(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】唾液腺の再生
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20241202BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20241202BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241202BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241202BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61K31/439
A61K47/36
A61P1/02
A61K47/02
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021555150
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 US2019065415
(87)【国際公開番号】W WO2020123470
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アルスバーグ, エベン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, オジュ
(72)【発明者】
【氏名】バーニー, チェルシー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ノックス, サラ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210701(JP,A)
【文献】特開2017-066126(JP,A)
【文献】国際公開第2013/090924(WO,A1)
【文献】特表2011-504924(JP,A)
【文献】特開2009-120855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔乾燥症の治療に使用するための、唾液腺への局所腺内投与のために製剤化されたヒドロゲルに封入されたセビメリンまたはピロカルピンを含む組成物であって、前記ヒドロゲルがアルギネートを含む、組成物。
【請求項2】
前記アルギネートが、イオン的に架橋されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルギネートが、二価カルシウムカチオンによってイオン的に架橋されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロゲル中の前記アルギネートの濃度が、約2~約10重量パーセント(重量%)の範囲である、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルギネートが、少なくとも部分酸化される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルギネートの約2%~約10%が酸化される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルギネートの約2%が酸化され、前記ヒドロゲル中の前記アルギネート濃度が、約5重量%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記ヒドロゲルが、対象への投与後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間、前記
セビメリンまたはピロカルピンの送達を維持する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
造影剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
口腔乾燥症の対象を治療する方法において使用するための請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法が、治療有効量の前記組成物を前記対象の唾液腺に局所投与することを含む、組成物。
【請求項12】
前記組成物が、前記唾液腺に、または前記唾液腺に隣接して注入される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記方法が、注入の前に、前記唾液腺の位置を特定するために、医用画像化または触診を実行することをさらに含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記医用画像化が、超音波を実行することを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の複数の治療有効用量が、前記対象に投与される、請求項11~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記口腔乾燥症が、放射線またはシェーグレン症候群による前記唾液腺の損傷によって引き起こされる、請求項11~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記対象が、ペットまたは家畜である、請求項11~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記対象が、哺乳動物である、請求項11~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記哺乳動物が、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、またはブタである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物と、口腔乾燥症を治療するための説明書と、を含む
、口腔乾燥症を治療するためのキット。
【請求項22】
前記組成物を対象に送達するための手段をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
アルギネートヒドロゲルに封入されたセビメリンまたはピロカルピンを含む組成物を含有する第1のシリンジと、塩化カルシウムを含む溶液を含有する第2のシリンジと、ルアーロックとをさらに含み、前記第2のシリンジは、前記ルアーロックを介して前記第1のシリンジに接続され得る、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
アルギネートヒドロゲルに封入された前記セビメリンまたはピロカルピンを含む前記組成物を含有する前記第1のシリンジが、凍結される、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
唾液腺再生を促進することを必要とする対象における唾液腺再生を促進する方法において使用するための
、唾液腺への局所腺内投与のために製剤化されたヒドロゲルに封入されたセビメリンまたはピロカルピンを含む組成物であって
、前記方法が、唾液腺の腺房前駆細胞および腺房細胞に前記組成物を局所投与して、前記腺房前駆細胞および前記腺房細胞の増殖を促進し、それによって唾液産生を増加させることを含み
、前記ヒドロゲルがアルギネートを含む、組成物。
【請求項26】
前記腺房前駆細胞が、SOX2
+腺房前駆細胞である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記アルギネートが、イオン的に架橋される、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
前記アルギネートが、二価カルシウムカチオンによってイオン的に架橋される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記ヒドロゲル中の前記アルギネートの濃度が、2~10重量パーセント(重量%)の範囲である、請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記アルギネートが、少なくとも部分酸化される、請求項25~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記アルギネートの約2%~約10%が、酸化される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記アルギネートの約2%が、酸化され、前記ヒドロゲル中の前記アルギネート濃度が、約5重量%である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記ヒドロゲルが、前記対象への投与後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間、前記
セビメリンまたはピロカルピンの送達を維持する、請求項25~3
2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記腺房前駆細胞が、Ki67
+またはEd
U
+
の腺房前駆細胞である、請求項25~3
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記
セビメリンまたはピロカルピンに応答した前記腺房細胞増殖の結果として、唾液流量が増加する、請求項25~3
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記唾液腺が、舌下線である、請求項25~3
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記腺房前駆細胞が、SOX2
+
/AQP5
+
/Ki67
+細胞である、請求項25~3
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記腺房前駆細胞が、ムチン(MUC)19
-細胞である、請求項25~3
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記方法が、前記対象の前記唾液腺からSOX2
+腺房前駆細胞を単離し、前記SOX2
+腺房前駆細胞を増大させることをさらに含む、請求項25~
38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記増大された細胞が、前記
セビメリンまたは
ピロカルピンの前記増大された細胞への制御放出を提供する操作された組織構築物または生体適合性基質で提供され、前記制御放出が、遅延放出、持続放出、勾配放出、時間放出、パターン化放出、または空間的放出のうちの少なくとも1つを含む、請求項
39に記載の組成物。
【請求項41】
前記増大された細胞および前記
セビメリンまたは
ピロカルピンが、生分解性天然ポリマーまたはマクロマー上および/またはその中に提供される、請求項4
0に記載の組成物。
【請求項42】
前記生分解性天然ポリマーまたはマクロマーが、ヒドロゲルを含む、請求項4
1に記載の組成物。
【請求項43】
前記対象が、口腔乾燥症を引き起こすのに有効な放射線で治療されている、請求項25~4
2のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月10日に出願された仮出願第62/777,459号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって付与された助成金番号U24DE026914の下で政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
唾液腺(SG)の機能障害は、患者の口腔の健康および生活の質を深刻に損なう:唾液は、口腔粘膜を保護し、食物の消化および構音を容易にし、歯の硬組織の再石灰化を助ける。ドライマウス、または口腔乾燥症は、自己免疫疾患シェーグレン症候群に起因する不可逆的な病理学的傷害(米国では100~200万人)から、またはSGが腫瘍と一緒に不注意に照射される頭頸部癌の治療放射線(米国では6万人/年)から発生する可能性がある。この組織の再生能力の喪失は、唾液の産生を排除し、これらの患者の生活の質を著しく損なう。唾液機能障害のための利用可能な再生治療薬はなく、新しい変換可能な解決策が必要とされている。
【0004】
現在、標準的治療法は、唾液代替物または人工唾液、および/または全身性唾液分泌促進薬などの緩和的治療を推奨することである。セビメリンおよびピロカルピンは、唾液の一時分泌を促進する2つのFDA承認ムスカリン作動薬である。ピロカルピンは、非選択的ムスカリン作動薬である一方で、セビメリンは、M1およびM3ムスカリン受容体サブタイプに対してより高い親和性を有し、これらは両方とも、顎下腺および舌下腺において発現される。これらの薬物は、1日に3~4回服用されると、短期間の唾液産生を促進するのに有効であるが、それらは、患者のコンプライアンスを低下させる過度の発汗および下痢、頭痛、ならびにかすみ目を含む、望ましくない副交感神経刺激様の(parasympathetomimetic)副作用と関連している。最近、患者におけるセビメリンまたはピロカルピンの長期間の経口使用が唾液腺機能を改善することが報告された(Barbe(2017)J.Evid.Based Dent.Pract.17(3):268-270)。頭頸部へのガンマ線照射で処理されたマウスへのピロカルピンの継続的な経口投与は、未処理の対照と比較して唾液の流れを促進し(Taniguchi et al.(2019)Acta Histochem Cytochem.52(3):45-58)、ムスカリンアゴニズムが唾液腺の修復を促進する可能性があることを示唆しているが、これがどのように達成されたかは決定されていない。
唾液機能障害を治療するより良い方法、特に唾液分泌腺房細胞および唾液産生を回復させることができる再生的治療に対する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Barbe(2017)J.Evid.Based Dent.Pract.17(3):268-270
【文献】Taniguchi et al.(2019)Acta Histochem Cytochem.52(3):45-58
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
腺房細胞置換を促進することによる唾液腺再生のための組成物および方法が提供される。成人唾液腺におけるSOX2+前駆細胞を含む腺房前駆細胞が、放射線誘発損傷後に組織を再増殖させる(repopulate)予期しない能力を備えた腺房細胞の補充に不可欠であることが見出された。また、コリン作動性神経が恒常性維持の間、腺房細胞置換を制御する上で極めて重要な役割を果たし、この神経細胞の影響は、腺房前駆細胞にコリン作動性模倣物を添加することにより再現され得ることも見出された。したがって、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬で組織内の腺房前駆細胞を直接標的化することによって、唾液腺の分泌部を再生して、機能的唾液腺房の回復を提供し、放射線療法後またはシェーグレン症候群に関連する口腔乾燥症などの口腔障害を治療することができる。
【0007】
一態様では、口腔乾燥症の治療で使用するための、唾液腺への局所投与のために製剤化されたヒドロゲルに封入されたムスカリン作動薬を含む組成物が提供される。このような組成物は、放射線または自己免疫疾患(例えば、シェーグレン症候群)による唾液腺への損傷によって引き起こされるような口腔乾燥症の治療に使用され得る。
【0008】
ある特定の実施形態では、ムスカリン作動薬は、M1および/またはM3ムスカリン受容体サブタイプに対して選択的である。一実施形態では、ムスカリン作動薬は、セビメリンである。
【0009】
ある特定の実施形態では、ムスカリン作動薬は、ピロカルピンである。
【0010】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、アルギネートを含む。アルギネートは、二価カチオンとイオン的に架橋され得る。いくつかの実施形態では、アルギネートは、二価カルシウムカチオン(Ca2+)とイオン的に架橋されている。
【0011】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲル中のアルギネートの濃度は、約2~約10重量パーセント(重量%)の範囲であり、この範囲内の任意の重量%、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10重量%を含む。
【0012】
ある特定の実施形態では、アルギネートは、少なくとも部分酸化される。いくつかの実施形態では、アルギネートの約2%~約10%が酸化され、この範囲の任意の割合、例えば2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%を含む。一実施形態では、ヒドロゲル中のアルギネートは、約2%酸化され、5重量%の濃度である。
【0013】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、対象への投与後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間以上の間、ムスカリン作動薬の送達を維持する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、ムスカリン作動薬の送達を最大30日間維持する。
【0014】
ある特定の実施形態では、組成物は、造影剤をさらに含み、例えば、投与後の医用画像化によって唾液腺への組成物の局在化の確認を可能にする。いくつかの実施形態では、造影剤は、マイクロバブル(例えば、超音波で使用するため)または放射線不透過性造影剤(例えば、X線撮影で使用するため)である。
【0015】
ある特定の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0016】
別の態様では、本明細書に記載されるように、ヒドロゲルに封入されたムスカリン作動薬を含む組成物、および口腔乾燥症を治療するための説明書を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、対象に当該組成物を送達するための手段をさらに含む。例えば、キットは、アルギネートヒドロゲルに封入されたムスカリン作動薬を含む組成物を含有する第1のシリンジと、塩化カルシウムを含む溶液を含有する第2のシリンジと、ルアーロックとを含み得、第2のシリンジは、ルアーロックを介して第1のシリンジに接続することができる。アルギネートヒドロゲルに封入されたムスカリン作動薬を含む組成物を含有する第1のシリンジは、凍結保存され得る。いくつかの実施形態では、キット中のムスカリン作動薬は、セビメリンまたはピロカルピンである。
【0017】
別の態様では、口腔乾燥症の対象を治療する方法が提供され、本方法は、対象の唾液腺に、治療有効量のヒドロゲルに封入されたムスカリン作動薬を含む組成物を局所的に投与することを含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、組成物は、唾液腺に、または唾液腺に隣接して注入される。
【0019】
ある特定の実施形態では、複数の治療有効用量の組成物が対象に投与される。
【0020】
ある特定の実施形態では、口腔乾燥症は、放射線またはシェーグレン症候群からの唾液腺の損傷によって引き起こされる。
【0021】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入の前に唾液腺の位置を特定するために医用画像化(例えば、超音波)または触診を実行することをさらに含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、唾液腺再生を促進することを必要とする対象における唾液腺再生を促進する方法であって、この方法は、唾液腺の腺房前駆細胞および腺房細胞に、コリン作動薬またはムスカリン作動薬のうちの少なくとも1つを局所投与して、腺房前駆細胞および腺房細胞の増殖を促進し、それによって唾液産生を増加させることを含む、方法。
【0023】
ある特定の実施形態では、コリン作動薬は、アセチルコリンまたはアセチルコリン類似体のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、アセチルコリン類似体は、カルバコールである。
【0024】
ある特定の実施形態では、腺房前駆細胞は、SOX2+腺房前駆細胞である。いくつかの実施形態では、SOX2+腺房前駆細胞は、AQP57Ki67+細胞である。他の実施形態では、SOX27AQP57Ki67+腺房前駆細胞を含むSOX2+腺房前駆細胞が、ムチン(MUC)19-細胞である。
【0025】
いくつかの実施形態では、本方法は、治療される対象の唾液腺からSOX2+腺房前駆細胞を単離することと、単離されたSOX2+腺房前駆細胞を増大させることと、次いで、増大された細胞を対象の唾液腺に移植することと、をさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、移植前に、増大された細胞は、少なくとも1つのコリン作動薬またはムスカリン作動薬の増大された細胞への制御放出を提供する操作された組織構築物または生体適合性基質に提供される制御放出は、遅延放出、持続放出、勾配放出、時間放出、パターン化放出、または空間的放出のうちの少なくとも1つを含み得る。操作された組織構築物または生体適合性基質は、生体適合性ヒドロゲルなどの生分解性天然ポリマーまたはマクロマーを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって治療される対象は、唾液の産生に影響を及ぼす障害などの口腔障害を有する。口腔障害の例としては、唾液腺腫瘍、嚢胞性線維症、シェーグレン症候群、唾液腺炎、耳下腺炎、唾液腺管炎(sialoangitis)、唾液管炎(sialodochitis)、唾石症、唾液腺結石症(sialodocholithiasis)、粘液嚢胞、ガマ腫、分泌不全、唾液分泌過多症、流涎症、口腔乾燥症、唾液腺の良性リンパ上皮病変、唾液腺拡張(sialectasia)、唾液腺症(sialosis)、唾液管狭窄(stenosis of salivary duct)、および唾液管狭窄(stricture of salivary duct)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、対象は、口腔乾燥症を引き起こすのに有効な放射線で以前に治療されていてもよい。本明細書に記載される方法は、唾液の産生(すなわち、口腔乾燥症)に影響を与えるそのような口腔障害に対してヒト対象を治療するために使用することができる。本明細書に記載の方法は、イヌおよびネコなどのペット、ならびにヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマおよびウシなどの家畜を含むが、これらに限定されない、飼育動物における口腔乾燥症の治療のための獣医用途でも使用されることが分かるであろう。
【0028】
本明細書に記載される他の実施形態は、対象の唾液腺のSOX2+腺房前駆細胞を単離し、増大させ、次いで増大された細胞を対象の唾液腺に移植することによって、唾液腺再生を促進することを必要とする対象における唾液腺再生を促進する方法に関する。増大されたSOX2+腺房前駆細胞は、AQP57Ki677MUC19-細胞であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、増大された細胞の移植の前および/または後に、増大された細胞は、腺房細胞の生成を促進するために、コリン作動薬またはムスカリン作動薬のうちの少なくとも1つを投与され得る。
【0030】
他の実施形態では、増大された細胞は、操作された組織構築物または生体適合性基質に提供され得る。操作された組織構築物または生体適合性基質は、少なくとも1つのコリン作動薬またはムスカリン作動薬の増大された細胞への制御放出を提供することができ、制御放出は、遅延放出、持続放出、勾配放出、時間放出、パターン化放出、または空間的放出のうちの少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】SOX2が、成人の唾液腺において腺房細胞を生じるが、導管細胞を生じさせない前駆細胞をマークすることを示す。[
図1A]SOX2、上皮(E-カドヘリン、ECAD)またはCD44、および核について免疫染色した、成人ヒト顎下(SMG)、舌下(SLG)、および耳下(PG)唾液腺(非IR、28~33歳)の代表的な画像。単方向矢印は、SOX2発現腺房細胞を示す。スケールバーは、20μmである。[
図1B]SOX2、ECAD、および核について染色された野生型マウスSMGおよびSLG。矢じりは、SOX2発現細胞を示す。スケールバーは50μmである。黄色の破線は、SMGとSLGとの間の境界を示す。[
図1C]Sox2
eGFP舌下唾液腺(SLG)を、GFPおよび分化した腺房マーカームチン19(MUC19)について免疫染色した。白い破線は、Sox2
eGFP+MUC19(-)細胞の輪郭を示す。スケールバー=20μm。[
図1D]総AQP5
+腺房細胞の割合としてのAQP5
+SOX2
+細胞。[
図1E]SOX2、Ki67、および上皮マーカーE-カドヘリン(ECAD)について免疫染色したSLG。白い矢印は、増殖するKi67
+SOX2
+細胞を示す。白線は、個々の細胞および核の輪郭を示す。スケールバー=10μm。[
図1F]Sox2系統追跡した(lineage-traced)SLGの代表的な画像。組み換えは、Sox2
CreERT2、Rosa26
mTmGマウスで誘導され、唾液腺は、SOX2、腺房マーカーAQP5およびMUC19、ならびに導管マーカーKRT8について免疫染色する前に、24時間および30日間追跡された。*は、MUC19(-)Sox2
CreERT2GFP(+)細胞を示す。スケールバー=30μm。mT=膜結合型トマト(membrane-bound Tomato)。データ情報:(
図1D)で定量化された細胞を、n=5、女性成人SLGの3つの非連続切片からカウントした。データは、平均±SDとして提示される。
【
図2A】唾液腺房細胞の補充に必須であるSOX2およびSOX2
+細胞を示す。[
図2A]、[
図2B]Sox2またはSOX2
+細胞を、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/fl;Rosa26
mTmG/+マウス(
図2A、概略図を参照)またはSox2
CreERT2Rosa26
DTA;Rosa26
mTmG/+マウス(
図2B、概略図を参照)のSLG中で除去(ablate)した。切片を、AQP5、KRT8、またはECADおよび核について免疫染色した。スケールバー=50μm。破線の白線は、導管の輪郭を示す。遺伝子型あたりn=3。[
図2C]、[
図2D]Sox2
CreERT2;Sox2
fl/fl(
図2C)またはSox2
CreERT2Rosa26
DTA;Rosa26
mTmG/+SLG(
図2D)中の導管面積の定量化は、全上皮面積の割合として表される。(
図2C)、右グラフでは、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/flSLG中のSOX2
+細胞の数は、全細胞の割合として発現した。(
図2D)、右グラフでは、野生型およびSox2
CreERT2Rosa26
DTA;Rosa26
mTmG/+マウスにおけるKRT8
+導管、AQP5
+およびSOX2
+腺房細胞の総数をカウントした。データ情報:細胞数/導管面積の計算は、n=3マウス/遺伝子型からの各SLGの3つの非連続蛍光切片上で実行された。(
図2Cおよび2D)におけるデータ(n=3)は、平均±SDであり、スチューデントのt検定によって分析された。(
図2C)では、
*P=0.011および
**P=0.0041、ならびに(
図2D)では、左グラフ
**P=0.0015および右グラフ
***P=0.0007および
**P=0.0018。
【
図3A】副交感神経が、SOX2
+細胞を維持し、SOX2を介して腺房細胞の置換を促進するために必要であることを示す。[
図3A]概略図は、成体マウスにおける鼓索(CT)の除神経の時間経過および位置を示す。[
図3B]手術後7日および30日(D7またはD30)の無傷(未傷害の反対側の腺)および神経切断SLGの遺伝子発現(qPCR)分析。遺伝子発現は、各時点についてRsp18および無傷の対照に対して正規化された。[
図3C~3F]神経(GFRa2)、腺房細胞(AQP5およびMIST1)、導管細胞(KRT8)、および上皮細胞(ECAD)の除神経の7日後に、対照および神経切断SLGを免疫染色した。対照および切断SLG中のSOX2
+、AQP5
+、MIST1
+、KRT8
+、およびKRT5
+細胞の数をカウントし、対照SLG中の細胞の数の割合として表した(
図3F)。(
図3C、3Dおよび3E)のスケールバー=25μm。[
図3G]、[
図3H]組み換えは、Sox2
CreERT2;Rosa
26mTmGマウスにおいて神経切断の3日後に誘導され、TUBB3について免疫染色される前に、SLGが11日間追跡された。対照および切断腺におけるGFP
+およびmT
+腺房細胞の割合を(
図3G)に示す。(
図3H)のスケールバー=25μm。データ情報:(
図3B)のデータ(n=5)は、平均±SEMであり、事後ダネット検定による一元配置分散分析を使用して分析した。Sox2(D7)
*P=0.0455、Tubb3(D7)
**P=0.0082、Tubb3(D30)
**P=0.0091、Vip(D7)
**P=0.0098、Vip(D30)
**P=0.0063、Vacht(D7)
**P=0.0071、Muc19(D7)
*P=0.0419、Aqp5(D7)
*P=0.0468。(
図3Fおよび3G)中のデータは、n=5マウス/群または遺伝子型からの各SLGの3つの非連続蛍光切片から計算され、平均±SDであり、スチューデントのt検定によって分析された。SOX2
+ *P=0.0197、AQP5
+ *P=0.0106、%GFP
+ ***P=0.0000096、%mT
+ ***P=0.0000096。
【
図4A】ムスカリンシグナル伝達がSOX2
+細胞増殖を促進することを示す。[
図4A]成人SLGを、SOX2、CHRM3、および核について免疫染色した。画像は、1-μmおよび0.175-μmの共焦点切片の6μm(左)および1μm(右)投影である。スケールバー=10μm。[
図4B]CHRM1
+またはCHRM3
+である上皮SOX2
+細胞の割合をフローサイトメトリーを使用してカウントし、全EpCAM
+SOX2
+細胞の割合として発現した。[
図4C]、[
図4D]ピロカルピンまたは生理食塩水(対照)で処理されたマウスからの成体SLGを、SOX2、Ki67、および核について免疫染色した。白色の矢印は、増殖しているSOX2
+(SOX2
+Ki67
+)細胞を示す(
図4C)。スケールバー=20μm。(
図4D)ピロカルピン処理によるSOX2
+およびSOX2
+Ki67
+細胞の倍率変化%。データ情報:(
図4B)n=3のマウスからSLGをプールした(10,000事象)。(
図4D)のデータは、n=4(生理食塩水)またはn=5(ピロカルピン)マウスからの各SLGの3つの非連続蛍光切片から計算され、平均±SDであり、スチューデントのt検定によって分析された。
*P=0.0487。
【
図5A】Sox2が、放射線傷害後のSLG再生に不可欠であることを示す。[
図5A~5D]野生型(
図5A)およびSox2
CreERT2;Rosa2
6mTmG(
図5D)マウスからの対照(0Gy、非IR)および照射(10Gy、IR)SLGの代表的な画像を示し、1、3、および14日後に分析された。(
図5A~5C)SLGを、神経(TUBB3)、SOX2、サイクリンDI(CCND1)、および核(
図5A、5C)について染色し、神経密度を計算した(
図5B)。(
図5C)SOX2
+およびCCND1
+細胞の数を定量化した。(
図5D)Sox2
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスを照射後14日間追跡し(IR)、SOX2について免疫染色した(
図5D、赤色)。白い矢じりは、SOX2陰性子孫を示す。(
図5Aおよび5D)中のスケールバーは、50μmである。[
図5E]Sox2
CreERT2;Sox2
fl/flマウスおよび野生型同腹仔に、10Gy IRを照射し、13日後にSLGを分析した。SLGをSOX2、AQP5、および核について免疫染色した。スケールバー=50μm。データ情報:(
図5B)のデータは平均±SDであり、n=3であり、個々の値がプロットされる。(
図5C)のデータは、n=3のマウス/処理からの各SLGの3つの非連続蛍光切片から計算され、平均±SDであり、データは事後ダネット検定による一元配置分散分析を使用して分析された。SOX2
+(D1)
*P=0.0487、SOX2
+CCND1
+(D3)
*P=0.318、SOX2
+CCND1
+(D7)
*P=0.0291。
【
図6A】SOX2
+前駆体が、ムスカリン刺激に応答して放射線誘発損傷後に腺房細胞を補充することができることを示す。[
図6A]Sox2
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスからのSLGを、単回15Gy線量のIRおよび0~48時間培養された外植片の後に収集した。概略図は、組み換え、培養、および分析のタイミングを示す。[
図6B]核について免疫染色された系統追跡外植片の代表的な画像。スケールバーは50μmである。[
図6C]GFP
+細胞の数の定量化。データ情報:(
図6C)のデータは、各処理についてn=3の免疫染色された外植片の3つのランダムなエリアから計算され、個々の値がプロットされ、事後ダネット検定による一元配置分散分析を使用してデータを分析した。エラーバーは、平均値±SDを示す。非IR対IR
***P=0.0022、IR対IR+CCh
**P=0.0058、IR対IR+4-DAMP
***P=0.0010。
【
図7A】アセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達が、ヒトSGにおいてSOX2および腺房系統を維持することを示す。[
図7A]健康な個人(非IR、顎下腺)または頭頸部癌の放射線療法を受けた患者(IR)から得られたヒト唾液腺をqPCRに供した。[
図7B~7D]マウス胎生期(E)13副交感神経節(神経)またはE13間葉(MES)のいずれかと共に7日間培養したヒトSMG外植片。神経(
図7B、TUBB3)または細胞増殖(
図7C、Ki67)のマーカーについての免疫染色によって、またはqPCR(
図7D)によって、外植片を分析した。スケールバー=50μm(
図7B、7C)。[
図7E]4時間±CCh(200nM、n=4)で培養された4人の異なる個体の成人ヒト唾液腺(SMGまたはPG)外植片のqPCR分析。個々のデータセットを
図14Dに示す。データ情報:(
図7A)のデータは、非IRの場合n=11、IRの場合n=7、30~85歳。データは、GAPDHに正規化され、個々の値がプロットされ、偽発見率が0.05に設定されたスチューデントのt検定を使用して分析された。エラーバーは、平均値±SDを示す。AQP3 P=0.017、MIST1 P=0.086、AMY1 P=0.005、SOX2 P=0.079、CHRM1 P=0.040、CHRM3 P=0.011、EGFR P=0.931、KRT19 P=0.618。(
図7D)のデータは、n=2の個体の平均±SDであり、実線カラムは個体#1を表し、破線カラムは個体#2を表す。データは、マウス間葉で培養した同じ個体の唾液腺に対して正規化された(対照、黒い破線)。(
図7E)のデータは、n=4の異なる個体の箱ひげ図であり、平均(水平線)、上下の四分位数(箱)、ならびに上下の値(ひげ)を示す。データは、未処理対照に対して正規化された(黒い破線)。n=5~8、の個体当たりの外植片。データは、事後ダネット検定による一元配置分散分析を使用して分析された。SOX2
**P=0.00834、CHRM3
*P=0.0449、CHRM1
**P=0.0093、AQP5
**P=0.0069、AQP3
*P=0.0375、MIST1
*P=0.0379、CD44
*P=0.0485、KRT19
*P=0.0461
【
図8A】SOX2
+細胞の短期間の除去が腺房細胞の置換を低減させることを示す。(
図8A)SOX2
+細胞を、Sox2
CreERT2;Sox2
m;Rosa26
mTmG/+マウスのSLGで3日間にわたって除去し、SLGを4日目に分析した(概略図を参照)。Sox2
CreERT2;Sox2fl/fl;Rosa26
mTmG/+SLGの切片を、SOX2および筋上皮細胞(a-平滑筋アクチン、SMA)について免疫染色した。スケールバー=50pm(
図8B)SOX2
CreERT2Rosa26
DTA;Rosa26
mTmG/+マウスのSLGでSOX2
+細胞を4日間にわたって除去し、SLGを5日目に分析した(概略図を参照)。Sox2
CreERT2Rosa26
DTASLGの切片を、SOX2および腺房細胞(アクアポリン5、AQP5)について免疫染色するか、またはqPCRに供した。スケールバー=50pm。データ情報:
図8Bのデータは、Gapdhおよび野生型対照に対して正規化された。データは平均±SDである。(n=1、3回の技術的複製)。
【
図9A】鼓索の切断から30日後の再神経支配が、腺房系統を回復することを示す(
図9A~9C)SLGをSOX2、TUBB3、AQP5、MIST1およびECAD(
図9A)について免疫染色し、SOX2
+、AQP5
+、MIST1
+およびKRT8
+細胞の数(
図9B)、ならびに腺房細胞サイズ(
図9C)を除神経の30日後に測定した。n=5、の1条件ごとの時点ごとのマウス。細胞を、1動物ごとに3~4視野でカウントした。データ情報:
図9Bおよび
図9Cのデータ、n=5。
図9Bのデータは平均±S.E.Mであり、一元配置分散分析を使用して分析され、
図9Cのデータは、n=5のマウスの箱ひげ図であり、平均±S.E.Mを示し、スチューデントのf検定を使用して分析された。
*p=0.0498。
【
図10A】SOX2が、腺房を補充する腺房細胞のサブセットをマークすることを示す。[
図10A]SOX2、ECAD、および核について染色された野生型マウスPG。スケールバーは50pmである。[
図10B]Ki67
+である腺房SOX2
+およびSOX2
-細胞の割合をFACSを使用してカウントし、総AQP5
+SOX2
+またはAQP5
+SOX2
-細胞の割合として示す。[
図10C]サイクリンD1
+またはサイクリンDTのいずれかであるSOX2
+腺房細胞のパーセント。[
図10D]Rosa26
mTmGCreを介した遺伝子切除の概略図(出典、Muzumdar et al.,2007)。[
図10E]Sox2系統追跡SLGの代表的な画像。Creを介した組み換えは、Sox2
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスにおいて誘導され、SLGを、SOX2についての免疫染色によって14または30日後に分析した。スケールバー=25μm。[
図10F]キット系統追跡SLGおよびSMGの代表的な画像。Creを介した組み換えがKit
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスにおいて誘導され、SMG/SLGを14日後および6ヶ月後に分析した。組織を腺房細胞をマークするためAQP5で染色し、介在された導管細胞をマークするためKRT8で染色した。スケールバー=25μm。mT=膜結合トマト。データ情報:(
図10B)のデータ、SLGをn=2、マウスからプールした(85,000事象)。(
図10C)のデータを、n=3、マウスからの各SLGの3つの非連続蛍光切片から計算し、個々の値がプロットされた。エラーバーは、平均値±SDを示す。
【
図11A】Sox2またはSOX2
+細胞の除去が、神経の存在にもかかわらず、腺房細胞の置換を低減させることを示す。[
図11A~11C]Sox2またはSOX2
+細胞を、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/fl;Rosa26
mTmG/+マウス(
図2A、概略図を参照)またはSox2
CreERT2;Rosa26
DTA;Rosa26
mTmG/+マウス(
図2B、概略図を参照)のSLGで除去した。(
図11A、11B)WT、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/fl、およびSox2
CreERT2;Rosa26
DTAのSLGの切片をSOX2またはTUBB3および核について免疫染色した。白い矢じりはSOX2
+細胞を示す。白い点線の正方形が右の画像で拡大され、組織に残っているSOX2
+細胞がほとんどなく、非核(緑色)染色が破片を示唆することを強調している。スケールバー=50μm。(
図11C)神経の生の総密度を、ImageJを使用して計算した。[
図11D]WTまたはSox2
CreERT2;Sox2
fl/flのSLGを、サイクリンD1(CCND1)および核について免疫染色した。破線=導管、矢じり=CCND1
+腺房細胞。スケールバー=50μm。データ情報:(
図11C)のデータ、WT n=4、Sox2
fl/fl n=4、DTA n=3。平均±SDとして個々の値をプロットし、事後ダネット検定による一元配置分散分析を使用してデータを分析した。
**P=0.0091。(
図11D)のデータは、n=4、のマウスからの代表的な画像である。
【
図12A】鼓索の切断が7日で腺房細胞を枯渇させることを示す。(
図12A、12C、12D、12G)対照および神経切断SLGを、チロシンヒドロキシラーゼ(TH、
図12A)、SOX2およびTUBB3(
図12C)、KRT5(
図12D)、カスパーゼ-3(CASP3、
図12G)、上皮細胞(ECAD)、および核について、除神経7日後、免疫染色した。除神経の7日後の、無傷または切断された鼓索(CT)を有する成体野生型(WT)SLGにおける腺房細胞のサイズの定量化(
図12B)。(
図12A、12C、12D、12G)のスケールバー=25μm。(
図12E、12F)神経切断の24時間前にSox2
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスにおいて、組み換えが誘導され、SLGは、TUBB3について免疫染色される前に15日間追跡された。対照および切断腺におけるGFP
+およびmT
+腺房細胞の割合を(
図12F)に示す。スケールバー(
図12E)=25μm。(H)無傷の対照と比較した、除神経の7日後の細胞周期およびアポトーシスに関与する遺伝子の発現の変化倍率。破線は、無傷の対照を示す。データ情報:(
図12B、12F、および12H)のデータ、n=5。(
図12B)のデータは、n=5、マウスの箱ひげ図であり、平均(水平線)、上下の四分位数(箱)ならびに上下の値(ひげ)を示し、スチューデントのt検定を使用して分析された。
***P=0.00000347。(
図12F)のデータは、平均±SDであり、スチューデントのt検定によって分析された。%GFP
+ ***P=0.0000208、%mT
+ ***P=0.0000208。(
図12H)のデータは、Rsp18および無傷の対照(破線)に対して正規化された。Ccndl
*P=0.0477。
【
図13A】IRが細胞損傷ならびに神経の喪失を誘発し、SOX2およびSOX2
+前駆体が、コリン作動性模倣物に応答してマウス腺房細胞を補充することができることを示す。[
図13A]、[
図13B]マウスSLGを、10GyのIR後0、1、3、および7日目にqPCRによって転写変化について分析した。[
図13C~13E]Sox2
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスSLG外植片を、エクスビボで48時間培養し、平滑筋アクチン(SMA、
図13C)、SOX2(
図13D)またはKi67(
図13E)および核について免疫染色した。培養のためにSLGを採取する24時間前に組み換えを誘導した。スケールバー=50μm。データ情報:(
図13Aおよび13B)のデータは、Rsp29および0日目の対照に対して正規化された。(
図13Aおよび13B)のデータ(n=3、1時点当たり)は、平均±SEMであり、事後ダネット検定を用いた一元配置分散分析を使用して分析された。Bax(D1)**P=0.00826、Bax(D3)**P=0.0871、Pmaipl(D3)*P=0.0369、p21(D3)*P=0.0481、p53(D1)*P=0.0337、MKi67(D1)*P=0.0319、Sox2(D1)**P=0.0072、Sox2(D3)*P=0.0418、Aqp5(D1)*P=0.0421、Misti(D1)*P=0.0432、Tubb3(D1)*P=0.0467、Tubb3(D3)*P=0.0470、Tubb3(D7)*P=0.0489、Vip(D1)*P=0.0402。(
図13C、13D、および13E)の画像は、3つの実験を代表するものであり、n=3、の1実験ごとのSLG断片である。
【
図14A】ムスカリン活性化が、ヒト成人の唾液腺におけるSOX2発現および腺房系統を増加させるのに十分であることを示す。[
図14A]健康な個体(非IR、顎下腺)または頭頸部癌の放射線療法を受けた患者(IR)から得られたヒト唾液腺をqPCRに供した。[
図14B]内因性SOX10、MIST1、EGFR、CD44、KRT7、AQP3、KRT5、ECAD、および核について免疫染色された成人ヒト(h)唾液腺(非IR、22~31歳、SMG)の代表的な画像。単方向の矢じりは、SOX10を発現する腺房および導管細胞を示す。スケールバー=50μm。[
図14C]神経共培養物中のKi67
+細胞の数の定量化(
図7Cに示す代表的な画像)。[
図14D]4人の個々の患者(健常、非IR)からの成人ヒト唾液腺外植片(SMGまたはPG)を4時間±200nMのCChで培養した。
図7Eに提示されるプールされたデータ。データ情報:(
図14A)のデータは、非IRの場合はn=11であり、IRの場合はn=7であり、30~85歳である。データは、GAPDHに正規化され、個々の値がプロットされ、偽発見率が0.05に設定されたスチューデントのt検定を使用して分析された。エラーバーは、平均値±SDを示す。TUBB3 P=0.346、VIP P=0.461、GFRA P=0.002、TH P=0.433。(
図14C)のデータはn=3で、平均±SEMであり、スチューデントのt検定を使用して分析された。
*P=0.0151。(
図14D)中のデータ(n=4、の別々の個体)は、CChなしで培養した同じ個体(対照、黒い破線)からのGAPDH発現および唾液腺に対して正規化され、3連で実行され、平均値±SDとして提示される。
【
図15A】セビメリンの腺内注入が、マウス唾液腺における腺房細胞増殖を促進することを示す。マウスに、セビメリン(CV)または生理食塩水(S、対照)を腺内注入した。18時間後にマウスを屠殺し、組織切片(3切片/腺、3匹のマウス/処理)から増殖細胞を定量化した。スケールバー=60pm(
図15Aに示される代表的な画像、
図15Bに示されるセビメリン処理対生理食塩水の腺房細胞%を比較するプロット)。
【
図16A】酸化アルギネート(OA)ヒドロゲルの物理的分解を示す。(
図16A)物理的分解に対する酸化の影響、重量%は5重量%で一定に保持された。(
図16B)物理的分解に対する重量%の影響、OA%は2%OAで一定に保持された。(
図16C)5重量%で2%OAのインビトロ対インビボ分解。(
図16D)冷蔵(4℃)対冷凍(-20℃)下での5重量%での2%OAの安定性。
【
図17A】酸化アルギネート(OA)ヒドロゲルからのセビメリン放出を示す。(
図17A)セビメリン放出に対する酸化の影響、重量%は5重量%で一定に保持された。(
図17B)セビメリンに対する重量%の影響、OA%は2%OAで一定に保持された。(
図17C)5重量%の2%OAヒドロゲルからの放出動態に対するセビメリンの増加した初期薬物負荷の影響。(
図17D)異なる初期セビメリン濃度での5重量%の2%OAヒドロゲルからの時間当たりのセビメリン放出。
【
図18A】バルクアルギネートからのセビメリン放出が3日間腺細胞増殖を促進することを示す。アルギネート(ALG、5%重量:2%OA)またはアルギネート+セビメリン(ALG+CV)を唾液腺のすぐ隣に注入した(
図18A)。赤い円は注入後にアルギネートを強調表示する。3日でマウスを屠殺し、増殖しているKi67+およびEdU+細胞を定量化した(
図18Bおよび
図18C、3切片/腺、3~4匹のマウス/処理)。+CVをALG対照と比較するスチューデントのt検定、*p<0.05。スケールバー=40pm。
【
図19A】セビメリン有り、または無しのアルギネートが、注入後の7日で修復促進性の(pro-repair)炎症応答を促進することを示す。アルギネート(ALG、5%重量:2%OA)またはアルギネート+セビメリン(ALG+CV)を唾液腺のすぐ隣に注入した。7日目にマウスを屠殺した。唾液腺組織切片を、CD3+T細胞(
図19Aおよび19B)、CD68+マクロファージ(
図19Cおよび19D)、またはCD206+修復マクロファージ(
図19E)および核について免疫染色した。マクロファージ密度を定量化し、年齢が一致した生理食塩水注入動物(i.p.)または22ヶ月齢のマウス(3切片/腺、3~4匹/処理)と比較した。+CVとALG対照と対照を比較する一元配置分散分析検定、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.00001。スケールバー=40pm。
【
図20A】セビメリンが、放射線誘発損傷後の腺房細胞の増殖を促進することを示す。(
図20A)放射線処理の概略図。(
図20B)クエン酸塩刺激唾液分泌は、10Gy線量の放射線を受けてから13日後の6~8週のC57/BL6雌マウスにおいて、低減する。(
図20C~20F)14日後、動物に生理食塩水もしくは10mg/kgのセビメリンを腹腔内注入するか(
図20Bおよび20D)、または腺内に注入した(
図20Cおよび20D)。動物は、組織処理および免疫蛍光のために、注入の18時間後に安楽死させた。増殖およびSOX2+細胞の定量化を組織切片から行った(動物当たり3切片)。
【
図21A】アルギネート+セビメリンによる照射された唾液腺の処理が、腺房細胞増殖を促進し、唾液流量を改善することを示す。[
図21A]マウスの処理のタイムラインの概略図を示す。放射線照射の14日後に、マウスにアルギネートまたはアルギネート+セビメリンを注入し、増殖の分析のために3日目に屠殺した。[
図21B]アルギネート+セビメリンがアルギネートのみのレベルを上回る増殖速度を増加させたことを示す。[
図21C]アルギネートのみのアルギネート+セビメリンで処理した後の上皮細胞の割合を比較する。[
図21D]放射線照射から13日後、生理食塩水、アルギネート、またはアルギネート+セビメリンの皮下注入の1日前および7日後に唾液を測定したことを示す。二元配置分散分析、RMなし、p=0.0244、時間パラメータに対する。
【
図22】セビメリンの増加による増殖の増加がないことを示す。10mgまたは25mg/kgを含有するアルギネートをマウスに送達し、増殖(Ki67+)腺房細胞を3日目に定量化した。
【
図23】アルギネートが腺房細胞増殖を促進することを示す。
【
図24】セビメリンの有無にかかわらず、アルギネートがマウスの健康に悪影響を及ぼさないことを示す。
【
図25】アルギネートの酸化効率を分析するための
13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。3-(トリメチルシリル)プロピオン酸-d4ナトリウム塩(0.05w/v%)を内部標準として使用した。
【
図26】注入可能なヒドロゲルを製造するための一対のシリンジを示す。ヒドロゲルを産生するためのカルシウム架橋溶液を含有するシリンジは、ルアーロックを介して、アルギネートおよび神経伝達物質模倣物(例えば、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬)の溶液を含有する第2のシリンジに接続される。
【
図27A】イヌおよびヒト唾液腺の位置を示す。1.5ml~2mlのアルギネートヒドロゲルは、ヒト対象またはイヌ対象のいずれかにおいて下顎腺に直接注入することができる。
【
図28】イヌおよびヒト唾液腺が類似していることを示す。イヌとヒトの耳下腺および舌下腺は、最も類似しているように見える。イヌ下顎腺は、混合細胞腺(mixed cell gland)であるという点でヒトと同様である。
【
図29】イヌの下顎腺へのアルギネートヒドロゲルの注入を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
腺房細胞の置換を促進することによる唾液腺の再生のための組成物、方法、およびキットが提供される。本発明者らは、成人唾液腺におけるSOX2+腺房前駆細胞を含む前駆細胞が、放射線誘発損傷後に組織を再増殖させる予期しない能力を備えた腺房細胞の補充に不可欠であることを示した(実施例1)。本発明者らは、コリン作動性神経が、恒常性維持の間、腺房細胞の置換を制御する上で極めて重要な役割を果たし、この神経細胞の影響は、腺房前駆細胞にコリン作動性模倣物を添加することにより再現され得ることを、さらに示した。したがって、組織内のSOX2+腺房前駆細胞を含む前駆細胞をコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬で直接標的化することによって、唾液腺の分泌部を再生して、機能的唾液腺房の回復を提供し、放射線療法後またはシェーグレン症候群に関連する口腔乾燥症などの口腔障害を治療することができる。特に、アルギネートヒドロゲルに封入されたセビメリンなどのムスカリン作動薬を含む製剤は、唾液腺への局所投与のために製剤化することができ、口腔乾燥症の治療において使用することができる(実施例2)。
【0033】
本発明の組成物、方法、およびキットを説明する前に、本発明は記載された特定の方法または組成物に限定されるものではなく、それ自体が勿論、変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0034】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までのそれぞれの間に介在する値もまた、具体的に開示されていることが理解される。任意の記載値または記載された範囲内の間に介在する値と、任意の他の記載値またはその記載された範囲内の間に介在する値との間の、それぞれより小さい範囲が、本発明に包含される。これらの小さい範囲の上限および下限は、独立して範囲に含まれていても、除外されていてもよく、いずれか、どちらでもない、または両方の限定が小さい範囲に含まれている各範囲も、記載されている範囲の中で任意の具体的に除外されている限定に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限定の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限定のいずれかまたは両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0035】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、ここでは、いくつかの潜在的かつ好ましい方法および材料を説明する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示は、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先されることを理解されたい。
【0036】
本開示を読むことで当業者に明らかになるように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはそれと組み合わされ得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の記載された方法は、記載された事象の順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「a cell(細胞)」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「the agonist(作動薬)」への言及は、例えば当業者に既知のリガンドおよび活性化因子など1つ以上の作動薬およびその等価物への言及を含む。
【0038】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前に専らそれらの開示のために提供されている。本明細書におけるいかなる内容も、本発明が先行発明を理由に、そのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0039】
定義
「約」という用語は、特に所与の量に関して、プラスまたはマイナス5%の偏差を包含することを意味する。
【0040】
「薬剤」という用語は、薬学的組成物および診断組成物を調製するために使用され得るすべての材料、またはすべて本発明に従う、そのような目的のために独立して使用され得る小さな合成もしくは天然由来の有機化合物、核酸、ポリペプチド、抗体、断片、アイソフォーム、変異体、または他の材料などの化合物であり得るすべての材料を指す。
【0041】
「作動薬」という用語は、特定の受容体に結合し、細胞内で応答を引き起こす物質を指す。それは、同じ受容体に結合する内因性リガンド(ホルモンまたは神経伝達物質など)の作用を模倣する。「完全作動薬」は、受容体に結合し(に対する親和性を有し)、受容体を活性化し、その受容体で完全な有効性を示す。完全作動薬として作用する薬物の一例は、βアドレナリン受容体におけるアセチルコリンの作用を模倣するイソプロテレノールである。「部分作動薬」(ブスピロン、アリピプラゾール、ブプレノルフィン、またはノルクロザピンなど)は、所与の受容体にも結合し、活性化するが、完全作動薬と比較して受容体において部分的な有効性のみを有する。
【0042】
「部分作動薬」はまた、作動薬効果および拮抗薬効果の両方を示すリガンドとみなされ得、完全作動薬および部分作動薬の両方が存在する場合、部分作動薬は実際に競合的な拮抗薬として作用し、受容体占有について完全作動薬と競合し、完全作動薬単独で観察される受容体活性化の正味の減少を生じる。「共作動薬(co-agonist)」は、他の共作動薬と協力して、所望の効果を一緒に生じる。拮抗薬は、作動薬による受容体の活性化を遮断する。受容体は、内因性(ホルモンおよび神経伝達物質など)または外因性(薬物など)作動薬および拮抗薬のいずれかによって活性化または不活性化され、その結果生物学的応答を刺激または阻害することができる。リガンドは、エフェクター経路に応じて、同じ受容体で作動薬および拮抗薬として同時に作用させることができる。
【0043】
作動薬の効力は、通常、そのEC50値によって定義される。これは、所与の作動薬について、作動薬の最大生物学的応答の半分を誘発するのに必要な作動薬の濃度を決定することによって算出することができる。EC50値を明らかにすることは、生理学的に類似の効果を生じる類似の有効性を有する薬物の効力を比較するのに有用である。EC50が低いほど、作動薬の効力が高くなり、最大生物学的応答を誘発するために必要とされる薬物濃度が低くなる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「生体適合性基質」は、1つ以上のコリン作動薬および/もしくはムスカリン作動薬を封入するために使用され得るか、または細胞集団をその上に沈着させたりすることができる、対象への移植に好適な材料を指す。生体適合性基質は、一度対象に移植されると毒性または有害な影響を引き起こさない。一実施形態では、生体適合性基質は、修復または置換を必要とする所望の構造に成形することができる表面を有するポリマーである。ポリマーはまた、修理または置換を必要とする構造の一部に成形され得る。別の実施形態では、生体適合性基質は直線的に変形して唾液腺を充填し、唾液腺全体へ分布する。生体適合性基質は、1つ以上のコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の持続放出を提供し、細胞がそれに付着し、その上で増殖することを可能にする支持フレームワークも提供し得る。いくつかの実施形態では、培養された細胞集団は、細胞-細胞間相互作用に必要な適切な間質距離を提供する、生体適合性基質上で増殖する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「分化する(differentiate)」、「分化(differentiation)」、「分化形質転換する(transdifferentiate)」、または「分化転換(transdifferentiation)」という用語は、概して、前駆(precursor)細胞または前駆(progenitor)細胞が特定の細胞型に分化するプロセスを指す。この用語は、腺房前駆細胞を発現するSOX2発現などの腺房前駆細胞が分化した腺房細胞になるプロセスを指し得る。遺伝子発現および細胞表面タンパク質発現のパターンによって、分化した細胞を同定することができる。本明細書で使用される「分化する」という用語は、元のタイプの組織または細胞とは異なる性格または機能を有することを指す。したがって、「分化」は、分化するプロセスまたは行動である。
【0046】
「調節(modulation)」または「調節する(modulate)」または「調節すること(modulating)」という用語は、タンパク質、タンパク質をコードする核酸、経路、経路内のタンパク質などの活性を上方調節または下方調節のいずれかによって変化させる能力など、応答の上方調節(すなわち、活性化または刺激)、下方調節(すなわち、阻害または抑制)、または2つの組み合わせもしくは分離を指す。
【0047】
「口腔組織細胞」という語句は、口に由来する任意の細胞集団を指す。これらには、唾液腺、顎下腺、舌下腺、舌腺、口唇腺、頬腺、口蓋腺、線条導管、排出管、歯髄組織、象牙質、歯周組織、骨、セメント質、歯肉粘膜下組織、口腔粘膜下組織、舌および味蕾組織から単離され得る1つ以上の異なる細胞型が含まれる。好ましい実施形態では、口腔組織細胞は、唾液腺に由来する。口腔組織細胞の例としては、限定されないが、筋上皮細胞、上皮細胞などが挙げられる。
【0048】
「口腔組織」という語句は、口内に構造を形成する細胞の任意の集合体を指す。ほんの一例として、口腔組織には、唾液腺、顎下腺、舌下腺、舌腺、口唇腺、頬腺、口蓋腺、線条導管、排出管、歯髄組織、象牙質、歯周組織、骨、セメント質、歯肉粘膜下組織、口腔粘膜下組織、舌および味蕾組織が含まれる。好ましい実施形態では、口腔組織は、唾液腺である。この語句はまた、口腔組織の一部、例えば、唾液腺の一部を指す。
【0049】
「口腔組織構築物」という語句は、口腔組織細胞が播種された基質、好ましくは、生体適合性基質で、細胞が付着し、成長し、増殖し、分化し、および定植した生体適合性基質を指す。この語句はまた、口腔組織の発達の初期段階を表す新形態構造も指す。
【0050】
「唾液腺構築物」という語句は、唾液腺細胞が播種された基質、好ましくは生体適合性基質で、細胞が付着し、成長し、増殖し、分化し、および定植した生体適合性基質を指す。この語句はまた、唾液腺の発達の初期段階を表す新形態構造も指す。
【0051】
「口腔障害」という語句は、口に影響を与える疾患または障害を指す。特に、唾液の産生に影響を及ぼす疾患または障害。口腔障害の例としては、唾液腺腫瘍、嚢胞性線維症、シェーグレン症候群、唾液腺炎、耳下腺炎、唾液腺管炎(sialoangitis)、唾液管炎(sialodochitis)、唾石症、唾液腺結石症(sialodocholithiasis)、粘液嚢胞、ガマ腫、分泌不全、唾液分泌過多症、流涎症、口腔乾燥症、唾液腺の良性リンパ上皮病変、唾液腺拡張(sialectasia)、唾液腺症(sialosis)、唾液管狭窄(stenosis of salivary duct)、および唾液管狭窄(stricture of salivary duct)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は、療法、防止および予防を指し、特に、予防(防止)のために、または虚弱もしくは病弊もしくは病態もしくは事象の程度もしくは発生の可能性を治癒または低減するために、患者に薬を投与すること、または医療処置を行うことを指す。本明細書に記載の薬剤を使用する治療は、唾液腺の再生および/または唾液腺における腺房細胞の置換を刺激または促進するために提供され得る。
【0053】
「個体」、「対象」、および「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、これらに限定されないが、ヒトならびに、チンパンジーおよび他の類人猿などの非ヒト霊長類を含む他の霊長類、ならびにサル種;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなどの家畜;イヌおよびネコなどの飼育哺乳動物;マウス、ラット、およびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物;鶏、七面鳥、および他の家禽鳥、アヒル、ガチョウなどの飼育鳥、野鳥および狩猟鳥類を含む鳥類を含む、脊索動物亜門の任意のメンバーを指す。場合によっては、本発明の方法は、実験動物で、獣医学的用途で、ならびにマウス、ラット、およびハムスターを含むげっ歯類、霊長類、およびトランスジェニック動物を含むがこれらに限定されない、疾患のための動物モデルの開発で使用される。
【0054】
「治療有効用量」または「治療用量」は、所望の臨床結果をもたらす(すなわち、治療有効性を達成する)ために十分な量である。治療有効用量は、1回以上の投与で投与することができる。
【0055】
コリン作動薬(例えば、アセチルコリンもしくはカルバコール)および/またはムスカリン作動薬(例えば、ヒドロゲルに封入されたセビメリン)を含む組成物の「治療有効用量または量」によって、本明細書に記載されるように投与された場合、口腔乾燥症からの回復の改善などの陽性の治療応答をもたらす量が意図される。回復の改善には、唾液腺機能の改善、ならびに唾液産生および唾液流量の増加が含まれ得る。さらに、治療有効用量または量は、腺房細胞および腺房細胞前駆体の増殖を刺激し、腺房細胞による唾液腺の再増殖をもたらし得る。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、治療される状態の重症度、使用される特定の1つまたは複数の薬物、投与様式などに応じて、対象によって異なる。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、本明細書に提供される情報に基づいて、日常的な実験を使用して、当業者によって決定され得る。治療有効用量は、1回以上の投与で投与することができる。
【0056】
「薬学的に許容される」という語句は、ヒト(または獣医学的使用の場合には非ヒト動物)に投与されるときに生理学的に許容され、典型的には急性胃蠕動(gastric upset)、めまいなどのアレルギーまたは類似の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または動物、特にヒトにおいて使用するための米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。かかる薬学的担体は、水、ならびに石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、を含む油などの滅菌液体であり得る。水または水溶液生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、特に注入可能な溶液のための担体として好ましく使用される。好適な医薬担体は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0057】
「薬学的に許容される賦形剤」とは、一般的に安全であり、無毒であり、かつ望ましい薬学的組成物を調製する際に有用である賦形剤を意味し、獣医学的使用およびヒトの薬学的使用のために許容される賦形剤を含む。かかる賦形剤は、固体、液体、半固体、または、エアロゾル組成物の場合、気体であり得る。
【0058】
「薬学的に許容される塩」としては、限定されないが、アミノ酸塩、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物、および硝酸塩などの無機酸で調製された塩、または前述のいずれかの対応する無機酸形態から調製された塩、例えば、塩酸塩などの塩、またはリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、サリチル酸塩およびステアリン酸塩などの有機酸で調製された塩、ならびにエストレート、グルセプテートおよびラクトビオネート塩が挙げられる。同様に、薬学的に許容されるカチオンを含有する塩としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(置換アンモニウムを含む)が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「造影剤」という用語は、対象の体内の標的組織、流体、または構造(例えば、唾液腺)の医用画像化のためのコントラストを改善する物質を指す。例示的な造影剤としては、超音波造影剤(例えば、六フッ化硫黄を含むSonoVueマイクロバブル、アルブミンシェルおよびオクタフルオロプロパンガスコアを含むOptisonマイクロバブル、脂質/ガラクトースシェルおよび空気コアを含むLevovistマイクロバブル、パーフルオロカーボンマイクロバブルを含むペルフレキサン脂質マイクロスフェア、ならびに外側脂質シェルに封入されたオクタフルオロプロパンを含むペルフルトレン脂質マイクロスフェア)、磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤(例えば、ガドジアミド、ガドベン酸、ガドペンテト酸、ガドテリドール、ガドフォスベセット、ガドベルセタミド、ガドキセト酸)、ならびに例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、X線撮影、または蛍光透視のための放射線造影剤(例えば、ジアトリゾ酸、メトリゾ酸、ヨーダミド、イオタラム酸、イオキシタラム酸、イオグリシン酸、アセトリゾ酸、イオカルミン酸、メチオダール、ジオドン、メトリザミド、イオへキソール、イオキサグル酸、イオパミドール、イオプロミド、イオトロラン、イオベルソール、イオペントール、イオジキサノール、イオメプロール、イオビトリドール、イオキシラン、ヨードキサム酸、イオトロクス酸、イオグリカム酸、アジピオドン、イオベンザミン酸、イオパノ酸、イオセタム酸、イポダートナトリウム、チロパノ酸、およびイポダートカルシウム)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
腺房細胞の置換を促進することによる唾液腺の再生
腺房細胞の置換を促進することによる唾液腺の再生のための組成物および方法が提供される。唾液腺の再生は、口腔乾燥症の永続的な緩和をもたらす可能性がある。自律神経系は唾液腺、筋上皮、血管および介在された導管細胞を神経支配する。唾液腺房細胞は、唾液中の液体、電解質、タンパク質のほとんどを分泌する。神経伝達物質受容体は、a-アドレナリン作動性、β-アドレナリン作動性、M3ムスカリン作動性、およびコリン作動性サブスタンスP受容体を有する腺房細胞の側底膜上に存在する。タンパク質エキソサイトーシスの主要な経路はβアドレナリン受容体の活性化を介して生じる(交感神経経路)が、体液分泌の主要な刺激はM3ムスカリン受容体の活性化を介して生じる(副交感神経経路)。
【0061】
成人唾液腺におけるSOX2+腺房前駆細胞を含む前駆細胞が、放射線誘発損傷後に組織を再増殖させる予期しない能力を備えた腺房の補充に不可欠であることが見出された。また、コリン作動性神経が恒常性維持の間、腺房細胞置換を制御する上で極めて重要な役割を果たし、この神経細胞の影響は、腺房前駆細胞にコリン作動性模倣物を添加することにより再現され得ることも見出された。したがって、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬で組織内の腺房前駆細胞を直接標的化することによって、またはコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬で移植および活性化するために腺房前駆細胞を単離および増大することによって、唾液腺の分泌部を再生して、機能的唾液腺房の回復を提供し、放射線療法後またはシェーグレン症候群に関連する口腔乾燥症などの口腔障害を治療することができる。腸、腺胃、気管、および味蕾などの所与の臓器は、SOX2を発現し、自律神経系によって強く神経支配され、癌を排除するための治療放射線によって損傷を受けるため、このような戦略は、多臓器系の修復に適用可能であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、唾液腺再生を促進することを必要とする対象における唾液腺再生を促進する方法は、唾液腺の腺前駆細胞に、コリン作動薬またはムスカリン作動薬のうちの少なくとも1つを投与して、腺房細胞の生成を促進することを含む。コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬は、ヒト唾液腺において腺房を維持することが見出された副交感神経アセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達を模倣することができる。いくつかの実施形態では、腺房細胞増殖を促進し、唾液産生を増加させるために、1つ以上のコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬を唾液腺に局所的に投与する。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つ以上のコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬が投与される腺房前駆細胞は、SOX2+腺房前駆細胞を含む。SOX2+腺房前駆細胞は、AQP57Ki67+細胞および/またはムチン(MUC)19-細胞を含んでもよい。内因性腺房前駆細胞をコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬に曝露すると、腺房前駆細胞が増殖し、分泌性腺房細胞が発達する。かかる処置を使用して、例えば、唾液流量を回復することによって、口腔障害、例えば、唾液腺障害を有する対象を治療するために、機能的分泌腺房細胞を唾液腺に再増殖させることができる。唾液腺障害の改善、ならびに唾液の産生および分泌について治療後に対象を監視することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、コリン作動薬は、アセチルコリン、ベタネコール、カルバコール、メタコリン、アレコリン、ニコチン、ガランタミン、セビメリン、レバミゾール、ムスカリン、ピロカルピン、ドネペジル、エドロホニウム、ネオスチグミン、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、リバスチグミン、タクリン、カフェイン、フペルジン、エコチオフェート、イソフルロフェート、シサプリド、ドロペリドール、ドンペリドン、メトクロプラミド、リスペリドン、およびパリペリドンからなる群から選択され得る。他の実施形態では、コリン作動薬は、アセチルコリンまたはアセチルコリン類似体のうちの少なくとも1つを含み得る。例えば、アセチルコリン類似体は、カルバコールを含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ムスカリン作動薬は、ムスカリン性アセチルコリン受容体(「ムスカリン受容体」)を活性化する作動薬を含み得る。ムスカリン受容体は、M1~M5という名前の5つのサブタイプに分けられる。ムスカリン作動薬としては、以下に限定されないが、ピロカルピン、アセクリジン、キサノメリン、タルサクリジン、サブコメリン、セビメリン、アルバメリン、アレコリン、ミラメリン、SDZ-210-086、YM-796、RS-86、CDD-0102A(5-[3-エチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン塩酸塩)、N-アリール尿素-置換3-モルホリンアレコリン、VUO255-035(N-[3-オキソ-3-[4-(4-ピリジニル)-1-ピペラジニル]プロピル]-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-スルホンアミド)、ベンジルキノロンカルボン酸(BQCA)、WAY-132983、AFB267B(NGX267)、AC-42、AC-260584、クロロピラジン(限定されないが、L-687、306、L-689-660、77-LH-28-1、およびLY593039を含む)、ならびに置換された窒素(複数可)および/または酸素(複数可)を含めて、特にエステル、硫黄、または5もしくは6個の炭素環構造を含む、1つ以上の炭素置換を有する任意のキニクリジン環、または
それらの任意の薬学的に許容される塩、エステル、類似体、プロドラッグまたはそれらの誘導体、が挙げられる。いくつかの実施形態では、セビメリンなどのM1および/またはM3ムスカリン受容体サブタイプに対して選択的なムスカリン作動薬が使用される。
【0066】
コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬は、インビボまたはエクスビボでSOX2+腺房前駆細胞を含む腺房前駆細胞に投与され得る薬学的組成物に提供され得る。薬学的組成物は、様々な剤形に製剤化され得る。投薬量は、腺房細胞の置換ならびに/または腺房前駆細胞の維持および生存を促進するための薬学的または治療有効量であり得る。
【0067】
本明細書に記載のコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の治療有効投薬量は、様々な実施形態において様々な量で存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の治療有効量は、約10~1000mg(例えば、約20mg~1,000mg、30mg~1,000mg、40mg~1,000mg、50mg~1,000mg、60mg~1,000mg、70mg~1,000mg、80mg~1,000mg、90mg~1,000mg、約10~900mg、10~800mg、10~700mg、10~600mg、10~500mg、100~1000mg、100~900mg、100~800mg、100~700mg、100~600mg、100~500mg、100~400mg、100~300mg、200~1000mg、200~900mg、200~800mg、200~700mg、200~600mg、200~500mg、200~400mg、300~1000mg、300~900mg、300~800mg、300~700mg、300~600mg、300~500mg、400mg~1,000mg、500mg~1,000mg、100mg~900mg、200mg~800mg、300mg~700mg、400mg~700mg、および500mg~600mg)の範囲の量であってよい。いくつかの実施形態では、15-PGDH阻害剤は、約10mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg以上の量で存在する。いくつかの実施形態では、15-PGDH阻害剤は、約1000mg、950mg、900mg、850mg、800mg、750mg、700mg、650mg、600mg、550mg、500mg、450mg、400mg、350mg、300mg、250mg、200mg、150mg、または100mg以下の量で存在する。
【0068】
他の実施形態では、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の治療有効投薬量は、例えば、約0.001mg/kg体重~500mg/kg体重、例えば約0.001mg/kg体重~400mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~300mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~200mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~100mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~90mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~80mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~70mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~60mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~50mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~40mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~30mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~25mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~20mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~15mg/kg体重、約0.001mg/kg体重~10mg/kg体重体重であってよい。
【0069】
さらに他の実施形態では、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の治療有効投薬量は、例えば、約0.0001mg/kg体重~0.1mg/kg体重、例えば、約0.0001mg/kg体重~0.09mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.08mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.07mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.06mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.05mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~約0.04mg/kg体重、約0.0001mg/kg~0.03mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.02mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.019mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.018mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.017mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.016mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.015mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.014mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.013mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重/kg体重~0.012mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.011mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.01mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.009mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.008mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.007mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.006mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.005mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.004mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.003mg/kg体重、約0.0001mg/kg体重~0.002mg/kg体重であってよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、治療有効用量は、0.0001mg/kg体重、0.0002mg/kg体重、0.0003mg/kg体重、0.0004mg/kg体重、0.0005mg/kg体重、0.0006mg/kg体重、0.0007mg/kg体重、0.0008mg/kg体重、0.0009mg/kg体重、0.001mg/kg体重、0.002mg/kg体重、0.003mg/kg体重、0.004mg/kg体重、0.005mg/kg体重、0.006mg/kg体重、0.007mg/kg体重、0.008mg/kg体重、0.009mg/kg体重、0.01mg/kg体重、0.02mg/kg体重、0.03mg/kg体重、0.04mg/kg体重、0.05mg/kg体重、0.06mg/kg体重、0.07mg/kg体重、0.08mg/kg体重、0.09mg/kg体重、または0.1mg/kg体重であってよい。特定の個体の有効用量は、個体のニーズに応じて、経時的に変化(例えば、増加または減少)し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の治療有効投薬量は、10pg/kg/日、50pg/kg/日、100pg/kg/日、250pg/kg/日、500pg/kg/日、1000pg/kg/日以上の投薬量であり得る。様々な実施形態では、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の量は、0.01pg/kg~10pg/kg、0.1pg/kg~5pg/kg、0.1pg/kg~1000pg/kg、0.1pg/kg~900pg/kg、0.1pg/kg~900pg/kg、0.1pg/kg~800pg/kg、0.1pg/kg~700pg/kg、0.1pg/kg~600pg/kg、0.1pg/kg~500pg/kg、または0.1pg/kg~400pg/kgの投薬量を患者に提供するのに十分である。
【0072】
様々な実施形態は、異なる投与レジメンを含み得る。いくつかの実施形態では、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬は、隔月、毎月、毎月2回、3週間毎、隔週、毎週、週2回、週3回、毎日、1日2回、または別の臨床的に望ましい投薬スケジュールで投与することができる。単一の対象に対する投与レジメンは、一定の間隔である必要はないが、対象のニーズに応じて経時的に変化し得る。
【0073】
治療される対象、投与様式、および所望の治療の種類、例えば、防止、予防、療法に応じて、組成物は、これらのパラメータと一致する方法で製剤化される。そのような技術の要約は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,latest edition,Mack Publishing Co.,Easton,Paに記載されている。
【0074】
有効成分として小有機分子ポリペプチド、類似体、または活性断片を含有する治療組成物の調製は、当該技術分野において十分に理解されている。本発明の組成物は、非経口的に、局所的に、または移植されたリザーバを介して投与され得る。そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注入可能なものとして調製され得るが、注入前の液体中の溶液または液体中の懸濁液に好適な固体形態も調製され得る。調製物を乳化することもできる。有効治療成分は、多くの場合、薬学的に許容され、有効成分に適合する賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。製剤は、概して、希釈剤、ならびに場合によっては、アジュバント、緩衝液、防腐剤などを含む。さらに、必要に応じて、組成物は、有効成分の有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助物質を含有することができる。
【0075】
組成物はまた、当業者に既知の様々な技術を使用して、対象の部位に局所投与され得る。例えば、これらは、スプレー、ローション、ゲル、またはアルコール、ポリグリコール、エステル、油、およびシリコーンなどの他のビヒクルを含み得る。本明細書に記載の組成物の投与は、頻度、投薬量、持続時間モード、および投与の経路を含む様々な投与パラメータを較正することによって、薬物動態的および薬力学的に制御され得る。投薬量、持続時間、および投与様式の変化もまた、必要な活性を生じるように操作され得る。治療組成物は、従来の方式で例えば、単位用量の注入によって、例えば静脈内に単位用量の形態で投与される。本発明の治療組成物に関して使用される場合の「単位用量」という用語は、ヒトに対する単位となる投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要な希釈剤、すなわち担体またはビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の所定の量を含有する。
【0076】
組成物は、対象を治療するために選択される薬剤、剤形と適合する様式で、かつ治療有効量で投与することができる。インビトロで所望の効果を達成することを所望する場合、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の有効量は、約0.1nM~約10M、より好ましくは約0.1nM~約5M、および最も好ましくは約0.1nM~約1Mの範囲であり得る。所望の効果は、腺房細胞の置換ならびに/または腺房前駆細胞の維持および生存を促進するための薬剤の効果を指す。投与される必要がある有効成分の正確な量は、施術者の判断に依存し、各個体に固有である。
【0077】
本明細書に記載の薬剤は、病変部位での投与のために改変または製剤化され得る。かかる改変は、例えば、特に環境において、化合物または組成物の半減期を促進または延長する製剤を含み得る。加えて、そのような改変は、腺房前駆細胞への化合物/組成物の取り込みを促進または増強する、標的タンパク質または配列を含むための化合物または組成物の製剤を含み得る。特定の実施形態では、そのような改変は、他の位置または細胞と比較して、唾液腺におけるSOX2+腺房前駆細胞への化合物の優先的な標的化をもたらす。
【0078】
組成物の滅菌注入可能形態は、水性または油性懸濁液であり得る。懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、当該技術において既知の技術に従って製剤化され得る。注入可能な滅菌調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注入可能な滅菌溶液または懸濁液でもあり得る。利用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来から利用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の刺激の少ない固定油を利用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンと同様に、注入剤の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液はまた、エマルションおよび懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の製剤化に一般的に使用される、カルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤などの長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な固体、液体、または他の剤形の製造に一般的に使用される、Tween(登録商標)、Spans、および他の乳化剤のような他の一般的に使用される界面活性剤またはバイオアベイラビリティ増強剤もまた、製剤化の目的のために使用され得る。
【0079】
非経口製剤は、単回ボーラス投与、注入またはローディングボーラス投与、その後の維持投与が可能である。これらの組成物は、1日に1回、または「必要に応じて」投与され得る。薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液を含む、任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体としては、ラクトースおよびコーンデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も典型的には添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用に水性懸濁液が必要な場合、有効成分は、乳化剤および懸濁化剤と組み合わされる。必要に応じて、特定の甘味剤、香味剤、または着色剤もまた添加してもよい。あるいは、薬学的組成物は、直腸投与のための座薬の形態で投与され得る。これらは、室温では固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸内で融解して薬物を放出する好適な非刺激性賦形剤と薬剤を混合することによって、調製することができる。そのような材料としては、カカオバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。本発明の薬学的組成物は、局所投与することもできる。局所適用は、直腸座薬製剤(上記参照)または好適な浣腸製剤で行うことができる。局所経皮パッチも使用され得る。局所適用のために、薬学的組成物は、1つ以上の担体中に懸濁または溶解させた活性成分を含有する適切な軟膏に製剤化することができる。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が挙げられる。あるいは、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体に懸濁または溶解された活性成分を含有する好適なローションまたはクリームに製剤化することができる。好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態では、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬は、内因性唾液腺腺房前駆細胞へのコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の制御放出を提供するように製剤化することができる。制御放出は、遅延放出、持続放出、勾配放出、時間放出、パターン化放出、または空間的放出のうちの少なくとも1つを含み得る。遅延放出、持続放出、勾配放出、時間放出、パターン化放出、または空間的放出は、経時的に有効成分への放出を可能にするために医学で使用される機構である。制御放出製剤の利点は、それらが同じ活性化合物の即時放出製剤よりも少ない頻度で規定された放出パターンで送達されることである。
【0081】
制御放出製剤は、投与後または薬剤の遅延放出に関連する遅延期間の後に、最大約1時間、約12時間、約24時間、約2日、約3日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間以上、指定された延長期間にわたって一定の薬剤レベルを維持するように、所定の速度で活性薬剤を放出するように設計することができる。ある特定の実施形態では、活性薬剤は、約1週間~約2週間以上の時間間隔にわたって放出される。あるいは、活性薬剤は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または最大14日間、最大20日間、最大30日間もしくはそれ以上の間放出され得る。さらに他の実施形態では、活性薬剤は、投与後、約1週間~約3週間以上の期間にわたって放出される。
【0082】
他の実施形態では、コリン作動薬またはムスカリン作動薬は、対象に投与され得る生体適合性担体、マトリックスまたは足場(scaffold)に提供される。例として、生体適合性基質は、ポリマーマクロ足場またはマイクロ足場と、ポリマーマクロ足場またはマイクロ足場上にまたはその中に組み込まれる少なくとも1つの担体材料と、を含むことができる。少なくとも1つの担体材料、マトリックス、または足場は、少なくとも1つのコリン作動薬またはムスカリン作動薬を内因性唾液腺房前駆細胞に運び、かつ差次的に、および/または制御可能に放出することができる材料を含み得る。
【0083】
担体、マトリックス、または足場は、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬が組み込まれることを可能にし、増大した腺房前駆細胞(例えば、SOX2+細胞)の添加にまたは細胞の存在下で適合性であリ得る、任意の材料のものであってよい。担体、マトリックス、または足場は、主に非免疫原性であり、生分解性であり得る。生分解性材料の例としては、アルギネート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ヒアルロン酸、カットグット縫合材料、ゼラチン、セルロース、ニトロセルロース、コラーゲン、アルブミン、フィブリン、コットン、または他の天然に存在する生分解性材料が挙げられるが、これらに限定されない。投与または移植の前に、例えば、エチレンオキシドで処理することによって、またはガンマ照射もしくは電子ビームで照射することによって、マトリックスまたは足場材料を滅菌することが好ましい場合がある。加えて、以下に限定されないが、ナイロン(ポリアミド)、ダクロン(ポリエステル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル化合物(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))、サーマノックス(TPX)、ヒドロキシ酸のポリマー、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、およびポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、ならびに様々なポリヒドロキシアルカノエート、ならびにそれらの組み合わせを含む、他の多くの材料を使用して、足場またはフレームワーク構造を形成することができる。
【0084】
好適なマトリックスとしては、ポリマーメッシュまたはスポンジ、およびポリマーヒドロゲルが挙げられる。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然または合成)が共有結合、イオン結合、または水素結合を介して架橋され、水分子を捕捉してゲルを形成する三次元オープンラティス(open-lattice)構造を作成したときに形成される物質として定義される。一般に、これらのポリマーは、荷電側基を有する水、緩衝塩溶液、もしくは水性アルコール溶液、またはそれらの一価イオン塩などの水溶液中に少なくとも部分的に可溶性である。
【0085】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、1年未満、より好ましくは6ヶ月未満、最も好ましくは2~10週間にわたって生分解性である。ポリマー組成、ならびに製造方法を、分解速度を決定するために使用することができる。例えば、増加量のポリ乳酸をポリグリコール酸と混合すると、分解時間が短縮される。使用することができるポリグリコール酸のメッシュは、例えば、外科用品供給会社(例えば、Ethicon、N.J.)から商業的に入手することができる。
【0086】
例えば、ムスカリン作動薬は、アルギネートヒドロゲルに封入され得る。いくつかの実施形態では、封入されるムスカリン作動薬は、M1および/またはM3ムスカリン受容体サブタイプ(例えば、セビメリン)に対して選択的である。他の実施形態では、ムスカリン作動薬は、非選択的ムスカリン作動薬(例えば、ピロカルピン)である。ヒドロゲル中のアルギネートは、二価カチオンとイオン的に架橋され得る(例えば、セビメリンを封入する生分解性のカルシウム架橋アルギネートヒドロゲルの説明については、実施例2を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル中のアルギネートの濃度は、約2~約10重量パーセント(重量%)の範囲であり、この範囲内の任意の重量%、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10重量%を含む。いくつかの実施形態では、アルギネートは、部分酸化されている。例えば、アルギネートの約2%~約10%が、酸化され得、この範囲の任意の割合、例えば2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%を含む。一実施形態では、ヒドロゲル中のアルギネートは、約2%酸化され、5重量%の濃度である。かかるアルギネートヒドロゲルは、対象への投与後少なくとも7日間、ムスカリン作動薬の送達を維持することができる(例えば、実施例2を参照されたい)。
【0087】
封入されたコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬を含む組成物は、唾液腺への局所送達に適している。医師は、例えば、触診または医用画像化(例えば、超音波、X線撮影、またはMRI)によって注入される唾液腺の位置を特定し得る。いくつかの実施形態では、造影剤は、封入されたコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬を含む組成物中に含まれ、投与後の医用画像化によって唾液腺への組成物の局在化の確認を可能にする。いくつかの実施形態では、造影剤は、マイクロバブル(例えば、超音波で使用するため)または放射線不透過性造影剤(例えば、放射線撮影で使用するため)である。造影剤は、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬と同じ組成物中に含有され得るか、または異なる組成物中に含有され得、コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の投与の前または後に使用され得る。
【0088】
ある特定の実施形態では、組成物は、唾液腺にまたは唾液腺に隣接して注入される。主題の方法によって治療され得る唾液腺には、耳下腺、顎下腺、および舌下腺、ならびに漿液性、粘液性、または漿粘液性唾液腺を含む少数の唾液腺が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態では、治療される対象は、唾液の産生に影響を及ぼす障害などの口腔障害を有する。口腔障害の例としては、唾液腺腫瘍、嚢胞性線維症、シェーグレン症候群、唾液腺炎、耳下腺炎、唾液腺管炎(sialoangitis)、唾液管炎(sialodochitis)、唾石症、唾液腺結石症(sialodocholithiasis)、粘液嚢胞、ガマ腫、分泌不全、唾液分泌過多症、流涎症、口腔乾燥症、唾液腺の良性リンパ上皮病変、唾液腺拡張(sialectasia)、唾液腺症(sialosis)、唾液管狭窄(stenosis of salivary duct)、および唾液管狭窄(stricture of salivary duct)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、対象は、口腔乾燥症を引き起こすのに有効な放射線で以前に治療されていてもよい。本明細書に記載される方法は、唾液の産生に影響を与えるかかる口腔障害(例えば、口腔乾燥症)についてヒト対象を治療するために使用することができる。本明細書に記載の方法はまた、例えば、イヌおよびネコなどのペット、ならびにヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマおよびウシなどの家畜を含むがこれらに限定されない飼育動物における口腔乾燥症の治療のための獣医用途での使用も見出すであろう。
【0090】
キット
また、腺房細胞生成を促進するため、コリン作動薬またはムスカリン作動薬のうちの少なくとも1つで、口腔乾燥症の対象を治療するためのキットも提供される。コリン作動薬および/またはムスカリン作動薬は、別個の組成物または同じ組成物中に含有されてもよい。キットは、本明細書に記載の治療方法で使用するのに好適なコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬を含む製剤の単位用量、例えば、注入可能な用量(複数可)を含み得る。かかるキットでは、単位用量を含有する容器に加えて、口腔乾燥症のための治療の使用およびそれに伴う利益を説明する情報の添付文書が提供される。キットには、例えば、キットに含まれるコリン作動薬および/またはムスカリン作動薬の投与レジメンが含まれ得る。
【0091】
唾液腺への局所投与に好適な製剤は、特に興味深いものであり、そのような実施形態では、キットは、そのような投与を達成するための1つ以上のシリンジまたは他のデバイスをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットは、組成物(例えば、凍結保存され得るアルギネートヒドロゲルに封入されたセビメリンなどのムスカリン作動薬)で予め充填された第1のシリンジまたはデバイスを含む。キットは、ルアーロックを介して第1のシリンジに接続することができる、塩化カルシウムで充填された第2のシリンジをさらに含み得る。キットは、例えば、第1のシリンジの内容物(例えば、アルギネートヒドロゲルに封入されたセビメリン)を解凍し、唾液腺に注入する前に、第2のシリンジの内容物(例えば、セビメリンを封入するカルシウム架橋アルギネートヒドロゲルを生成するCaCl2)と混合することによって使用され得る。医師は、例えば、触診または超音波によって注入される唾液腺の位置を特定し得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、キットは、投与後の医用画像化によって、ムスカリン作動薬(例えば、アルギネートヒドロゲルに封入されたセビメリン)を含む組成物の唾液腺への局在化の確認を可能にする造影剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、造影剤は、マイクロバブル(例えば、超音波で使用するため)または放射線不透過性造影剤(例えば、X線撮影で使用するため)である。造影剤は、ムスカリン作動薬と同じ組成物中に、または異なる組成物中に含有されてもよく、ムスカリン作動薬の投与の前または後に添加されてもよい。
【0093】
上記の構成要素に加えて、主題のキットは、(特定の実施形態では)主題の方法を実施するための説明書をさらに含み得る。これらの説明書は、様々な形態で主題のキット内に存在し得、そのうちの1つ以上が、キット内に存在し得る。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、例えば、情報が印刷される1枚または複数枚の紙などの好適な媒体または基板上、キットのパッケージ中、添付文書などの中の印刷情報としてである。これらの説明書のさらに別の形態は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、コンパクトディスク(CD)、フラッシュドライブなどである。存在し得る、これらの説明書のさらに別の形態は、隔たったサイトで情報にアクセスするために、インターネットを介して使用され得るウェブサイトアドレスである。
【0094】
本明細書に記載される他の実施形態は、本明細書に開示される本発明の仕様および実践の考慮から、当業者には明らかであろう。理由の如何を問わず、本明細書に記載されているすべての米国特許および他の参照文献は、参照により具体的に組み込まれる。本明細書および実施例は、以下の特許請求の範囲によって示される本発明の真の範囲および精神をもって、単なる例示とみなされるべきである。
【実施例】
【0095】
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製および使用方法の完全な開示および説明を提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われるすべてまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0096】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
本発明は、本発明の実施のための好ましいモードを含むように、本発明者によって見出されるか、または提供される特定の実施形態に関して説明されている。当業者は、本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態で多数の修正および変更を行うことができることを理解されたい。例えば、コドン冗長性によって、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎となるDNA配列の変更を行うことができる。生物学的機能的等価性を考慮することによって、種類または量において生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造の変更を行うことができる。かかる修正はすべて、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0098】
実施例1
前駆細胞依存性機構を介したコリン作動性活性化に応答した放射線照射後の唾液腺房の再生
序論
治療用放射線は、癌患者のための救命治療であり続け、頭頸部の悪性腫瘍を含む様々な悪性腫瘍に利用される。実際、頭頸部癌に罹患している患者の大多数は、化学療法および手術に加えて放射線療法を受けるであろう(米国では、年間60,000人の新規患者;Siegel et al.,2015)。この併用治療は、腫瘍を排除する上で非常に有効であるが、重度の副作用は、放射線照射の範囲にある健康な組織の損傷および/または破壊である。かかる臓器としては、低線量の放射線照射後であっても組織機能障害を示す、唾液腺が挙げられる(Grundmann et al.,2009)。日常的に患者に与えられる高線量(60Gy)では、標的外放射線照射が唾液を合成する腺房細胞を破壊し(Sullivan et al.,2005、Redman,2008)、生涯にわたるドライマウスおよび併存疾患をもたらす(例えば、虫歯、口腔感染症、創傷治癒不良(Brown et al.,1975、Dreizen et al.,1977、Dusek et al.,1996)。3つの主要唾液腺(耳下腺)のうちの1つを温存するための強度変調放射線では成功しているが、腫瘍部位への腺の近接は、しばしばこの技法の適用を妨げ、80%の頭頸部癌患者がドライマウス症候群を有する(Lee&Le,2008)。
【0099】
肺、心臓、および膀胱を含む放射線照射によって損傷されたすべての他の臓器と同様に(Emami et al.,1991)、組織機能を改善または回復するために利用可能な治療法は、あるとしてもごくわずかである。放射線誘発性唾液機能障害および変性を患う癌生存者のための現在の治療選択肢は、症状の短期的な緩和に焦点を当てているが、長期的な回復療法は利用できない。内因性幹細胞の再活性化または非照射幹細胞の移植などの再生戦略が提案されている(Lombaert et al.,2008、Ogawa et al.,2013、Pringle et al.,2016)。しかしながら、これらの適用は、恒常的または傷害条件下で腺房に寄与する成人唾液前駆細胞の同一性に関する知識の乏しさによって制限される。腺房細胞は、定義された前駆体からではなく自己複製によって誘導されることが最近提案されたが(Aure et al.,2015)、前駆体様活性のためのこれらの細胞の亜集団の分析は実行されなかった。自己複製または前駆細胞増殖のいずれかを介して、腺房細胞が遺伝毒性損傷後に細胞を再増殖できるかどうかもまた決定されていない。多数の研究は、照射された唾液腺を変性のモデルとして利用している(Zeilstra et al.,2000、Coppes et al.,2001,2002)が、放射線照射によって損傷された成人の唾液細胞の再生能力はインビボでは調査されていない。
【0100】
唾液腺の恒常性維持の間に腺房細胞がどのように置き換えられるかもよく分かっていない。過去150年間にわたる成人器官の研究は、末梢神経が器官および組織の完全性の維持に不可欠であることを明らかに示している(Erb,1868)。骨格筋は、運動神経の刺激の不在下で萎縮し(Fu&Gordon,1995、Batt&Bain,2013)、茸状の味蕾(Von Vintschgau&Honigschmied,1877)、前立腺(Wang et al.,1991、Lujan et al.,1998)、ならびに唾液腺などの上皮器官は感覚神経および/または自律神経を除去後に退縮する(Schneyer&Hall,1967、Mandour et al.,1977、Kang et al.,2010)。これらの器官について、神経が組織の恒常性をどのように制御するかは不明であるが、皮膚における研究では、ソニックヘッジホッグ分泌を通じて、感覚神経が、成人上皮幹細胞の自己再生を促進し、その結果、皮膚における下流細胞系統、すなわちドーム細胞の維持を促進することを示す(Peterson et al.,2015、Xiao et al.,2015)。加えて、サンショウウオ(Wallace,1972)および胎生唾液腺(Knox et al.,2013)における研究は、末梢神経が、多能性幹細胞の活性化を介して組織を再生する能力を有することを示唆しているが、成体哺乳動物系におけるその証拠は欠如している。
【0101】
マウス遺伝学、エクスビボ培養、およびヒト組織外植片の組み合わせを使用して、唾液腺房が放射線照射後に再生可能であり、前駆細胞依存性機構を介したコリン作動性活性化に応答して再生することを予期せず発見した。我々は、SOX2が恒常性維持の間および放射線誘発傷害後に腺房細胞を置き換えることができる腺房系統の唯一の前駆体であることを示し、唾液前駆体が少なくとも短期的に遺伝毒性ショックに耐えることができることを示している。重要なことに、コリン作動性模倣物による、健康な組織および照射された組織の処理は、腺房細胞の補充を刺激した。したがって、我々のデータは、遺伝毒性ショック下であっても組織の広範な再生能力を明らかにし、SOX2+細胞の標的化が放射線療法によって損傷された組織を再生するための治療アプローチであり得ることを示唆している。
【0102】
結果
SOX2は、唾液腺恒常性維持の間に腺房細胞を生じさせるが、導管細胞を生じさせない前駆細胞をマークする
SOX2は、胎児マウスの下顎および舌下唾液腺において前駆細胞マーカーとして確立されているが、成体組織中のSOX2
+細胞が腺房および導管細胞も産生するかどうかは不明である(Arnold et al.,2011、Emmerson et al.,2017)。さらに、これらの細胞が成人ヒト唾液腺にも存在するかどうかは、分かっていない。SOX2は、主要な成人ヒト唾液腺[
図1A、顎下腺(SMG)、舌下腺(SLG)、耳下腺(PG)]の3つすべてにおいて、腺房細胞のサブセットによって発現することが見出された。マウスでは、SOX2タンパク質は、成体マウスSLG(SMGおよびPGには存在しない、
図1Bおよび10A)に限定され、未分化アクアポリン(AQP)5陽性、ムチン(MUC)19-陰性腺房細胞(すべてのAQP5
+腺房細胞の21±4%、
図1Cおよび1D)によって発現されていた。前駆細胞としてのそれらの潜在的な役割と一致して、約6%のSOX2
+AQP5
+細胞がKi67を共発現し(
図1Eおよび10B)、一方で19±4%は細胞周期にあった(サイクリンD1
+、
図10C)。SOX2
+細胞が腺房および導管系統に寄与したかどうかを決定するために、Rosa26
mTmGレポーター株と交差させた、Sox2
CreERT2マウス(Arnold et al.,2011)を使用して遺伝子系統追跡を実行した。Rosa26
mTmGマウスは、Creラインと交差すると、Cre媒介性切除前に膜標的タンデムダイマートマト(mT)、および切除後に膜標的緑色蛍光タンパク質(mG)を発現する二重蛍光レポーターである(Muzumdar et al.,2007、
図10D)。このように、系統追跡された細胞は、mGを発現する。
図1Fに示されるように、SOX2
+細胞は、14日または30日後に自己再生し、AQP5およびMUC19によってマークされる分化腺房細胞を産生するが、KRT8
+導管細胞は産生しない(
図1FおよびEV1E)。したがって、我々の系統追跡結果は、SOX2
+細胞が、表皮、腸、および切歯において観察されたものと同様に、分化した子孫を生じる系統限定された前駆細胞であることを示す(Owens&Watt,2003、Barker,2014、Seidel et al.,2017)。
【0103】
SLGとSMGとの間の介在された導管に主に存在するKIT
+細胞(Andreadis et al.,2006、Nelson et al.,2013)が、成体組織の腺房細胞を生じさせることが以前に提案されていることから(Lombaert et al.,2008、Nanduri et al.,2013,2014、Pringle et al.,2016)、6週齢でRosa26
mTmGレポーターと交差したKit
CreERT2プロモーターを使用して、これらの細胞を遺伝学的に追跡した。しかしながら、KIT
+細胞由来の腺房細胞(すなわち、AQP5およびmGについての二重陽性)は、誘導の14日後または6ヶ月後にSLGまたはSMGのいずれにおいても明らかには見られなかった(
図10F)。代わりに、KIT
+細胞は、SLGの介在導管(介在導管マーカーKRT8の共染色によって観察され得る)、ならびにSMG中の介在導管およびより大きな導管にのみに寄与した。したがって、これらのデータは、KIT
+細胞が、腺房系統の導管およびSOX2
+細胞の前駆体であることを示す。
【0104】
SOX2およびSOX2
+細胞は、分泌性腺房の産生に不可欠である
我々の系統追跡分析は、SOX2
+細胞が腺房細胞を生じさせるが、導管細胞は生じさせないことを確認した。しかしながら、腺房系統に対する代替的な前駆細胞またはTA細胞(transit-amplifying cell)を示唆するKi67
+SOX2
-腺房細胞(約6%SOX2
+Ki67
+および16.5%SOX2
-Ki67
+細胞、
図10B)の存在も観察したので、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/flマウス(
図2Aおよび2C)を使用してSOX2
+細胞中のSox2を遺伝子的に取り除くか、または誘導性Sox2プロモーター(Sox2
CreERT2;Rosa26
DTA、
図2Bおよび2D)の制御下で発現されるジフテリア毒素(DTA)を使用してSOX2
+細胞を除去することによって、SLG維持および修復におけるSOX2およびSOX2
+細胞の要件を調査した。後者のアッセイでは、SOX2
+細胞は、DTAの細胞内産生に応答して細胞死を起こす。SOX2
+細胞からのSox2の除去またはDTAを介したSOX2
+細胞の排除は、SOX2
+およびAQP5
+細胞を著しく枯渇させたがKRT8
+導管細胞ではそうならず、機能的な腺房を維持するためにSox2およびSOX2
+細胞が必要であることを示している(
図2A~2D、Sox2またはSOX2
+細胞の除去の効率を
図11Aに示す)。Sox2の不在下で、サイクリンD1(CCND1)
+腺房細胞の減少によって示されるように、腺房細胞が細胞周期を終了したが、導管細胞では終了しなかった(
図11D;矢先は、CCND1
+細胞を示し、点線の白線は、導管細胞を強調する)。さらに、SOX2
+細胞の除去では、AQP5
+細胞を完全に欠く導管ネットワークの広範な領域によって示されるように、8日までに残存する腺房が少なかった(
図2Bおよび2D、ならびに11A)(導管は、
図2Bにおいて破線またはKRT8によってマークされる)。組織の変性が、腺房細胞置換の喪失ではなく、組織の不安定化にのみ起因する可能性を除外するために、短期除去後にSLGを検査した。
図8に示されるように、4日目または5日目(タモキシフェン処理の3日または4日)に、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/flおよびSox2
CreERT2;Rosa26
DTASLGの両方の腺にSOX2
+細胞はほとんど残っておらず(
図8Aおよび8B)、Sox2転写産物は実質的に減少した(
図8B)。しかしながら、腺房は、外観は無秩序で萎縮しているにもかかわらず、存在した。さらに、SOX2
+細胞(またはSox2転写産物)の増加は観察されず、SOX2が組織損傷に応答して腺房細胞で異所的に発現しないことを示した。また、組織組成の変化が組織機能の必須調節因子である神経支配の低下に起因するかどうかも決定した。しかしながら、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/flSLGでは、野生型対照と同様の神経支配を測定し、Sox2
CreERT2;Rosa26
DTASLGでは、軸索束の有意な増加を測定した(
図11Bおよび11C)。後者の発見は、細胞の除去が神経支配を促進する因子の放出を引き起こすが、神経支配の増加があっても、SOX2+細胞なしでは再生は不可能であることを示唆する。要約すると、これらの結果は、少なくとも試験した条件下で、SOX2
+細胞がSLG中の唯一の腺房前駆体であり、先に示唆されるように、完全に分化した腺房細胞の自己複製から腺房が生じないことを示す(Aure et al.,2015)。表皮、腸、および切歯における研究(Owens&Watt,2003、Barker,2014、Seidel et al.,2017)と同様に、我々のデータはまた、腺房コンパートメントの急速な再増殖に関与し得るSOX2
+細胞由来のTA(transit-amplifying)集団の存在を示唆している。
【0105】
副交感神経は、SOX2
+前駆体を保存し、SOX2を介した腺房細胞の置換を促進する
成体マウスおよびヒト唾液腺は、副交感神経活性を除去した後、萎縮する。しかしながら、腺房細胞の置換および前駆細胞に対する除神経の影響は調査されていない(Garrett et al.,1999、Raz et al.,2013)。この目的のために、我々は、鼓索を切断することによって、2対のマウスSLGのうちの1つを除神経した(
図3A、反対側の腺を内部対照として使用した)。7日後、ニューロン遺伝子Tubb3、Vip、およびVacht(
図3B、赤色バー)、ならびにGFRa2
+またはTUBB3
+神経(
図3Cおよび12C)の転写レベルが著しく低減し、除神経の成功を示した。コリン作動性ムスカリン受容体ChrmlおよびChrm3転写産物の同時損失は観察されなかった(
図3B、赤色バー)が、副交感神経支配の不在下で、代償機構がChrmlおよびChrm3転写を維持し得る可能性がある。SLGは、主に副交感神経分岐によって提供され、比較すると交感神経支配はほとんどないが(Emmelin et al.,1965)、鼓索切断後の交感神経支配の減少を観察した(
図12A)。したがって、交感神経のレベルは軽微であるが、除神経の効果の一部が交感神経入力の喪失に起因する可能性があることを排除することはできない。
【0106】
放射線療法が組織構造に及ぼす影響と同様に(Sullivan et al.,2005;Redman,2008)、成人腺房細胞、ならびにSOX2
+前駆体は、導管よりも神経支配の喪失に対して感受性が高かった。除神経は、腺房細胞サイズの減少をもたらし(以前に観察されたように、Patterson et al.,1975、
図12B)、分化した腺房細胞マーカーMuc19のAQP5タンパク質および転写レベルを低下させた(
図3Bおよび3D)。興味深いことに、MIST1の転写およびタンパク質レベルは、除神経後に変化しなかった(
図3B、3Eおよび3F)が、これは、腺房細胞の機能マーカーが神経支配の不在下で破壊される一方で、腺房細胞同一性が悪影響を受けないことを示唆している。驚くべきことに、SOX2
+細胞はSox2の発現を失い(Sox2
eGFPマウスを使用して実証された)、Sox2タンパク質および転写産物のレベルが大幅に低減し(
図3B、3Cおよび3F、ならびに12C)、SOX2の維持が神経支配を必要とすることを示している。SOX2
+細胞が除神経後も組織を再増殖させる能力が残っているかどうかを決定するために、内因性Sox2プロモーター(Sox2
CreERT2;Rosa26
mTmG)によって駆動されるCreが除神経後3日後に活性化され、14日目まで追跡する遺伝的系統追跡を実行した。
図3Gおよび3Hに示されるように、SOX2
+前駆体による腺房細胞の置換は、切断の14日後に有意に低減した(-50%)。同様に、神経切断前(切断1日前のタモキシフェン)に組み換えが誘導されたSLGでは、SOX2
+前駆体による腺房細胞の置換は、14日後に有意に枯渇した(-50%)(
図12Eおよび12F)。腺房細胞の置換の減少は、Ccndlの減少を測定したため、細胞死ではなく細胞増殖の減少に起因する可能性があるが、細胞死のマーカー[
図12G中の活性化カスパーゼ-3(CASP3
+)細胞、または
図12H)でのBax、Pmaipl(NOXA)およびBbc3(PUMA)]は、観察されなかったか、または変化しないままであった。細胞死の不在はまた、以前SOX2に対して陽性であった細胞が引き続き存在するが、コリン作動性神経支配がSOX2発現を維持するために不可欠であることも示唆する。
【0107】
除神経がSLG中の腺房系統に優先的に影響を与えることを確認するために、他の上皮細胞系統も分析した。除神経された腺内のKRT8
+導管は、導管遺伝子Krt7、Krt8、およびKrt19の転写レベルと同様に、神経支配された対照に類似していた(
図3B、3D、および3F)。さらに、副交感神経(Knox et al.,2010)によって維持されるSMG/SLGを発生させる前駆体であるKRT5
+細胞(Knox et al.,2010、Lombaert et al.,2013)は、除神経の影響を受けなかった(
図3Fおよび12、転写Krt5発現については、
図3Bを参照されたい)。これらの発見に基づいて、SOX2およびSOX2
+細胞の調節を通じて機能的腺房を優先的に維持および置換することによって、成人SLG組織の恒常性維持に副交感神経支配が必要であると結論付けている。
【0108】
神経で唾液腺を再補給することで腺房およびSOX2を救出できるかどうかを決定するために、除神経30日後にマウス唾液腺を検査した。末梢神経系の可塑性により、切断から30日後にTUBB3
+神経が再出現すること(
図9A)、ならびにニューロン遺伝子Tubb3、Vip、およびVachtが再発現することよって示されるように、マウス唾液腺は経時的に神経再支配されるようになる(
図3B、青色バー、Yawo,1987)。驚くべきことに、我々は、元の傷害に応答して、過剰な神経支配(hyperinnervation)を示唆する、30日目のこれらのニューロン遺伝子の発現の上昇を見出した(
図3B)。注目すべきことに、神経再支配されると、Sox2およびAqp5転写産物ならびにSOX2タンパク質のレベル、ならびにSOX2
+およびAQP5
+細胞の数、ならびに腺房細胞サイズは、対照レベル以上に戻った(
図3Bおよび9A~9C)。
【0109】
SLGのSOX2
+細胞が副交感神経によって産生されるアセチルコリンに直接応答することができることを確実にするために、SOX2
+細胞によるアセチルコリン/ムスカリン受容体の発現、ならびにそれらのインビボでのムスカリン作動薬に応答する能力を分析した。SOX2
+細胞は、CHRM1およびCHRM3の両方を発現し(それぞれ95%および99%、
図4Aおよび4B)、ムスカリン作動薬ピロカルピンによる野生型マウスの短期処理(I.P.送達し、18時間で屠殺した)により、増殖SOX2
+細胞の割合が増加した(SOX2
+Ki67
+細胞、
図4Cおよび4D)。しかしながら、SOX2
+細胞の割合は、注入後18時間までに有意に変化せず(
図4D)、ムスカリン活性化がSOX2の異所性発現を誘導しないことを示している。したがって、これらのデータは、アセチルコリンムスカリンシグナル伝達を介した副交感神経がSOX2
+前駆体および腺房を維持し、腺房細胞の補充を促進するという仮説を裏付ける。
【0110】
マウスの唾液腺は、放射線誘発損傷後にSOX2を介して再生する
マウス唾液腺(主にSMG)は、典型的な分析が退行的応答に限定される、腺機能および構造に対する電離放射線(IR)の影響を調査するために広く使用されてきた。C57BL/6バックグラウンドでは、10Gyの単回線量後に腺房細胞の喪失および唾液流量の減少を受けることが報告されている(Zeilstra et al.,2000、Coppes et al.,2001,2002)。しかしながら、組織の再生能力、およびIR後にそれが神経支配されたままであるかどうかは不明である。SOX2を介した唾液腺の再生に対する放射線の影響を試験するために、頭頚部へのガンマ線の単回照射後のマウスSLGにおける神経支配、SOX2
+細胞、およびSOX2を介した腺房細胞の補充を分析した。唾液腺における以前の研究と同様に(Avila et al.,2009)、10Gy線量が、IR後の初日に、DNA損傷および細胞周期停止を誘導すると共に、プロアポトーシス遺伝子Baxおよび細胞周期阻害剤Cdknla(p21)の実質的な増加(
図13A)ならびに細胞増殖マーカーMki67の転写レベルの低下(
図13A)によって示されるようにSLG中の細胞増殖を低下させることを見出した。次に、TUBB3
+神経について免疫標識を行い、Tubb3および副交感神経由来神経伝達物質Vipについて半定量的PCR(qPCR)を実行することによって、IR SLGにおける神経支配および神経機能の変化を測定した。
図5Aおよび5Bに示されるように、IR SLG中のTUBB3
+神経は、放射線照射の1日後および3日後に非IR対照と比較して変化しなかった。しかしながら、Tubb3およびVipの転写レベルは、IR後1日目および3日目に有意に低減し、神経機能が初期段階で低減することを示唆した(
図13B)。同様に、Sox2、Misti、およびAqp5の転写産物は、IRの直後に低減したが、1R後7日目までに対照レベルに戻った(
図13B)。SOX2
+細胞の数は、IR後1日目に有意に低減し(
図5C)、一方、CCND1
+SOX2
+細胞の数は、IR後3日目および7日目に有意に増加した(
図5C)。IR誘発損傷後にSOX2を介した細胞の置換が影響を受けたかどうかを決定するために、IRの14日後のSox2
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスにおけるSOX2を介した補充の程度を分析した。驚くべきことに、非IR対照と同様にIR SLGでは、腺房細胞がSOX2
+細胞(GFP
+細胞)に置き換わり、SOX2
+GFP
+およびSOX2陰性の両方の子孫が産生することが見出され(
図5D、白い矢じりはSOX2陰性子孫を示す)、これはもはやSOX2
+ではなく、SOX2
+細胞に由来するTA細胞(transit-amplifying cell)の存在を示唆する(すなわち、系統追跡された)。さらに、IR SLG中のSOX2
+細胞の数は、14日目までに対照と同様であった(
図5D)。したがって、神経シグナル伝達、SOX2、および腺房細胞マーカーの初期喪失にもかかわらず、腺房コンパートメントは、放射線誘発損傷後にSOX2
+細胞によって補充されることができる。
【0111】
次に、Sox2の非存在下でIR傷害後にSLGが再生できるかどうかを試験した。
図5Eに示されるように、単回10Gy線量で照射されたSox2
CreERT2;Sox2
fl/flマウスは、機能的AQP5+腺房で組織を再増殖することができなかった。実際、Sox2の非存在下では、IRの14日後の野生型マウスと比較して、AQP5
+腺房細胞の喪失および組織アーキテクチャの破壊が観察された(
図5E)。この結果はさらに、Sox2が、放射線誘発性傷害後のSLG再生に不可欠であることを確認する。
【0112】
SOX2+細胞は、コリン作動性模倣物に応答して照射された唾液腺を補充することができる
我々のデータが示すように、コリン作動性の手がかりは、SLG中の腺房系統を補充することを示唆しているため、エクスビボ系統追跡モデルを使用して、健康で照射されたSLG中のムスカリン活性化に応答してSOX2
+細胞が腺房を補充できるかどうかを決定した。
図6Aおよび6Bに示されるように、アセチルコリン模倣カルバコール(CCh)で48時間培養した健康なSLG組織においてGFP
+クローンの増加があった。GFP
+クローンのこの増加は、CCh処理による細胞増殖(Ki67
+細胞)の増加と関連していた(
図13E)。我々のIRモデルでは、動物を単回線量のIRに供する24時間前にSox2
CreERT2;Rosa26
mTmGマウスで組み換えを誘導した(
図6A)。この時点は、マウスにおけるCre系統のタモキシフェン誘発性組み換えについて12~24時間のラグタイムが以前に報告されていることから選択された(Nakamura et al.,2006)。したがって、単一のSOX2
+細胞は、注入後24時間までに標識される(
図6B、0時間パネルを参照されたい)。SLGを放射線曝露から1時間以内に収集し、CCh有りまたは無しでエクスビボで48時間培養した。
図6Bに示され、
図6Cで定量化されるように、GFP
+クローンは、非IR対照と比較して、IR SLGにおいてより豊富であり、IR活性化SOX2
+細胞が組織を再増殖することを示唆した。これは、ムスカリン受容体拮抗薬4-DAMPで培養したIR外植片が、非IRの培養唾液腺と同様の腺房細胞補充を示したため、残存神経からのコリン作動性シグナル伝達に起因する可能性があった(
図6Bおよび6C)。重要なことに、CChによるIR外植片の処理は、IR単独と比較してGFP
+細胞を増加させた(
図6Bおよび6C、ならびに13Cおよび13D)。これらのデータに基づいて、SOX2
+細胞が、ムスカリン活性化に応答してIR SLGを再増殖することができると結論付けている。
【0113】
アセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達は、ヒトSGにおけるSOX2および腺房系統を維持する
ヒトの場合、IRは、非IR対照と比較して、SGにおける副交感神経性(および交感神経性)神経支配(Knox et al.,2013、
図14A、GFRA2)、ならびに腺房系統のマーカー(AQP3、MIST1、AMY1)を不可逆的に低減するが、導管系統(EGFR、KRT19)は低減しない(
図7A、IRは、手術の約2年前に送達されており、n=7、IRおよび11、非IR)。免疫蛍光によって、ヒト組織において系統マーカーを確認した(利用可能性のためにSMGを使用した)(
図14B)。さらに、チロシンヒドロキシラーゼ(TH、交感神経マーカー)ではなく、SOX2、GFRA2、CHRM1、およびCHRM3の転写レベルはまた、IR後に有意に下方調節されたか、または下方調節に向かう傾向にあり(
図7Aおよび14A)、副交感神経機能、ならびに細胞がアセチルコリンに応答する能力が枯渇したことを示す。したがって、IR後のヒト唾液腺の再生能力の喪失は、SOX2
+前駆細胞の副交感神経支配の低下に起因し、アセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達がSOX2発現を維持し、腺房系統を促進するのに十分であると仮定した。この仮説を検証するために、我々は新規のヒト外植片-マウス神経共培養システムを確立した。このモデルでは、非照射のヒトSMGを<1mmの小片に解剖し、胚の13日目のマウス顎下腺副交感神経節(間葉を含む)または間葉のみ(対照、神経なし)と並べて配置する。次いで、組織を無血清培地の上に浮遊するフィルター上で7日間共培養する。神経は、組織内およびその周囲に移動し(
図7B)、間葉単独と比較して、神経と共培養した外植片中の高レベルのCDH1(E-カドヘリン、遺伝子、およびタンパク質発現)によって示されるように、組織構造を活発に維持した(
図7Cおよび7D)。我々は、どの因子がこの神経移行を誘発したかを確認する試みで、神経誘引物質(neuroattractant)ニュールツリン(NRTN)および神経成長因子(NGF)について外植片を分析した(Knox et al.,2013)。しかしながら、間葉単独と比較して、神経節の存在下での発現の増加は発見されず(
図7D)、他の神経誘引物質が合成されていたこと、神経が存在するか否かにかかわらず上皮がこれらの神経誘引物質を産生していること(すなわち、間葉は上皮恒常性を維持するのに十分に支持されている)、またはこの現象が培養の早い段階(すなわち、神経が上皮を包囲し始めたばかりの早い段階)に発生し、この後の時点(7日目)までにいかなる相違も解消されていることを示唆している。驚くべきことに、神経と共に培養した腺外植片は、間葉のみの対照と比較して、SOX2(約1.8倍~2倍)ならびに腺房マーカーMIST1およびCD44、ムスカリン受容体CHRM3(腺房細胞によっても発現する、Giraldo et al.,1988)の転写レベルも増加したが、導管遺伝子KRT19、KIT、およびEGFRの転写レベルは一貫して低かった(
図7D、間葉のみに正規化されたデータ、n=2の別個体)。さらに、Ki67
+細胞の存在によって特徴付けられる上皮細胞の増殖は、神経の存在下で増加した(
図7Cおよび14C)。これらのデータをまとめると、副交感神経がヒト唾液腺におけるSOX2発現ならびに腺房および導管マーカーを維持できることを示唆している。
【0114】
アセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達がヒト唾液腺中の腺房およびSOX2
+細胞を維持するのに十分であるかどうかに対処するために、非照射ヒトSMGまたはPG(両方ともSOX2を発現する)組織外植片をエクスビボ系中のムスカリン刺激に供した。CChを有する4つの別個の個人(n=4)からの患者由来のヒト組織の培養は、ムスカリン刺激から4時間以内に、SOX2、ムスカリン受容体CHRM1およびCHRM3[いずれも成人腺房細胞によって発現される(Giraldo et al.,1988、Mei et al.,1990)]、ならびにAQP3、AQP5(Gresz et al.,2001)、およびMIST1の発現を著しく増加させた(
図7E、n=4、
図14Dに示される個々のデータセット)。外科的除神経は、Mistiの発現に悪影響を及ぼさないが(
図3Bおよび3E)、ムスカリン刺激は、ヒト培養物中のMIST1を増加させるのに十分であり、腺房細胞同一性には必要ではないが、アセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達が分泌プログラムの陽性調節因子として機能し得ることを示唆する。4つの患者由来試料間の応答の変動性は、ヒト患者間の生物学的多様性、供給される腺の種類(使用されるSMGおよびPG)の差、ならびに患者の年齢(供与者の年齢は30~78歳の範囲)に起因する可能性が高い。しかしながら、すべての場合において、CChの存在下で、SOX2およびいくつかの腺房マーカーの増加を観察した。CChでKRT19遺伝子発現の増加も測定したが、他の排他的な導管マーカーEGFR、KRT7、およびKRT8は変わらず、導管細胞が一般にムスカリン作動薬に応答しないことを示唆した(
図7E)。共培養におけるヒト唾液腺の神経導管遺伝子の増加を考慮すると、導管の変化を誘発する他の因子が神経によって産生される可能性がある(
図7Dおよび7Eを比較する)。したがって、神経細胞のアセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達は、腺房系統を促進し、成人ヒト唾液腺におけるSOX2発現を維持するのに十分である。
【0115】
考察
我々の研究は、放射線誘発損傷後に組織を再増殖する予期しない能力を備えた腺房の補充に不可欠な成人唾液腺中の前駆体としてのSOX2+細胞を明らかにする。さらに、恒常性維持の間のSOX2を介した腺房細胞の置換の制御においてコリン作動性神経が重要な役割を果たすことを示し、この神経細胞の影響は、照射された組織にコリン作動性模倣物を添加することによって再現できることを示す。したがって、マウス唾液腺が放射線誘発損傷後に再生しないという現在の教義とは対照的に(Zeilstra et al.,2000、Coppes et al.,2001,2002)、これらのデータは、少なくともマウスにおいて、唾液腺が放射線誘発損傷後に広範な再生能力を有することを示す。さらに、ヒト組織における腺房系統(およびSOX2)もコリン作動性模倣物に応答することが分かるように、SOX2+細胞を標的とし、コリン作動性神経を維持することは、放射線療法による損傷後の機能的唾液腺房の回復に役立つ可能性がある。
【0116】
SOX2は、生物の発達に不可欠な役割を有し、胃、気管、および腸などの上皮組織の恒常性を調節する(Arnold et al.,2011)。Sox2除去後の成人気管細胞の恒常性維持能力の低下と同様に(Que et al.,2009)、恒常性維持および損傷の両方の条件下でのSOX2+腺房前駆体におけるSox2の除去後のAQP5+腺房細胞の枯渇を見出した。興味深いことに、萎縮したものの、Sox2の非存在下で細胞死の増加は見られなかったが、循環している腺房細胞が実質的に減少しており、除去時にこれらの細胞が細胞周期を離れ、分化を受けて休眠型AQP5欠損腺房細胞を産生することを示唆した。SOX2+細胞の除去による腺房の著しい喪失は、これらがSLG中の腺房系統の唯一の前駆体であることをさらに確認し、膵臓腺房細胞が等効力ではないが、前駆体のサブセットを含有することを実証する最近の報告と一致する(Wollny et al.,2016)。我々の結果は、膵ベータ細胞と同様に、前駆体分化を介さずに成熟細胞の自己複製を通じて唾液腺房細胞が補充されることを示すAureとその同僚による最近の報告(Aure et al.,2015)とは対照的である(Dor et al.,2004)。組織の再増殖が唾液腺房細胞の自己複製に起因するという結論は、SOX2+MUC19-細胞を含むすべての腺房細胞によって発現される誘導性Mistiプロモーターの使用に基づいていた。したがって、組み換え時に追跡される細胞のサブセットには、前駆体が含まれる可能性が高いが、これらのサブセットが幹細胞シグネチャを有するかどうかを判定するための分析は行われなかった。
【0117】
すべての上皮臓器と同様に、末梢神経は、げっ歯類およびヒト唾液腺の構造的恒常性を維持するために必要である(Schneyer&Hall,1967、Mandour et al.,1977、Wang et al.,1991、Fu&Gordon,1995、Lujan et al.,1998、Kang et al.,2010、Batt&Bain,2013)。臓器形成中、副交感神経は、アセチルコリン/ムスカリンシグナル伝達を介した放射線損傷後の組織に寄与し得る前駆体集団を維持する(Knox et al.,2013)。唾液腺における以前の除神経研究は、臓器および腺房細胞のサイズが減少することを示した(Schneyer&Hall,1967、Mandour et al.,1977、Kang et al.,2010)が、腺房細胞の置換に神経支配が必要であるかどうかは知られていなかった。ここでは、神経がSOX2を直接調節して系統が制限された前駆体から腺房細胞の置換を促進することを明らかにする。この結果は、多くの他の臓器における自己更新および細胞運命の調節におけるSOX2の周知の役割と一致する(Arnold et al.,2011)。しかしながら、これまでに、WNT、FGF、およびEGFRファミリーによって媒介されるものを含む細胞内部のシグナル伝達経路のみが、SOX2を調節することが示されている(Hashimoto et al.,2012、Dogan et al.,2014、Rothenberg et al.,2015、Lee et al.,2016)。この外因性神経ベースのモデルは、それらの標的臓器とは異なり、ニューロン自体が放射線損傷に対して非常に耐性があるという点で、細胞-内因性シグナルよりも明らかな利点を有する(Tofilon&Fike,2000、Wong&Van der Kogel,2004)。この機構が、他のSOX2発現上皮臓器、例えば、味蕾(Suzuki,2008)、前立腺および精嚢(Wanigasekara et al.,2004)、胃(Tatsuta et al.,1985;Zhao et al.,2014)、および角膜(Ueno et al.,2012)の維持も調節するかどうかは、まだ試験されていない。しかしながら、これらの結果は、コリン作動性神経がこれらの組織の再生において機能し得ることを示唆している。
【0118】
以前の研究は、放射線誘導変性のモデルとしてマウス唾液腺を利用している(Zeilstra et al.,2000;Coppes et al.,2001,2002)。これらの調査は、放射線を受ける動物において測定された唾液流量の減少によって裏付けられた仮説である、中~高用量の放射線の後に再生が損なわれるという仮定に基づいていた(Redman,2008)。しかしながら、これまでに放射線照射後の細胞置換のインビボ分析は行われていない。我々のデータによると、マウスの腺房細胞は、少なくとも放射線曝露後の最初の30日間は高度に再生可能であり、未傷害の対照と同様に腺房を再増殖させることができることを示している。しかしながら、マウス唾液腺の変性/老化は放射線の3~6ヶ月後に起こるため、この再生能力は長期的に維持できないことは明らかである(Urek et al.,2005、Marmary et al.,2016)。したがって、SOX2+細胞の再生能力は最終的に機能しなくなる可能性が高く、原因を特定するためにさらなる分析が必要である。また、ヒト唾液腺が治療用放射線照射の数日/数ヶ月後に再生できるかどうか、および副交感神経と組み合わせたSOX2+細胞の不在により、この再生能力が長期的に機能しないかどうかはまだ決定されていない。実際、これらの臓器が短期的および長期的にどのように影響を受けるかを理解するためには、患者からの唾液腺の変化の時間経過解析が必要である。しかしながら、我々の結果は、放射線損傷に応答して組織再生を制御および維持するためにこれらの幹細胞およびその神経支配神経を標的化することが、長期的に組織を維持/修復する手段を提供し得ることを示唆している。
【0119】
最近の多くの研究は、再移植のために推定幹細胞集団を単離するか(Nanduri et al.,2013,2014)、または幹細胞を保有すると考えられる腺内領域を温存(sparing)するかのいずれかによって、マウスモデルにおける放射線損傷後の腺再生に対処することを目的としている(van Luijk et al.,2015)。しかしながら、これらの内因性幹細胞の同一性、およびそれらが腺房細胞コンパートメントに寄与するかどうかは不明であった。さらに、このような操作が唾液腺神経支配に及ぼす影響は報告されていない。我々の研究に基づくと、組織の乱れによる意図しない神経支配の増加が、腺房を再生して唾液機能を回復させるSOX2+前駆細胞の維持および増大につながる可能性がある。Xiaoら(2014)は、神経誘引因子であるグリア由来神経因子(glial-derived nerve factor)(GDNF)を添加することにより放射線誘発損傷後のマウス唾液機能および構造の回復を報告した(Knox et al.,2013)。しかしながら、最近の研究では、GDNF自体がSG幹細胞を放射線誘発損傷から直接保護しないことが実証され(Peng et al.,2017)、そのような結果が支持ニッチの改善の結果であり得ることを示唆した。
【0120】
まとめて、我々の研究は、遺伝毒性ショックに直面しても、前駆細胞集団の増大および分化を通じて発生する唾液腺の広範な再生能力を強調する。これらのデータに基づいて、我々は、組織内のSOX2+細胞を直接標的化することによって、または移植および活性化のためにこれらの細胞を単離および増大させることによって、唾液腺の分泌部を再生し、患者に生活の質を回復する可能性があることを提案する。これはまた、SOX2+集団を維持するために、以前に提案された(Knox et al.,2013)副交感神経の維持も必要になる。腸、腺胃、気管、および味蕾などの所与の臓器は、SOX2を発現し、自律神経系によって強く神経支配され、癌を排除するための治療放射線によって損傷を受けるため、このような戦略は、多臓器系の修復に適用可能であり得る。
【0121】
材料および方法
マウス系統
すべての手順は、UCSF Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認され、実験動物の管理および使用に関するNIHガイドに準拠していた。この研究で使用されるマウス対立遺伝子は、The Jackson Laboratoryによって提供され、Sox2eGFP(Arnold et al.,2011)、Sox2CreERT2(Smith et al.,2009)、Sox2fl/fl(Taranova et al.,2006)、Rosa26mTmG(Muzumdar et al.,2007)、Rosa26DTA(Wu et al.,2006)、およびKitCreERT2(Klein et al.,2013)が含まれる。
【0122】
動物実験
別途明記されない限り、すべての実験で成体雌マウス(6~8週齢)を使用した。マウスは、AAALAC認定のUniversity of California San Francisco Parnassus campus Laboratory Animal Resource Center (LARC)に収容された。マウスを、可能な限り、1ケージ当たり最大5匹の群で、新鮮な水、定期的な清掃、および環境エンリッチメントが施された、個々に換気されたケージ(IVC)に収容した。適切な試料サイズを検出力計算(power calculation)を使用して計算した。トランスジェニック研究の場合、試料サイズは、必要な遺伝子型および性別の動物を十分な繁殖させるのに必要な時間の長さによって制限された。野生型動物を、Microsoft Excelソフトウェアを使用して実験群にランダム化した。遺伝子型に基づいて、トランスジェニック動物を群に割り当てた。すべての動物に固有のID番号が与えられ、したがって、分析中は研究者に対し盲検化された。
【0123】
Sox2またはSOX2
+細胞の遺伝子的除去
Sox2の条件的除去を、Sox2
CreERT2;Sox2
fl/fl:R26
mTmGマウスに、18日目に安楽死させる前に、2.5mg/20gのタモキシフェンを毎日4日間連続して、および3日ごとに注入することによって達成させた。SOX2
+細胞の除去は、7日目に安楽死させる前に、Sox2
CreERT2;Rosa26
DTA:R26
mTmGマウスに、2.5mg/20gのタモキシフェンを毎日4日間連続して注入することによって、実行した。Rosa26
mTmGマウスは、細胞の除去/組み換えと組み合わせて系統追跡するための貴重なツールを提供する(Muzumdar et al.,2007)。簡潔に述べると、このモデルは、Creを介した切除前に膜標的タンデムダイマートマト(mT)と、切除後に膜標的緑色蛍光タンパク質(mG)を発現する二重蛍光Creレポーターから構成される(
図10D)。したがって、これらのマウスにおいて、組み換えが起こったためSox2を欠いているか、またはDTAを発現している細胞は、GFPを発現する。内因性GFPを、凍結切片を使用した実験において画像化し、一方、GFP抗体はパラフィン包埋組織に使用した(ニワトリ抗GFP、1:500、Aves Labs、GFP-1020)。
【0124】
SOX2+細胞の系統追跡
Sox2CreERT2;Rosa26mTmGマウスに2.5mgのタモキシフェンを注入し、24時間、14日、または30日後に安楽死させた。
【0125】
KIT+細胞の系統追跡
KitCreERT2;Rosa26mTmGマウスに、2.5mgのタモキシフェンを4日間連続して毎日注入し、14日後または6ヶ月後に安楽死させた。
【0126】
インビボ除神経実験
C57BL/6またはSox2eGFPマウスに、手術の30分前に鎮痛剤(カルプロフェンおよびブプレノルフィン;Patterson VeterinaryおよびBuprenex;それぞれ0.1および100mg/kg(IP))と共に投与し、2%イソフルラン/02混合物を吸入して麻酔した。手術部位を剃毛し、ヨウ素およびアルコールで交互に洗浄し、続いて局所麻酔薬(リドカイン、Hospira Inc.、8mg/kg)を用い、切開の準備をした。耳の前方で切開し、前述のように鼓索を配置し(Klimaschewski et al.,1996)、スプリングハサミを使用して完全に切断した。非吸収性の絹縫合糸(Ethicon)を使用して皮膚を縫合し、創傷をさらに外科用接着剤(Vetbond)で覆った。反対側の神経は対照として無傷のままにした。7日または30日後、マウスを安楽死させた。
【0127】
ピロカルピン実験
成体雄C57BL/6マウス(6~8週齢)をピロカルピン(Sigma-Aldrich,P0472;0.9%滅菌生理食塩水中0.68mg/ml)で処理した。マウスをイソフルランを使用して麻酔し、4.5mg/kg体重(200μI)の用量でピロカルピンを、またはビヒクル対照として0.9%生理食塩水を腹腔内注入した。18時間後にマウスを安楽死させ、免疫蛍光分析のために腺を処理した。
【0128】
ガンマ線実験
C57BL/6マウスを0.9%生理食塩水(Vedco Inc.)中の1.25%2,2,2-トリブロモエタノール(Alfa Aesar)で麻酔した。Shepherd Mark-I-68A137Cs照射装置(JL Shepherd&Associates)に配置することによって、137Cs線源を使用してマウスを照射した。1.5cm間隔で配置された2つの鉛ブロックを使用して、マウスの身体および口の最前部(鼻)を遮蔽し、首および頭部の一部のみを露出させた。1.5cmの開口部は、位置3(137Cs源から20cm、照射器空洞の幅から15.5cm)に中心を置いた。唾液腺を照射するため、マウスを、167Rad/分の線量率で2回の5Gyの線量に2.59分間(頭部の各側1回ずつ、両側、および順次であるが、同日に実施)、合計10Gyの線量で曝露した。この線量は、製造業者によって提供される等線量プロットマッピング(線量分布)によって計算され、EBTフィルム(Brady et al.,2009)を使用して、マウス配置のために100%の曝露領域を特定した。対照マウスは実験マウスに従って麻酔したが、放射線処理を受けなかった。正常な飼育に戻る前に、すべてのマウスを完全に回復させ、自由に柔らかい食餌を与えた(ClearH20)。マウスを、1時間後、または1、3、7、14、または30日後に安楽死させた。
【0129】
臓器培養実験
成人の唾液腺におけるエクスビボリネージュ追跡
Sox2CreERT2由来の唾液腺;Rosa26mTmGマウス(組み換え誘導24時間前)を1mm未満のピースに機械的に解剖し、200nMのCCh(Sigma-Aldrich)または10μMの4-DAMP(Tocris)の有無で完全培地に配置し、48時間培養した後、免疫蛍光のために固定した。場合によっては、マウスに5Gyの3回投与を照射した後、上記のように腺を培養用に服用した。
【0130】
人間の唾液腺組織の分離と培養
成人ヒト唾液腺は、頚部切除を受ける患者(28~78歳、男性および女性)の同意を得て、破棄された識別不可能な組織から得られた。すべての被験者からインフォームドコンセントが与えられ、WMAヘルシンキ宣言および保健福祉省ベルモントレポートに定められた原則に準拠した実験が行われた。患者は、手術の2年未満前に照射療法を受けていなかったか(非IR)または分割照射療法(IR)を受けていた。組織を、生細胞外植片培養のために4%のPFA、RNAlater(Qiagen)またはDMEM(Thermo Fisher)中に直ちに入れた。エクスビボ培養では、非IR組織を<1mmの小片に解剖し、ホロトランスフェリンおよびアスコルビン酸を含有する無血清DMEM/F12中で培養した。外植片アッセイのために、組織(SMGおよびPG)を50~200nMのCCh(200nMのCChが結果に示される)と共に4時間インキュベートした後、RNAを溶解した。唾液腺外植片-副交感神経顎下神経節(SMG)共培養の場合、組織を1mm未満の小片に解剖し、無血清培地上のフローティングフィルター上で培養した。E13マウス副交感神経顎下神経節を、以前に記載されているように単離した(Knox et al.,2010)。外植片ごとに1つの副交感神経顎下神経節をヒト唾液腺の隣に配置し、7日間培養し、免疫蛍光分析のために固定するか、RNAのために溶解させた。
【0131】
組織処理
固定後、唾液腺(ヒトおよびマウス)をOCTまたはパラフィン包埋のために処理した。凍結切片の生成のために、組織をスクロースの濃度を増加させて(25~75%)インキュベートし、OCTに包埋した。クライオスタット(Leica)を用いて12μmの切片を切り取り、-20℃で保管した。パラフィンワックス(Sigma-Aldrich)に包埋する前に、パラフィン用の組織を、エタノール濃度を増加させてインキュベートし、その後Histo-Clear(National Diagnostics)とインキュベートすることにより脱水した。12μm切片をミクロトーム(Leica)を使用して切り取り、室温で保存した。
【0132】
免疫蛍光分析
全組織標本唾液腺および組織切片免疫蛍光分析は、以前に記載されている(Knox et al.,2010)。簡潔に述べると、氷冷アセトン/メタノール(1:1)で1分間、または4%PFAで20~30分間のいずれかで固定した後、0.1~0.3%Triton(登録商標)Xで透過処理した。組織を、0.01%PBS-Tween(登録商標)20中の10%ロバ血清(Jackson Laboratories,ME)、1%BSA(Sigma-Aldrich)、およびMOM IgGブロッキング試薬(Vector Laboratories,CA)で4℃で一晩ブロックした。唾液腺を、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした:ヤギ抗SOX2(1:200、Neuromics、GT15098)、ヤギ抗SOX10(1:500、Santa Cruz Biotechnology、sc-17342)、マウス抗TUBB3(1:400のクローンTUJ1、R&D Systems、MAB1195)、ヤギ抗GFRa2(1:100、R&D Systems、AF429)、ウサギ抗チロシンヒドロキシラーゼ(1:100、Millipore、AB152)、ラット抗E-カドヘリン(1:300、Life Technologies、13-1900)、ウサギ抗EGFR(1:200、Abeam、ab52894)、ウサギ抗KRT5(1:1,000、Covance、PRB-160P)、ラット抗KRT8(1:200、DSHB、troma I)、マウス抗KRT7(1:50、Covance、MMS-148S)、ラット抗CD44(1:200、BioLegend、103001)、マウス抗Ki67(1:50、BD Biosciences、550609)、ウサギ抗CCND1(1:200、Abeam、ab16663)、ウサギ抗カスパーゼ-3(1:100、Invitrogen、34-1700)、ウサギ抗AQP3(1:400、Lifespan Biosciences Inc.、LS-B8185)、ウサギ抗AQP5(1:100、Millipore、AB3559)、ヤギ抗MUC19(1:200、Abcore、AC21-2396)、マウス抗aSMA(1:400、Sigma-Aldrich、C6198)、ニワトリ抗GFP(1:500、Aves Labs、GFP-1020)、ウサギ抗CHRM3(1:1,000、Research and Diagnostics、AS-3741S)、およびウサギ抗MIST1(1:500、Purdue UniversityのStephen Konieczny氏から寄贈)。Cy2-、Cy3-、またはCy5-コンジュゲート二次Fab断片抗体(Jackson Laboratories)を使用して抗体を検出し、核はHoechst33342(1:1,000、Sigma-Aldrich)使用して染色した。蛍光をLeicaSp5共焦点顕微鏡およびNIH ImageJソフトウェアを使用して分析した。
【0133】
形態測定分析および細胞数
免疫蛍光分析(例えば、
図2D)のために、マーカーに対して陽性に染色された細胞を、ImageJを使用してカウントした。腺房細胞のサイズは、ImageJを使用して測定した。すべてのデータは、3~5個の視野/群を使用して得られ、各実験を3回繰り返した。神経密度分析のために、神経マーカーTUBB3の免疫蛍光を分析し、ImageJを使用して生の総密度(raw integrated density)(任意単位、AUとして表示)を計算した。
【0134】
定量的PCR分析
RNAqueous Micro Kit (Ambion)を使用して、全組織からRNAを単離した。Superscript試薬(Invitrogen,CA)を使用したcDNA合成の前に、総RNA試料をDNase処理した(Ambion)。SYBR green qPCRは、5ng(マウス)または4~10ng(ヒト)のcDNAならびにPrimer3およびBeacon Designerソフトウェアを使用して設計されたか、またはPrimerBank(pga.mgh.ha rvard.edu/primerbank/)に記載されているプライマーを使用して実行した。プライマー配列を表1および2に列挙する。融解曲線およびプライマー効率を、以前に記載されたように決定した(Hoffman et al.,2002)。遺伝子発現を、ハウスキーピング遺伝子S18およびS29(Rps18およびRsp29)、またはマウスのGAPDH、およびヒトのGAPDH、ならびに対応する実験対照に対して正規化した。反応を3連で実行し、実験を2~3回実行した。
【0135】
フローサイトメトリー
成体マウス舌下唾液腺(CD1)を解剖し、ゲンタマイシン(Sigma-Aldrich)を含有するPBS中で洗浄した。細胞単離およびフローサイトメトリーを、以前に記載されているように実行した(Muench et al.,2002;Pringle et al.,2011)。簡潔に述べると、HBSS+1%BSA(Sigma-Aldrich)中の組織をメス刃で細かく切り刻み、50mM CaCh(Sigma-Aldrich)、40mg/mlヒアルロニダーゼ(Sigma-Aldrich)および23mg/mlコラーゲナーゼII型(Sigma-Aldrich)を含有するHBSS溶液中で37℃で15~45分間インキュベートすることによって、単一細胞懸濁液を作成した。酵素反応をBSAの添加によってクエンチし、溶液を70μmストレーナー(BD Falcon)を通して濾過し、400gで8分間遠心分離した。得られた細胞ペレットを滅菌HBSS+1%BSAで洗浄し、遠心分離し、ブロッキング緩衝液(5%血清および0.01%NaN3、BioLegend)中に再懸濁した。細胞表面染色は、CD326(EpCAM、Miltenyi、130-098-113)、ウサギ抗CHRM1(Research and Diagnostics、AS-3701S)、ウサギ抗CHRM3(Research and Diagnostics、AS-3741S)、およびウサギ抗AQP5(Millipore、AB3559)に対する抗体と共に細胞懸濁液をインキュベートすることによって達成された。その後、細胞内染色キット(eBioscience,00-5523-00)、ならびにSOX2に対する抗体(BD Pharmingen,562195)およびKi67に対する抗体(BioLegend,652405)を使用して、固定および透過後に細胞内染色を達成した。適切な単一染色対照を使用してLSRII(BD)でフローサイトメトリーを実行し、データはFACSDiva(BD)を使用して収集し、FlowJoを使用して分析した。特に明記しない限り、各試料について100,000の事象を収集した。
【0136】
統計検定
正常分布を、D’Agostino-Pearsonオムニバス検定を使用して評価した。データを、スチューデントのt検定(対応のない、2群)または一元配置分散分析(多群)を使用して統計的有意性を分析し、ダネットまたはテューキー検定を使用して事後検定を実行した(GraphPad PrismまたはSPSS)。多重検定では、0.05の誤検出率を使用した。すべてのグラフは、凡例に示されるように、平均値+標準偏差(SD)または平均±標準誤差(SEM)を示す。
【0137】
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【0223】
実施例2
注入可能なアルギネートヒドロゲル中のムスカリン作動薬の局所送達による内因性唾液腺幹細胞集団の治療的活性化
唾液機能を回復するための代替的な再生アプローチは、自家幹細胞/前駆細胞が、傷害された臓器に移植されるか、または組織内の生存幹細胞が再活性化される幹細胞療法である。しかしながら、放射線および自己免疫疾患によって損傷された主要細胞型である唾液分泌腺房細胞を生じさせる前駆細胞は、以前は知られていなかった。我々は最近、SOX2をマウス唾液腺における上皮前駆細胞のマーカーとして同定した(Emmerson et al.,2018)。SOX2+腺房細胞は、すべての主要なヒト唾液腺(顎下(SMG))に見られ、マウス舌下腺(SLG)内の腺房コンパートメントの20%を構成する。我々は、SOX2+細胞および組織恒常性の維持は、ムスカリン受容体を活性化して細胞増殖を促進するアセチルコリンの副交感神経産生に依存することを見出した。我々は、ムスカリン模倣物のカルバコールおよびピロカルピンが、インビボおよび/またはエクスビボでの送達後にSOX2+細胞増殖を促進することができ、ムスカリンアゴニズムが放射線による損傷後の唾液腺の再生を促進することをさらに示した。まとめると、これらの研究は、既存の幹細胞の再活性化が臓器を再生するための実現可能な戦略であることを強く示唆している。
【0224】
ここでは、唾液腺の幹細胞を介した再増殖を促進するための局所的かつ持続的なセビメリン送達の能力を試験する。具体的には、我々は、局所的な標的化された持続的な唾液腺への送達のために、ムスカリン作動薬の生分解性カルシウム架橋アルギネートヒドロゲルへの封入を含む組み合わせ生成物を考案した。インビトロおよびインビボ試験の組み合わせを使用して、組織内の線形分布およびムスカリン受容体作動薬セビメリンの持続的な送達を可能にするアルギネート系ヒドロゲルの化学的性質を定義した。マウスにおけるインビボ試験は、封入された薬物が、持続的送達と一致する様式で対照動物および照射動物の両方の唾液腺内の幹細胞増殖を促進するのに有効であることを実証している。したがって、唾液腺の再生および唾液流量の回復のための新規の治療薬を提供する。
【0225】
結果
セビメリンは、局所注入を介して送達されると、細胞増殖を促進する
ムスカリン模倣物の全身投与が唾液腺の増殖を促進するという以前の知見を考慮して、次に、局所腺内注入がまた有糸分裂応答を促進することができたかどうかを決定した。セビメリンが唾液腺に局所的に作用して腺房細胞増殖を誘導できるかどうかを判断するために、10mg/kg体重(20μI_)のセビメリンを舌下腺に直接注入し、18時間後に増殖を測定した。
図15に示すように、腺房細胞増殖が著しく増加し(
図15)、セビメリンが唾液腺に直接作用して細胞有糸分裂を促進することができることを示す。
【0226】
操作された生分解性カルシウム架橋アルギネートヒドロゲル
細胞増殖を促進する局所セビメリン送達の有効性に基づいて、次に、腺房再生を促進するセビメリンの局所的かつ持続的な放出のための注入可能な薬物送達プラットフォームを開発することに着手した。この目的のために、セビメリンの送達のために、カルシウム架橋アルギネート系生体材料を利用することを選択した。アルギネートは、褐色藻類から抽出される天然に生じるアニオン性ポリマーである。アルギネートは、その生体適合性、最小限の毒性、比較的低いコスト、およびCa2+などの二価カチオンを使用して細胞適合性条件下で架橋される能力のため、多くの生体医学用途に使用されるFDA承認のヒドロゲルである。(Lee et al.(2012)Prog.Polym.Sci.37(1):106-126)カルシウム架橋アルギネートは、生体組織の細胞外マトリックスと構造的に類似しており、高親水性で、生理学的に湿潤な微小環境を維持する。重要なことに、アルギネートは、臨床に関連する注入針(syringe-needles)システムを介した注入を可能にする濃度で再懸濁させることができ、その間、剪断力が静電架橋を破壊して材料を直線的に変形させるが、ゲル化はインビボで自発的に再形成する。
【0227】
アルギネートは、ポリマー鎖切断酵素アルギナーゼが欠如しているため、哺乳動物において本質的に非分解性である。しかしながら、イオン的に架橋されたアルギネートゲルは、ゲルを架橋している二価イオンがナトリウムイオンなどの一価カチオンとの交換反応によって、周囲媒体に放出され、溶解される。アルギネート分解速度は、ポリマー鎖の部分酸化によってさらに制御され得る。埋め込み型ではなく治療薬とする場合FDA承認にとって重要なのは、注入後30日までにアルギネートヒドロゲルを分解する必要がある。しかしながら、セビメリンの持続的な送達を達成するために、アルギネートは7日+期間にわたって存在するべきである。この分解プロファイルを満たすために、アルギネート鎖を2%または5%のいずれかで部分酸化した。インビトロ分解試験は、2つのヒドロゲルが有意に異なる分解プロファイルを有し、遅い分解が2%酸化アルギネート(OA)ヒドロゲルで達成されることを示す。(
図16A)2%OAヒドロゲルは、インビトロでほぼ5日間、ゲル質量の50%超を維持するが、5%OAヒドロゲルは1日でこの質量を失う。培養の7日間のインビトロ分解試験後、2%OAヒドロゲルのおよそ30%対5%OAヒドロゲルの14%が残存する。
【0228】
このより長い物理的保持期間に基づいて、2%OAヒドロゲルを使用することを選択した。次に、2%OAヒドロゲルの重量パーセント(重量%)が物理的分解にどのように影響したかを試験した。2%のOAヒドロゲルの10重量%は、2重量%または5重量%よりも著しくゆっくりと分解されるが、この濃度は、唾液腺へのインビボ送達に必要な小口径の針から容易に注入することができなかった(>23ゲージ)。(
図16B)。
【0229】
その後、5重量%での2%OAヒドロゲルの物理的分解を、野生型マウスの背側面(dorsal aspect)の皮下ポケットに100μIのヒドロゲルを注入することによって、より生理学的に関連する条件下で試験した。この量のヒドロゲルは、数分以内に小さなディスクを形成し、次いで、それを取り出して、分析のために秤量することができる。インビトロシステムとは対照的に、インビボでは、注入後7日で質量損失がほとんど見出されないことを見出し(
図16C)、このヒドロゲルがセビメリンのインビボ送達に好適であることを示す。
【0230】
商業的可能性にとって重要な別の因子は、可溶化アルギネートの貯蔵安定性である。分解を遅らせるために、可溶化酸化アルギネートは、材料を4℃または<-20℃で保管する必要があると推定したが、これらの保管条件が材料安定性に与える具体的な影響は不明である。したがって、可溶化酸化アルギネートを4℃または-20℃で30日間貯蔵した後の、カルシウム架橋アルギネートの圧縮弾性率の変化を試験した。5重量%の2%OAヒドロゲルを冷蔵条件下(4℃)で保管したとき、架橋有効性は、20日間の圧縮弾性率の低下によって著しく影響を受け、酸化アルギネートの分解を示唆した(
図16C)。しかしながら、アルギネートを凍結条件下(-20℃)で維持すると、合成後30日で初期材料特性が安定化した。
【0231】
アルギネートヒドロゲルからのセビメリンの局所的および持続的な放出
アルギネートの薬学的用途は、様々な低分子量薬物の制御放出のためにヒドロゲルを利用することに従来関与してきた。架橋アルギネートは、出発分子量が197kDaであることを考慮すると、約5nmで予測される我々の材料の理論的孔径を有するナノ多孔質材料を形成する。薬物の制御放出は、正荷電セビメリン(pKA=9.5)と負荷電アルギネートヒドロゲルとの間の静電相互作用を通じて主に調節される。インビトロセビメリン放出研究は、2日間にわたって薬物の放出を持続することができることを実証する。(
図17)物理的分解特性を変化させたにもかかわらず(
図16A~16B)、アルギネートヒドロゲルの酸化量(OA%)も重量パーセント(重量%)も薬物放出動態に有意な影響を及ぼさず、85±5%を超えるセビメリンが2日間までにインビトロで放出された。(
図17A~17B)薬物の開始濃度の変更が放出に影響を及ぼしたかどうかを試験するために、3000ng、60000ng、または12000ngのセビメリンのいずれかを各ディスクに装填し、インビトロで放出を試験した。放出速度は比較的一貫したままである(
図17C)ため、2日間にわたって送達される薬物の量の予測可能な増加を生じさせる(
図17D)。
【0232】
セビメリンは、アルギネートに封入されると腺細胞増殖を促進する
次に、この成功した薬物送達プラットフォームを考慮して、アルギネート+セビメリンの有効性、毒性、および分解をインビボで試験した。マウス唾液腺のサイズが小さいため、組織損傷によって引き起こされる合併症を避けるために、ヒドロゲルを腺に直接注入するのではなく、X線で可視化されるように腺に直接隣接する領域に注入することを選択した(
図18A、X線不透過性造影剤として封入されたオムニパーク)。10mg/kgのセビメリンを含むもしくは含まないアルギネートまたは生理食塩水を、唾液腺に隣接して注入し、注入後18時間(
図18C、1群当たりn=3~4)または3日(
図18、1群当たりn=3~6)に唾液腺を分析した。
図18に示すように、アルギネート単独と比較して、10mg/kgのアルギネート+セビメリンに応答して、3日目に増殖するKi67+およびEdU+腺房細胞の数の有意な増加を測定した(
図18C、18D)が、これはアルギネートと組み合わせた場合に薬物が長期の活性を有することと一致する。我々は、より高い25mg/kgのアルギネート+セビメリンに応答して、3日時点で増殖するKi67+腺房細胞の同様の増加が見られたことから、用量の増加が有効性を有意に改善しないことを示唆された(
図18)。また、アルギネート単独で処理したマウスの腺内の細胞増殖を、生理食塩水の腹腔内(IP)注入のみを受けたマウスと比較することによって、アルギネート自体が有糸分裂性であるかどうかを試験した。アルギネートだけで上皮細胞増殖を促進するのに十分であり、3~7日間にわたってそうなることが分かり(
図23)、この組み合わせが有益な影響を有することを示している。
【0233】
アルギネートまたはアルギネート+セビメリン処理がマウスにおいて毒性作用を示したかどうかを判断するために、マウス体重を測定し、唾液腺における炎症細胞を特徴付けた。我々は、アルギネート+セビメリンの用量を増加させることで、注入後3日までに体重の減少を引き起こさなかったことを見出した(
図24)。さらに、生理食塩水を注入した対照と比較して、下痢などの毒性作用は観察されなかった。CD3+T細胞の免疫組織学的分析はまた、未処理または老化(陽性対照)マウスに由来する組織と比較して、増加を示さなかった(
図19A、19B)。主要な先天性免疫細胞であり、損傷に対する最初の応答者であるCD68+マクロファージの分析では、未処理の対照と直接比較した場合、アルギネートまたはアルギネート+セビメリン処理に応答して、これらの細胞のわずかな増加を示唆した(
図19C、19D)。マクロファージ集団のさらなる分析は、生理食塩水処理対照と比較した場合、修復促進性(pro-repair)CD206+マクロファージがアルギネート処理組織において有意に増加したことを示し(
図19E)、アルギネートが抗炎症性マクロファージを活性化することによって唾液腺に有益な影響を及ぼし得ることを示唆している。
【0234】
放射線誘発損傷後の唾液腺に対するセビメリン-アルギネートの影響
次に、セビメリンまたはアルギネート+セビメリンが、ガンマ線誘発損傷後に唾液腺における細胞増殖を促進することができるかどうかを試験した。7~8週齢のC57BL6の頚部に単回で10Gy線量の放射線を照射し、14日後に、生理食塩水または10mg/kgのセビメリンのいずれかを全身または線内に注入し、18時間後に増殖する腺房細胞の数を分析した(
図20Aの概略図を参照されたい)。このレベルの放射線は、クエン酸塩によって誘発される唾液流量を30%減少させる(
図20B)。セビメリンの全身投与および局所投与の両方が、照射されたマウスにおける腺房細胞の増殖を増加させたことを見出し(
図20C~20E)、セビメリンが損傷した唾液腺において有効であることを示している。
【0235】
最後に、アルギネートに封入されたセビメリンが、細胞の増殖および唾液流量を促進したかどうかを試験した。放射線の14日後に、マウスにアルギネートまたはアルギネート+セビメリンを注入し、増殖の分析のために3日で屠殺した(
図21A概略図)。アルギネート+セビメリンは、アルギネートのみのレベルを上回って増殖速度を増加させた(
図21B、21C)。アルギネートまたはアルギネート+セビメリンでの処理が唾液流量を補助するかどうかをさらに決定した。驚くべきことに、アルギネートおよびアルギネート+セビメリンの両方が、クエン酸塩によって誘発される唾液流量を7日間増加させることができ(
図21D)、アルギネート自体が照射された臓器に利益をもたらすことを示唆する。
【0236】
考察
ムスカリン作動薬の経口投与は、口腔乾燥症に罹患している患者の唾液の一時的な産生を刺激するために処方されるが、過度の発汗、顔面紅潮、尿意逼迫、胃腸の不快感、および頭痛などの一般的な副作用を伴う。ここでは、注入可能なカルシウム架橋アルギネートヒドロゲルからのムスカリン作動薬セビメリンを局所放出することが、免疫応答を誘発することなく、放射線誘発損傷後に、腺房細胞の補充を促進し、唾液腺機能を改善することができることを示す。これは、照射された組織の腺房前駆体が増殖するように刺激され得、ムスカリン受容体活性化がこの結果を達成するのに十分であるという最初のインビボ証拠を表す。また、小分子セビメリンの放出を3日間にわたって持続させることに加えて、カルシウム架橋アルギネートが単独で、再生促進応答を刺激することも実証している。まとめると、これらの所見は、様々なドライマウスに適している可能性のある放射線誘発損傷後の唾液腺機能障害を逆転させるための潜在的な新しい併用療法を提供する。
【0237】
我々の療法は、唾液腺機能、恒常性、および再生に末梢神経が不可欠であるという過去100年以上の証拠に基づいている。副交感神経の除去は、組織の再神経支配を通じて元に戻すことができる分泌性腺房の萎縮をもたらす(Emmerson et al.,2018)。副交感神経支配は、頭頸部癌の治療放射線を受けた患者からの唾液腺において著しく減少するため(Emmerson et al.,2018)、萎縮した組織に神経由来因子を再供給することで組織構造と機能を回復させることができるかどうかを疑問視した。ここに示されるインビボ実験は、胎児の唾液腺における放射線曝露後のニューロン生存率および機能の増加、または照射された成人組織をムスカリン作動薬で治療することが、前駆細胞を介した機構による腺房細胞補充を促進するのに十分であることを実証する我々の以前のエクスビボ研究に続くものである(Knox 2013、Emmerson 2018)。さらに、現在のデータは、照射された唾液腺を有するマウスおよびヒトにおけるムスカリン作動薬の長期経口投与後の唾液流量の改善(Barbe 2017、Taniguchi 2019)は、細胞死の減少ではなく、腺房細胞補充に起因する可能性があることも示唆している。しかしながら、ヒト腺房細胞がムスカリン刺激に応答して増殖することができるかどうかは、まだ決定されていない。
【0238】
照射された唾液腺の再生のために多くの戦略が検討されてきた。我々の治療への適用は、アセチルコリン相同体の提供を通じて副交感神経系による組織の内因性調節を模倣することを目的としている。このアプローチは、神経栄養性成長因子であるニュールツリンの発現を通じて臓器に機能的神経を再補給することを目的とする最近の遺伝子治療研究と類似している。他の戦略は、胚発生中に分岐形態形成を促進することが知られている成長因子:線維芽細胞成長因子7の腺内投与(FGF7、Lombaert et al.,2009、Xiao et al.,2014)、またはインスリン様成長因子1の全身送達Grundmann(2010)BMC Cancer 10:417)、または管カニューレ挿入を介したソニックヘッジホッグ(Shh)の遺伝子送達(Hai et al.(2016)Hum.Gene Ther.27(5):390-399)、を利用して照射された唾液腺の唾液機能および組織保存を改善した。しかしながら、これらの因子のクリニックによる取り込みは、癌成長を加速させる可能性によって妨げられてきた。ピロカルピンの長期経口投与は腫瘍発生性であることは示されなかったが、セビメリンの局所投与が癌の開始、進行、または転移に影響を及ぼすかどうかを判断するには、さらなる研究が必要である。
【0239】
以前の研究は、骨、軟骨、および皮膚を含む様々な臓器系において創傷治癒を促進するためのカルシウム架橋アルギネートヒドロゲルを示す(Wang et al.(2015)Int.J.Clin.Exp.Pathol.8(6):6636-6645)。しかし、この機能が細胞増殖、生存および/または移行を介して直接媒介されるかどうかは、依然としてあまり分かっていない。我々のデータは、カルシウムアルギネートが、細胞増殖を誘導することによって照射された唾液腺の組織再生を促進する能力を有することを示している。これを達成する可能性のある機構は、細胞外カルシウムの上昇によるものである。多糖骨格に架橋されていないカルシウムは、アルギネートから細胞外空間に直接放出され(Doyle et al.(1996)J.Biomed.Mater.Res.32(4):561-568)、または材料の分解中に放出される可能性がある。次いで、このCa2+デポは、カルシウム感知受容体を活性化して、細胞内Ca2+放出および/または細胞増殖を促進するための他のシグナル伝達経路を媒介することができる。カルシウム感知受容体は、腺房細胞を含む多くの細胞型に存在するため、アルギネートに由来するCa2+イオンが、これらの受容体を刺激することを介して有糸分裂促進剤(pro-mitotic agent)として機能し得ることを提案する。
【0240】
カルシウムアルギネートゲルからのCa2+の放出も炎症誘発性であり得ることが最近報告されている(Chan et al.(2013)Acta Biomater.9(12):9281-9291)。カルシウムアルギネートがマウスの皮下に与えると、周囲の組織のIL-ipを著しく上方制御し、LPSの炎症作用を増強した。しかしながら、我々の結果は、セビメリンを含むかまたは含まないカルシウムアルギネートが非常に生体適合性が高く、唾液腺の周囲の領域に注入されると炎症をほとんどまたは全く引き起こさないことを示している。
【0241】
ヒドロゲルに必要とされる重要な特性の1つは、持続的な薬物放出を提供する能力である。小化学薬品から巨大分子タンパク質までの薬物分子は、架橋剤の種類および架橋方法に応じて、制御された様式でアルギネートゲルから放出され得る。実際に、架橋などの薬物放出の動力学を制御するために、複数の化学物質が適用されてきた。
【0242】
材料および方法
OAの合成
酸化アルギネートナトリウム(OA)を、以前に記載された方法の改変を使用して、アルギネートナトリウム(Protanal LF20/40、アルギネートMW=197,000Da、FMCバイオポリマー#S18407)と過ヨウ素酸ナトリウム(Sigma、カタログ#311448)と反応させることによって調製した。簡潔に述べると、アルギネートナトリウム(10g)を超高純度脱イオン水(diH2O、900ml)に一晩溶解した。暗所で室温(RT)で撹拌しながら、100mlのdiH2O中に過ヨウ素酸ナトリウム(0.22g)を溶解させ、アルギネート溶液に添加した。24時間反応させた後、エチレングリコール(52μI、Sigma)の添加によって反応を停止させた。OAを、diH2Oに対する透析(MWCO=3500Da、Spectrum Laboratories Inc.)によって3日間精製し、活性炭(5g/l、50~200メッシュ、Fisher、05-690B)で30分間処理し、濾過し(0.22pmフィルター)、凍結乾燥した。
【0243】
OAの酸化効率を分析するために、OAを酸化ジュウテリウム(5重量/体積%)に溶解し、NMRチューブに入れた。
13C-NMRスペクトルを、内部標準として3-(トリメチルシリル)プロピオン酸-d
4ナトリウム塩(0.05w/v%)を使用して、Bruker ADVANCE III 400MHz NMR分光計(Bruker)で記録した。実際の酸化は、アルギネートの酸化によって新たに形成されたアルデヒドのカルボニル炭素に対する炭素の積分の比率に基づいて、
13H-NMRスペクトルから決定した。(
図25)。
【0244】
カルシウム架橋OAヒドロゲルの合成
OAは、ヒドロゲルを形成する準備ができるまで、凍結乾燥形態で-20℃に維持される。ヒドロゲルは、OAをダルベッコの改良イーグル培地(DMEM、Gibco#11885084)中に、所望の重量/体積(重量%)で室温で最低30分間一定の撹拌下で、溶解することによって形成される。OAは、超飽和硫酸カルシウム(CaS04、84mg/mL)溶液と、アルギネート1mL当たりの1重量%当たり20μLのCaS04(例えば、それぞれ、2%、5%、および10重量%のアルギネート1mLと混合された40、100、および200pLのCaS04)の濃度で混合することによって架橋される。OA溶液およびCaS04スラリーを2つの1mLシリンジに別々に装填した。2つのシリンジをメス-メスのルアーロックカプラ(Value Plastics)と一緒に接続した後、2つのシリンジを混合した(約30回)。
【0245】
酸化アルギネートヒドロゲルの物理的分解
OAヒドロゲルのインビトロ物理分解を、2重量%、5重量%、または10重量%の重量/体積で2%または5%のいずれかの酸化を有する1mmx4mmディスクを作成することによって試験した。ディスクは、25ゲージ針を使用して、1.0mmスペーサーによって分離された2つのガラスプレート間にOAヒドロゲルを注入することによって形成された。30~45分後に室温で重合したゲルおよび生検パンチを使用して直径4mmのディスクを作成した。ゲルを、3.2mlのDMEMを含有する12ウェルプレート中の0.4pmのトランスウェル(Millicell,#MCHT12H48)に移し、プレートを37℃で連続的に振とうした(100RPM)。ヒドロゲルをTo(初期対照)、4時間、1日、3日、5日、および7日(D)で収集した。3つのヒドロゲルを、各時点で平均3~5個の別個の複製物(試料)と共にプールした。試料を-80℃で凍結させ、その後凍結乾燥させた(VirTis Wizard 2.0)。乾燥重量を分析天秤(Mettler Toledo AT201)で測定した。
【0246】
インビボ分解アッセイを、マウス皮下アッセイを使用して実行した。すべての実験はUCSF Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。動物をイソフルラン(2.5%誘導、1.5%維持)を使用して麻酔し、皮膚を70%のエタノールで洗浄し、次いで、25ゲージ針を使用して、マウスの背側面の個々の皮下ポケットに100μIのOAヒドロゲルのゲルを注入した(最大6のヒドロゲル/動物)。マウスを社会的に飼育し、疼痛および苦痛の徴候について48時間モニタリングした。動物を18時間、3日、5日、または7日生存させた。最終時点で、ゲルを皮下ポケットから顕微解剖し、-80℃で凍結させ、凍結乾燥させ、乾燥重量をインビトロ分解のために行われたと同様に記録した。
【0247】
OAの安定性
2%OAポリマーを、上記のように5重量%で溶解し、3mlシリンジ中に吸引し、4℃または-20℃で保管した。溶解後1、4、10、20、または30日でシリンジ(n=5/回)を、保管場所から取り出し、室温に戻し、次いで、上記のように、OA溶液を超飽和硫酸カルシウムスラリーと混合することによって架橋した。混合後、架橋したOAを、0.75mmスペーサーによって分離された2つのガラスプレートの間に直ちに配置し、室温で30分間、ヒドロゲルを形成させた。直径6mmの生検パンチを使用して、カルシウム架橋OAヒドロゲルディスクを作成した。OA溶液の安定性を評価するために、カルシウム架橋OAヒドロゲルの経時的な弾性率を測定した。5Nロードセルを備えた機械的試験機(225lbsアクチュエータ、TestResources)で、毎秒1%の定クロスヘッド速度を使用して、室温で一軸定ひずみ速度圧縮試験(uniaxial,unconfined constant strain rate compression testing)を実行することによって、ヒドロゲルの弾性係数を決定した。弾性係数(Elastic moduli)を応力対ひずみプロットの最初の非ゼロ線形勾配(non-zero linear slope)から計算し、ひずみの最初の5%に限定した。
【0248】
セビメリンを測定するための質量分析
エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えた4500QTrap質量分析計に接続された島津プロミネンスLC-20ADXRシステムを、LC-MS/MS分析のために操作した。クロマトグラフィーによる分離は、Phenomenex SecurityGuard C18ガードカラム(3mm×2.0mm)と結合したPhenomenex KineteX(登録商標)C18(50×3mm、2.6pm)カラムを使用して達成した。カラム温度を30℃で制御した。移動相Aは水中0.1%のトリフルオロ酢酸であり、移動相Bはアセトニトリル(ACN)であった。注入体積は10pLであり、流量は0.5mL/分であった。勾配条件は以下の通りであった。(時間/分、移動相B%):(0、15)、(1、15)、(2.5、22.8)、(2.6、98)、(5、98)、(5.1、15)、および(8、15)。ソースパラメータには、45psiのカーテンガス、4000Vのイオン噴霧電圧、550のイオンソース温度、および中程度の衝突ガスが含まれた。陽イオンESIモードでのMS/MSパラメータ設定の概要を表1に提示する。
【0249】
メタノール中の10.0~10000.0ng/mLの範囲にわたって、セビメリンの標準作業溶液を調製した。作業溶液を100μI_のDMEMにスパイクして、標準またはQC試料を生成した。較正標準の最終濃度は、DMEM中0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、25.0、50.0、および100.0、250.0、および500ng/mLであった。QC試料は、0.9、4、30.0、および400.0ng/mLであった。
【0250】
試料調製ステップでは、100μLのDMEMごとに、10μLのIS作業溶液(1000ng/mL)を添加した。96ウェルタンパク質沈殿フィルタープレートSigma-Aldrich(St.Louis,MO)および300piのMeOFLACN(15:85)をタンパク質沈殿に使用した。濾過後、200piのNH
4OH5%を200piの試料に添加し、10piをLCMS系に注入した。生物分析法は、選択性、直線性、日中および日間精密度および正確度、回復率および安定性を含む米国FDAの現在のガイドラインに従って検証された(「Guidance for Industry,Bioanalytical Method Validation,」2018 fda.gov/media/70858/download)。
【表1】
【0251】
アルギネートヒドロゲルからのセビメリン放出
OAヒドロゲルからのインビトロセビメリン(CV)放出を、2、5、または10%重量/体積で2または5%のいずれかの酸化を有する1mmx4mmディスクを作成することによって試験した。アルギネート+セビメリン(Abeam,ab141317)ヒドロゲルを、凍結乾燥されたOAと混合する前に、薬物をDMEM中の所望の濃度で再懸濁させることによって作成し、その後の架橋が上述のように進み、薬物をOAヒドロゲルで封入した。3つの4mmのアルギネート+セビメリンヒドロゲルを、ゆっくりと連続的に撹拌(100RPM)しながら37℃にてインキュベートする、3.2mlのDMEMを含有する12ウェルプレートの0.4μmトランスウェルに入れた。試料培地(3ml DMEM)を収集し、4時間、1日、2日、3日、4日、5日、および7日(D)に補充した。3つのヒドロゲルを、各時点で平均3~5個の別個の複製物(試料)と共にプールした。質量分析が実行されるまで、試料培地を-20℃で保存した。グラフは、その時点までにすべてのセビメリンが放出されたため、4日目までしか表示されない。To(初期対照)ゲルをDMEMに溶解して、ヒドロゲルに封入されたセビメリンのベースラインを確立した。
【0252】
動物実験
特に明記されない限り、C57/BL6近交系(Harlan Laboratories)からの成体雌マウス(6~8週齢)をすべての実験に使用した。すべての手順は、UCSF Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認され、実験動物の管理および使用に関するNIHガイドに準拠していた。
【0253】
インビボセビメリン送達
セビメリンを前述のように調製し、遊離セビメリン用に28G1/2針(Covidien)を備えた0.5mlのMonoject(商標)Tuberculinシリンジを使用して腹腔内(IP)注入によって、またはアルギネートと混合したセビメリン用に25G×5/8針(Becton Dickinson)を備えた1mlのTBシリンジを使用して皮下注入によって送達した。
【0254】
セビメリンの腸内注入については、マウスに手術の30分前に鎮痛剤(カルプロフェンおよびブプレノルフィン;Patterson VeterinaryおよびBuprenex;それぞれ0.1mg/kgおよび100mg/kg(IP))を投与し、2%イソフルラン/02混合物を吸入して麻酔した。手術部位を剃毛し、ヨウ素およびアルコールで交互に洗浄し、続いて局所麻酔薬(リドカイン、Hospira Inc.、8mg/kg)を用い、切開の準備をした。スプリングハサミを使用して、頭尾軸に沿って喉を切開した。次いで、スリップチップのツベルクリンシリンジ(Becton Dickinson)に取り付けられた2 27Gx1/2針(Becton Dickinson)を使用して、セビメリンを、下顎腺および舌下唾液腺の葉に注入した。皮膚を、非吸収性絹縫合糸(Ethicon)を使用して縫合した。マウスを18時間後、3日後または7日後に安楽死させ、一部の動物に、屠殺の2時間前に、0.25mg/25gの5-エチニル-2’-デオキシウリジン(EdU、Thermofisher Scientific)を含有する0.9%生理食塩水を注入した。
【0255】
γ線処理
動物を、0.9%生理食塩水(Vedco Inc.)中の100μl/10gbwの2.5%アバチン(2,2,2-トリブロモエタノール(Alfa Aesar)、tert-アミルアルコール(2-メチル-2-ブタノール)(Spectrum))で麻酔した。マウスをShepherd Mark I照射装置(JL Shepherd&Associates)に入れた。鉛ブロックを使用して身体を放射線から遮蔽し、頭頸部領域を2回の5Gy線量(合計10Gy)に曝露して唾液腺(SG)を照射した。対照マウスを麻酔したが、放射線処理を受けなかった。正常な飼育に戻る前に、すべてのマウスを完全に回復させ、自由に柔らかい食餌(ClearHaO)を与えた。
【0256】
唾液収集
2%吸入イソフルランまたはアバチンを使用してマウスを麻酔した(放射線研究用)。12.5pi滅菌水中の5mgのクエン酸ナトリウム(Spectrum Chemical)をマウスの口に落とした。2分後、1枚の濾紙を動物の口に挿入し、麻酔下で5分間放置した。分泌された唾液の量は、精密スケール(Denver Instrument SI-64、di=0.1mg)を使用して、収集の前後の濾紙の重量を測定することによって決定された。
【0257】
組織処理
安楽死後、SGを収集し、スナップ凍結し、OCTに埋め込んだ。10pmの凍結した切片をクライオスタット(Leica)を使用して切り取り、免疫蛍光試験に使用した。
【0258】
免疫蛍光試験
組織切片免疫蛍光分析を以下のように処理した。簡単に説明すると、新鮮な凍結組織を4%のPFAで室温で10分間固定した後、0.5%のTriton(登録商標)-X100で室温で10分間透過処理した。組織を、0.01%PBS-Tween(登録商標)-20中の10%ロバ血清(Jackson Laboratories、ME)、5%BSA(Sigma Aldrich)、およびMOM IgGブロッキング試薬(Vector Laboratories、CA)を使用して室温で2時間ブロックした。SG切片を一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした:ウサギ抗AQP5(1:200、Millipore、AB3559)、ヤギ抗SOX2(1:200、Neuromics、GT15098)、ウサギ抗Ki67(1:200、AbCam、ab16667)、ラット抗Ki67(1:200、DAKO、M7249)、ウサギ-CHRM3(1:1000、Research Diagnostics、AS-3741S)、ラット抗E-カドヘリン(1:400、Invitrogen、13-1900)。Cy2-、Cy3-またはCy5-コンジュゲート二次Fab断片抗体(1:300、Jackson Laboratories)を使用して抗体を検出し、核はHoescht33342(1:1000、AnaSpec Inc.)を使用して染色した。Click-iT EdU Alexa-Fluor488または647キット(Invitrogen)を使用してEdU染色を実行した。Fluoromount-G(Southern Biotech)を使用してスライドを取り付け、LeicaSp5共焦点顕微鏡を使用して蛍光を分析した。画像処理および定量は、NIH ImageJソフトウェアを使用して実行した。
【0259】
統計
統計検定は、GraphPad Prismソフトウェアv8を使用して実行した。データは、平均値±SDとして提示され、2つのデータセットについては両側の対応のないスチューデントのt検定、または3つ以上のデータセットについては、テューキーの多重比較検定を使用する、通常の一元配置分散分析に供された。以下に示されたP値カットオフを使用して有意性を評価した:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、および****p<0.0001。特定のデータセット分析は、図の凡例に記載されている。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
口腔乾燥症の治療に使用するための、唾液腺への局所投与のために製剤化されたヒドロゲルに封入されたムスカリン作動薬を含む組成物。
(項目2)
前記ムスカリン作動薬が、M1および/またはM3ムスカリン受容体サブタイプに対して選択的である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記ムスカリン作動薬が、セビメリンである、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記ムスカリン作動薬が、ピロカルピンである、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記ヒドロゲルが、アルギネートを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記アルギネートが、イオン的に架橋されている、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記アルギネートが、二価カルシウムカチオンによってイオン的に架橋されている、項目6に記載の組成物。
(項目8)
前記ヒドロゲル中の前記アルギネートの濃度が、約2~約10重量パーセント(重量%)の範囲である、項目5~7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記アルギネートが、少なくとも部分酸化される、項目5~7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記アルギネートの約2%~約10%が酸化される、項目8に記載の組成物。
(項目11)
前記アルギネートの約2%が酸化され、前記ヒドロゲル中の前記アルギネート濃度が、約5重量%である、項目9に記載の組成物。
(項目12)
前記ヒドロゲルが、対象への投与後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間、前記ムスカリン作動薬の送達を維持する、項目1~11のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項目1~12のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
造影剤をさらに含む、項目1~13のいずれか一項に記載の組成物。
(項目15)
口腔乾燥症の対象を治療する方法であって、治療有効量の項目1~14のいずれか一項に記載の組成物を前記対象の唾液腺に局所投与することを含む、方法。
(項目16)
前記組成物が、前記唾液腺に、または前記唾液腺に隣接して注入される、項目15に記載の方法。
(項目17)
注入の前に、前記唾液腺の位置を特定するために、医用画像化または触診を実行することをさらに含む、項目15または16に記載の方法。
(項目18)
前記医用画像化が、超音波を実行することを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記組成物の複数の治療有効用量が、前記対象に投与される、項目15~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記口腔乾燥症が、放射線またはシェーグレン症候群による前記唾液腺の損傷によって引き起こされる、項目15~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記対象が、ペットまたは家畜である、項目15~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記対象が、哺乳動物である、項目15~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記哺乳動物が、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、またはブタである、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記哺乳動物が、ヒトである、項目22に記載の方法。
(項目25)
項目1~14のいずれか一項に記載の組成物と、口腔乾燥症を治療するための説明書と、を含むキット。
(項目26)
前記組成物を対象に送達するための手段をさらに含む、項目25に記載のキット。
(項目27)
アルギネートヒドロゲルに封入されたムスカリン作動薬を含む組成物を含有する第1のシリンジと、塩化カルシウムを含む溶液を含有する第2のシリンジと、ルアーロックとをさらに含み、前記第2のシリンジは、前記ルアーロックを介して前記第1のシリンジに接続され得る、項目25に記載のキット。
(項目28)
アルギネートヒドロゲルに封入された前記ムスカリン作動薬を含む前記組成物を含有する前記第1のシリンジが、凍結される、項目27に記載のキット。
(項目29)
前記ムスカリン作動薬が、セビメリンまたはピロカルピンである、項目25~28のいずれか一項に記載のキット。
(項目30)
唾液腺再生を促進することを必要とする対象における唾液腺再生を促進する方法であって、唾液腺の腺房前駆細胞および腺房細胞に、コリン作動薬またはムスカリン作動薬のうちの少なくとも1つを局所投与して、前記腺房前駆細胞および前記腺房細胞の増殖を促進し、それによって唾液産生を増加させることを含む、方法。
(項目31)
前記腺房前駆細胞が、SOX2
+
腺房前駆細胞である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記ムスカリン作動薬が、前記唾液腺への局所投与のために製剤化されたヒドロゲル中に封入される、項目30または31に記載の方法。
(項目33)
前記ヒドロゲルが、アルギネートを含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記アルギネートが、イオン的に架橋される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記アルギネートが、二価カルシウムカチオンによってイオン的に架橋される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記ヒドロゲル中の前記アルギネートの濃度が、2~10重量パーセント(重量%)の範囲である、項目33~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記アルギネートが、少なくとも部分酸化される、項目33~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記アルギネートの約2%~約10%が、酸化される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記アルギネートの約2%が、酸化され、前記ヒドロゲル中の前記アルギネート濃度が、約5重量%である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記ムスカリン作動薬が、M1および/またはM3ムスカリン受容体サブタイプに対して選択的である、項目30~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記ムスカリン作動薬が、セビメリンである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記ムスカリン作動薬が、ピロカルピンである、項目30~39に記載の方法。
(項目43)
前記ヒドロゲルが、前記対象への投与後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間、前記ムスカリン作動薬の送達を維持する、項目32~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記腺房前駆細胞が、Ki67
+
またはEdlT腺房前駆細胞である、項目30~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記ムスカリン作動薬に応答した前記腺房細胞増殖の結果として、唾液流量が増加する、項目30~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記唾液腺が、舌下線である、項目30~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記コリン作動薬が、アセチルコリンまたはアセチルコリン類似体のうちの少なくとも1つを含む、項目30~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記アセチルコリン類似体が、カルバコールを含む、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記腺房前駆細胞が、SOX27AQP57Ki67
+
細胞である、項目30~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記腺房前駆細胞が、ムチン(MUC)19-細胞である、項目30~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記対象の前記唾液腺からSOX2
+
腺房前駆細胞を単離し、前記SOX2
+
腺房前駆細胞を増大させることをさらに含む、項目30~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記増大された細胞が、前記少なくとも1つのコリン作動薬またはムスカリン作動薬の前記増大された細胞への制御放出を提供する操作された組織構築物または生体適合性基質で提供され、前記制御放出が、遅延放出、持続放出、勾配放出、時間放出、パターン化放出、または空間的放出のうちの少なくとも1つを含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記増大された細胞および前記少なくとも1つのコリン作動薬またはムスカリン作動薬が、生分解性天然ポリマーまたはマクロマー上および/またはその中に提供される、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記生分解性天然ポリマーまたはマクロマーが、ヒドロゲルを含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記対象が、口腔乾燥症を引き起こすのに有効な放射線で治療されている、項目30~54のいずれか一項に記載の方法。