(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電波伝搬特性算出装置および電波伝搬特性算出方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/391 20150101AFI20241129BHJP
【FI】
H04B17/391
(21)【出願番号】P 2024556045
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2023003300
【審査請求日】2024-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 健矢
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-296572(JP,A)
【文献】特開2010-166185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信点から送信される電波が、前記第1の送信点を含む評価エリア内に存在する第1の評価点で受信される受信電力の第1の推定値と、前記評価エリア内に存在する第1の基準点で受信される受信電力の第2の推定値とを、予め定められた伝搬推定式を用いて算出する伝搬推定部と、
前記第1の評価点を含む第1の特徴量算出エリアに関する第1の特徴量、および前記第1の基準点を含む第2の特徴量算出エリアに関する第2の特徴量、並びに前記評価エリアと異なり且つ第2の送信点を含むエリアである測定エリア内に存する第1の測定点を含む第3の特徴量算出エリアに関する第3の特徴量、および前記測定エリア内に存する第2の測定点を含む第4の特徴量算出エリアに関する第4の特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記第1の推定値と前記第2の推定値との相対値を算出し、前記第1から第4の特徴量と、その算出された相対値とに基づいて、前記第1の推定値を実測補正して、前記第1の推定値の補正値を算出する実測補正部と、
を備える電波伝搬特性算出装置。
【請求項2】
前記特徴量算出部は、各特徴量算出エリア内に存する地物の高さおよび位置関係について畳み込み演算を行うことにより各特徴量を算出する、請求項1に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項3】
前記予め定められた伝搬推定式は奥村-泰式による数式またはITU-R P.1546モデルによる数式を含む、請求項1に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項4】
前記予め定められた伝搬推定式はレイトレース法による数式を含む、請求項1に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項5】
対象点での受信電力推定値の信頼性を示す信頼度に基づき、複数の対象点から前記第1の基準点を決定する基準点決定部を更に備え、
前記基準点決定部は、前記第1の評価点での信頼度以上の信頼度を有する対象点を前記第1の基準点として決定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項6】
前記第1の送信点と各対象点の間の距離、及び前記第1の送信点と各対象点を結ぶ線分上にある遮蔽物の個数から前記信頼度を算出する信頼度算出部を更に備える、
請求項5に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項7】
前記第1の特徴量算出エリアおよび前記第2の特徴量算出エリアは同一の第5の特徴量算出エリアであり、
前記第3の特徴量算出エリアおよび前記第4の特徴量算出エリアは同一の第6の特徴量算出エリアであり、
前記特徴量算出部は、前記第1の特徴量および前記第2の特徴量に代えて前記第5の特徴量算出エリアに関する第5の特徴量を算出し、前記第3の特徴量および前記第4の特徴量に代えて前記第6の特徴量算出エリアに関する第6の特徴量を算出し、
前記実測補正部は、前記第1から第4の特徴量に代えて前記第5の特徴量および前記第6の特徴量を用いて前記算出を行う、
請求項1から4のいずれか1項に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項8】
前記特徴量算出部は、前記第1の送信点または前記第2の送信点と、各特徴量算出エリア内の関心点とを端点とする線分上に遮蔽物が存在するか否かを示す見通し情報に基づき各特徴量を算出する、
請求項1から4のいずれか1項に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項9】
前記特徴量算出部は畳み込みニューラルネットワークにより各特徴量を算出する、
請求項8に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項10】
前記実測補正部は逆畳み込みニューラルネットワークにより評価点における伝搬特性の推定値を算出する、
請求項9に記載された電波伝搬特性算出装置。
【請求項11】
伝搬推定部、特徴量算出部、および実測補正部を備える電波伝搬特性算出装置が行う電波伝搬特性算出方法であって、
前記伝搬推定部により、第1の送信点から送信される電波が、前記第1の送信点を含む評価エリア内に存在する第1の評価点で受信される受信電力の第1の推定値と、前記評価エリア内に存在する第1の基準点で受信される受信電力の第2の推定値とを、予め定められた伝搬推定式を用いて算出するステップと、
前記特徴量算出部により、前記第1の評価点を含む第1の特徴量算出エリアに関する第1の特徴量、および前記第1の基準点を含む第2の特徴量算出エリアに関する第2の特徴量、並びに前記評価エリアと異なり且つ第2の送信点を含むエリアである測定エリア内に存する第1の測定点を含む第3の特徴量算出エリアに関する第3の特徴量、および前記測定エリア内に存する第2の測定点を含む第4の特徴量算出エリアに関する第4の特徴量を算出するステップと、
前記実測補正部により、前記第1の推定値と前記第2の推定値との相対値を算出し、前記第1から第4の特徴量と、その算出された相対値とに基づいて、前記第1の推定値を実測補正して、前記第1の推定値の補正値を算出するステップと、
を備える電波伝搬特性算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波伝搬特性算出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電波伝搬特性は、電磁界理論に基づく数値解析による推定手法または経験的な数式による推定手法を用いて推定できるが、いずれの推定手法による場合も推定誤差が生じる。推定誤差を軽減するために、測定データを用いて推定値を補正する方法が知られている。測定データを用いて推定値を補正することで、より精度の高い推定値を与えることができる。
【0003】
特許文献1には、電波伝搬特性を推定する評価エリア内の任意の評価点において、送信局のある送信点から送出された電波の受信レベル推定値を、測定点で測定した受信レベル実測値を用いて実測補正するシステムであって、所定の伝搬推定式を用いて前記評価点における受信レベル推定値を算出する伝搬推定部と、前記送信点から送出された電波の、前記評価点における伝搬損失と前記測定点における伝搬損失の関係を示す信頼度に基づいて、前記受信レベル推定値を実測補正する実測補正部と、前記送信点と前記評価点を結ぶ線分と、前記送信点と前記測定点を結ぶ線分とのなす角度に基づき前記信頼度を算出する角度別信頼度算出部と、を備える電波伝搬特性推定システムに関する技術が開示されている。特許文献1の
図1に示されているように、この測定点は、評価点が存在する評価エリア内に存在する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による補正方法によれば、評価点が存在する評価エリア内に測定点が無い場合には、信頼度を計算できないため補正を行うことができないという課題があった。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、評価点が存在する評価エリア内に測定点が無い場合に、評価点の電波伝搬特性を補正できる電波伝搬特性算出技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態による電波伝搬特性算出装置の一側面は、第1の送信点から送信される電波が、前記第1の送信点を含む評価エリア内に存在する第1の評価点で受信される受信電力の第1の推定値と、前記評価エリア内に存在する第1の基準点で受信される受信電力の第2の推定値とを、予め定められた伝搬推定式を用いて算出する伝搬推定部と、前記第1の評価点を含む第1の特徴量算出エリアに関する第1の特徴量、および前記第1の基準点を含む第2の特徴量算出エリアに関する第2の特徴量、並びに前記評価エリアと異なり且つ第2の送信点を含むエリアである測定エリア内に存する第1の測定点を含む第3の特徴量算出エリアに関する第3の特徴量、および前記測定エリア内に存する第2の測定点を含む第4の特徴量算出エリアに関する第4の特徴量を算出する特徴量算出部と、前記第1の推定値と前記第2の推定値との相対値を算出し、前記第1から第4の特徴量と、その算出された相対値とに基づいて、前記第1の推定値を実測補正して、前記第1の推定値の補正値を算出する実測補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の実施形態による電波伝搬特性算出装置によれば、評価点が存在する評価エリア内に測定点が無い場合に、評価点の電波伝搬特性を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この開示の実施の形態1に係る評価エリア10および測定エリア20の説明図である。
【
図2】この開示の実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100の構成例を示すブロック図である。
【
図3A】この開示の実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100のハードウェアの構成例を示す図である。
【
図3B】この開示の実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100のハードウェアの構成例を示す図である。
【
図4】この開示の実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】この開示の実施の形態1による特徴量算出部120の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】この開示の実施の形態1による実測補正部130の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】この開示の実施の形態2による電波伝搬特性算出装置200の構成例を示すブロック図である。
【
図8】この開示の実施の形態2による電波伝搬特性算出装置200の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】この開示の実施の形態2による信頼度算出部210の動作例を示すフローチャートである。
【
図10】この開示の実施の形態2による基準点決定部220の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】この開示の実施の形態3に係る評価エリア10および測定エリア20の説明図である。
【
図12】この開示の実施の形態3による実測補正部130の動作例を示すフローチャート
【
図13】この開示の実施の形態4による電波伝搬特性算出装置400の構成例を示すブロック図である。
【
図14】この開示の実施の形態4による電波伝搬特性算出装置400の動作例を示すフローチャートである。
【
図15】この開示の実施の形態4による特徴量算出部420の動作例を示すフローチャートである。
【
図16】この開示の実施の形態5による電波伝搬特性算出装置500の構成例を示すブロック図である。
【
図17】この開示の実施の形態5による特徴量算出部520の動作例を示すフローチャートである。
【
図18】この開示の実施の形態5による実測補正部530の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本開示における種々の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一または類似の符号を付された構成要素は、同一または類似の構成または機能を有するものであり、そのような構成要素についての重複する説明は省略する。
【0011】
実施の形態1.
<評価エリア10および測定エリア20の説明>
図1を参照して、本実施の形態に係る評価エリアおよび測定エリアについて説明をする。
図1は、評価エリア10および測定エリア20の説明図である。
図1において、10は評価エリア、11は評価エリア内の送信点、12は評価点、13は基準点、20は測定エリア、21は測定エリア内の送信点、22は測定点、30は評価エリア内の電波の遮蔽物、40は測定エリア内の電波の遮蔽物、50は評価エリア内の評価点および基準点をそれぞれ囲む特徴量算出エリア、60は測定エリア内の測定点をそれぞれ囲む特徴量算出エリアを表す。
【0012】
送信点11は、電波を送出する送信局が存在する地点である。評価点12は、送信点11から送出された電波に関する伝搬特性を評価する地点であり、補正の対象となる地点である。基準点13は、送信点11から送出された電波に関する伝搬特性を評価する地点であり、補正の対象ではない地点である。基準点13における伝搬特性は、評価点12における伝搬特性を補正する際の基準である。本開示において、「対象点」の用語が用いられる場合または単に「評価点」と記した場合、「対象点」または「評価点」の用語は評価点12と基準点13を含む。また、本開示において、「関心点」の用語が用いられる場合、「関心点」の用語は、対象点若しくは評価点、または測定点を含む。評価エリア10は、送信点11、評価点12、および基準点13のすべてを囲むように設定された領域である。遮蔽物30は、評価エリア10内に存在し送信点11からの電波を遮蔽する物体である。具体例としては、建物または地形である。特徴量算出エリア50は、評価点12および基準点13をそれぞれ囲むように設定された領域である。すなわち、評価点12を囲むように1つの特徴量算出エリア50が設定され、基準点13を囲むように別の特徴量算出エリア50が設定される。
【0013】
送信点21は、電波を送出する送信局が存在する地点である。測定点22は、送信点21から送出された電波に関する伝搬特性を測定する地点である。
図1では、2つの測定点22が示されている。測定エリア20は、送信点21および測定点22のすべてを囲むように設定された領域である。遮蔽物40は、測定エリア20内に存在し送信点21からの電波を遮蔽する物体である。具体例としては、建物または地形である。特徴量算出エリア60は、各測定点22を囲むように設定された領域である。すなわち、1つの測定点22を囲むように1つの特徴量算出エリア60が設定され、別の測定点22を囲むように別の特徴量算出エリア60が設定される。
【0014】
図1では評価エリア10および測定エリア20が円形で示されているが、円形以外の形状であっても良い。また、
図1ではただ一つの測定エリア20が示されているが、複数の測定エリア20が存在していても良い。また、特徴量算出エリア50および60は方形で示されているが、方形以外の形状であっても良い。また、伝搬特性の具体例には、受信電力、伝搬損失、遅延時間特性、到来角度特性、または周波数特性が含まれる。また、1つの特徴量算出エリア50は複数の評価点12または基準点13を含んでいても良く、1つの特徴量算出エリア60は複数の測定点22を含んでいても良い。
【0015】
<電波伝搬特性算出装置100の構成>
図2を参照して、本実施の形態による電波伝搬特性算出装置100の構成例について説明をする。
図2は、本実施の形態による電波伝搬特性算出装置100の構成例を示すブロック図である。
【0016】
電波伝搬特性算出装置100は、送信点と評価点に関する情報(以下、「送信点および評価点情報」という。)を入力として受け付け、評価点12での受信電力情報を出力する。「送信点」には、送信点11および送信点21が含まれる。「評価点」には、上述のとおり、評価点12および基準点13が含まれる。
【0017】
図2に示されているように、電波伝搬特性算出装置100の一側面は、その構成要素または機能部として、伝搬推定部110と、特徴量算出部120と、実測補正部130と、地物データ記憶部140と、伝搬データ記憶部150とを備える。地物データ記憶部140と伝搬データ記憶部150は、電波伝搬特性算出装置100の外部に設けられていても良い。
【0018】
また、電波伝搬特性算出装置100の一側面は、第1の送信点11から送信される電波が、前記第1の送信点を含む評価エリア10内に存在する第1の評価点12で受信される受信電力の第1の推定値と、前記評価エリア内に存在する第1の基準点13で受信される受信電力の第2の推定値とを、予め定められた伝搬推定式を用いて算出する伝搬推定部110と、前記第1の評価点12を含む第1の特徴量算出エリア50に関する第1の特徴量、および前記第1の基準点13を含む第2の特徴量算出エリア50に関する第2の特徴量、並びに前記評価エリア10と異なり且つ第2の送信点21を含むエリアである測定エリア20内に存する第1の測定点22を含む第3の特徴量算出エリア60に関する第3の特徴量、および前記測定エリア20内に存する第2の測定点22を含む第4の特徴量算出エリア60に関する第4の特徴量を算出する特徴量算出部120と、前記第1の推定値と前記第2の推定値との相対値を算出し、前記第1から第4の特徴量と、その算出された相対値とに基づいて、前記第1の推定値を実測補正して、前記第1の推定値の補正値を算出する実測補正部130と、を備える。
【0019】
以下、電波伝搬特性算出装置100の機能部について、より詳細に説明をする。地物データ記憶部140は、評価エリア10および測定エリア20に含まれる建物および地形に関する情報を予め記憶している。建物および地形に関する情報の具体例には、地図データまたは標高データが含まれる。
【0020】
伝搬データ記憶部150は、測定エリア20内の測定点22の位置情報およびアンテナ利得、並びに伝搬特性に関する測定データまたはシミュレーションデータを予め記憶している。
【0021】
伝搬推定部110は、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報とから、予め定められた伝搬推定式を用いて評価点12および基準点13における伝搬特性を推定する。予め定められた伝搬推定式の具体例には、奥村-泰式若しくはITU-R P.1546モデルなどの経験式、または幾何光学理論などの電磁界解析に基づく決定論モデルが含まれる。評価点12と基準点13に異なる伝搬推定式を適用しても良い。送信点および評価点情報には、送信点および評価点の位置情報およびアンテナ利得を含む。幾何光学理論などの電磁界解析に基づく決定論モデルとは、例えば、レイトレース法である。レイトレース法とは、電波を光線(レイ)と近似的にみなし、電波の送受信点間の複数の伝搬経路のそれぞれを、直接波、反射波または回折波の全部または一部からなる伝搬経路で表し、電波の伝搬特性を推定する手法である。
【0022】
特徴量算出部120は、評価点情報から特徴量算出エリア50を設定し、伝搬データ記憶部150に記憶された測定点22の位置情報から特徴量算出エリア60を設定する。
【0023】
また、特徴量算出部120は、送信点および評価点情報、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報、並びに伝搬データ記憶部150に記憶された測定点に関する情報から、特徴量算出エリア50および60のそれぞれに関する特徴量を算出する。特徴量算出方法の具体例としては、特徴量算出エリア内の建物および地形の高さおよび位置関係に関する畳み込み演算である。
【0024】
実測補正部130は、伝搬推定部110から出力される評価点12および基準点13における伝搬特性の推定値と、伝搬データ記憶部150に記憶された測定点22における伝搬特性の測定値と、特徴量算出部120から出力される特徴量算出エリアの特徴量とから、特徴量算出エリア間の類似度を算出し、算出した類似度を用いて評価点12における伝搬特性の推定値を補正する。類似度の算出方法の具体例としては、特徴量の相関が高い程、類似度が高くなるように設定し、類似度は0以上1以下の値として設定する。補正方法の具体例としては、次の式(1)による。
【0025】
式(1)は伝搬特性の補正式である。式(1)において、PA’は評価点12における伝搬特性の補正後の推定値、PAは評価点12における伝搬特性の補正前の推定値、PBは基準点13における伝搬特性の推定値、PCは評価点12と類似度の高い測定点22(以下、「測定点22a」という。)における伝搬特性の測定値、PDは基準点13と類似度の高い測定点22(以下、「測定点22b」という。)における伝搬特性の測定値、αA,Cは評価点12を囲む特徴量算出エリア50と測定点22aを囲む特徴量算出エリア60の類似度(第1の類似度)、αB,Dは基準点13を囲む特徴量算出エリア50と測定点22bを囲む特徴量算出エリア60の類似度(第2の類似度)である。なお、測定点22aおよび測定点22bにはそれぞれ複数の測定点が含まれていても良く、その場合には、PCと、PDと、αA,Cと、αB,Dは平均値または中央値とする。また、式(1)において、(PA-PB)は、基準点13の推定値を基準とした評価点12の相対的な推定値を、(PC-PD)は、測定点22bの測定値を基準とした測定点22aの相対的な測定値を表す。なお、基準点13が複数存在する場合には、各基準点に対して式(1)に基づきPA’を算出し、算出した複数のPA’の平均値あるいは中央値を評価点12における伝搬特性の補正後の推定値としても良い。
【0026】
次に、
図3Aおよび
図3Bを参照して、電波伝搬特性算出装置100のハードウェアの構成例について説明する。電波伝搬特性算出装置100の機能は、処理回路(processing circuitry)により実現される。処理回路(processing circuitry)は、
図3Aに示されているような専用の処理回路(processing circuit)1000aであっても、
図4Bに示されているようなメモリ1000cに格納されるプログラムを実行するプロセッサ1000bであってもよい。
【0027】
処理回路(processing circuitry)が専用の処理回路1000aである場合、専用の処理回路1000aは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。電波伝搬特性算出装置100の各機能部を別個の複数の処理回路(processing circuits)で実現してもよいし、各機能部をまとめて単一の処理回路(processing circuit)で実現してもよい。
【0028】
処理回路(processing circuitry)がプロセッサ1000bの場合、電波伝搬特性算出装置100の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ1000cに格納される。プロセッサ1000bは、メモリ1000cに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、電波伝搬特性算出装置100の機能部を実現する。ここで、メモリ1000cの例には、RAM(random access memory)、ROM(read-only memory)、フラッシュメモリ、EPROM(erasable programmable read only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリや、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDが含まれる。
【0029】
なお、電波伝搬特性算出装置100の機能部の一部を専用のハードウェアで実現し、残りの一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の機能部を実現することができる。
【0030】
<電波伝搬特性算出装置100の動作>
次に、
図4から
図6を参照して、実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100の動作について説明する。
図4は、電波伝搬特性算出装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0031】
(ステップS11:伝搬特性推定)
ステップS11において、伝搬推定部110は、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された情報とを読み込み、予め定められた伝搬推定式に基づき、評価点における伝搬特性の推定値を算出する。伝搬推定部110は特徴量算出部120を呼び出す。
【0032】
(ステップS12:特徴量算出)
ステップS12において、特徴量算出部120は、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された情報と、伝搬データ記憶部150に記憶された情報とを読み込み、特徴量算出エリア50および60を設定し、各特徴量算出エリアの特徴量を算出する。特徴量算出部120は、実測補正部130を呼び出す。
【0033】
(ステップS13:実測補正)
ステップS13において、実測補正部130は、送信点および評価点情報と、伝搬推定部110によって推定された評価点における伝搬特性の推定値と、特徴量算出部120によって算出された各特徴量算出エリアの特徴量と、伝搬データ記憶部150に記憶された情報とを読み込み、特徴量間の相関から特徴量算出エリア間の類似度を算出し、評価点12と類似度の高い測定点22aと、基準点13と類似度の高い測定点22bを抽出し、評価点12における伝搬特性の推定値を式(1)に基づき補正する。なお、測定点22aおよび測定点22bにはそれぞれ複数の測定点が含まれていても良い。なお、評価点12が複数存在する場合には、S11~S13を各評価点に対してそれぞれ適用する。
【0034】
<特徴量算出部120の動作>
図5を参照して、実施の形態1における特徴量算出部120の動作を説明する。
図5は、特徴量算出部120の動作例を示すフローチャートである。
【0035】
(ステップS121:データ読み込み)
ステップS121において、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された情報と、伝搬データ記憶部150に記憶された情報とを読み込む。
【0036】
(ステップS122:特徴量算出エリア設定)
ステップS122において、各評価点を囲み、所定の辺の長さを持つ正方形または所定の半径を持つ円として特徴量算出エリア50を設定する。同様に、各測定点を囲み、所定の辺の長さを持つ正方形または所定の半径を持つ円として特徴量算出エリア60を設定する。なお、特徴量算出エリア50および60の形状は同じとする。
【0037】
(ステップS123:特徴量算出)
ステップS123において、各特徴量算出エリア50および60を格子状に分割し、各格子内の建物高と標高の和の平均値と、各格子の中心点から送信点までの距離に基づき、各特徴量算出エリア50および60の特徴量をそれぞれ算出する。なお、特徴量算出エリア50および60の分割方法は同じとする。また、特徴量は単一の数値であっても良いし、複数の数値で表現できる行列でも良い。また、特徴量算出方法の具体例としては、畳み込み演算である。また、各格子内の建物高と標高の和の平均値と、各格子の中心点から送信点までの距離に加えて、各格子の中心点から評価点あるいは測定点までの距離を使用しても良い。また、各格子内の建物高と標高の和の最大値や最小値を基に特徴量を算出しても良い。
【0038】
<実測補正部130の動作>
図6を参照して、実施の形態1による実測補正部130の動作について説明する。
図6は、実測補正部130の動作例を示すフローチャートである。
【0039】
(ステップS131:データ読み込み)
ステップS131において、送信点および評価点情報と、伝搬推定部110によって推定された評価点における伝搬特性の推定値と、特徴量算出部120によって算出された特徴量と、伝搬データ記憶部150に記憶された情報とを読み込む。
【0040】
(ステップS132:相関値算出)
算出された特徴量に基づき、特徴量算出エリア50と特徴量算出エリア60の任意の組に対して相関値を算出する。なお、特徴量が単一の数値である場合には、例えば1組の特徴量の差の逆数を相関値とし、特徴量が複数の数値で表現できる行列の場合には、例えば式(2)に基づき相関値を算出する。式(2)において、Cは数列xと数列yの相関値、s
xyは数列xと数列yの共分散、σ
xは数列xの標準偏差、σ
yは数列yの標準偏差である。
【0041】
(ステップS133:類似度算出)
算出した相関値に基づき、特徴量算出エリア50と特徴量算出エリア60の任意の組に対して類似度を算出する。なお、類似度は0以上1以下の値になるように設定する。類似度算出方法の具体例としては、式(3)に示す関数である。式(3)において、xは相関値である。
【0042】
(ステップS134:測定点抽出)
算出した類似度に基づき、評価点12との類似度が所定の閾値より高い測定点22aを抽出する。同様に基準点13との類似度が所定の閾値より高い測定点22bを抽出する。閾値は測定点22aと測定点22bがそれぞれ少なくとも1つ抽出されるように設定する。
【0043】
(ステップS135:実測補正)
測定点22aまたは測定点22bが複数抽出された場合には、それぞれの測定値の平均値あるいは中央値を計算し、評価点12における伝搬特性の推定値を式(1)に基づき補正する。
【0044】
<効果の説明>
実測補正部130は、特徴量算出部120によって各評価点および各測定点に対して独立に算出された特徴量に基づき、評価点と測定点の任意の組(あるいは、特徴量算出エリア50と特徴量算出エリア60の任意の組)に対する類似度を算出することができる。
【0045】
実測補正部130は、算出した類似度に基づき、類似度の高い測定点の測定データを用いて評価点12の伝搬特性の推定値を補正することができる。また、実測補正部130は、伝搬特性の推定値および測定値の相対的な値に基づき評価点12の推定値を補正するため、評価エリア10にある送信点11と測定エリア20にある送信点21の送信電力や平均アンテナ利得が異なる場合にも、その影響を受けずに実測補正ができる。
【0046】
以上のような動作により、実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100は、測定点が評価エリア10内に無く、別の測定エリア20内に有る場合にも評価点12における推定値を補正でき、精度の高い推定値を算出できる。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態1では、基準点13を、補正対象である評価点12とは異なる評価点として決定した場合について示した。実施の形態2では、基準点13が補正対象である評価点12とは異なる評価点であって、且つ基準点13を推定値の信頼度に基づき決定する場合について示す。
【0048】
本実施の形態では、基準点の決定方法が実施の形態1のそれと異なる。本実施の形態では、この異なる点を主に説明し、実施の形態1と同様の側面については説明を省略する。
【0049】
<電波伝搬特性算出装置200の構成>
図7を参照して、電波伝搬特性算出装置200の構成について説明する。
図7は、本実施の形態による電波伝搬特性算出装置200の構成例を示すブロック図である。電波伝搬特性算出装置200は、送信点と評価点に関する情報を入力として受け付け、評価点12での受信電力情報を出力する。電波伝搬特性算出装置200の一側面は、その構成要素または機能部として、伝搬推定部110と、特徴量算出部120と、実測補正部130と、地物データ記憶部140と、伝搬データ記憶部150と、信頼度算出部210と、基準点決定部220とを備える。地物データ記憶部140と伝搬データ記憶部150は、電波伝搬特性算出装置200の外部に設けられていても良い。
【0050】
また、電波伝搬特性算出装置200の一側面は、実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100に対して、第1の送信点と各対象点との間の距離、及び前記第1の送信点と各対象点とを結ぶ線分上にある遮蔽物の個数から信頼度を算出する信頼度算出部210を更に備える
【0051】
また、電波伝搬特性算出装置200の一側面は、実施の形態1による電波伝搬特性算出装置100に対して、対象点での受信電力推定値の信頼性を示す信頼度に基づき、複数の対象点から前記第1の基準点を決定する基準点決定部220を更に備え、前記基準点決定部220は、前記第1の評価点での信頼度以上の信頼度を有する対象点を前記第1の基準点として決定する。
【0052】
以下、電波伝搬特性算出装置200の機能部について、より詳細に説明をする。信頼度算出部210は、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報と、送信点および各評価点を端点とする線分上に存在する遮蔽物30の個数とに基づき、信頼度を算出する。
【0053】
基準点決定部220は、評価点情報と、信頼度算出部210から出力される信頼度を基に、基準点を決定する。
【0054】
<電波伝搬特性算出装置200の動作>
図8を参照して、実施の形態2による電波伝搬特性算出装置200の動作を説明する。
図8は、電波伝搬特性算出装置200の動作例を示すフローチャートである。
【0055】
(ステップS12:特徴量算出)
ステップS12において、特徴量算出部120は、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された情報と、伝搬データ記憶部150に記憶された情報とを読み込み、特徴量算出エリア50および60を設定し、各特徴量算出エリアの特徴量を算出する。特徴量算出部120は、信頼度算出部210を呼び出す。
【0056】
(ステップS21:信頼度算出)
ステップS21において、信頼度算出部210は、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報とを読み込み、送信点から各評価点までの距離と、送信点および各評価点を端点とする線分上に存在する遮蔽物30の個数とに基づき各評価点の信頼度を算出する。なお、距離は3次元的な距離であっても良いし、水平面に射影した2次元的な距離でも良い。信頼度算出部210は、基準点決定部220を呼び出す。
【0057】
(ステップS22:基準点決定)
ステップS22において、基準点決定部220は、評価点情報と、信頼度算出部210から出力される信頼度から、基準点を決定する。基準点決定部220は、実測補正部130を呼び出す。
【0058】
<信頼度算出部210の動作>
図9を参照して、実施の形態2による信頼度算出部210の動作を説明する。
図9は、信頼度算出部210の動作例を示すフローチャートである。
【0059】
(ステップS211:データ読み込み)
送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報とを読み込む。
【0060】
(ステップS212:信頼度算出)
送信点から各評価点までの距離を算出し、送信点および各評価点を端点とする線分上に存在する遮蔽物30の個数を算出し、距離と個数の積の逆数の値を信頼度として決定する。
【0061】
<基準点決定部220の動作>
図10を参照して、実施の形態2による基準点決定部220の動作を説明する。
図10は、基準点決定部220の動作例を示すフローチャートである。
【0062】
(ステップS221:データ読み込み)
評価点情報と、信頼度算出部210によって算出された信頼度を読み込む。
【0063】
(ステップS222:基準点決定)
補正の対象となる評価点12における信頼度以上の信頼度を持つ別の評価点を抽出し、抽出した評価点のうち、評価点12までの距離の逆数と信頼度の積が最も大きな評価点を基準点に決定する。なお、距離は3次元的な距離であっても良いし、水平面に射影した2次元的な距離でも良い。補正の対象となる評価点12よりも信頼度が高い別の評価点が無い場合には、補正の対象となる評価点12を基準点として決定する。
【0064】
<効果の説明>
実施の形態2による追加の効果について説明する。
【0065】
実施の形態2による信頼度算出部210は、送信点と評価点の間の距離が小さい程、また送信点と評価点を端点とする線分上に存在する遮蔽物の個数が少ない程、高い信頼度を算出することができる。特に、遮蔽物の個数が少ない程、電波の伝搬経路が簡単になるため、予め定められた伝搬推定式による推定精度を改善させることができる。
【0066】
実施の形態2による基準点決定部220は、常に評価点12における信頼度以上の信頼度を持つ評価点を基準点13に決定することができる。
【0067】
実施の形態2による実測補正部130は、基準点決定部220によって決定された基準点13を基準とした相対値として、伝搬特性の推定値を補正することができる。
【0068】
以上の動作により、実施の形態2による電波伝搬特性算出装置200は、実施の形態1の電波伝搬特性算出装置100よりも更に精度の高い推定値を算出できる。
【0069】
実施の形態3.
実施の形態1および2では、評価点12と基準点13は異なる特徴量算出エリア50内に存在する場合について示した。実施の形態3では、評価点12と基準点13が同じ特徴量算出エリア内に存在する場合について説明をする。すなわち、本実施の形態の一側面によれば、前記第1の特徴量算出エリアおよび前記第2の特徴量算出エリアは同一の第5の特徴量算出エリアであり、前記第3の特徴量算出エリアおよび前記第4の特徴量算出エリアは同一の第6の特徴量算出エリアであり、前記特徴量算出部は、前記第1の特徴量および前記第2の特徴量に代えて前記第5の特徴量算出エリアに関する第5の特徴量を算出し、前記第3の特徴量および前記第4の特徴量に代えて前記第6の特徴量算出エリアに関する第6の特徴量を算出し、前記実測補正部は、前記第1から第4の特徴量に代えて前記第5の特徴量および前記第6の特徴量を用いて前記算出を行う。
【0070】
本実施の形態では、評価エリア10および測定エリア20の説明図、実測補正部の動作、並びに伝搬特性の補正式が実施の形態1および2の場合と異なる。本実施の形態では、これらの異なる点を主に説明し、実施の形態1および2と同様の側面については説明を省略する。
【0071】
<評価エリア10および測定エリア20の説明>
図11は、本実施の形態に係る評価エリア10および測定エリア20の説明図である。
図11に示されているように、評価点12と基準点13は同じ特徴量算出エリア50内に存在し、複数の測定点22は同じ特徴量算出エリア60に存在する。
【0072】
<実測補正部130の動作>
図12を参照して、実施の形態3による実測補正部130の動作について説明をする。
図12は、実測補正部130の動作例を示すフローチャートである。本実施の形態では、
図6により示される実測補正部130の動作例を示すフローチャートの内、ステップS135(実測補正)の内容が実施の形態1および2の場合と異なる。この異なる点について説明し、同一の側面については説明を省略する。
【0073】
(ステップS335:実測補正)
ステップS335において、実測補正部130は、測定点22aまたは測定点22bが複数抽出された場合には、それぞれの測定値の平均値あるいは中央値を計算し、評価点12における伝搬特性の推定値を次の式(4)に基づき補正する。
【0074】
式(4)は本実施の形態における伝搬特性の補正式である。式(4)において、PA’は評価点12における伝搬特性の補正後の推定値、PAは評価点12における伝搬特性の補正前の推定値、PBは基準点13における伝搬特性の推定値、PCは評価点12と類似度の高い測定点22(すなわち、測定点22a)における伝搬特性の測定値、PDは基準点13と類似度の高い測定点22(すなわち、測定点22b)における伝搬特性の測定値、αA,Cは評価点12および基準点13を囲む特徴量算出エリア50と測定点22aおよび22bを囲む特徴量算出エリア60の類似度である。
【0075】
<効果の説明>
実施の形態3による追加の効果について説明する。
【0076】
実施の形態3による特徴量算出部120は、評価点12と基準点13が同じ特徴量算出エリア内に存在するため、評価点12と基準点13の位置関係を含む特徴量を算出できる。
【0077】
実施の形態3による実測補正部130は、評価点12と基準点13の位置関係を含む特徴量に基づき類似度を算出し、評価点12の伝搬特性の推定値を補正することできる。
【0078】
以上の動作により、実施の形態3による電波伝搬特性算出装置100または電波伝搬特性算出装置200は、実施の形態1の電波伝搬特性算出装置100または実施の形態2の電波伝搬特性算出装置200よりも更に精度の高い推定値を算出できる。
【0079】
実施の形態4.
実施の形態1、2および3では、送信点および評価点情報、地物データ記憶部に記憶された建物および地形に関する情報、並びに伝搬データ記憶部に記憶された測定点に関する情報から、特徴量算出エリア50および60それぞれに関する特徴量を算出する場合について説明した。実施の形態4では、上記情報に加えて、伝搬特性の推定値および見通し情報を基に特徴量を算出する場合について説明する。
【0080】
本実施の形態では、特徴量の算出方法が実施の形態1、2および3の場合と異なる。すなわち、実施の形態4による電波伝搬特性算出装置400によれば、前記特徴量算出部は、前記第1の送信点または前記第2の送信点と、各特徴量算出エリア内の関心点とを端点とする線分上に遮蔽物が存在するか否かを示す見通し情報に基づき各特徴量を算出する。本実施の形態では、この異なる点を主に説明し、実施の形態1、2および3と同様の側面については説明を省略する。
【0081】
<電波伝搬特性算出装置400の構成>
図13は、本実施の形態による電波伝搬特性算出装置400の構成例を示すブロック図である。電波伝搬特性算出装置400は、送信点と評価点に関する情報を入力として受け付け、評価点12での受信電力情報を出力する。電波伝搬特性算出装置400の一側面は、その構成要素または機能部として、伝搬推定部110と、特徴量算出部420と、実測補正部130と、地物データ記憶部140と、伝搬データ記憶部150とを備える。地物データ記憶部140と伝搬データ記憶部150は、電波伝搬特性算出装置100の外部に設けられていても良い。
【0082】
特徴量算出部420は、評価点情報から特徴量算出エリア50を設定し、伝搬データ記憶部150に記憶された測定点22の位置情報から特徴量算出エリア60を設定する。
【0083】
特徴量算出部420は、送信点に関する情報と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報とから、特徴量算出エリア50および特徴量算出エリア60内の見通し情報を算出する。本開示において、見通し情報とは、送信点と関心点とをそれぞれ端点とする線分上に遮蔽物が存在するか否かを示す情報を意味する。
【0084】
特徴量算出部420は、送信点および評価点情報と、伝搬推定部110によって推定された伝搬特性の推定値と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報と、伝搬データ記憶部150に記憶された測定点に関する情報と、見通し情報とから、特徴量算出エリア50および60それぞれに関する特徴量を算出する。特徴量算出方法の具体例としては、特徴量算出エリア内の建物および地形の高さおよび位置関係、伝搬特性の推定値、並びに見通し情報に関する畳み込み演算である。
【0085】
<電波伝搬特性算出装置400の動作>
図14は、本実施の形態による電波伝搬特性算出装置400の動作例を示すフローチャートである。本実施の形態では、
図4における電波伝搬特性算出装置100の動作例を示すフローチャートの内、ステップS12(特徴量算出)の内容が実施の形態1、2および3の場合と異なる。
【0086】
(ステップS42:特徴量算出)
ステップS42において、特徴量算出部120は、送信点および評価点情報と、伝搬推定部110によって推定された伝搬特性の推定値と、地物データ記憶部140に記憶された情報と、伝搬データ記憶部150に記憶された情報とを読み込み、特徴量算出エリア50および60を設定し、各特徴量算出エリア内の見通し情報を算出し、各特徴量算出エリアの特徴量を算出する。特徴量算出部120は、実測補正部130を呼び出す。
【0087】
<特徴量算出部420の動作>
図15は、特徴量算出部420の動作例を示すフローチャートである。
図15を参照して、実施の形態4による特徴量算出部420の動作について説明をする。
【0088】
(ステップS421:データ読み込み)
ステップS421において、送信点および評価点情報と、地物データ記憶部140に記憶された情報と、伝搬データ記憶部150に記憶された情報と、伝搬推定部110によって推定された伝搬特性の推定値とを読み込む。
【0089】
(ステップS122:特徴量算出エリア設定)
ステップS122において、各評価点を囲み、所定の辺の長さを持つ正方形または所定の半径を持つ円として特徴量算出エリア50を設定する。同様に、各測定点を囲み、所定の辺の長さを持つ正方形または所定の半径を持つ円として特徴量算出エリア60を設定する。なお、特徴量算出エリア50および60の形状は同じとする。
【0090】
(ステップS423:見通し算出)
ステップS423において、各特徴量算出エリア50および60を格子状に分割し、各格子の中心点と送信点をそれぞれ端点とする線分上に遮蔽物があるか否かを判定し、遮蔽物が有る場合に見通しが無い、遮蔽物が無い場合に見通しが有ると区別する。区別方法の具体例としては、見通しが無い場合には1を割り当て、見通しが有る場合には0を割り当てる。
【0091】
(ステップS424:特徴量算出)
各格子内の建物高と標高の和の平均値と、各格子の中心点から送信点までの距離と、各格子内の評価点12における伝搬特性の推定値または伝搬データ記憶部に記憶された測定点22における測定値と、各格子内の中心点における見通し情報とに基づき、各特徴量算出エリア50および60の特徴量をそれぞれ算出する。なお、特徴量算出エリア50および60の分割方法は同じとする。また、特徴量は単一の数値であっても良いし、複数の数値で表現できる行列でも良い。また、特徴量算出方法の具体例としては、畳み込み演算である。また、各格子内の建物高と標高の和の平均値と、各格子の中心点から送信点までの距離に加えて、各格子の中心点から評価点あるいは測定点までの距離を使用しても良い。また、各格子内の建物高と標高の和の最大値や最小値を基に特徴量を算出しても良い。
【0092】
<効果の説明>
実施の形態4による追加の効果について説明する。
【0093】
実施の形態4による特徴量算出部420は、特徴量算出エリア内の伝搬損失の推定値または測定値と、見通し情報を含む特徴量を算出できる。
【0094】
特徴量算出エリア50および60内において建物および地形の高さ、または位置関係が類似していても、特徴量算出エリア外の例えば送信点近傍の建物および地形の高さが大きく異なっている場合、特徴量算出エリア内の見通し情報や伝搬損失の推定値または測定値は必ずしも類似しない。逆に言えば、見通し情報や伝搬損失の推定値または測定値を含む特徴量を算出することで、特徴量算出エリア内だけでなく、特徴量算出エリア外の状況も反映させることができる。
【0095】
以上の動作により、実施の形態4による電波伝搬特性算出装置400は、実施の形態1の電波伝搬特性算出装置100よりも更に精度の高い推定値を算出できる。
【0096】
実施の形態5.
実施の形態1、2、3および4では、式(1)または式(4)によって伝搬特性の推定値を補正する場合について説明した。実施の形態5では、機械学習により構築した回帰モデルにより特徴量を算出して伝搬特性の推定値を補正する場合について説明する。
【0097】
本実施の形態では、電波伝搬特性算出装置のブロック図、特徴量の算出方法、および伝搬特性の推定値の補正方法が実施の形態1、2、3および4の場合と異なる。本実施の形態では、これらの異なる点について主に説明し、実施の形態1、2、3および4と同様の側面については説明を省略する。
【0098】
<推論フェーズ>
<電波伝搬特性算出装置500の構成>
図16は、本実施の形態による電波伝搬特性算出装置500の構成例を示すブロック図である。電波伝搬特性算出装置500は、送信点と評価点に関する情報を入力として受け付け、評価点12での受信電力情報を出力する。電波伝搬特性算出装置500の一側面は、その構成要素または機能部として、伝搬推定部110と、特徴量算出部520と、実測補正部530と、地物データ記憶部140と、伝搬データ記憶部150とを備える。地物データ記憶部140と伝搬データ記憶部150は、電波伝搬特性算出装置500の外部に設けられていても良い。
【0099】
特徴量算出部520は、評価点情報から特徴量算出エリア50を設定し、伝搬データ記憶部150に記憶された測定点22の位置情報から特徴量算出エリア60を設定する。
【0100】
特徴量算出部520は、送信点に関する情報と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報とから、特徴量算出エリア50および特徴量算出エリア60内の見通し情報を算出する。
【0101】
特徴量算出部520は、送信点および評価点情報と、伝搬推定部110によって推定された伝搬特性の推定値と、地物データ記憶部140に記憶された建物および地形に関する情報と、伝搬データ記憶部150に記憶された測定点に関する情報と、見通し情報とから、特徴量算出エリア50および60それぞれに関する特徴量を算出する。特徴量算出方法の具体例としては、特徴量算出エリア内の建物および地形の高さや位置関係、伝搬特性の推定値、見通し情報を入力とする畳み込みニューラルネットワークである。畳み込みニューラルネットワークは、特徴量算出部520または不図示の記憶部に保持されている。
【0102】
実測補正部530は、送信点および評価点情報と特徴量算出部520によって算出された特徴量から、逆畳み込みニューラルネットワークにより評価点12における伝搬特性の推定値を補正する。逆畳み込みニューラルネットワークは、実測補正部530または不図示の記憶部に保持されている。
【0103】
<特徴量算出部520の動作>
図17は、特徴量算出部520の動作例を示すフローチャートである。本実施の形態では、
図15の特徴量算出部420による処理の内、ステップS424(特徴量算出)の内容が実施の形態4の場合と異なる。この異なる点のみ説明し、同一のステップに係る説明は省略する。
【0104】
(ステップS524:特徴量算出)
各格子内の建物高と標高の和の平均値と、各格子の中心点から送信点までの距離と、各格子内の評価点12および基準点13における伝搬特性の推定値と、各格子内の中心点における見通し情報とに基づき、特徴量算出エリア50および60の特徴量をそれぞれ算出する。なお、特徴量算出エリア50および60の分割方法は同じとする。また、評価点における伝搬特性の推定値は基準点13を基準とする相対値とする。また、特徴量算出の具体例としては、畳み込みニューラルネットワークを用いる。畳み込みニューラルネットワークには、複数の畳み込み層および複数のプーリング層が含まれていても良い。また、畳み込みニューラルネットワークの最終層からの出力のみを特徴量としても良いし、途中の層からの出力も含む特徴量としても良い。
【0105】
<実測補正部530の動作>
図18は、実測補正部530の動作例を示すフローチャートである。
図18を参照して、実施の形態5による実測補正部530の動作を説明する。
【0106】
(ステップS131:データ読み込み)
ステップS131において、送信点および評価点情報と、特徴量算出部520によって算出された特徴量とを読み込む。
【0107】
(ステップS532:実測補正)
算出された特徴量に基づき、逆畳み込みニューラルネットワークにより評価点12における伝搬特性の推定値を、基準点13を基準とする相対値として補正し、基準点13の伝搬特性の推定値を用いて評価点12の伝搬特性の絶対値を算出する。
【0108】
<学習フェーズ>
学習フェーズの実施の形態は、基本的に推論フェーズのものと変わらないが、学習フェーズの場合には電波伝搬特性装置からの出力と、伝搬データ記憶部によって保存された伝搬データの測定値またはシミュレーション値とが一致するように、特徴量抽出部または不図示の記憶部に保持される畳み込みニューラルネットワークと、実測補正部または不図示の記憶部に保持される逆畳み込みニューラルネットワークとを学習する。
【0109】
<効果の説明>
実施の形態5による追加の効果について説明する。
【0110】
実施の形態5による実測補正部530は、予め学習したニューラルネットワークによって評価点12における伝搬特性の推定値を補正できる。ニューラルネットワークは、その特性により式(1)または式(4)に限定されないあらゆる補正式を表現することができる。
【0111】
以上の動作により、実施の形態5による電波伝搬特性算出装置500は、実施の形態1の電波伝搬特性算出装置100よりも更に精度の高い推定値を算出できる。
【0112】
なお、実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示の電波伝搬特性算出技術は、電波伝搬特性の評価対象である評価点が存在する評価エリア内において測定点が無い場合に、評価点の電波伝搬特性を推定する技術として用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
10 評価エリア、11 送信点(第1の送信点)、12 評価点(第1の評価点)、13 基準点(第1の基準点)、20 測定エリア、21 送信点(第2の送信点)、22 測定点(第1の測定点、第2の測定点)、22a 測定点、22b 測定点、30 遮蔽物、40 遮蔽物、50 特徴量算出エリア(第1の特徴量算出エリア、第2の特徴量算出エリア)、60 特徴量算出エリア(第3の特徴量算出エリア、第4の特徴量算出エリア)、100 電波伝搬特性算出装置、110 伝搬推定部、120 特徴量算出部、130 実測補正部、140 地物データ記憶部、150 伝搬データ記憶部、200 電波伝搬特性算出装置、210 信頼度算出部、220 基準点決定部、400 電波伝搬特性算出装置、420 特徴量算出部、500 電波伝搬特性算出装置、520 特徴量算出部、530 実測補正部、1000a 処理回路、1000b プロセッサ、1000c メモリ。
【要約】
電波伝搬特性算出装置は、送信される電波が、第1の評価点で受信される受信電力の第1の推定値と、第1の基準点で受信される受信電力の第2の推定値とを、所定の伝搬推定式を用いて算出する伝搬推定部(110)と、第1の評価点を含む第1の特徴量算出エリアに関する第1の特徴量、及び第1の基準点を含む第2の特徴量算出エリアに関する第2の特徴量、並びに第1の測定点を含む第3の特徴量算出エリアに関する第3の特徴量、及び第2の測定点を含む第4の特徴量算出エリアに関する第4の特徴量を算出する特徴量算出部(120)と、第1および第2の推定値の相対値を算出し、第1から第4の特徴量と、算出された相対値とに基づいて、第1の推定値を実測補正して、第1の推定値の補正値を算出する実測補正部(130)とを備える。