(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ガス分離システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0668 20160101AFI20241129BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01M8/0668
B01D53/22
(21)【出願番号】P 2024559125
(86)(22)【出願日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2024019151
【審査請求日】2024-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】篠木 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川本 誠
(72)【発明者】
【氏名】尾中 洋次
(72)【発明者】
【氏名】谷島 誠
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0254383(US,A1)
【文献】国際公開第2024/089867(WO,A1)
【文献】特開2019-139858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
B01D 53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むプロセスガスを、前記プロセスガスよりも二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素リッチガスと前記プロセスガスよりも二酸化炭素濃度の低い残留ガスとに分離するガス分離装置と、
前記プロセスガスに関するガス情報を取得するガス情報取得部と、
前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの圧力を調整する圧力調整器と、
前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの温度を測定する温度計と、
前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの温度を調整する温度調整器と、
前記温度計および前記ガス情報取得部からの情報に基づき、前記温度調整器を制御する制御装置と、を備える、ガス分離システム。
【請求項2】
前記ガス情報には、前記プロセスガスの少なくとも組成および流量に関する情報が含まれる、請求項1に記載のガス分離システム。
【請求項3】
アノードおよびカソードを有する燃料電池をさらに備え、
前記プロセスガスは、前記アノードから排出されるアノードオフガスである、請求項1または2に記載のガス分離システム。
【請求項4】
前記燃料電池の運転状態を取得する運転状態取得部をさらに備え、
前記制御装置は、前記運転状態に基づいて前記温度調整器を制御する、請求項3に記載のガス分離システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記運転状態に基づき、前記燃料電池の出力が低下したと判定した場合は、前記ガス分離装置の内部における前記アノードオフガスの圧力が低下するように前記圧力調整器を制御する、請求項4に記載のガス分離システム。
【請求項6】
前記プロセスガスを、分岐ガスとリサイクルガスとに分岐させる分岐部と、
前記分岐ガスを前記ガス分離装置に供給する分岐ガス系統と、
前記リサイクルガスを混合器に供給するリサイクルガス系統と、をさらに備える、請求項
4に記載のガス分離システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの圧力と、前記温度計が取得した温度と、前記運転状態取得部が取得した運転状態と、に基づき、前記分岐部における前記分岐ガスおよび前記リサイクルガスの分配比率を制御する、請求項6に記載のガス分離システム。
【請求項8】
前記ガス分離装置で分離された前記二酸化炭素リッチガスを吸引する真空ポンプをさらに備える、請求項1
または2に記載のガス分離システム。
【請求項9】
前記ガス分離装置は、複数の分離ユニットを有し、
前記複数の分離ユニットには、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離ユニットが含まれる、請求項1
または2に記載のガス分離システム。
【請求項10】
前記複数の分離ユニットには、水素を分離する水素分離ユニットが含まれる、請求項9に記載のガス分離システム。
【請求項11】
炭化水素から水素を生成する改質器と、
前記改質器と熱的に接続された燃焼器と、をさらに備え、
前記残留ガスは、前記プロセスガスよりも水素の濃度が高い再生燃料ガスであり、
前記燃焼器に前記再生燃料ガスが供給される、請求項1
または2に記載のガス分離システム。
【請求項12】
前記燃焼器から排出される燃焼オフガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部をさらに備える、請求項11に記載のガス分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスから、二酸化炭素を分離する技術が開示されている。具体的には、アノードオフガスは分離膜を有する分離部へと導入される。特許文献1における分離膜は、二酸化炭素および水を透過しやすく、他の成分を透過しにくい性質を有している。このため、分離膜を透過したガスの二酸化炭素濃度は、アノードオフガスよりも高くなる。アノードオフガスのうち、分離膜を透過せず残留したガスには、水素等の可燃成分が含まれる。このガスは、再生燃料ガスとして再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば燃料電池が部分負荷運転となった場合には、定格負荷運転である場合と比較して、分離部に導入されるアノードオフガスの流量が減少する。他の要因によっても、分離部に導入されるアノードオフガスの流量が減少する場合がある。アノードオフガスの流量が減少すると、単位流量あたりのアノードオフガスに対する分離膜の面積が、相対的に増大する。このため、二酸化炭素よりも分離膜を透過しにくい成分、例えば水素の透過量も増大する。その結果、回収されるガスに含まれる二酸化炭素の濃度が低下するという課題が生じる。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて、分離膜に導入されるガスの流量が変化した場合に、分離したガスの二酸化炭素濃度が減少することを抑制可能なガス分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るガス分離システムの一つの態様は、二酸化炭素を含むプロセスガスを、前記プロセスガスよりも二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素リッチガスと前記プロセスガスよりも二酸化炭素濃度の低い残留ガスとに分離するガス分離装置と、前記プロセスガスに関するガス情報を取得するガス情報取得部と、前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの圧力を調整する圧力調整器と、前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの温度を測定する温度計と、前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの温度を調整する温度調整器と、前記温度計および前記ガス情報取得部からの情報に基づき、前記温度調整器を制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のガス分離システムによれば、分離膜に導入されるガスの流量が変化した場合に、分離したガスの二酸化炭素濃度が減少することを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るガス分離システムの構成を示す図である。
【
図2】分離膜における、圧力および温度と二酸化炭素の透過率との関係を説明するグラフである。
【
図3】分離膜における、圧力および温度と二酸化炭素の濃度との関係を説明するグラフである。
【
図4】分離膜における、圧力および燃料電池の負荷と二酸化炭素の透過率との関係を説明するグラフである。
【
図5】分離膜における、圧力および燃料電池の負荷と二酸化炭素の濃度との関係を説明するグラフである。
【
図6】実施の形態2に係る分離装置の構成を示す図である。
【
図7】実施の形態2の第1変形例に係る分離装置の構成を示す図である。
【
図8】実施の形態2の第2変形例に係る分離装置の構成を示す図である。
【
図9】実施の形態2の第3変形例に係る分離装置の構成を示す図である。
【
図10】実施の形態3に係るガス分離システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るガス分離システム100の模式図である。
図1に示すように、ガス分離システム100は、供給経路1と、原料流量計1aと、混合器2と、改質器3と、燃料電池4と、水蒸気発生器7と、凝縮タンク9と、分岐部10と、圧縮機12と、温度調整器13と、制御装置19と、圧力計20と、調整弁21と、温度計22と、ガス分離装置Dと、を備える。
【0011】
詳細は後述するが、ガス分離装置Dは、二酸化炭素を含むプロセスガスを、二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素リッチガスG11と、二酸化炭素濃度の低い再生燃料ガスG12と、に分離させる機能を有する。本実施の形態におけるプロセスガスは、燃料電池4のアノード4Aから排出されるアノードオフガスである。ただし、アノードオフガスではないプロセスガスに対して、本開示を適用してもよい。つまり、ガス分離システム100は燃料電池4を備えていなくてもよい。
【0012】
二酸化炭素を含むプロセスガスの一例としては、例えば、工場の排気ガス、発電所の排気ガス、等が挙げられる。また、改質器3等の、炭化水素系燃料から水素を生成する改質反応システムからの排ガスを、プロセスガスとして用いてもよい。本実施の形態において、以下ではプロセスガスの例示として「アノードオフガスG」を挙げて説明する。
【0013】
供給経路1は、原料を混合器2に供給する。原料としては、炭化水素などの炭素含有物を採用できる。炭化水素としては、メタンが挙げられる。以下では、原料がメタンである場合について説明するが、原料はメタンに限られない。供給経路1には原料流量計1aが設けられている。原料流量計1aは、混合器2に供給される原料の流量を計測する。原料流量計1aの計測結果は、例えば運転状態取得部18や制御装置19に入力されてもよい。混合器2には原料供給系統2aが接続されている。原料は、混合器2において後述するリサイクルガスG2および水蒸気と混合され、原料供給系統2aを介して改質器3に導入される。
【0014】
改質器3は、水蒸気改質反応または二酸化炭素改質反応によって、改質ガスを生成する。改質ガスには、水素が含まれる。水蒸気改質反応は、例えば、以下に示す式(I)および式(II)に従う。
CH4+H2O→CO+3H2 ・・・(I)
CO+H2O→CO2+H2 ・・・(II)
二酸化炭素改質反応は、例えば、以下に示す式(III)および式(IV)に従う。
CH4+CO2→2CO+2H2 ・・・(III)
2CO+2H2O→2CO2+2H2 ・・・(IV)
【0015】
改質器3は、水蒸気改質触媒および二酸化炭素改質触媒の少なくとも一方を有することが好ましい。また、改質器3は、水蒸気改質触媒および二酸化炭素改質触媒の両方を有することが、より好ましい。水蒸気改質触媒は、水蒸気改質反応を促進する。二酸化炭素改質触媒は、二酸化炭素改質反応を促進する。水蒸気改質触媒としては、Ni担持アルミナ、Ru担持アルミナなどが挙げられる。二酸化炭素改質触媒としては、Ni担持イットリア、Pt担持イットリア等が挙げられる。
【0016】
水蒸気改質触媒と二酸化炭素改質触媒は、混合されて、改質器3内に充填されてもよい。水蒸気改質触媒と二酸化炭素改質触媒は、互いに異なる層を形成して、改質器3内に充填されてもよい。水蒸気改質触媒と二酸化炭素改質触媒は、例えば、それぞれの触媒が機能するために適切な温度帯に位置するように、改質器3内に充填されてもよい。
【0017】
改質器3の内部の温度は、水蒸気改質反応および二酸化炭素改質反応の少なくとも一方が進行するように設定される。水蒸気改質反応および二酸化炭素改質反応の両方が進行するように、それぞれの反応に適した温度分布が、改質器3内に設定されてもよい。改質器3には、燃焼器3aが熱的に接続されている。燃焼器3aは、燃料を燃焼させることで、改質器3内が適切な温度帯となるように熱を発生させる。燃焼器3aの燃料としては、カソード4Bから排出されたカソードオフガス、ガス分離装置Dから排出された再生燃料ガスG12、等を利用できる。再生燃料ガスG12については後述する。
【0018】
空気供給系統5は、空気を燃料電池4に供給する。空気供給系統5から供給される空気は酸素含有ガスである。酸素含有ガスは、酸化剤としての酸素(O2)を含む。空気供給系統5には、空気を燃料電池4に向けて流動させるための空気供給ブロワ5aが設けられている。また、空気供給系統5には、熱交換器17が配置されている。熱交換器17は、空気供給系統5内を流動する空気と、燃焼器3aから排出された燃焼オフガスと、の間で熱交換を行う。これにより、燃焼器3aの排熱を利用して、カソード4Bに導入される空気を加熱することができる。
【0019】
燃料電池4は、アノード4Aおよびカソード4Bを有している。改質器3で得られた改質ガスは、燃料電池4のアノード4Aに供給される。空気供給系統5から供給された空気は、燃料電池4のカソード4Bに供給される。燃料電池4は、水素(H2)を含む改質ガスと、空気(酸化剤)との反応により発電を行い、電気エネルギーを発生させる。燃料電池4を含むガス分離システム100は、発電システムと称することもできる。
【0020】
燃料電池4は、例えば固体酸化物型燃料電池であってもよい。固体酸化物型燃料電池の場合、アノード4Aにおける反応は以下の式(V)に従い、カソード4Bにおける反応は以下の式(VI)に従う。
H2+O2-→H2O+2e- ・・・(V)
1/2O2+2e-→O2- ・・・(VI)
【0021】
燃料電池4のアノード4Aからは、アノードオフガスGが排出される。アノードオフガスGは、例えば、水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、一酸化炭素(CO)、およびメタン(CH4)を含む。アノードオフガス系統6は、アノードオフガスGを燃料電池4のアノード4Aから取り出し、分岐部10に導く。アノードオフガス系統6における、燃料電池4と分岐部10の間の部分には、水蒸気発生器7、熱回収器6a、および凝縮タンク9が配置されている。
【0022】
凝縮タンク9は、アノードオフガスGに含まれる水蒸気の一部を凝縮させることができる。凝縮タンク9において得られた水は、ポンプ23aおよび流量制御器23を経由して、水蒸気発生器7に供給される。ポンプ23aは、水を凝縮タンク9から水蒸気発生器7に向けて流動させるための動力を発生させる。流量制御器23は、水蒸気発生器7に供給される水の流量を制御する。流量制御器23の計測結果は、例えば運転状態取得部18や制御装置19に入力されてもよい。
【0023】
水蒸気発生器7は、凝縮タンク9から供給された水を、アノードオフガスGとの熱交換により加熱する。これにより、水蒸気発生器7は水蒸気を得る。水蒸気発生器7は、補助加熱器7aを有している。補助加熱器7aは、例えばヒータである。アノードオフガスGとの熱交換だけでは、水を蒸発させるための熱量が不足する場合、補助加熱器7aを用いて水を加熱してもよい。水蒸気発生器7で得られた水蒸気は、水蒸気供給系統8から、混合器2へと導入される。
【0024】
熱回収器6aは、凝縮タンク9の上流に位置し、アノードオフガスGから熱を回収することができる。これにより、例えば、アノードオフガスGを後述するリサイクルガスブロワ16aの耐熱温度以下に設定できる。凝縮タンク9の下流側には、分岐部10が配置されている。分岐部10において、アノードオフガス系統6は、分岐ガス系統11およびリサイクルガス系統16に分岐する。リサイクルガス系統16は、アノードオフガスGの少なくとも一部を、リサイクルガスG2として混合器2に供給する。
【0025】
分岐部10は、分岐ガス系統11およびリサイクルガス系統16への、アノードオフガスGの分配比率を変更することができる。分岐部10は、例えば、分配比率を変更するための制御弁を有してもよい。より具体的に、制御弁は、分岐部10における分岐ガス系統11への流路断面積と、リサイクルガス系統16への流路断面積と、の比率を変更してもよい。また、凝縮タンク9の内部に熱電対を設けて、凝縮温度を計測することにより、ガス中の水蒸気量を知ることができる。また計測結果は、例えば制御装置19に入力されてもよい。ただし、分岐部10において分配比率を変更するための構造は上記に限定されず、適宜変更可能である。
【0026】
リサイクルガス系統16には、リサイクルガスブロワ16aおよびリサイクルガス流量計16bが設けられている。リサイクルガスブロワ16aは、分岐部10から混合器2に向けて、リサイクルガスG2を流動させる動力を発生させる。リサイクルガス流量計16bは、混合器2に供給されるリサイクルガスG2の流量を計測する。このようにして、リサイクルガス系統16はリサイクルガスG2を原料供給系統2aに循環させる。
【0027】
分岐ガス系統11は、アノードオフガスGの少なくとも一部を、分岐ガスG1として、ガス分離装置Dに供給する。分岐ガス系統11には、ガス情報取得部11a、圧縮機12、および温度調整器13が設けられている。ガス情報取得部11aは、分岐ガスG1の情報を取得する。「分岐ガスG1の情報」は、例えば組成、流量、圧力、温度などである。組成に関する分岐ガスG1の情報には、例えば二酸化炭素の分圧が含まれてもよい。分岐ガスG1は、アノードオフガスGの一部であるため、ガス情報取得部11aはアノードオフガスGに関する情報を取得するとも言える。
【0028】
ガス情報取得部11aは、取得する情報の種類に応じたセンサ等を有している。例えば組成を取得する場合、ガス情報取得部11aは、近赤外分光センサを有してもよい。例えば流量、圧力、温度などを取得する場合、ガス情報取得部11aは流量計、圧力計、温度計などを有してもよい。ガス情報取得部11aは、上記した複数の種類のセンサを有してもよい。ただし、ガス情報取得部11aは、運転状態取得部18が取得する燃料電池4の運転状態と、原料流量計1aが取得する原料の流量と、凝縮タンク9における凝縮温度と、分岐部10におけるアノードオフガスGの分配比率と、に基づき、分岐ガスG1の組成および流量を計算によって求めてもよい。
【0029】
圧縮機12は、ガス分離装置Dに供給される分岐ガスG1を昇圧させることができる。圧縮機12は、例えばブロワであってもよい。圧縮機12の出力を調整することで、ガス分離装置D内の分岐ガスG1の圧力を変化させることができる。したがって、圧縮機12は、ガス分離装置D内の分岐ガスG1の圧力を調整する、圧力調整器Cpとして機能することができる。温度調整器13は、ガス分離装置Dに供給される分岐ガスG1の温度を調整することができる。
【0030】
温度調整器13は、
図1の例において、ポンプ13aおよび熱交換器13bを有している。熱交換器13bでは、冷媒と分岐ガスG1との間で熱交換が行われる。ポンプ13aは、熱交換器13b内に冷媒が流れるための動力を発生させる。ポンプ13aの出力を変更することで、熱交換器13b内を流動する冷媒の流速等が変化する。したがって、ポンプ13aの出力を調節することで、熱交換器13bにおいて冷媒と分岐ガスG1との間で交換される熱量を調整できる。これにより、温度調整器13は分岐ガスG1の温度を調整できる。ただし、温度調整器13の構成は上記に限定されず、分岐ガスG1の温度を調整できれば、適宜変更可能である。
【0031】
本実施の形態において、ガス分離装置Dは、1つの二酸化炭素分離ユニット14を有している。二酸化炭素分離ユニット14は、二酸化炭素を選択的に透過させる分離膜Sを有している。また、二酸化炭素分離ユニット14は、分離膜Sによって区画された導入室R1および回収室R2を有している。分離膜Sは、例えば高分子によって形成されている。分離膜Sとしての高分子は、例えば、ポリイミドがベースとなっていてもよい。あるいは、分離膜Sは、いわゆる促進輸送膜と称される、吸水性ポリマーにキャリアを付加した構造であってもよい。
【0032】
分岐部10から分岐ガス系統11を流動した分岐ガスG1は、まず導入室R1に導入される。導入室R1の内部で、分岐ガスG1は分離膜Sに接する。分岐ガスG1は、圧力調整器Cpによって調整された圧力で、分離膜Sに接する。これにより、分岐ガスG1に含まれる二酸化炭素が、分離膜Sを透過し、回収室R2に移動する。分離膜Sの種類および圧力などの条件に応じて、二酸化炭素以外の成分が分離膜Sを透過する場合もある。
【0033】
本明細書では、導入室R1から分離膜Sを透過して回収室R2に移動したガスを、二酸化炭素リッチガスG11と称する。また、分離膜Sを透過せず残留したガスを、再生燃料ガスG12と称する。すなわち二酸化炭素分離ユニット14は、分離膜Sを用いて、分岐ガスG1を二酸化炭素リッチガスG11と再生燃料ガスG12とに分離する。
【0034】
二酸化炭素リッチガスG11は、二酸化炭素分離ユニット14によって分離される前の分岐ガスG1と比較して、二酸化炭素の濃度が高い。再生燃料ガスG12は、二酸化炭素分離ユニット14によって分離される前の分岐ガスG1と比較して、二酸化炭素の濃度が低い。また、再生燃料ガスG12には、可燃成分である水素、一酸化炭素、メタン等が含まれている。したがって、再生燃料ガスG12は燃料として利用することができる。本実施の形態では、再生燃料ガスG12を、改質器3の燃焼器3aにおける燃料として利用する。導入室R1には、再生燃料ガス系統14bが接続されている。再生燃料ガス系統14bの下流側には、燃焼器3aが接続されている。この構成により、再生燃料ガスG12は、導入室R1から燃焼器3aに供給され、燃料として再利用される。
【0035】
回収室R2には、二酸化炭素回収系統14aが接続されている。二酸化炭素リッチガスG11は、回収室R2から二酸化炭素回収系統14aへと排出される。二酸化炭素回収系統14aには、真空ポンプ15が配置されている。真空ポンプ15は、二酸化炭素回収系統14aを通じて、回収室R2内の二酸化炭素リッチガスG11を吸引する。このようにして回収された二酸化炭素リッチガスG11は、他の用途に再利用されてもよい。なお、真空ポンプ15は設けられていなくてもよい。
【0036】
圧力計20は、再生燃料ガス系統14bにおける二酸化炭素分離ユニット14と調整弁21との間の部分の再生燃料ガスG12の圧力を測定する。圧力計20の測定結果によれば、二酸化炭素分離ユニット14に供給される分岐ガスG1の圧力を間接的に知ることができる。なお、二酸化炭素分離ユニット14に供給される分岐ガスG1の圧力が直接的または間接的に測定可能であれば、圧力計20の位置は、適宜変更可能である。
【0037】
温度計22は、分岐ガス系統11における温度調整器13と二酸化炭素分離ユニット14との間の部分の分岐ガスG1の温度を測定する。温度計22の位置は、二酸化炭素分離ユニット14に供給される分岐ガスG1の温度を測定できれば、適宜変更可能である。
【0038】
調整弁21は、再生燃料ガス系統14bに設けられている。調整弁21を開閉することで、導入室R1内の圧力を調整することができる。例えば、調整弁21の開度を上げた場合、導入室R1から燃焼器3aへと再生燃料ガスG12が流れやすくなる。その結果、導入室R1内の圧力は下がる。逆に、調整弁21の開度を下げた場合、導入室R1内の圧力が上がる。したがって、調整弁21は、導入室R1内の分岐ガスG1の圧力を調整する、圧力調整器Cpとして機能することができる。
【0039】
図1に示すように、ガス分離システム100は、運転状態取得部18および制御装置19を備えている。運転状態取得部18は、燃料電池4の運転状態を取得する。運転状態とは、例えば、定格出力に対する燃料電池4の出力の状態である。運転状態取得部18は、例えば、燃料電池4の出力を測定するための電流計および電圧計等を有してもよい。運転状態取得部18は、燃料電池4の運転状態を制御装置19に入力する。
【0040】
制御装置19には、圧力計20、温度計22、リサイクルガス流量計16b、運転状態取得部18等から、各種の情報が入力される。制御装置19は、これらの情報に基づき、温度調整器13、圧力調整器Cp等を制御する。制御装置19は、分岐部10における、分岐ガスG1およびリサイクルガスG2の分配比率を制御してもよい。
【0041】
ここで、燃料電池4が部分負荷運転になった場合は、アノードオフガスGの流量が低下する。その結果、二酸化炭素分離ユニット14に供給される分岐ガスG1の流量が減少する場合がある。分岐ガスG1の流量が低下すると、二酸化炭素分離ユニット14において、分岐ガスG1の単位流量あたりの分離膜Sの面積が増大する。その結果、二酸化炭素よりも透過係数が小さい水素なども、分離膜Sを透過しやすくなり、二酸化炭素リッチガスG11における二酸化炭素濃度が低下する。さらに、再生燃料ガスG12に含まれる水素等の可燃成分が減少し、システム全体での発電効率が低下するという課題も生じる。
【0042】
また、二酸化炭素分離ユニット14における分離膜Sの性能は、分離膜Sに接するガスの温度および流量によって変化する。分離膜Sの性能の例について、
図2~
図5を用いて説明する。
図2~
図5の横軸は、分離膜Sに接する、分離対象となる気体の圧力である。本実施の形態では、二酸化炭素分離ユニット14内における分岐ガスG1の圧力が、
図2~
図5の横軸に相当する。
【0043】
図2、
図3は、ガスの温度と分離膜Sの性能の関係を示すグラフである。
図2の縦軸は、分離膜Sにおける二酸化炭素の透過率である。
図3の縦軸は、分離膜Sを透過した気体における二酸化炭素の濃度である。
図2、
図3において、温度T0(破線)は、温度T1(実線)よりも高い。
図2および
図3から理解できるように、温度が高いほど、二酸化炭素の透過率は増えるが、二酸化炭素の濃度は減少する。温度が高いほど二酸化炭素の濃度が減少する原因は、水素などの二酸化炭素以外の成分の透過量も増加するためである。
【0044】
図4、
図5は、ガスの流量と分離膜Sの性能の関係を示すグラフである。
図4の縦軸は、分離膜Sにおける二酸化炭素の透過率である。
図5の縦軸は、分離膜Sを透過した気体における二酸化炭素の濃度である。
図4、
図5において、破線は燃料電池4が定格出力で運転している場合を示し、実線は部分負荷で運転している場合を示す。燃料電池4が部分負荷で運転している場合、定格出力で運転している場合と比較して、アノードオフガスGの流量が減る。したがって、
図4、
図5において「定格」はガスの流量が大きい場合を表し、「部分負荷」はガスの流量が小さい場合を表す。
【0045】
図4および
図5から理解できるように、燃料電池4の運転状態が定格から部分負荷に変化すると、二酸化炭素の透過率が上昇するが、二酸化炭素の濃度は減少する。その原因は、分離膜Sに供給されるガスの流量が減少し、ガスの単位流量あたりにおける分離膜Sの面積が大きくなるためである。
【0046】
図2~
図5から理解できるように、二酸化炭素分離ユニット14内における分岐ガスG1の圧力(横軸)が大きいほど、二酸化炭素の透過率は増え、二酸化炭素の濃度は減少する。
【0047】
図2~
図5から理解される傾向を踏まえ、本実施の形態における制御装置19は、燃料電池4の出力が変動しても二酸化炭素分離ユニット14における分離性能が低下しないように制御を行う。具体的に、制御装置19は、温度調整器13および圧力調整器Cpを制御する。この制御は、圧力計20が取得する圧力、温度計22が取得する温度、リサイクルガス流量計16bが取得するリサイクルガスG2の流量、および運転状態取得部18が取得する燃料電池4の運転状態、等に基づいて行われる。
【0048】
例えば、制御装置19は、二酸化炭素分離ユニット14によって得られる二酸化炭素リッチガスG11の、二酸化炭素の濃度あるいは流量を目標値として保持する。これらの目標値を満たすように、制御装置19は、温度調整器13および圧力調整器Cpを制御してもよい。一例として、燃料電池4の出力が下がった場合は、二酸化炭素リッチガスG11における二酸化炭素の濃度は減少する。この減少を補うように、制御装置19は、以下の第1例または第2例における制御を実行してもよい。
【0049】
第1例において、制御装置19は、二酸化炭素分離ユニット14に供給される分岐ガスG1の温度を低下させる。より具体的には、温度調整器13のポンプ13aの回転数を上げる等により、熱交換器13bに供給される冷媒の流量を増やす。その結果、熱交換器13bにおいて、より多くの熱が分岐ガスG1から冷媒へと奪われ、分岐ガスG1の温度を低下させることができる。
【0050】
第2例において、制御装置19は、二酸化炭素分離ユニット14内における分岐ガスG1の圧力を低下させる。より具体的には、圧力調整器Cpとしての調整弁21の開度を上げることで、二酸化炭素分離ユニット14から燃焼器3aへと再生燃料ガスG12が流れやすくする。あるいは、圧力調整器Cpとしての圧縮機12の回転数を下げることで、分岐ガス系統11において分岐ガスG1に印加される圧力を低下させる。その結果、二酸化炭素分離ユニット14内の分岐ガスG1の圧力を下げることができる。
【0051】
上記した第1例および第2例を組み合わせてもよい。つまり、制御装置19は、温度調整器13および圧力調整器Cpの両方を制御することで、二酸化炭素分離ユニット14内における分岐ガスG1の温度および圧力の両方を変化させてもよい。また、圧力による制御は時定数が小さく、温度による制御は時定数が大きい傾向がある。言い換えると、圧力による制御は応答速度が速く、温度による制御は応答速度が遅い傾向がある。このような相違を考慮し、二酸化炭素の濃度あるいは回収量が目標値に近づくよう、フィードバック制御を行ってもよい。
【0052】
なお、本実施の形態におけるガス分離装置Dは、プロセスガス(アノードオフガスG)を、二酸化炭素リッチガスG11と再生燃料ガスG12とに分離する。しかしながら、ガス分離装置Dによる分離の対象となるプロセスガスには、水素などの可燃成分が含まれていなくてもよい。したがって、プロセスガスから二酸化炭素リッチガスG11が分離された後の残留ガスに、可燃成分が含まれていなくてもよい。言い換えると、ガス分離装置Dは、プロセスガスを、二酸化炭素濃度が高められた二酸化炭素リッチガスG11と、二酸化炭素濃度が低減された残留ガスと、に分離してもよい。
【0053】
以上説明したように、本開示のガス分離システム100は、二酸化炭素を含むプロセスガス(アノードオフガスG)を、プロセスガスよりも二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素リッチガスG11とプロセスガスよりも二酸化炭素濃度の低い残留ガス(再生燃料ガスG12)とに分離するガス分離装置Dと、プロセスガスに関するガス情報を取得するガス情報取得部11aと、ガス分離装置Dの内部におけるプロセスガスの圧力を調整する圧力調整器Cpと、ガス分離装置Dの内部におけるプロセスガスの温度を測定する温度計22と、ガス分離装置Dの内部におけるプロセスガスの温度を調整する温度調整器13と、温度計22およびガス情報取得部11aからの情報に基づき、温度調整器13を制御する制御装置19と、を備える。
【0054】
このような構成のガス分離システム100によれば、ガス分離装置Dに供給されるプロセスガスの流量が変化した場合、二酸化炭素リッチガスG11の二酸化炭素濃度が低下しないように、温度調整器13によってプロセスガスの温度を調整することが可能である。
【0055】
また、ガス情報取得部11aが取得するガス情報には、ガス分離装置Dに導入されるプロセスガス(分岐ガスG1)の、少なくとも組成および流量に関する情報が含まれてもよい。この場合、ガス分離装置Dに供給されるプロセスガスの温度を、プロセスガスの組成または流量に応じた適切な値とすることができる。
【0056】
また、ガス分離システム100は、アノード4Aおよびカソード4Bを有する燃料電池4を備えてもよい。プロセスガスは、アノード4Aから排出されるアノードオフガスGであってもよい。燃料電池4は、水素と酸素を用いて発電する装置であり、高効率で環境負荷が少ない。このような燃料電池4に、本開示のガス分離システム100を組み合わせることで、環境負荷の低減という課題に対して、より貢献することができる。
【0057】
また、ガス分離システム100は、燃料電池4の運転状態を取得する運転状態取得部18を備えてもよい。制御装置19は、運転状態に基づいて温度調整器13を制御してもよい。この構成によれば、燃料電池4の運転状態が定格出力から部分負荷に変動した場合に、二酸化炭素リッチガスG11に含まれる二酸化炭素の濃度が減ってしまうことを抑制できる。
【0058】
また、制御装置19は、運転状態取得部18が取得した運転状態に基づき、燃料電池4の出力が低下したと判定した場合は、ガス分離装置Dの内部におけるアノードオフガスGの圧力が低下するように圧力調整器Cpを制御してもよい。このように圧力を低下させることで、二酸化炭素リッチガスG11に含まれる二酸化炭素の濃度が低下することを抑制できる。
【0059】
また、ガス分離システム100は、炭化水素から水素を生成する改質器3と、改質器3と熱的に接続された燃焼器3aと、を備えてもよい。ガス分離装置Dで得られる残留ガスは、プロセスガスよりも水素の濃度が高い再生燃料ガスG12であってもよく、この再生燃料ガスG12が燃焼器3aに供給されてもよい。この構成によれば、プロセスガスよりも二酸化炭素の濃度が低く、かつ、水素の濃度が高い再生燃料ガスG12を、燃焼器3aの燃料として再利用できる。したがって、システム全体の発電効率を、より高めることができる。
【0060】
また、ガス分離システム100は、プロセスガスを、分岐ガスG1とリサイクルガスG2とに分岐させる分岐部10と、分岐ガスG1をガス分離装置Dに供給する分岐ガス系統11と、リサイクルガスG2を混合器2に供給するリサイクルガス系統16と、を備えてもよい。この構成によれば、プロセスガスの一部からガス分離装置Dにおいて二酸化炭素を分離すると同時に、プロセスガスの残りの部分を燃料電池4における発電の原料として再利用できる。
また、混合器2はエジェクタであってもよい。この場合、水蒸気を駆動流体として、リサイクルガスG2を吸引することができることから、ブロワ16aが不要になり、補機動力の低減を図ることができる。
【0061】
また、制御装置19は、ガス分離装置Dの内部におけるプロセスガスの圧力と、温度計22が取得した温度と、運転状態取得部18が取得した運転状態と、に基づき、分岐部10における分岐ガスG1およびリサイクルガスG2の分配比率を制御してもよい。この構成によれば、ガス分離装置Dにおける二酸化炭素の分離および燃料電池4における発電の両面から、システムの運転を最適化できる。
【0062】
また、ガス分離システム100は、ガス分離装置Dで分離された二酸化炭素リッチガスG11を吸引する真空ポンプ15をさらに備えてもよい。この構成によれば、導入室R1と回収室R2の圧力比を大きくすることでき、分離膜Sの性能を高めることができる。さらに、回収室R2に二酸化炭素リッチガスG11が滞留することを抑制できる。したがって、分離膜Sについて、高効率化が図れるとともに、回収室R2の二酸化炭素濃度が高いために二酸化炭素の透過が停滞する現象を抑制できる。
【0063】
実施の形態2.
次に、
図6を用いて、実施の形態2に係るガス分離システム100Aについて説明する。ガス分離システム100Aは、基本的な構成は実施の形態1のガス分離システム100と同様であるため、異なる点を中心に説明する。
図6では図示を省略しているが、分岐ガス系統11の上流側には、分岐部10等(
図1参照)が配置されている。再生燃料ガス系統14bの下流側には、燃焼器3a等が配置されている。
【0064】
図6に示すように、本実施の形態に係るガス分離システム100Aにおけるガス分離装置Dは、二酸化炭素分離ユニット14に加えて、水素分離ユニット14Hと、中間系統24と、循環系統25と、第2圧力計20Aと、第2調整弁21Aと、を備える。水素分離ユニット14Hは、第2分離膜SHと、第2導入室R3と、第2回収室R4と、を有する。第2導入室R3および第2回収室R4は、第2分離膜SHによって区画されている。第2分離膜SHは、水素を選択的に透過させる。第2分離膜SHは、例えば高分子によって形成されている。第2分離膜SHは、二酸化炭素分離ユニット14の分離膜Sと比較して、水素を透過しやすく、二酸化炭素を透過しにくい材質で形成される。また、第2分離膜SHは、分子の大きさで選択透過する無機の分子篩膜であってもよい。
【0065】
本実施の形態では、分岐ガスG1は水素分離ユニット14Hの第2導入室R3に導入される。水素分離ユニット14Hにおいて、分岐ガスG1に含まれる水素は、第2分離膜SHを透過し、第2回収室R4に移動する。第2回収室R4には再生燃料ガス系統14bが接続されている。第2分離膜SHを透過したガスは、水素の濃度が分岐ガスG1よりも高く、二酸化炭素の濃度が分岐ガスG1よりも低い。本実施形態では、第2分離膜SHを透過して第2回収室R4に移動したガスを、再生燃料ガスG12として、再生燃料ガス系統14bに排出する。この再生燃料ガスG12も、実施の形態1と同様に、燃焼器3aの燃料として利用できる。
【0066】
中間系統24は、水素分離ユニット14Hの第2導入室R3と、二酸化炭素分離ユニット14の導入室R1と、を接続している。水素分離ユニット14Hは、二酸化炭素分離ユニット14よりも上流側に位置している。第2分離膜SHを透過せず第2導入室R3に残留したガスは、中間系統24を通じて、導入室R1に導入される。本実施の形態では、このように中間系統24を流動するガスを、中間ガスGmと称する。中間ガスGmは、水素分離ユニット14Hによって分離される前の分岐ガスG1よりも、水素の濃度が低く、二酸化炭素の濃度が高い。
【0067】
図6に示す分離ユニット14は、中間ガスGmに含まれる二酸化炭素を分離膜Sによって分離し、二酸化炭素リッチガスG11として二酸化炭素回収系統14aに排出する。循環系統25は、導入室R1において分離膜Sを透過せず残留したガスを、循環ガスGcとして、分岐ガス系統11に循環させる。循環ガスGcには、二酸化炭素分離ユニット14および水素分離ユニット14Hによって分離されなかった水素および二酸化炭素が含まれている。循環ガスGcを分岐ガス系統11に循環させることで、二酸化炭素の回収効率および水素の利用効率を高めることができる。
【0068】
第2圧力計20Aおよび第2調整弁21Aは中間系統24に配置されている。第2調整弁21Aの開度に応じて、導入室R1内の圧力は変化する。したがって第2調整弁21Aも圧力調整器Cpとして機能することができる。圧力計20および調整弁21は、循環系統25に配置されている。
図6において図示は省略するが、制御装置19(
図1参照)は、圧力計20、第2圧力計20A、温度計22等の計測結果に基づき、温度調整器13、調整弁21、および第2調整弁21Aを制御してもよい。
【0069】
より具体的に、制御装置19は、上流側の水素分離ユニット14Hの第2導入室R3に導入される、分岐ガスG1の温度および圧力を、温度調整器13および圧縮機12等によって調整することができる。また、下流側の二酸化炭素分離ユニット14の導入室R1に導入される、中間ガスGmの圧力を、調整弁21等によって制御することができる。制御装置19は、水素の利用効率および二酸化炭素の回収効率が目標値に近づくように制御を行うことができる。
【0070】
図7に、実施の形態2に係るガス分離システム100Aの第1変形例を示す。
図7に示すように、第2圧力計20Aおよび第2調整弁21Aは無くてもよい。この場合も、制御装置19が温度調整器13を制御することで、導入室R1および第2導入室R3に導入されるガスの温度を調整することができる。また、制御装置19が調整弁21を制御することで、導入室R1および第2導入室R3に導入されるガスの圧力を調整することができる。さらに、構成がシンプルであるため、コストダウンに寄与することができる。
【0071】
図8に、実施の形態2に係るガス分離システム100Aの第2変形例を示す。
図8に示すように、水素分離ユニット14Hは、二酸化炭素分離ユニット14よりも下流側に配置されていてもよい。この構成によれば、制御装置19は、上流側の二酸化炭素分離ユニット14の導入室R1に導入される、分岐ガスG1の温度および圧力を、温度調整器13および圧縮機12等によって調整することができる。また、下流側の水素分離ユニット14Hの第2導入室R3に導入される、中間ガスGmの圧力を、第2調整弁21A等によって制御することができる。制御装置19は、水素の利用効率および二酸化炭素の回収効率が目標値に近づくように制御を行うことができる。
【0072】
さらに、
図9の第3変形例に示すように、第2圧力計20Aおよび第2調整弁21Aは無くてもよい。
【0073】
以上説明したように、実施の形態2に係るガス分離システム100A(
図6~
図8)において、ガス分離装置Dは、複数の分離ユニット14、14Aを有している。複数の分離ユニット14、14Hには、二酸化炭素を分離させる二酸化炭素分離ユニット14と、水素を分離させる水素分離ユニット14Hと、が含まれる。このような構成によれば、二酸化炭素の回収効率および水素の利用効率をより高めることができる。ガス分離装置Dは、3つ以上の分離ユニットを有してもよい。
【0074】
実施の形態3.
次に、
図10を用いて、実施の形態3に係るガス分離システム100Bについて説明する。ガス分離システム100Bは、基本的な構成は実施の形態1のガス分離システム100と同様であるため、異なる点を中心に説明する。
【0075】
図10に示すように、ガス分離システム100Bは、二酸化炭素回収部26を備えている。二酸化炭素回収部26は、燃焼器3aから排出される燃焼オフガスから、二酸化炭素を回収する。二酸化炭素回収部26は、例えば、二酸化炭素を吸着可能な吸着剤を有してもよい。
【0076】
吸着剤の材質としては、例えばアミン、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土、アルミナ、活性炭等が挙げられる。上記のなかから複数の材質を選択して採用してもよいし、上記以外の材質を採用してもよい。吸着剤は粒状(例えばビーズ状(球形)、ペレット状(円柱形))であってもよい。あるいは、粉状の吸着剤を採用してもよい。この場合、粉状の吸着剤を、基材の表面に担持させてもよい。基材は、例えばハニカム形状であってもよい。
【0077】
この構成によれば、二酸化炭素回収部26によって燃焼オフガスから二酸化炭素を回収することで、大気に放出される二酸化炭素の量を低減することができる。なお、二酸化炭素回収部26は、吸着剤に代えて、二酸化炭素分離ユニット14と同様の分離膜Sを有してもよい。この場合も、燃焼オフガスに含まれる二酸化炭素を、分離膜Sを用いて分離したうえで大気に放出できる。したがって、大気に放出される二酸化炭素の濃度および量を低減できる。
【0078】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0079】
例えば、実施の形態1では、圧縮機12および調整弁21が、圧力調整器Cpとして機能した。しかしながら、圧力調整器Cpの機能は、圧縮機12および調整弁21のどちらか一方によってのみ実現されてもよい。また、ガス分離システム100は、分岐部10を備えず、アノードオフガスGの全量をそのままガス分離装置Dに供給してもよい。
【0080】
また、前記実施の形態では、制御装置19が、温度調整器13および圧力調整器Cp等を制御した。制御装置19の機能は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、プログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。これらの機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。また、制御装置19の機能は、1つのハードウェアによって実現されてもよい。あるいは、温度調整器13を制御するハードウェアと、圧力調整器Cpを制御するハードウェアとが異なっていてもよい。
【0081】
また、分離装置Dによって分岐ガスG1から分離され、二酸化炭素回収系統14aに導入された二酸化炭素リッチガスG11は、外部から供給された水素ガスとともに、燃料合成反応機構(図示せず)に供給されてもよい。燃料合成反応機構に供給される水素ガスは、例えば、水電解から生成されてもよいし、その他の生成方法により貯蔵・輸送されてもよい。燃料合成反応機構において、二酸化炭素リッチガスG11の二酸化炭素と水素とを反応させることで、炭化水素系燃料である合成燃料(例えばメタンなど)の生成に利用してもよい。燃料電池4における原料として使用した炭素成分を元に、合成燃料を生成することで、カーボンリサイクルが実現できる。
【0082】
その他、上記した実施の形態あるいは変形例を、適宜組み合わせてもよい。
例えば、実施の形態3において説明したガス分離システム100Bが、
図6~
図9に示すようなガス分離装置Dを備えてもよい。
【符号の説明】
【0083】
2…混合器 3…改質器 3a…燃焼器 4…燃料電池 4A…アノード 4B…カソード 10…分岐部 11…分岐ガス系統 11a…ガス情報取得部 13…温度調整器 14…二酸化炭素分離ユニット 14H…水素分離ユニット 15…真空ポンプ 16…リサイクルガス系統 18…運転状態取得部 19…制御装置 22…温度計 26…二酸化炭素回収部 100、100A、100B…ガス分離システム Cp…圧力調整器 D…ガス分離装置 G…アノードオフガス(プロセスガス) G1…分岐ガス G2…リサイクルガス G11…二酸化炭素リッチガス G12…再生燃料ガス(残留ガス)
【要約】
本開示に係るガス分離システムは、二酸化炭素を含むプロセスガスを、二酸化炭素リッチガスと残留ガスとに分離するガス分離装置と、前記プロセスガスに関するガス情報を取得するガス情報取得部と、前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの圧力を調整する圧力調整器と、前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの温度を測定する温度計と、前記ガス分離装置の内部における前記プロセスガスの温度を調整する温度調整器と、前記温度計および前記ガス情報取得部からの情報に基づき、前記温度調整器を制御する制御装置と、を備える。