(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
A01D 34/86 20060101AFI20241202BHJP
B60C 7/00 20060101ALI20241202BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20241202BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
A01D34/86
B60C7/00 H
A01D34/64 Z
A01D67/00 F
(21)【出願番号】P 2021134567
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】599118768
【氏名又は名称】株式会社斎藤農機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】和田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健太
(72)【発明者】
【氏名】金子 真之
(72)【発明者】
【氏名】見前 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017269(JP,A)
【文献】特開2005-151966(JP,A)
【文献】特開2007-238076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/86
B60C 7/00
A01D 34/64
A01D 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体を支持する車輪と、
前記走行機体に設けられた対地作業部と、が備えられ、
前記車輪は、前記車輪の横幅方向に並ぶ状態で連結された二つの輪体部と、前記車輪の接地部に設けられたラグと、を備え、
前記ラグは、前記二つの輪体部の一方の輪体部に備えられて前記接地部を構成する輪体接地部と、前記二つの輪体部の他方の輪体部に備えられて前記接地部を構成する輪体接地部と、に亘って設けられている作業車。
【請求項2】
前記ラグは、前記車輪の横幅方向に延びる状態、かつ、前記車輪の回転方向に間隔を空けて並ぶ状態の一対のラグ爪と、前記一対のラグ爪を支持する状態で前記一方の輪体部の前記輪体接地部と前記他方の輪体部の前記輪体接地部とにわたって取付けられる爪支持台と、を備えている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記一対のラグ爪における車輪横外方側での端部どうしの間隔が前記一対のラグ爪における車輪横内方側での端部どうしの間隔よりも広い請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記一対のラグ爪それぞれは、前記車輪の回転方向に対して傾斜する状態で前記車輪の横幅方向に延びている請求項2または3に記載の作業車。
【請求項5】
前記走行機体の上部に、作業に関する情報を報知する複数の報知ランプが前記走行機体の側面視で前後方向に並ぶ状態で備えられている請求項1から4のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記複数の報知ランプは、前記走行機体の前後方向に一列に並んでいる請求項5に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車には、走行機体を支持する車輪と、走行機体に設けられた対地作業部と、が備えられ、車輪は、車輪の横幅方向に並ぶ状態で連結された二つの輪体部と、車輪の接地部に設けられたラグと、を備えるものがある。
【0003】
この種の作業車としては、たとえば特許文献1に示される草刈り機がある。特許文献1に示される草刈り機には、左の車輪、右の車輪、対地作業部(刈刃ハウジング、刈刃)が備えられている。左の車輪には、二つの輪体部(右および左の第1横側部)、ラグが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、二つの輪体部を備える車輪のラグは、二つの輪体部の一方の輪体部に備えられた輪体接地部と、二つの輪体部のうちの他方の輪体部に備えられた輪体接地部とに分散させて設けられている。二つの輪体部がしっかり連結するように二つの輪体部を連結する連結部材を設けようとすると、車輪の回転方向において隣り合うラグの間に連結部材が位置するので、車輪の回転方向でのラグの配列ピッチを広くする必要があるなど、ラグの設置あるいは構成に制約を受ける。
【0006】
本発明は、二つの輪体部をしっかり連結することができながらラグの設置や構成の自由度が高い作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による作業車は、
走行機体を支持する車輪と、前記走行機体に設けられた対地作業部と、が備えられ、前記車輪は、前記車輪の横幅方向に並ぶ状態で連結された二つの輪体部と、前記車輪の接地部に設けられたラグと、を備え、前記ラグは、前記二つの輪体部の一方の輪体部に備えられて前記接地部を構成する輪体接地部と、前記二つの輪体部の他方の輪体部に備えられて前記接地部を構成する輪体接地部と、に亘って設けられている。
【0008】
本構成によると、ラグが二つの輪体部を連結する連結部材になるので、二つの輪体部をラグによってしっかり連結することができながら、特別な連結部材を設ける必要がなく、あるいは、特別な連結部材を設けても、連結部材を小型や少数に済ませ、ラグを設置や構成するのに制約を受けない、あるいはあまり受けないで済む。
【0009】
本発明においては、
前記ラグは、前記車輪の横幅方向に延びる状態、かつ、前記車輪の回転方向に間隔を空けて並ぶ状態の一対のラグ爪と、前記一対のラグ爪を支持する状態で前記一方の輪体部の前記輪体接地部と前記他方の輪体部の前記輪体接地部とにわたって取付けられる爪支持台と、を備えていると好適である。
【0010】
本構成によると、接地部のうちのラグが連結する部位の範囲が爪支持台によって広くなるので、二つの輪体部をラグによってしっかり連結することができる。
【0011】
本発明においては、
前記一対のラグ爪における車輪横外方側での端部どうしの間隔が前記一対のラグ爪における車輪横内方側での端部どうしの間隔よりも広いと好適である。
【0012】
本構成によると、一対のラグ爪の少なくとも一方のラグ爪が車輪の回転方向に対して傾斜する姿勢になるので、接地部のうちのラグが連結する部位の範囲がより広くなり、二つの輪体部をラグによってよりしっかり連結することが可能である。
【0013】
本発明においては、
前記一対のラグ爪それぞれは、前記車輪の回転方向に対して傾斜する状態で前記車輪の横幅方向に延びていると好適である。
【0014】
本構成によると、一対のラグ爪のいずれもが車輪の回転方向に対して傾斜する姿勢になるので、接地部のうちのラグが連結する部位の範囲がより広くなり、二つの輪体部をラグによってよりしっかり連結することが可能である。
【0015】
本発明においては、
前記走行機体の上部に、作業に関する情報を報知する複数の報知ランプが前記走行機体の側面視で前後方向に並ぶ状態で備えられていると好適である。
【0016】
本構成によると、走行機体を横外側方から見ると、複数の報知ランプが走行機体の上部において前後方向に並ぶ状態で見えて、複数の報知ランプを見通し易く、かつ、複数の報知ランプを判別しやすいので、さらには、作業を行う走行機体の監視は、一般に走行機体の横外側方から行うので、複数の報知ランプによる報知を正確に認識しつつ作業を適切に行うことができる。
【0017】
本発明においては、
前記複数の報知ランプは、前記走行機体の前後方向に一列に並んでいると好適である。
【0018】
本構成によると、複数の報知ランプを前後方向に一列に纏めて設置できるので、複数の報知ランプを設置し易い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】一部切断状態の前車輪、後車輪の後面図である。
【
図5】前車輪および後車輪のラグが位置する部位を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、草刈り機(「作業車」の一例)の走行機体に関し、
図1,2に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、
図1に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、
図2に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0021】
〔草刈り機の全体の構成〕
図1,2に示される草刈り機は、無線操縦装置(図示せず)による遠隔操作が可能に構成された草刈り機である。
図1,2に示されるように、草刈り機は、パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成された機体フレーム1を有し、機体フレーム1の下部に備えられた左右一対の前車輪2および左右一対の後車輪3によって支持される走行機体を備えている。走行機体のうちの前車輪2と後車輪3との間の部位に、対地作業部としての草刈り部4が設けられている。草刈り部4の上方に、前車輪2、後車輪3および草刈り部4に向けて駆動力を出力するエンジン5が設けられている。草刈り部4は、走行機体の左右方向での中心部に位置する状態で設けられている。エンジン5は、走行機体の左右中心に対して走行機体の横一端側に変位する状態で設けられている。本実施形態では、エンジン5は、走行機体の左右中心に対して走行機体の左端側に変位する状態で設けられている。エンジン5は、平面視において、左の前車輪2と左の後車輪3との間に位置している。走行機体の上部に、草刈り部4などを上方から覆う上カバー6が設けられている。
【0022】
〔草刈り部〕
図1に示されるように、草刈り部4には、刈り刃ハウジング4a、および、刈り刃ハウジング4aの内部に設けられた刈り刃4bが備えられている。刈り刃4bは、機体上下向きの支軸芯を回転中心にして回転可能な状態で刈り刃ハウジング4aに支持されている。
【0023】
〔前車輪、後車輪の構成〕
図3は、前車輪2および後車輪3を機体横外側方から見た側面図である。
図4は、一部切断状態の前車輪2および後車輪3を示す後面図である。左右の前車輪2および左右の後車輪3それぞれは、
図3,4に示されるように、前車輪2、後車輪3の横幅方向に並ぶ二つの輪体部7、前車輪2、後車輪3の接地部8において、車輪周方向での複数箇所に設けられたラグ9、前車輪2、後車輪3の中心部に位置し、前車軸2a(
図1参照)あるいは後車軸3b(
図1参照)に連結されるボス10を備えている。
【0024】
図4に示されるように、二つの輪体部7のそれぞれは、輪体接地部7a、および、輪体接地部7aとボス10とを連結するリム部7bを備えている。前車輪2、後車輪3における接地部8は、二つの輪体部7の輪体接地部7aによって構成される。
【0025】
図4に示されるように、二つの輪体部7のうちの車輪外側の輪体部7には、一つのリム部7bが備えられている。車輪外側の輪体部7における輪体接地部7aとリム部7bとは、輪体接地部7aがリム部7bから車輪内側の輪体部7に向けて延びるように曲げ成形された板金部材によって構成されている。
【0026】
二つの輪体部7のうちの車輪内側の輪体部7には、二つのリム部7bが備えられている。以下において、車輪内側の輪体部7における二つのリム部7bのうち、機体側とは反対側に位置するリム部7bを反機体側のリム部7bと呼称し、二つのリム部7bのうち、機体側のリム部7bを機体側のリム部7bと呼称して説明する。反機体側のリム部7bと輪体接地部7aとは、輪体接地部7aが反機体側のリム部7bから機体側のリム部7bに向かって延びるように曲げ成形された板金部材によって構成されている。輪体接地部7aと機体側のリム部7bとは、溶接によって連結されている。機体側のリム部7bとボス10とは、溶接によって連結されている。車輪内側の輪体部7におけるフランジ部7cに、補強リブ12が連結されている。補強リブ12は、輪体部7の全周にわたるリング状に形成されている。
【0027】
図2,4に示されるように、左右の前車輪2のうちの左の前車輪2(エンジン5が位置する側の前車輪)、および、左右の後車輪3,3のうちの左の後車輪3(エンジン5が位置する側の後車輪)の内部に、錘部材11が設けられている。錘部材11は、左の前車輪2、左の後車輪3の二つの輪体部7のうち、車輪外側の輪体部7の内部に設けられている。錘部材11は、三枚の円形状の板部材を重ね合わせて構成されている。三枚の板部材は、連結されている。三枚の板部材の連結は、板部材の周方向での複数箇所において、三枚の板部材を溶接することによって行われている。錘部材11は、ボス10に外嵌され、かつ、ボス10に連結されている。錘部材11とボス10との連結は、溶接によって行われている。左右の前車輪2のうちの右の前車輪2(エンジン5が位置する側とは反対側の前車輪)、および、左右の後車輪3,3のうちの右の後車輪3(エンジン5が位置する側とは反対側の後車輪)には、錘部材11は設けられていない。
【0028】
図4,5に示されるように、ラグ9は、二つの輪体部7の一方の輪体部7の輪体接地部7aと、二つの輪体部7の他方の輪体部7の輪体接地部7aとに亘って設けられている。二つの輪体部7は、ラグ9によって連結されている。
【0029】
図3,4,5に示されるように、ラグ9は、前車輪2、後車輪3の横幅方向に延びる状態、かつ、前車輪2、後車輪3の回転方向に間隔を空けて並ぶ状態の一対のラグ爪9aと、一対のラグ爪9aを支持する状態で一方の輪体部7の輪体接地部7aと他方の輪体部7の輪体接地部7aとに亘って取付けられる爪支持台9bと、を備えている。爪支持台9bの輪体接地部7aに対する取付けは、
図5に示されるように、溶接13によって行われる。
【0030】
図5に示されるように、一対のラグ爪9aにおける車輪横外方側の端部どうしの間隔S1が一対のラグ爪9aにおける車輪横内方側での端部どうしの間隔S2よりも広くなるように構成されている。一対のラグ爪9aそれぞれは、前車輪2、後車輪3の回転方向に対して傾斜する状態で前車輪2、後車輪3の横幅方向に延びるように構成されている。
【0031】
〔報知ランプの構成〕
図1,2に示されるように、走行機体の上部に、作業に関する情報を報知する複数の報知ランプ14が備えられている。複数の報知ランプ14は、走行機体の側面視で前後方向に並ぶ状態で備えられている。作業を行う草刈り機を機体横外側方から監視する際、複数の報知ランプ14を見通し易く、かつ、複数の報知ランプ14を判別し易い。
【0032】
本実施形態では、三つの報知ランプ14が走行機体のうちの上カバー6に設けられた設置箇所に走行機体の前後方向に一列に並ぶ状態で備えられている。無線操縦装置による通信異常が発生して走行機体が停止したとき、三つの報知ランプ14のうちの最も後の報知ランプ14rが点灯するように構成されている。走行機体の傾斜角が設定角以上になったとき、三つの報知ランプ14のうちの最も前の報知ランプ14fが点灯するように構成されている。このとき、警報ブザーが併せて作動するように構成されている。草刈り部4が作動中であるとき、三つ報知ランプ14のうちの中央の報知ランプ14cが点滅するように構成されている。三つの報知ランプ14は、異なる発光色で点灯あるいは点滅するように構成されている。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、爪支持台9bを備えた例を示しが、爪支持台9bを備えず、一対のラグ爪9aが個々に輪体接地部7aに取付けられるものであってもよい。
【0034】
(2)上記した実施形態では、一対のラグ爪9aそれぞれが前車輪2、後車輪3の回転方向に対して傾斜する構成を採用したが、一対のラグ爪9aの一方のラグ爪9aが前車輪2、後車輪3の回転方向に対して傾斜し、一対のラグ爪9aの他方のラグ爪9aが前車輪2、後車輪3の回転方向に対して傾斜しないものであってもよい。
【0035】
(3)上記した実施形態では、三つの報知ランプ14を備えた例を示したが、二つ、あるいは、四つ以上の報知ランプを備えるものであってもよい。
【0036】
(4)上記した実施形態では、報知ランプ14が車体前後方向に一列に並ぶ構成を採用した例を示したが、一列に並ばず、走行機体の側面視で前後方向に並ぶものであってもよい。
【0037】
(5)上記した実施形態では、草刈り部4を備えた例を示したが、対地作業部としては、草刈り部4に限らず、耕耘装置、薬剤散布装置などが採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、無線操縦による遠隔操作型の作業車に限らず、たとえば、レーザーセンサー等により樹木等の障害物を検出して、障害物を避けながら自動的に走行する自律走行型の作業車、機体から長い操縦ハンドルを延出して、作業者が操縦ハンドルを持って各種の操作を行う歩行型の作業車などにも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
2 車輪(前車輪)
3 車輪(後車輪)
7 輪体部
7a 輪体接地部
8 接地部
9 ラグ
9a ラグ爪
9b 爪支持台
14 報知ランプ