(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ゾル、ゾルの多機能用途、及び関連製品
(51)【国際特許分類】
B05D 5/00 20060101AFI20241202BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241202BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241202BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20241202BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241202BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241202BHJP
C09D 101/00 20060101ALI20241202BHJP
C09D 103/02 20060101ALI20241202BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B05D5/00 F
B05D7/00 B
B05D7/24 301E
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303A
B05D7/24 303B
B05D7/24 303E
C09D7/20
C09D7/61
C09D7/63
C09D101/00
C09D103/02
C09D183/06
(21)【出願番号】P 2022503789
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 GB2020051783
(87)【国際公開番号】W WO2021019220
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-21
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2020/050325
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522320420
【氏名又は名称】グリーン ゾル-ゲル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Green Sol-Gel Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】イスマイル, ファーニャ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-103692(JP,A)
【文献】特開昭59-179501(JP,A)
【文献】特表2009-514661(JP,A)
【文献】特開2002-001873(JP,A)
【文献】特開2001-181994(JP,A)
【文献】特開平08-209589(JP,A)
【文献】特開2002-348522(JP,A)
【文献】特開2000-319374(JP,A)
【文献】特表2001-518979(JP,A)
【文献】米国特許第07485343(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
B31F 1/00-7/02
B65D 3/00-5/76
D06M 7/00-17/10
D04H 1/00-18/04
D03D 1/00-27/18
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質及び/又は透過性である材料から水不透過性製品を調製するための、溶媒、アルコキシド、
バイオポリマー、及び触媒
から形成されるゾルの使用
であって、
前記溶媒は、1又は複数種のアルコールを含有し、
前記アルコキシドは、Ti(イソプロポキシ)
4
、Al(イソプロポキシ)
3
、Al(sec-ブトキシ)
3
、Zr(n-ブトキシ)
4
、Zr(n-プロポキシ)
4
、n-プロピルトリエトキシシラン、テトラプロピルオルトシリケート、チタン(IV)t-ブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、トリエチルオキシシラン、メチルトリエチルオキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、フェニル-トリエトキシシラン、チタン(IV)エトキシド、トリエトキシ-シリルシクロペンタン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、トリエトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシラン、及びそれらの任意の組み合わせを含み、
前記バイオポリマーは、デンプン系ポリマー、ヘミセルロース系ポリマー、セルロース系ポリマー、リグニン系ポリマー、及び/又は、キトサン系ポリマーを含み、
前記触媒は、酸及び/又は塩基のうちの少なくとも1つである、ゾルの使用。
【請求項2】
ゾルが製品の1つ又は複数の表面にコーティングを形成する、請求項1に記載のゾルの使用。
【請求項3】
ゾルが製品の1つ又は複数の細孔容積又は空隙容積を満たすか又は部分的に満たす、請求項1又は2に記載のゾルの使用。
【請求項4】
ゾルが製品の結合を促進する結合剤として働く、請求項1、2、又は3に記載のゾルの使用。
【請求項5】
製品が繊維系製品である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項6】
触媒が塩酸、クエン酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項
1~5のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項7】
溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項
1~6のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項8】
ゾルが
本質的に溶媒、アルコキシド、
バイオポリマー、及び触媒か
らなる、請求項1~
7のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項9】
水不透過性製品が任意の機能性添加剤の非存在下でゾルを製品に塗布することで調製される、請求項1~
8のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項10】
ゾルが1つ又は複数の機能性添加剤を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項11】
1つ又は複数の機能性添加剤が、光開始剤、樹脂、油、染料、塩、鉱物粒子若しくは他の無機粒子、界面活性剤、複合粒子、及び/又は金属粒子を含む、請求項
10に記載のゾルの使用。
【請求項12】
ゾルが製品の材料、及び/又は製品に塗布される1つ若しくは複数のコーティングに成分添加剤として加えられる、請求項1~
11のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項13】
製品が繊維系製品であり、水不透過性繊維系製品がパルプ、紙、ボール紙、板紙、又はそれらの組み合わせを含み、前記それらの組み合わせは複合繊維系製品及びバイオコンポジット繊維系製品を含む請求項1~
12のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項14】
製品がプラスチック又はバイオプラスチックである、請求項1~
12のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項15】
製品が接着剤又は塗料である、請求項1~
12のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項16】
水不透過性製品を調製するためにゾルが製品の形成中に塗布される、請求項1~
15のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項17】
製品が繊維系製品であり、ゾルがパルプスラリー、湿潤パルプ、エアレイドパルプ、又は乾燥パルプの形成中に塗布される、請求項
16に記載のゾルの使用。
【請求項18】
水不透過性製品を調製するためにゾルが製品の形成後に塗布される、請求項1~
17のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項19】
製品が繊維系製品であり、ゾルがパルプスラリー、湿潤パルプ、エアレイドパルプ、又は乾燥パルプの形成後にパルプスラリー、湿潤パルプ、エアレイドパルプ、又は乾燥パルプに塗布される、請求項
18に記載のゾルの使用。
【請求項20】
水不透過性の紙、ボール紙、板紙、複合繊維系製品、又はバイオコンポジット繊維系製品がパルプスラリー、エアレイドパルプ、又は乾燥パルプから形成される、請求項
17又は
19に記載のゾルの使用。
【請求項21】
ゾルを製品に噴霧すること、製品をゾルに浸漬させること、製品をゾル中にディップすること、ゾルを製品にローラーコーティングすること、ゾルを製品にブラシ塗布すること、ゾルを製品にワイプ塗布すること、パディングによりゾルに製品を含浸させること、ゾルを製品上に放出すること、ゾルを製品上で流動させること、スリットコーティング技術の使用、ブレード塗布技術の使用、又はそれらの任意の組み合わせによって、ゾルが製品に塗布される、請求項1~
20のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項22】
ゾルが製品の表面の全体又は製品の表面の一部分のみに塗布される、請求項1~
21のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項23】
さらなるコーティングが塗布可能なベースコーティングを形成するためにゾルが製品に塗布されるか、又は既存のコーティングの上にコーティングを形成するためにゾルが製品に塗布される、請求項1~
22のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項24】
ゾルの塗布により形成されるベースコーティング又はトップコーティングが光透過性、及び/又は気体不透過性、及び/又は疎水性、及び/又は疎油性、及び/又は耐汚染性、及び/又は反射防止性である、請求項
23に記載のゾルの使用。
【請求項25】
水不透過性製品が一次包装、二次包装、又は三次包装として使用される、請求項1~
24のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項26】
包装が飲食産業、電子機器産業、エンジニアリング産業、電化用品産業、化粧品産業、医療機器産業、医薬品産業、ファッション産業、化粧品産業、パーソナルケア産業、家庭用品産業、室内装飾若しくは室外装飾産業、ホームインプルーブメント産業、自動車産業、航空産業、海運産業、防衛産業、又は建設産業において使用される、請求項
25に記載のゾルの使用。
【請求項27】
包装が飲食産業における使用のための容器の形態である、請求項
26に記載のゾルの使用。
【請求項28】
バイオポリマーがデンプン、カチオン性デンプン、加工デンプン、フラワー、小麦粉、大麦粉、レンズマメ粉、竹粉、トウモロコシ粉、オート麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、米粉、ヒヨコマメ粉、エンドウマメ粉、キチン、セルロース、ヘミセルロース、又はそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項
1~27のいずれか一項に記載のゾルの使用。
【請求項29】
請求項1~
28のいずれか一項に記載のゾルを使用して調製される水不透過性繊維系製品。
【請求項30】
水不透過性製品を調製するための、溶媒、アルコキシド、バイオポリマー、及び触媒
から形成されるゾル
であって、
前記溶媒は、1又は複数種のアルコールを含有し、
前記アルコキシドは、Ti(イソプロポキシ)
4
、Al(イソプロポキシ)
3
、Al(sec-ブトキシ)
3
、Zr(n-ブトキシ)
4
、Zr(n-プロポキシ)
4
、n-プロピルトリエトキシシラン、テトラプロピルオルトシリケート、チタン(IV)t-ブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、トリエチルオキシシラン、メチルトリエチルオキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、フェニル-トリエトキシシラン、チタン(IV)エトキシド、トリエトキシ-シリルシクロペンタン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、トリエトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシラン、及びそれらの任意の組み合わせを含み、
前記バイオポリマーは、デンプン系ポリマー、ヘミセルロース系ポリマー、セルロース系ポリマー、リグニン系ポリマー、及び/又は、キトサン系ポリマーを含み、
前記触媒は、酸及び/又は塩基のうちの少なくとも1つである、ゾル。
【請求項31】
バイオポリマーがデンプンを含む、請求項
30に記載のゾル。
【請求項32】
デンプンがカチオン性デンプンを含む、請求項
31に記載のゾル。
【請求項33】
カチオン性デンプンが第四級アンモニウム型カチオン性デンプン、第三級アンモニウム型カチオン性デンプン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項
32に記載のゾル。
【請求項34】
バイオポリマーがフラワーを含む、請求項
30に記載のゾル。
【請求項35】
フラワーがデンプン5~85%、ヘミセルロース0~30%、セルロース0~50%、リグニン0~25%、タンパク質0~35%、及び灰分0~25%を含む、請求項
34に記載のゾル。
【請求項36】
フラワーがデンプン45~85%、ヘミセルロース0~15%、セルロース0~10%、リグニン0~7%、タンパク質10~15%、及び灰分0~5%を含む、請求項
34又は
35に記載のゾル。
【請求項37】
フラワーが小麦粉、大麦粉、レンズマメ粉、竹粉、トウモロコシ粉、オート麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、米粉、ヒヨコマメ粉、エンドウマメ粉、又はそれらの任意の組み合わせの群から選択される、請求項
34~
36のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項38】
触媒が塩酸、クエン酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項
30~37のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項39】
溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項
30~38のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項40】
ゾルが1つ又は複数の機能性添加剤を含む、請求項
30~
39のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項41】
1つ又は複数の機能性添加剤が光開始剤、樹脂、油、染料、塩、鉱物粒子若しくは他の無機粒子、界面活性剤、複合粒子、及び/又は金属粒子を含む、請求項
40に記載のゾル。
【請求項42】
請求項
30~
41のいずれか一項に記載のゾルを作製する方法であって、
a)触媒を含む溶液にバイオポリマーを分散させ、次にアルコキシドを加えるステップ、又は
b)溶媒にアルコキシドを分散させ、触媒を加え、次にバイオポリマーを加えるステップ、又は
c)触媒を含む溶液にアルコキシドを分散させ、次にバイオポリマーを加えるステップを含む方法。
【請求項43】
1つ若しくは複数の機能性添加
剤を加えるステップをさらに含む、請求項
42に記載の方法。
【請求項44】
1つ若しくは複数の機能性添加
剤がゾルの形成前に加えられる、請求項
43に記載の方法。
【請求項45】
1つ若しくは複数の機能性添加
剤がゾルの形成中に加えられる、請求項
43に記載の方法。
【請求項46】
1つ若しくは複数の機能性添加
剤がゾルの形成後に加えられる、請求項
43に記載の方法。
【請求項47】
ゾルを遠心分離すること及び/又はゾルを乾燥させることで固体を形成するステップをさらに含む、請求項
42~
46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
固体を所望の粒径に粉砕するステップをさらに含む、請求項
47に記載の方法。
【請求項49】
請求項
30~
41のいずれか一項に記載のゾルでコーティングされているコーティング製品。
【請求項50】
コーティングが水不透過性、及び/又は光透過性、及び/又は気体不透過性、及び/又は抗菌性、及び/又は疎水性、及び/又は疎油性、及び/又は防汚性、及び/又は生物付着防止性、及び/又は耐汚染性、及び/又は接着促進性、及び/又は反射防止性である、請求項
49に記載のコーティング製品。
【請求項51】
製品が木材、織物、皮革、金属(合金を含む)、コンクリート、ボール紙、紙、プラスチック、バイオプラスチック、ガラス、セラミックス、砂、電子回路、れんが、大理石、土壌、塗装面、又は、それらの組み合わせを含み、前記組み合わせは複合製品及びバイオコンポジット製品を含む、請求項
49又は
50に記載のコーティング製品。
【請求項52】
分子、粒子、繊維、成形品、シート、及びそれらの組み合わせの形態である、請求項
49~
51のいずれか一項に記載のコーティング製品。
【請求項53】
請求項
30~
41のいずれか一項に記載のゾルから得られた粉体。
【請求項54】
1つ又は複数の機能性添加剤をさらに含む、請求項
53に記載の粉体。
【請求項55】
機能性添加剤が光開始剤、樹脂、油、染料、塩、鉱物粒子若しくは他の無機粒子、界面活性剤、複合粒子、及び/又は金属粒子を含む、請求項
54に記載の粉体。
【請求項56】
1つ若しくは複数の製品の形成、又は1つ若しくは複数の製品に塗布されるコーティングの形成における成分添加剤としての、請求項
53~
55のいずれか一項に記載の粉体の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[序論]
[0001]本発明は、コロイド溶液(ゾルとして知られる)、所望の特性を製品に付与するためのゾルの使用、ゾルを使用して作製される製品、及び前記ゾルを使用する方法に関する。
【0002】
[0002]市販品において使用される材料の特性は、多くの場合、所与の製品の所望の機能又は使用に重要である。例えば、紙、ボール紙、及び他の材料は市販品の包装として一般的に使用されている。包装製品の材料特性、例えば水、油、及び他の流体に対する包装材料の透過性は、不透過性のプラスチック材料又は複合材を利用する機能性コーティングを使用することで制御可能である。飲食産業等の多くの産業では、特定の包装品内での液体製品の保持を容易にするために、本来であれば透過性の媒体にプラスチックを塗布することがある。水、空気、又は他の流体に対する曝露によって損なわれうる物品への流体の侵入を防止するためにも、同様の方法が使用されることがある。一例では、いくつかの紙製品又はボール紙製品は、材料の多孔性、吸着性、耐摩耗性、又は他の特性を改変するためにマイクロプラスチック等の炭化水素由来材料を使用する、内添サイジング又は表面サイジングと呼ばれるプロセスに供される。別の例では、市販品における微生物(例えば細菌、真菌、ウイルス、及び寄生虫)の増殖は、消毒剤を使用して一般的に制御されるが、消毒剤の使用は、環境に害をもたらすことがあり、微生物の耐性株の形成を伴う。抗菌コーティングは、微生物増殖を制御する代替的な手段を実現する。従来の抗菌コーティング組成物は、銅、銀、亜鉛、又はフェノール系殺生物剤、第四級アンモニウム化合物、及び殺菌剤等の有機添加剤の殺生物作用に依存している。これらの材料は、様々な機構、例えば、微生物への結合及び微生物の呼吸への干渉、又は微生物のタンパク質及び/若しくは細胞壁の破壊を通じて、微生物の拡散に干渉する。既存の機能性コーティングを生成するために使用される原材料は、環境コストを伴う原料から一般に生成される。例えば、金属コーティングが採掘活動に由来しうる一方で、プラスチック材料は炭化水素原料に一般的に由来する。これらの材料を製造するために使用される材料又は化学物質、及び関連副産物は有害なこともある。いくつかの材料は、経時的に分解してマイクロプラスチック等の微粒子を生成することもある。さらに、多くのこれらの材料は、使用を通じて潜在的に有害な化学種を放出することがある。したがって、消費者製品及び産業環境の両方に見られる多くの一般的な材料に関して、健康及び環境上の懸念が引き続き存在する。
【0003】
[0003]本発明の発明者は、ゾルの形態の、従来の機能性コーティング組成物に対する新規の革新的で無毒の代替物を発見した。この文脈において、用語「ゾル」は、液体溶媒中のコロイド粒子の分散液を意味する。ゾルはゾル混合物と呼ばれることもある。小さなコロイド粒子から形成される多くのゾルは実質的に清澄で無色である。例えば、ケイ素系機能性材料から形成されるゾルは一般に清澄で無色となる。その理由は、ゾルを形成する粒子が光を散乱させないほど小さいからである。比較的大きな粒子から形成されるいくつかのゾルは着色していること及び/又は少なくとも部分的に不透明であることがある。例えば、チタン系機能性材料から形成されるゾルは目に見えて白色であることがある。ゾルは、様々な材料に塗布される際に、不透過性、及び/又は抗菌性、及び/又は他の点で機能性であるコーティング組成物を形成可能である。したがって、ゾルは、バリア及び/又は抗菌コーティング組成物として使用可能であり、疎水性、疎油性、防汚性、生物付着防止性、耐汚染性、光透過性、光不透過性、反射防止性、及び接着促進性等の他の機能性を実現しうる。バリアとして使用されるゾルは、酸素等の液体、蒸気、及び/又は気体に対するバリアを実現することができる。ゾルは容易に入手可能な天然材料を含んでもよい。これにより、得られるゾルが安価であることが確実になる。さらに、ゾルは表面に直接塗布可能であり、すなわち、表面は特別な調製プロセスを経る必要がない。これにより、ゾルが使いやすいことが確実になる。さらに、いくつかのゾルは耐久性及び耐熱性のあるコーティングを実現することが示されている。これにより、ゾルが復元性があって長持ちする機能性コーティングを形成可能であることが実証される。
【0004】
[0004]本発明によれば、水不透過性製品を調製するための、溶媒、アルコキシド、及び触媒を含むゾルの使用が提供される。本発明はさらに、ゾルを使用して調製される水不透過性繊維系製品を提供する。本発明の別の態様によれば、溶媒、アルコキシド、バイオポリマー、及び触媒を含むゾルが提供される。溶媒、アルコキシド、バイオポリマー、及び触媒を含むゾルを作製する方法も提供される。本方法はa)触媒を含む溶液にバイオポリマーを分散させ、次にアルコキシドを加えるステップ、b)溶媒にアルコキシドを分散させ、触媒を加え、次にバイオポリマーを加えるステップ、又はc)触媒を含む溶液にアルコキシドを分散させ、次にバイオポリマーを加えるステップを含む。本発明のさらに別の態様は、溶媒、アルコキシド、バイオポリマー及び/又は多糖、並びに触媒を含むゾルでコーティングされているコーティング製品を提供する。本明細書に記載のゾルから得られる粉体は、本発明のさらに別の態様を形成する。本開示によって、これらの態様及び他の態様が当業者に明らかになるであろう。誤解を避けるために、本発明の範囲を添付の特許請求の範囲によって規定する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】[0005]本発明のゾルが塗布されている製品の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図2】[0006]本発明のゾルの塗布後の製品の表面の断面模式図である。
【0006】
[詳細な説明]
[0007]ゾルは、好適に小さな粒径の1つ又は複数の材料を溶液に分散させることで形成可能である。いくつかのゾルは、触媒又は機能性成分等の追加の成分をさらに含んでもよい。本発明における使用に好適なゾルは、得られる製品に有益な特性又は特徴を付与するために製品に塗布、コーティング、又は組み込み可能な任意のゾルでありうる。一般に、本発明における使用に好適なゾルは機能性材料及び溶媒を含む。一例では、本発明を、溶媒、機能性金属アルコキシド、並びに任意選択でバイオポリマー及び/又は任意選択で触媒を含むゾルで使用することができる。用語「金属アルコキシド」は、金属を含むアルコキシド、金属を含む有機修飾アルコキシド、メタロイドを含むアルコキシド、及びメタロイドを含む有機修飾アルコキシドを含む。ゾルの形成において使用される溶媒は水、1つ若しくは複数のアルコール、任意の他の好適な溶媒、又はそれらの任意の組み合わせを含みうる。1つ又は複数のアルコールは、存在する場合、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、イソプロパノール、任意の他の好適なアルコール、及びそれらの任意の組み合わせを含みうる。バイオエタノール等のバイオ溶媒を使用してもよい。バイオポリマーは、存在する場合、デンプン系ポリマー、ヘミセルロース系ポリマー、セルロース系ポリマー、リグニン系ポリマー、キトサン系ポリマー、任意の他の好適なバイオポリマー又は修飾バイオポリマー、及びそれらの任意の組み合わせを含みうる。ゾルは、天然材料に由来する1つ又は複数のフラワー(flour)をさらに又は代わりに含んでもよい。好適なフラワーとしてはオート麦粉、大麦粉、ライ麦粉、小麦粉、米粉、竹粉、レンズマメ粉、ヒヨコマメ粉、エンドウマメ粉、トウモロコシ粉、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。ゾルが機能性金属アルコキシドを含む場合、アルコキシドは一般式M(OR)x又はRC-M(OR)xに一般的に一致し、式中、「M」は、好適な溶媒の存在下で加水分解可能な金属アルコキシドを形成する任意の金属を示す。「R」及び「RC」は、直鎖、分岐、芳香族、又は複合体(complex)等の任意の好適な形態をとりうる通常は1~30個の炭素原子のアルキル基を示す。「x」は、対応する金属イオン「M」の価数に一般的に等しい。一例では、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基でありうる。金属イオン「M」が1を超える価数を有する場合、各R基は同じでありうる。RCは、アルコキシドの加水分解後に金属「M」との共有結合を形成及び維持する任意の好適な有機基を示す。いくつかの例では、R及びRCは同じでありうる。他の例では、R及びRCは異なりうる。任意の好適な金属アルコキシドを使用することができる。好適な金属アルコキシドの例としてはSi(OR)4、Ti(OR)4、Al(OR)3、Zr(OR)3、及びSn(OR)4、並びにRC-Si(OR)3、RC-Ti(OR)3、RC-Al(OR)2、RC-Zr(OR)2、及びRC-Sn(OR)3が挙げられる。具体例では、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基でありうる。いくつかの具体例では、RCはフェニル基、シクロペンチル基、又は金属との共有結合を維持可能な任意の他の好適な有機基でありうる。金属アルコキシドの金属はケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、又は任意の他の好適な金属を含みうる。特定の例では、金属アルコキシドは、Ti(イソプロポキシ)4、Al(イソプロポキシ)3、Al(sec-ブトキシ)3、Zr(n-ブトキシ)4、Zr(n-プロポキシ)4、n-プロピルトリエトキシシラン、テトラプロピルオルトシリケート、チタン(IV)t-ブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、トリエチルオキシシラン、メチルトリエチルオキシシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、フェニル-トリエトキシシラン、チタン(iv)エトキシド、トリエトキシ-シリルシクロペンタン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、トリエトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシラン、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されうる。選択された例では、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエチルオキシシラン、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されうる。さらなる選択された例では、金属アルコキシドは、テトラプロピルオルトシリケート、チタン(IV)t-ブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、トリエチルオキシシラン、メチルトリエチルオキシシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、フェニル-トリエトキシシラン、チタン(iv)エトキシド、トリエトキシ-シリルシクロペンタン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、又はそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されうる。さらなる選択された例では、金属アルコキシドは、Ti(イソプロポキシ)4、Al(イソプロポキシ)3、Al(sec-ブトキシ)3、Zr(n-ブトキシ)4、Zr(n-プロポキシ)4、及びn-プロピルトリエトキシシラン系アルコキシド、並びにそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されうる。ゾルにおける使用に好適な触媒としては、酸又は塩基のうちの少なくとも1つが挙げられる。酸触媒の例としては塩酸、クエン酸、硝酸、及び酢酸が挙げられる。塩基触媒の例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニアが挙げられる。
【0007】
[0008]ゾルは、好適に小さな粒径の機能性材料を溶媒に分散させ、任意選択で触媒を加えることで形成可能である。機能性材料は、約1nm~1μmの範囲の少なくとも1つの寸法を有する粒子でありうる。ゾルを作製する代替的な方法は、任意選択で触媒を含む溶液に機能性材料を分散させ、次にバイオポリマー及び/又は1つ若しくは複数の他の機能性添加剤を加えることを包含する。バイオポリマー及び/又は1つ若しくは複数の他の機能性添加剤が存在する場合、一般に、機能性材料を含むゾルは、バイオポリマー及び/又は1つ若しくは複数の他の機能性添加剤の添加前に、ある期間保管されていることがある。ゾルを作製する方法中の任意の段階で、追加の機能性添加剤を加えることができる。例えば、バイオポリマーを含むゾルでは、バイオポリマーを溶液に分散させる前若しくは分散させた後、但しアルコキシドを加えた後に、又はバイオポリマー及びアルコキシドを溶液に加えた後に、追加の機能性添加剤を加えることができる。ゾルを作製する異なる段階で、1つ又は複数の機能性添加剤を加えることができる。機能性添加剤を、ゾルの特性を調整するために、例えばゾルの粘度、密度、若しくはレオロジーを制御するために、ゾルを赤外線硬化、可視光線硬化、若しくは赤外線硬化に好適なものにするために使用すること、及び/又は、ゾルを使用して調製されるコーティングに追加の機能性、例えば色、pH感受性、伝導性、蛍光を付与するために使用することができる。使用される機能性添加剤はゾルの所期の用途に応じて異なる。好適な機能性添加剤としては光開始剤、樹脂、油、染料(pH感受性染料及び蛍光染料を含む)、塩、界面活性剤、複合粒子、鉱物粒子又は他の無機粒子(炭酸塩、炭化物、酸化物、水酸化物、硝酸塩、臭化物等を含む)、並びに金属粒子(1つ又は複数の金属及び1つ又は複数の追加の非金属成分を含んだ合金及び粒子を含む)が挙げられる。ゾルを添加剤、バイオポリマー、又は触媒の存在なしで形成してもよい。より詳細には、ゾルは形成及び/又は使用中に添加剤、及び/又はバイオポリマー、及び/又は触媒を完全に又は実質的に含まなくてもよい。
【0008】
[0009]本発明において使用されるゾルを、使用前に改変することなく使用することができる。したがって、本発明のゾルを使用して調製される製品を、製品及びゾルから、ゾルを使用前に改変することなく調製することができる。例えば、水不透過性製品を、製品、及び添加剤を実質的に含まないゾルから調製することができ、すなわち、水不透過性製品は、任意の機能性添加剤の非存在下でゾルを製品に塗布することで調製される。或いは、本発明において使用されるゾルを使用前に改変することもできる。例えば、本発明において使用されるゾルを、ゾルを溶媒で希釈すること、ゾルと機能性添加剤とを組み合わせること、又はゾルを溶媒で希釈すること及びゾルと機能性添加剤とを組み合わせることの両方によって改変することができる。ゾルを希釈することにおける使用に好適な溶媒としては、ゾルを形成する際にアルコキシドを分散させるために使用される溶媒(ゾル溶媒と呼ばれることもある)、ゾル溶媒と混和性である他の溶媒、又はそれらの組み合わせが挙げられる。機能性添加剤を、ゾルの特性、例えばゾルのレオロジー、密度、若しくは粘度を調整するために使用すること、及び/又は、ゾルを使用して調製されるコーティングに追加の機能性を付与するために使用することができる。使用される機能性添加剤はゾルの所期の用途に応じて異なり、好適な機能性添加剤としては光開始剤、樹脂、塩、及び蛍光染料が挙げられる。
【0009】
[0010]定義上、ゾルは一般に安定である。したがって、ゾルは、ゾルの使用前の何らかの時点で形成可能である。例えば、ゾルを形成し、ゾルの使用に先立って、最大1時間、最大1日、最大1週間、最大1年、最大10年、又はそれ以上の期間保管してもよい。しかし、ゾルを、ゾルの使用の直前、2秒未満前、15秒未満前、30秒未満前、1分未満前、又は1時間未満前に形成してもよい。そのような例におけるゾルの使用としては、ゾルで1つ若しくは複数の製品をコーティングすること、又はゾルを材料調合物の一部として含めることを挙げることができる。
【0010】
[0011]ゾルを、ゾルが使用される位置に地理的に近いところで形成してもよい。或いは、ゾルを、ゾルが使用されるべき現場から離れて形成した後に、その現場に輸送してもよい。一例では、ゾルを1つ又は複数の製品に塗布する数秒前に、ゾルをオンラインプロセスで製造現場において形成することができる。別の例では、ゾルを独立した製造施設において形成した後、ゾルが1つ又は複数の製品に塗布される地理的に別個の現場に道路、鉄道、空路、海路、パイプライン、又は等価物によって輸送してもよい。より一般的には、適切であれば、ゾルが最終的に塗布されるべき製品とは別個に、ゾルを形成することができる。そのような例では、ゾルの形成後に、ゾルと、ゾルが塗布されるべき製品とを一緒にする。或いは、形成されるゾルが、形成の直後に、形成の実質的に直後に、又は形成後まもなく製品をコーティングするように、ゾルが塗布されるべき製品の周りにゾルが形成されてもよい。
【0011】
[0012]本明細書において使用される用語「製品」は、中間製品、半完成製品、及び未完成製品、並びにそれらの成分を、他の点では完成した商品及び物品に加えて含むように意図されている。例えば、ゾル混合物を製品に塗布することは、用紙、又は用紙から成形される三次元形状の形成前に、混合物を紙パルプスラリー、湿潤パルプ、エアレイドパルプ、又は乾燥紙パルプに加えることを包含しうる。この例では、ゾルは、製品を形成する材料マトリックスに含まれるものであり、したがって成分添加剤と見なされうる。混合物を製品に塗布することは、他の点では完成した製品の外面の全体又は一部分をゾル分散液又はゾル懸濁液でコーティングすることを包含することもある。一般に、混合物は、ブラシ塗布、噴霧、噴霧乾燥、回転塗布、滴下、射出、転写、水浸、液浸、混合、展延、ブレード塗布、パディング等を含む任意の好適な方法によって製品に塗布可能である。製品の性質並びに所望の特性及び特徴に応じて、1つの製品又は物品に混合物を塗布するために、個々の又は複数の塗布方法を利用することができる。例えば、不透過性コーティングを形成するように意図されるゾルは、一般に、ブラシ塗布、噴霧、パディング、液浸、ブレード塗布、又は回転塗布によって製品に塗布される。一例では、抗菌活性を有するさらなる加工用のバルク塊を得ることが、混合物を中間材料に混ぜ込むことで達成可能である。さらなる加工に使用可能なバルク塊の一例は、紙を作製するための中間パルプの使用前の中間パルプである。ゾルを、以前に同じゾルで既にコーティングされたか又は別のゾルで既にコーティングされた製品に塗布することで、例えば、同じゾルのより分厚い機能層を付与すること、又は、第1のコーティングを形成するために使用されるゾル及び第2のコーティングを形成するために使用されるゾルが異なる場合に様々な機能的利点を付与することができる。このようにして、ゾルを含むこともあれば含まないこともあるさらなる1つ又は複数のコーティング層の塗布前に、ゾルを使用して製品にプライマーコーティングを形成することができる。例えば、ゾルプライマーを紙製品又はボール紙製品上で使用することができる。任意の所望の数の異なるゾルコーティング層を形成することができる。複数のゾルコーティング層を使用する場合、すべてのコーティング層は1つ又は複数のゾルを含むことがある。或いは、異なるゾルコーティング層の間又は周りに配置される1つ又は複数の層は、ゾルを含まないか、又はゾルを実質的に含まないこともある。本発明のゾルによりコーティングされるべき製品は、任意の好適な材料から形成されうる。より詳細には、製品は木製品、織物製品、皮革製品、金属(合金を含む)製品、コンクリート製品又は建設材料、ボール紙製品、紙製品又はパルプ製品、プラスチック製品、ガラス製品、セラミックス製品、複合材料、電子回路、砂、れんが、大理石、土壌、塗料、塗装製品、飲食製品、医療機器、医薬製品、及びそれらの組み合わせを含みうる。
【0012】
[0013]誤解を避けるために言えば、本明細書において使用される用語「成分添加剤」は、1つ又は複数の材料、半完成品、バルク中間体、溶液、物質等にゾル自体を添加剤として加えることを意味する。したがって、用語「成分添加剤」は用語「機能性添加剤」とは異なって使用され、本明細書において、機能性添加剤は、ゾルに1つ又は複数の特性を付与するために形成前、形成中、又は形成後のゾルに加えられる1つ又は複数の他の機能性の化学種を意味する。誤解を避けるためにさらに言えば、ゾルを成分添加剤として使用する前に機能性添加剤をゾルに加えることができ、機能性添加剤を含まないゾルを成分添加剤として使用することができる。
【0013】
[0014]理論に拘束されるものではないが、ゾルが使用される製品に付与される機能的特徴は、ゾルを形成する成分の反応性官能基間の広範な架橋によるコーティングの形成によって生じうる。さらに、いくつかの状況では、製品への塗布の間又は後に、ゾルは、架橋コーティングの形成に加えて、一時的なナノ分散液、マイクロ分散液、又は懸濁液を少なくとも部分的に形成しうる。架橋コーティング及び/又は一時的なナノ分散液、マイクロ分散液、若しくは懸濁液は、製品の表面の本来であれば多孔質又は透過性である流路を部分的又は完全に遮断するか又は閉塞させることで、充填機能を果たしうる。したがって、製品をゾルでコーティングすることで、離散した機能性粒子又は反応性粒子を含む機能性ゾルコーティングの組み合わせを得ることができる。したがって、ゾル混合物は、多孔質及び/又は透過性の材料について同時にコーティング、充填剤、及び結合剤として働きうる。混合物を製品に塗布する際に、ゾルは製品の表面を覆い、製品の表面及び内層の任意の細孔、陥凹部、開口部、又は同様の特徴物に流入する。液体は、ゾルに懸濁した任意のナノ分散又はマイクロ分散材料を多孔質及び/又は透過性材料内に運搬可能である。したがって、ゾルコーティングを、製品の表面の細孔容積を満たすか又は部分的に満たすために使用することができる。一例では、ゾルを紙サイジングプロセスの一部として使用することができる。製品に塗布される際に液相に残留するあらゆるゾルは、製品の外側をコーティングするが、固体材料よりもさらに深く製品に浸透することもできる。液体ゾル成分が製品の表面から浸透したとき、ゾルは、ゾルと製品の内部構造に常在する水等の化学種との相互作用等の機構によって、ナノ分散液、マイクロ分散液、又は懸濁液を形成し続けることができる。したがって、ゾルは、製品表面の内部マトリックスに固体材料を形成し、製品構造の内側の空隙容積を満たすか又は部分的に満たすことができる。本来であれば固体表面処理によって到達されなかった可能性がある製品の表面形状及び内部構造の各部分に、塗布時の液体ゾルによって到達することができる。したがって、表面におけるアクセス可能な細孔が液体ゾルで満たされた可能性がある場合、液体ゾルコーティング面は、定着したときに、離散微粒子が塗布前又は塗布中に形成された連続コーティング層を形成しうる。液体ゾルが乾燥する際に、コーティング後のゾルのさらなる発達、又は製品の内部空隙空間における内部コーティングの形成によって、内部空隙空間が満たされうる。このようにして、ゾルは、ゾルが透過した表面の内部構造において固体を形成することで、製品の表面をコーティングし、細孔容積を材料で満たすか又は部分的に満たし、材料を一緒に結合させることができる。いくつかのゾルが表面コーティングの形成、及び/又は製品構造への透過を行うことから、そのような結合、充填、及びコーティングがゾルによって常に可能になるわけではない。いくつかのゾルは、製品の表面のみをコーティングすることで上記の架橋コーティングを形成するという役割を果たす。他のゾルは、製品表面を透過することで、一時的なナノ分散液、マイクロ分散液、又は懸濁液の形成なしに表面コーティング及び内部コーティングの両方を形成しうる。
【0014】
[0015]
図1は、本明細書に記載の方法を使用してコーティングされた繊維製品の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。SEM画像は、ゾルが乾燥した、連続架橋コーティング1が形成された領域を示す。架橋コーティングと微粒子3との組み合わせで満たされた、表面におけるアクセス可能な細孔2が、一時的なナノ分散液、マイクロ分散液、又は懸濁液の形成中に形成される。
図2は、コーティング材料の模式図を示す。
図2では、製品4がゾルでコーティングされることで、製品4の外面及び製品4の露出面の細孔6aの上にコーティング層5が形成されている。一時的なナノ分散液、マイクロ分散液、又は懸濁液の形成により生じる固体材料7が、製品の表面のアクセス可能な細孔空間をさらに満たしている。ゾルが内部製品構造に透過した際に、内部空隙空間6bに内部コーティング8及びさらなる微粒子9が形成されている。したがって、
図2の特定の例では、ゾルはコーティング5、充填剤7、及び結合剤8、9の機能を果たす。
【0015】
[0016]本発明のゾルは1つ又は複数のバイオポリマーを含んでもよい。1つ又は複数のバイオポリマーは、存在する場合、1つ又は複数の多糖を含んでもよい。例えば、バイオポリマーは、デンプン系ポリマー、ヘミセルロース系ポリマー、セルロース系ポリマー、リグニン系ポリマー、キトサン系ポリマー、任意の他の好適なバイオポリマー又は修飾バイオポリマー、及びそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ゾルは、天然材料に由来する1つ又は複数のフラワーをさらに又は代わりに含んでもよい。好適なフラワーとしてはオート麦粉、大麦粉、ライ麦粉、小麦粉、米粉、竹粉、レンズマメ粉、ヒヨコマメ粉、エンドウマメ粉、トウモロコシ粉、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。存在する場合、本発明のゾルにおけるバイオポリマーの使用は、アルコキシド等の負に帯電した化学種とのネットワークを形成する天然界面活性剤として働きうる。
【0016】
[0017]本発明での使用に好適なデンプンとしては、正に帯電した植物由来デンプン、又はカチオン性デンプン等のその合成等価物及び誘導体等価物が挙げられる。ゾルの所望の特性に応じて、アニオン性デンプン又は中性デンプン等の他のデンプンを使用してもよい。いくつかの例では、デンプン及び他の多糖を1つのゾルにおいて組み合わせてもよく、このことはゾルの機能性を最適化することに役立ちうる。本発明における使用に好適なカチオン性デンプンとしては第一級、第二級、第三級、及び第四級カチオン性デンプンが挙げられる。第四級アンモニウム型デンプンは高pH溶液中及び低pH溶液中の両方でカチオン性であり、一方、第一級、第二級、及び第三級アンモニウム型デンプンは低pH溶液中でのみカチオン性である。したがって、異なる種類のカチオン性デンプンは異なる用途に適しうる。1つ又は複数のデンプン又はカチオン性デンプンを含むゾルは水不透過性、及び/又は油不透過性、及び/又は蒸気不透過性、及び/又は気体不透過性、及び/又は抗菌性、及び/又は疎水性、及び/又は疎油性、及び/又は防汚性、及び/又は生物付着防止性、及び/又は耐汚染性、及び/又は反射防止性でありうる。特に、第四級アンモニウム型デンプンは、ゾルに抗菌性を付与する上で特に有効であることがわかっている。一般的に言えば、抗菌性ゾルは抗細菌性、及び/又は抗真菌性、及び/又は抗ウイルス性、及び/又は抗藻類性、及び/又は抗寄生虫性でありうる。デンプンを含むゾルは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、及びエンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)の増殖を防止する上で有効であることも示されている。
【0017】
[0018]本発明での使用に好適なフラワーとしては、正に若しくは負に帯電した植物由来フラワー、又はその合成等価物及び誘導体等価物が挙げられる。ゾルの所望の特性に応じて、中性フラワー等の他のフラワーを使用してもよい。異なるフラワーを1つのゾルにおいて組み合わせてもよく、このことはゾルの機能性を最適化することに役立ちうる。さらに、又は代わりに、ゾルの所望の特性及び機能性に応じて、フラワーを1つ又は複数のさらなる多糖と組み合わせてもよい。一般に、植物由来フラワーは、小麦等の植物材料の粉末形態である。フラワーは、タンパク質、脂、糖、デンプン、アミノ酸、ビタミン、及び微量元素を含む様々な構成成分を含む。フラワーの組成は、フラワーが由来する材料の組成に依存する。例えば、オート麦粉は、小麦粉が含むよりも大きな割合のセルロースを含みうる。本発明のゾルにおいて使用可能な様々な植物粉の例示的組成を表1に示す。本発明において使用されるフラワーはオート麦粉、大麦粉、ライ麦粉、小麦粉、ソバ粉、米粉、竹粉、レンズマメ粉、ヒヨコマメ粉、エンドウマメ粉、トウモロコシ粉、及びそれらの組み合わせから選択可能である。デンプン、ヘミセルロース、セルロース、リグニン、又は他の多糖を含む他の植物由来フラワーを使用してもよい。
【0018】
【0019】
[0019]一般に、本発明のゾルにおいて使用可能な植物由来フラワーは、デンプン5~85重量%を、任意選択でヘミセルロース0~30重量%、セルロース0~50重量%、リグニン0~25重量%、タンパク質0~35重量%、及び灰分0~25重量%との組み合わせで含みうる。他の好適なフラワーは、デンプン20~80重量%を、任意選択でヘミセルロース5~30重量%、セルロース0~50重量%、リグニン0~25重量%、タンパク質0~35重量%、及び灰分0~25重量%との組み合わせで含みうる。さらに他の好適なフラワーは、デンプン45~80重量%を、任意選択でヘミセルロース5~30重量%、セルロース0~50重量%、リグニン0~25重量%、タンパク質0~35重量%、及び灰分0~25重量%との組み合わせで含みうる。本発明のゾルに好適でありうるさらなるフラワーは、デンプン45~70重量%を、任意選択でヘミセルロース5~15重量%、セルロース0~10重量%、リグニン0~7重量%、タンパク質10~15重量%、及び灰分0~5重量%との組み合わせで含みうる。他の例では、好適なフラワーは、デンプン20~70重量%を、任意選択でヘミセルロース0~15重量%、セルロース0~10重量%、リグニン0~10重量%、タンパク質5~35重量%、及び灰分0~25重量%との組み合わせで含みうる。さらに、又は代わりに、好適なフラワーは、デンプン45~70重量%を、任意選択でヘミセルロース5~15重量%、セルロース0~10重量%、リグニン0~10重量%、タンパク質5~15重量%、及び灰分0~10重量%との組み合わせで含みうる。さらには、本発明のゾルに好適でありうるフラワーは、デンプン45~85重量%を、任意選択でヘミセルロース0~15重量%、セルロース0~10重量%、リグニン0~10重量%、タンパク質0~15重量%、及び灰分0~10重量%との組み合わせで含みうる。
【0020】
[0020]1つ又は複数のフラワーを含むゾルは水不透過性、油不透過性、及び/又は蒸気不透過性、及び/又は気体不透過性、及び/又は疎水性、及び/又は熱復元性、及び/又は光透過性、及び/又は疎油性、及び/又は防汚性、及び/又は耐汚染性、及び/又は反射防止性でありうる。特に、1つ又は複数のフラワーを含むゾルから形成されるコーティングが、使用中に可撓性及び耐久性を示すことがわかっている。例えば、1つ又は複数のフラワーを含むゾルから形成されるコーティングは、コーティングが形成される表面が変形するか、屈曲するか、又は機械応力若しくは熱応力に供される場合であっても、不透過性及び/又は他の点で機能性であるバリアを維持する。1つ又は複数のフラワーを含むゾルにより形成されるコーティングは、耐熱性があることも示されている。例えば、フラワーを含むゾルから形成されるコーティングを200℃超に加熱する際に、コーティングの不透過性の明らかな劣化は生じない。さらに、1つ又は複数のフラワーを含むゾルから形成されるコーティングは、前記コーティング上に配置される他のコーティングに機械的復元性及び/又は熱復元性を付与することができる。複数のゾルコーティングが1つの製品に塗布されるべき例では、フラワー系ゾルは機能性プライマーとして機能しうる。そのような例では、製品へのフラワー系ゾルの塗布が、フラワー系ゾルから形成されるコーティング上に配置されるゾルコーティングのひび割れ又は応力損傷に対する耐性を改善することが実証されている。フラワー系ゾル上に配置される他のゾルコーティングは、高温に対する耐性の改善、又はコーティングが塗布される表面が変形している場合の耐性の改善を示すことが示されている。
【0021】
[0021]本明細書に記載のゾルから機能性又は多機能性粉体を得ることができる。粉体を得るために好適な方法としては、ゾルを室温で乾燥させた後、乾燥製品を粉砕して粉体を形成すること、ゾルを加熱して乾燥製品を形成した後、乾燥製品を粉砕して粉体を得ること、ゾルを遠心分離して沈降によって粉体を得ること、混合、振盪、及び分離を組み合わせた他の方法、ゾルを超音波処理して均一粒径の粉体粒子を得ること、又はこれらの方法の組み合わせが挙げられる。
【0022】
[0022]粉体は、ゾルから別の様式で形成されるであろうコーティングの1つ又は複数の機能的特徴を有しうる。したがって、粉体は抗菌性、及び/又は疎水性、及び/又は疎油性、及び/又は防汚性、及び/又は生物付着防止性、及び/又は耐汚染性、及び/又は接着促進性、及び/又は反射防止性、及び/又は粉体を形成するゾルにより付与される任意の他の特性でありうる。一般的に言えば、抗菌性粉体は抗細菌性、抗真菌性、抗ウイルス性、抗藻類性、及び/又は抗寄生虫性でありうる。
【0023】
[0023]粉体を、好適な溶媒の添加によってゾルとして復元することができる。次に、復元ゾルを、本発明のゾルに関して本明細書に記載される様式で使用することができる。粉体を、機能性喪失なしに、2年を超える期間、18ヶ月を超える期間、12ヶ月を超える期間、6ヶ月を超える期間、1ヶ月を超える期間、2週間を超える期間、及び1週間を超える期間、著しい分解又は機能性喪失なしに保管することができる。乾燥粉末ゾルを実現することで、輸送コストの減少、保管容積の減少、及び長期安定性の改善を含む様々な利点をエンドユーザーに与えることができる。
【0024】
[0024]粉体を、木材、織物、皮革、金属(合金を含む)、コンクリート、ボール紙、紙、プラスチック、バイオプラスチック、ガラス、セラミックス、砂、れんが、電子回路、充填剤、大理石、塗料、顔料、接着剤、糊、並びに複合製品及びバイオコンポジット製品を含むそれらの組み合わせを含む製品の製造における多機能性成分添加剤として使用することができる。そのような製品は、分子(例えば薬物送達用のゾルゲルカプセル化小分子)、薄膜、粒子、繊維、シート、糊、液体、及びそれらの組み合わせの形態でありうる。さらに、粉体を使用してナノ粒子を形成することができ、ナノ粒子を溶媒に懸濁させてナノ粒子多機能性コーティング懸濁液を得ることができる。誤解を避けるために言えば、本発明のゾルを、適切であれば、流体形態である際に、成分添加剤として利用してもよい。一例では、任意選択で1つ又は複数の機能性添加剤を含む液体ゾル又は粉末ゾルを、1つ又は複数の製品上にフィルム又はバイオフィルムを形成するために続いて使用される材料又はプロセス原料への成分添加剤として加えてもよい。この例では、ゾル又は粉末ゾルは、合成ポリマー、例えばプラスチック、マイクロプラスチック、又は合成化学官能基で修飾された天然ポリマーを材料又はプロセス原料に含めることで通常は実現されるであろう水不透過性又は他の特性を付与することができる。したがって、プラスチック又はマイクロプラスチックを実質的に含まない水不透過性のフィルム又はバイオフィルムを形成するために、ゾルを使用することができる。他の例では、所与の容積のプラスチック又はバイオプラスチックを形成するために必要な炭化水素系材料の量を減少させながらプラスチック又はバイオプラスチックマトリックスに所望の機能性を付与するために、液体ゾル又は粉末ゾルをプラスチック又はバイオプラスチック中の成分添加剤として使用することができる。
【0025】
[0025]本発明のゾル、及び本発明のゾルから形成される粉体を、様々な用途において、前記用途における1つ又は複数の機能を実現するために使用することができる。ゾルを、自動車産業、エンジニアリング産業、建設産業、航空産業、海運産業、防衛産業、電子機器(光学電子機器及びセンサを含む)産業、エネルギー(電池、エネルギー貯蔵、及び再生可能エネルギーを含む)産業、フォトニクス産業、食品産業、医療産業、家庭用品産業、紙産業、接着剤産業、室内装飾又は室外装飾産業、ホームインプルーブメント産業、接着剤製造産業、石油ガス産業、分離精製産業、ファッション産業、並びに化粧品産業等の様々な産業において使用される製品の製造において使用することができる。ゾルを、木材、織物、皮革、金属(合金を含む)、コンクリート、ボール紙、紙、プラスチック、バイオプラスチック、ガラス、セラミックス、砂、れんが、電子回路、大理石、土壌、塗装面、並びに複合製品及びバイオコンポジット製品を含むそれらの組み合わせ等の材料を含む製品の調製において使用することができる。本発明のゾルを既存の組成物に加えることで、既存の組成物が前記ゾルの機能性の利点を享受するようにすることができる。例えば、本発明のゾルを既存の組成物に加えることで抗菌性組成物、及び/又は疎水性組成物、及び/又は疎油性組成物、及び/又は防汚性組成物、及び/又は生物付着防止性組成物、及び/又は耐汚染性組成物、及び/又は接着促進性組成物、及び/又は反射防止性組成物を得ることができる。したがって、本発明のゾルを、コーティング調合物中の成分添加剤として使用することができる。例えば、ゾル、又はゾルから形成される粉体を1つ又は複数のコーティング調合物に加えることで、ゾル、又はゾルの粉体が加えられたコーティング組成物から形成されるコーティングに1つ又は複数の特性を付与することができる。したがって、ゾル、又はゾルから形成される粉体はコーティングの水不透過性、油不透過性、及び/又は蒸気不透過性、及び/又は気体不透過性、及び/又は疎水性、及び/又は熱復元性、及び/又は光透過性、及び/又は疎油性、及び/又は防汚性、及び/又は耐汚染性、及び/又は反射防止性、及び/又は耐摩耗性、及び/又は接着性を変化させることができる。ゾル、又はゾルから形成された粉体が加えられたコーティングを使用することで、既にコーティングされた製品をコーティングすることができる。一例では、1つ若しくは複数のゾル、又はゾルから形成される1つ若しくは複数の粉体を成分添加剤として含むさらなるコーティングでコーティングする前に、製品をゾルでコーティングすることができる。
【0026】
[0026]ゾルを使用してコーティング製品を形成する場合、製品は1つ又は複数の粒子、繊維、成形品(規則形状及び不規則形状の成形品を含む)、シート、分子(例えば薬物送達用のゾルゲルカプセル化小分子)、並びにそれらの組み合わせの形態でありうる。ゾルでコーティングされた製品は、ゾルでコーティングする前には透過性又は多孔質でありうる。或いは、ゾルでコーティングされた製品は、ゾルでコーティングする前には不透過性又は非多孔質でありうる。非多孔質及び不透過性製品の一例は金属シート又はガラスシートでありうる。コーティング製品は、二次製品の一部を形成してもよく、二次製品の製造において使用されてもよく、すなわち、二次製品は、二次製品がゾルの機能性の利点を享受するように、本発明のコーティング製品を含みうる。例えば、コーティング製品は、抗菌性、及び/又は疎水性、及び/又は疎油性、及び/又は防汚性、及び/又は生物付着防止性、及び/又は耐汚染性、及び/又は反射防止性でありうる複合製品の製造において使用される粒子又は繊維を含みうる。コーティング製品は、接着を促進し、及び/又は複合製品若しくはバイオコンポジット製品に強度を付与することにも役立ちうる。コーティング製品、又はコーティング製品を含む二次製品の具体例としては、包装(例えば飲食品包装、医療包装、化粧品包装、電池包装、及び電子機器包装)、医療機器、流体容器、台所用品及び台所付属品、繊維系製品、又は不透過性コーティング、抗菌コーティング、若しくは他の機能性コーティングの利点を享受しうる任意の製品が挙げられる。
【0027】
[0027]ここで、本発明を、繊維製品に1つ又は複数の特徴を付与するために本明細書に記載のゾルが使用されているいくつかの特定の例を参照してさらに詳細に説明する。繊維製品は、繊維、撚り糸、織り糸、ストリップ、又は任意の他の同様の構造で構成される製品である。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数のゾルを使用して調製される繊維製品は、パルプ(パルプスラリー、湿潤パルプ、エアレイドパルプ、乾燥パルプ)、紙、ボール紙、板紙、織物、衣類、織布材料、又は複合繊維系製品及びバイオコンポジット繊維系製品を含むそれらの組み合わせを含みうる。特に、本発明のゾルを含むか又は本発明のゾルでコーティングされている繊維製品は、飲食産業、電子機器(光学電子機器及びセンサを含む)産業、エンジニアリング産業、電化用品産業、化粧品産業、医療機器産業、医薬品産業、ファッション産業、化粧品産業、パーソナルケア産業、家庭用品(例えばコートハンガー若しくは紙くず箱)産業、室内装飾若しくは室外装飾産業、ホームインプルーブメント産業、自動車産業、航空産業、海運産業、防衛産業、又は建設産業における使用のための一次包装、二次包装、又は三次包装として使用可能である。ゾルの使用によって付与される疎水性及び/又は疎油性及び/又は耐汚染性によって、液体を漏出なく収容可能である堅牢な容器の形成が可能になることから、このような包装は、飲食産業における使用のための容器の形態での使用に非常に適している。
【0028】
[0028]繊維系製品で使用すべきゾルを、繊維系製品と同時に形成することができる。例えば、繊維系製品の形成中にゾルを繊維系製品に塗布することで、1工程での調製中に水不透過性等のゾルの機能性を繊維系製品に与えることができる。そのような例では、繊維系製品が形成される際、及びゾルが形成される際に、ゾルが繊維系製品に塗布される。或いは、本発明において使用されるゾルを、繊維系製品とは別に形成し、次にゾルの形成後に繊維系製品に塗布することで、ゾル処理製品を調製することもできる。そのような例では、ゾルの形成後にゾルが繊維系製品に塗布される。予め形成されたゾルを繊維系製品の形成中に塗布することで、水不透過性繊維系製品を2工程(ゾル形成工程、次に繊維系製品形成とゾル塗布との合同工程)で調製することができ、又は、予め形成されたゾルを繊維系製品の形成後に塗布することで、水不透過性繊維系製品を3工程(ゾル形成工程、次に繊維系製品形成工程、次にゾル塗布工程)で調製することができる。予め形成されたゾルをパルプスラリー、エアレイドパルプ、乾燥パルプ、紙、ボール紙、板紙、複合繊維系製品、バイオコンポジット繊維系製品、又はそれらの組み合わせの形成中に塗布することができる。予め形成されたゾルをパルプスラリー、エアレイドパルプ、湿潤パルプ、乾燥パルプ、紙、ボール紙、板紙、複合繊維系製品、バイオコンポジット繊維系製品、又はそれらの組み合わせの形成後に塗布することができる。繊維製品に水不透過性を付与するためにゾルを使用する場合、水不透過性の紙、ボール紙、板紙、複合製品、又はバイオコンポジット製品を水不透過性のパルプスラリー、エアレイドパルプ、又は乾燥パルプから1工程、2工程、又は3工程で形成することができることが認識されよう。さらに、本発明のゾルの使用によって、形成するには結合剤と別の材料との組み合わせの使用が一般に必要でありうる水不透過性の紙、ボール紙、板紙、複合製品、又はバイオコンポジット製品の調製が可能になる。したがって、水不透過性繊維系製品を、前記製品の形成に通常必要である結合剤の非存在下で形成することができる。例えば、本発明に準拠する、パルプスラリー、エアレイドパルプ、又は乾燥パルプでのゾルの使用によって、追加の結合剤なしに水不透過性のボール紙又は紙を形成することが可能になりうる。
【0029】
[0029]ゾルを製品に噴霧すること、ゾルに製品を浸漬すること、ゾルに製品をデイップすること、ゾルを製品にローラーコーティングすること、ゾルを製品にブラシ塗布すること、ゾルを製品にワイプ塗布すること、パディングによりゾルに製品を含浸させること、ゾルを製品上に放出すること、ゾルを製品上で流動させること、スリットコーティング技術の使用、ゾル、又はゾルから得られた粉体を繊維混合物に混ぜ込むこと、及びそれらの組み合わせによって、本発明に従って使用されるゾルを繊維系製品に塗布することができる。ゾルを繊維系製品の表面に塗布する場合、ゾルを繊維系製品の表面の全体又は繊維系製品の表面の一部分のみに塗布することができる。
【0030】
[0030]さらなるコーティングが塗布可能なベースコーティングを形成するために、本発明のゾルを繊維系製品等の製品に塗布することができる。或いは、既存のコーティングの上にコーティングを形成するために、ゾルを製品に塗布することもできる。例えば、既存のベースコーティングの上にトップコーティングを形成するために、ゾルを繊維系製品に塗布することができる。ゾルの塗布により形成されるコーティング又はトップコーティングは光透過性、及び/又は気体不透過性、及び/又は疎水性、及び/又は疎油性、及び/又は耐汚染性、及び/又は反射防止性でありうる。
【0031】
[0031]いくつかの他の具体例では、ゾルを使用してプリント回路基板(PCB)等の電子回路をコーティングすることで、水又は他の流体がPCBに損害を与えることを防止する水不透過性バリアを形成することができる。ゾルは、有害化学物質からの保護、耐摩耗性、又は誘電性等の特性の改善といった他の利点をPCBに付与しうる。本明細書に記載の方法を使用してゾルをPCBに塗布することができる。別の例では、ゾルを使用して金属表面をコーティングすることで、金属表面を腐食から保護すること、又はコーティング金属表面からの光の反射を防止することができる。
【0032】
[実施例]
[0032]以下の実施例を考慮して本発明をさらに理解することができる。すべての化学物質をさらに精製せずに受け取ったまま使用した。
【0033】
[0033]実施例1~18は、ゾルを形成することができる様々な方法を示す。
実施例1 ゾルの形成
[0034]エタノール(7ml)及び水性HCl(0.1M、1.7ml)の混合物にテトラエチルオキシシラン(100%、5.5ml)を滴下した。ゾルの形成まで溶液を約40時間撹拌した。
【0034】
実施例2 ゾルの形成
[0035]エタノール(7ml)及び水性HCl(0.1M、1.7ml)の混合物にチタン(IV)エトキシド(100%、5.5ml)を滴下した。ゾルの形成まで溶液を約2時間撹拌した。
【0035】
実施例3 ゾルの形成
[0036]エタノール(15ml)及び水性HCl(0.1M、2ml)の混合物にメチルトリエチルオキシシラン(100%、7.5ml)を滴下した。ゾルの形成まで溶液を約1時間撹拌した。
【0036】
実施例4 ゾルの形成
[0037]エタノール(6.5ml)及び水性HCl(0.1M、1.8ml)の混合物にチタンイソプロポキシド(9g)を加えた。ゾルの形成まで混合物を約30分間撹拌した。
【0037】
実施例5 ゾルの形成
[0038]エタノール(6.3ml)及び水性HCl(0.1M、1.6ml)の混合物にジルコニウムイソプロポキシド(8.5g)を加えた。ゾルの形成まで混合物を約1時間撹拌した。
【0038】
実施例6 ゾルの形成
[0039]エタノール(6.2ml)及び水性NaOH(0.1M、1.5ml)の混合物にメチルトリエチルオキシシラン(100%、5.8ml)を滴下した。ゾルの形成まで溶液を約30分間撹拌した。
【0039】
実施例7 ゾルの形成
[0040]エタノール(6.5ml)及び水性HCl(0.1M、1.6ml)の混合物にアルミニウムイソプロポキシド(9.2g)を加えた。ゾルの形成まで混合物を約1時間撹拌した。
【0040】
実施例8 ゾルの形成
[0041]エタノール(10ml)及び水性NaOH(0.1M、2ml)の混合物に、50%テトラエチルオキシシラン及び50%メチルトリエチルオキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体混合物(5ml)を滴下した。ゾルの形成まで溶液を約30分間撹拌した。
【0041】
実施例9 ゾルの形成
[0042]溶液A- エタノール(10ml)にチタン(IV)エトキシド(5ml)を滴下した。溶液B- 50%テトラエチルオキシシラン及び50%フェニルトリエトキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体混合物(5.2ml)に溶液A 5mlを加えた。エタノール(8.2ml)及び水性HCl(0.1M、1.8ml)の混合物に前記混合物を滴下した。ゾルの形成まで溶液を室温で約1時間撹拌した。
【0042】
実施例10 ゾルの形成
[0043]エタノール(10ml)及び水性HCl(0.1M、2ml)の混合物に、50%テトラエトキシシラン及び50%フェニルトリエトキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体混合物(5.2ml)を滴下した。ゾルの形成まで溶液を室温で約6時間撹拌した。
【0043】
実施例11 ゾルの形成
[0044]エタノール(10ml)及び水性HCl(0.1M、1.6ml)の混合物にカチオン性デンプン(CS;7mg)を分散させてpH 2の溶液を生成した。この撹拌溶液に、100%テトラエチルオキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体(5.2ml)を滴下した後、撹拌をさらに8時間続けた。
【0044】
実施例12 ゾルの形成
[0045]エタノール(10ml)及び水性HCl(0.1M、1.6ml)の混合物にカチオン性デンプン(CS;7mg)を分散させてpH 2の溶液を生成した。この撹拌溶液に、100%メチルトリエチルオキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体(5.2ml)を滴下した後、撹拌をさらに2時間続けた。
【0045】
実施例13 ゾルの形成
[0046]エタノール(12ml)及び水性HCl(0.1M、2ml)の混合物にキトサン(6mg)を分散させてpH 2の溶液を生成した。この撹拌溶液に、50%テトラエトキシシラン及び50%フェニルトリエトキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体混合物(6ml)を滴下した後、撹拌をさらに1.5時間続けた。
【0046】
実施例14 ゾルの形成
[0047]エタノール(8ml)及び水性NaOH(0.1M、2ml)の混合物に小麦粉(7mg)を分散させてpH 13の溶液を生成した。この撹拌溶液に、50%テトラエチルオキシシラン及び50%メチルトリエチルオキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体混合物(5.2ml)を滴下した後、撹拌をさらに30分間続けた。
【0047】
実施例15 ゾルの形成
[0048]エタノール(10ml)及び水性NaOH(0.1M、1.5ml)の混合物にカチオン性デンプン(CS;5mg)を分散させてpH 13の溶液を生成した。この撹拌溶液にメチルトリエチルオキシシラン(5.2ml)を滴下した後、撹拌をさらに20分間続けた。
【0048】
実施例16 ゾルの形成
[0049]エタノール(6ml)、水性NaOH(0.1M、1ml)、及びメチルトリエトキシシラン(1ml)の混合物に小麦粉(5mg)を分散させてpH 13の溶液を生成した。この撹拌溶液に、50%テトラエトキシシラン及び50%フェニル-トリエトキシシランで構成されるケイ素アルコキシド混合物(1ml)を滴下した後、撹拌をさらに30分間続けた。
【0049】
実施例17 ゾルの形成
[0050]エタノール(7.6ml)及び水性HCl(0.1M、1.6ml)の混合物にカチオン性デンプン(CS;5mg)を分散させてpH 2の溶液を生成した。この撹拌溶液に、50%テトラエチルオキシシラン及び50%フェニルトリエトキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体混合物(5.2ml)を滴下した後、撹拌をさらに1時間続けた。
【0050】
実施例18 ゾルの形成
[0051]エタノール(6ml)、水性NaOH(0.1M、1ml)、及びメチルトリエトキシシラン(1ml)の混合物に小麦粉(5mg)を分散させてpH 13の溶液を生成した。この撹拌溶液にトリエチルオキシシラン(1ml)を滴下した後、撹拌をさらに1時間続けた。
【0051】
実施例19 ゾルの形成
[0052]エタノール(6ml)、水性NaOH(0.1M、1ml)、及びメチルトリエトキシシラン(1ml)の混合物に小麦粉(5mg)を分散させてpH 13の溶液を生成した。この撹拌溶液に、50%テトラエチルオキシシラン及び50%フェニル-トリエトキシシランで構成されるケイ素アルコキシド混合物(1ml)を滴下した後、撹拌をさらに1時間続けた。
【0052】
[0053]実施例20及び21は、粉体をゾルから形成することができる方法を示す。
実施例20 粉体の形成
[0054]エタノール(7.2ml)及び水性NaOH(0.1M、1.6ml)の混合物にカチオン性デンプン(CS;5mg)を分散させてpH 13の溶液を生成した。この撹拌溶液に、50%テトラエチルオキシシラン及び50%メチルトリエチルオキシシランで構成されるケイ素アルコキシド前駆体混合物(5.2ml)を滴下した後、撹拌をさらに1時間続けた。次に溶液を5分間遠心分離し、室温で乾燥させて白色粉体を得た。
【0053】
実施例21 粉体の形成
[0055]エタノール(7.2ml)及び水性NaOH(0.1M、1.6ml)の混合物にカチオン性デンプン(CS;5mg)を分散させてpH 13の溶液を生成した。この撹拌溶液にメチルトリエチルオキシシラン(5.2ml)を滴下した後、撹拌をさらに1時間続けた。次に溶液を5分間遠心分離し、室温で乾燥させて白色粉体を得た。
【0054】
[0056]実施例22~43は、どのようにしてゾルを、様々な製品に塗布すること、又は様々な材料に1つ若しくは複数の機能的特徴を付与するために使用することができるかの例を示す。
【0055】
実施例22 コーティング合板
[0057]ゾルに合板を手作業で2分間デイップし、合板を40℃で1時間乾燥させることによって、1枚の合板を実施例17において生成されたゾルでコーティングした。コーティング試料を室温で3週間定着させた。次にコーティング試料を、未コーティング合板1枚と並んで、冬季の1ヶ月間、屋外に放置した。2つの試料を屋内に移し、室温で3週間乾燥させた後、2つの試料を目視で比較した。未コーティング合板1枚は、吸水によってコーティング合板1枚に比べて大きなサイズに膨潤し、多孔性も吸水によって増加していた。未コーティング合板1枚では真菌も発生していたが、コーティング合板1枚では真菌は発生していなかった。
【0056】
実施例23 コーティング紙
[0058]ゾルを紙に噴霧し、紙を40℃で30分間乾燥させることによって、1枚のA4用紙を実施例17において生成されたゾルでコーティングした。コーティング紙を室温で3週間保管した後、熱水(たった今沸騰、推定温度90℃)及び冷水(推定温度20℃)の両方に対する水不透過性について試験した。コーティング紙は熱水及び冷水の両方に不透過性であり、水はコーティング紙を通過しなかった。
【0057】
実施例24 コーティングアルミニウム
[0059]1枚のアルミニウムをプライマーでコーティングした後、実施例17において生成されたゾルでコーティングした。コーティングアルミニウム及び1枚の未コーティング参照アルミニウムストリップを、ISO22196:2011の方法に準拠する黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する抗細菌活性試験に供した。抗細菌試験はユーロフィンズグループ(Eurofins group)(登録商標)内の民間試験所により行われた。試験は、コーティングアルミニウム試料及び未コーティングアルミニウム試料の実験データを比較した際の、大腸菌について1.31及び黄色ブドウ球菌について1.12のLog減少率を示した。
【0058】
実施例25 コーティングコップ
[0060]透過性の紙コップを実施例15において生成されたゾルでコーティングした。乳製品のアイスクリームをコーティング容器に入れ、室温で部分的に溶かした。コーティング容器の外側を透過又は漏出の形跡について検査したところ、何も観察されなかった。次に、コーティング容器及びアイスクリームを約-18℃の冷凍庫に3日間入れた後、取り外し、室温環境に終夜置いてアイスクリームを溶かした。コーティング容器の外側を透過又は漏出の形跡について再度検査したところ、何も観察されなかった。コーティング紙コップ及びアイスクリームをもう1回上記のように冷凍庫に戻し、取り外した。完了後、アイスクリームを廃棄し、コーティング紙コップを紙基材への流体の透過の証拠について調査した。紙への流体の透過は観察されなかった。
【0059】
実施例26 コーティングボウル
[0061]バージンパルプ繊維から形成されたボウルを実施例12において生成されたゾルでコーティングした。インスタント麺をコーティングボウルに入れ、沸騰水(推定温度90℃)300mlを加えた。麺及び水を撹拌し、ボウルを850Wマイクロ波オーブン中でマイクロ波に2分間置いた。ボウル及び内容物をマイクロ波から取り外し、内容物をもう1回撹拌した。ボウル及び内容物を室温に冷却した後、ボウルをパルプ繊維への流体の透過の形跡について検査した。透過又は漏出は観察されなかった。
実施例27 コーティングボウル
【0060】
[0062]バージンパルプ繊維から形成されたボウルを実施例12において生成されたゾルでコーティングした。コーティングボウルを220℃のオーブンに30分間置いた後、取り外し、室温に冷却した。インスタントコーヒー混合物2.5gをボウルに加えた後、沸騰水(推定温度90℃)250mlを加えた。コーヒーをボウルに30分間静置した後、コーヒーを廃棄し、ボウルをパルプへのコーヒーの透過、又は他の漏出の証拠について検査した。透過又は漏出は検出されなかった。
【0061】
[0063]インスタントコーヒー2.5g及び沸騰水(推定温度90℃)250mlを使い捨てコーヒーカップに入れ、30分間静置した。次にコーヒーを廃棄し、使い捨てコーヒーカップの内側及びコーティングパルプボウルをそれぞれ染みのひどさについて評価した。コーティングパルプボウルは、使い捨てコーヒーカップと比較した際に、染みのひどさの約50%の減少を示した。
【0062】
実施例28 接着剤
[0064]実施例17のゾルを調製した後、ポリ酢酸ビニル接着剤に添加剤として5重量%の割合で加え、混合した。得られた接着剤の粘着性及び接着能力を、ゾルのない接着剤との比較で測定した。ゾル添加剤を含む接着剤は、ゾルのない接着剤と比較した際に、接着能力の増加を示した。
【0063】
[0065]上記の接着剤を、水溶性を確定するためにさらに評価した。30分間浸した後、ゾルのない接着剤が水に溶解した一方で、ゾル添加剤を含む接着剤は水に溶解しなかった。
【0064】
実施例29 コーティング青銅
[0066]1枚のリン青銅シートを実施例18において生成されたゾルに手作業で1分間ディップ(dip)し、室温で5分間、次に60℃で20分間乾燥させることでコーティングした。次に機能性コーティングをゾルコーティングに塗布し、60℃で乾燥させた。次にコーティング試料を3週間定着させた。次にコーティング青銅シートを200℃に1時間加熱した。青銅シートを冷却した後、屈曲させて、
図3Aに示すようにコーティングがひび割れていないことを確認し、また、青銅シートのコーティング領域及び未コーティング領域に水を滴下し、
図3B及び
図3Cに示すように形成された水滴を目視で点検することで、疎水性について試験した。
図3Bに示す青銅の未コーティング領域の水滴は低い接触角を示し、これは良好な湿潤性/低い疎水性を示すものであり、一方、
図3Cに示す青銅のコーティング領域の水滴はより高い接触角を示し、これは不完全な湿潤性/良好な疎水性を示すものであった。
【0065】
[0067]もう1枚のリン青銅シートを単独の機能性コーティング中でコーティングし、60℃で乾燥させた。次に、もう1枚の青銅シートを200℃に1時間加熱した。もう1枚の青銅シートを冷却した後、屈曲させて、コーティングがひび割れているか否かを確認した。もう1枚の青銅シートのコーティング(実施例18において生成されたゾルの塗布なし)は表面全体にひび割れを示した。
【0066】
実施例30 コーティング紙
[0068]ゾルを紙に噴霧し、紙を40℃で30分間乾燥させることによって、1枚のA4用紙を実施例18において生成されたゾルでコーティングした。コーティング紙を室温で1週間保管した後、熱水(たった今沸騰、推定温度90℃)及び冷水(推定温度20℃)の両方に対する水不透過性について試験した。コーティング紙は熱水及び冷水の両方に不透過性であり、水はコーティング紙を通過しなかった。
【0067】
実施例31 コーティングアルミニウム
[0069]1枚の平らなアルミニウムを実施例18において生成されたゾルでコーティングした。ゾルコーティングアルミニウムを室温で5分間、次に60℃で20分間乾燥させた。次に機能性コーティングをゾルコーティングアルミニウム、及び未コーティング参照アルミニウム試料に塗布し、両試料を室温で3週間定着させた。アルミニウム試料を屈曲させ、コーティングのひび割れ又は損傷について検査した。いずれの試料も目に見える欠陥を示さなかった。次に両試料をオーブン中で250℃に30分間加熱した。オーブンから取り外した後、両試料を再度屈曲させ、コーティングをひび割れについて再度評価した。ゾルコーティングを含む試料では、コーティングのひび割れ又は損傷は観察されなかった。ゾルコーティングのない参照コーティングでは、表面の実質的に全体にわたるひび割れ及び機能性喪失が観察された。
【0068】
実施例32 コーティングコップ
[0070]透過性の紙コップを実施例14のゾルでコーティングした。乳製品のアイスクリームをコーティング容器に入れ、室温で部分的に溶かした。コーティング容器の外側を透過又は漏出の形跡について検査したところ、何も観察されなかった。次に、コーティング容器及びアイスクリームを約-18℃の冷凍庫に3日間入れた後、取り外し、室温環境に終夜置いてアイスクリームを溶かした。コーティング容器の外側を透過又は漏出の形跡について再度検査したところ、何も観察されなかった。コーティング紙コップ及びアイスクリームをもう1回上記のように冷凍庫に戻し、取り外した。完了後、アイスクリームを廃棄し、コーティング紙コップを紙基材への流体の透過の証拠について調査した。紙への流体の透過は観察されなかった。
【0069】
実施例33 コーティングパルプ繊維
[0071]透過性の粗いバージンパルプ繊維から形成された2つの植木鉢を実施例16のゾルでコーティングした。沸騰水300ml(推定温度90℃)を第1の鉢に加え、冷水300ml(推定温度7℃)を第2の鉢に加えた。水をコーティング鉢に2時間静置した。鉢及び水をパルプ繊維への流体の透過の形跡について検査した。透過又は漏出は観察されなかった。
【0070】
実施例34 コーティング布地
[0072]布製家庭用窓ブラインドを実施例19のゾルでコーティングした。1杯の熱いコーヒー(推定温度75℃)をコーティングブラインドに注ぎ、5分間静置した。一部のコーヒーはブラインド表面を横切ってブラインドを流れ出た。目視観察は、ブラインド表面の窪みの内側の、ブラインド表面に残留するコーヒーの小さな液滴を示した。次に、ブラインド表面を水で洗浄した後、ブラインド表面に残留するすべてのコーヒーを除去した。ブラインド表面を染み又は汚れの形跡について検査した。ブラインド材料の染み又は汚れは生じなかった。さらに、実験中にブラインド材料を通じて流れたコーヒー又は水は観察されなかった。
【0071】
[0073]同一だが未コーティングの布製ブラインドで実験を繰り返した。ブラインドはコーヒーの一部を吸収し、コーヒーは未コーティングブラインドを通過したことが観察された。水で洗浄した後、ブラインド表面に残留するコーヒーが除去された際に、布地の広範な染みが観察された。
【0072】
実施例35 コーティングコップ
[0074]実施例10のゾルをボール紙コップの内面にブラシ塗布した。混合物をボール紙コップの表面で乾燥させた。
【0073】
[0075]水25mlをコーティングボール紙コップ及びコーティングのない対照ボール紙コップにそれぞれ加えた。水は、未コーティングボール紙コップを直ちに染み通って周囲領域に漏出したことがわかった。コーティングボール紙コップ中の水25mlは、1時間超の間、観察可能な漏出なく保持され、その時点で観察を停止した。
【0074】
実施例36 コーティング植木鉢
[0076]実施例12のゾルを水75mlで希釈した。水で希釈してから10分以内に、混合物を透過性パルプ植木鉢の露出面に噴霧した。混合物を植木鉢の表面で乾燥させた。
【0075】
[0077]乳製品のアイスクリーム50mlをコーティング植木鉢、及びコーティングのない対照植木鉢にそれぞれ加え、2時間かけて溶かした。約30分後に、液体が未コーティング植木鉢を透過したことが観察され、この透過は次の1時間にわたって次第にいっそう顕著になった。この期間中、コーティング植木鉢では透過又は漏出は観察されず、その時点で観察を停止した。
【0076】
実施例37 コーティング木材
[0078]実施例13のゾルを木製タイルの露出面に回転塗布した。混合物を木製タイルの表面で乾燥させた。
【0077】
[0079]3×3四角格子のコーティング木製タイルの表面に各約0.75mlの水9滴を置いた。未コーティングの同一の木製タイルでプロセスを繰り返した。その後5~10分間かけて未コーティング木製タイルの水滴が木製タイルの表面に吸収されて、表面に濡れた円形の染みが残ったことが観察された。コーティング木製タイルに置かれた水滴は表面に5時間残留し、その時点で観察を停止した。
【0078】
実施例38 コーティング木材
[0080]実施例37のコーティング木製タイルを半分にスライスして、当初のタイルの半分の厚さの2つのタイルを生成した。当初のより厚いタイルの内側に既にあった半分の厚さの各タイルの表面を、先行する実施例37に記載の水滴実験に供した。水滴は、半分の厚さの各タイルの表面に5時間とどまり、その時点で観察を停止した。
実施例39 コーティング塗装木材
[0081]実施例37の実験を、実施例4のゾル及び予め塗装された木製タイルを使用して繰り返した。未コーティング塗装木製タイルに置かれた水滴は、15~30分間かけてタイルの表面にゆっくりと吸収されたことが観察された。コーティング木製タイルの表面に置かれた水滴はコーティング塗装木製タイルの表面に5時間残留し、その時点で観察を停止した。
【0079】
実施例40 コーティング紙
[0082]ゾルを1枚の紙にブラシ塗布し、紙を60℃で90分間乾燥させることによって、4枚のA4用紙を実施例1、実施例2、及び実施例9のゾルのうち各1つでコーティングした。コーティング紙を室温で4週間保管した後、水不透過性について試験した。コーティング紙は水に不透過性であり、水はコーティング紙を通過しなかった。
【0080】
実施例41 コーティング電子回路
[0083]回路を1枚の予め洗浄された布地にプリントし、実施例8のゾルでコーティングした。生地のプリント回路を通常の家庭用洗濯機において標準条件で15回洗浄した。15回の洗浄後、回路の機能性喪失は観察されなかった。15回の洗浄サイクルを行う前及び行った後にプリント布地を秤量した。繰り返しの洗浄プロセス中に、無視できる重量減少が記録された。
【0081】
実施例42 コーティング砂
[0084]砂を実施例3のゾルでコーティングし、乾燥させた。乾燥コーティング砂を容器の底に環の形状に並べ、水を環の内側に注いだ。3時間後、水が砂の環を突破したことは観察されず、その時点で実験を停止した。等質量の未コーティング砂の第2の試料を同一容器の底に環の形状に並べ、水を環の内側に注いだ。5分後、水が未コーティングの砂の環を突破したことが観察された。
【0082】
実施例43 添加剤としてのゾル
[0085]アラビアゴムを温水に溶解させ、冷却した。実施例1のゾルをアラビアゴム溶液に加え、30秒間混合した後、混合溶液を未コーティング紙に塗布した。ゾル添加のないアラビアゴムを使用して実験を繰り返した。ゾル添加剤を含む溶液でコーティングされた紙は水不透過性になり、清澄で透明なコーティングを示した。ゾル添加剤なしでコーティングされた紙は、不均一な手触り及び色のコーティングを示し、水に透過性のままであった。
【0083】
[0086]表2に示す実施例44~67は、様々な基材における、異なる希釈レベルでの、様々な溶媒、バイオポリマー、及びアルコキシドを含むゾルのコーティング性能を示す。すべてのゾルは、材料の疎水性、不透過性、及び/又は強度を向上させたコーティングを実現した。「最良」と記されたコーティング性能は、「さらに良好」と記されたコーティング性能よりも優れた品質のコーティングを示し、「さらに良好」と記されたコーティング性能は、「良好」と記されたコーティング性能よりも優れた品質のコーティングを示す。
【0084】
【0085】
【0086】
[0087]表3に示す実施例68~93は、様々な基材における、異なる希釈レベルでの、様々なフラワーを異なる触媒と共に含むゾルのコーティング性能を示す。すべてのゾルは、材料の疎水性、不透過性、及び/又は強度を向上させたコーティングを実現した。「最良」と記されたコーティング性能は、「さらに良好」と記されたコーティング性能よりも優れた品質のコーティングを示し、「さらに良好」と記されたコーティング性能は、「良好」と記されたコーティング性能よりも優れた品質のコーティングを示す。実施例68~93のゾルは、溶媒としてのエタノールをアルコキシドとしてのテトラエチルオルトシラン及び/又はメチルトリエトキシシランと共に使用することで形成される。
【0087】
【0088】
[0088]本明細書に具体例を例示及び記載してきたが、表示及び記載された具体例を、本開示の範囲を逸脱することなく、種々の代替及び/又は均等の実施態様で代替することができる。本出願は、本明細書において説明される具体例のあらゆる改変又は変形を網羅するように意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるように意図されている。