノマーを含むモノマー混合物を、溶液重合することにより調製することができる。
【0039】
水酸基含有水溶性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、4,000以上50,000以下である。水酸基含有水溶性アクリル樹脂のMwが4,000以上であると、得られる塗膜の硬度および耐候性が向上し易い。水酸基含有水溶性アクリル樹脂のMwが50,000以下であると、水性塗料組成物の過度な粘度上昇が抑制され易くなる。水酸基含有水溶性アクリル樹脂のMwは、5,000以上であってよく、8,000以上であってよい。水酸基含有水溶性アクリル樹脂のMwは、40,000以下であってよく、30,000以下であってよい。
【0040】
一態様において、水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂エマルションと、水酸基含有水溶性アクリル樹脂とを含んでよい。この場合、水酸基含有アクリル樹脂エマルションの固形分質量Weと水酸基含有水溶性アクリル樹脂の固形分質量Wsとの比は、例えば、We/Ws=8/1~1/4であってよく、7/1~1/3であってよい。
【0041】
(A2)水酸基含有ポリエステル樹脂
水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、多価アルコールと多塩基酸またはその無水物とを重縮合(エステル反応)することにより得られる。市販の水酸基含有ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0042】
多価アルコールは特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-(ヒドロキシエチル)イソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0043】
多塩基酸またはその無水物は特に限定されず、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、無水エンド酸が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、ラクトン、油脂または脂肪酸、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などを用いて変性されていてもよい。油脂または脂肪酸は特に限定されず、例えば、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油、コーン油、綿実油、亜麻仁油、荏の油、ケシ油、紅花油、大豆油、桐油などの油脂、またはこれらの油脂から抽出した脂肪酸が挙げられる。
【0045】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、2,000以上20,000以下である。水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)のMwが2,000以上であると、得られる塗膜の硬度および耐候性が向上し易い。水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)のMwが20,000以下であると、水性塗料組成物の過度な粘度上昇が抑制され易くなる。水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)のMwは、2,300以上であってよく、2,500以上であってよい。水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)のMwは、10,000以下であってよく、9,000以下であってよく、8,000以下であってよい。
【0046】
≪その他の水酸基含有成分≫
第1液は、その他の水酸基含有成分として、例えば、ポリカーボネートポリオール樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリカプロラクトンポリオール樹脂を含んでよい。
【0047】
水酸基含有成分の合計の固形分100質量%に占める、水酸基含有樹脂(A)以外の水酸基含有成分の固形分割合は、例えば、20質量%以下であり、15質量%以下であってよく、10質量%以下であってよい。
【0048】
(B)メラミン樹脂
メラミン樹脂(B)は、塗膜形成成分である。メラミン樹脂(B)は、上記の通り、親水性ポリイソシアネート化合物(D)と反応して、水酸基含有樹脂(A)と親水性ポリイソシアネート化合物(D)との架橋構造の中に取り込まれる、これにより、高い硬度を有する塗膜が得られる。
【0049】
メラミン樹脂(B)は、水溶性であってよく、非水溶性であってよい。水溶性のメラミン樹脂(B)は、第1液中で溶解している。そのため、メラミン樹脂(B)は親水性ポリイソシアネート化合物(D)と効率的に反応することができる。加えて、得られる塗膜の平滑性が損なわれ難く、優れた艶感が得られる。
【0050】
メラミン樹脂(B)の第1液および水性塗料組成物における分散径は、メラミン樹脂(B)の濃度70%の液状物(液状成分はn-ブタノールまたはイソブタノール)における平均粒子径とみなすことができる。液状物において、メラミン樹脂(B)は溶解あるいは微分散している。
【0051】
メラミン樹脂(B)の上記平均粒子径は、0.1μm以下であり得、0.05μm以下であり得、0.01μm以下であり得る。メラミン樹脂(B)の上記平均粒子径は、測定装置の実効測定範囲未満であり得る。
【0052】
メラミン樹脂(B)の平均粒子径は、上記液状物の、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置を用いた体積基準の粒度分布における50%平均粒子径(D50)である。粒度分布測定装置としては、例えば、マイクロトラックUPA150(日機装社製)が挙げられる。上記測定装置の実効測定範囲は、0.003μm~6.5μmである。
【0053】
第1液および水性塗料組成物は、上記平均粒子径が1μm以上のメラミン樹脂を、本実施形態の効果が損なわれない範囲で含み得る。上記大粒径のメラミン樹脂の含有量は、例えば、水酸基含有樹脂(A)の固形分質量100質量部に対して1質量部以下であり、0.5質量部以下であり、0質量部である。
【0054】
メラミン樹脂(B)は溶解あるいは微分散するため、その溶解パラメータ(SP値)を濁点法によって測定することができる。良溶媒としてアセトン(Hansenの測定によるHSP値δgが9.77)が用いられ、貧溶媒としてヘキサン(SP値δplが7.24)および脱イオン水(SP値δphが23.50)が用いられる。これら良溶媒および貧溶媒を用いた、濁点法によるメラミン樹脂(B)のSP値は、9以上15以下であってよい。メラミン樹脂(B)の上記SP値は、9.5以上であってよく、10.0以上であってよい。メラミン樹脂(B)の上記SP値は、14.8以下であってよく、14.5以下であってよい。
【0055】
メラミン樹脂(B)のSP値は、既知のSP値を有する良溶媒にメラミン樹脂(B)を溶解させ、良溶媒より高いSP値の貧溶媒と低いSP値の貧溶媒で濁度滴定することにより決定できる。SP値の決定方法に関して、文献1:C.M.Hansen J.Paint.Tech.,39[505]、104(1967)および文献2:小林敏勝 色材、77[4]、188-192(2004))が参照できる。
【0056】
メラミン樹脂(B)のSP値は、具体的には、以下のように決定される。
測定温度:20℃
良溶媒:アセトン(HSP値δg=9.77)
貧溶媒:ヘキサン(SP値δpl=7.24)、脱イオン水(SP値δph=23.50)
サンプル:メラミン樹脂(B)0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネチックスターラーにより溶解する。
【0057】
(濁度測定)
サンプルにヘキサンを滴下して、濁りが生じた点のヘキサンの体積分率φplを算出する。次いで、下記式により、ヘキサンを貧溶媒として用いたときのメラミン樹脂(B)のSP値δmlを求める。
【0058】
【0059】
別途、同様に調製したサンプルに脱イオン水を滴下して、濁りが生じた点の脱イオン水の体積分率φphを算出する。次いで、下記式により、脱イオン水を貧溶媒として用いたときのメラミン樹脂(B)のSP値δmhを求める。
【0060】
【0061】
メラミン樹脂(B)のSP値(δpoly)は、δmlとδmhとの中間値であり、下記式によって算出される
【0062】
【0063】
メラミン樹脂(B)は溶解あるいは微分散するため、光拡散性および光屈折性をほとんど有さない。メラミン樹脂(B)の上記液状物(濃度70%であり、溶媒としてn-ブタノールまたはイソブタノールを含む)は、標準色ガラスとの比較によって得られるガードナー色数が2以下であり得、1であり得る。
【0064】
ガードナー色数は、化学製品の客観的な色相および透明性の評価方法である。ガードナー色数は、JIS K 0071-2:1998(化学製品の色試験方法-第2部:ガードナー色数)に準拠して評価される。ガードナー色数が高いほど、色が濃く、かつ不透明であると言える。メラミン樹脂(B)の上記液状物は、無色透明と評価できる。
【0065】
表1は、JIS K 0071-2:1998に記載されている「ガードナー標準色ガラスの色度座標」である。試料の色が一致した場合の標準色ガラス番号が、当該試料のガードナー色数である。ガードナー色数が2以下の場合、当該試料の色座標xは0.3177以下であり、色座標yは0.3303以下であり、視感透過率Yは80%以上である。
【0066】
【0067】
メラミン樹脂(B)は、低い融点を有している。メラミン樹脂(B)の融点は、-20℃以下であり得る。メラミン樹脂(B)が低融点であることにより、水性塗料組成物の粘度が低く抑えられて、スプレーダストが一層抑制され、艶感がより向上する。メラミン樹脂(B)は、-20℃以上70℃以下の温度下で液状であり得る。
【0068】
メラミン樹脂(B)の融点は、例えば、便宜的に以下の方法により評価できる。まず、溶媒とメラミン樹脂(B)との混合物をプラスチック容器に薄く塗り広げる。70℃で1時間加熱して溶媒を除去した後、20℃から-20℃の環境下における流動性を目視で確認する。流動性がなくなった温度が、便宜上、メラミン樹脂(B)の融点とみなされる。
【0069】
メラミン樹脂(B)は、トリアジン環(トリアジン核)の周囲に、3個の窒素原子N1~N3を介して6個の置換基R1~R6が結合した構造(-N1(R1)(R2)、-N2(R3)(R4)、-N3(R5)(R6))を含む。
【0070】
メラミン樹脂(B)は、例えば、下記の一般式(1):
【0071】
【化1】
(式中、置換基R
1~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、アルキルエーテル基、メチロール基、または、他のトリアジン環との結合部分を表す。)
【0072】
アルキルエーテル(-CH2-OR7)を構成するアルキル基(R7)の炭素数は1~8であってよく、1~4であってよい。R7は、直鎖状であってよく、分枝していてよい。R7は、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であってよい。
【0073】
メラミン樹脂(B)は、一般的には、複数のトリアジン環が結合した多核体により構成される。メラミン樹脂(B)は、1個のトリアジン環からなる単核体であってもよい。
【0074】
メラミン樹脂(B)としては、例えば、-N(-CH2-OR7)(-CH2OH)を有するメチロール基型;-N(-CH2-OR7)(H)を有するイミノ基型;-N(-CH2-OR7)(-CH2OH)および-N(-CH2-OR7)(H)を有するメチロール/イミノ基型が挙げられる。
【0075】
ただし、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値(以下、単に平均官能基数と称する場合がある。)は1超である。これにより、メラミン樹脂(B)は、上記架橋構造内に取り込まれ易くなって、塗膜の硬度が高くなる。平均官能基数は、1.2以上であってよく、1.5以上であってよく、2.0以上であってよい。平均官能基数は、4以下であってよく、3.5以下であってよい。これにより、硬度および金属熱膨張に対する可とう性等の物性が、望ましい範囲になり易い。
【0076】
置換基R1~R6としてアルキルエーテル基のみを有するフルアルキル型のメラミン樹脂の使用を排除するものではない。ただし、可とう性等の塗膜物性の観点から、その使用量は少ないことが望ましい。例えば、第1液に含まれるメラミン樹脂の合計の固形分100質量%に占める、フルアルキル型のメラミン樹脂の使用量は、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、0質量%であってよい。
【0077】
メラミン樹脂(B)の数平均分子量(Mn)は、300以上3000以下であってよい。これにより、水性塗料組成物の粘度が低く抑えられて、スプレーダストが一層抑制され、艶感がより向上する。メラミン樹脂(B)の数平均分子量は、2500以下であってよく、2000以下であってよく、1500以下であってよく、1300以下であってよい。メラミン樹脂(B)の数平均分子量は、350以上であってよく、400以上であってよい。
【0078】
メラミン樹脂(B)の固形分質量は、例えば、水酸基含有樹脂(A)の固形分質量100質量部に対して7質量部以上50質量部以下であってよい。これにより、硬化反応が進行し易くなって、高い硬度を有する塗膜が得られ易い。メラミン樹脂(B)の上記固形分質量は、15質量部以上であってよく、17質量部以上であってよく、20質量部以上であってよい。メラミン樹脂(B)の上記固形分質量は、45質量部以下であってよく、40質量部以下であってよく、35質量部以下であってよい。一態様において、メラミン樹脂(B)の上記固形分質量は、水酸基含有樹脂(A)の固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である。
【0079】
メラミン樹脂(B)が有するイミノ基およびメチロール基(以下、イミノ基等と称する場合がある。)と、親水性ポリイソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基にとの当量比(イミノ基等/イソシアネート基)は、0.2以上1.1以下であってよい。これにより、メラミン樹脂(B)と親水性ポリイソシアネート化合物(D)との反応が生じ易くなる。
【0080】
当量比(イミノ基等/イソシアネート基)が1.0であると、イミノ基およびメチロール基と、イソシアネート基とは、過不足なく反応する。当量比(イミノ基等/イソシアネート基)が0.2以上であれば、メラミン樹脂(B)と親水性ポリイソシアネート化合物(D)との反応が生じ易くなる。当量比(イミノ基等/イソシアネート基)が1.1以下であるということは、イミノ基およびメチロール基の数が、イソシアネート基と過不足なく反応する数より過剰に多くないため、親水性ポリイソシアネート化合物(D)と水酸基含有樹脂(A)との反応も生じ易くなる。
【0081】
当量比(イミノ基等/イソシアネート基)は、0.3以上であってよく、0.38以上であってよい。当量比(イミノ基等/イソシアネート基)は、1.0以下であってよく、0.9以下であってよい。
【0082】
イミノ基またはメチロール基とイソシアネート基とは、1:1で反応するため、当量比(イミノ基等/イソシアネート基)は、塗料組成物に含まれるメラミン樹脂(B)が有するイミノ基およびメチロール基の総数Tmと、塗料組成物に含まれる親水性ポリイソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基の総数Tiとの数比(Tm/Ti)として、得ることができる。
【0083】
例えば、塗料組成物100gに含まれるイミノ基等の総数Tmは、塗料組成物100gに含まれるメラミン樹脂(B)の質量(配合量)Wm、分子量Mm、および、1分子当たりのイミノ基およびメチロール基の合計数Nmから、下記の式に基づいて算出される。
総数Tm(/100g)=イミノ基等の合計数Nm×(配合量Wm/分子量Mm)
【0084】
総数Tiも同様に、塗料組成物100gに含まれる親水性ポリイソシアネート化合物(D)の質量(配合量)Wi、分子量Mi、および、1分子当たりのイソシアネート基の数Ni(あるいは、NCO含有率Ri(%))から、下記の式に基づいて算出される。
総数Ti(/100g)=イソシアネート基の数Ni×(配合量Wi/分子量Mi)
または、
総数Ti(/100g)=配合量Wi×NCO含有率Ri/(NCO分子量=42)
【0085】
≪溶媒≫
第1液は、溶媒として水を含む。第1液は、さらに必要に応じて水溶性または水混和性の有機溶媒を含み得る。
【0086】
≪調製方法≫
第1液は、上記成分を当業者に知られた方法で混合することによって、調製することができる。混合方法としては、水性塗料組成物の調製と同様の方法が挙げられる。
【0087】
(第2液)
第2液は、親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む。親水性ポリイソシアネート化合物(D)は硬化剤であり、水酸基含有成分(代表的には、水酸基含有樹脂(A))と反応して架橋構造を形成し、水性塗料組成物を硬化させる。親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、さらに、メラミン樹脂(B)と反応する。これにより、水酸基含有樹脂(A)と親水性ポリイソシアネート化合物(D)との架橋構造の中にメラミン樹脂(B)の剛直なトリアジン環が取り込まれて、得られる塗膜の硬度が高くなる。
【0088】
親水性ポリイソシアネート化合物(D)に含まれるイソシアネート基と、水酸基含有成分に含まれる水酸基との当量比(NCO/OH)は、例えば、0.7以上2.0以下である。上記当量比(NCO/OH)は、0.7以上であってよく、0.8以上であってよい。上記当量比(NCO/OH)は、2.0以下であってよく、1.8以下であってよく、1.5以下であってよい。
【0089】
親水性ポリイソシアネート化合物(D)として、ブロックされていない遊離イソシアネート基を有する、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方が用いられる。これらは、水分散性である。少なくともイオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)を用いてよい。
【0090】
(D1)イオン変性ポリイソシアネート化合物
イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)は分子中にイソシアネート基を2個以上有する。イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)は、ブロックされていない遊離イソシアネート基を有しているため、低温硬化が可能となる。イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)はまた、親水基であるイオン性基を有する。そのため、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)は、水性である第1液と混合したときによく分散し、塗膜の平滑性を向上させる。
【0091】
イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)として、アニオン変性ポリイソシアネート化合物を含んでいてよい。アニオン変性ポリイソシアネート化合物は、例えば有機ポリイソシアネート化合物(b1)として例示されたポリイソシアネート化合物を、アニオン性の親水基で変性することにより得られる。アニオン性の親水基による変性は、1分子中に2個以上のイソシアネート基が残存するように行われる。
【0092】
アニオン性の親水基は、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ケイ酸、硫酸エステル、リン酸エステル、これらの金属塩または有機塩に由来する。なかでも、スルホン酸由来のアニオン性の親水基であってよい。
【0093】
(D2)ノニオン変性ポリイソシアネート化合物
ノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)は、分子中にイソシアネート基を2個以上有する。ノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)もまた、ブロックされていない遊離イソシアネート基を有しているため、低温硬化が可能となる。加えて、ノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)は、ノニオン性の親水基を有する。これにより、ノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)は、水性である第1液と混合したときによく分散し、塗膜の平滑性を向上させる。
【0094】
ノニオン性の親水基は、親水性化合物に由来する。ノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)は、例えば、有機ポリイソシアネート化合物(b1)として例示されたポリイソシアネート化合物を、親水性化合物で変性することにより得られる。
【0095】
親水性化合物としては、例えば、親水性ポリオール、親水性ポリエーテルが挙げられる。親水性ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールが挙げられる。
【0096】
≪その他のポリイソシアネート化合物≫
親水性ではないポリイソシアネート化合物の使用を排除するものではない。ただし、粘度の観点から、その使用量は少ないことが望ましい。例えば、第2液に含まれるポリイソシアネート化合物の合計の固形分100質量%に占める、非親水性ポリイソシアネート化合物の使用量は、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってよく、0質量%であってよい。
【0097】
イソシアネート基がブロック剤で封止されたブロックポリイソシアネート化合物の使用を排除するものではない。ただし、低温下での硬化性の観点から、その使用量は極めて少ないことが望ましい。ブロックポリイソシアネート化合物の使用量は、1質量%以下であってよく、0質量%であってよい。
【0098】
≪その他の硬化剤≫
水性塗料組成物は、親水性ポリイソシアネート化合物(D)以外のその他の硬化剤を含んでよい。その他の硬化剤としては、例えば、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物およびオキサゾリン化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。その他の硬化剤の含有量は、水酸基含有樹脂に応じて適宜設定される。
【0099】
≪溶媒≫
第2液は、水酸基を有さない溶媒を含み得る。このような溶媒としては、例えば、グリコールエーテル系有機溶媒;アセテート系有機溶媒;ケトン系有機溶媒;エステル系有機溶媒が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0100】
≪調製方法≫
第2液は、上記成分を当業者に知られた方法で混合することによって、調製することができる。混合方法としては、第1液の調製と同様の方法が挙げられる。
【0101】
(その他の成分)
水性塗料組成物は、顔料および塗料分野において一般的に使用される添加剤を含み得る。添加剤は、第1液、第2液および第3液のいずれに添加されてもよい。顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料が挙げられる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、架橋樹脂粒子、レベリング剤、消泡剤、硬化促進剤、粘性調整剤が挙げられる。
【0102】
[塗装物品]
本開示に係る水性塗料組成物により、塗装物品が得られる。塗装物品は、高い硬度を有し、艶感に優れ、スプレーダストが抑制された塗膜を有する。
【0103】
一態様において、塗装物品は、被塗物と、第1塗膜およびクリヤー塗膜がこの順に積層された複層塗膜と、を備える。第1塗膜は、本開示に係る水性塗料組成物により形成される。
【0104】
他の一態様において、塗装物品は、被塗物と、第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜がこの順に積層された複層塗膜と、を備える。第1塗膜は、本開示に係る水性塗料組成物により形成される。
【0105】
(被塗物)
被塗物の材質としては、例えば、金属、樹脂、ガラスが挙げられる。被塗物として、具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体および自動車車体用の部品、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等の自動車部品が挙げられる。
【0106】
金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛またはこれらの合金(例えば、鋼)が挙げられる。金属製の被塗物としては、代表的には、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板等の鋼板が挙げられる。
【0107】
金属製の被塗物は、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム化成処理、複合酸化物処理が挙げられる。金属製の被塗物は、表面処理後、さらに電着塗料によって塗装されていてもよい。電着塗料は、カチオン型であってよく、アニオン型であってよい。
【0108】
樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、塩化ビニル樹脂、スチロール樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂などを含む)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)が挙げられる。樹脂製の被塗物は、脱脂処理されていてよい。
【0109】
本開示に係る水性塗料組成物は低温硬化可能であるため、樹脂への塗装に適している。本開示に係る水性塗料組成物によって得られる塗膜は耐チッピング性に優れるため、金属への塗装に適している。被塗物は、金属部(金属により形成された部分)および樹脂部(樹脂により形成された部分)の両方を含んでよい。金属部は、鋼板であってよい。
【0110】
(第1塗膜)
第1塗膜は、本開示に係る水性塗料組成物により形成される。第1塗膜の硬化後の膜厚(乾燥膜厚)は、例えば、5μm以上80μm以下である。第1塗膜の乾燥膜厚は、7μm以上であってよい。第1塗膜の乾燥膜厚は、50μm以下であってよい。
【0111】
塗膜の厚さは、電磁式膜厚計(例えば、SANKO社製SDM-miniR)により測定できる。塗膜の厚さは、任意の5点における塗膜の厚さの平均値である。
【0112】
(第2塗膜)
第2塗膜は、第2塗料組成物により形成される。第2塗料組成物については後述する。第2塗膜は、1層であってよく、2層以上の積層塗膜であってよい。第2塗膜の1層あたりの乾燥膜厚は、例えば、5μm以上35μm以下である。第2塗膜の1層あたりの乾燥膜厚は、7μm以上であってよい。第2塗膜の1層あたりの乾燥膜厚は、30μm以下であってよい。
【0113】
(クリヤー塗膜)
クリヤー塗膜は、クリヤー塗料組成物により形成される。クリヤー塗料組成物については後述する。クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、例えば、10μm以上80μm以下である。クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、20μm以上であってよい。クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、60μm以下であってよい。
【0114】
[塗装物品の製造方法]
一態様において、塗装物品は、被塗物上に、上記の水性多液型塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、未硬化の第1塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、未硬化の第1塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える方法により製造される。
【0115】
他の一態様において、塗装物品は、被塗物上に、上記の水性塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、未硬化の第1塗膜上に、第2水性塗料組成物を塗装して、未硬化の第2塗膜を形成する工程と、未硬化の第2塗膜上にクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、未硬化の第1塗膜、未硬化の第2塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える方法により製造される。
【0116】
70℃以上110℃以下の低温であっても、高い硬度を有し、艶感に優れ、スプレーダストが抑制された塗膜が形成される。
【0117】
以下、第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜がこの順に積層された複層塗膜を備える塗装物品の製造方法を例に挙げて、説明する。
【0118】
(I)未硬化の第1塗膜を形成する工程
本開示に係る水性塗料組成物を被塗物上に塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する。第1塗膜によって、第2塗膜と被塗物との付着性が向上する。また、第1塗膜により塗装面が均一になって、第2塗膜のムラが抑制され易くなる。被塗物は、上記の通り、金属部および樹脂部の両方を含んでよい。
【0119】
塗装方法としては、例えば、ロールコーター法、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装が挙げられる。これらの方法と静電塗装とを組み合わせてもよい。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。回転霧化式静電塗装には、例えば、通称「マイクロ・マイクロベル(μμベル)」、「マイクロベル(μベル)」、「メタリックベル(メタベル)」などと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機が用いられてよい。
【0120】
水性塗料組成物を塗装した後、第2塗料組成物を塗装する前に、予備乾燥(プレヒートとも称される)を行ってもよい。これにより、水性塗料組成物に含まれる溶媒が、硬化工程において突沸することが抑制されて、ワキの発生が抑制され易くなる。さらに、予備乾燥により、未硬化の第1塗膜と第2塗料組成物とが混ざりあうことが抑制されて、混層が形成され難くなる。そのため、得られる塗装物品の平滑性がさらに向上し得る。
【0121】
予備乾燥としては、例えば、20℃以上25℃以下の温度条件で5分以上15分以下放置する方法、50℃以上80℃以下の温度条件で30秒以上10分以下加熱する方法が挙げられる。
【0122】
(II)未硬化の第2塗膜を形成する工程
未硬化の第1塗膜上に第2塗料組成物を塗装して、未硬化の第2塗膜を形成する。2層以上の未硬化の第2塗膜は、同じまたは異なる第2塗料組成物を2回以上塗装することにより形成することができる。n回目の第2塗料組成物の塗装とn+1回目の第2塗料組成物の塗装との間には、数分間のインターバルを設けてよい。
【0123】
塗装方法としては、例えば、水性塗料組成物の塗装方法と同様の方法が挙げられる。第2塗料組成物を塗装した後、上記と同様に予備乾燥を行ってもよい。
【0124】
(第2塗料組成物)
第2塗料組成物は、水性であってよく、溶剤系であってよい。第2塗料組成物は、水性であってよい。水性の第2塗料組成物は、例えば、アクリル樹脂エマルション、水溶性アクリル樹脂、硬化剤(代表的には、メラミン樹脂)、ポリエーテルポリオール樹脂を含む。第2塗料組成物は、さらに、上記の各種顔料、光輝性顔料および各種添加剤を含んでよい。
【0125】
(III)未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
クリヤー塗料組成物を未硬化の第2塗膜上に塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する。
【0126】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、水性塗料組成物の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。クリヤー塗料組成物を塗装した後、上記と同様に予備乾燥を行ってもよい。
【0127】
(クリヤー塗料組成物)
クリヤー塗料組成物は、溶剤系であってよく、水性であってよく、粉体型であってよい。溶剤系クリヤー塗料組成物は、透明性あるいは耐酸エッチング性などの点から、塗膜形成性樹脂としてアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、硬化剤としてアミノ樹脂および/またはイソシアネートと、を含んでよい。溶剤系クリヤー塗料組成物は、また、カルボン酸および/またはエポキシ基を有する、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂を含んでよい。クリヤー塗料組成物は、透明性を損なわない範囲で、上記の各種顔料および添加剤を含んでよい。
【0128】
(IV)硬化工程
未硬化の各塗膜を硬化させる。各塗膜は加熱により硬化し得る。本態様では、第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜が一度に硬化される。
【0129】
加熱温度は、例えば70℃以上110℃以下である。加熱温度は、75℃以上であってよく、80℃以上であってよい。加熱温度は、105℃以下であってよく、100℃以下であってよく、95℃以下であってよく、90℃以下であってよい。加熱時間は、加熱装置内が目的の温度に達し、被塗物が目的の温度に保たれている時間を意味し、目的の温度に達するまでの時間は考慮しない。加熱装置としては、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線等の加熱源を利用した乾燥炉が挙げられる。
【0130】
加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定すればよい。加熱温度が70℃以上110℃以下の場合、加熱時間は、例えば10分以上60分以下であり、15分以上45分以下であってよい。
【0131】
2.第2実施形態
第2実施形態は、第1実施形態とは、第1液が水酸基含有樹脂(A)およびメラミン樹脂(B)とともに、ポリウレタン樹脂(C)を含む点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。第2実施形態において、塗装物品の構成、塗装物品の製造方法は第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0132】
(C)ポリウレタン樹脂
ポリウレタン樹脂(C)もまた、塗膜形成成分である。ポリウレタン樹脂(C)によって、塗膜の弾性が高まり、耐チッピング性が向上する。
【0133】
ポリウレタン樹脂(C)は、水酸基価が30mgKOH/g以下であってよい。これにより、水性塗料組成物の粘度を低く抑えることができる。そのため、スプレーダストが一層抑制され、また艶感がより向上する。さらに、ポリウレタン樹脂(C)と、親水性ポリイソシアネート化合物(D)との反応が抑制されて、水酸基含有樹脂(A)と親水性ポリイソシアネート化合物(D)との反応の進行が制御され易くなる。ポリウレタン樹脂(C)の水酸基価は、20mgKOH/g以下であってよく、10mgKOH/g以下であってよく、0mgKOH/gであってよい。
【0134】
一態様において、ポリウレタン樹脂(C)の固形分質量は、水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対して10質量部以上110質量部以下であってよい。これにより、得られる塗膜の硬度と弾性とが良好なバランスになって、耐チッピング性を有し、かつ、良好な塗膜強度を有する塗膜が得られ易くなる。ポリウレタン樹脂(C)の上記固形分質量は、15質量部以上であってよく、20質量部以上であってよい。ポリウレタン樹脂(C)の上記固形分質量は、105質量部以下であってよく、50質量部以下であってよい。
【0135】
第1液において、ポリウレタン樹脂(C)は溶解していてよい。すなわち、ポリウレタン樹脂(C)は、水溶性ポリウレタン樹脂であってよい。第1液において、ポリウレタン樹脂(C)の形態は、ディスパージョンであってよい。
【0136】
水溶性ポリウレタン樹脂およびポリウレタン樹脂ディスパージョンは、例えば、界面活性剤を用いてポリウレタン樹脂を強制的に乳化させる方法、ポリウレタン樹脂を塩基または酸で中和する方法により得られる。
【0137】
ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリオール化合物、分子内に活性水素基と親水基とを有する化合物、有機ポリイソシアネート化合物(b1)、および必要により鎖伸長剤と重合停止剤との反応によって得られる。必要に応じて、鎖伸長剤および重合停止剤を用いてよい。
【0138】
ポリオール化合物は、分子中に2つ以上の水酸基を含有する。ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、等のポリエーテルポリオール;アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールから得られるポリエステルポリオール類;ポリカプロラクトンポリオール;ポリブタジエンポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリチオエーテルポリオールが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0139】
分子内に活性水素基と親水基とを有する化合物としては、例えば、活性水素と、アニオン基、カチオン基またはノニオン性の親水基と、を含有する化合物が挙げられる。アニオン基は、アニオン基およびアニオン形成性基を含む。アニオン形成性基は、塩基と反応してアニオン基を形成することができる基であり、具体的には、ウレタン化反応前、途中または後に塩基で中和することによってアニオン基を形成する。
【0140】
活性水素とアニオン基とを含有する化合物としては、例えば、特公昭42-24192号公報明細書および特公昭55-41607号公報明細書に記載されており、具体的には、α,α-ジメチロールプロピオン酸、α,α-ジメチロール酪酸が例示できる。活性水素とカチオン基を有する化合物としては、例えば、特公昭43-9076号公報明細書に記載されている。活性水素とノニオン性の親水基を有する化合物としては、例えば、特公昭48-41718号公報に記載されており、具体的には、ポリエチレングリコール、アルキルアルコールアルキレンオキシド付加物が例示できる。
【0141】
有機ポリイソシアネート化合物(b1)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0142】
芳香族ポリイソシアネートは、芳香環を構成する炭素原子に結合した2以上のイソシアネート基を有する。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-もしくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、またはこれらの混合物、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート、またはこれらの混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0143】
脂肪族ポリイソシアネートは、芳香環を有さず、直鎖または分岐した脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子に結合した2以上のイソシアネート基を有する。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、へプタメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0144】
脂環族ポリイソシアネートは、芳香環を有さず、環状の脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子に結合した2以上のイソシアネート基を有する。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)、またはこれらの混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0145】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、芳香環を有し、脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子に結合した2以上のイソシアネート基を有する。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート、またはこれらの混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-もしくは1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)、またはこれらの混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0146】
有機ポリイソシアネート化合物(b1)は、上記の各ポリイソシアネートの誘導体であってよい。ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIが挙げられる。
【0147】
鎖伸長剤は、分子中に2つ以上の活性水素基を含有する。鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールおよびトリメチロールプロパン等の低分子ポリオール;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドラジン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等のポリアミン;水が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0148】
重合停止剤としては、分子内に活性水素を1個有する化合物(例えばモノアルコール、モノアミン等)、およびモノイソシアネート化合物が挙げられる。
【0149】
ポリウレタン樹脂の合成方法は、各成分を一度に反応させるワンショット法であってよく、段階的に反応させる多段法であってよい。多段法では、活性水素含有化合物の一部(例えば、高分子ポリオール)と有機ポリイソシアネート化合物(b1)とを反応させて、NCO末端プレポリマーを形成したのち、このプレポリマーと活性水素含有化合物の残部とを反応させる。
【0150】
本実施形態において、メラミン樹脂(B)の固形分質量は、水酸基含有樹脂(A)およびポリウレタン樹脂(C)の合計固形分質量100質量部に対して7質量部以上50質量部以下であってよい。これにより、硬化反応が進行し易くなって、硬度および金属熱膨張に対する可とう性などの塗膜物性が、良好になり易い。メラミン樹脂(B)の本実施形態における固形分質量は、15質量部以上であってよく、17質量部以上であってよく、20質量部以上であってよい。メラミン樹脂(B)の本実施形態における固形分質量は、45質量部以下であってよく、40質量部以下であってよく、35質量部以下であってよい。特に、水酸基含有樹脂(A)およびポリウレタン樹脂(C)の合計固形分質量100質量部に対するメラミン樹脂(B)の固形分質量は、7質量部以上40質量部以下であってよい。
【実施例】
【0151】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り固形分の質量基準による。
【0152】
酸価および水酸基価は、使用したモノマー混合物の固形分酸価および固形分水酸基価に基づいて算出した。
【0153】
[製造例1-1]水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)の製造
反応容器に脱イオン水126.5部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、モノマー混合物30部(アクリル酸エチル6.98部、アクリル酸ブチル12.42部、スチレン4.75部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2.78部、およびメタクリル酸3.07部を含む)、アデカリアソープSR-10(ポリオキシエチレン-1-アルコキシメチル-2-(2-プロペニルオキシ)エチルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ADEKA社製)0.33部および脱イオン水24部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.09部および脱イオン水3部からなる開始剤溶液と、を1.5時間かけて、並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間、同じ温度で熟成を行った。
【0154】
次いで、モノマー混合物70部(アクリル酸エチル16.28部、アクリル酸ブチル28.97部、スチレン15.25部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル6.5部およびメタクリル酸アリル3部を含む)、アデカリアソープSR-10を0.77部および脱イオン水56部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.21部および脱イオン水7部からなる開始剤溶液と、を1.5時間かけて、並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間、同じ温度で熟成を行った。
【0155】
その後、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した。濾液に、脱イオン水20部およびジメチルアミノエタノール0.32部を加えてpH6.5に調整した。これにより、平均粒子径100nm、Tg27℃、不揮発分30%、酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/gのコアシェル型の多層構造である、水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)のエマルションを得た。
【0156】
[製造例1-2]水酸基含有アクリル樹脂(A1-2)の製造
反応容器に脱イオン水126.5部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、モノマー混合物100部(アクリル酸メチル27.61部、アクリル酸エチル53.04部、スチレン4.00部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル9.28部、メタクリル酸3.07部およびメタクリル酸アリル3.00部を含む)、アデカリアソープSR-10を1.1部および脱イオン水80部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.3部および脱イオン水10部からなる開始剤溶液と、を2時間かけて、並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間、同じ温度で熟成を行った。
【0157】
その後、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した。濾液に、脱イオン水20部およびジメチルアミノエタノール0.32部を加えpH6.5に調整した。これにより、平均粒子径90nm、Tg-9.5℃、不揮発分30%、酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/gの単層型の水酸基含有アクリル樹脂(A1-2)のエマルションを得た。
【0158】
[製造例1-3]水酸基含有アクリル樹脂(A1-3)の製造
反応容器にトリプロピレングリコールメチルエーテル23.89部およびプロピレングリコールメチルエーテル16.11部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル13.1部、アクリル酸エチル68.4部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル11.6部およびメタクリル酸6.9部を含むモノマー混合物を作成し、そのモノマー混合物100部と、トリプロピレングリコールメチルエーテル10.0部およびt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート1部からなる開始剤溶液とを、3時間かけて、並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間、同じ温度で熟成を行った。
【0159】
さらに、トリプロピレングリコールメチルエーテル5.0部およびt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を、0.5時間かけて反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間、同じ温度で熟成を行った。
【0160】
続いて、脱溶剤装置により、減圧下(70torr)110℃で、16.1部の溶剤を留去した後、脱イオン水204部およびジメチルアミノエタノール7.1部を加えた。これにより、不揮発分30%、酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g、Tg10℃、Mw30,000の水酸基含有水溶性アクリル樹脂溶液(A1-3)を得た。
【0161】
[製造例2]水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造
攪拌機、窒素導入管、温度制御装置、コンデンサー、デカンターを備えた反応容器に、トリメチロールプロパン250部、アジピン酸824部、シクロヘキサンジカルボン酸635部を加え、180℃に昇温して、水が留出しなくなるまで縮合反応を行った。60℃まで冷却した後、無水フタル酸120部を加えた。次いで、140℃まで昇温して、これを60分間保ち、GPC測定による数平均分子量2,000のポリエステル樹脂を得た。ジメチルアミノエタノール59部(樹脂が有する酸価の80%相当(中和率80%))を80℃で加え、さらに脱イオン水1920部を投入および攪拌して、固形分45質量%のポリエステル水分散体を得た。このポリエステル水分散体に含まれる水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の水酸基価110mgKOH/g、酸価は15mgKOH/g、Tgは-14℃、Mwは7,000であった。
【0162】
[顔料分散ペーストの調製]
分散剤「Disperbyk 190」(ビックケミー社製)9.2部、イオン交換水17.8部、および、ルチル型二酸化チタン73.0部を予備混合した。その後、ペイントコンディショナー中でビーズ媒体を用いて、室温で粒度5μm以下となるまで混合分散した。最後に、ビーズ媒体を濾過にて取り除いて、着色顔料ペーストを得た。
【0163】
使用されたメラミン樹脂(B)、ポリウレタン樹脂(C)および親水性ポリイソシアネート化合物(D)の詳細は、下記の通りである。
【0164】
[メラミン樹脂(B)]
以下の平均官能基数、平均粒子径および数平均分子量を有するメラミン樹脂(B-1)~(B-7)、(b-1)~(b-3)を用いた。詳細を表2に示す。
【0165】
メラミン樹脂(B)の平均粒子径は、n-ブタノールまたはイソブタノールを用いてメラミン樹脂(B)の濃度70%の液状物を用いて測定した。レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA150、日機装社製)を用いて、当該液状物の体積基準の粒度分布を測定し、当該粒度分布における50%平均粒子径(D50)を、メラミン樹脂(B)の平均粒子径とした。マイクロトラックUPA150の実効測定範囲は、0.003μm~6.5μmである。表2において、D50が0.003μm未満と記載されているのは、D50が上記測定装置の実行測定範囲未満であったことを示す。
【0166】
【0167】
[ポリウレタン樹脂(C)]
(C-1):N800T、三洋化成社製、水酸基価0mgKOH/g
(C-2):Bayhydrol UH2648/1、コベストロ社製、水性ポリウレタン樹脂、水酸基価0mgKOH/g
(C-3):Bayhydrol U2787、コベストロ社製、水性ポリウレタン樹脂、水酸基価56mgKOH/g
【0168】
[イオン(アニオン)変性ポリイソシアネート化合物(D1)]
(D1):バイヒジュール2655、住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基含有
[ノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)]
(D2):バイヒジュール304、住化コベストロウレタン社製、親水性ポリエーテル変性HDIトリマー
【0169】
[ブロックポリイソシアネート化合物]
(d1):デュラネートWM44-L70G、旭化成社製、HDI系ブロックイソシアネート
[非親水性ポリイソシアネート化合物]
(d2):スミジュールN3300、住化コベストロウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン体
【0170】
第1実施形態に対応する実施例1~12を行った。
[実施例1]
(1)第1液の調製
攪拌機を有する容器に、水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)35部、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)10部、メラミン樹脂(B-1)10部、着色顔料ペースト122.87部、イオン交換水25部を投入し、ジメチルエタノールアミン(キシダ化学社製)0.01部でPHを8.0に調整した。さらに、アデカノールUH-814N(ウレタン会合型粘性剤、有効成分30%、旭電化工業社製、商品名)1.0部を混合攪拌した。その後、タイペークCR-97(石原産業社製、二酸化チタン、一次平均粒子径200nm)をPWC53.5%となるように加えて、分散させた。これにより、第1液を得た。
【0171】
(2)第2液の調製
アニオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)45部および溶媒(ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよび/またはエチレングリコールモノブチルアセテート)適量を混合し、ディスパーにて十分攪拌して、第2液を得た。
【0172】
(3)水性塗料組成物の調製
第1液および第2液を混合して、水性塗料組成物を得た。
【0173】
(4)被塗物の準備
(金属製被塗物)
梨地鋼板(400mm×600mm)を被塗素材とし、常法に従って洗浄リン酸亜鉛処理を行った。次いで、カチオン型電着塗料(日本ペイント(株)製パワートップU-100)を使用して電着塗装した。続いて、170℃×20分の条件で乾燥処理し、厚さ15μmの電着塗膜を有する金属製被塗物を得た。
【0174】
(樹脂製被塗物)
ポリプロピレン板を脱脂処理して、樹脂製被塗物を得た。
【0175】
(5)複層塗膜を有する塗装物品の作製
金属製被塗物および樹脂製被塗物にそれぞれ、水性多液型塗料組成物を回転霧化式の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で15μmとなるように静電塗装し、5分間放置した。
次いで、水性ベース塗料組成物(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、水性ベースAR-3020-1(グレーメタリック))を回転霧化式の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃で3分間プレヒートを行った。
続いて、クリヤー塗料(日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製、ポリウレエクセル O-1200 (商品名)、ポリイソシアネート化合物含有2液アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤー塗料)を回転霧化式の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚が35μmとなるように塗装した。
その後、80℃で20分間加熱して、複層塗膜を有する塗装物品を得た。
【0176】
[実施例2~12および比較例1~4、6]
配合成分の種類および配合量、塗装時の固形分質量などを、表3および表4に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、水性塗料組成物を調製し、塗装物品を得た。
【0177】
[比較例5]
メラミン樹脂(B-1)を、第1液ではなく、第2液に添加したこと以外は、実施例1と同様の手順により、水性塗料組成物を調製した。
この水性塗料組成物を23℃下に静置したところ、24時間経過後、塗料組成物の粘度が著しく高くなり、スプレー塗装することができなかった。そのため、以下の評価を行うことができなかった。
【0178】
[比較例7]
第1液の調製において、メラミン樹脂(B-1)10部に替えて、平均粒子径2μmのメラミン樹脂粒子(商品名:エポスターMS、日本触媒社製)10部を加えたこと以外、実施例1と同様の手順により、水性塗料組成物を調製した。
【0179】
[評価]
上記実施例および比較例で調製した水性塗料組成物を用いて、下記評価を実施した。比較例7は、硬度および艶感を評価した。
【0180】
(1)単層塗膜の硬度
ガラス板に、水性多液型塗料組成物を回転霧化式の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で15μmとなるように静電塗装し、5分間放置した。次いで、85℃で20分間(キープ時間)加熱して、単層塗膜を有する評価用試験板Aを得た。ペンデュラム硬度試験器(BYK社製)に評価用試験板Aをセットして、23℃におけるケーニッヒ振り子の振れ角度が6度から3度に減少するのに要する振動回数を測定し、以下の評価基準に従い評価した。
【0181】
(評価基準)
A 振動回数が80回以上
B 振動回数が65回以上80回未満
C 振動回数が50回以上65回未満
D 振動回数が35回以上50回未満
E 振動回数が35回未満
【0182】
(2)単層塗膜の艶感
上記と同様にして準備した金属製被塗物に、水性多液型塗料組成物を回転霧化式の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で15μmとなるように静電塗装し、5分間放置した。次いで、85℃で20分間(キープ時間)加熱して、単層塗膜を有する評価用試験板Bを得た。
【0183】
「MULTIGLOSS268plus」(コニカミノルタ株式会社製)を使用し、JIS K5600-4-7に準拠して、評価用試験板Bの光沢値を測定した。詳しくは、評価用試験板Bの光沢値を、入射光軸60°の幾何条件(60°グロス)で3回測定した。得られた測定値の平均値を算出し、下記基準により評価した。
【0184】
A 60°グロス値が70以上
B 60°グロス値が60以上70未満
C 60°グロス値が50以上60未満
D 60°グロス値が40以上50未満
E 60°グロス値が40未満
【0185】
(3)スプレーダスト
上記と同様にして準備した金属製被塗物に、エアスプレー塗装により、下記条件にて水性塗料組成物を塗装して、評価用試験板Cを得た。
【0186】
(エアスプレー塗装条件)
吐出:全閉から2回転戻し
エア圧:0.25MPa
【0187】
(塗装方法)
略垂直に保持した状態の金属製被塗物に対して、以下の手順で塗装を行った。
手順1.被塗物に、水性多液型塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装(ガン距離30cm)を行う
手順2.室温で10分乾燥させる
手順3.被塗物から斜め45°ガン距離150cmの位置に立ち、10秒間ダスト吹きを行う。
手順4.室温で10秒間乾燥させる
手順5.手順3及び手順4を計5回行う。
手順9.ジェットオーブン中で60℃×1時間乾燥させる
【0188】
得られた評価用試験板Cの塗膜を上面より目視で観察して、試験板(30cm×40cm)に付着したスプレーダストの個数を、以下の基準により評価した。直径100μm以上の盛り上がりを、スプレーダストとみなした。
5 10個未満
4 10個以上30個未満
3 30個以上100個未満
2 100個以上200個未満
1 200個以上
【0189】
【0190】
【0191】
第2実施形態に対応する実施例13~31を行った。
[実施例13]
(1)第1液の調製
攪拌機を有する容器に、水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)40部、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)10部、メラミン樹脂(B-1)15部、ポリウレタン樹脂(C-1)10部、着色顔料ペースト122.11部、イオン交換水68部を投入し、ジメチルエタノールアミン(キシダ化学社製)0.01部でPHを8.0に調整した。さらに、アデカノールUH-814N(ウレタン会合型粘性剤、有効成分30%、旭電化工業社製、商品名)1.0部を混合攪拌した。その後、タイペークCR-97(石原産業社製、二酸化チタン、一次平均粒子径200nm)をPWC53.5%となるように加えて、分散させた。これにより、第1液を得た。
【0192】
(2)第2液の調製
アニオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)25部および溶媒(ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよび/またはエチレングリコールモノブチルアセテート)適量を混合し、ディスパーにて十分攪拌して、第2液を得た。
【0193】
上記の第1液および第2液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、水性塗料組成物および、塗装物品を得た。
【0194】
[実施例14~31および比較例8~11、13]
配合成分の種類および配合量、塗装時の固形分質量などを、表5~7に示す通りに変更したこと以外は、実施例13と同様の手順により、水性塗料組成物を調製し、塗装物品を得た。
【0195】
[比較例12]
メラミン樹脂(B-1)を、第1液ではなく、第2液に添加したこと以外は、実施例13と同様の手順により、水性塗料組成物を調製した。
この水性塗料組成物を23℃下に静置したところ、24時間経過後、塗料組成物の粘度が著しく高くなり、スプレー塗装することができなかった。そのため、以下の評価を行うことができなかった。
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
実施例の水性塗料組成物は、いずれも、低温硬化可能でありながら高い硬度を有し、艶感に優れ、スプレーダストが抑制された塗膜を形成することができた。
【0200】
比較例1、2および8、9では、平均官能基数の少ないメラミン樹脂を用いた。これらの水性塗料組成物から低温硬化により得られた塗膜は、硬度に劣ることが確認された。
比較例3および10では、ブロックイソシアネート化合物を用いた。この水性塗料組成物から低温硬化により得られた塗膜は、硬度が大きく劣ることが確認された。
比較例4および11では、非親水性のイソシアネート化合物を用いた。この水性塗料組成物から低温硬化により得られた塗膜は、艶感に大きく劣り、また、非常に多くのスプレーダストが発生することが確認された。
比較例5および12では、メラミン樹脂を第2液に入れて、水性塗料組成物を調製した。この水性塗料組成物は、粘度が大きく増加し、スプレー塗装が困難であった。
比較例6および13では、ポリイソシアネート化合物を使用しなかった。この水性塗料組成物から低温硬化により得られた塗膜は、硬度が大きく劣ることが確認された。
比較例7では、平均粒子径の大きなメラミン樹脂を用いた。この水性塗料組成物から低温硬化により得られた塗膜は、艶感に劣っていた。これは、メラミン樹脂が光拡散性を伴っているためと考えられる。
【0201】
本開示は以下の態様を含む。
[1]
水酸基含有樹脂(A)およびメラミン樹脂(B)を含む第1液と、
親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含み、
前記水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
前記メラミン樹脂(B)は、前記第1液中で溶解しているかあるいは平均粒子径が1μm未満であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超であり、
前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方である、水性多液型塗料組成物。
[2]
水酸基含有樹脂(A)、メラミン樹脂(B)およびポリウレタン樹脂(C)を含む第1液と、
親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含み、
前記水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
前記メラミン樹脂(B)は、前記第1液中で溶解しているかあるいは平均粒子径が1μm未満であり、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超であり、
前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方である、水性多液型塗料組成物。
[3]
前記イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)は、少なくともアニオン変性ポリイソシアネート化合物を含む、上記[1]または[2]の水性多液型塗料組成物。
[4]
前記ポリウレタン樹脂(C)は、水酸基価が30mgKOH/g以下である、上記[2]の水性多液型塗料組成物。
[5]
前記水酸基含有樹脂(A)は、酸価が5mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である、上記[1]~[4]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[6]
前記メラミン樹脂(B)は、溶解パラメータが9以上15以下である、上記[1]~[5]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[7]
前記メラミン樹脂(B)の固形分質量は、前記水酸基含有樹脂(A)の固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である、上記[1]~[6]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[8]
前記メラミン樹脂(B)の固形分質量は、前記水酸基含有樹脂(A)および前記ポリウレタン樹脂(C)の合計固形分質量100質量部に対して7質量部以上40質量部以下である、上記[2]に記載の水性多液型塗料組成物。
[9]
前記メラミン樹脂(B)が有するイミノ基およびメチロール基と、前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基との当量比(イミノ基およびメチロール基/イソシアネート基)が、0.2以上1.1以下である上記[1]~[8]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[10]
前記メラミン樹脂(B)の数平均分子量は、300以上3000以下である上記[1]~[9]いずれかの水性多液型塗料組成物。
[11]
被塗物上に、上記[1]~[10]いずれかの水性多液型塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
[12]
被塗物上に、上記[1]~[10]いずれかの水性多液型塗料組成物を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜上に、第2水性塗料組成物を塗装して、未硬化の第2塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第2塗膜上にクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1塗膜、前記未硬化の第2塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を、70℃以上110℃以下で加熱して硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
[13]
前記被塗物は、金属部および樹脂部を含む、上記[11]または上記[12]の塗装物品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明の水性塗料組成物によれば、低温硬化可能でありながら高い硬度を有し、艶感に優れ、スプレーダストが抑制された塗膜を形成することができる。そのため、特に、金属部および樹脂部の両方を含む被塗物に対して好適に用いることができる。
【0203】
本願は、2023年1月31日付けで日本国にて出願された特願2023-013411に基づく優先権および2023年9月29日付けで国際出願されたPCT/JP/2023/035702に基づく優先権を主張し、その記載内容の全てが、参照することにより本明細書に援用される。
【要約】
低温硬化可能でありながら、高い硬度を有し、艶感に優れ、スプレーダストが抑制された塗膜を形成することができる水性塗料組成物を提供する。水性多液型塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)およびメラミン樹脂(B)を含む第1液と、親水性ポリイソシアネート化合物(D)を含む第2液と、を含み、前記水酸基含有樹脂(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1)および水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の少なくとも一方であり、前記メラミン樹脂(B)は、前記第1液中で溶解しているかあるいは平均粒子径が1μm未満であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基数およびメチロール基数の合計の平均値が1超であり、前記親水性ポリイソシアネート化合物(D)は、イオン変性ポリイソシアネート化合物(D1)およびノニオン変性ポリイソシアネート化合物(D2)の少なくとも一方である。