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特許7595823情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 5/022 20230101AFI20241129BHJP
【FI】
G06N5/022
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2024559048
(86)(22)【出願日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2023017225
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西出 恭平
(72)【発明者】
【氏名】小泉 賢一
(72)【発明者】
【氏名】衣巻 頌子
(72)【発明者】
【氏名】古谷 史郎
(72)【発明者】
【氏名】平林 一文
(72)【発明者】
【氏名】志賀 諭
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0382361(US,A1)
【文献】特開2005-050115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の異常原因の推定のために前記機器の状態を確認する際に用いられる既存の確認ルールである既存確認ルールに記述されている前記機器の確認対象の要素及び前記機器の周辺環境の確認対象の要素のうちの少なくともいずれかである既存確認対象要素を前記既存確認ルールに記述されていない要素である新規確認対象要素に入れ替えて、前記既存確認ルールとは異なる複数の確認ルールを複数の新規確認ルールとして生成するルール生成部と、
前記新規確認ルールの各々の、前記機器の異常原因の推定への寄与度を算出する寄与度算出部と、
前記複数の新規確認ルールの中から、算出された寄与度が規定の選択条件に合致する新規確認ルールを選択する選択部とを有する情報処理装置。
【請求項2】
前記寄与度算出部は、
前記複数の新規確認ルールと前記既存確認ルールの各々の前記寄与度を算出し、
前記選択部は、
前記複数の新規確認ルールと前記既存確認ルールの中から、算出された寄与度が前記選択条件に合致する確認ルールを選択する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記寄与度算出部は、
前記選択部により選択された新規確認ルールの各々の新たな寄与度を算出し、
前記選択部は、
前記寄与度算出部により新たな寄与度が算出された新規確認ルールの中から、新たな寄与度が前記選択条件に合致する新規確認ルールを選択する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記寄与度算出部は、
前記選択部により選択された確認ルールの各々の新たな寄与度を算出し、
前記選択部は、
前記寄与度算出部により新たな寄与度が算出された確認ルールの中から、新たな寄与度が前記選択条件に合致する確認ルールを選択する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記寄与度算出部は、
前記複数の新規確認ルールを複数のグループに分類し、グループごとに、グループに含まれる新規確認ルールの前記寄与度を算出し、
前記選択部は、
グループごとに、算出された寄与度が前記選択条件に合致する新規確認ルールを選択する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ルール生成部は、
複数の既存確認ルールの複数の既存確認対象要素を総当たり方式で複数の新規確認対象要素に入れ替えて複数の新規確認ルールを生成する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記情報処理装置は、更に、
前記選択部により選択された確認ルールである選択確認ルールを用いて前記機器の異常原因を推定するための推定モデルを生成する推定モデル生成部を有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記推定モデル生成部は、
前記選択確認ルールと、前記機器の過去の異常事象が複数の異常原因のうちのいずれかの異常原因と対応付けて示される異常事象情報とを用いて、異常原因ごとに前記推定モデルを生成する請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記推定モデル生成部は、
前記選択確認ルールと、前記機器の過去の異常事象が複数のエラーコードのうちのいずれかのエラーコードと対応付けて示される異常事象情報とを用いて、エラーコードごとに前記推定モデルを生成する請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記情報処理装置は、更に、
前記機器に異常が発生した際に、前記選択確認ルールを用いて前記機器の状態を確認する状態確認部と、
前記状態確認部による確認結果と前記推定モデルとを用いて前記機器の異常原因を推定する原因推定部とを有する請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記情報処理装置は、更に、
前記機器に異常が発生した際に、前記選択確認ルールを用いた手動による前記機器の状態の確認により得られた確認結果と、前記推定モデルとを用いて前記機器の異常原因を推定する原因推定部を有する請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記情報処理装置は、更に、
前記状態確認部による確認結果と、前記原因推定部による推定結果とを表示する表示部を有する請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記表示部は、
前記状態確認部による確認結果として、前記選択確認ルールの当否を表示する請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記表示部は、
前記選択確認ルールに記述されている確認対象要素を可視化する請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記表示部は、
前記原因推定部により推定された異常原因によって発生した過去の異常で交換された部品を表示する請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項16】
コンピュータが、機器の異常原因の推定のために前記機器の状態を確認する際に用いられる既存の確認ルールである既存確認ルールに記述されている前記機器の確認対象の要素及び前記機器の周辺環境の確認対象の要素のうちの少なくともいずれかである既存確認対象要素を前記既存確認ルールに記述されていない要素である新規確認対象要素に入れ替えて、前記既存確認ルールとは異なる複数の確認ルールを複数の新規確認ルールとして生成し、
前記コンピュータが、前記新規確認ルールの各々の、前記機器の異常原因の推定への寄与度を算出し、
前記コンピュータが、前記複数の新規確認ルールの中から、算出された寄与度が規定の選択条件に合致する新規確認ルールを選択する情報処理方法。
【請求項17】
機器の異常原因の推定のために前記機器の状態を確認する際に用いられる既存の確認ルールである既存確認ルールに記述されている前記機器の確認対象の要素及び前記機器の周辺環境の確認対象の要素のうちの少なくともいずれかである既存確認対象要素を前記既存確認ルールに記述されていない要素である新規確認対象要素に入れ替えて、前記既存確認ルールとは異なる複数の確認ルールを複数の新規確認ルールとして生成するルール生成処理と、
前記新規確認ルールの各々の、前記機器の異常原因の推定への寄与度を算出する寄与度算出処理と、
前記複数の新規確認ルールの中から、算出された寄与度が規定の選択条件に合致する新規確認ルールを選択する選択処理とをコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機器の異常原因を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機器の異常原因を推定する技術として、特許文献1に開示の技術がある。
特許文献1の技術では、機種共通のネットワークモデル(共通保守知識ネットワーク)に基づいて、機種に対応した異常原因の推定を行う。
より具体的には、共通保守知識ネットワークに設定されている確認ルールから、発生した異常に関係する確認ルールが抽出される。確認ルールは、異常原因の推定のために機器の状態を確認する際に用いられるルールである。そして、抽出された確認ルールを用いて、異常に対応した保守知識ネットワークが生成される。次に、異常が発生した機種では発生しない故障に対応する確認ルールが取り除かれる。この結果、当該機種に対応した保守知識ネットワークが生成される。この保守知識ネットワークをベイジアンネットワークとして用いることで、異常原因を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-096546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、設計者が、共通保守知識ネットワークにおいて全ての異常に確認ルールを対応付ける必要がある。
つまり、特許文献1の技術では、設計者が、全ての異常に対して、異常と異常原因との因果関係を解析し、解析結果を反映した確認ルールを生成する必要がある。
しかし、設計者が全ての異常を網羅して確認ルールを生成することは困難であり、確認ルールの生成漏れが生じる可能性がある。確認ルールの生成漏れがあると、正しく異常原因を推定できないことになる。
このように、特許文献1の技術では、確認ルールの生成漏れに起因して異常原因を正しく推定できない事態が生じるという課題がある。
【0005】
本開示は、このような課題を解決することを主な目的とする。具体的には、本開示は、確認ルールの生成漏れを防止し、異常原因を正しく推定できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る情報処理装置は、
機器の異常原因の推定のために前記機器の状態を確認する際に用いられる既存の確認ルールである既存確認ルールに記述されている前記機器の確認対象の要素及び前記機器の周辺環境の確認対象の要素のうちの少なくともいずれかである既存確認対象要素を前記既存確認ルールに記述されていない要素である新規確認対象要素に入れ替えて、前記既存確認ルールとは異なる複数の確認ルールを複数の新規確認ルールとして生成するルール生成部と、
前記新規確認ルールの各々の、前記機器の異常原因の推定への寄与度を算出する寄与度算出部と、
前記複数の新規確認ルールの中から、算出された寄与度が規定の選択条件に合致する新規確認ルールを選択する選択部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、確認ルールの生成漏れを防止し、異常原因を正しく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る情報処理装置の機能構成例を示す図。
図2】実施の形態1に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す図。
図3】実施の形態1に係る情報処理装置の準備段階の動作例を示すフローチャート。
図4】実施の形態1に係る既存確認ルール情報の例を示す図。
図5】実施の形態1に係る新規確認ルール情報の例を示す図。
図6】実施の形態1に係る寄与度の算出結果の例を示す図。
図7】実施の形態1に係る異常事象情報の例を示す図。
図8】実施の形態1に係る解析結果情報の例を示す図。
図9】実施の形態1に係る解析結果情報の抽出例を示す図。
図10】実施の形態1に係る情報処理装置の活用段階の動作例を示すフローチャート。
図11】実施の形態1に係る計測データの例を示す図。
図12】実施の形態1に係る状態確認情報の例を示す図。
図13】実施の形態1に係る表示情報の例を示す図。
図14】実施の形態2に係る表示情報の例を示す図。
図15】実施の形態2に係る可視化方法情報の例を示す図。
図16】実施の形態3に係る計測データの例を示す図。
図17】実施の形態3に係る異常事象情報の例を示す図。
図18】実施の形態3に係る異常事象情報の例を示す図。
図19】実施の形態3に係るエラーコードに基づく解析結果情報の例を示す図。
図20】実施の形態4に係る異常事象情報の例を示す図。
図21】実施の形態4に係る出現回数の計数結果を示す図。
図22】実施の形態4に係る表示情報の例を示す図。
図23】実施の形態5に係る情報処理装置の準備段階の動作例を示すフローチャート。
図24】実施の形態6に係る情報処理装置の準備段階の動作例を示すフローチャート。
図25】実施の形態1に係る解析結果情報の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を図を用いて説明する。以下の実施の形態の説明及び図面において、同一の符号を付したものは、同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る情報処理装置100の機能構成例を示す。
また、図2は、本実施の形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成例を示す。
【0011】
本実施の形態に係る情報処理装置100の動作は準備段階と活用段階に大別される。
準備段階では、情報処理装置100は確認ルールを生成する。確認ルールは、機器200の異常原因の推定のために機器200の状態を確認する際に用いられるルールである。機器200は、例えば、エレベータ、空気調和機等である。
また、情報処理装置100は、準備段階において、確認ルールを用いて推定モデルを生成する。推定モデルは、機器200の異常原因を推定するための学習済みモデルである。
活用段階では、情報処理装置100は、機器200に異常が発生した際に、確認ルールを用いて機器の状態を確認する。また、情報処理装置100は、確認結果と推定モデルとを用いて機器200の異常原因を推定する。そして、情報処理装置100は、推定結果を情報処理装置100のユーザに提示する。情報処理装置100のユーザは、推定結果を参照して、機器200の異常原因を特定する。
情報処理装置100のユーザは、例えば、確認ルールの設計者、機器200の保守員等である。
【0012】
本実施の形態に係る情報処理装置100は、コンピュータである。
情報処理装置100の動作手順は、情報処理方法に相当する。また、情報処理装置100の動作を実現するプログラムは、情報処理プログラムに相当する。
【0013】
図2に示すように、情報処理装置100は、ハードウェアとして、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、通信装置904及び入出力装置905を備える。
また、情報処理装置100は、図1に示すように、機能構成として、ルール生成部111、ルール情報記憶部112、寄与度算出部113等を備える。図1に示すルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114、推定モデル生成部116、データ受信部121、状態確認部122、原因推定部123及び表示部124の機能は、例えば、プログラムにより実現される。
補助記憶装置903には、ルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等の機能を実現するプログラムが記憶されている。
これらプログラムは、補助記憶装置903から主記憶装置902にロードされる。そして、プロセッサ901がこれらプログラムを実行する。
図2は、プロセッサ901がルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等の機能を実現するプログラムを実行している状態を模式的に表している。
ルール情報記憶部112、異常事象情報記憶部115及び推定モデル記憶部117は、主記憶装置902及び/又は補助記憶装置903により実現される。
通信装置904は、機器200との通信を行う。
入出力装置905は、情報処理装置100のユーザからの指示を受け付ける。また、入出力装置905は、情報処理装置100のユーザに各種情報を表示する。入出力装置905は、マウス、キーボード、ディスプレイ等である。
【0014】
図1において、ルール生成部111は、既存の確認ルールを用いて、既存の確認ルールとは異なる複数の確認ルールを生成する。以下では、既存の確認ルールを既存確認ルールという。また、以下では、ルール生成部111が既存確認ルールを用いて生成する複数の確認ルールをそれぞれ新規確認ルールという。
ルール生成部111により行われる処理は、ルール生成処理に相当する。
【0015】
ルール情報記憶部112は、確認ルール情報を記憶する。
確認ルール情報には確認ルールが含まれる。確認ルール情報の詳細は後述する。
ルール情報記憶部112は、確認ルール情報として、既存確認ルール情報と新規確認ルール情報を記憶する。既存確認ルール情報には、既存確認ルールが含まれる。また、新規確認ルール情報には、新規確認ルールが含まれる。
【0016】
寄与度算出部113は、新規確認ルールの各々の、機器200の異常原因の推定への寄与度を算出する。また、寄与度算出部113は、既存確認ルールの寄与度を算出してもよい。つまり、寄与度算出部113は、複数の新規確認ルールと既存確認ルールの各々の寄与度を算出してもよい。
寄与度算出部113は、例えば、寄与度として、RandomForestの特徴量の重要度、回帰分析の重み等を算出する。
寄与度算出部113により行われる処理は、寄与度算出処理に相当する。
【0017】
異常事象情報記憶部115は、異常事象情報を記憶する。異常事象情報は、機器200に発生した過去の異常事象を示す。異常事象情報の詳細は後述する。
【0018】
選択部114は、ルール生成部111により生成された複数の新規確認ルールの中から、寄与度算出部113により算出された寄与度が規定の選択条件に合致する新規確認ルールを選択する。
寄与度算出部113により既存確認ルールの寄与度も算出された場合は、選択部114は、複数の新規確認ルールと既存確認ルールの中から、寄与度が選択条件に合致する確認ルールを選択する。
選択部114により選択された確認ルールは選択確認ルールという。
選択部114により行われる処理は選択処理に相当する。
【0019】
推定モデル生成部116は、選択確認ルールと異常事象情報を用いて推定モデルを生成する。
【0020】
推定モデル記憶部117は、推定モデル生成部116により生成された推定モデルを記憶する。
【0021】
データ受信部121は、機器200で異常が発生した場合に計測データを受信する。計測データには、機器200で計測された値又は機器200の周辺環境での計測された値が示される。計測データの詳細は後述する。
【0022】
状態確認部122は、計測データと選択確認ルールとを用いて機器200の状態を確認する。
【0023】
原因推定部123は、状態確認部122の状態確認結果と推定モデルとを用いて機器200の異常原因を推定する。
【0024】
表示部124は、状態確認部122の状態確認結果と、原因推定部123の異常原因の推定結果を表示する。
【0025】
***動作の説明***
図3は、本実施の形態に係る情報処理装置100の準備段階の動作例を示すフローチャートである。
図3を参照して、情報処理装置100の準備段階の動作例を説明する。
【0026】
ステップS111において、ルール生成部111が既存確認ルールを用いて新規確認ルールを生成する。
以下に、ルール生成部111の新規確認ルールの生成手順を説明する。
【0027】
図4は、既存確認ルールを含む既存確認ルール情報1121の例を示す。
既存確認ルール情報1121には、ルール番号と確認項目と確認ルールとが含まれる。既存確認ルール情報1121に含まれる確認ルールは既存確認ルールである。
【0028】
ルール番号は、確認ルールの識別番号である。
確認項目は、複数の確認項目のうちの確認ルールが対象とする確認項目である。確認項目は機器200に異常が発生した際に後述する状態確認部122が確認すべき項目である。図4では、確認項目の記載を確認項目1、確認項目2のように抽象化しているが、実際の運用では、機器200の具体的な確認項目が記載される。例えば、確認項目の例として、「機器200の異常を検出した際の機器200の信号値が適切な値であるか否か」についての確認項目が考えられる。また、確認項目の別の例として、「機器200の2以上の信号について信号値の変化の順序が適正であるか否か」についての確認項目が考えられる。
確認ルールには、確認項目が対象とする確認を実現するための詳細が示される。図4の確認項目1は「機器200の異常を検出した際の機器200の信号値が適切な値であるか否か」についての確認項目である。確認項目1が対象とする確認を実現するために、確認項目1に対応する確認ルールでは「異常検出時に信号Aの値がONか?」というルールが記述されている。「信号A」は機器200で用いられる信号である。
また、既存確認ルール情報1121の確認ルール(既存確認ルール)では、状態確認部122による確認の対象となる要素(確認対象要素)が示される。図4の例では、1行目の「信号A」、2行目の「信号B」及び「信号C」、3行目の「信号D」及び「信号E」が確認対象要素である。
図4では、機器200で用いられる信号が確認対象要素として既存確認ルールに記述されている。これに加えて、機器200の周辺環境で計測される値(例えば、温度、湿度等)が確認対象要素として既存確認ルールに記述されていてもよい。また、機器200の周辺環境で計測される値のみが確認対象要素として既存確認ルールに記述されていてもよい。
既存確認ルールに記述されている確認対象要素を既存確認対象要素という。
なお、以下では、説明の簡明化のため、既存確認対象要素は全て、機器200で用いられる信号であるとする。
【0029】
ルール生成部111は、既存確認対象要素を既存確認ルールに記述されていない要素である新規確認対象要素に入れ替えて新規確認ルールを生成する。ルール生成部111は、総当たり方式にて、既存確認対象要素を新規確認対象要素に入れ替えて新規確認ルールを生成する。
ルール情報記憶部112には、新規確認対象要素として用いることができる要素が列記された確認対象要素情報が記憶されている。本実施の形態の形態では、確認対象要素情報に機器200で用いられる信号の信号名が列記されているものとする。ルール生成部111は、確認対象要素情報に列記されている信号名を新規確認対象要素として用いて新規確認ルールを生成する。
【0030】
図5は、新規確認ルールが含まれる新規確認ルール情報1122の例を示す。
新規確認ルール情報1122でも、ルール番号と確認項目と確認ルールとが含まれる。新規確認ルール情報1122に含まれる確認ルールは新規確認ルールである。
ルール番号では、新規確認ルールの生成元の既存確認ルールのルール番号との関連性が示される。具体的には、ルール番号1の既存ルールを用いて生成された新規確認ルールには、ルール番号1-aのように、ルール番号1に接尾子が追加されたルール番号が設定される。
確認項目は、図4に示すものと同様である。
新規確認ルール情報1122の確認ルール(新規確認ルール)は、生成元の既存確認ルールの既存確認対象要素を新規確認対象要素に入れ替えて得られる確認ルールである。
例えば、ルール番号1-aの新規確認ルールでは、ルール番号1の既存確認ルールの既存確認対象要素「信号A」が新規確認対象要素「信号B」に入れ替わっている。
同様に、ルール番号2-aの新規確認ルールでは、ルール番号2の既存確認ルールの既存確認対象要素「信号B」及び「信号C」が新規確認対象要素「信号A」及び「信号B」に入れ替わっている。
同様に、ルール番号3-aの新規確認ルールでは、ルール番号3の既存確認ルールの既存確認対象要素「信号D」及び「信号E」が新規確認対象要素「信号A」及び「信号B」に入れ替わっている。
図5では、新規確認ルールと既存確認ルールとの関係が明確になるように、新規確認ルールのルール番号に生成元の既存確認ルールのルール番号が含まれるようにしている。これに代えて、新規確認ルールのルール番号として、生成元の既存確認ルールのルール番号と無関係のルール番号を用いるようにしてもよい。
【0031】
このように、ルール生成部111は、既存確認対象要素を既存確認ルールに記述されていない要素である新規確認対象要素に入れ替えて新規確認ルールを生成する。
【0032】
ルール生成部111は、既存確認ルール情報1121と新規確認ルール情報1122を寄与度算出部113に出力する。
本実施の形態では、寄与度算出部113が既存確認ルールと新規確認ルールの寄与度を算出する例を説明する。このため、ルール生成部111は、既存確認ルール情報1121と新規確認ルール情報1122を寄与度算出部113に出力する。寄与度算出部113が新規確認ルールの寄与度のみを算出する場合は、ルール生成部111は新規確認ルール情報1122のみを寄与度算出部113に出力する。
【0033】
図3に戻り、ステップS112において、寄与度算出部113が、既存確認ルールと新規確認ルールの寄与度を算出する。より具体的には、寄与度算出部113は、異常事象情報記憶部115の異常事象情報に対し、RandomForest、Permutaion Importance等を用いて、ルール情報記憶部112の確認ルールごとに、寄与度を算出する。
寄与度算出部113は、寄与度の算出に特徴量の重要度を用いる。
本実施の形態では、特徴量は確認ルールである。
寄与度算出部113がRandomForestを用いる場合は、寄与度算出部113は、ジニ不純度の減少度合いの統計量を参照することで特徴量の重要度を算出することができる。
また、寄与度算出部113は、Permutaion Importance等を用いて特徴量の重要度を算出してもよい。
また、寄与度算出部113は他の方法を用いて寄与度を算出してもよい。
寄与度算出部113は、既存確認ルール情報1121と新規確認ルール情報1122と、確認ルールごとの寄与度を選択部114に出力する。
異常事象情報は、前述したように、機器200に発生した過去の異常事象を示す。寄与度算出部113は異常事象情報記憶部115から異常事象情報を取得する。
【0034】
図7は、異常事象情報の例を示す。
異常事象情報は、事象番号、複数の信号値及び異常原因で構成される。
事象番号は、異常事象の番号である。
信号値は、機器200で異常が発生した後に計測された各信号の値の時系列推移である。各信号は1ビット信号である。
また、信号値には電圧値のように、1ビット信号以外の値が含まれていてもよい。
異常原因は、情報処理装置100のユーザにより特定された異常原因である。
【0035】
寄与度算出部113は、異常事象情報の事象番号ごとに、異常事象情報の信号値に基づき、各選択確認ルールが該当するか否かを解析する。
ここでは、寄与度算出部113が、既存確認ルールと新規確認ルールが該当するか否かを解析したものとする。
図25は、寄与度算出部113の解析結果が記述された解析結果情報を示す。図25の「1」、「1―a」、「1-b」、「2」、「2-a」及び「4-z」は、既存確認ルールと新規確認ルールのルール番号である。
図25の解析結果情報において、値1は各異常事象の複数の信号値に対して既存確認ルール又は選択確認ルールが該当したことを意味する。値0は既存確認ルール又は選択確認ルールが該当しなかったことを意味する。
例えば、「1」の確認ルールが「異常検出時に信号Aの値がONか?」というルールであるものとする。寄与度算出部113が事象番号1の信号Aの信号値を解析した結果、信号Aの値がONになっている場合は、図25に示すように、「事象番号1」と「1」との組み合わせに対して値1が設定される。
【0036】
ステップS113では、選択部114が、既存確認ルール及び新規確認ルールの中から、寄与度が規定の選択条件に合致する確認ルールを選択する。
例えば、選択部114は、「閾値以上の寄与度の確認ルールを選択する」との選択条件を用いて確認ルールを選択する。
また、選択部114は、「寄与度が上位n番目以内の確認ルールを選択する」との選択条件を用いて確認ルールを選択してもよい。
また、選択部114は、「ルール番号ごとに最も高い寄与度の確認ルールを選択する」との選択条件を用いて確認ルールを選択してもよい。
図6は、選択部114が閾値「0.60」以上の寄与度の確認ルールを選択確認ルールとして選択している例を示す。
選択部114は、選択確認ルールが含まれる既存確認ルール情報1121及び/又は新規確認ルール情報1122を推定モデル生成部116に出力する。
また、選択部114は、選択確認ルールが含まれる既存確認ルール情報1121及び/又は新規確認ルール情報1122をルール情報記憶部112に格納する。
【0037】
ステップS115では、推定モデル生成部116が、推定モデルを生成する。
推定モデル生成部116は、選択部114から取得した既存確認ルール情報1121及び/又は新規確認ルール情報1122と、異常事象情報とを用いて、推定モデルを生成する。
【0038】
推定モデル生成部116は、異常事象情報の事象番号ごとに、異常事象情報の信号値に基づき、各選択確認ルールが該当するか否かを解析する。
ここでは、推定モデル生成部116が、図6で選択された各選択確認ルールが該当するか否かを解析したものとする。
図8は、推定モデル生成部116の解析結果が記述された解析結果情報を示す。図8の「2-m」、「3―f」、「1」、「4-g」、「3-p」及び「2-r」は、図6で選択された各選択確認ルールのルール番号である。
図8の解析結果情報において、値1は各異常事象の複数の信号値に対して選択確認ルールが該当したことを意味する。値0は選択確認ルールが該当しなかったことを意味する。
例えば、「2-m」の選択確認ルールが「信号Fの値がONになった後に信号Gの値がOFFになったか?」というルールであるものとする。推定モデル生成部116が事象番号1の信号Fの信号値と信号Gの信号値を解析した結果、信号Fの値がONになった後に信号Gの値がOFFになっている場合は、図8に示すように、「事象番号1」と「2-m」との組み合わせに対して値1が設定される。
【0039】
推定モデル生成部116は、選択確認ルールと異常原因の関係性を学習して、異常原因を推定する推定モデルを生成する。
より具体的には、推定モデル生成部116は、入力データと出力データの因果関係を統計的に推定する考え方である、統計的因果推論を用いて、異常原因に因果関係がある選択確認ルールを推定し、グラフを構築する。そして、推定モデル生成部116は本グラフにベイジアンネットワークを適用して、故障を推定する推定モデルを生成する。
なお、本実施の形態では、一つの推定モデルを生成することとしているが、推定モデル生成部116は、異常原因ごとに推定モデルを生成するようにしてもよい。
より具体的には、推定モデル生成部116は、解析結果情報から異常原因ごとに該当するレコードを抽出する。そして、推定モデル生成部116は、抽出したレコードを学習して推定モデルを生成する。
図9は、推定モデル生成部116が解析結果情報から異常原因1のレコードを抽出した例を示す。例えば、図9に示すように、解析結果情報において、事象番号1、事象番号5、事象番号11、事象番号14及び事象番号25に異常原因1が記述されていた場合は、推定モデル生成部116は、これらのレコードを学習対象として解析結果情報から抽出する。そして、推定モデル生成部116は、抽出したレコードを学習して推定モデルを生成する。推定モデル生成部116は、他の異常原因についても、同様の手順で推定モデルを生成する。
【0040】
推定モデル生成部116は、解析結果情報と生成した推定モデルを推定モデル記憶部117に格納する。
【0041】
次に、情報処理装置100の活用段階の動作例を図10を参照して説明する。
図10は、情報処理装置100の活用段階の動作例を示すフローチャートである。
【0042】
機器200に異常が発生した場合に、ステップS121において、データ受信部121が機器200から周期的に計測データを受信する。
データ受信部121は、選択確認ルールが対象とする複数の確認項目の各々において機器200で計測された計測データを受信する。
データ受信部121は、受信した計測データを状態確認部122に出力する。
データ受信部121は、例えば、図11に示すように、各信号の値の時間推移を示す計測データを状態確認部122に出力する。
【0043】
次に、ステップS122において、状態確認部122が、計測データと選択確認ルールとを用いて、機器200の状態を確認する。
具体的には、状態確認部122は、各信号の値の時間推移に対して各選択確認ルールが該当するか否かを確認する。
図12は、状態確認情報を示す。状態確認情報では、状態確認部122による状態確認の結果が示される。
図12の「2-m」、「3―f」、「1」、「4-g」、「3-p」及び「2-r」は、選択確認ルールのルール番号である。
図12の状態確認結果情報において、値1は各信号の値の時間推移に対して選択確認ルールが該当したことを意味する。値0は選択確認ルールが該当しなかったことを意味する。
状態確認部122は、図11の計測データと図12の状態確認結果情報を原因推定部123に出力する。
【0044】
次に、ステップS123において、原因推定部123が機器200の異常原因を推定する。
より具体的には、原因推定部123は、推定モデル記憶部117から解析結果情報(図8)を取得する。そして、状態確認部122から取得した状態確認結果情報と解析結果情報を比較し、異常原因の候補を選択する。
図12の状態確認結果情報では、選択確認ルール1、選択確認ルール2-m、選択確認ルール3-f及び選択確認ルール4―gが該当している。
ここでは、図8において、異常原因が異常原因1であると特定された過去の異常事象で、これらの選択確認ルールが高確率で該当していたものとする。また、図8において、異常原因が異常原因2であると特定された過去の異常事象で、これらの選択確認ルールが中確率で該当していたものとする。更に、異常原因が異常原因3であると特定された過去の異常事象で、これらの選択確認ルールが低確率で該当していたものとする。
この場合は、原因推定部123は、異常原因の候補として、異常原因1~異常原因3を選択する。
そして、原因推定部123は、推定モデルを推定モデル記憶部117から取得する。更に、原因推定部123は、推定モデルに図11の計測データを適用して、異常原因を推定する。
原因推定部123は、例えば、推定結果として、各候補が異常の原因である確率を算出する。ここでは、例えば、原因推定部123は、「異常の原因が異常原因1である確率が80%、異常原因2である確率が16%、異常原因2である確率が4%」といった推定結果を算出する。
そして、原因推定部123は、異常原因の推定結果を表示部124に出力する。
【0045】
最後に、ステップS124において、表示部124が、異常原因の推定結果を入出力装置905のディスプレイに表示する。
【0046】
例えば、表示部124は、図13に例示する表示情報1240を表示する。なお、図13では、「異常原因」を「原因」と短縮表記している。
表示情報1240では、原因推定部123による推定結果1241が示される。推定結果1241には、原因推定部123により選択された異常原因の候補(図13では原因候補と表記)とその確率が表示される。
また、表示情報1240では、異常原因の候補(図13では原因1、原因2及び原因3と表記)と選択確認ルールとの相関図1242が表示される。相関図1242では、最も確率が高い異常原因の候補(図13では原因1)と、当該候補に関連する選択確認ルールとの関係が強調表示される。
更に、表示情報1240では、原因候補と関連する選択確認ルールのリスト1243が表示される。リスト1243では、相関図1242で最も確率が高い異常原因の候補(図13では原因1)と関連付けられた選択確認ルールが列記される。
【0047】
その後、情報処理装置100のユーザが表示情報1240を参照して、機器200の異常原因を調査する。
情報処理装置100のユーザは、機器200の異常原因が特定できた場合は、特定した異常原因を計測データに追加する。そして、情報処理装置100のユーザは、異常原因が追加された計測データを異常事象情報として入出力装置905を用いて異常事象情報記憶部115に格納する。
【0048】
なお、上記では、ステップS122において状態確認部122が計測データと選択確認ルールとを用いて、機器200の状態を確認することとしている。
これに代えて、情報処理装置100のユーザが手動で計測データと選択確認ルールとを用いて、機器200の状態を確認してもよい。
この場合は、情報処理装置100のユーザは、図12の状態確認情報に相当する確認結果を入出力装置905を用いて情報処理装置100に入力する。
原因推定部123は、情報処理装置100のユーザから入力された確認結果を用いてステップS123を行う。
【0049】
***実施の形態の効果の説明***
本実施の形態では、既存確認ルールの既存確認対象要素を総当たり方式で複数の新規確認対象要素に入れ替えて複数の新規確認ルールを生成する。このため、本実施の形態によれば、確認ルールの生成漏れを防止し、異常原因を正しく推定できるようにすることができる。
また、異常原因を正しく推定できることで、異常発生時の情報処理装置100のユーザの対応作業(異常原因の特定作業)の時間を短縮することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、情報処理装置100のユーザが認識していない、異常原因の推定に有効な確認ルールを生成することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、表示情報1240において異常原因の推定に関連した選択確認ルールが表示される。このため、本実施の形態によれば、情報処理装置100のユーザは、異常原因の特定作業において、表示された選択確認ルールを参考にすることができる。
【0052】
実施の形態2.
本実施の形態では、表示部124が実施の形態1と異なる表示情報1240を表示する。
本実施の形態では、主に実施の形態1との差異を説明する。
なお、以下で説明していない事項は、実施の形態1と同様である。
【0053】
図14は、本実施の形態に係る表示部124による表示情報1240の例を示す。
図14では、作図上の理由から推定結果1241と相関図1342の詳細な図示は省略している。しかし、図14でも図13と同様の推定結果1241と相関図1342が表示されているものとする。
【0054】
本実施の形態では、表示部124は、状態確認部122による状態確認により得られた当否結果1244を表示する。当否結果1244は、状態確認部122による状態確認において各選択確認ルールが該当したか否かを示す。
「YES」は原因推定部123による状態確認において選択確認ルールが該当したことを表す。一方、「No」は選択確認ルールが該当しなかったことを表す。図14の例では、状態確認部122による状態確認において選択確認ルール3-fは該当しないと判定されたものとする。
また、表示部124は、「No」の原因となった信号名を強調表示するようにしてもよい。図14の例では、選択確認ルール3-fが該当しないと判定された原因は「信号R」であるため、表示部124は、「信号R」を強調表示する。
なお、本実施の形態では、原因推定部123は、推定結果に加えて状態確認情報(図12)を表示部124に出力する。本実施の形態では、状態確認情報(図12)において選択確認ルール3-fには値0が設定されているものとする。表示部124は、状態確認情報での値に従い、当否結果1244を表示する。
【0055】
また、本実施の形態では、表示部124は、選択確認ルールの確認対象要素である信号の信号値の時間推移1245を可視化する。具体的には、選択確認ルール1では、信号Aが確認対象要素であるので、計測データでの信号Aの値の時間推移が可視化される。また、選択確認ルール2-mでは、信号Fと信号Gが確認対象要素であるので、計測データでの信号Fと信号Gの値の時間推移が可視化される。また、選択確認ルール3-fでは、信号Eと信号Rが確認対象であるので、計測データでの信号Eと信号Rの値の時間推移が可視化される。
表示部124は、信号ごとに可視化の方法を変化させてもよい。表示部124は、図15に示すように、信号ごとに可視化の方法が指定された可視化方法情報を保持し、可視化方法情報で指定された方法で信号の値を可視化する。
図14では、作図上の理由から図13に示す選択確認ルール4-gの行の図示を省略している。しかし、図14においても、選択確認ルール4-gについて、可視化方法情報で指定された方法で信号値が可視化されるものとする。
【0056】
以上、本実施の形態では、表示情報1240において各選択確認ルールの当否が表示される。また、本実施の形態では、表示情報1240において各選択確認ルールの確認対象要素である信号の値の時間推移が可視化される。
以上より、情報処理装置100のユーザは、本実施の形態に係る表示情報1240を異常原因の特定作業に利用することができる。また、情報処理装置100のユーザは、本実施の形態に係る表示情報1240を参照することで、原因推定部123の推定結果を信頼することができる。
【0057】
実施の形態3.
本実施の形態では、推定モデル生成部116が実施の形態1と異なる単位で推定モデルを生成する。実施の形態1では、推定モデル生成部116は、異常原因の単位で推定モデルを生成する。本実施の形態では、推定モデル生成部116は、エラーコードの単位で推定モデルを生成する。
本実施の形態では、主に実施の形態1との差異を説明する。
なお、以下で説明していない事項は、実施の形態1と同様である。
【0058】
図16は、本実施の形態に係る計測データの例を示す。
図16では、図11の計測データと比較してエラーコードが追加されている。
エラーコードは、機器200の異常発生時に機器200により計測データに付加される。エラーコードには、機器200により認識された異常の類型が示される。
【0059】
図17は、本実施の形態に係る異常事象情報の例を示す。
本実施の形態では、異常事象情報記憶部115は、図17に例示する異常事象情報を記憶している。
図17では、図7の異常事象情報と比較してエラーコードが追加されている。
本実施の形態でも、情報処理装置100のユーザは、表示部124により表示情報1240が表示されると、機器200の異常原因を特定し、特定した異常原因を図16の計測データに追加する。そして、情報処理装置100のユーザは、異常原因が追加された計測データを異常事象情報として入出力装置905を用いて異常事象情報記憶部115に格納する。
この結果、異常事象情報記憶部115は、図17に例示する異常事象情報を記憶する。
図17の例では、事象番号1及び事象番号5の異常事象の発生時に計測データにエラーコードαが設定されていた。また、事象番号2の異常事象の発生時に計測データにエラーコードαが設定されていた。また、事象番号3の異常事象の発生時に計測データにエラーコードβが設定されていた。更に、事象番号4の異常事象の発生時に計測データにエラーコードβが設定されていた。
そして、情報処理装置100のユーザの解析により、事象番号1及び事象番号5の異常事象は異常原因1によると判明した。また、事象番号2の異常事象は異常原因2によると判明した。同様に、事象番号3の異常事象は異常原因3によると判明した。また、事象番号4の異常事象は異常原因4によると判明した。
このため、図17に示すように、本実施の形態に係る異常事象情報では、事象番号1と事象番号2と事象番号5の異常事象にエラーコードαが対応付けられている。また、事象番号3の異常事象と事象番号4の異常事象にエラーコードβが対応付けられている。
【0060】
なお、異常原因が同じ異常事象でも異なるエラーコードが設定される場合がある。図18は、事象番号1の異常事象の発生時に計測データにエラーコードαが設定され、事象番号5の異常事象の発生時に計測データにエラーコードγが設定されていた例を示す。後の解析で、事象番号1の異常事象も事象番号5の異常事象も異常原因1によると判明したが、異常事象情報では、事象番号1の異常事象と事象番号5の異常事象は異なるエラーコードに対応付けられている。
【0061】
本実施の形態では、寄与度算出部113は、異常事象情報(図17)のエラーコードαの異常事象に確認ルールを適用して、解析結果情報を得る。例えば、エラーコードαの異常事象に確認ルールを適用して得られた解析結果情報を図19の上段に示す。
次に、寄与度算出部113は、当該解析結果情報を用いて、エラーコードαの異常原因の推定をするときの確認ルールごとの寄与度を算出する。
次に、選択部114が、エラーコードαについて、寄与度が高い確認ルールを選択する。
【0062】
同様に、寄与度算出部113は、異常事象情報(図17)のエラーコードβの異常事象に確認ルールを適用して、解析結果情報を得る。例えば、エラーコードβの異常事象に確認ルールを適用して得られた解析結果情報を図19の下段に示す。
次に、寄与度算出部113は、当該解析結果情報を用いて、エラーコードβの異常原因の推定をするときの確認ルールごとの寄与度を算出する。
次に、選択部114が、エラーコードβについて、寄与度が高い確認ルールを選択する。選択部114は、エラーコードβについて、エラーコードαとは異なる確認ルールを選択する。
【0063】
その後、推定モデル生成部116は、エラーコードごとに、異常原因を推定する推定モデルを生成する。
図19の例では、エラーコードαについては、推定モデル生成部116は、ルール番号「2-m」、「3-f」、「1」、「4-g」、「3-p」、「2―r」の確認ルールを学習して、推定モデルを生成する。同様に、エラーコードβについては、推定モデル生成部116は、ルール番号「3-c」、「2-r」、「4」、「1-b」、「2」及び「4-h」の確認ルールを学習して、推定モデルを生成する。
【0064】
また、機器200に異常が発生した場合に、原因推定部123は、計測データに付加されているエラーコードに対応する推定モデルを用いて異常原因を推定する。
例えば、計測データにエラーコードαが付加されている場合は、原因推定部123は、エラーコードαに対応する推定モデルを用いて異常原因を推定する。
【0065】
以上、本実施の形態では、エラーコードの単位で推定モデルが生成される。このため、本実施の形態によれば、異常発生時のエラーコードに合わせて適切な推定モデルを用いて正確に異常原因を推定することができる。
【0066】
実施の形態4.
本実施の形態では、表示部124が、原因推定部123により推定された異常原因で交換される頻度が高い部品を表示する例を説明する。
本実施の形態では、主に実施の形態1との差異を説明する。
なお、以下で説明していない事項は、実施の形態1と同様である。
【0067】
図20は、本実施の形態に係る異常事象情報の例を示す。
図20では、図7の異常事象情報に交換部品の欄が追加されている。
本実施の形態では、情報処理装置100のユーザは、表示部124により表示情報1240が表示されると、機器200の異常原因を特定するとともに、機器200の部品の交換が必要か否かを判定する。そして、部品の交換が必要な場合は、ユーザは、特定した異常原因と交換が必要な部品名を計測データに追加する。そして、情報処理装置100のユーザは、異常原因と部品名が追加された計測データを異常事象情報として入出力装置905を用いて異常事象情報記憶部115に格納する。
この結果、本実施の形態に係る異常事象情報では、図20に示すように、過去に発生した異常で交換された部品が示される。
なお、本実施の形態の形態でも、実施の形態3のように異常事象情報にエラーコードが含まれていてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、原因推定部123は、図10のステップS123において異常原因の推定を行った後に、交換を推奨する部品を判定する。
例えば、原因推定部123が、前述のように、「異常の原因が異常原因1である確率が80%、異常原因2である確率が16%、異常原因2である確率が4%」という推定結果を算出したとする。この場合に、原因推定部123は、図21に示すように、最も確率の高い異常原因である異常原因1について、交換部品の出現回数を計数する。
そして、表示部124は、図22に示すように、異常原因1の交換部品の出現回数を交換件数1246として、推定結果1241の異常原因1に対応付けて表示する。
【0069】
情報処理装置100のユーザは、表示情報1240を参照して、機器200の今回の異常において交換件数1246に示される部品の交換が必要か否かを検討する。
【0070】
本実施の形態では、最も確率の高い異常原因である異常原因1についてのみ交換件数1246を表示する例を示した。確率の低い異常原因である異常原因2及び異常原因3についても交換件数1246を表示してもよい。
【0071】
以上、本実施の形態では、過去の異常での部品の交換件数が示される。このため、本実施の形態によれば、情報処理装置100のユーザは、交換を検討すべき部品を適切に把握することができる。
【0072】
実施の形態5.
本実施の形態では、寄与度算出部113による寄与度の算出と選択部114による選択確認ルールの選択を複数回行う。
本実施の形態では、主に実施の形態1との差異を説明する。
なお、以下で説明していない事項は、実施の形態1と同様である。
【0073】
図23は、本実施の形態に係る情報処理装置100の準備段階の動作例を示すフローチャートである。
【0074】
図23において、ステップS111は図3に示すものと同様である。
本実施の形態では、規定の繰り返し回数に達するまで(ステップS115でYES)、ステップS112とステップS113とが繰り返される。例えば繰り返し回数が2回であれば、寄与度算出部113と選択部114は、以下のように動作する。
【0075】
1度目のステップS112において、寄与度算出部113が例えばRandomForestを用いて既存確認ルール情報1121及び新規確認ルール情報1122の各々の寄与度を算出する。そして、1度目のステップS113において、選択部114が1度目のステップS112の寄与度に基づき、複数の選択確認ルールを選択し、複数の選択確認ルールを寄与度算出部113に出力する。
寄与度算出部113は、2度目のステップS112において、例えば、Permutaion Importanceを用いて複数の選択確認ルールの各々の寄与度を算出する。そして、2度目のステップS113において、選択部114が2度目のステップS112の寄与度に基づき、複数の選択確認ルールの中から新たな選択確認ルールを選択する。選択部114は、新たな選択確認ルールを推定モデル生成部116に出力する。
選択部114の選択確認ルールの選択方法は、実施の形態1で説明したものと同様である。
また、図23において、ステップS114は図3に示すものと同様である。
【0076】
このように、本実施の形態では、寄与度の算出と選択確認ルールの選択を複数回繰り返す。このため、本実施の形態によれば、異常原因の推定のためにより有効な確認ルールを選択することができる。
【0077】
実施の形態6.
本実施の形態では、寄与度算出部113が既存確認ルールと複数の新規確認ルールを複数のグループに分類し、グループごとに寄与度を算出する。そして、選択部114が、グループごとに、寄与度が選択条件に合致する確認ルールを選択確認ルールとして選択する。
本実施の形態では、主に実施の形態1との差異を説明する。
なお、以下で説明していない事項は、実施の形態1と同様である。
【0078】
図24は、本実施の形態に係る情報処理装置100の準備段階の動作例を示すフローチャートである。
【0079】
図24において、ステップS111は図3に示すものと同様である。
本実施の形態では、ステップS116において、寄与度算出部113が、ステップS111で生成された複数の新規確認ルール及び既存確認ルールを複数のグループに分類する。寄与度算出部113は、例えば、ランダムに複数の新規確認ルール及び既存確認ルールをグループに分類する。寄与度算出部113は、どのような方法で複数の新規確認ルール及び既存確認ルールをグループに分類してもよい。
次に、ステップS1121において、寄与度算出部113が、グループごとに、グループに含まれる確認ルールの各々の寄与度を算出する。
寄与度算出部113の寄与度の算出方法は、実施の形態1で説明したものと同様である。
次に、ステップS1131において、選択部114が、ステップS1121で算出された寄与度に基づき、グループごとに、グループに含まれる確認ルールの中から選択確認ルールを選択する。
選択部114の選択確認ルールの選択方法は、実施の形態1で説明したものと同様である。
最後に、ステップS114において、推定モデル生成部116が、各グループの選択確認ルールを用いて推定モデルを生成する。
推定モデル生成部116の推定モデルの生成方法は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0080】
本実施の形態では、確認ルールを複数のグループに分類し、グループごとに寄与度を算出し、グループごとに選択確認ルールを選択する。このため、新規確認ルールの生成数が多くても、効率的に選択確認ルールを選択することができる。
【0081】
以上、実施の形態1~6を説明したが、これらの実施の形態のうち、2つ以上を組み合わせて実施しても構わない。
あるいは、これらの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。
あるいは、これらの実施の形態のうち、2つ以上を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
また、これらの実施の形態に記載された構成及び手順を必要に応じて変更してもよい。
【0082】
***ハードウェア構成の補足説明***
最後に、情報処理装置100のハードウェア構成の補足説明を行う。
図2に示すプロセッサ901は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。
プロセッサ901は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。
図2に示す主記憶装置902は、RAM(Random Access Memory)である。
図2に示す補助記憶装置903は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等である。
図2に示す通信装置904は、データの通信処理を実行する電子回路である。
通信装置904は、例えば、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0083】
また、補助記憶装置903には、OS(Operating System)も記憶されている。
そして、OSの少なくとも一部がプロセッサ901により実行される。
プロセッサ901はOSの少なくとも一部を実行しながら、ルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等の機能を実現するプログラムを実行する。
プロセッサ901がOSを実行することで、タスク管理、メモリ管理、ファイル管理、通信制御等が行われる。
また、ルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等の処理の結果を示す情報、データ、信号値及び変数値の少なくともいずれかが、主記憶装置902、補助記憶装置903、プロセッサ901内のレジスタ及びキャッシュメモリの少なくともいずれかに記憶される。
また、ルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等の機能を実現するプログラムは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD等の可搬記録媒体に格納されていてもよい。そして、ルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等の機能を実現するプログラムが格納された可搬記録媒体を流通させてもよい。
【0084】
また、ルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等の少なくともいずれかの「部」を、「回路」又は「工程」又は「手順」又は「処理」又は「サーキットリー」に読み替えてもよい。
また、情報処理装置100は、処理回路により実現されてもよい。処理回路は、例えば、ロジックIC(Integrated Circuit)、GA(Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)である。
この場合は、ルール生成部111、寄与度算出部113、選択部114等は、それぞれ処理回路の一部として実現される。
なお、本明細書では、プロセッサと処理回路との上位概念を、「プロセッシングサーキットリー」という。
つまり、プロセッサと処理回路とは、それぞれ「プロセッシングサーキットリー」の具体例である。
【符号の説明】
【0085】
100 情報処理装置、111 ルール生成部、112 ルール情報記憶部、113 寄与度算出部、114 選択部、115 異常事象情報記憶部、116 推定モデル生成部、117 推定モデル記憶部、121 データ受信部、122 状態確認部、123 原因推定部、124 表示部、200 機器、901 プロセッサ、902 主記憶装置、903 補助記憶装置、904 通信装置、1121 既存確認ルール情報、1122 新規確認ルール情報、1240 表示情報。
【要約】
ルール生成部(111)は、機器(200)の異常原因の推定のために機器(200)の状態を確認する際に用いられる既存の確認ルールである既存確認ルールに記述されている機器(200)の確認対象の要素及び機器(200)の周辺環境の確認対象の要素のうちの少なくともいずれかである既存確認対象要素を既存確認ルールに記述されていない要素である新規確認対象要素に入れ替えて、既存確認ルールとは異なる複数の確認ルールを複数の新規確認ルールとして生成する。寄与度算出部(113)は、新規確認ルールの各々の、機器(200)の異常原因の推定への寄与度を算出する。選択部(114)は、複数の新規確認ルールの中から、算出された寄与度が規定の選択条件に合致する新規確認ルールを選択する。
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