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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】改良細粉製品のための方法及び組成
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20241202BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20241202BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20241202BHJP
   B02C 21/00 20060101ALI20241202BHJP
   C12P 1/02 20060101ALI20241202BHJP
   A21D 2/36 20060101ALN20241202BHJP
   A21D 13/06 20170101ALN20241202BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20241202BHJP
   A23L 7/126 20160101ALN20241202BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20241202BHJP
【FI】
A23L33/21
A23G3/00
A23L23/00
B02C21/00 A
C12P1/02 Z
A21D2/36
A21D13/06
A23L7/109 A
A23L7/109 B
A23L7/126
A23L19/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019529477
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 NZ2017050152
(87)【国際公開番号】W WO2018101844
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】62/428,411
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519191787
【氏名又は名称】グリーン スポット テクノロジーズ ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】サイラス グラナート ビラズ ボアズ
(72)【発明者】
【氏名】ニーナ グラヌッチ
【合議体】
【審判長】淺野 美奈
【審判官】植前 充司
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174588(JP,A)
【文献】特開平2-65748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0231114(US,A1)
【文献】登録実用新案第3207248(JP,U)
【文献】World Journal of Microbiology and Biotechnology,2003年,19,pp.461-467
【文献】標準技術集 きのこの栽培方法,特許庁,2006年,p.43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/21
A23G 3/00
A23L 23/00
B02C 21/00
C12P 1/02
A21D 2/36
A21D 13/06
A23L 7/109
A23L 7/126
A23L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物材料の真菌発酵に由来する細粉組成物の製造方法であって、当該細粉組成物が、1~50重量%の総代謝可能な炭水化物レベルを有し、当該方法が、以下:
a)リグノセルロース系植物材料基質を水和、乾燥又は維持して、55%~90%の基質水分レベルを達成すること、ここで当該リグノセルロース系植物材料は植物又は果物の搾りかす、皮又は果皮であり
b)a)の前記基質を滅菌すること;
c)活性食用高等真菌を前記滅菌基質に接種すること、ここで前記真菌は、白色腐朽菌であり、ここで当該白色腐朽菌はPleurotus属、Lentinula属、Ganoderma属、Volvariella属、Auricularia属、Armillaria属、Flammulina属、Pholiota属、Tremella属及び/又はHericium属から選択される、
d)前記接種された基質を、18℃~40℃で5~28日間、空気流下で過剰な酸素又は二酸化炭素の蓄積を防ぐようにしてインキュベートして発酵基質を産生すること;
e)d)の前記発酵基質を乾燥すること;及び
f)前記乾燥、発酵基質を摩砕して細粉組成物を形成すること、
の工程を含み、ここで接種前に食品用窒素源である機能性添加剤を前記基質に加えるさらなる工程を含む、製造方法。
【請求項2】
工程c)の接種に用いられる前記活性食用高等真菌が、前記水和リグノセルロース系植物材料の5~50%w/wで加えられる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記植物又は果物の搾りかす、皮又は果皮が、キウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、ブドウ、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、ライム、レモン、オニオン、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、スイカ及びココナッツから成る群から選択にされる植物又は果物に由来し、あるいはキウイフルー、リンゴ、オレンジ、ビートの根及びニンジンから成る群から選択される植物又は果物に由来する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記白色腐朽菌が、Pleurotus属、Lentinula属、Volvariella属、Armillaria属、Flammulina属及び/又は、Pholiota属から選択される、あるいはPleurotus pulmonaris及び/又はLentinula edodesから選択される,請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記発酵基質を乾燥する前記工程が、30℃~70℃の温度で基質を乾燥することを含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記乾燥工程が、真空条件下で行われる、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記インキュベーション工程d)が、湿度が90%~100%の間であるインキュベーション空間で実施される、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された食品及び改良された食品を製造するための方法に関する。より具体的に、改良された食品は、高等真菌による植物材料の発光によって産生される低カロリー細粉(flour)製品である。
【背景技術】
【0002】
食品産業及び伝統的な調理法及び焼成法に用いられる細粉の大部分は、微粉末に粉砕されている様々な植物材料、特に穀物から得られる。
【0003】
細粉は、伝統的に、コムギ等の植物材料を粉砕することによって作られる。コムギの様々な部分が、様々な種類の細粉の製造に用いられる。いくつかの果物及び野菜細粉が知られているが、これらは単に果物又は野菜を乾燥させ、次いで乾燥した果物又は野菜を細粉に粉砕又は摩砕することによって形成される。例えば、リンゴ、ブルーベリー、ブドウ又はプラム繊維は、Marshall Ingredientsによって製造される(www.marshallingredients.com)。単糖類及び/又は多くの果物及び野菜のデンプンの含有量が高いため、そのような細粉は、結果として、代謝可能な炭水化物を多く含む。
【0004】
伝統的な細粉の栄養成分は、用いられる植物材料の種類、そしてそれが摩砕され及び他の植物材料と混合される程度に依存する。概して、高タンパク質穀物は、高タンパク質細粉をもたらし、そして原材料中の代謝可能な炭水化物レベルを増加させることは、同様の代謝可能な炭水化物を有する最終的に摩砕された製品をもたらす。
【0005】
一般的に用いられる細粉の典型的なカロリーレベルは、コムギ、トウモロコシ及び米細粉では、約330~360カロリー/100g、ナッツに基づく細粉(例えば、アーモンド等)は、100g当たり550~600カロリーに達する。健康上又は個人的な理由でカロリー摂取を減らしている消費者にとって、伝統的な細粉の比較的高いカロリー含有量は、それらを低カロリー食品より望ましくないものにする。
【0006】
US200690280753 (‘753)は、オート麦の発酵から製造された「マイコフラワー(mycoflour)」製品、特にビタミンDレベルを高めるために紫外線を照射された細粉について記載する。しかしながら、’753に記載されている細粉は、代謝可能な炭水化物が多く、食品として使用され得る無臭、無味、高カロリー製品を提供するように設計されている。
【0007】
US20100316763 (‘763)は、食品中の食品の劣化及び病原性微生物の増殖を抑制することが出来る食用の植物又は動物から製造された発酵食品を記載する。食品組成物は、糖類の付加を含み、低カロリーの食品の製造の方法又は提案を提供するよりもむしろ炭水化物を増加させる利点を開示する。
【0008】
US2006233864は、発酵を用いて繊維の栄養価を改善する方法、特に家畜に最適なレベルのタンパク質、繊維及び脂肪を有する飼料を開発することによって体重増加をもたらす動物用の高タンパク質飼料を製造する方法を開示する。
【0009】
高カロリー含有物を含まず、細粉の物理的利点を保持する焼成した、加工した又は生の食品に組み込むことが出来る、ヒトが消費するための低カロリー細粉製品を開発することは、利点があると予想する。
【0010】
味の良い食品を得るために用いられ得る美味しい範囲の味、食感及び色を提供する、代謝可能な炭水化物の少ない細粉組成物を産生することは、さらに利点があると予想する。
【0011】
伝統的な細粉を製造するために一般的に用いられるものよりも広範囲の植物材料の使用を可能にする低カロリー細粉の製造方法を開発することは、さらに利点があると予想する。
【0012】
廃棄物又は果物、野菜又は穀物加工の副産物から有用な食品を開発することは、さらに利点があると予想する。
【発明の概要】
【0013】
発明の目的
本発明の目的は、他の細粉と比較した際に、代謝可能な炭水化物が少ない細粉組成物を提供することである。
【0014】
あるいは、本発明の目的は、他の細粉と比較した場合に、より低い発熱量を有する細粉組成物を提供することである。
【0015】
あるいは、他の細粉と比較した場合、代謝可能な炭水化物が少ない細粉組成物の製造方法を提供することが目的である。
【0016】
あるいは、他の細粉と比較した場合、より低い発熱含有量を有する細粉組成物の製造方法を提供することが目的である。
【0017】
あるいは、本発明の目的は、植物材料の真菌発酵に由来する食品組成物を提供することであり、前記食品組成物は、発酵前の植物材料の総代謝可能な炭水化物レベルより低い総代謝炭水化物レベルを有する。
【0018】
あるいは、本発明の目的は、少なくとも公衆に有用な選択を提供することである。
【0019】
発明の概要
本発明の第1の態様によると、植物材料の真菌発酵から誘導された細粉組成物提供され、当該細粉は、0.1~50重量%の総代謝可能な炭水化物レベルを有する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、細粉組成物は、0.1~30重量%の代謝可能な炭水化物を含む。より好ましくは、細粉組成物は、0.1~15重量%の代謝可能な炭水化物、さらにより好ましくは、10重量%未満の利用可能な炭水化物を含む。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態において、細粉組成物は、30~90重量%の食物繊維(非代謝性炭水化物)を含む。より好ましい実施形態において、細粉は、40~80重量%の食物繊維を含む。
【0022】
より好ましい実施形態において、食物繊維は、5%~70%のベータグルカン、さらに好ましくは、真菌由来の1,3及び1,6ベータグルカンを含む。より好ましくは、食物繊維は、40%~65%の真菌由来の1,3及び1,6ベータグルカンを含む。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、細粉組成物は、細粉100g当たり150~300カロリーを有する。
【0024】
より好ましくは、細粉組成物は、細粉100g当たり150~250カロリーを有する。
【0025】
好ましい実施形態において、細粉組成物は、100g当たり300カロリー未満である。
【0026】
好ましい実施形態において、細粉組成物は、0.1~15%の代謝可能な炭水化物、15~35%のタンパク質、1~10%の脂肪及び50~80%の食物繊維を含む。
【0027】
より好ましくは、食物繊維は、40%~65%の真菌由来の1,3及び1,6ベータグルカンを含む。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、細粉組成物は、全脂肪の10%以上のリノール酸含有量を有する。
【0029】
より好ましくは、細粉組成物は、全脂肪の20~70%のリノール酸含有量を有する。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施形態において、植物材料は、限定されないが、キウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、キャッサバ、オニオン、パースニップ、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー(paw)、パイナップル、メロン、メスキート、スイカ、ドングリ、ヘーゼルナッツ、栗、ヒヨコ豆、チア、ブドウ、ジャガイモ、ココナッツ、アーモンド、大豆、ソルガム、アロールート、アマランス、タロイモ、オート麦、ガマ、キノア、コムギ、オオムギ、ソバ、トウモロコシ、コメ、アッタ、スペル、ライ麦、麻、テフ、又は果物及び野菜の搾りかす、皮/果皮、種子又は根等のその副産物及び/又はその派生物を含む、1つ以上の果物、ナッツ、穀物又は野菜から選択される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、細粉組成物は、限定されないが、キウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、キャッサバ、オニオン、パースニップ、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、メスキート、スイカ、ドングリ、ヘーゼルナッツ、栗、ブドウ、ヒヨコ豆、チア、ジャガイモ、ココナッツ、アーモンド、大豆、ソルガム、アロールート、アマランス、タロイモ、ガマ、キノア、ソバ、トウモロコシ、コメ、アッタ、麻、テフ、又は果物及び野菜の搾りかす、皮/果皮、種子又は根等のその副産物及び/又はその派生物を含む、1つ以上のグルテンフリー植物材料から選択される。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態において、植物材料は、1つ以上のキウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、ブドウ、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、オニオン、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、スイカ、ココナッツ、大豆又は搾りかす、皮/果皮、種子又は根等のその製品及び/又はその派生物を含む低デンプン果物又は野菜に由来する。
【0033】
好ましくは、植物材料は、10%未満のデンプン、より好ましくは、5%未満のデンプン、さらにより好ましくは、2%未満のデンプンを含む。
【0034】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、組成物は、5~50%w/wの真菌バイオマスを含む。
【0035】
本発明の細粉組成物は、好ましくは、小麦粉と同等又はそれよりも濃い細粉白色度を有する。
【0036】
本発明のさらなる態様によると、20%w/w未満のデンプンを有する低デンプン植物材料の真菌による発酵による食品組成物であって、発酵前の植物材料の総代謝可能な炭水化物レベルより低い総代謝可能な炭水化物レベルを有する食品組成物が提供される。
【0037】
より好ましくは、食品組成物の総代謝可能な炭水化物レベルは、発酵前の植物材料の総代謝可能な炭水化物レベルより少なくとも20~90%低い。
【0038】
さらにより好ましくは、食品組成物の総代謝可能な炭水化物レベルは、発酵前の植物材料の総代謝可能な炭水化物より少なくとも40~85%低い。
【0039】
好ましくは、植物材料は、10%未満のデンプン、より好ましくは、5%未満のデンプン、さらにより好ましくは2%未満のデンプンを含む。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、食品組成物は、ペースト、液体、粉末、固体又はフレーク、顆粒、粒又はペレット等の流動性の良い形態である。
【0041】
本発明のさらなる実施形態によると、植物材料から真菌の発酵から誘導される細粉組成物の製造方法が提供され、細粉組成物は、1~50重量%の総代謝可能な炭水化物レベルを有し、当該方法は、以下:
a)リグノセルロース系植物材料基質を水和、乾燥又は維持して、45%~95%の基質水分レベルを達成すること;
b)a)の基質を滅菌すること;
c)活性な食用高等真菌を基質に接種すること;
d)接種された基質を一定期間インキュベートして発酵基質を産生すること;
e)発酵基質を乾燥すること;及び
f)乾燥、発酵基質を摩砕して細粉組成物を形成すること、
の工程を含む。
【0042】
より好ましくは、当該方法は、総代謝可能な炭水化物レベルが、0.1~15重量%、さらにより好ましくは、5~10重量%の利用可能な炭水化物を有する細粉組成物を製造するためのものである。
【0043】
好ましくは、工程c)における接種に用いられる活性真菌は、水和リグノセルロース系植物材料の5~50%w/wの量で添加される。
【0044】
より好ましくは、活性真菌は、10~20%w/wの量で添加される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、当該方法は、接種の前に機能性添加材を基質に添加するさらなる工程を含む。より好ましくは、機能性添加剤は、食品用窒素源である。窒素源は、好ましくは、硫酸アンモニウム、グルタミン酸、酵母エキス、ペプトン及び/又はリン酸アンモニウム(DAP)から選択される。
【0046】
本発明のさらに好ましい実施形態において、植物材料は、限定されないが、1つ以上のキウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、ブドウ、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、キャッサバ、オニオン、パースニップ、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、メスキート、スイカ、ドングリ、ヘーゼルナッツ、栗、ヒヨコ豆、チア、ブドウ、ジャガイモ、ココナッツ、アーモンド、大豆、ソルガム、アロールート、アマランス、タロイモ、オート麦、ガマ、キノア、コムギ、オオムギ、ソバ、トウモロコシ、コメ、アッタ、スペル、ライ麦、麻、テフ又は果物及び野菜の搾りかす、皮/果皮、種子又は根等の副産物及び/又はその派生物から選択されるリグノセルロース系植物材料である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態において、上記の方法によって製造された細粉組成物は、グルテンフリーであり、そして植物材料は、限定されないが、キウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、ブドウ、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、キャッサバ、オニオン、パースニップ、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、メスキート、スイカ、ドングリ、ヘーゼルナッツ、栗、ブドウ、ヒヨコ豆、チア、ジャガイモ、ココナッツ、アーモンド、大豆、ソルガム、アロールート、アマランス、タロイモ、ガマ、キノア、ソバトウモロコシ、コメ、アッタ、麻、テフ又は果物及び野菜の搾りかす、皮/果皮、種子又は根等の副産物及び/又はその派生物を含む1つ以上のグルテンフリー植物材料から選択されるリグノセルロース系植物材料である。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態において、植物材料は、1つ以上のキウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、ブドウ、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、オニオン、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、スイカ、ココナッツ、大豆又は搾りかす、皮/果皮、種子又は根等の副産物及び/又はその派生物を含む低デンプン果物又は野菜由来である。
【0049】
好ましくは、生の植物材料は、10%未満のデンプン、より好ましくは、5%未満のデンプン、さらにより好ましくは、2%未満のデンプンを含有する。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、リグノセルロース系植物材料は、湿った又は濡れた搾りかす、スラリー、パルプ又はペーストの形態であり得る。あるいは、植物材料は、マルチ、粉末、又は粗く刻んだ植物材料等の乾燥又は半乾燥形態であり得る。
【0051】
さらに好ましい実施形態において、植物材料を水和、乾燥又は維持する工程は、75~90%、より好ましくは77%~83%の含水量を有する基質を達成する。
【0052】
好ましくは、滅菌工程は、1つ以上の高温滅菌、高圧滅菌、低温滅菌、照射又は化学滅菌を含む。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、接種工程で利用される活性食用高等真菌は、木材腐朽菌、より好ましくは白色腐朽菌又は褐色腐朽菌である。
【0054】
白色腐朽菌が用いられる1つの好ましい方法において、当該白色腐朽菌は、Pleurotus属、Lentinula属、Ganoderma属、Volvariella属、Auricularia属、Armillaria属、Flammulina属、Pholiota属、Tremella属及び/又はHericium属から選択され得る。
【0055】
褐色腐朽菌が利用される別の方法において、好ましい褐色腐朽菌は、Agaricus属、Laetiporus属及び/又はSparassis属から選択され得る。
【0056】
好ましくは、インキュベーション工程は、接種された基質を18℃~40℃でインキュベートすることを含む。より好ましくは、インキュベーションは、25℃~30℃で行われる。
【0057】
好ましくは、インキュベーション期間は、5~50日である。より好ましくは、インキュベーション期間は、5~28日である。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態において、当該方法は、接種された基質を25℃で30日間インキュベートすることを含む。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、当該方法によって産生された細粉組成物は、0.1~30重量%の代謝可能な炭水化物を含む。より好ましくは、当該方法によって産生された細粉組成物は、0.1~15重量%の代謝可能な炭水化物、さらにより好ましくは、10%未満の代謝可能な炭水化物を含む。
【0060】
本発明のさらに好ましい実施形態において、当該方法によって産生された細粉組成物は、30~90重量%の食物繊維を含む。より好ましい実施形態において、細粉は、40~80重量%の食物繊維を含む。
【0061】
より好ましい実施形態において、食物繊維は、5%~70%のベータグルカン、さらにより好ましくは、真菌由来の1,3及び1,6ベータグルカンを含む。
【0062】
より好ましくは、食物繊維は、40%~65%の真菌由来の1,3及び1,6ベータグルカンを含む。
【0063】
さらに好ましい実施形態において、当該方法によって産生された細粉組成物は、細粉100g当たり150~300カロリーを有する。より好ましくは、細粉組成物は、細粉100g当たり150~250カロリーを有する。
【0064】
さらにより好ましい実施形態において、当該方法によって産生された細粉組成物は、細粉100g当たり200カロリー未満である。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、当該方法によって産生された細粉組成物は、全脂肪の10%以上のリノール酸含有量を有する。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、当該方法によって産生された細粉組成物は、全脂肪の20~70%のリノール酸含有量を有する。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、発酵基質を乾燥させる工程は、基質を30℃~70℃の温度で乾燥させることを含む。より好ましくは、乾燥工程は、真空条件下で行われる。
【0068】
本発明のさらなる実施形態によると、植物材料の真菌の発酵に由来する組成物の製造方法が提供され、以下の工程を含む当該方法により産生された組成物は、出発植物材料の総代謝可能な炭水化物レベルより低い総代謝可能な炭水化物レベルを有する;
a)リグノセルロース系植物材料基質を水和、乾燥又は維持し、45%~95%の基質水分レベルを達成すること;
b)a)の基質を滅菌すること;
c)無菌の基質に活性、食用、高等真菌を接種すること;及び
d)接種された基質を一定期間インキュベートし、発酵基質を産生すること。
【0069】
好ましくは、工程c)の接種に用いられる活性真菌は、水和リグノセルロース系植物材料の5~50%w/wの量で加えられる。
【0070】
より好ましくは、活性真菌は、10~20%w/wで加えられる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、接種工程で用いられる活性食用真菌は、木材腐朽菌若しくは木質真菌であり、及びより好ましくは、白色腐朽菌若しくは褐色腐朽菌である。白色腐朽が用いられる好ましい方法の1つにおいて、白色腐朽は、Pleurotus属、Lentinula属Ganoderma属、Volvariella属、Auricularia属、Armillaria属、Flammulina属、Pholiota属、Tremella及び/又はHericium属から選択され得る。
【0072】
好ましくは、当該方法は、発酵基質を乾燥させる又は部分的に乾燥させるさらなる工程を含む。
【0073】
一実施形態において、発酵基質を部分的に乾燥させてペーストを形成する。
【0074】
さらなる実施形態において、発酵基質を乾燥させて、流動性の良い組成物が形成する。流動性の良い組成物は、顆粒、粉末、フレーク、ペレット又は粒子の形態であり得る。
【0075】
さらなる実施形態において、発酵基質は、シート、立方体、ロール等の固体形態又は形状で、又は例えばプレート、カップ、カップホルダー又は包装等の特定の三次元形状で乾燥される。
【0076】
本明細書を通して、用語「代謝可能な炭水化物(metabolizable carbohydrate)」及び「全炭水化物(total carbohydrate)」が用いられる。「代謝可能な炭水化物」は、ヒトの酵素によって消化され得る炭水化物の一部が吸収され中間代謝に入ることを表す。食物繊維は含まれておらず、この仕様では以下のように計算される:
総炭水化物-食物繊維=代謝可能な炭水化物
【0077】
用語「細粉(flour)」又は「細粉組成物(flour composition)」は、何れかの手段によって産生される何れかの粉末様材料を意味すると解釈されるべきであり、摩砕技術を使用することによってのみ産生される粉末を含むが、これに限定されない。「細粉組成物」は、組成物が、例えば、色、食感、密度、水分レベル又は可能な用途等の伝統的な細粉のものと同様の1つ以上の品質を示すことを実証することを意図する。
【0078】
その全ての新規な態様において考慮されるべきである本発明のさらなる態様は、本発明の実際の適用の少なくとも1つの例を提供する以下の説明を読むことで当業者に明らかになるであろう。
【0079】
本発明の1つ以上の実施形態は、添付の図面を参照し、単なる例示として、及び限定することを意図することなく、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、本発明の一実施形態における細粉組成物を調製するための方法を示す。
図2図2は、本発明の代替の実施形態における食品組成物を調製するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の組成物及び方法は、食用高等真菌を用いてリグノセルロースに富む植物材料の発酵によって調製された一連の低カロリー細粉及び食品組成物を提供する。
【0082】
真菌を用いた植物材料の発酵は、真菌が、植物材料を食物源として利用し、成長を可能にするという原則に基づく。代謝可能な糖をタンパク質に富む真菌バイオマスに変換するために発酵条件が最適化されると、植物材料基質、特に代謝可能な炭水化物は、発酵後にエネルギーが枯渇するようになる。これは、発酵工程の前よりも低いカロリー値及び高いタンパク質含量を有する基質をもたらし得る。
【0083】
製造された発酵小麦粉製品は、代謝可能な炭水化物、脂肪、コレステロールが少なく、グルテンフリーであり得る一方、食物繊維、特にベータグルカンプレバイオテック繊維、及びタンパク質が多い。これらの特徴は、低カロリーの焼いた食品(baked goods)を作り出すこと、並びにペットフード、栄養補助食品、化粧品又は医薬品原料としての他の用途、又は他の非食品の用途のために、特に魅力的である。本明細書に記載される細粉組成物は、製造工程で用いられる植物材料に応じて様々な風味、食感及び色を食品に付与し、その結果、広範な食品における有益な成分となる。
【0084】
本発明の細粉及び細粉混合物は、多種多様な果物、野菜、ナッツ及び穀物に由来され得る。本発明の利点の1つは、細粉摩砕工程において一般に用いられている乾燥植物材料とは対照的に、調製工程が、高含水量基質の使用を含むことである。湿った基質を使用するこの性能は、細粉組成物、例えば生の果物全体又は廃棄部分、搾りかす、皮又は搾汁等の工業工程から他の副産物の産生等の細粉組成物を作るために用いられ得る植物材料の範囲を拡大する。当該方法は、農業及び食品生産産業からの副産物を用いて、ヒトが消費することに適した栄養価の高い食料品を製造することを可能にする。
【0085】
本発明の好ましい実施形態において、食品組成物は、細粉を作製するために摩砕される。しかしながら、当該方法は、フレーク、顆粒、ペレット又は穀物等の流動性の良い材料の形態の発酵食品組成物を作製ために摩砕せずに用いられ得る。あるいは、発酵食品は、固体の3D形状又はシートに形成されてもよく、又は部分的にのみ乾燥されてペースト又は液体製品を作製してもよい。
【0086】
食品組成物が細粉組成物である本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、細粉製品のための基質として使用される植物材料は、リンゴ搾りかすであり、典型的に搾汁製造会社からの副産物として供給される。以下に例示される搾汁の副産物として多くの場合得られる類似の搾りかすは、ニンジン搾りかす及びオレンジ搾りかすである。これらの基質は、例としてのみ挙げられており、限定することを意図しない。低カロリー細粉組成物の調製において、広範囲の果物、野菜、穀物及びそれらの部分が使用され得ると考えられる。以下に記載される方法は、乾燥穀物粒から他の果物又は野菜加工操作の副産物として形成される湿った廃棄材料までの、多種多様な食感、サイズ及び含水量を有する植物材料に対して実施され得る。
【0087】
前述のように、本発明の細粉組成物に適し得る植物材料のいくつかは、限定されないが、キウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、ブドウ、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、キャッサバ、オニオン、パースニップ、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、メスキート、スイカ、ドングリ、ヘーゼルナッツ、栗、ヒヨコ豆、チア、ブドウ、ジャガイモ、ココナッツ、アーモンド、大豆、ソルガム、アロールート、アマランス、タロイモ、オート麦、ガマ、キノア、コムギ、オオムギ、ソバ、トウモロコシ、コメ、アッタ、スペル、ライ麦、麻、テフ又は果物及び野菜の搾りかす、皮/果皮、種子又は根等の副産物及び/又はその派生物を含む果物、ナッツ、穀類又は野菜である。
【0088】
本発明の好ましい実施形態において、植物材料は、1つ以上のキウイフルーツ、リンゴ、ナシ、オレンジ、ニンジン、ブドウ、マンゴー、トマト、アボカド、ベリー類、豆、エンドウ豆、ライム、レモン、フェイジョア、オニオン、ビートの根、バナナ、モモ、ネクタリン、ポポー、パイナップル、メロン、スイカ、ココナッツ、大豆又はそれら副産物及び/又はその派生物を含む低デンプン果物又は野菜に由来する。本発明の組成物の産生に特に適した低デンプン製品は、開示された方法に従って加工した際、低レベルの代謝可能な炭水化物が達成され得る。
【0089】
好ましくは、植物材料は、10%未満のデンプン、より好ましくは5%未満のデンプン、さらにより好ましくは2%未満のデンプンを含有する。
【0090】
本発明の方法における発酵工程は、植物材料を分解し、基質内に存在する炭水化物を消化するための食用高等真菌の使用を含む。得られた細粉組成物をヒトが消費するために用いられる場合、細粉製品が無毒であり、適切な食品基準及び規則を満たしていることを確認するために、食用真菌が用いられるべきである。場合によって、本発明の細粉組成物は、食品以外の目的で、例えば、接着剤、結合剤、充填剤、バイオ燃料、化粧品として、又は用いられる基質に応じて、ポリスチレン及び他のプラスチックの生分解性の代替品として、例えば使い捨てプレート及びカトラリーとして、又は包装用インサートとして使用され得る。細粉組成物が用いられる状況に応じて、非食用真菌又は望ましくない味を付与する真菌が、適切であれば使用され得る。
【0091】
担子菌及び子嚢菌は、真菌界では「高等真菌」と呼ばれることが多い、Dikarya亜属を構成する2つの大きな真菌門である。これらは、リグノセルロース材料を消化するそれらの能力によって特徴付けられる「木材腐朽」真菌を含み、これは、褐色腐朽菌及び白色腐朽菌の両方を含む。この木質真菌が植物材料上で増殖し、リグノセルロース材料を能動的に消化する能力は、本発明の細粉組成物を首尾よく産生するための植物材料の発酵を可能にする。
【0092】
リグノセルロースは、主に多糖類(例えば、セルロース及びヘミセルロース)及び芳香族リグニンポリマーからなる植物細胞壁ポリマーの複合混合物である。ペクチン及びデンプンと共に、これらは植物乾物の主成分である。白色腐朽菌は、植物材料中のリグニンを分解し、より明るい色のセルロースを後に残し、植物材料に白っぽい色を与える。本発明におけるそのような白色腐朽菌の使用は、より白く、より魅力的な色を有する最終的な粉組成物を達成することを助ける。
【0093】
本発明で用いられ得る食用白色腐朽菌の非限定的な例は、中でも、Pleurotus属(例えば、P. ostreatus、P. eryngi、P. pulmonarius、P. djamor、P. australis、P. purpureo-olivaceus、P. citrinopileatus、P. sajor-caju、P. florida、P. flabellatus、P. ferulae、P. cystidiosus)、Lentinula属(L. edodes、L. boryana、L. novae-zelandiae、L. tigrinus)、Ganoderma属(G. lucidum、G. applanatum、G. tsugae)、Volvariella属(V. volvacea、V. esculenta、V. bakeri、V. dysplasia)、Auricularia属(A. auricola、A. cornea、A. subglabra)、Armillaria(A. mellea、A. ostoyae、A. gemina、A. calvescens、A. Sinapin、A. gallica)、Flammulina属(F. velutipes、F. fennae)、Pholiota属(P. squarrosa、P. nemako)、Tremella属(T. mesenterica、T. fuciformis)、Hericium属(H. erinaceus、H. coralloides)由来である。
【0094】
現在の方法において利用され得るさらなるタイプの真菌は、褐色腐朽菌として知られている。褐色腐朽菌は、植物物質中のヘミセルロース及びセルロースを優先的に分解する。このタイプの腐敗の結果として、植物材料は、褐色がかった変色を示し、それは白色腐朽の発酵を使用して製造された細粉よりも暗い色を有する最終的な細粉組成物をもたらし得る。食用褐色腐朽菌の例は、Agaricus属(A. campestris、A. bisporus、A. bitorquis)、Laetiporus属(L. sulphurous)、Sparassis属(S. crispa、S. spathulata)に属する種である。
【0095】
本発明での使用に適した真菌培養物は、きのこ及び真菌供給品を販売する広範囲の専門小売業者から購入することができ、例えば、ウェブサイトwww.fungi.comは、記載時点で広範囲の種々の真菌培養物を販売している。あるいは、真菌培養物は、きのこ自体から直接単離され得、例えばヒラタケを用いてPleurotus pulmonarius、Portobelloの接種材料を供給することができ、又は小さいきのこを用いてAgaricus種の接種材料を供給することが出来る。
【0096】
褐色腐朽菌及び/又は白色腐朽菌の使用の選択は、最終製品の所望の色によって、又は基質の特徴によって影響され得る。例えば、特に繊維質の基質は、高レベルのリグニン、セルロース及びヘミセルロースの消化を補助するために、白色腐朽菌と褐色腐朽菌の両方を組み合わせて使用して発酵され得る。
【0097】
本発明の方法における褐色腐朽菌及び白色腐朽菌などの高等真菌の使用は、(1,6)-架橋-ベータ-グリコシルを有する線状(1,3)-ベータ-グルカン又は最終発酵生成物におけるベータ-(1,6)-オリゴグルコシル側鎖の存在によって示される。酵母及び不完全菌類等の発酵プロセスのための他の真菌の使用は、例えば、分岐-オン-分岐(1,3;1,6)-ベータ-グルカンの存在を有する最終組成物をもたらすだろう。これらの違いは、方法で用いられる真菌の種類が、最終的な細粉製品の分析によって決定されることを可能にする。
【0098】
本発明の食品組成物を産生するために用いられる方法の概略図を図1の方法100及び図2の方法200により示す。図1のプロセスは、細粉組成物を作製するために必要な工程を示し、図2は、様々な異なる構造形態を取り得る食品組成物を作製するための方法を概説する。
【0099】
方法100の第1の工程10において、生のリグノセルロース系植物材料が得られる。用いられる植物材料のタイプの選択は、最終製品の用途に依存するであろう。焼成に用いられるか、又は商業的食品製造における添加物として使用される低カロリーグルテンフリー細粉の産生のために、果物又は野菜由来植物材料等のグルテンフリー植物材料が用いられるだろう。
【0100】
発酵用の基質を調製するために、基質は、約55%~90%の水分含有量を有するように調製される。植物が必要とされるよりも低い水分含有量を有する場合に、この調製工程は、水の添加による基質の水和を含むことができ、又は場合によっては、特に湿った基質が用いられる場合に、乾燥、プレス又はデカンテーションが必要とされる。果物搾りかす等の既に要求された範囲内の水分レベルを有する、得られた基質については、さらなる水和又は乾燥は必要とされない。
【0101】
特に乾燥した基質について、水和方法は、方法の次の工程に進む前に、水が植物材料内に完全に吸収されたことを確実にするために、一定期間にわたり追加量の水を基質に加えることを含み得る。
【0102】
基質が調製されると、基質は、滅菌される30。この工程は、微生物を殺すための標準的な加熱及び高圧滅菌、又は最終製品の使用に適切な場合は、照射、低温滅菌又は化学的滅菌等の他の滅菌方法を使用して行われ得る。
【0103】
基質調製工程中、産物を強化するために、又は基質中の一定の物質の特定のレベルを増加させるために、機能添加剤が、基質に任意で加えられ得る。一例において、無機又は有機食品用窒素源を供給することによって基質の炭素/窒素比を減少させることが有益であり得る。そのような供給源の例としては、限定されないが、硫酸アンモニウム、グルタミン酸、酵母エキス、ペプトン、リン酸二アンモニウム(DAP)を含む。
【0104】
滅菌後、基質は、室温に冷却され、真菌培養物が接種される40。発酵方法は、滅菌植物材料基質をコロニー形成するために使用される接種材料としての活性真菌バイオマスの使用に依存する。好ましくは、活発に増殖している真菌培養物の約5%~50%(w/w湿った基質)は、基質全体に効果的に接種するために用いられる。真菌培養物が、基質に加えられると、それは基質を通して、好ましくは均一に混合され、次いで基質は、インキュベーションの準備が整う50。
【0105】
植物材料の5~50%w/wの量の真菌基質の使用が好ましく、加えられる真菌基質のより好ましい量は、10~20%w/wの範囲である。用いられる真菌基質の最終量は、用いられるリグノセルロース系植物材料の種類に依存する。しかしながら、少なくとも5%w/wの真菌基質を超えるレベルは、既知の発酵技術に対してより短い期間でより低いレベルの代謝可能な炭水化物を有する本発明の組成物をもたらすことが示されている。
【0106】
無菌条件下で接種された基質のインキュベーション50は、5~50日の間の何れかの期間にわたって、しかし、好ましくは5~28日の間にわたって行われる。完全なコロニー形成は、目視での分析にて判断されるが、種々のタイプの真菌及び基質の組み合わせがインキュベーション期間を増減させる可能性があると予想される。4週間未満の発光時間を用いて本発明の低炭水化物組成物を達成する本発明の方法の性能は、長期の発酵サイクルと比較した場合、貯蔵時間の短縮、加工コストの削減及びより大きな生産能力の可能性を含む、経済的に多くの効果をもたらす。
【0107】
インキュベーション中の温度と湿度の条件は、非常に重要である。真菌の増殖に最適な温度は、18℃~30℃であり、30℃を超えると真菌の増殖が遅くなり、40℃を超えると真菌はほとんど増殖しない。25~30℃の温度を維持することは、経済的に有益な時間枠内で、本発明の細粉組成物を産生するために特に好ましい。
【0108】
種々の真菌種には、特定の指摘温度があり、培養条件を設定する際に、これらを考慮に入れる必要がある。培養空間内の湿度は、真菌の増殖を促進するために、最大、好ましくは、90~100%の湿度に保つべきである。
【0109】
インキュベーション中の基質周囲の空気流もまた、過剰な酸素又は二酸化炭素の蓄積を防ぐために管理されるべきである。CO2レベルは、好ましくは、Pleurotus真菌について5~30%の間に保持されるが、これは、発酵工程において用いられる真菌に依存して変化し得る。
【0110】
増殖中に、真菌は遊離糖を消費し、そして基質中の植物ポリマーを分解し、それらをタンパク質に富むバイオマス、真菌多糖類(キチン及びβ1,3及びβ1,6グルカン)、並びに真菌由来ビタミンに変換する。この糖の消費により、工程の最終段階で低カロリー/低代謝可能な炭水化物細粉組成物が形成される。
【0111】
インキュベーションの後、発酵基質が、インキュベーションから取り除かれ、低温乾燥工程にて乾燥される60。乾燥工程は、食品乾燥装置、空気乾燥、ドラム乾燥又はオーブン乾燥等の一般的に知られている乾燥装置を用いて実施され得る。好ましくは、より低い温度での乾燥は、より明るい色を有する最終製品を達成することが見出されているので、乾燥温度は、40℃未満に保たれ、それはいくつかの焼いた食品にとってより好ましい。最終製品の色がそれほど重要ではない用途に最終製品を使用する場合、乾燥温度を上げて乾燥工程をスピードアップすることが出来る。最高乾燥温度は、約75℃であるべきであり、これより高い温度では、組成物の栄養価が、例えば、抗酸化剤、ビタミン又はタンパク質の分解によって損なわれ得る。
【0112】
発酵基質の乾燥は、真空条件下で起こり得る。これは、おそらく乾燥工程における組成物の酸化の減少及び真空による芳香化合物の減少のために、真空下で乾燥しない場合と比較してより明るい色又はより白い最終の色及びよりマイルドな風味を有する製品をもたらし得る。
【0113】
コロニーを形成した基質は、通常、水分含量が14%未満又は14%に近い場合に、それが摩砕可能になるまで乾燥させられる。水分レベルが14%を超えると、微生物が増殖を始めることができ、製品の味、香り、及び有効期間に影響を及ぼす。
【0114】
続いて、標準的な摩砕技術を用いて、乾燥基質を摩砕して細粉にする70。乾燥基質は、乾燥真菌バイオマスと組み合わされた、植物繊維、植物ビタミン及びミネラル等の、真菌によって代謝されない植物材料組成物から構成される。
【0115】
当該方法の結果として産生された最終乾燥摩砕製品は、標準的な細粉加工技術を用いて産生された細粉と比較して、低カロリー、低代謝可能な炭水化物細粉である。以下に示す3つの例は、リンゴ、ニンジン及びオレンジの搾りかすを用いて産生された方法及び最終製品を示す。
【0116】
図2は、方法200を示す。方法200は、図1についての上述した方法100と本質的に同じであるが、乾燥工程60及び摩砕工程70が省略されている。代わりに、インキュベーション工程160に続く方法200において、方法は、乾燥されるか又は部分的に乾燥される170。乾燥は、乾燥がどのように行われるか、及び乾燥が起こる程度に応じて、一連の異なる食感、サイズ及び形状を有する食品組成物をもたらし得る。
【0117】
乾燥工程170は、湿った基質を乾燥又は部分的に乾燥して、様々な形状及び食感を形成するための既知の技術の使用を含み得る。例えば、基質は、フレーク状製品を産生するため薄層に乾燥され得、固体形態を産生するために同時に圧縮及び乾燥され得、ペレットを産生するために乾燥及び高密度化され得、又はペーストを産生するために部分的に乾燥及び混合され得る。
【実施例
【0118】
実施例1-リンゴ細粉
湿ったリンゴ搾りかす(水分80%w/w)が、1~3kgのバッチで1%(w/w)の食品用酵母エキスと混合された。混合物が、100kPaの圧力(15psi)、及び121℃、20分間加熱殺菌された。
【0119】
基質は、室温に冷却され、次いで活発に増殖しているPleurotus pulmonariusの培養物からなる10%(w/w)の真菌接種材料が、無菌的に加えられた。
【0120】
基質と接種材料が、均一に混合され、接種された基質を無菌条件下、25℃、30日間インキュベートし、培養物と環境との間で空気を交換させながら、最大湿度を維持した。
【0121】
インキュベーションの後、発酵基質をインキュベーターから取り出し、内容物を35℃の食品デシケーターを用いて乾燥させ、14%未満の水分含量を達成した。
【0122】
次いで、乾燥発酵材料は、適切な摩砕器に通され、微細粉を産生した。
【0123】
最終産物の組成は以下に示され、100g当たりの個々の多量栄養素及び微量栄養素の組成を示す。
【0124】
【表1】
【0125】
リンゴ細粉の産生のために実施例1に示された方法は、白色腐朽菌の代替種である、Lentinula edodesを用いて再現された。種々の真菌を用いて産生した最終細粉組成物を比較した結果を以下に示す:
【0126】
【表2】
【0127】
実施例2 - ニンジン細粉
ニンジン搾りかすの1~3kgのバッチが、100kPa(15psi)の圧力及び121℃で20分間加熱殺菌された。基質は、室温に冷却され、次いで活発に増殖しているPleurotus pulmonariusの培養物からなる10%(w/w)の真菌接種材料が無菌的に加えられた。
【0128】
基質と接種材料は均一に混合され、接種された基質を無菌条件下、25℃、30日間インキュベートし、培養物と環境との間で空気を交換させながら、最大湿度を維持した。
【0129】
インキュベーションの後、発酵基質をインキュベーターから取り出し、内容物を35℃の食品デシケーターを用いて乾燥させ、14%未満の水分含量を達成した。乾燥発酵材料を次に適切な摩砕器に通して微細粉を産生した。
【0130】
【表3】
【0131】
ニンジン細粉の産生のために実施例2に例示された方法は、白色腐朽菌の代替種であるLentinula edodesを用いて再現された。異なる真菌を用いて産生された最終細粉組成物を比較した結果を以下に示す:
【0132】
【表4】
【0133】
実施例3-オレンジ細粉
湿ったオレンジ搾りかすの1~3kgのバッチが、100kPa(15psi)の圧力及び121℃で20分間加熱殺菌された。基質は、室温に冷却され、次いで活発に増殖しているPleurotus pulmonariusの培養物からなる10%(w/w)の真菌接種材料が無菌的に加えられた。
【0134】
基質と接種材料は均一に混合され、接種された基質を無菌条件下、25℃、30日間インキュベートし、培養物と環境との間で空気を交換させながら、最大湿度を維持した。
【0135】
インキュベーションの後、発酵基質をインキュベーターから取り出し、内容物を35℃の食品デシケーターを用いて乾燥させ、14%未満の水分含量を達成した。乾燥発酵材料を次に適切な摩砕器に通して微細粉を産生した。
【0136】
【表5】
【0137】
オレンジ細粉の産生のために実施例3に例示された方法は、白色腐朽菌の代替種であるLentinula edodesを用いて再現された。異なる真菌を用いて産生された最終細粉組成物を比較した結果を以下に示す:
【0138】
【表6】
【0139】
以下の表1及び2は、発酵前後の基質の栄養素比較を示し、そして追加の植物材料、ブドウ、ビートの根及びキウイフルーツの発酵についての結果を提供する。
【0140】
【表7】
【0141】
【表8】
【0142】
上記の表に示されるように、発酵工程は、元の果物/野菜搾りかすと比較した場合に、最終細粉組成物中に存在する代謝性炭水化物の量を有意に減少させる。各細粉組成物中の総単糖レベルは、発酵工程の後に著しく減少し、最終発酵産物の総代謝可能な炭水化物は、リンゴ搾りかすの18%(又は総炭水化物の82%の減少)であった。
【0143】
ニンジン細粉においても同様の減少が確認され、これは、搾りかすと比較して最終産物の代謝可能な炭水化物が41%減少し、生のオレンジ搾りかすと比較して総代謝可能な炭水化物が61%減少した。代謝可能な炭水化物の同様の減少は、ブドウ、ビートの根及びキウイフルーツ搾りかすで達成されることが示されている。
【0144】
出発植物材料及び最終産物との間の代謝可能な炭水化物レベルの減少は、植物材料の間で異なり得る。しかしながら、大部分の植物材料は、元の出発材料と比較して、40%~85%の間で減少し、20~90%の減少があると予想される。
【0145】
各発酵細粉はまた、真菌発酵の結果として、生の搾りかすと比較してタンパク質が増加し、低レベルの脂肪及び非常に低いレベルのコレステロールを維持していることも示されている。
【0146】
以下の表3は、標準的な非発酵技術によって産生された細粉及び繊維の選択と比較した発酵細粉の例を示す。
【表9】
【0147】
本発明の細粉組成物を伝統的な代替且つ、機能的な細粉と比較すると、有意に減少した代謝可能な炭水化物レベルが、各発酵細粉にはっきりと見てとれる。加えて、発酵細粉は、全ての伝統的な細粉及び機能的な細粉と同等又はそれより多いタンパク質レベルを示す。エンドウ豆及びガルバンゾ細粉と同じくらいタンパク質含量が高い細粉であるが、それらはまた、発酵細粉よりも有意に高いレベルの炭水化物を示す。100g当たりの各産物の全体的なカロリー含有量の比較は、アーモンド細粉を除いて、全ての細粉よりも低いエネルギー荷重を有する発酵細粉を示し、それらは低カロリー食品を産生するための優れた選択肢となる。
【0148】
上記の特徴の組み合わせは、天然の工程によって産生される、代謝可能な糖が少なく、脂肪が少なく、タンパク質及び繊維が多い産物をもたらす。その中に記載される好ましい実施形態において、細粉組成物は、0.1~15%の代謝性炭水化物、15~35%のタンパク質、1~10%の脂肪及び50~80%の食物繊維を含む。単一の細粉産物内にこの範囲の品質を含めることは、商業的にも栄養学的にも大きな利点である。
【0149】
発酵細粉は、グルテンフリー基質を選択することによってグルテンフリー化することができ、他の細粉とは異なり、単糖類及び二糖類並びにデンプン等;及び脂肪、の非常に低いレベルの代謝可能な糖を示し、これは、それを低エネルギー食品成分にする。
【0150】
発酵細粉の色は、出発植物材料及び真菌種に依存してアラバスターパールホワイトからダークブラウンまで変化し、これは細粉の匂い及び味にも影響する。
【0151】
発酵細粉は、天然で健康的な包装食品産業での使用に大きな可能性を秘めている。特に、これらに限定されないが、本発明の低カロリー細粉のタンパク質、ビタミン類及び食物繊維を豊富に含むことができるスナックバー又は朝食バーである。あるいは、発酵細粉は、天然の栄養価の高い細粉又は増粘剤として焼成及び調理工程中に食品に組み込まれ得、又は焼いた食品、ペストリー、パスタにおいて伝統的な細粉(例えば、コムギ、ライ麦、コメ、オート麦等)を完全に又は部分的に置き換えることができ、低炭水化物細粉の代替品としてダイエット、ビーガン、グルテンフリー市場のためにこれらの産物を適したものにする。
【0152】
本発明の細粉組成物を使用するための下流用途の可能性のいくつかの例を以下に提供する。
【0153】
【表10】
【0154】
【表11】
【0155】
【表12】
【0156】
【表13】
【0157】
【表14】
【0158】
発酵細粉はまた、天然健康食品及び飲料サプリメント、栄養補助食品及び/又は栄養若しくは医薬品サプリメントに配合され得る。
【0159】
本発明の発酵細粉は、接着剤、工業用充填剤及び結合剤、化粧品中の成分として、食品業界以外でも更なる用途を有し得、又は生分解性パッキング、例えば、使い捨てカップ、プレート、カトラリー又はパッキング充填剤及び挿入物を製造するために使用され得る。
【0160】
上記及び下記に引用された全ての出願、特許及び刊行物の全ての開示は、必要であれば、参照により本明細書に組み入れられる。
【0161】
本明細書における何れかの先行技術への言及も、その先行技術が世界の何れかの国における試みの範囲における共通の一般的知識の一部を形成するという認容又は何れかの形態の示唆として解釈されるべきではない。
【0162】
前述の説明において、既知の均等物を有する完全体又は構成要素を参照した場合、それらの完全体は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0163】
本明細書に記載される現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかであることに留意されたい。そのような変更及び修正は、本発明の本質及び範囲から逸脱することなく、そしてそれに付随する利点を損なうことなくなされ得る。従って、そのような変更及び修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2