(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】通気導管を有する真空ポンプ用のオイル供給組立体
(51)【国際特許分類】
F04B 37/16 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
F04B37/16 Z
(21)【出願番号】P 2021521762
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 GB2019053015
(87)【国際公開番号】W WO2020084302
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ミルナー ポール
(72)【発明者】
【氏名】グラント ニコラス ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ルケッタ エミリアーノ
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-168992(JP,A)
【文献】米国特許第03168977(US,A)
【文献】特開平07-233792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ用のオイル供給組立体であって、
前記真空ポンプの軸受の一方側にオイルを供給するように配置されたオイル供給装置と、
前記軸受の前記一方側に配置され、前記オイル供給装置からの過剰オイルを受け入れるように構成された油だめ
であって、前記油だめは前記軸受を通じて前記真空ポンプと連通している、油だめと、
前記油だめ
と流体的に結合する入口及び前記真空ポンプに流体的に結合し、前記軸受の他方側
に配置された出口とを有する通気バイパス導管と、
を備え、
前記通気バイパス導管
の前記入口は、前記油だめの各面の上の高い位置に配置され
、かつ前記油だめから前記軸受の前記他方側へガスを運ぶように構成され、前記通気バイパス導管は、前記油だめ内のガスが
、前記軸受を通ることなく、ポンプダウンの間に排気されるのを可能にする、オイル供給組立体。
【請求項2】
前記入口は、前記軸受の軸線に対して軸方向及び半径方向のうちの少なくとも一方で高くなっており、前記入口は、前記軸方向及び前記半径方向のうちのいずれか一方に向いている、請求項1に記載のオイル供給組立体。
【請求項3】
前記通気バイパス導管は、前記入口を定める油だめセクションを有し、前記油だめセクションは、前記油だめの少なくとも1つの面から延びている、請求項1又は2に記載のオイル供給組立体。
【請求項4】
前記油だめセクションは、前記軸受に対して軸方向及び半径方向のうちの少なくとも一方に延びる、請求項3に記載のオイル供給組立体。
【請求項5】
前記通気バイパス導管は、前記油だめセクションと流体的に結合するギャラリーセクションを備え、前記ギャラリーセクションは前記油だめを取り囲む、請求項3から
4のいずれかに記載のオイル供給組立体。
【請求項6】
前記ギャラリーセクションは、前記軸受に対して同心の円周方向に延びる環体を成す、請求項
5に記載のオイル供給組立体。
【請求項7】
複数の前記油だめセクションを備え、前記油だめセクションの各々は前記入口の1つを定め、前記油だめセクションの各々は、前記ギャラリーセクションに流体的に結合する、請求項
5又は6に記載のオイル供給組立体。
【請求項8】
前記通気バイパス導管は、ギャラリーセクションに流体的に結合する結合セクションを備える、請求項
5から7のいずれかに記載のオイル供給組立体。
【請求項9】
前記結合セクションは、前記軸受の前記他方側に流体的に結合する、請求項
8に記載のオイル供給組立体。
【請求項10】
前記油だめセクションと前記ギャラリーセクションの一部分とは、第1の一体部品として形成され、前記結合セクションと前記ギャラリーセクションの他部分とは、第2の一体部品として形成される、請求項
8又は9に記載のオイル供給組立体。
【請求項11】
前記油だめは、前記オイル供給装置を通過するガスの流れを促進するための少なくとも1つの凹部を定める、請求項1から
10のいずれかに記載のオイル供給組立体。
【請求項12】
軸受と、請求項1から
11のいずれかに記載のオイル供給組立体とを備える真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空ポンプ用のオイル供給に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプなどの真空ポンプは、ロータディスクと交互配置の関係で配置された複数のステータディスクに対して回転するようにロータ軸に取り付けられた、複数のディスクを含むロータを備える。ロータ軸は、この軸のそれぞれの端部に又はその中間に位置決めされる2つの軸受で構成することができる軸受装置で支持される。上部軸受は、磁気軸受の形態とすることができ、下部軸受は、一般的に転がり軸受である。
【0003】
一般的な転がり軸受は、ロータ軸に対して固定された内輪と、外輪と、内輪と外輪との間の相対回転を可能にするためにこれらの間に配置された複数の転動体とを備える。各転動体の間の相互接触を防ぐために、転動体は、ケージで案内されかつ等間隔に保持される場合が多い。転がり軸受の正確かつ信頼性の高い作動を保証するためには適切な潤滑が重要である。潤滑剤の主な目的は、摩擦及び摩耗を最小にするために、回転及び滑り接触する軸受構成要素を隔てる荷重支持膜を確立することである。他の目的としては、軸受構成要素の酸化又は腐食を防止すること、汚染物質に対する障壁を形成すること、及び軸受構成要素から外に熱を伝達することを挙げることができる。潤滑剤は、一般にオイル又はグリース(オイルと増粘剤の混合物)の形態である。
【0004】
オイル潤滑式軸受を用いる真空ポンプは、軸受の接触域の間にオイルを供給するためのオイル供給システムを必要とする。これにより、オイルは冷却並びに潤滑を行うことができ、それによって、軸受はより高速で回転することができる。ターボ分子真空ポンプは、伝統的に転がり軸受にオイルを供給するためにウィッキングシステムを使用してきた。このようなシステムでは、1又は2以上のフェルトウィックは、オイルリザーバに供給され、フェルトスタックの1又は2以上の積層フェルトによって、ロータ軸上に取り付けられた円錐状の「オイルフィード」ナットにオイルを供給する。フェルトウィックは、フェルトスタックの積層フェルトのそれぞれの主要面に対して置くことができ、フェルトウィックは、フェルトスタックの積層フェルトの間にサンドイッチされようになっている。これは、オイルが容器からフェルトウィックを介して積層フェルトに毛管作用で運ばれ、このオイルが軸上に取り付けられたナットに供給されるのを可能にする。ロータ軸の回転時、オイルは、ナットの円錐面に沿って軸受に移動する。次に、オイルは、軸受を通過して重力の影響下でリザーバに戻され再循環される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改善されたオイル供給システムを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、真空ポンプ用のオイル供給組立体が提供され、オイル供給組立体は、真空ポンプの軸受の一方側にオイルを供給するように配置されたオイル供給装置と、軸受の一方側に配置され、オイル供給装置からの過剰オイルを受け入れるように構成された油だめと、油だめ及び軸受の他方側と流体的に結合する通気バイパス導管と、を備え、通気バイパス導管は、油だめのフロアの上の高い位置に配置された入口を有しかつ油だめから軸受の他方側へガスを運ぶように構成される。
【0007】
第1の態様は、既存のオイル供給組立体の問題点が、真空ポンプのポンプダウン時に、オイル供給システムの中に捕らえられたガスがオイルを損失させる可能性がある点であることを認識する。この損失は、オイル供給システムから流出するガスが一緒にオイルを移動させる可能性があるという理由で発生し、これはオイルを再循環のために捕らえるのを妨げる。そのうち、これはオイル供給システム内に存在するオイルが不十分になることにつながり、ポンプ軸受を乾燥させて損傷を与える。
【0008】
従って、オイル供給組立体が提供される。オイル供給組立体は、真空ポンプ用とすることができる。オイル供給組立体は、真空ポンプの軸受の第1の側に配置されるか又はオイルを供給するように構成されるオイル供給装置を備えることができる。オイル供給組立体は、油だめ、チャンバ、又はポットを備えることができる。油だめは、軸受の第1の側に配置する又は位置付けることができる。油だめは、オイル供給装置から漏出する過剰な又は貯蔵されないオイルを受け入れる又は保持するように構成又は配置することができる。オイル供給組立体は、油だめと流体連通することができる通気バイパス導管を備えることができる。また、通気バイパス導管は、軸受の第2の側と流体連通することができる。通気バイパス導管は、油だめのフロア、壁、又は表面から高くなった、隆起した、又はオフセットした位置に位置決め又は配置された入口を有することができる。通気バイパス導管は、油だめから軸受の第2の側へガスを運ぶ又は伝えるように構成又は配置することができる。このように、通気バイパス導管は、ポンプダウン時に油だめの中のガスが出るのを可能にする代替的経路を提供する。通気バイパス導管に対する入口の位置は、油だめの中のオイルがガスと一緒に通気バイパス導管を伝って移動するのを防ぐことを助ける。これは、オイル供給装置からのオイルの損失を防ぐこと及び軸受の寿命を長くするのを助ける。
【0009】
1つの実施形態において、高い位置は、過剰オイルの予期される深さよりも高い、従って、入口は、油だめの中の何らかの過剰オイルの予期される高さより上の高さ又は位置に位置付けることができる。これは、何らかのオイルが、通気バイパス導管の中に引き込まれるのを防ぐことを保証するのを助ける。
【0010】
1つの実施形態において、入口は、軸受の軸線に対して軸方向で高くされる。従って、入口は、油だめのフロア以外の軸受の軸方向に沿って配置することができる。
1つの実施形態において、入口は、軸受の軸線に対して軸方向に向いている。
【0011】
1つの実施形態において、入口は、軸受の軸線に対して半径方向で高くされる。
1つの実施形態において、入口は、軸受の軸線に対して半径方向に向いている。
【0012】
1つの実施形態において、入口は、油だめの各フロアの上の高い位置に配置される。従って、入口は、油だめの全てのフロア、壁、又は表面の上に配置することができる。これは、オイルが、オイル供給組立体の方向にかかわらず油だめから漏出するのを防ぐことを保証するのを助ける。
【0013】
1つの実施形態において、入口は、オイルを入口から遠くに案内するように構成されたドリップエッジを備える。ドリップエッジを設けることは、何らかのオイルが入口の近くで通気バイパス導管を通って漏出するのを防ぐのを助ける。
【0014】
1つの実施形態において、通気バイパス導管は、入口を定める油だめセクションを有し、油だめセクションは、油だめの少なくとも1つのフロアから延びている。従って、通気バイパス導管は、入口を提供しかつ油だめのフロアから延びる第1の部分を有することができる。
【0015】
1つの実施形態において、油だめセクションは、過剰オイルの予期される深さ以上に延びている。従って、油だめセクションは、過剰オイルの予期される深さよりも大きな高さ及び/又は長さを有することができる。
【0016】
1つの実施形態において、油だめセクションは、軸受の軸線に対して軸方向に延びる。
【0017】
1つの実施形態において、油だめセクションは、軸受の軸線に対して半径方向に延びる。
【0018】
油だめセクションは、オイルが集まらないように丸みを帯びている。従って、油だめセクションは、オイルが集まらないように形作ることができる。
【0019】
1つの実施形態において、通気バイパス導管は、油だめセクションと流体的に結合し、オイル供給キャップの周りに広がるギャラリーセクションを備える。従って、油だめセクションは、油だめを取り囲むギャラリーセクションと結合することができる。
【0020】
1つの実施形態において、ギャラリーセクションは、軸受に対して同心の円周方向に延びる環体を成す。従って、ギャラリーセクションは、輪状でありかつ油だめを取り囲む。
【0021】
1つの実施形態において、各々が1つの入口を定める複数の油だめセクションを備え、油だめセクションの各々は、ギャラリーセクションに流体的に結合する。従って、共通のギャラリーセクションに通じる2以上の油だめセクションを提供することができる。これにより、油だめの中の通気バイパス導管の容積が増加し、ポンプダウン時の油だめから入口を通過するガス流速が低下する。
【0022】
1つの実施形態において、通気バイパス導管は、ギャラリーセクションと流体的に結合する結合セクションを備える。
【0023】
1つの実施形態において、結合セクションは、軸受の他方側に流体的に結合する。
【0024】
1つの実施形態において、結合セクションは、軸受の軸線に対して軸方向に延びる。
【0025】
1つの実施形態において、結合セクションは、油だめセクションから円周方向にオフセットする。
【0026】
1つの実施形態において、油だめセクションとギャラリーセクションの一部分とは、第1の一体部品として形成され、結合セクションとギャラリーセクションの他部分とは、第2の一体部品として形成される。従って、ギャラリーセクションは、ギャラリーセクションを形成するために互いに結合する少なくとも2つの部品で形成することができる。これは、ギャラリーセクションの製造を単純にする。
【0027】
1つの実施形態において、オイル供給装置を通過するガスの流れを促進するための少なくとも1つの凹部を備える。凹部を設けることは、油だめセクションから流出するガスの流れを促進するのを助ける。
【0028】
第2の態様によれば、軸受と第1の態様のオイル供給組立体とを備える真空ポンプが提供される。
【0029】
さらなる特定の及び好ましい態様は、独立請求項及び従属請求項に記載されている。請求項に明確に記載されるもの以外の組み合わせに関して、従属請求項の特徴は、必要に応じて独立請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0030】
装置特徴が、ある機能を提供するために動作可能であると記載されている場合、これは、その機能を提供すること、又はこの機能を提供するように適合するか又は構成されることを含むことを理解されたい。
本発明の実施形態は、添付図面を参照して以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】1つの実施形態によるオイル供給キャップを示す。
【
図4】
図2に類似するがウィックホルダーが取り外された図である。
【
図8】1つの実施形態によるオイル供給キャップを示す。
【
図11】
図9に類似するがウィックホルダーが取り外された図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態を詳細に説明する前に、最初に概要を提示する。実施形態は、真空ポンプなどの回転機械の軸受に対してオイルを供給して再循環するために使用されるオイル供給組立体を提供する。典型的に。この組立体は、真空ポンプに装着されるキャップの内部に設けられる。キャップは、真空ポンプの軸受を潤滑するために用いられるオイルを収容するリザーバの中に延びる複数のウィックを有する。上記のように、オイルは、ウィックの上方に流れて一連の積層フェルトの中に流入する。積層フェルトは、オイルを軸受に与える。キャップが真空ポンプに取り付けられると、フェルトを収容する空間、チャンバ、又は油だめは、真空ポンプによってシールされる。真空ポンプがポンプダウンすると、空間内のガスは、真空ポンプによって排気される。従来、このような排気は、オイル供給装置システムで潤滑される軸受を通じて生じていたはずである。しかしながら、実施形態は、この空間と真空ポンプを流体的に結合するバイパス導管を備える。これは空間内の排気されるガスのための代替的な流路を提供する。バイパス導管は、空間内部に入口を備え、この入口は、ポンプダウン時に空間内部の何らかのオイルがガスと一緒に除去されることを防ぐのを助けるように配置される。詳細には、この入口は、オイルが集まるであろう空間油だめの何らかの表面、壁、又はフロアの上の位置に配置される。オイルは、真空ポンプの向きに応じて様々な表面に集まり得ることを理解されたい。これは、オイル損失を防ぐのを助け、軸受及び真空ポンプの寿命が延びる。
【0033】
オイル供給キャップ-第1の構成
図1は、真空ポンプの軸受(図示せず)にオイルを供給するオイル供給キャップ10を示す。オイル供給キャップ10は、真空ポンプ内部のオイル供給リザーバの中に延びる複数のウィックホルダー20を有する。
【0034】
図2から分かるように、ウィックホルダー20は、真空ポンプ内部のリザーバから軸受のナットの円錐面を収容する軸受開口40へオイルを運ぶウィック30を保持し、これによってオイルを軸受に供給する。オイル供給キャップ10内には、真空ポンプと流体連通する複数の結合セクション導管50が形成されている。
【0035】
図3から分かるように、ウィック30は、オイル供給キャップ10の内部の油だめ領域70の中に積層される積層フェルト60によって受け取られる。ギャラリーセクション120は、油だめ領域70の周囲に広がる。
【0036】
バイパス導管
図4(明瞭化のためにウィックホルダー20及び関連する構造体が取り外されている)から分かるように、油だめ領域70は、この油だめ領域70の中心に向かって半径方向内向きに延びて積層フェルト60と交差する油だめセクション80(バイパス導管の第1の部分を形成する)を含む。油だめセクション80は、入口90を定める。入口90は、油だめ領域70の第1の面100(円板で定められる)より高くなっており、第2の面(図示しないウィックホルダー20を支持する反対側の円板によって定められる)より高くなっており、第3の面110(第1の面100と第3の面との間に延びる環状壁によって定められる)よりも高くなっている。従って、
図6及び7から分かるように、積層フェルト60からのオイルが第1の面100、第2の面(図示せず)、又は第3の面110上に集まるならば、入口90の位置(これらの面から持ち上げられている)は、油だめセクション80の中へのオイルの流れを弱めるか、あるいは阻止することになる。これは、オイル供給システムからのオイルの損失を防ぐのを助ける。油だめセクション90の表面は丸みを帯びておりオイルが集まるのを防ぐことを助ける。また、油だめセクション80は、入口90の近くでは、ドリップエッジを備えることができ、油だめセクション80上に集まったオイルが入口90に入るのを防ぐことを助ける。
【0037】
図5から分かるように、油だめセクション80で規定されるバイパス導管は、油だめ領域70を同心円状に取り囲む環状チャンバを備えるギャラリーセクション120(バイパス導管の第2の部分を形成する)と流体的に結合する。結合セクション導管50(バイパス導管の第3の部分を形成する)は、ギャラリーセクション120と流体的に結合する。本実施形態では、結合セクション導管50のうちの1つが、油だめセクション80に対して放射状に配列されているが、他の実施形態において、結合セクション導管50は、油だめセクション80に対して放射状に配列されない。すなわち、結合セクション導管50は、油だめセクション80から円周方向にオフセットすることができる。
【0038】
作動時、真空ポンプが起動すると、油だめ領域70の中のガスが排気され、主として入口90を通り、油だめセクション80に沿って、ギャラリーセクション120に入り、結合セクション導管50を通って真空ポンプに入る。上述のように、ポンプダウン時に、油だめ領域70から流出するガスが多い場合でも、入口90の位置は、排気ガスと一緒にオイルが流れるのを防ぐことを助ける。
【0039】
入口90の正確な位置、特に入口90を定める油だめセクション80の端部の深さは、油だめ領域70に集まる何らかの過剰オイルの予期される深さに基づいて選択される。また、入口90及び油だめセクション80の寸法は、油だめ領域70から排気されるガスの速度を制御するように設定される。
【0040】
オイル供給キャップ-第2の構成
図8は、真空ポンプの軸受(図示せず)にオイルを供給するオイル供給キャップ10Aを示す。オイル供給キャップ10Aは、各々がウィック30Aを収容する複数のウィックホルダー20Aを有する。
図9及び10から分かるように、ウィック30Aは、軸受開口40Aにオイルを与える積層フェルト60Aにオイルを供給する。
【0041】
バイパス導管
図11(明瞭化のためにウィック30A及び積層フェルト60Aが省かれている)から分かるように、各々が入口90Aを有する複数の油だめセクション80A(バイパス導管の第1の部分を形成する)が設けられている。入口90Aは、軸受の回転軸に関する軸方向に向けられている。入口90Aは、第1の面100A、対向する第2の面(図示せず)、及び第3の面110Aに対して高い位置に配置される。
【0042】
図12から分かるように、油だめセクション80は、屈曲して半径方向に延びる導管97Aを形成する軸方向に延びる導管セクション95Aを形成する。各入口90Aは、油だめ領域70Aを同心状に取り囲む環状チャンバであるギャラリーセクション120A(バイパス導管の第2の部分を形成する)と流体連通する。ギャラリーセクション120Aは、上記と同様の様式で、結合セクション導管(バイパス導管の第3の部分を形成する)を提供する追加的な構造体(図示せず)で取り囲まれる。
【0043】
一連の凹部130Aは、第1の面100Aに形成されている。凹部140Aは、油だめセクション80Aの各側面に沿って軸方向に延びている。
【0044】
作動時、ポンプダウンが起こると、ガスは、油だめ領域70Aから排気され、凹部130A及び140Aに沿って流れることで助長される。ガスは、入口90Aを通過し、軸方向セクション95Aに沿って流れ、半径方向セクション97Aに流入する。次に、ガスは、ギャラリーセクション120Aの中に受け入れられ、結合導管を通過して、真空ポンプの中に流入する。
【0045】
上述のように、ポンプダウン時に、油だめ領域70Aから流出するガスが多い場合でも、入口90Aの位置は、排気ガスと一緒にオイルが流れるのを防ぐことを助ける。入口90の位置に起因して、オイル供給キャップ10Aの向きにかかわらず、入口90Aは、油だめ領域70Aの中の何らかの表面上の何らかの過剰なオイルのあり得る高さより上に配置され、その結果、ポンプダウン時のオイル損失を防ぐのを助けることが分かっている。
【0046】
入口90Aの正確な位置は、油だめ領域70Aに集まる何らかの過剰なオイルの予期される深さに基づいて選択される。また、入口90A及び油だめセクション80Aの寸法は、油だめ領域70Aから排気されるガスの速度を制御するように設定される。
【0047】
一部の実施形態は、ターボポンプのポンプダウン時の好ましいガス経路を提供し、油だめリザーバ又はオイルポット内のオイルが軸受を通って引き出されること及びポンプの中に消えることを防ぐようになっている。一部の実施形態は、何れの向きでも機能し、オイルが油だめリザーバから外に流出するのを防ぐことができる。
【0048】
軸受がポンプのこの領域からのガスの唯一の出口なので、過酷なポンプダウンの間に一部のオイルが軸受を通って移動し、ポンプの中に消えることが分かっており、多量のオイルのリザーバを必要とする一部の逆動作のポンプシステムとは違って、一部の実施形態は、過酷な通気作用時にオイルキャビティ内に捕らえられたガスを除去するための優先的なガス経路をもたらす。これは、リザーバからのオイルの損失を回避するために複雑な経路を通るバッキングラインでガスキャビティへ接続することよって実現される。
【0049】
1つの実施形態は、低いオイルフェルトにスロットを形成し、ポットの中心に四角いトンネルセクションを導入することを含む。ガスを受け入れるための小さなガス入口スロットがトンネルの端部に形成され、端部は、表面上に落下する何らかのオイルがこの入口の周りを流れてこの入口から離れるように丸みを帯びている。次に、入口は、環体(annulus)を介してベースキャップに接続され、バッキングラインに接続されるワイヤーキャビティに通気される。
【0050】
他の実施形態は、複雑な経路の形成を含む一体成形の解決策である。ガスは、最初にオイルポットの基部内のスロットに沿って進み、内壁に到達し、ここでスロット付き内壁を上方に進んで、最上部のフェルトの上面を横切って引き込まれた何らかのガスと合流する。この状態から、ガスは、径の周りに等間隔の4つのスロットに引き込まれ、ここに引き込まれると、ガスは、スライディングコアに形成された外部成形スロットを介してワイヤーキャビティに排気される。また、この実施形態は、真空度の低下を防ぐ成形シーリングエッジを含む。
【0051】
実施形態は、出口に直接引き込まれることによる、又は貯蔵される又は非反転の向きに流れる場合に貯蔵されているオイルが直接出口に流れることによるオイルの損失を防止しようとするものである。
【0052】
実施形態は、流動オイルポット拘束手段へのガス排気経路を削除することでポンプシステムの高さを抑える、すなわちポンプの高さは同じ状態のままである。
【0053】
本明細書では、本発明の例示的な実施形態が図面を参照して詳細に開示されているが、本発明は詳細な実施形態に限定されず、当業者であれば、請求項及びその均等物に定義されるような本発明の範囲から逸脱することなくその範囲で様々な変形及び修正を行うことができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0054】
10、10A オイル供給キャップ
20、20A ウィックホルダー
30、30A ウィック
40、40A 軸受開口
50 結合セクション導管
60、60A 積層フェルト
70、70A 油だめ領域
80、80A 油だめセクション
90、90A 入口
95A 軸方向セクション
97A 半径方向セクション
100、100A 第1の面
110、110A 第3の面
120、120A ギャラリーセクション
130A、140A 凹部