(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
H02K 7/09 20060101AFI20241129BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H02K7/09
H02K1/22 B
(21)【出願番号】P 2024529226
(86)(22)【出願日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2023045095
【審査請求日】2024-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】三好 将仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 治之
(72)【発明者】
【氏名】元吉 研太
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163495(JP,A)
【文献】特開2011-055640(JP,A)
【文献】特開平08-172746(JP,A)
【文献】特開2001-347227(JP,A)
【文献】特開平04-325854(JP,A)
【文献】特開2014-036490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/09
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転する回転子と、
前記回転子の外周または内周に前記回転子とギャップ部を隔てて配置される固定子と、
少なくとも前記回転子のうち前記回転軸に沿った軸方向の片方に配置されて、軸方向および傾き方向への前記回転子の変位を制限するように前記回転子を支持する支持部材と、
前記回転子、前記固定子および前記支持部材を収容するフレームと、
を備え、
前記回転子および前記固定子のうち少なくとも一方は、鉄心を有し、
前記回転子および前記固定子のうち少なくとも他方は、磁力発生部材を有し、
前記固定子が前記回転子を磁気的に吸引する力によって前記回転子の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、前記鉄心と前記磁力発生部材とが配置され、
前記回転子は、前記固定子に対して軸方向に変位した位置で、前記支持部材に支持され、
前記支持部材は、前記フレームに直接固定または他部材を介して間接的に固定され、
前記回転子の軸方向および傾き方向は、前記固定子が前記回転子を非接触で磁気的に吸引する力と、前記回転子を支持する前記支持部材と、によって受動的に安定であり、
前記回転子の半径方向は、前記固定子の巻線に通電することで発生させられる前記固定子に対して前記回転子を非接触で支持する半径方向の支持力によって能動的に安定であることを特徴とする回転機。
【請求項2】
回転軸を中心に回転する回転子と、
前記回転子の外周または内周に前記回転子とギャップ部を隔てて配置される固定子と、
少なくとも前記回転子のうち前記回転軸に沿った軸方向の片方に配置されて、軸方向および傾き方向への前記回転子の変位を制限するように前記回転子を支持する支持部材と、
前記回転子、前記固定子および前記支持部材を収容するフレームと、
を備え、
前記回転子および前記固定子のうち少なくとも一方は、鉄心を有し、
前記回転子および前記固定子のうち少なくとも他方は、磁力発生部材を有し、
前記固定子が前記回転子を磁気的に吸引する力によって前記回転子の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、前記鉄心と前記磁力発生部材とが配置され、
前記回転子は、前記固定子に対して軸方向に変位して、前記ギャップ部に面する前記回転子の外周面または内周面のうち軸方向の片側のみに前記固定子と非対向である面が設けられる位置で、前記支持部材に支持され、
前記支持部材は、前記フレームに直接固定または他部材を介して間接的に固定され、
軸方向における前記固定子の位置を基準位置としたときに、前記支持部材は、軸方向のうち前記回転子に働く重力の方向または回転中の前記回転子に働く反作用の力が発生する方向に前記回転子が前記基準位置から変位した位置で前記回転子を支持し、
前記支持部材で発生する支持力は、前記回転子が前記基準位置から軸方向に変位しない位置で支持される場合と比較して、前記固定子と前記回転子との間で非接触で磁気的に発生する軸方向の復元力の負担によって、低下し、
前記回転子の半径方向は、前記固定子の巻線に通電することで発生させられる前記固定子に対して前記回転子を非接触で支持する半径方向の支持力によって能動的に安定であることを特徴とする回転機。
【請求項3】
前記支持部材は、前記回転子に円周状に接触し、
前記支持部材は、前記回転子との摩擦力を低下させる低摩擦部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機。
【請求項4】
前記回転子は、周方向に互いに離れた3つ以上の前記支持部材により支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機。
【請求項5】
前記回転軸に沿った軸方向は、鉛直方向に平行であり、
前記支持部材は、前記回転子に対して鉛直方向下方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機。
【請求項6】
軸方向における前記固定子の位置を基準位置としたときに、前記支持部材は、軸方向のうち前記回転子に働く重力の方向または回転中の前記回転子に働く反作用の力が発生する方向に前記回転子が前記基準位置から変位した位置で前記回転子を支持し、
前記支持部材で発生する支持力は、前記回転子が前記基準位置から軸方向に変位しない位置で支持される場合と比較して、前記固定子と前記回転子との間で発生する軸方向の復元力の負担によって、低下することを特徴とする請求項1に記載の回転機。
【請求項7】
軸方向における前記支持部材の位置を調整可能な調整部材を備え
、
前記支持部材は、前記他部材である前記調整部材を介して、前記フレームに間接的に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機。
【請求項8】
前記支持部材の内部には、流体が流れる流路が形成され、
前記支持部材のうち前記回転子の方を向く面には、前記流路から前記回転子に向かって前記流体を流出させるための流出口が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機。
【請求項9】
前記支持部材のうち前記回転子の方を向く面および前記回転子のうち前記支持部材の方を向く面のいずれか一方には、他方に向かって開口する溝が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機。
【請求項10】
前記固定子と前記回転子とを半径方向と周方向とに沿って周回する磁路における、前記ギャップ部と前記鉄心とのうち少なくとも一方の、磁束の通りやすさを表す量であるパーミアンスは、軸方向の一方から他方へ向かって一方向に小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転子が固定子に対して非接触で支持される回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転子が固定子に対して非接触で支持される磁気軸受、ベアリングレスモータなどの回転機が知られている。磁気軸受は、固定子に対して回転子を非接触で支持するための支持力を発生させる機能を有する。ベアリングレスモータは、トルクを発生させる電動機としての機能と、固定子に対して回転子を非接触で支持するための支持力を発生させる磁気軸受としての機能と、を同一の磁気回路上に有する。固定子に対して回転子を非接触で支持するためには、回転子の回転軸周りの回転方向を除く5自由度をすべて能動的に制御するか、または、回転子の回転軸周りの回転方向を除く5自由度のうちの一部を能動的に制御せず受動的に安定な構造にする必要がある。
【0003】
5自由度とは、軸方向の1自由度と、半径方向の2自由度と、傾き方向の2自由度とを意味する。軸方向は、回転子の回転軸に平行な方向(Z軸に沿った方向)である。半径方向は、回転子の回転軸に直交する方向であり、Z軸と直交するX軸に沿った方向と、Z軸およびX軸に直交するY軸に沿った方向との2つの方向を含んでいる。傾き方向は、X軸周りの回転方向(θx)と、Y軸周りの回転方向(θy)との2つの方向である。受動的に安定とは、回転子の位置を検出して電流の値を制御しなくても、回転子が特定の位置に戻ろうとすることを意味する。
【0004】
一般的に、2自由度制御型の回転機は、上記した5自由度のうち半径方向(X軸に沿った方向およびY軸に沿った方向)の2自由度のみについて、センサで回転子の位置を検出し、かつ、検出した位置と目標の位置とが一致するように、半径方向への回転子の支持力を調整する。つまり、2自由度制御型の回転機は、半径方向のみについて能動的に制御し、軸方向および傾き方向の3自由度については能動的に制御せず受動的に安定な構造にしている。
【0005】
軸方向および傾き方向の3自由度について受動的に安定な構造にするための技術として、回転子の永久磁石と固定子の鉄心との間に発生する吸引力を利用する技術が知られている。例えば、特許文献1には、軸方向の1自由度において回転子が理想的な位置から変位する場合には、回転子の永久磁石と固定子の鉄心との間で流れる磁束により、固定子が回転子を磁気的に吸引する力が発生し、回転子の軸方向の変位を戻す復元力が回転子に働く技術が記載されている。また、特許文献1には、傾き方向の2自由度において回転子が理想的な位置から傾く場合には、回転子の永久磁石と固定子の鉄心との間で流れる磁束により、固定子が回転子を磁気的に吸引する力が発生し、回転子の傾きを戻す復元トルクが回転子に働く技術が記載されている。復元力は、回転子の軸方向の変位に比例して大きくなる。復元トルクは、回転子のX軸周りの変位およびY軸周りの変位に比例して大きくなる。以下、回転子の軸方向の変位、回転子のX軸周りの変位および回転子のY軸周りの変位を、回転子の変位と総称する場合もある。
【0006】
上記したいずれの場合でも、回転子は、理想的な位置に整列した状態へ向けて動くことになる。その結果、軸方向および傾き方向の3自由度については、永久磁石から発生する磁束により、回転子の剛性を確保することができる。このように軸方向および傾き方向に対して回転子を正剛性とすることで、軸方向および傾き方向の3自由度については受動的に安定な構造にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術では、回転子の軸方向および傾き方向の安定性を、永久磁石から発生する磁束による復元力および復元トルクのみに依存している。しかしながら、特許文献1に開示された技術のように、回転子の変位に比例した復元力および復元トルクが発生するだけでは、軸方向および傾き方向への回転子の振動が発生した場合に、回転子の振動を抑制することができないという問題がある。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、回転子の軸方向および傾き方向の3自由度について受動的に安定な構造にしつつ、軸方向および傾き方向への回転子の振動を抑制することができる回転機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる回転機は、回転軸を中心に回転する回転子と、回転子の外周または内周に回転子とギャップ部を隔てて配置される固定子と、少なくとも回転子のうち回転軸に沿った軸方向の片方に配置されて、軸方向および傾き方向への回転子の変位を制限するように回転子を支持する支持部材と、回転子、固定子および支持部材を収容するフレームと、を備えている。回転子および固定子のうち少なくとも一方は、鉄心を有している。回転子および固定子のうち少なくとも他方は、磁力発生部材を有している。固定子が回転子を磁気的に吸引する力によって回転子の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、鉄心と磁力発生部材とが配置されている。回転子は、固定子に対して軸方向に変位した位置で、支持部材に支持されている。支持部材は、フレームに直接固定または他部材を介して間接的に固定されている。回転子の軸方向および傾き方向は、固定子が回転子を非接触で磁気的に吸引する力と、回転子を支持する支持部材と、によって受動的に安定である。回転子の半径方向は、固定子の巻線に通電することで発生させられる固定子に対して回転子を非接触で支持する半径方向の支持力によって能動的に安定である。
【発明の効果】
【0011】
本開示にかかる回転機は、回転子の軸方向および傾き方向の3自由度について受動的に安定な構造にしつつ、軸方向および傾き方向への回転子の振動を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる回転機の構成を示した斜視図
【
図2】実施の形態1にかかる回転機の構成を示した断面図であって、回転子に働く半径方向の支持力を説明するための図
【
図3】実施の形態1にかかる回転機の構成を示した断面図であって、回転子に働く軸方向の力を説明するための図
【
図4】実施の形態1の第1の変形例にかかる回転機の構成を示した断面図
【
図5】実施の形態1の第2の変形例にかかる回転機の構成を示した断面図
【
図6】実施の形態2にかかる回転機の構成を示した斜視図
【
図7】実施の形態3にかかる回転機の構成を示した断面図
【
図8】実施の形態3の変形例にかかる回転機の構成を示した断面図
【
図9】実施の形態4にかかる回転機の支持部材の構成を示した斜視図
【
図10】実施の形態4の変形例にかかる回転機の回転子の構成を示した図であって、回転子を軸方向に沿って見たときの図
【
図11】実施の形態5にかかる回転機の固定子鉄心の一部の構成を示した斜視図
【
図12】実施の形態5にかかる回転機の構成を示した断面図であって、回転子に働く軸方向の力を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態にかかる回転機を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる回転機100の構成を示した斜視図である。
図1では、理解の容易化のために、回転機100を軸方向に沿って半分に切った状態を示している。
図1では、断面ハッチングを省略している。
図1に示すように、回転機100は、回転子1と、固定子2と、支持部材3とを備えている。図示は省略するが、回転機100は、回転子1、固定子2および支持部材3を収容するフレーム、回転子1の中心に設けられるシャフトなどを備えている。回転子1は、回転軸AXを中心に固定子2に対して回転する。
【0015】
以下、回転機100の各構成要素について方向を説明するときには、回転軸AXに平行な方向を軸方向、回転軸AXに直交する方向を半径方向、回転軸AXを中心とする回転方向を周方向とする。各図に示されるX軸、Y軸およびZ軸は、互いに垂直な3軸である。Z軸は、回転軸AXに平行である。Z軸に沿った方向(Z軸方向)は、軸方向に平行である。X軸およびY軸は、回転軸AXに直交する。X軸に沿った方向(X軸方向)は、軸方向に直交する1つの方向であり、半径方向に含まれる方向である。Y軸に沿った方向(Y軸方向)は、軸方向に直交する1つの方向であり、半径方向に含まれる方向である。以下、X軸方向とY軸方向とを区別しない場合には、XY軸方向と総称する。また、X軸周りの回転方向θxとY軸周りの回転方向θyとを区別しない場合には、傾き方向と総称する。各軸のうち、矢印の方向をプラス向き、矢印とは逆の方向をマイナス向きとする。本実施の形態では、回転軸AXに沿った方向が鉛直方向に平行な場合を例示する。本実施の形態では、Z軸のうちプラス向きを鉛直方向上方、Z軸のうちマイナス向きを鉛直方向下方とする。
【0016】
回転子1は、回転軸AXを中心に回転する。回転子1は、回転子鉄心1aと、複数の永久磁石1bとを有している。回転子鉄心1aの形状は、本実施の形態では円筒形状である。回転子鉄心1aの中心には、軸方向に延びる貫通孔1cが形成されている。貫通孔1cには、図示しないシャフトが配置される。
【0017】
複数の永久磁石1bは、回転子鉄心1aの外周に配置されている。複数の永久磁石1bは、周方向に等角度で配置されている。磁力発生部材である永久磁石1bは、磁力により回転子鉄心1aに固定されてもよいし、接着剤などの固定部材により回転子鉄心1aに固定されてもよい。永久磁石1bは、本実施の形態では回転子鉄心1aの表面に貼り付けられているが、回転子鉄心1aの内部に埋め込まれてもよい。
【0018】
固定子2は、回転子1の外周に回転子1とギャップ部4を隔てて配置されている。固定子2は、鉄心である固定子鉄心2aと、複数の巻線2bとを有している。固定子鉄心2aと巻線2bとは、磁力発生部材である電磁石を構成している。
【0019】
固定子鉄心2aの形状は、本実施の形態では円筒形状である。固定子鉄心2aは、周方向に並べられて配置された複数のティース2cと、複数のティース2cを各ティース2cの外周部で連結するバックヨーク部2dとを有している。複数のティース2cは、回転軸AXを中心に放射状に配置されている。複数のティース2cは、周方向に等角度で配置されている。バックヨーク部2dは、円筒形状に形成されている。
【0020】
巻線2bは、複数のティース2cのそれぞれに巻回されている。巻線2bは、回転子1を周方向に回転させるための磁界を発生させる。
【0021】
支持部材3は、少なくとも回転子1のうち回転軸AXに沿った軸方向の片方に配置されて、軸方向および傾き方向への回転子1の変位を制限するように回転子1を支持する部材である。本実施の形態では、回転軸AXに沿った軸方向が鉛直方向に平行であり、支持部材3は、回転子1に対して鉛直方向下方に配置されている。支持部材3の形状は、本実施の形態では円筒形状であるが、回転子1を支持可能であれば特に制限されない。支持部材3の形状は、本実施の形態では中空形状であるが、中実形状であってもよい。支持部材3は、図示しないフレームに固定されている。
図1では、支持部材3と回転子1との違いを明確にするため、支持部材3の内径を回転子1の内径よりも小さくした状態を示しているが、図示の例に限定されない。支持部材3の内径が回転子1の内径より大きくてもよいし、支持部材3の内径が回転子1の内径と同径であってもよい。
【0022】
支持部材3は、回転子1を支持する支持面3aを有している。支持面3aは、回転子1の軸方向の片面に円周状に接触している。支持部材3は、回転子1との摩擦力を低下させる低摩擦部を備えている。支持部材3の材料が回転子1と比較して摩擦係数の低い材料であることにより、支持部材3の全体または一部(支持部材3のうち回転子1に接触する部分)に低摩擦部が形成されてもよいし、支持部材3のうち回転子1に接触する部分に塗布された潤滑剤が低摩擦部を構成してもよい。摩擦係数の低い材料としては、例えば、テフロン(登録商標)が挙げられる。潤滑剤としては、例えば、グリスが挙げられる。
【0023】
回転子1は、固定子2に対して軸方向に変位した位置で、支持部材3に支持されている。回転子1は、本実施の形態では、固定子2に対して鉛直方向下方に沈み込んだ位置で、支持部材3に支持されている。固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力によって回転子1の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、固定子鉄心2aと永久磁石1bとが配置されている。また、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力によって回転子1の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、回転子鉄心1aと電磁石とが配置されている。すなわち、回転子1の永久磁石1bによる磁束が、固定子2の電磁石による磁束に置き換わった場合でも、同様に、回転子1の軸方向および傾き方向への変位を復元しようとする力が回転子1に働く。
【0024】
ここで、
図2を参照して、回転子1に働く半径方向(XY軸方向)の支持力について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる回転機100の構成を示した断面図であって、回転子1に働く半径方向の支持力を説明するための図である。
図2を含む各断面図は、軸方向に沿った断面図である。N極の永久磁石1bとS極の永久磁石1bとを回転子鉄心1aの表面に周方向に交互に配置する場合の極数をpとする。固定子2の巻線2bに通電すること、すなわち固定子2の巻線2bに変動電流iを流すことにより、極数pの磁界が発生する。通電する電流の位相を変えて極数pの磁界を回転させると、極数pの磁界の回転に引き付けられて回転子1も回転する。これにより、トルクが発生して、回転子1の回転速度および角度を制御することができる。また、極数p±2の磁界を発生させると、ギャップ部4において磁束7aの密度が増加する角度と磁束7aの密度が減少する角度とが発生する。この磁束7aの密度の差により、回転子1が固定子2に対して半径方向に磁気的に吸引される力である半径方向(XY軸方向)の支持力が発生する。これにより、固定子2に対して回転子1を非接触で支持することができる。
【0025】
回転機100が表面磁石型ベアリングレスモータなどの一般的なベアリングレスモータであれば、上記したように、極数p±2の磁界を発生させると、ギャップ部4において磁束7aの密度が増加する角度と磁束7aの密度が減少する角度とが発生して、半径方向(XY軸方向)の支持力が発生する。一方で、回転機100が、N極またはS極のうち一方だけの永久磁石1bが突極の回転子鉄心1aの間に貼り付けられたコンシクエントポール型のベアリングレスモータ、突極の回転子鉄心1aと軸方向に着磁された永久磁石1bとが使用されるホモポーラ型のベアリングレスモータなどであれば、極数2の磁界を発生させると、ギャップ部4において磁束7aの密度が増加する角度と磁束7aの密度が減少する角度とが発生して、半径方向(XY軸方向)の支持力が発生する。
【0026】
次に、
図3を参照して、回転子1に働く軸方向の力について説明する。
図3は、実施の形態1にかかる回転機100の構成を示した断面図であって、回転子1に働く軸方向の力を説明するための図である。
図3では、重力mgが回転子1に働く場合を示している。
【0027】
回転子1は、重力mgによって固定子2に対して鉛直方向下方、すなわち軸方向に変位している。このため、回転子1と固定子2との一部同士は半径方向に向かい合わず、回転子1と固定子2との間を斜めに通過する磁束7bが発生する。
図3では、回転子1が固定子2に対して鉛直下方に変位しているため、回転子1から出て固定子2のティース2cの先端部の下面に斜めに入る磁束7bを示している。ここで、固定子2に対する回転子1の軸方向変位をz(z<0)とし、回転子1の軸方向の剛性をkzとする。
【0028】
回転子1が固定子2に対して軸方向に変位している場合には、回転子1の軸方向変位zとは逆方向に復元力f1が発生する。詳しくは、回転子1と固定子2との間を斜めに通過する磁束7bにより、回転子1を軸方向の磁気的な中心、すなわち回転子1をz=0の位置に戻そうとする復元力f1が発生する。復元力f1は、回転子1の軸方向変位zに比例して大きくなる。上記したように、回転子1の軸方向の剛性をkzとすると、f1=-kz×zとなる。回転子1の軸方向の剛性kzに負の符号がつくことは、回転子1の変位方向とは逆方向に回転子1が固定子2に吸引されることを意味する。復元力f1は、回転子1を軸方向に支持する磁気的な力であり、図示の例では回転子1を鉛直方向上方に移動させようとする力である。
【0029】
また、支持部材3によっても回転子1が軸方向に支持されている。回転子1が支持部材3により軸方向に支持される力を支持力f2とする。支持力f2は、重力mgのうち復元力f1で支持しきれなかった残りの成分と等しいため、下記式(1)が成り立つ。
f2=mg-f1・・・(1)
【0030】
一方、回転子1が固定子2に対して軸方向に変位していない場合、すなわちz=0の場合を想定すると、復元力f1=0となる。このとき、下記式(2)が成り立つ。
f2=mg・・・(2)
【0031】
したがって、上記式(1),(2)より、固定子2に対する回転子1の軸方向変位zを負の値にして、その絶対値をより大きくすることにより、すなわち回転子1に働く重力mgの方向への(Z軸方向のマイナス向きへの)回転子1の変位量を大きくすることにより、復元力f1を増加させることができる。これにより、復元力f1で重力mgの大半を支持でき、残りの成分である支持力f2を減少させることができる。なお、支持力f2は、回転子1が支持部材3により傾き方向に支持される力でもある。すなわち、支持力f2は、回転子1が支持部材3により軸方向および傾き方向に支持される力である。
【0032】
図示は省略するが、回転子1が固定子2に対して傾き方向に変位している場合には、回転子1の傾き方向の変位とは逆方向に復元トルクが発生する。詳しくは、回転子1と固定子2との間を斜めに通過する磁束7bにより、回転子1を傾き方向の磁気的な中心に戻そうとする復元トルクが発生する。復元トルクは、回転子1の傾き方向の変位に比例して大きくなる。本実施の形態では、回転子1の軸方向および傾き方向の3自由度については、回転子1の位置を検出して電流の値を制御しなくても、軸方向および傾き方向に変位した回転子1が軸方向および傾き方向の磁気的な中心に戻ろうとする復元力および復元トルクがギャップ部4にて発生するため、受動的に安定な構造にすることができる。ギャップ部4にて、トルクや半径方向の支持力と、復元力f1および復元トルクとが発生するため、トルクや半径方向の支持力が発生する部位と復元力f1および復元トルクが発生する部位とを分けた場合よりも、回転機100の小型化および軽量化を図ることができる。
【0033】
次に、本実施の形態にかかる回転機100の効果について説明する。
【0034】
本実施の形態では、
図3に示すように、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力によって回転子1の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、固定子鉄心2aと磁力発生部材である永久磁石1bとが配置されている。また、本実施の形態では、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力によって回転子1の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、回転子鉄心1aと磁力発生部材である電磁石とが配置されている。また、本実施の形態では、回転機100は、少なくとも回転子1のうち回転軸AXに沿った軸方向の片方に配置されて、軸方向および傾き方向への回転子1の変位を制限するように回転子1を支持する支持部材3を備えている。これらの構成により、回転子1の変位に比例して発生する復元力および復元トルクに加えて、支持部材3で回転子1を軸方向および傾き方向に支持することができる。このため、軸方向への回転子1の更なる変位および傾き方向への回転子1の変位が抑制される。これにより、軸方向および傾き方向への回転子1の振動を抑制することができる。
【0035】
例えば、回転機100の外部から回転子1に衝撃が加わった場合に回転子1に発生する振動を抑制することができるし、回転子1に発生した振動の持続を抑制することもできる。また、回転子1の剛性と回転子1の質量および慣性モーメントとにより決定される、回転子1の振動が発生しやすい周波数があり、この周波数の値と回転子1の回転数とが一致したときでも、共振現象を回避して回転子1の振動を抑制することができる。従来では、共振現象を回避するように回転子1を回転させることに注意を払う必要があったが、本実施の形態では、支持部材3を用いることによって共振現象を回避することに注意を払うことなく広い運転範囲で回転子1を回転させることができる。以上のように、本実施の形態では、回転子1の軸方向および傾き方向の3自由度について受動的に安定な構造にしつつ、軸方向および傾き方向への回転子1の振動を抑制することができる回転機100が得られる。
【0036】
本実施の形態では、
図3に示すように、回転子1は、固定子2に対して軸方向に変位した位置で、支持部材3に支持されている。この構成により、復元力f1を増加させて、支持力f2を減少させることができる。例えば、
図3に示される復元力f1と支持力f2との比を、例えば、9:1、19:1にして、支持力f2を0に近い値にしてもよい。このように支持力f2を減少させることにより、回転子1の回転時に支持部材3で発生する摩擦熱が大幅に低下する。また、支持力f2を減少させることにより、支持部材3の摩耗が減るため、支持部材3を交換する頻度を減らして、回転機100を長期間に亘って運転させることができる。また、支持力f2を減少させることにより、回転子1と支持部材3とが物理的に接触することにより発生するトルクの損失を低減させて、回転機100全体の運転効率を向上させることができる。これにより、支持部材3がない場合と比較して、トルクの損失および回転機100全体の運転効率をほぼ同等にしながら、軸方向および傾き方向への回転子1の振動を抑制することができる。
【0037】
本実施の形態では、
図3に示すように、支持部材3は、回転子1に円周状に接触している。この構成により、支持部材3が回転子1の全周に亘って回転子1を支持するため、軸方向への回転子1の更なる変位および傾き方向への回転子1の変位をより一層抑制することができる。
【0038】
本実施の形態では、
図3に示される支持部材3は、回転子1との摩擦力を低下させる低摩擦部を備えている。この構成により、回転子1と支持部材3との間に発生する摩擦力を低下させて、上記段落0036に記載した支持力f2を減少させた場合の効果と同じ効果を奏することができる。
【0039】
従来、磁気軸受として機能する反発磁石を固定子と回転子とのそれぞれに配置して、反発磁石同士の間に発生する反発力を利用して、回転子の軸方向および傾き方向の3自由度について受動的に安定な構造にする技術が知られている。当該従来技術では、反発磁石の着磁状態、反発磁石の取付精度などによって反発性能が左右される問題、反発磁石による寸法およびコストが増加する問題、温度上昇によって反発磁石の性能劣化、反発磁石の熱減磁などが起こる問題がある。この点、本実施の形態では、
図3に示すように、回転子1は、固定子2に対して軸方向に変位した位置で、支持部材3に支持されているため、反発磁石は不要である。すなわち、本実施の形態では、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力を発生させて、回転子1の軸方向および傾き方向の3自由度について受動的に安定な構造にすることができるため、反発磁石は不要である。これにより、本実施の形態では、上記した問題の発生を抑制することができる。
【0040】
図3に示される回転機100において、反発磁石を用いて回転子1を固定子2に対して鉛直方向下方に反発させ、重力mgと反発力との和を支持力f2で支える方法が考えられる。しかしながら、当該方法では、支持力f2は、回転子1の重力mgを超える力となる。このため、支持部材3で発生する摩擦熱の増加、支持部材3の摩耗の増加、支持部材3の寿命の低下、トルクの損失の増加が起こる問題がある。この点、本実施の形態では、固定子2と回転子1との間で発生する復元力f1により、支持力f2が回転子1の重力mgよりも小さくなるため、上記した問題の発生を抑制することができる。
【0041】
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
【0042】
本実施の形態では、
図1に示すように、回転子1が固定子2の内周に配置されるインナーロータ型の回転機100であるが、回転子1が固定子2の外周に配置されるアウターロータ型の回転機100であってもよい。
【0043】
本実施の形態では、
図1に示すように、回転子1の回転軸AX(Z軸)は、鉛直方向に平行であるが、回転機100全体を鉛直方向に対して傾かせて、回転子1の回転軸AXと鉛直方向とに角度差があってもよい。すなわち、回転子1の回転軸AXが鉛直方向に対して傾斜してもよい。
【0044】
本実施の形態では、
図3に示すように、回転子1に働く重力mgを想定して、回転子1に働く重力mgのうち一部を支持部材3で支持する場合を例示したが、重力mg以外の力のうち一部を支持部材3で支持することもできる。例えば、ファン、ポンプなどの負荷を回転子1に取り付けることがある。このとき、ファン、ポンプなどの負荷で流体を送り出す際の反作用の力が、回転子1に働く。これにより、固定子2に対する回転子1の軸方向変位zが発生する。このため、回転子1に働く反作用の力のうち一部を支持部材3で支持するようにしてもよい。また、重力mgと反作用の力とが回転子1に働く場合には、回転子1に働く重力mgおよび反作用の力のうち一部を支持部材3で支持するようにしてもよい。なお、回転子1の軸方向が水平方向に平行であっても、反作用の力は発生する。つまり、回転子1の回転軸AXが水平方向に平行であっても、固定子2に対する回転子1の軸方向変位zが発生する場合があるため、回転子1の回転軸AXは水平方向に平行であってもよい。また、軸方向における固定子2の位置を基準位置としたときに、支持部材3は、軸方向のうち回転子1に働く重力mgの方向または回転中の回転子1に働く反作用の力が発生する方向に回転子1が基準位置から変位した位置で回転子1を支持していればよい。このようにすると、支持部材3で発生する支持力f2は、回転子1が基準位置から軸方向に変位しない位置で支持される場合と比較して、固定子2と回転子1との間で発生する軸方向の復元力f1の負担によって、低下する。
【0045】
本実施の形態では、
図1に示すように、回転子1が永久磁石1bを有し、固定子2が鉄心である固定子鉄心2aを有する場合を例示したが、回転子1が鉄心を有し、固定子2が永久磁石を有していてもよい。すなわち、磁気回路上に永久磁石を配置することにより、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力によって回転子1の軸方向および傾き方向への変位を復元する場合には、回転子1および固定子2のうち少なくとも一方は、鉄心を有し、回転子1および固定子2のうち少なくとも他方は、永久磁石を有していればよい。
【0046】
本実施の形態では、回転子1に永久磁石1bを設けた回転機100であるが、回転子1に永久磁石1bを設けない回転機100であってもよい。例えば、回転子鉄心1aに突極またはスリットを形成することにより、磁束の通りにくさであるリラクタンスが回転子1の回転角度によって変化するシンクロナスリラクタンスモータとなるように回転機100を変更してもよい。
【0047】
本実施の形態では、
図1に示すように、回転子1の形状が中空であるが、中実であってもよい。なお、回転子1の形状が中空である場合には、当該の中空のスペースを、例えば、配線を通す経路として利用してもよいし、流体の流路としてもよい。また、回転子1の形状が中空であることにより、回転機100全体の軽量化を図ることができる。また、回転子1の形状が中空であることにより、回転子1が発熱した際に中空のスペースに放熱して、回転子1の冷却効果を高めることもできる。
【0048】
本実施の形態では、
図2に示すように、半径方向(XY軸方向)の支持力の増減に寄与する変動電流iを巻線2bに流すことに加えて、磁気回路上に永久磁石1bを配置することにより、回転子1に働く半径方向(XY軸方向)の支持力を発生させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、
図4に示すように、半径方向(XY軸方向)の支持力の増減に寄与する変動電流iを巻線2bに流すことに加えて、各巻線2bにバイアス電流Iを流すことにより、回転子1に働く半径方向(XY軸方向)の支持力を発生させてもよい。
図4は、実施の形態1の第1の変形例にかかる回転機100Aの構成を示した断面図である。
【0049】
図4に示される回転子1は、回転子鉄心1aのみを有しており、永久磁石1bを有していない。回転子1には、リラクタンスの差がない。固定子鉄心2aと巻線2bとは、電磁石を構成している。ここでは、X軸方向の支持力を発生させる場合について説明する。X軸方向のプラス向きに位置するティース2cには、巻線2b1が巻かれている。X軸方向のマイナス向きに位置するティース2cには、巻線2b2が巻かれている。巻線2b1には、バイアス電流Iと変動電流iとの和であるI+i(A:Ampere)の電流を流し、巻線2b2には、バイアス電流Iと変動電流iとの差であるI-i(A:Ampere)の電流を流す。このとき、ギャップ部4において磁束7aの密度を増減させることができる。
【0050】
また、電流と磁束7aの密度とは比例すること、および、力は磁束7aの密度の2乗に比例することを考慮すれば、定数をkとすると、回転子1のうちX軸方向のプラス向きに位置するギャップ部4に臨む面に働く力は、k(I+i)2となり、回転子1のうちX軸方向のマイナス向きに位置するギャップ部4に臨む面に働く力は、k(I-i)2となる。この両者の力の差は、4×k×I×iとなる。したがって、回転子1は、X軸方向のプラス向きに4×k×I×iの力を受ける。つまり、各巻線2b1,2b2にバイアス電流Iを流した上で、各巻線2b1,2b2に流す変動電流iを調整すると、変動電流iの大きさに比例するX軸方向の支持力を発生させることができる。Y軸方向にも支持力を発生させたい場合は、X軸方向の支持力を発生させる場合と同じように、別の巻線2bに流す変動電流iを調整すればよい。これにより、回転機100Aは、半径方向(XY軸方向)の支持力を発生させる磁気軸受として機能する。
【0051】
本変形例では、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力によって回転子1の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、回転子鉄心1aと磁力発生部材である電磁石とが配置される。この構成により、本変形例においても、実施の形態1と同じように、回転子1の軸方向および傾き方向の3自由度については、回転子1の位置を検出して電流の値を制御しなくても、軸方向および傾き方向に変位した回転子1が軸方向および傾き方向の磁気的な中心に戻ろうとする復元力および復元トルクが発生するため、受動的に安定な構造にすることができる。また、本変形例においても、実施の形態1と同じように、支持部材3によって軸方向および傾き方向への回転子1の振動を抑制することができる。なお、回転子1および固定子2のうち少なくとも一方は、鉄心を有し、回転子1および固定子2のうち少なくとも他方は、磁力発生部材を有していればよい。また、回転子1は、磁力発生部材として、永久磁石1bと電磁石との両方を有していてもよい。当該構成の場合、電磁石は、例えば、回転子鉄心1aと、回転子鉄心1aに巻回される巻線とで構成される。
【0052】
図5に示すように、回転機100Bは、軸方向における支持部材3の位置を調整可能な調整部材5を備えていてもよい。
図5は、実施の形態1の第2の変形例にかかる回転機100Bの構成を示した断面図である。
図5には、フレーム6が図示されている。フレーム6の形状は、軸方向の両端部が開口する筒形状である。フレーム6は、周壁部6aと、軸端壁6bとを有している。周壁部6aは、周方向に延びる筒形状の部分である。周壁部6aの軸方向の一端部は、開口している。周壁部6aの軸方向の他端部は、軸端壁6bにより閉塞されている。軸端壁6bには、図示しないシャフトが挿入される孔6cが形成されている。
【0053】
固定子2は、フレーム6の周壁部6aの内周面に嵌め込まれて固定されている。支持部材3は、調整部材5を介して、フレーム6の軸端壁6bに固定されている。調整部材5は、例えば、ネジである。調整部材5は、フレーム6の軸端壁6bの外面から内面に亘って軸端壁6bを軸方向に貫通している。調整部材5の先端部は、支持部材3に差し込まれている。調整部材5であるネジを回転させることにより、軸方向における支持部材3の位置が変更される。
【0054】
本変形例では、調整部材5であるネジを回転させることにより、軸方向における支持部材3の位置を調整することができる。このため、支持部材3が回転子1を支持する位置、すなわち回転子1の軸方向変位zを調整することができる。これにより、復元力f1と支持力f2との比を容易に変更することができる。例えば、支持力f2の値を、軸方向および傾き方向への回転子1の振動を引き起こしにくい範囲であって、かつ、最も小さい値に変更することができる。また、本変形例では、ファン、ポンプなどの負荷を回転子1に取り付けて回転子1全体の重力mgが変化する場合、または、ファン、ポンプなどの負荷から流体を送り出す際に回転子1に反作用の力が働く場合でも、回転機100B全体を分解または交換することなく、復元力f1と支持力f2との比を迅速かつ容易に変更することができる。このため、回転子1全体の重力mgの変化または回転子1に働く反作用の力による回転子1の振動の発生を抑制して、回転子1を回転させることができる。なお、調整部材5を省略してもよい。
【0055】
実施の形態2.
次に、
図6を参照して、実施の形態2にかかる回転機100Cについて説明する。
図6は、実施の形態2にかかる回転機100Cの構成を示した斜視図である。本実施の形態では、回転機100Cが複数の支持部材3を備えている点が、上記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態2では、上記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図6では、理解の容易化のために、回転機100Cを軸方向の片方から見た状態を図示している。
【0056】
回転機100Cは、3つの支持部材3を備えている。各支持部材3の形状は、本実施の形態では円柱状であるが、回転子1を支持可能であれば特に制限されない。以下、3つの支持部材3を区別する場合には、支持部材3A、支持部材3B、支持部材3Cと称する。3つの支持部材3A,3B,3Cは、周方向に互いに離れて配置されている。3つの支持部材3A,3B,3Cは、周方向に等角度で配置されている。3つの支持部材3A,3B,3Cは、周方向に120度間隔で配置されている。3つの支持部材3A,3B,3Cのそれぞれは、回転子1を支持している。換言すると、回転子1は、周方向に互いに離れた3つの支持部材3A,3B,3Cにより支持されている。
【0057】
次に、本実施の形態にかかる回転機100Cの効果について説明する。
【0058】
本実施の形態では、回転子1は、周方向に互いに離れた3つの支持部材3A,3B,3Cにより支持されている。この構成により、本実施の形態では、3つの支持部材3A,3B,3Cのそれぞれで、回転子1が支持部材3A,3B,3Cのそれぞれにより軸方向および傾き方向に支持される力である支持力f21,f22,f23が発生する。このため、軸方向への回転子1の更なる変位および傾き方向への回転子1の変位が抑制される。これにより、軸方向および傾き方向への回転子1の振動を抑制することができる。なお、支持力f21,f22,f23の作用点は、周方向に等角度で位置することが好ましく、本実施の形態では周方向に120度間隔で位置する。このようにすると、軸方向への回転子1の更なる変位および傾き方向への回転子1の変位をより一層抑制することができる。
【0059】
本実施の形態では、実施の形態1と同じように、回転子1は固定子2に対して鉛直方向下方に変位しており、回転子1は固定子2に対して鉛直方向下方に沈み込んだ位置で支持部材3に支持されている。このため、回転子1に働く重力mgを支持する力は、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力である復元力f1と、回転子1が各支持部材3A,3B,3Cのそれぞれにより軸方向に支持される力である支持力f21,f22,f23を足した支持力f2との和になる。支持力f21,f22,f23は、重力mgのうち復元力f1で支持しきれなかった残りの成分と等しいため、下記式(3)が成り立つ。
f21+f22+f23=mg-f1・・・(3)
【0060】
したがって、上記式(3)より、固定子2に対する回転子1の軸方向変位zを負の値にして、その絶対値をより大きくするほど、復元力f1を増加させることができるため、支持力f2を減少させることができる。これにより、上記段落0036に記載した支持力f2を減少させた場合の効果と同じ効果を奏することができる。
【0061】
本実施の形態では、回転子1は、周方向に互いに離れた3つの支持部材3A,3B,3Cにより支持されている。この構成により、1つの支持部材3を用いる場合と比較して、各支持部材3A,3B,3Cの小型化および軽量化を図ることができる。また、3つの支持部材3A,3B,3Cのうちの一部に不具合が発生したときに、不具合が発生したものだけを交換すればよいため、交換にかかる費用を削減することができる。
【0062】
次に、実施の形態2の変形例について説明する。
【0063】
本実施の形態では、支持部材3の数が3つであるが、4つ以上でもよい。すなわち、本実施の形態の回転子1は、周方向に互いに離れた3つ以上の支持部材3により支持されていればよい。軸方向における支持部材3の位置にばらつきがあると、例えば、4つ以上の支持部材3のうち3つが回転子1を支持し、残りの支持部材3が回転子1を支持しない現象が起こることがある。仮に、回転子1を支持している支持部材3のうちいずれかが摩耗または欠損により支持機能を失ったとしても、支持部材3の数が4つ以上あれば、回転子1を支持していなかった支持部材3を含む3つ以上の支持部材3が新たに回転子1を支持するようになる。これにより、支持部材3の冗長性を確保して、回転機100Cの信頼性を高めることができる。
【0064】
3つの支持部材3A,3B,3Cのそれぞれは、実施の形態1と同じように、回転子1との摩擦力を低下させる低摩擦部を備えていてもよい。このようにすると、回転子1と支持部材3との間に発生する摩擦力を減少させて、上記段落0036に記載した支持力f2を減少させた場合の効果と同じ効果を奏することができる。
【0065】
実施の形態3.
次に、
図7を参照して、実施の形態3にかかる回転機100Dについて説明する。
図7は、実施の形態3にかかる回転機100Dの構成を示した断面図である。本実施の形態では、支持部材3が回転子1を支持する静圧軸受として機能する点が、上記した実施の形態1,2と相違する。なお、実施の形態3では、上記した実施の形態1,2と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
支持部材3は、単一の部材である。支持部材3の内部には、流体が流れる流路3bが形成されている。
図7の符号8は、流体の流れを模式的に示している。流体は、気体でもよいし、液体でもよい。気体としては、例えば、空気が挙げられる。液体としては、例えば、水、油が挙げられる。支持部材3の形状は、例えば、中空の円板状であるが、流体を回転子1に向かって流出可能であれば特に制限されない。支持部材3の外周面3cには、流路3bに流体を流入させるための流入口3fが形成されている。支持部材3のうち回転子1の方を向く面3dには、流路3bから回転子1に向かって流体を流出させるための流出口3gが形成されている。流出口3gの形状は、周方向に延びる円周状である。流出口3gから回転子1に向かって流出する流体は、回転子1を軸方向および傾き方向に支持している。流出口3gから回転子1に向かって流出する流体は、回転子1を円周状に支持している。換言すると、流出口3gから回転子1に向かって流出する流体は、回転子1の全周に亘って回転子1を支持している。本実施の形態では、支持部材3が回転子1を支持する静圧軸受として機能する。
【0067】
次に、本実施の形態にかかる回転機100Dの効果について説明する。
【0068】
本実施の形態では、支持部材3の内部には、流体が流れる流路3bが形成され、支持部材3のうち回転子1の方を向く面3dには、流路3bから回転子1に向かって流体を流出させるための流出口3gが形成されている。この構成により、軸方向への回転子1の更なる変位および傾き方向への回転子1の変位が抑制される。これにより、軸方向および傾き方向への回転子1の振動を抑制することができる。また、上記構成により、支持部材3が回転子1を支持する静圧軸受として機能するため、回転子1と支持部材3との間に発生する摩擦力をより一層減少させることができる。
【0069】
本実施の形態では、回転子1は固定子2に対して鉛直方向下方に変位しており、回転子1は固定子2に対して鉛直方向下方に沈み込んだ位置で支持部材3に支持されている。この構成により、回転子1の軸方向変位zによって復元力f1を発生させて、支持力f2を減少させることができる。このため、流出口3gから回転子1に向かって流出する流体の流量および圧力を減少させることができる。したがって、流入口3fから支持部材3の流路3bに流入させる流体を用意するための入力エネルギーを低減させることができるとともに、回転子1と支持部材3とが物理的に接触することにより発生するトルクの損失を低減させることができる。
【0070】
次に、実施の形態3の変形例について説明する。
【0071】
図8に示すように、回転機100Eは、複数の支持部材3を備えていてもよい。
図8は、実施の形態3の変形例にかかる回転機100Eの構成を示した断面図である。
図8には、2つの支持部材3が図示されているが、実際には、回転機100Eは3つの支持部材3を備えている。
図8には、回転子1が2つの支持部材3A,3Bのそれぞれにより軸方向および傾き方向に支持される力である支持力f21,f22が図示されているが、実際には、回転子1が図示しない残り1つの支持部材3により軸方向および傾き方向に支持される図示しない支持力f23も発生する。3つの支持部材3は、周方向に互いに離れて配置されている。3つの支持部材3は、周方向に等角度で配置されている。3つの支持部材3は、周方向に120度間隔で配置されている。
【0072】
3つの支持部材3のそれぞれの内部には、流体が流れる流路3bが形成されている。各支持部材3の形状は、例えば、中空の円柱状であるが、流体を回転子1に向かって流出可能であれば特に制限されない。各支持部材3のうち回転子1とは反対側を向く面3eには、流路3bに流体を流入させるための流入口3fが形成されている。各支持部材3のうち回転子1の方を向く面3dには、流路3bから回転子1に向かって流体を流出させるための流出口3gが形成されている。3つの支持部材3のそれぞれの流出口3gから回転子1に向かって流出する流体は、回転子1を軸方向および傾き方向に支持している。3つの支持部材3のそれぞれの流出口3gから回転子1に向かって流出する流体は、回転子1を点状に支持している。換言すると、回転子1は、周方向に互いに離れた3つの支持部材3のそれぞれの流出口3gから流出する流体により支持されている。本変形例でも、各支持部材3が回転子1を支持する静圧軸受として機能する。
【0073】
本変形例でも、実施の形態3と同じ効果を奏することができる。本変形例では、支持部材3の数が3つであるが、4つ以上でもよい。すなわち、本変形例の回転子1は、周方向に互いに離れた3つ以上の支持部材3のそれぞれの流出口3gから流出する流体により支持されていればよい。
【0074】
実施の形態4.
次に、
図9を参照して、実施の形態4にかかる回転機100Fについて説明する。
図9は、実施の形態4にかかる回転機100Fの支持部材3の構成を示した斜視図である。本実施の形態では、支持部材3が回転子1を支持する動圧軸受として機能する点が、上記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態4では、上記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
支持部材3のうち図示しない回転子1の方を向く面3dには、回転子1の方に向かって開口する複数の溝3hが形成されている。複数の溝3hは、周方向に互いに離れて配置されている。複数の溝3hは、周方向に等角度で配置されている。溝3hの数は、本実施の形態では5つであるが、特に制限されない。溝3hは、軸方向において回転子1が存在する側とは反対側に向かって窪んでいる。周方向に隣り合う溝3h同士の間には、平坦部3iが形成されている。平坦部3iは、軸方向と直交する平坦状の部分である。平坦部3iは、軸方向において溝3hよりも回転子1に近い位置に配置されている。溝3hと平坦部3iとは、周方向に交互に配置されている。
【0076】
溝3hは、第1の溝面3h1と、第2の溝面3h2と、第3の溝面3h3とを有している。第1の溝面3h1は、軸方向に延びる面である。第1の溝面3h1は、溝3hに隣接する2つの平坦部3iのうち一方に連続している。第1の溝面3h1は、一方の平坦部3iから離れるように軸方向に延びている。第2の溝面3h2は、周方向に延びる面である。第2の溝面3h2は、第1の溝面3h1のうち一方の平坦部3iに連続する端部とは反対側の端部から周方向に延びている。第3の溝面3h3は、第2の溝面3h2から離れるように周方向に延びるにつれて回転子1の方に近付くように傾斜する傾斜面である。第3の溝面3h3は、軸方向に対して傾斜している。第3の溝面3h3は、第2の溝面3h2のうち第1の溝面3h1に連続する端部とは反対側の端部から周方向に延びている。第3の溝面3h3のうち第2の溝面3h2に連続する端部とは反対側の端部は、溝3hに隣接する2つの平坦部3iのうち他方に連続している。
【0077】
次に、本実施の形態にかかる回転機100Fの効果について説明する。
【0078】
本実施の形態では、支持部材3のうち回転子1の方を向く面3dには、回転子1の方に向かって開口する溝3hが形成されている。この構成により、回転子1が回転すると、溝3hにより流体の通り道がなくなり、流体が支持部材3から回転子1に向かって流れる。このため、支持部材3から回転子1に向かって流れる流体の圧力が発生する。これにより、回転子1は、支持部材3と物理的に接触することなく、回転することができる。したがって、回転子1と支持部材3との間に発生する摩擦熱をより一層低減させることができるとともに、回転子1と支持部材3とが物理的に接触することにより発生するトルクの損失を低減させることができる。なお、
図9に示すように、溝3hは、軸方向に対して傾斜する傾斜面である第3の溝面3h3を有していることが好ましい。このようにすると、回転子1の回転時に、三次元的な溝3hの傾斜により流体の通り道がなくなり、流体が支持部材3から回転子1に向かって流れやすくなる。
【0079】
回転子1と支持部材3とが物理的に非接触になる現象は、回転子1が回転することで発生する。このため、回転子1の静止時には支持部材3が回転子1を支持する動圧軸受として機能しないが、回転子1の回転時に回転子1の回転数がある閾値を超えると、支持部材3が回転子1を支持する動圧軸受として機能する。
【0080】
本実施の形態では、回転子1に働く重力mgのうち一部を復元力f1によって支持するため、回転子1の重力mgのうち残部を支持部材3から回転子1に向かって流れる流体の圧力によって支持すればよい。これにより、支持力f2を減少させることができる。したがって、回転子1と支持部材3とが物理的に非接触になる回転子1の回転数の閾値を低く設定することができ、回転機100Fの広い運転領域で支持部材3が回転子1を支持する動圧軸受として機能する。
【0081】
本実施の形態では、三次元的な溝3hの傾斜を減らして、支持部材3から回転子1に向かって流れる流体の圧力を減少させるように設計することもできる。これにより、流体の入力エネルギーを低減させることができるため、回転機100F全体の運転効率を向上させることができる。
【0082】
次に、実施の形態4の変形例について説明する。
【0083】
図10に示すように、回転子1の方に溝1eを形成してもよい。
図10は、実施の形態4の変形例にかかる回転機100Gの回転子1の構成を示した図であって、回転子1を軸方向に沿って見たときの図である。
図10では、理解の容易化のために、溝1eにドットハッチングを付している。回転子1のうち図示しない支持部材3の方を向く面1dには、支持部材3の方に向かって開口する複数の溝1eが形成されている。複数の溝1eは、周方向に互いに離れて配置されている。複数の溝1eは、周方向に等角度で配置されている。溝1eの数は、本実施の形態では9つであるが、特に制限されない。溝1eは、軸方向において支持部材3が存在する側とは反対側に向かって窪んでいる。周方向に隣り合う溝1e同士の間には、平坦部1fが形成されている。平坦部1fは、軸方向と直交する平坦状の部分である。平坦部1fは、軸方向において溝1eよりも支持部材3に近い位置に配置されている。溝1eと平坦部1fとは、周方向に交互に配置されている。
【0084】
各溝1eは、半径方向に延びていて、回転子1の外周面から内周面に亘って形成されている。各溝1eは、半径方向の外側から内側に向かうにつれて周方向の一方に位置するように曲がりながら延びている。各溝1eの延伸方向を、回転子1の回転軸AXを法線とする平面に投影すると、各溝1eの延伸方向は、回転子1の回転軸AXとずれた位置に配置される。各溝1eのうち回転子1の外周面に開口する開口部1gは、周方向に等角度で離れて配置されている。各溝1eのうち回転子1の内周面に開口する開口部1hは、周方向に等角度で離れて配置されている。各溝1eにおける開口部1gと開口部1hとは、周方向に互いにずれている。各溝1eの溝幅Dは、半径方向の外側から内側に向かうにつれて狭くなっている。換言すると、各溝1eの溝幅Dは、半径方向の外側ほど広く、半径方向の内側ほど狭い。
【0085】
本変形例では、回転子1が回転すると、流体が半径方向の外側から溝1eに流入し、溝1e内を半径方向の内側に向かって流れるにつれて行き場がなくなり、流体が回転子1から支持部材3に向かって流れる。このため、回転子1から支持部材3に向かって流れる流体の圧力が発生し、回転子1は軸方向において支持部材3から離れるように反発する。これにより、回転子1は、支持部材3と物理的に接触することなく、回転することができる。したがって、回転子1と支持部材3との間に発生する摩擦熱をより一層低減させることができるとともに、支持部材3が回転子1を物理的に接触することにより発生するトルクの損失を低減させることができる。
【0086】
回転子1と支持部材3とが物理的に非接触になる現象は、回転子1が回転することで発生する。このため、回転子1の静止時には支持部材3が回転子1を支持する動圧軸受として機能しないが、回転子1の回転時に回転子1の回転数がある閾値を超えると、支持部材3が回転子1を支持する動圧軸受として機能する。なお、
図9に示される支持部材3のうち回転子1の方を向く面3dに
図10に示される溝1eと同じ形状の溝3hが形成されてもよいし、
図10に示される回転子1のうち支持部材3の方を向く面1dに
図9に示される溝3hと同じ形状の溝1eが形成されてもよい。また、支持部材3のうち回転子1の方を向く面3dおよび回転子1のうち支持部材3の方を向く面1dのいずれか一方に、他方に向かって開口する溝3h,1eが形成されていればよい。
【0087】
実施の形態5.
次に、
図11および
図12を参照して、実施の形態5にかかる回転機100Hについて説明する。
図11は、実施の形態5にかかる回転機100Hの固定子鉄心2aの一部の構成を示した斜視図である。
図12は、実施の形態5にかかる回転機100Hの構成を示した断面図であって、回転子1に働く軸方向の力を説明するための図である。本実施の形態では、パーミアンスが軸方向の一方から他方へ向かって一方向に小さくなる点が、上記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態5では、上記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
図11および
図12に示すように、各ティース2cは、バックヨーク部2dから半径方向の内側に突出する複数のティース本体部2eと、各ティース本体部2eの先端から周方向の両方に突出した複数のティース先端部2fとを有している。ティース先端部2fの形状は、ティース本体部2eの周方向の幅よりも広い鍔状である。これにより、
図12に示される固定子2と回転子1との間で多くの磁束7c,7dを通過させることができる。
図12中の破線は、ティース2cとバックヨーク部2dとの境界を模式的に示している。
【0089】
図11に示すように、各ティース2cにおけるティース本体部2eの数およびティース先端部2fの数は、特に制限されないが、本実施の形態では2つずつである。2つのティース本体部2eは、軸方向に積層されている。2つのティース先端部2fは、軸方向に積層されている。以下、軸方向の一方に配置されるティース本体部2eおよびティース先端部2fのそれぞれを第1のティース本体部2e1および第1のティース先端部2f1と称し、第1のティース本体部2e1および第1のティース先端部2f1を併せて第1のティース部2c1と称する。また、軸方向の他方に配置されるティース本体部2eおよびティース先端部2fのそれぞれを第2のティース本体部2e2および第2のティース先端部2f2と称し、第2のティース本体部2e2および第2のティース先端部2f2を併せて第2のティース部2c2と称する。本実施の形態では、第1のティース部2c1は、第2のティース部2c2に対して鉛直方向上方に配置されている。
【0090】
第1のティース先端部2f1の周方向の幅W1は、第2のティース先端部2f2の周方向の幅W2よりも広い。つまり、第1のティース先端部2f1が存在する軸方向の一方から、第2のティース先端部2f2が存在する軸方向の他方へ向かって一方向にティース先端部2fの周方向の幅が狭くなる。第1のティース部2c1の半径方向の長さL1は、第2のティース部2c2の半径方向の長さL2よりも長い。つまり、第1のティース部2c1が存在する軸方向の一方から、第2のティース部2c2が存在する軸方向の他方へ向かって一方向にティース2cの半径方向の長さが短くなる。これにより、ティース2cには、第1のティース部2c1の半径方向の長さL1と第2のティース部2c2の半径方向の長さL2との差であるティース長差Gが生じる。
【0091】
ここで、パーミアンス(Permeance)について説明する。パーミアンスとは、固定子2と回転子1とを半径方向と円周方向とに沿って周回する磁路における、ギャップ部4と鉄心である固定子鉄心2aとのうち少なくとも一方の、磁束7c,7dの通りやすさを表す量を意味する。一般論として、磁束は、空気よりも鉄の方を通りやすいため、磁路が鉄心であればパーミアンスは大きくなる。また、パーミアンスは、磁路の幅が大きいほど増加し、空気の磁路長が短く鉄心の磁路長が長いほど増加する。本実施の形態では、第1のティース先端部2f1の周方向の幅W1が第2のティース先端部2f2の周方向の幅W2よりも広く、また、第1のティース部2c1の半径方向の長さL1が第2のティース部2c2の半径方向の長さL2よりも長い。このため、パーミアンスは、第1のティース部2c1よりも第2のティース部2c2の方が小さくなる。すなわち、固定子2と回転子1とを半径方向と周方向とに沿って周回する磁路における、ギャップ部4と鉄心である固定子鉄心2aとのうち少なくとも一方の、磁束7c,7dの通りやすさを表す量であるパーミアンスは、軸方向の一方から他方へ向かって一方向に小さくなる。
【0092】
次に、回転子1に働く軸方向の力について説明する。
図12では、重力mgが回転子1に働く場合を示している。
【0093】
図12に示すように、回転子1に働く重力mgを支持する力は、固定子2が回転子1を磁気的に吸引する力である復元力f1と、回転子1が支持部材3により軸方向に支持される力である支持力f2との和になる。ここで、回転子1が重力mgによって固定子2に対して軸方向に変位しているため、回転子1と第2のティース部2c2の先端部の下面との間を斜めに通過する磁束7dが発生する。このため、復元力f1には、磁束7dにより発生する復元力f12が含まれる。また、
図11に示される第1のティース先端部2f1の周方向の幅W1と第2のティース先端部2f2の周方向の幅W2との差およびティース長差Gにより、回転子1と、第1のティース部2c1の先端部の下面のうち第2のティース部2c2から露出する部分との間を斜めに通過する磁束7cも発生する。このため、復元力f1には、磁束7cにより発生する復元力f11も含まれる。結果的には、復元力f1は、固定子2のうち複数の軸方向位置で発生し、復元力f11と復元力f12との和になる。これにより、回転子1の軸方向変位zが実施の形態1と同じであったとしても、実施の形態1と比較して、本実施の形態では復元力f11の分だけ復元力f1が増加し、復元力f1が増加した分だけ支持力f2が減少する。したがって、下記式(4)が成り立つ。
f2=mg-f11-f12・・・(4)
【0094】
次に、本実施の形態にかかる回転機100Hの効果について説明する。
【0095】
本実施の形態では、固定子2と回転子1とを半径方向と周方向とに沿って周回する磁路における、ギャップ部4と鉄心である固定子鉄心2aとのうち少なくとも一方の、磁束7c,7dの通りやすさを表す量であるパーミアンスは、軸方向の一方から他方へ向かって一方向に小さくなる。この構成により、軸方向の他方から一方へ向かって一方向に復元力f1を増加させることができる。このため、回転子1と支持部材3との間に発生する摩擦熱をより一層低減させることができるとともに、支持部材3が回転子1を物理的に接触することにより発生するトルクの損失を低減させることができる。これにより、支持部材3の寿命をより一層延ばすことができるとともに、回転機100H全体の運転効率をより一層向上させることができる。
【0096】
本実施の形態において、復元力f11が発生したということは、支持力f2を一定としたとき、回転子1の軸方向変位zを0に近づけることができるということを意味する。回転子1の軸方向変位zが0に近づくほど、回転子1と固定子2とが半径方向に向かい合う領域が増加し、半径方向(XY軸方向)の支持力およびトルクが増加する。これにより、同一の半径方向(XY軸方向)の支持力および同一のトルクを発生させるために必要な電流を小さくして、回転機100H全体の運転効率を向上させることができる。
【0097】
次に、実施の形態5の変形例について説明する。
【0098】
本実施の形態では、第1のティース部2c1と第2のティース部2c2とにおいて周方向の幅および半径方向の長さの両方を変えた場合を例示したが、いずれか一方のみを変えてもよい。また、本実施の形態では、第1のティース部2c1と第2のティース部2c2との2つのティース部で周方向の幅および半径方向の長さを変えた場合を例示したが、3つ以上のティース部で周方向の幅および半径方向の長さのいずれか一方を変えてもよい。
【0099】
本実施の形態の支持部材3は、上記した実施の形態3のように回転子1を支持する静圧軸受として機能する構成に変更されてもよいし、上記した実施の形態4のように回転子1を支持する動圧軸受として機能する構成に変更されてもよい。本実施の形態では、復元力f1を増加させることにより、支持部材3が静圧軸受または動圧軸受として機能するときに必要な流体の圧力をより一層低下させることができる。
【0100】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 回転子、1a 回転子鉄心、1b 永久磁石、1c 貫通孔、1d,3d,3e 面、1e,3h 溝、1f,3i 平坦部、1g,1h 開口部、2 固定子、2a 固定子鉄心、2b,2b1,2b2 巻線、2c ティース、2c1 第1のティース部、2c2 第2のティース部、2d バックヨーク部、2e ティース本体部、2e1 第1のティース本体部、2e2 第2のティース本体部、2f ティース先端部、2f1 第1のティース先端部、2f2 第2のティース先端部、3,3A,3B,3C 支持部材、3a 支持面、3b 流路、3c 外周面、3f 流入口、3g 流出口、3h1 第1の溝面、3h2 第2の溝面、3h3 第3の溝面、4 ギャップ部、5 調整部材、6 フレーム、6a 周壁部、6b 軸端壁、6c 孔、7a,7b,7c,7d 磁束、8 流体の流れ、100,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H 回転機、AX 回転軸。
【要約】
回転機(100)は、回転軸(AX)を中心に回転する回転子(1)と、回転子(1)の外周または内周に回転子(1)とギャップ部(4)を隔てて配置される固定子(2)と、少なくとも回転子(1)のうち回転軸(AX)に沿った軸方向の片方に配置されて、軸方向および傾き方向への回転子(1)の変位を制限するように回転子(1)を支持する支持部材(3)と、を備えている。回転子(1)および固定子(2)のうち少なくとも一方は、鉄心を有している。回転子(1)および固定子(2)のうち少なくとも他方は、磁力発生部材を有している。固定子(2)が回転子(1)を磁気的に吸引する力によって回転子(1)の軸方向および傾き方向への変位を復元するように、鉄心と磁力発生部材とが配置されている。回転子(1)は、固定子(2)に対して軸方向に変位した位置で、支持部材(3)に支持されている。