(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
F25B1/00 351S
F25B1/00 351J
F25B1/00 361H
(21)【出願番号】P 2024559007
(86)(22)【出願日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2024017973
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 皓亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤志
(72)【発明者】
【氏名】栗原 誠
(72)【発明者】
【氏名】風村 典秀
(72)【発明者】
【氏名】柴 広有
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200145(JP,A)
【文献】特開2007-163106(JP,A)
【文献】特開平6-341720(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045011(WO,A1)
【文献】特開平5-264110(JP,A)
【文献】国際公開第2013/160965(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179137(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、第1分岐部、室内熱交換器、第1絞り装置、室外熱交換器及び第2分岐部が設けられた第1回路と、
前記第1分岐部で前記第1回路から分岐して前記第2分岐部で前記第1回路と合流するように構成され、第2絞り装置が設けられた第2回路と、
前記圧縮機、前記第1絞り装置及び前記第2絞り装置を制御する制御部と、
を備え、
前記第1分岐部は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記圧縮機よりも下流側でかつ前記室内熱交換器よりも上流側に設けられており、
前記第2分岐部は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記室外熱交換器よりも下流側でかつ前記圧縮機よりも上流側に設けられており、
前記第1絞り装置は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記第1分岐部よりも下流側でかつ前記第2分岐部よりも上流側に設けられており、
前記制御部は、室外空気温度が第1温度よりも低い場合、前記圧縮機を起動してから前記圧縮機の吐出冷媒の温度が第2温度に達するまで、暖機を実行し、
前記制御部は、
前記暖機中には冷媒が前記第1回路よりも前記第2回路に多く流れ、前記暖機終了後には冷媒が前記第2回路よりも前記第1回路に多く流れるように、前記暖機中および前記暖機終了後の前記第1絞り装置の開度および前記第2絞り装置の開度を設定
し、
前記制御部は、前記暖房運転の前記暖機中において、前記室内熱交換器の出口冷媒の過冷却度が基準過冷却度以上になった場合、前記第1絞り装置の開度を前記暖機中の前記第1絞り装置の上限開度よりも大きくする、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
圧縮機、第1分岐部、室内熱交換器、第1絞り装置、室外熱交換器及び第2分岐部が設けられた第1回路と、
前記第1分岐部で前記第1回路から分岐して前記第2分岐部で前記第1回路と合流するように構成され、第2絞り装置が設けられた第2回路と、
前記圧縮機、前記第1絞り装置及び前記第2絞り装置を制御する制御部と、
を備え、
前記第1分岐部は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記圧縮機よりも下流側でかつ前記室内熱交換器よりも上流側に設けられており、
前記第2分岐部は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記室外熱交換器よりも下流側でかつ前記圧縮機よりも上流側に設けられており、
前記第1絞り装置は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記第1分岐部よりも下流側でかつ前記第2分岐部よりも上流側に設けられており、
前記制御部は、室外空気温度が第1温度よりも低い場合、前記圧縮機を起動してから前記圧縮機の吐出冷媒の温度が第2温度に達するまで、暖機を実行し、
前記制御部は、
前記暖機中には冷媒が前記第1回路よりも前記第2回路に多く流れ、前記暖機終了後には冷媒が前記第2回路よりも前記第1回路に多く流れるように、前記暖機中および前記暖機終了後の前記第1絞り装置の開度および前記第2絞り装置の開度を設定
し、
前記第1絞り装置は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記第1分岐部よりも下流側でかつ前記室内熱交換器よりも上流側に設けられている、冷凍サイクル装置。
【請求項3】
圧縮機、第1分岐部、室内熱交換器、第1絞り装置、室外熱交換器及び第2分岐部が設けられた第1回路と、
前記第1分岐部で前記第1回路から分岐して前記第2分岐部で前記第1回路と合流するように構成され、第2絞り装置が設けられた第2回路と、
前記圧縮機、前記第1絞り装置及び前記第2絞り装置を制御する制御部と、
を備え、
前記第1分岐部は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記圧縮機よりも下流側でかつ前記室内熱交換器よりも上流側に設けられており、
前記第2分岐部は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記室外熱交換器よりも下流側でかつ前記圧縮機よりも上流側に設けられており、
前記第1絞り装置は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記第1分岐部よりも下流側でかつ前記第2分岐部よりも上流側に設けられており、
前記制御部は、室外空気温度が第1温度よりも低い場合、前記圧縮機を起動してから前記圧縮機の吐出冷媒の温度が第2温度に達するまで、暖機を実行し、
前記制御部は、
前記暖機中には冷媒が前記第1回路よりも前記第2回路に多く流れ、前記暖機終了後には冷媒が前記第2回路よりも前記第1回路に多く流れるように、前記暖機中および前記暖機終了後の前記第1絞り装置の開度および前記第2絞り装置の開度を設定
し、
第3分岐部で前記第1回路から分岐して第4分岐部で前記第1回路と合流するように構成され、第3絞り装置が設けられた第3回路をさらに備え、
前記第3分岐部は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記第1分岐部よりも下流側でかつ前記室内熱交換器よりも上流側に設けられており、
前記第4分岐部は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記室外熱交換器よりも下流側でかつ前記圧縮機よりも上流側に設けられており、
前記制御部は、前記暖機中において、前記圧縮機の吐出冷媒の温度が、前記第2温度よりも低い第3温度以上でかつ前記第2温度以下である場合、前記第3絞り装置を開状態にする、冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第3温度は、前記圧縮機の吐出圧力の飽和温度に対し±3K以内となる温度に設定される請求項
3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
圧縮機、第1分岐部、室内熱交換器、第1絞り装置、室外熱交換器及び第2分岐部が設けられた第1回路と、
前記第1分岐部で前記第1回路から分岐して前記第2分岐部で前記第1回路と合流するように構成され、第2絞り装置が設けられた第2回路と、
前記圧縮機、前記第1絞り装置及び前記第2絞り装置を制御する制御部と、
を備え、
前記第1分岐部は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記圧縮機よりも下流側でかつ前記室内熱交換器よりも上流側に設けられており、
前記第2分岐部は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記室外熱交換器よりも下流側でかつ前記圧縮機よりも上流側に設けられており、
前記第1絞り装置は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記第1分岐部よりも下流側でかつ前記第2分岐部よりも上流側に設けられており、
前記制御部は、室外空気温度が第1温度よりも低い場合、前記圧縮機を起動してから前記圧縮機の吐出冷媒の温度が第2温度に達するまで、暖機を実行し、
前記制御部は、
前記暖機中には冷媒が前記第1回路よりも前記第2回路に多く流れ、前記暖機終了後には冷媒が前記第2回路よりも前記第1回路に多く流れるように、前記暖機中および前記暖機終了後の前記第1絞り装置の開度および前記第2絞り装置の開度を設定
し、
前記室内熱交換器に空気を供給する室内送風機をさらに備え、
前記暖機中に前記室内送風機と前記圧縮機とが動作し、前記圧縮機の吐出冷媒の温度が前記第2温度に達する前に、動作していた前記室内送風機が停止する場合、前記制御部は、前記圧縮機の吐出冷媒の温度が前記第2温度に達するまでは前記圧縮機を停止させないようにする、冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記暖機終了後に、前記第1絞り装置の開度を前記暖機中の前記第1絞り装置の開度より
大きくし、前記第2絞り装置の開度を前記暖機中の前記第2絞り装置の開度より
小さくする、請求項1
~請求項5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記暖機終了後に前記圧縮機の周波数を前記暖機中の前記圧縮機の周波数より大きくする、請求項1
~請求項5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記暖機中の前記第1絞り装置の上限開度を、前記暖機終了後の前記第1絞り装置の上限開度よりも小さい開度に設定し、
前記暖機中の前記圧縮機の上限周波数を、前記暖機終了後の前記圧縮機の上限周波数よりも小さい周波数に設定し、
前記暖機中の前記第2絞り装置の開度を、前記暖機終了後の前記第2絞り装置の開度よりも大きい開度に設定する請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記暖機終了後には、前記暖機中の前記圧縮機の上限周波数よりも大きい周波数で前記圧縮機を運転する請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記暖房運転の前記暖機中において、前記圧縮機が起動してから前記圧縮機の吐出冷媒の温度が前記第2温度に達するまでの時間の50%以上の時間の間、前記圧縮機の吐出圧力の飽和温度は、前記室内熱交換器が設けられた空間の温度よりも低くなっている請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記室外熱交換器に空気を供給する室外送風機をさらに備え、
冷房運転の前記暖機中において、前記室外送風機の回転速度は、前記圧縮機の吐出冷媒の温度が前記第2温度に達するまでの間、起動直後の回転速度から増速されない請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項12】
前記第2温度は、前記圧縮機の吐出圧力の飽和温度に対する過熱度が5K以上となる温度に設定される請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項13】
前記第1分岐部は油分離器であり、
前記第2絞り装置は、前記油分離器と前記圧縮機の吸入側とを接続する油戻し管と並列に設けられている請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記暖機中の前記第1絞り装置の開度を全閉から第1開度までの間で制御し、
前記第1開度は、定格運転の前記第1絞り装置の開度の30%以下の開度である請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記暖機中の前記圧縮機の周波数を第1周波数以下で制御し、
前記第1周波数は、定格運転の前記圧縮機の周波数の40%以下の周波数である請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、制御装置が開示されている。この制御装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、圧縮機から吐出される冷媒又は冷凍機油を圧縮機へと戻す戻し管と、戻し管に設けられた流量制御弁と、を備える冷媒回路に用いられる。制御装置は、温度情報取得部と、制御部と、を備えている。温度情報取得部は、戻し管を通過する冷媒又は冷凍機油の温度である第1温度と、圧縮機のハウジング下部における第2温度と、を取得する。制御部は、第1温度と第2温度とに基づいて、流量制御弁及び膨張弁の開度を制御する。制御部は、圧縮機の起動時に流量制御弁及び膨張弁を閉状態とし、その後、第1温度が第2温度より高くなると、流量制御弁を開状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成では、凝縮器に冷媒が凝縮液として滞留するため、起動時に圧縮機から冷媒とともに吐出された油が凝縮器に滞留し、圧縮機内の油量が減少する。これにより、圧縮機に故障が生じやすくなるため、圧縮機及び冷凍サイクル装置の品質が低下する。一方、油の減少に備えて封入する油量を増やすと、冷凍サイクル装置の省エネ性が低下する。したがって、品質と省エネ性との両立が困難であるという課題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、品質と省エネ性とを両立できる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、第1分岐部、室内熱交換器、第1絞り装置、室外熱交換器及び第2分岐部が設けられた第1回路と、前記第1分岐部で前記第1回路から分岐して前記第2分岐部で前記第1回路と合流するように構成され、第2絞り装置が設けられた第2回路と、前記圧縮機、前記第1絞り装置及び前記第2絞り装置を制御する制御部と、を備え、前記第1分岐部は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記圧縮機よりも下流側でかつ前記室内熱交換器よりも上流側に設けられており、前記第2分岐部は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記室外熱交換器よりも下流側でかつ前記圧縮機よりも上流側に設けられており、前記第1絞り装置は、前記暖房運転時の冷媒の流れにおいて、前記第1分岐部よりも下流側でかつ前記第2分岐部よりも上流側に設けられており、前記制御部は、室外空気温度が第1温度よりも低い場合、前記圧縮機を起動してから前記圧縮機の吐出冷媒の温度が第2温度に達するまで、暖機を実行し、前記制御部は、前記暖機中には冷媒が前記第1回路よりも前記第2回路に多く流れ、前記暖機終了後には冷媒が前記第2回路よりも前記第1回路に多く流れるように、前記暖機中および前記暖機終了後の前記第1絞り装置の開度および前記第2絞り装置の開度を設定し、前記制御部は、前記暖房運転の前記暖機中において、前記室内熱交換器の出口冷媒の過冷却度が基準過冷却度以上になった場合、前記第1絞り装置の開度を前記暖機中の前記第1絞り装置の上限開度よりも大きくする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、冷凍サイクル装置の品質と省エネ性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の概略構成を示す回路図である。
【
図2】外気温度が低温の場合における圧縮機の暖機中の冷媒の状態を示すP-H線図である。
【
図3】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の構成を示す回路図である。
【
図4】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置において制御部により実行される起動時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置における暖機中の冷媒の状態を示すP-H線図である。
【
図6】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置において冷房運転の暖機が終了した時点の冷媒の状態を示すP-H線図である。
【
図7】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置において暖房運転の暖機が終了した時点の冷媒の状態を示すP-H線図である。
【
図8】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置における吐出冷媒温度の時間変化の例を示すグラフである。
【
図9】実施の形態2に係る冷凍サイクル装置における吐出冷媒温度の時間変化の例を示すグラフである。
【
図10】実施の形態3に係る冷凍サイクル装置における室内熱交換器の出口冷媒の過冷却度の時間変化を示すグラフである。
【
図11】実施の形態4に係る冷凍サイクル装置における室外送風機の回転速度の時間変化を示すグラフである。
【
図12】実施の形態5に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の構成を示す回路図である。
【
図13】実施の形態6に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の構成を示す回路図である。
【
図14】実施の形態6に係る冷凍サイクル装置において制御部により実行される起動時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態7に係る冷凍サイクル装置における室内送風機の回転速度の時間変化を示すグラフである。
【
図16】実施の形態7に係る冷凍サイクル装置における圧縮機の周波数の時間変化を示すグラフである。
【
図17】実施の形態7に係る冷凍サイクル装置における圧縮機の周波数の時間変化の別の例を示すグラフである。
【
図18】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置における第1絞り装置の開度と起動時の液流出量との関係を示すグラフである。
【
図19】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置における圧縮機の周波数と起動時の液流出量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。特に構成要素の組合せは、各実施の形態における組合せのみに限定するものではなく、一の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本開示を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係る冷凍サイクル装置について説明する。本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機、空気調和装置、冷凍装置、給湯器等の、冷凍用途又は空調用途に使用される。
図1は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成を示す回路図である。
図1に示すように、冷凍サイクル装置は、冷媒が循環する冷媒回路として、第1回路51及び第2回路52を有している。
【0011】
第1回路51は、圧縮機10、第1分岐部11、流路切替装置12、流量制御弁13、室内熱交換器20、第1絞り装置30、室外熱交換器40、アキュムレータ14及び第2分岐部15が冷媒配管を介して順次環状に接続された構成を有している。第2回路52は、第1分岐部11において第1回路51から分岐し、第2分岐部15において第1回路51と合流している。第2回路52には、第2絞り装置31が設けられている。
【0012】
冷凍サイクル装置は、室外機70及び室内機71を有している。室外機70には、圧縮機10、第1分岐部11、流路切替装置12、流量制御弁13、室外熱交換器40、アキュムレータ14、及び第2絞り装置31と、室外熱交換器40に室外空気を供給する室外送風機41と、が収容されている。室内機71には、室内熱交換器20及び第1絞り装置30と、室内熱交換器20に室内空気を供給する室内送風機21と、が収容されている。
【0013】
圧縮機10は、冷媒を吸入し、その冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出する。圧縮機10で圧縮された冷媒は、吐出されて第1分岐部11に送られる。圧縮機10は、例えば、ロータリー圧縮機、スクロール圧縮機、スクリュー圧縮機、又は、往復圧縮機等で構成される。圧縮機10は高圧シェルタイプでも低圧シェルタイプでもよいが、本実施の形態による油の流出抑制効果は、圧縮機10が高圧シェルタイプの場合に特に大きい。
【0014】
第1分岐部11は、第1回路51と第2回路52とが分岐する部分である。第1分岐部11は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、圧縮機10よりも下流側でかつ室内熱交換器20よりも上流側に設けられている。第1分岐部11から第1回路51に流れる冷媒の流量と、第1分岐部11から第2回路52に流れる冷媒の流量とは、流量制御弁13及び第2絞り装置31のそれぞれの開度によって調整される。第1分岐部11は、例えば油分離器によって構成されている。油分離器は、圧縮機10により冷媒と共に吐出された冷凍機油を冷媒から分離するように構成されている。油分離器で分離された冷凍機油は、第2回路52を通って圧縮機10に戻される。
【0015】
流路切替装置12は、例えば四方弁であり、第1回路51において冷媒の流れる方向を切り替えるものである。流路切替装置12は、冷凍サイクル装置において、暖房運転時に冷媒が流れる方向と冷房運転時に冷媒が流れる方向とを切り替えるものである。
【0016】
流量制御弁13は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、第1分岐部11よりも下流側でかつ室内熱交換器20よりも上流側に設けられている。流量制御弁13は、第1回路51を流れる冷媒の流量を調整する弁である。流量制御弁13の開度は、後述する制御部100によって制御される。本実施の形態では、室内機71に第1絞り装置30が設けられており、第1回路51を流れる冷媒の流量は第1絞り装置30によって調整される。このため、後述する
図12等に示すように、流量制御弁13は省略することができる。ただし、流量制御弁13を第1絞り装置として用い、第1回路51を流れる冷媒の流量を流量制御弁13によって調整することもできる。
【0017】
室内熱交換器20は、暖房運転時には凝縮器の働きをし、内部に流入した冷媒と室内空気との間で熱交換を行い、冷媒を凝縮させて液化させる。室内熱交換器20は、冷房運転時には蒸発器の働きをし、内部に流入した冷媒と室内空気との間で熱交換を行い、冷媒を蒸発させて気化させる。
【0018】
室内送風機21は、室内熱交換器20での熱交換効率を高めるために、室内熱交換器20に室内空気を供給する。室内送風機21は、室内熱交換器20と隣接して設けられている。
【0019】
第1絞り装置30は、減圧弁、あるいは、膨張弁としての機能を有し、冷媒を膨張させて減圧するものである。第1絞り装置30は、例えば、制御部100の制御によって開度を調整可能な電子膨張弁で構成される。
【0020】
室外熱交換器40は、暖房運転時には蒸発器の働きをし、内部に流入した冷媒と室外空気との間で熱交換を行い、冷媒を蒸発させて気化させる。室外熱交換器40は、冷房運転時には凝縮器の働きをし、内部に流入した冷媒と室外空気との間で熱交換を行い、冷媒を凝縮させて液化させる。
【0021】
室外送風機41は、室外熱交換器40での熱交換効率を高めるために、室外熱交換器40に室外空気を供給する。室外送風機41は、室外熱交換器40と隣接して設けられている。
【0022】
アキュムレータ14は、余剰の冷媒を貯留するとともに、冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離する。分離されたガス冷媒は、圧縮機10に供給される。
【0023】
第2分岐部15は、圧縮機10の吸入側に設けられている。第2分岐部15は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、室外熱交換器40よりも下流側でかつ圧縮機10よりも上流側に設けられている。
【0024】
第2絞り装置31は、第2回路52を流通する冷媒及び冷凍機油を減圧する弁である。第2絞り装置31の開度は、制御部100によって制御される。
【0025】
制御部100は、圧縮機10、流路切替装置12、流量制御弁13、第1絞り装置30、第2絞り装置31、室外送風機41及び室内送風機21を含む冷凍サイクル装置の全体を制御するように構成されている。これらの制御は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータによって実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。制御部100は、室外機70に設けられていてもよいし、室内機71に設けられていてもよい。また、制御部100は、室外機70に設けられた室外機制御部と、室内機71に設けられ室外機制御部と通信可能な室内機制御部と、を有していてもよい。
【0026】
次に、冷凍サイクル装置の全体的な動作について説明する。まず、暖房運転時の定常状態の動作について説明する。暖房運転時には、制御部100の制御によって流路切替装置12の流路が切り換えられ、圧縮機10から吐出された高圧冷媒が室内熱交換器20に流入するように第1回路51が構成される。
【0027】
圧縮機10から吐出された高温高圧のガス冷媒は、第1分岐部11、流路切替装置12及び流量制御弁13を経由して室内熱交換器20に流入する。第1分岐部11が油分離器である場合、圧縮機10から冷媒と共に吐出された冷凍機油は、第1分岐部11で冷媒から分離され、第2回路52を通って圧縮機10の吸入側に戻る。暖房運転時には、室内熱交換器20は凝縮器として機能する。すなわち、室内熱交換器20では、内部を流通する冷媒と、室内送風機21により送風される室内空気との熱交換が行われ、冷媒の凝縮熱が室内空気に放熱される。これにより、室内熱交換器20に流入した冷媒は、凝縮して高圧の液冷媒となる。また、室内送風機21により送風される室内空気は、冷媒の放熱作用によって加熱される。
【0028】
室内熱交換器20から流出した高圧の液冷媒は、第1絞り装置30で減圧され、低圧の二相冷媒となる。第1絞り装置30で減圧された低圧の二相冷媒は、室外熱交換器40に流入する。暖房運転時には、室外熱交換器40は蒸発器として機能する。すなわち、室外熱交換器40では、内部を流通する冷媒と、室外送風機41により送風される室外空気との熱交換が行われ、冷媒の蒸発熱が室外空気から吸熱される。これにより、室外熱交換器40に流入した冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒又は二相冷媒となる。室外熱交換器40から流出した低圧のガス冷媒又は二相冷媒は、流路切替装置12を通ってアキュムレータ14に流入する。アキュムレータ14では、ガス冷媒と液冷媒とが分離され、ガス冷媒のみが圧縮機10に吸入される。暖房運転では、以上のサイクルが連続的に繰り返される。
【0029】
次に、冷房運転時の定常状態の動作について説明する。冷房運転時には、制御部100の制御によって流路切替装置12の流路が切り換えられ、圧縮機10から吐出された高圧冷媒が室外熱交換器40に流入するように第1回路51が構成される。
【0030】
圧縮機10から吐出された高温高圧のガス冷媒は、第1分岐部11及び流路切替装置12を経由して室外熱交換器40に流入する。第1分岐部11が油分離器である場合、圧縮機10から冷媒と共に吐出された冷凍機油は、第1分岐部11で冷媒から分離され、第2回路52を通って圧縮機10の吸入側に戻る。冷房運転時には、室外熱交換器40は凝縮器として機能する。すなわち、室外熱交換器40では、内部を流通する冷媒と、室外送風機41により送風される室外空気との熱交換が行われ、冷媒の凝縮熱が室外空気に放熱される。これにより、室外熱交換器40に流入した冷媒は、凝縮して高圧の液冷媒となる。
【0031】
室外熱交換器40から流出した高圧の液冷媒は、第1絞り装置30で減圧され、低圧の二相冷媒となる。第1絞り装置30で減圧された低圧の二相冷媒は、室内熱交換器20に流入する。冷房運転時には、室内熱交換器20は蒸発器として機能する。すなわち、室内熱交換器20では、内部を流通する冷媒と、室内送風機21により送風される室内空気との熱交換が行われ、冷媒の蒸発熱が室内空気から吸熱される。これにより、室内熱交換器20に流入した冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒又は二相冷媒となる。また、室内送風機21により送風される室内空気は、冷媒の吸熱作用によって冷却される。室内熱交換器20から流出した低圧のガス冷媒又は二相冷媒は、流量制御弁13及び流路切替装置12を通ってアキュムレータ14に流入する。アキュムレータ14では、ガス冷媒と液冷媒とが分離され、ガス冷媒のみが圧縮機10に吸入される。冷房運転では、以上のサイクルが連続的に繰り返される。
【0032】
ところで、外気温度が低温の場合、圧縮機10が起動してから暖機が終了するまで、圧縮機10の構成部材の温度も低温になっている。
図2は、外気温度が低温の場合における圧縮機の暖機中の冷媒の状態を示すP-H線図である。
図2では、圧縮行程での冷媒の状態のみを示している。
図2中のηは、圧縮機効率を表している。
図2に示すように、低圧のガス冷媒(
図2の点A)は、圧縮機10で圧縮されることにより圧力が上昇するものの、圧縮機10の構成部材によって冷やされて圧縮機10内で再凝縮し、液冷媒となる(
図2の点B)。
【0033】
圧縮機10内で冷媒が再凝縮した場合、圧縮機10内の冷凍機油は、液冷媒によって希釈されて圧縮機10外部に持ち出される。これにより、圧縮機10内の冷凍機油が枯渇しやすくなるため、摩擦過多により圧縮機10の故障及び空調機性能の低下が引き起こされる場合がある。
【0034】
本実施の形態では、圧縮機10内の冷凍機油の枯渇を防ぐため、圧縮機10の起動時に暖機が行われる。暖機中には、第2回路52に多くの冷媒が流れるようにすることにより、圧縮機10を含む第2回路52から外部への冷凍機油の流出が抑制される。暖機は、圧縮機10からの吐出冷媒がガス化した後に終了する。暖機が終了すると、第2回路52の冷媒流量が絞られ、第1回路51の冷媒流量が増加する。すなわち、制御部100は、暖機中には冷媒が第1回路51よりも第2回路52に多く流れ、暖機終了後には冷媒が第2回路52よりも第1回路51に多く流れるように、暖機中および暖機終了後の第1絞り装置30の開度および第2絞り装置31の開度を設定する。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の構成を示す回路図である。
図3は、流路切替装置12の図示が省略されているが、
図1に示した回路と同様の回路を示している。
図3に示すように、冷凍サイクル装置は、室外温度センサ101、吐出冷媒温度センサ102及び室内温度センサ103を有している。室外温度センサ101は、室外空気温度を検出し、検出信号を制御部100に送信するように構成されている。吐出冷媒温度センサ102は、圧縮機10に設けられている。吐出冷媒温度センサ102は、圧縮機10から吐出される冷媒の温度を検出し、検出信号を制御部100に送信するように構成されている。室内温度センサ103は、室内空気温度を検出し、検出信号を制御部100に送信するように構成されている。
【0036】
また、冷凍サイクル装置は、圧縮機10の吐出冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサ104と、圧縮機10の吸入冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ105と、を有している。吐出圧力センサ104は、圧縮機10の吐出側から第1絞り装置30までの間に設けられる。吸入圧力センサ105は、第1絞り装置30から圧縮機10の吸入側までの間に設けられる。吐出圧力センサ104及び吸入圧力センサ105のそれぞれは、検出信号を制御部100に送信するように構成されている。
【0037】
図4は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において制御部により実行される起動時の処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示す処理は、暖房運転及び冷房運転のいずれにおいても実行される。
【0038】
制御部100は、外部から起動信号を受信すると、
図4に示す処理を開始する。まず、
図4のステップS1では、制御部100は、室外空気温度が第1温度よりも低いか否かを判定する。第1温度の値は、あらかじめ制御部100のROMに記憶されている。室外空気温度が第1温度よりも低い場合にはステップS2の処理に移行し、暖機が実行される。室外空気温度が第1温度以上の場合には、ステップS6の処理に移行する。
【0039】
ステップS2では、制御部100は、第1絞り装置30の開度sが0≦s≦第1開度の範囲になるように第1絞り装置30を制御する。第1開度の値は、あらかじめ制御部100のROMに記憶されている。第1開度は、全開開度よりも小さい開度であり、例えば、相対的に小さい開度である微開開度である。第1開度は、暖機中における第1絞り装置30の開度sの上限となる。第1開度は、暖機終了後の冷房運転または暖房運転中に設定される第1絞り装置30の開度の上限よりも小さな開度である。
【0040】
第1開度は、定格運転の第1絞り装置30の開度の30%以下の開度であることが望ましい。
図18は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における第1絞り装置の開度と起動時の液流出量との関係を示すグラフである。横軸は、第1絞り装置30の開度を定格運転時の開度を100%として表している。縦軸は、室内機への液流出量を、定格運転時の液流出量を100%とした液流量比で表している。
図18は、第2絞り装置31を開いた状態における外気温度が3℃であるときの暖房起動運転の模式図である。
【0041】
図18に示すように、第1絞り装置30の開度を小さくすることで、室内機への液流出量を低減できるため、室外機からの油の流出量を削減して品質が改善する。
図18中のハッチング部分は、第1絞り装置30の仕様による液流出量の分散範囲を表している。絞り装置を流れる流量は絞りの容量係数に依存するが、開度と容量係数の関係は絞り装置の仕様に依存する。第1開度を定格運転の第1絞り装置30の開度の30%以下にすることによって、冷凍サイクル装置に採用される絞り装置の仕様範囲において、液流出量を50%以下にすることができる。
【0042】
ステップS3では、制御部100は、第2絞り装置31を開状態に設定する。第2絞り装置31の開度は、暖機終了後の冷房運転または暖房運転中に設定される第2絞り装置31の開度の上限よりも大きな開度とされる。ステップS4では、制御部100は、圧縮機10を起動し、圧縮機10の周波数が0よりも大きく第1周波数以下の範囲になるように、圧縮機10を制御する。第1周波数の値は、あらかじめ制御部100のROMに記憶されている。第1周波数は、最大周波数よりも小さい周波数である。第1周波数は、暖機中における圧縮機10の周波数の上限となる。第1周波数は、暖機終了後の冷房運転または暖房運転中に設定される圧縮機10の周波数の上限よりも小さい周波数である。
【0043】
第1周波数は、定格運転の圧縮機10の周波数の40%以下の周波数であることが望ましい。
図19は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における圧縮機の周波数と起動時の液流出量との関係を示すグラフである。横軸は、圧縮機10の周波数を定格運転時の周波数を100%として表している。縦軸は、室内機への液流出量を、定格運転時の液流出量を100%とした液流量比で表している。
図19は、第2絞り装置31を開いた状態における外気温度が3℃であるときの暖房起動運転の模式図である。
【0044】
図19に示すように、圧縮機10の周波数を小さくすることで、室内機への液流出量を低減できるため、室外機からの油の流出量を削減して品質が改善する。
図19中のハッチング部分は、熱交換器の仕様による液流出量の分散範囲を表している。圧縮機10が流す流量は、周波数のほかに吸入冷媒密度が支配的であるが、周波数と冷媒密度の関係は熱交換器(特に蒸発器)の仕様に依存する。第1周波数を定格運転の圧縮機10の周波数の40%以下にすることによって、冷凍サイクル装置に採用される熱交換器の仕様範囲において、液流出量を50%以下にすることができる。
【0045】
ステップS5では、制御部100は、吐出冷媒温度が第2温度よりも高いか否かを判定する。第2温度の値は、あらかじめ制御部100のROMに記憶されている。通常、第2温度は、第1温度よりも高い値に設定される。吐出冷媒温度が第2温度よりも高い場合には、暖機を終了し、ステップS6の処理に移行する。吐出冷媒温度が第2温度以下の場合には、ステップS2の処理に戻る。これにより、吐出冷媒温度が第2温度よりも高くなるまで、暖機が継続される。
【0046】
ステップS6では、制御部100は、第2絞り装置31を閉状態又は微開状態に設定する。微開状態の第2絞り装置31の開度は、ステップS3で設定される第2絞り装置31の開度よりも小さくなっている。つまり、暖機終了後の第2絞り装置31の開度は、暖機中の第2絞り装置31の開度よりも小さい開度に設定される。なお、暖機中の第2絞り装置31の開度よりも小さい開度に設定される、という表現には、暖機終了後の一定時間開度を維持してから開度を小さく設定する場合も含まれるものとする。一定時間t1は、温度計測手段の検知誤差を考慮して暖気終了判定を設ける設計値である。一定時間t1は、起動開始から暖気終了判定がなされるまでの時間t0に対して、0≦t1<2t0となるように設けられる。t1<0では、暖気終了判定されないため好ましくない。t1≧2t0では、暖房起動が遅延し、エンドユーザーの快適性を損なうため好ましくない。
【0047】
ステップS7では、制御部100は、第1絞り装置30の開度sが0≦s≦全開になるように第1絞り装置30を制御する。つまり、暖機終了後の第1絞り装置30の開度sの上限は、暖機中の上限である第1開度よりも大きい開度に設定される。なお、暖機中の上限である第1開度よりも大きい開度に設定される、という表現には、暖機終了直後から一定時間は開度を大きくせず、その後に第1開度よりも大きい開度に設定して暖房運転または冷房運転を行わせる場合も含まれるものとする。
【0048】
ステップS8では、制御部100は、圧縮機10の周波数が0よりも大きく最大周波数よりも小さい範囲になるように、圧縮機10を制御する。最大周波数は、圧縮機10の仕様上の運転周波数範囲の最大値である。つまり、暖機終了後の圧縮機10の周波数の上限は、暖機中の上限周波数である第1周波数よりも大きい周波数に設定される。例えば、制御部100は、第1周波数よりも大きい周波数で圧縮機10を運転する。その後、通常の運転が継続される。なお、第1周波数よりも大きい周波数で圧縮機10を運転する、という表現には、暖機終了直後に一時的に第1周波数より小さい周波数で圧縮機10を運転した後に第1周波数よりも大きい周波数で圧縮機10を運転して暖房運転または冷房運転を行わせる場合も含まれるものとする。
【0049】
図5は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における暖機中の冷媒の状態を示すP-H線図である。
図5に示すように、暖機が進行するにつれて、冷媒の状態はR1、R2、R3の順に変化する。
【0050】
図6は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において冷房運転の暖機が終了した時点の冷媒の状態を示すP-H線図である。
図7は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において暖房運転の暖機が終了した時点の冷媒の状態を示すP-H線図である。
図6及び
図7において、圧力P1は、圧縮機10の吐出冷媒圧力を表している。温度Teは、蒸発器が設けられた空間の温度を表している。蒸発器が設けられた空間は、冷房運転では室内であり、暖房運転では室外である。温度Tcは、凝縮器が設けられた空間の温度を表している。凝縮器が設けられた空間は、冷房運転では室外であり、暖房運転では室内である。温度T1は、上記の第1温度を表している。温度T2は、上記の第2温度を表している。
図6及び
図7に示すように、冷房運転と暖房運転とでは、第1温度T1及び第2温度T2が温度Tcよりも高いか低いかの違いはあるものの、冷媒の状態は同じように変化する。
【0051】
ここで、第1温度T1について説明する。式(1)は、第1温度T1[℃]の一例を示している。理論吐出エンタルピーは、吸入圧力Peにおける飽和ガスエントロピーSesatについて、吐出ガスエントロピーSc=Sesatを示すエンタルピーである。
T1=Tcsat1-120Gr(Hc-Hcsat)/C ・・・(1)
Gr:起動時の平均冷媒流量[kg/sec]、
Tcsat1:起動時120secの平均吐出飽和温度[℃]、
Hc:起動時120secの平均理論吐出エンタルピー[kJ/kg]、
Hcsat:起動時120secの平均吐出飽和エンタルピー[kJ/kg]、
C:圧縮機の熱容量[kJ/K]
【0052】
上記式(1)を満たす第1温度T1を基準とすると、第1温度がT1よりも高い値に設定された場合、油流出を抑制でき、圧縮機10及びそれを備えた冷凍サイクル装置の品質を向上できる。第1温度がT1よりも低い値に設定された場合、暖房起動時間を短縮でき、投入熱量あたりの暖房能力を改善できるため、冷凍サイクル装置の省エネ性を向上できる。
【0053】
次に、第2温度T2について説明する。圧縮機10内の油に溶解した冷媒は、過熱液状態となるため、油の圧力から換算される飽和温度以上になっても一定温度まで液冷媒として貯蔵される。
【0054】
式(2)及び(3)は、第2温度T2[℃]の一例を示している。
T2>Tcsat2 ・・・(2)
T2-Tcsat2=5 ・・・(3)
Tcsat2:吐出飽和温度[℃]
【0055】
すなわち、第2温度T2は、圧縮機10の吐出圧力の飽和温度よりも高い温度になるように、当該飽和温度に基づき設定される。第2温度T2は、圧縮機10の吐出圧力の飽和温度に対する過熱度が5K以上となる温度に設定される。上記式(2)及び(3)を満たす第2温度T2を基準とすると、第2温度がT2よりも高い値に設定された場合、油流出を抑制でき、圧縮機10及びそれを備えた冷凍サイクル装置の品質を向上できる。第2温度がT2よりも低い値に設定された場合、暖房起動時間を短縮でき、投入熱量あたりの暖房能力を改善できるため、冷凍サイクル装置の省エネ性を向上できる。
【0056】
特に、油に溶解した冷媒が沸騰すると、油を巻き込んで第1回路51に流出してしまう場合がある。上記のように一定の過熱度まで第1回路51の冷媒流量を抑制することにより、第1回路51に流出する油量を抑制可能である。
【0057】
図8は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における吐出冷媒温度の時間変化の例を示すグラフである。横軸は時間を表しており、縦軸は温度を表している。時間taは、圧縮機10が起動してからの経過時間を表している。
図8に示すように、第2温度T2は、吐出飽和温度Tcsatよりも一定温度だけ高い温度に設定されている。このため、吐出冷媒温度が第2温度T2に達した時間taには、冷媒が確実に過熱ガス状態になっている。したがって、第1回路51に流出する油量を抑制できる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、第1回路51と、第2回路52と、制御部100と、を備えている。第1回路51には、圧縮機10、第1分岐部11、室内熱交換器20、第1絞り装置30、室外熱交換器40及び第2分岐部15が設けられている。第2回路52は、第1分岐部11で第1回路51から分岐して第2分岐部15で第1回路51と合流するように構成されている。第2回路52には、第2絞り装置31が設けられている。制御部100は、圧縮機10、第1絞り装置30及び第2絞り装置31を制御する。
【0059】
第1分岐部11は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、圧縮機10よりも下流側でかつ室内熱交換器20よりも上流側に設けられている。第2分岐部15は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、室外熱交換器40よりも下流側でかつ圧縮機10よりも上流側に設けられている。第1絞り装置30は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、第1分岐部11よりも下流側でかつ第2分岐部15よりも上流側に設けられている。
【0060】
制御部100は、室外空気温度が第1温度T1よりも低い場合、圧縮機10を起動してから圧縮機10の吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまで、暖機を実行する。制御部100は、暖機中には冷媒が第1回路51よりも第2回路52に多く流れ、暖機終了後には冷媒が第2回路52よりも第1回路51に多く流れるように、暖機中および暖機終了後の第1絞り装置30の開度および第2絞り装置31の開度を設定する。
【0061】
この構成によれば、暖機終了後の運転、すなわち通常の暖房運転又は冷房運転では、圧縮機10から吐出された冷媒の多くが第1回路51に流れるのに対し、暖機中には、圧縮機10から吐出された冷媒の多くが第1回路51ではなく第2回路52に流れる。これにより、暖機中に第1回路51を流れる冷媒の流量を抑えることができるため、室内熱交換器20(例えば凝縮器)への油の滞留を抑制できる。また、暖機中に圧縮機10から持ち出された油は、第2回路52を通って圧縮機10に戻すことができる。したがって、圧縮機10内の油量の減少を抑えることができ、圧縮機10の故障を防ぐことができるため、圧縮機10及び冷凍サイクル装置の品質を向上できる。また、圧縮機10内に封入する油量を増やす必要がないため、冷凍サイクル装置の省エネ性を向上できる。よって、冷凍サイクル装置の品質と省エネ性とを両立することができる。
【0062】
本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、制御部100は、暖機終了後に、第1絞り装置30の開度を暖機中の第1絞り装置30の開度より大きくする。制御部100は、暖機終了後に、第2絞り装置31の開度を暖機中の第2絞り装置31の開度より小さくする。この構成によれば、暖機中に第1回路51に流れる冷媒の量をより少なくすることができるため、室内熱交換器20への油の滞留を抑制でき、圧縮機10内の油量の減少を抑えることができる。
【0063】
本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、制御部100は、暖機終了後に圧縮機10の周波数を暖機中の圧縮機10の周波数より大きくする。この構成によれば、暖機中に第1回路51に流れる冷媒の量をより少なくすることができるため、室内熱交換器20への油の滞留を抑制でき、圧縮機10内の油量の減少を抑えることができる。
【0064】
本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、制御部100は、暖機中の第1絞り装置30の上限開度を、暖機終了後の第1絞り装置30の上限開度よりも小さい開度に設定する。制御部100は、暖機中の圧縮機10の上限周波数を、暖機終了後の圧縮機10の上限周波数よりも小さい周波数に設定する。制御部100は、暖機中の第2絞り装置31の開度を、暖機終了後の第2絞り装置31の開度よりも大きい開度に設定する。この構成によれば、暖機中に第1回路51に流れる冷媒の量をより少なくすることができるため、室内熱交換器20への油の滞留を抑制でき、圧縮機10内の油量の減少を抑えることができる。
【0065】
本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、制御部100は、暖機終了後、暖機中の圧縮機10の上限周波数よりも大きい周波数で圧縮機10を運転する。この構成によれば、暖機終了後の冷凍サイクル装置の性能を高めることができる。
【0066】
本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、第2温度T2は、圧縮機10の吐出圧力の飽和温度に対する過熱度が5K以上となる温度に設定される。
【0067】
この構成によれば、吐出冷媒温度が第2温度T2に達したときの冷媒をより確実に過熱ガス状態にできるため、第1回路51に流出する油量を抑制できる。
【0068】
本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、第1絞り装置は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、第1分岐部11の下流側でかつ室内熱交換器20の上流側に設けられた流量制御弁13である。
【0069】
この構成によれば、暖機中に室内熱交換器20に流入する油量を減少させることができる。
【0070】
実施の形態2.
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置について説明する。
図9は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における吐出冷媒温度の時間変化の例を示すグラフである。横軸は時間を表しており、縦軸は温度を表している。温度Tcは、凝縮器が設けられた空間の温度を表している。本実施の形態の運転は暖房運転であるため、凝縮器が設けられた空間は室内である。温度T1は、第1温度を表している。温度T2は、第2温度を表している。時間ta、tbは、圧縮機10が起動してからの経過時間を表している(tb<ta)。
【0071】
図9に示すように、圧縮機10の吐出冷媒の温度は、圧縮機10起動後の時間経過とともに上昇し、時間tbで温度Tcに達し、時間taで第2温度T2に達している。時間tbは、時間taの半分以上である(tb≧ta/2)。すなわち、吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでの時間taの50%以上の時間の間、吐出圧力の飽和温度は、凝縮器が設けられた空間の温度よりも低くなるように制御されている。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態では、暖房運転の起動時に圧縮機10の吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでの時間taの50%以上の時間の間、圧縮機10の吐出圧力の飽和温度は、室内熱交換器20が設けられた空間の温度よりも低くなっている。
【0073】
この構成によれば、暖房運転の暖機中において、吐出圧力の飽和温度を凝縮器の設けられた空間の温度よりも低い温度に維持できるため、凝縮器での冷媒の滞留を抑制できる。したがって、圧縮機10での油量の減少を抑制でき、圧縮機10及び冷凍サイクル装置の品質を向上できる。
【0074】
実施の形態3.
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置について説明する。
図10は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における室内熱交換器の出口冷媒の過冷却度の時間変化を示すグラフである。横軸は時間を表しており、縦軸は過冷却度を表している。本実施の形態の運転は暖房運転である。実施の形態1で説明したように、圧縮機10が起動してから吐出冷媒の温度が第2温度に達するまでの暖機中には、第1絞り装置30の開度sは、0≦s≦第1開度の範囲になるように制御される。
【0075】
図10に示すように、本実施の形態では、暖房運転の暖機中において、室内熱交換器20の出口冷媒の過冷却度が基準過冷却度以上になった場合には、第1絞り装置30の開度sが増加し、開度sが第1開度よりも大きくなる。基準過冷却度の値は、あらかじめ制御部100のROMに記憶されている。基準過冷却度は、品質と省エネ性の両立の観点から、5K以上20K以下であることが望ましい。
【0076】
以上説明したように、本実施の形態では、制御部100は、暖房運転の暖機中において、室内熱交換器20の出口冷媒の過冷却度が基準過冷却度以上になった場合、第1絞り装置30の開度を暖機中の第1絞り装置30の上限開度よりも大きくする。
【0077】
この構成によれば、凝縮器である室内熱交換器20に液冷媒が滞留した場合に、液冷媒を室外機70に戻すことができる。室内熱交換器20に液冷媒が滞留しているときには、室内熱交換器20に油も滞留している。このため、液冷媒と共に油も室外機70に戻すことができる。したがって、圧縮機10の油量の減少を抑制でき、圧縮機10及び冷凍サイクル装置の品質を向上できる。また、凝縮飽和温度の上昇を抑制できるため、省エネ性を改善できる。
【0078】
実施の形態4.
実施の形態4に係る冷凍サイクル装置について説明する。
図11は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における室外送風機の回転速度の時間変化を示すグラフである。横軸は時間を表しており、縦軸は室外送風機41の回転速度を表している。時間taは、圧縮機10が起動してから、吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでの経過時間を表している。本実施の形態の運転は、冷房運転である。
【0079】
図11に示すように、圧縮機10が起動して暖機が開始されると、室外送風機41は、制御部100の制御により、相対的に低い回転速度で起動する。このときの回転速度は、例えば、最大回転速度の50%未満である。室外送風機41の回転速度は、吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでの間、起動直後の回転速度から増速されない。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、室外熱交換器40に空気を供給する室外送風機41をさらに備えている。冷房運転の暖機中において、室外送風機41の回転速度は、圧縮機10の吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでの間、起動直後の回転速度から増速されない。
【0081】
冷房運転の暖機中において室外送風機41の回転速度が増速されると、凝縮温度が低下し、油に溶解した冷媒の見かけの過冷却度が上昇して冷媒蒸発量が増大する。これにより、油が冷媒に巻き込まれて流出するため、油の流出量が増大する。
【0082】
上記構成によれば、室外送風機41の回転速度が増速されないため、圧縮機10の油量の減少を抑制でき、圧縮機10及び冷凍サイクル装置の品質を向上できる。また、運転能力が小さい暖機中における室外送風機41の入力が低減され、省エネ性が改善する。
【0083】
実施の形態5.
実施の形態5に係る冷凍サイクル装置について説明する。
図12は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の構成を示す回路図である。本実施の形態では、第1分岐部11が油分離器である。第1分岐部11と圧縮機10の吸入側との間は、油戻し管32によって接続されている。第2絞り装置31は、油戻し管32と並列に設けられている。第2絞り装置31としては、1段階の流量制御が可能な開閉弁が用いられてもよいし、中間開度を含む2段階の流量制御が可能な固定開度弁が用いられていてもよい。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置では、第1分岐部11は油分離器である。第2絞り装置31は、油分離器と圧縮機10の吸入側とを接続する油戻し管32と並列に設けられている。
【0085】
この構成によれば、油戻し管32とは異なる流路に第2絞り装置31が設けられるため、暖機後の油戻し流量を確保できるとともに、第2絞り装置31の誤作動又は第2絞り装置31の個体差による暖機中の流量ばらつきを抑制できる。
【0086】
実施の形態6.
実施の形態6に係る冷凍サイクル装置について説明する。
図13は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の構成を示す回路図である。
図13に示すように、冷凍サイクル装置は、第3回路53をさらに有している。第3回路53は、第3分岐部16において第1回路51から分岐し、第4分岐部17において第1回路51と合流している。第3分岐部16は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、第1分岐部11よりも下流側でかつ室内熱交換器20よりも上流側に設けられている。第4分岐部17は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、室外熱交換器40よりも下流側でかつ圧縮機10及びアキュムレータ14よりも上流側に設けられている。第3回路53には、第3絞り装置33が設けられている。第3絞り装置33は、制御部100によって制御されている。制御部100は、吐出冷媒の温度が第3温度以上第2温度以下の範囲内であるときは、第3絞り装置33を開状態にする。制御部100は、それ以外のときには第3絞り装置33を閉状態にする。
【0087】
図14は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において制御部により実行される起動時の処理の流れを示すフローチャートである。ステップS11~S14、及びS20~S22は、
図4の処理と同様である。制御部100のROMには、第2温度T2よりも低い第3温度の値が記憶されている。第3温度は、吐出冷媒の飽和温度に対し±3K以内となるように設定されている。
【0088】
ステップS15では、制御部100は、第3絞り装置33を閉状態にする。ステップS16では、制御部100は、吐出冷媒温度が第3温度以上であるか否かを判定する。吐出冷媒温度が第3温度以上である場合には、ステップS17の処理に移行する。吐出冷媒温度が第3温度未満である場合には、ステップS12の処理に戻る。
【0089】
ステップS17では、制御部100は、第3絞り装置33を開状態にする。ステップS18では、制御部100は、吐出冷媒温度が第2温度よりも高いか否かを判定する。吐出冷媒温度が第2温度よりも高い場合には、暖機を終了し、ステップS19の処理に移行する。吐出冷媒温度が第2温度以下の場合には、ステップS12の処理に戻る。ステップS19では、第3絞り装置33を閉状態にする。これにより、第3絞り装置33は、吐出冷媒の温度が第3温度以上第2温度以下の範囲内である間、開状態になる。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、第3分岐部16で第1回路51から分岐して第4分岐部17で第1回路51と合流するように構成され、第3絞り装置33が設けられた第3回路53をさらに備えている。第3分岐部16は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、第1分岐部11よりも下流側でかつ室内熱交換器20よりも上流側に設けられている。第4分岐部17は、暖房運転時の冷媒の流れにおいて、室外熱交換器40よりも下流側でかつ圧縮機10よりも上流側に設けられている。制御部100は、暖機中において、圧縮機10の吐出冷媒の温度が、第3温度以上でかつ第2温度以下である場合、第3絞り装置33を開状態にする。第3温度は、第2温度よりも低い温度である。
【0091】
暖機中において、圧縮機10の油に溶け込んだ冷媒は、吐出冷媒の温度が第3温度に到達すると沸騰する。液状態の冷媒がガス状態になると膨張するため、第2回路52の外部への流れが発生する。これにより、一定量の油が圧縮機10に戻らず、圧縮機10の機外に滞留する場合がある。
【0092】
上記構成によれば、沸騰したガス冷媒と共に押し流される低流速の油主体の流れは、第2回路52を通って圧縮機10に戻り、高流速のガス冷媒主体の流れは、第2回路52よりも経路長の長い第3回路53を通って圧縮機10に戻る。これにより、圧縮機10の機外への油の流出を抑制できる。
【0093】
第4分岐部17と第2分岐部15との間にアキュムレータ14等の冷媒容器を設けることにより、上記の冷媒膨張による冷媒と油の流動を抑制してもよい。
【0094】
実施の形態7.
実施の形態7に係る冷凍サイクル装置について説明する。
図15は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における室内送風機の回転速度の時間変化を示すグラフである。横軸は時間を表しており、縦軸は室内送風機21の回転速度を最大回転速度に対する比率によって表している。回転速度0%は、室内送風機21が停止していることを表している。
図16は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における圧縮機の周波数の時間変化を示すグラフである。横軸は時間を表しており、縦軸は圧縮機10の周波数を最大周波数に対する比率で表している。周波数0%は、圧縮機10が停止していることを表している。時間taは、圧縮機10が起動してから、吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでの経過時間を表している。
【0095】
図15及び
図16に示すように、暖機中において、吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するよりも前の時間tcに室内送風機21が停止する場合、制御部100は、吐出冷媒の温度が第2温度T2以上になるまでは圧縮機10を停止させないようにする。室内送風機21停止後の暖機中には、第1絞り装置30の開度は、全閉から第1開度の範囲になるように制御され、第2絞り装置31は、開状態となるように制御される。
【0096】
図17は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における圧縮機の周波数の時間変化の別の例を示すグラフである。
図17に示すように、制御部100は、吐出冷媒の温度が第2温度T2以上になるまでの間に圧縮機10を停止させなければ、室内送風機21の停止後に圧縮機10の周波数を減少させてもよい。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、室内熱交換器20に空気を供給する室内送風機21をさらに備えている。暖機中において、圧縮機10の吐出冷媒の温度が第2温度T2に達する前に室内送風機21が停止する場合、制御部100は、圧縮機10の吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでは圧縮機10を停止させないようにする。
【0098】
暖機中において、圧縮機10の吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでの間は、圧縮機10内の油に冷媒が溶解した状態である。このため、室内送風機21が停止したときに圧縮機10も同時に停止してしまうと、圧縮機10は、内部の油に冷媒が溶解した状態で停止することになる。このため、圧縮機10の次の起動時には、油に溶解した冷媒が沸騰し、圧縮機10から流出する油量が増大してしまう。
【0099】
上記構成によれば、室内送風機21が停止した後も、吐出冷媒の温度が第2温度T2に達するまでは圧縮機10の運転が継続されるため、圧縮機10内の油に溶解する冷媒量を減少させることができる。したがって、圧縮機10の次の起動時において、圧縮機10から流出する油量を減少させることができる。
【符号の説明】
【0100】
10 圧縮機、11 第1分岐部、12 流路切替装置、13 流量制御弁、14 アキュムレータ、15 第2分岐部、16 第3分岐部、17 第4分岐部、20 室内熱交換器、21 室内送風機、30 第1絞り装置、31 第2絞り装置、32 油戻し管、33 第3絞り装置、40 室外熱交換器、41 室外送風機、51 第1回路、52 第2回路、53 第3回路、70 室外機、71 室内機、100 制御部、101 室外温度センサ、102 吐出冷媒温度センサ、103 室内温度センサ、104 吐出圧力センサ、105 吸入圧力センサ。
【要約】
冷凍サイクル装置は、圧縮機、室内熱交換器、第1絞り装置及び室外熱交換器が設けられた第1回路と、第1分岐部で第1回路から分岐して第2分岐部で第1回路と合流するように構成され、第2絞り装置が設けられた第2回路と、圧縮機、第1絞り装置及び第2絞り装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、室外空気温度が第1温度よりも低い場合、圧縮機を起動してから圧縮機の吐出冷媒の温度が第2温度に達するまで、暖機を実行し、制御部は、暖機中には冷媒が第1回路よりも第2回路に多く流れ、暖機終了後には冷媒が第2回路よりも第1回路に多く流れるように、暖機中および暖機終了後の第1絞り装置の開度および第2絞り装置の開度を設定する。