(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】飼育装置
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
A01K67/033 502
(21)【出願番号】P 2023503285
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008447
(87)【国際公開番号】W WO2022185480
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 望
(72)【発明者】
【氏名】村田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】河合 重和
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇人
(72)【発明者】
【氏名】三戸 太郎
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-115875(JP,A)
【文献】特開2000-201570(JP,A)
【文献】特開昭62-055034(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1214248(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319334(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の飼育エリアを形成し、前記飼育エリアの少なくとも底部が開口された飼育エリア形成部材と、
前記飼育エリアの底面を形成し、帯状に形成され、前記飼育エリア形成部材に対して前記帯状の長手方向に移動可能に設けられた産卵床シートと、
前記産卵床シートに不要物が付着することから保護するためのシートであり、前記産卵床シートの上面に重ねて配置され、帯状に形成され、前記産卵床シートに重ねられた状態で前記産卵床シートと共に前記飼育エリア形成部材に対して前記帯状の長手方向に移動可能に設けられた保護シートと、
を備える、飼育装置。
【請求項2】
前記保護シートは、塵埃、餌、排泄物、前記生物の死骸の少なくとも一部を含む
前記不要物の通過を規制し、前記生物の産卵管の通過を可能とする、請求項1に記載の飼育装置。
【請求項3】
前記飼育装置は、さらに、
前記飼育エリアの下方に配置され、前記産卵床シートを載置した状態で前記産卵床シートを搬送するコンベアを備える、請求項1または2に記載の飼育装置。
【請求項4】
前記コンベアは、幅方向の一部に前記産卵床シートを載置し、前記幅方向の他の一部を餌の供給エリアとする、請求項3に記載の飼育装置。
【請求項5】
前記飼育装置は、さらに、
前記コンベアの搬送方向の上流側に配置され、前記飼育エリアに供給される前の前記産卵床シートを保持する産卵床シート保持部材を備え、
前記産卵床シートは、前記コンベアの搬送力により前記産卵床シート保持部材から引き出されることにより、前記飼育エリアの下方に供給される、請求項3又は4に記載の飼育装置。
【請求項6】
前記飼育装置は、さらに、
前記コンベアの搬送方向の下流側に配置され、前記飼育エリアから排出された前記産卵床シートを回収する産卵床シート回収容器を備える、請求項3-5の何れか1項に記載の飼育装置。
【請求項7】
前記飼育装置は、さらに、
前記飼育エリアの下方に配置され、前記産卵床シート及び前記保護シートを重ねて載置した状態で前記産卵床シート及び前記保護シートを搬送するコンベアと、
前記コンベアの搬送方向の上流側に配置され、前記飼育エリアに供給される前の前記産卵床シートを保持する産卵床シート保持部材と、
前記コンベアの前記搬送方向の上流側に配置され、前記飼育エリアに供給される前の前記保護シートを保持する保護シート保持部材と、
を備え、
前記産卵床シートは、前記コンベアの搬送力により前記産卵床シート保持部材から引き出されることにより、前記飼育エリアの下方に供給され、
前記保護シートは、前記コンベアの搬送力により前記保護シート保持部材から引き出されることにより、前記飼育エリアの下方に供給される、請求項1又は2に記載の飼育装置。
【請求項8】
前記飼育装置は、さらに、
前記飼育エリアの下方に配置され、前記産卵床シート及び前記保護シートを重ねて載置した状態で前記産卵床シート及び前記保護シートを搬送するコンベアと、
前記コンベアの搬送方向の下流側に配置され、前記産卵床シートを回収する産卵床シート回収容器と、
前記コンベアの前記搬送方向の下流側に配置され、前記産卵床シートと分離した状態で前記飼育エリアから排出された前記保護シートを回収する保護シート回収容器と、
を備える、請求項1又は2に記載の飼育装置。
【請求項9】
前記コンベアは、ベルトコンベアである、請求項3-8の何れか1項に記載の飼育装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼育装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コオロギの飼育装置が記載されている。この飼育装置においては、産卵、孵化、飼育を全て飼育ケース内で行う。飼育ケース内に配置された産卵容器に砕土と砂とからなる産卵用媒体を入れ、コオロギは産卵用媒体に産卵を行う。
【0003】
また、特許文献2には、昆虫を繁殖させるための設備が記載されている。当該設備は、産卵容器、初期幼虫用容器、蛹化容器等を有しており、各容器を搬送するベルトコンベアを備える。産卵容器には、コオロギの産卵管を進入可能な構造を有する産卵構造物が固定されている。卵の回収は、産卵容器をコンベアにて搬送することにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-191834号公報
【文献】特表2018-509167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の飼育ケースにおいては、産卵された卵を回収する際に、人が、産卵容器を飼育ケースから取り出し、産卵容器から産卵用媒体を取り出す必要がある。従って、卵を回収することに手間を要する。また、産卵容器の設置の際には、人が、産卵容器に産卵用媒体を取り付け、産卵容器を飼育ケースに設置する必要がある。
【0006】
特許文献2に記載の設備においては、卵を回収するためには、産卵構造物が固定された産卵容器ごと搬送される。そして、産卵容器から産卵構造物を取り外すことが必要となる。また、産卵エリアに産卵容器を設置する際には、事前に産卵容器に産卵構造物を取り付ける必要がある。
【0007】
本発明は、産卵床の設置及び回収を容易に行うことが可能な飼育装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生物の飼育エリアを形成し、前記飼育エリアの少なくとも底部が開口された飼育エリア形成部材と、
前記飼育エリアの底面を形成し、帯状に形成され、前記飼育エリア形成部材に対して前記帯状の長手方向に移動可能に設けられた産卵床シートと、
前記産卵床シートに不要物が付着することから保護するためのシートであり、前記産卵床シートの上面に重ねて配置され、帯状に形成され、前記産卵床シートに重ねられた状態で前記産卵床シートと共に前記飼育エリア形成部材に対して前記帯状の長手方向に移動可能に設けられた保護シートと、
を備える、飼育装置にある。
【0009】
産卵床シートは、飼育エリアの外部から飼育エリアの底面位置へ搬入されると共に、飼育エリアの底面位置から外部へ搬出される。つまり、産卵床の設置及び回収は、産卵床シートの移動によって行うことができる。そして、産卵床シートの当該移動を繰り返して行うことにより、産卵床の設置及び回収を繰り返し行うことができる。このように、産卵床の設置及び回収を非常に容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1のII方向から見た図、すなわち飼育装置の上面図である。
【
図7】他の例の飼育装置の図であって、
図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.飼育対象の生物)
飼育装置において飼育対象とする生物は、例えば、節足動物等の小生物である。飼育対象の生物は、例えば、食用、飼料用、研究用等に用いられる生物である。飼育対象の生物のうち昆虫としては、コオロギ、イナゴ、バッタ等があげられる。本例における飼育対象の生物は、昆虫のうち、バッタ目のコオロギやイナゴを好適な例として説明する。
【0012】
(2.飼育装置の概要)
本例における飼育装置は、飼育対象の生物の産卵期における飼育を行う。つまり、飼育装置は、成長した飼育対象の生物が産卵する間を飼育する。特に、飼育装置は、産卵された卵の収集を目的とする。なお、本例における飼育装置は、卵から孵化させ、孵化した幼虫を成長させるための装置と連結して、飼育対象の生物の一生を飼育する装置とすることもできる。
【0013】
(3.飼育装置1の構成)
飼育装置1の構成について、
図1-
図5を参照して説明する。飼育装置1は、
図1に示すように、飼育エリア形成部材10、コンベア20、給餌装置30、産卵床シート41、保護シート42、産卵床シート保持部材51、保護シート保持部材52、残餌回収容器61、産卵床シート回収容器62、保護シート回収容器63を備える。さらに、飼育装置1は、図示しないが、コンベア20及び給餌装置30を制御する制御装置を備える。
【0014】
飼育エリア形成部材10は、飼育対象の生物を飼育する飼育エリアA1,A2を形成する。飼育エリア形成部材10は、フレーム11と、飼育エリア設備12,13とを備える。
【0015】
フレーム11は、設置面に固定されており、例えば、水平方向を長手方向とする直方体状に形成されている。ただし、フレーム11の形状は、任意に設定できる。フレーム11は、水平方向に隣接する飼育エリアA1,A2を形成する。本例においては、2か所の飼育エリアA1,A2を形成する例をあげるが、1つの飼育エリアのみを形成しても良いし、3以上の飼育エリアを形成しても良い。飼育エリアA1,A2は、設置面から上方に離れた位置に位置し、少なくとも底部が開口されている。本例においては、飼育エリアA1,A2は、側方も開口している。なお、飼育エリアA1,A2は、側面及び上面を閉塞しても良い。
【0016】
飼育エリア設備12,13は、飼育エリアA1,A2に配置されており、複数の止まり部材を有する。止まり部材は、上下方向に延びるようにフレーム11に固定されており、飼育対象の生物が止まることが可能である。さらに、止まり部材は、生物にとって隠れ場所として機能する。
【0017】
止まり部材は、例えば、板部材であり、水平方向に対向して配列されている。本例では、止まり部材は、平板状に形成しているが、波状に形成しても良い。また、本例では、止まり部材は、フレーム11の長手方向(
図2の左右方向)に延在している。つまり、複数の止まり部材が、当該フレーム11の短手方向(
図2の上下方向)に対向して配列されている。なお、止まり部材は、当該フレーム11の長手方向に対向して配列しても良いし、傾斜する方向に対向して配列しても良い。
【0018】
また、止まり部材は、鉄、アルミニウム等の金属、樹脂、木材、紙、布等により形成されている。さらに、止まり部材は、昆虫等の生物が足場となるように、多数の細孔又は凹凸が全面に亘って形成されている。例えば、止まり部材は、パンチングメタル又は金網等により形成されている。止まり部材は、例えば、1-5[mm]の厚みを有し、直径約1[mm]、ピッチ約2[mm]程度の細孔を有している。また、隠れ場所として機能させるために、隣り合う止まり部材の間隔は、例えば、10-30[mm]とする。
【0019】
コンベア20は、飼育エリアA1,A2の下方に配置され、フレーム11の長手方向を搬送方向とするように配置されている。コンベア20は、飼育エリアA1,A2の底面を構成する。コンベア20は、例えば、ベルトコンベアである。ただし、コンベア20は、ベルトコンベアに代えて、ローラコンベア等を採用可能である。
【0020】
コンベア20は、一対の支持ローラ21,22、及び、一対の支持ローラ21,22に掛けられた無端状のベルト23を備える。支持ローラ21,22は、フレーム11に固定されている。一対の支持ローラ21,22の少なくとも一方を回転駆動することにより、ベルト23を連続して移動することが可能となる。コンベア20の搬送方向は、ベルト23の上面の移動方向となる。
図1においては、コンベア20の搬送方向は、右から左に向かう方向である。ベルト23の幅は、飼育エリアA1,A2の幅と同程度であり、ベルト23が、飼育エリアA1,A2の底面を構成する。
【0021】
ベルト23の上面は、飼育エリア設備12,13を構成する止まり部材の下端から僅かに下方に離れた位置に位置する。従って、ベルト23が移動する際に、ベルト23が止まり部材に接触しない。ベルト23の上面と止まり部材の下端との離間距離は、飼育対象の生物が両者間を乗り移ることができる程度とされている。
【0022】
給餌装置30は、飼育エリアA1,A2にて飼育されている生物に対して餌を供給するための装置である。給餌装置30は、フレーム11において、コンベア20の搬送方向の上流側に配置されている。給餌装置30は、コンベア20のベルト23の上面に餌を供給する。
【0023】
給餌装置30は、餌を保持するホッパ31と、ホッパ31の出口から餌を供給する状態と供給停止した状態とを切り替える回転ブラシ32とを備える。ホッパ31は、上端開口から下方に向かって通路面積が小さくなるように形成されている。回転ブラシ32は、ホッパ31の下端開口に設けられており、回転駆動時にコンベア20のベルト23の上面に餌を供給し、回転停止時に餌の供給を停止する。
【0024】
また、
図2及び
図5に示すように、給餌装置30の餌供給口は、コンベア20の幅方向の一方に寄った位置に位置する。本例では、給餌装置30の給餌供給口は、コンベア20の搬送方向を前方とした場合に、進行方向の右側に位置する。そして、給餌装置30から餌がベルト23の上面に供給された後に、ベルト23を搬送することにより、ベルト23の上面の餌が、飼育エリアA1,A2に供給される。このように、コンベア20は、幅方向の一部(
図2及び
図5の上側部分)を、餌供給エリアとする。
【0025】
産卵床シート41は、飼育対象の生物が産卵を行うための産卵床として機能させることが可能なシートである。ここで、産卵床は、保湿されていることに加えて、卵を保持可能であることが必要である。そこで、産卵床シート41は、水分を吸収したシートであって、例えば、紙、布等により形成される。そして、産卵床シート41は、産卵された卵を保持できる程度の厚みを有する。産卵床シート41は、飼育対象の生物の産卵管を刺すことが可能であって、生物の産卵管から送り出された卵を保持する。
【0026】
本例では、産卵床シート41は、連続した帯状に形成されている。そして、産卵床シート41は、少なくとも飼育エリアA1,A2の底面を形成する。詳細には、産卵床シート41は、コンベア20のベルト23の上面に接触した状態で重ねて載置されており、産卵床シート41の帯状の長手方向がコンベア20の搬送方向に一致するように配置されている。
【0027】
さらに、産卵床シート41は、コンベア20のベルト23の上面に接触しているため、コンベア20が搬送されることに伴って、産卵床シート41は、飼育エリア形成部材10に対して産卵床シート41の帯状の長手方向に移動可能となる。つまり、産卵床シート41は、コンベア20の上流から下流に向かって、コンベア20の搬送力によって飼育エリア形成部材10に対して移動する。このように、コンベア20は、産卵床シート41を載置した状態で産卵床シート41を搬送する機能を発揮する。
【0028】
なお、産卵床シート41は、コンベア20のベルト23と産卵床シート41との摩擦力によって搬送される。従って、コンベア20のベルト23の表面及び産卵床シート41の表面は、搬送力が伝達される程度の摩擦力を有する材料により形成される。
【0029】
ここで、
図2及び
図5に示すように、産卵床シート41は、コンベア20の幅方向の他の一方に寄った位置に位置する。本例では、産卵床シート41は、給餌装置30により供給される餌供給エリアとは異なる側の位置、すなわちコンベア20の搬送方向を前方とした場合に、進行方向の左側(
図2及び
図5の下側)に位置する。つまり、産卵床シート41は、ベルト23の上面において、餌供給エリアとは異なる位置に位置する。換言すると、ベルト23の上面が、コンベア20の幅方向において、餌供給エリアと産卵床エリアとに区画されている。
【0030】
一般に、餌を保湿された位置に長時間放置しておくと、カビ等によって餌の品質が低下する原因となる。一方、産卵床は、上述したように、保湿されていることが必要である。そこで、餌供給エリアと産卵床エリアとを別々に区画することにより、餌の品質低下を抑制できると共に、良好な産卵床を確保することができる。
【0031】
保護シート42は、産卵床シート41を保護するシートである。仮に、産卵床シート41が表面に露出していると、塵埃、餌、排泄物、生物の死骸等の少なくとも一部を含む不要物が産卵床シート41の表面に付着してしまい、後工程において、産卵床シート41から当該不要物を取り除く必要がある。産卵床シート41に当該不要物が付着することを防止するために、産卵床シート41を保護することができる保護シート42を利用する。
【0032】
保護シート42は、産卵床シート41の上面に重ねて配置されている。保護シート42は、当該不要物の通過を規制するのに対して、生物の産卵管の通過を可能とする。さらに、生物が保護シート42に産卵せずに産卵床シート41に産卵するようにするために、保護シート42の材質及び厚みが設定される。保護シート42は、例えば、産卵床シート41よりも薄膜に形成されており、例えば、生物の産卵管の長さよりも十分に薄く形成される。また、保護シート42は、樹脂フィルム、紙、布等により形成される。なお、保護シート42は、不要物の大きさよりも十分に小さな孔を有するようにしても良いし、孔を有さないようにしても良い。
【0033】
本例では、保護シート42は、産卵床シート41と同様に、連続した帯状に形成されている。さらに、保護シート42の幅は、産卵床シート41と同一、又は、産卵床シート41よりも大きくされている。そして、保護シート42は、少なくとも飼育エリアA1,A2の底面を形成する。保護シート42の上面が露出しており、保護シート42が、飼育エリアA1,A2の底面の表面を形成する。
【0034】
また、保護シート42は、産卵床シート41に重ねられている。つまり、保護シート42は、産卵床シート41の上面に接触した状態で載置されている。そして、保護シート42は、産卵床シート41と同様に、保護シート42の帯状の長手方向が、コンベア20の搬送方向に一致するように配置されている。
【0035】
さらに、保護シート42は、産卵床シート41の上面に接触しているため、コンベア20が搬送されることに伴って、保護シート42は、産卵床シート41と共に飼育エリア形成部材10に対して保護シート42の帯状の長手方向に移動可能となる。つまり、保護シート42は、産卵床シート41と同様に、コンベア20の上流から下流に向かって、コンベア20の搬送力によって飼育エリア形成部材10に対して移動する。このように、コンベア20は、産卵床シート41に加えて保護シート42を搬送する機能を発揮する。
【0036】
保護シート42は、産卵床シート41に接着していない。保護シート42は、産卵床シート41と保護シート42との摩擦力によって搬送される。従って、産卵床シート41の表面及び保護シート42の表面は、搬送力が伝達される程度の摩擦力を有する材料により形成される。
【0037】
また、生物が保護シート42の下に産卵床シート41の存在を気づくようにすることが必要である。そこで、保護シート42に複数の孔を形成し、産卵床シート41の上面の一部が、保護シート42の孔を介して露出すると良い。これにより、生物に対して、湿気を把握させることができ、産卵床シート41に産卵させることができる。また、保護シート42そのものに水分を含むようにしても良い。これにより、生物にとって産卵しやすい環境が形成され、産卵管が刺されることにより産卵床シート41に産卵される。
【0038】
産卵床シート保持部材51は、コンベア20の搬送方向の上流側に配置され、飼育エリアA1,A2に供給される前の産卵床シート41aを保持する。そして、保持されている産卵床シート41aが、コンベア20の搬送力により産卵床シート保持部材51から引き出されることにより、飼育エリアA1,A2の下方に供給される。
【0039】
例えば、産卵床シート保持部材51は、コンベア20の搬送方向の上流側においてフレーム11に固定された支軸と、支軸に自由回転可能に支持されたボビンとを備える。ボビンの外周面に、産卵床シート41aが巻回されている。つまり、産卵床シート保持部材51を構成するボビンに巻回された産卵床シート41aが、ボビンから引き出される。引き出された産卵床シート41aが、コンベア20のベルト23の上面に載置されることにより、飼育エリアA1,A2の底面である産卵床シート41を形成する。ここで、ボビンは自由回転可能であるため、コンベア20の搬送力によって、産卵床シート41aを産卵床シート保持部材51のボビンから容易に引き出すことが可能となる。
【0040】
保護シート保持部材52は、コンベア20の搬送方向の上流側に配置され、飼育エリアA1,A2に供給される前の保護シート42aを保持する。そして、保持されている保護シート42aが、コンベア20の搬送力により保護シート保持部材52から引き出されることにより、飼育エリアA1,A2の下方に供給される。
【0041】
例えば、保護シート保持部材52は、コンベア20の搬送方向の上流側においてフレーム11に固定された支軸と、支軸に自由回転可能に支持されたボビンとを備える。特に、保護シート保持部材52の支軸は、フレーム11において、産卵床シート保持部材51の支軸よりも上方に固定されている。ボビンの外周面に、保護シート42aが巻回されている。
【0042】
つまり、保護シート保持部材52を構成するボビンに巻回された保護シート42aが、ボビンから引き出される。引き出された保護シート42aが、コンベア20のベルト23の上面における産卵床シート41の上面に重ねられることにより、飼育エリアA1,A2の底面である産卵床シート41を保護する。ここで、ボビンは自由回転可能であるため、コンベア20の搬送力によって、保護シート42aを保護シート保持部材52のボビンから容易に引き出すことが可能となる。
【0043】
残餌回収容器61は、
図2及び
図4に示すように、コンベア20の搬送方向の下流側に配置され、給餌装置30から供給された残餌を回収する。残餌回収容器61は、コンベア20の下流側であって、コンベア20の幅方向の一方(
図2及び
図5の上側)に寄った位置に位置する。これにより、コンベア20のベルト23の上面を、常時清潔な状態に維持できる。また、残餌回収容器61は、ベルト23の上面の餌供給エリアにおける塵埃、排泄物、生物の死骸等の不要物も、残餌と共に収集する。
【0044】
産卵床シート回収容器62は、
図1-
図3,
図5に示すように、コンベア20の搬送方向の下流側に配置され、飼育エリアA1,A2から排出された産卵床シート41を回収する。産卵床シート回収容器62は、コンベア20の下流側であって、コンベア20の幅方向の他の一方(
図2及び
図5の下側)に寄った位置に位置する。産卵床シート回収容器62は、残餌回収容器61に対して、コンベア20の幅方向に隣接して配置される。産卵床シート回収容器62は、産卵床シート41がベルト23により搬送されることで、ベルト23の下流端から落下した産卵床シート41を受け入れ、産卵床シート41を折りたたみながら回収する。
【0045】
保護シート回収容器63は、
図1-
図3,
図5に示すように、コンベア20の搬送方向の下流側に配置され、飼育エリアA1,A2から排出された保護シート42を回収する。保護シート回収容器63は、コンベア20の下流側であって、コンベア20の幅方向の他の一方(
図2及び
図5の下側)に寄った位置に位置する。保護シート回収容器63は、産卵床シート回収容器62の下流側に隣接して配置される。保護シート回収容器63は、保護シート42がベルト23により搬送されることで、ベルト23の下流端から落下した保護シート42を受け入れ、保護シート42を折りたたみながら回収する。
【0046】
保護シート回収容器63は、産卵床シート41と分離した状態で、保護シート42を回収する。例えば、保護シート回収容器63は、コンベア20の下流端付近に配置された分離板63aを備え、分離板63aが、コンベア20の下流端にて、産卵床シート41と分離された保護シート42のみを誘導する。そして、保護シート回収容器63は、分離板63aにより分離して誘導された保護シート42のみを回収する。
【0047】
(4.飼育装置1の動作)
飼育装置1の動作について、
図1-
図6を参照して説明する。まず、作業者が、産卵床シート41aを産卵床シート保持部材51に巻回した状態で、産卵床シート保持部材51をフレーム11に設置する。さらに、作業者が、保護シート42aを保護シート保持部材52に巻回した状態で、保護シート保持部材52をフレーム11に設置する。産卵床シート保持部材51及び保護シート保持部材52は、コンベア20の上流側に設置される。
【0048】
続いて、作業者が、産卵床シート保持部材51に保持されている産卵床シート41aの先端側の一部を引き出して、引き出した産卵床シート41aをコンベア20のベルト23の上面に載置する。さらに、作業者が、保護シート保持部材52に保持されている保護シート42aの先端側の一部を引き出して、引き出した保護シート42aをコンベア20のベルト23の上面における産卵床シート41の上面に重ねる。
【0049】
続いて、作業者が、コンベア20を駆動して、コンベア20のベルト23の上面に重ねて配置された産卵床シート41及び保護シート42を、コンベア20の搬送方向の下流側の端まで搬送する。このとき、ベルト23と産卵床シート41との摩擦力、及び、産卵床シート41と保護シート42との摩擦力によって、産卵床シート41及び保護シート42が、ベルト23の搬送に伴って搬送される。
【0050】
続いて、作業者が、コンベア20の搬送方向の下流端に搬送された産卵床シート41の先端を産卵床シート回収容器62に入れ、保護シート42の先端を保護シート回収容器63に入れる。つまり、作業者は、産卵床シート41と保護シート42とを分離して、産卵床シート回収容器62と保護シート回収容器63のそれぞれに入れる。
【0051】
このようにして、飼育エリアA1,A2の下方においては、コンベア20の幅方向の一部分(
図2及び
図5の下側部分)に、コンベア20のベルト23、産卵床シート41及び保護シート42が重ねて配置されている。ベルト23の上面に産卵床シート41が重ねて載置され、産卵床シート41の上面に保護シート42が重ねて載置される。一方、飼育エリアA1,A2の下方において、コンベア20の幅方向の他の一部分(
図2及び
図5の上側部分)は、コンベア20のベルト23が露出している。
【0052】
続いて、作業者は、成虫である飼育対象の生物、又は、間もなく成虫になる幼虫である飼育対象の生物を、飼育エリアA1,A2に搬入する。ただし、作業者が飼育対象の生物の搬入を行うのではなく、搬送装置(図示しない)により、又は、コンベア20を利用することにより、自動的又は半自動的に、飼育対象の生物の搬入を行うようにしても良い。
【0053】
この状態で、制御装置が制御されることで、給餌装置30が、餌を飼育エリアA1,A2に供給する。具体的には、作業者が給餌装置30のホッパ31に餌を入れておき、制御装置により回転ブラシ32が駆動されることで、ホッパ31内の餌がコンベア20のベルト23の上面に供給される。餌がベルト23の上面に供給されると同時に、又は、餌がベルト23の上面に供給された後に、制御装置によりコンベア20が駆動されることにより、餌が飼育エリアA1,A2に搬送される。そして、餌が飼育エリアA1,A2に搬送された後には、一旦、コンベア20の駆動が停止されて、飼育対象の生物が餌を食することができるようにする。
【0054】
飼育期間中において、飼育対象の生物は、止まり部材を移動したり、止まり部材にて留まったり、ベルト23の上面に降りたりすることができる。飼育対象の生物は、ベルト23の上面の餌供給エリアに移動して餌を食する。また、飼育対象の生物が産卵する際には、
図6に示すように、生物は、産卵床シート41及び保護シート42が重ねられている産卵床エリアに移動して、産卵する。産卵の際には、生物は、産卵管を保護シート42に突き刺して、産卵床シート41の位置に到達させる。そして、生物は、産卵床シート41に産卵する。つまり、産卵された卵は、産卵床シート41に保持される。
【0055】
そして、飼育エリアA1,A2の底面のうち、餌供給エリアを形成するベルト23の上面には、供給された餌の他、塵埃、排泄物、生物の死骸等の不要物が存在する状態となる。また、飼育エリアA1,A2の底面のうち、産卵床エリアを形成する保護シート42の上面にも、同様に、餌、塵埃、排泄物、生物の死骸等の不要物が存在する状態となる。ここで、産卵床シート41の上面に保護シート42が重ねて配置されている。従って、上記不要物は、保護シート42の上面に存在し、産卵床シート41に付着することを抑制されている。
【0056】
そして、所定時間の経過後に、制御装置によりコンベア20が駆動されることにより、飼育エリアA1,A2の底面を形成する部分が、コンベア20の搬送方向の下流側へ移動する。そうすると、餌供給エリアを構成するベルト23の上面に存在していた不要物は、残餌回収容器61に回収される。
【0057】
さらに、制御装置によりコンベア20が駆動されることにより、産卵された産卵床シート41が産卵床シート回収容器62に回収される。作業者は、定期的に、産卵床シート回収容器62の中に回収された産卵床シート41を取り出すことで、産卵された卵を取得できる。さらに、制御装置によりコンベア20が駆動されることにより、保護シート42が、産卵床シート41と分離された状態で保護シート回収容器63に回収される。作業者は、定期的に、保護シート回収容器63の中に回収された保護シート42を取り出す。つまり、産卵床シート41と保護シート42とを別々に回収しているため、上記不要物は、保護シート42と共に、保護シート回収容器63に回収される。つまり、産卵床シート41は、上記不要物を分離した状態で、産卵床シート回収容器62に回収されることになる。
【0058】
上記のように、産卵床シート41は、飼育エリアA1,A2の外部から飼育エリアA1,A2の底面位置へ搬入されると共に、飼育エリアA1,A2の底面位置から外部へ搬出される。このように、産卵床の設置及び回収は、産卵床シート41の移動によって行うことができる。そして、産卵床シート41の当該移動を繰り返して行うことにより、産卵床の設置及び回収を繰り返し行うことができる。このように、産卵床の設置及び回収を非常に容易に行うことができる。さらに、保護シート42を産卵床シート41に重ねた状態で、産卵床シート41と共に移動することができるため、産卵床シート41を常に清潔な状態を維持することができる。
【0059】
(5.他の例の飼育装置2の構成)
他の例の飼育装置2の構成について、
図7を参照して説明する。上記の飼育装置1は、飼育エリアA1,A2の底面に、餌供給エリア及び産卵床エリアを有する構成とした。この他に、飼育装置2は、飼育エリアA1,A2の底面に、産卵床エリアのみを有する構成としても良い。この場合、産卵床シート41及び保護シート42が、コンベア20のベルト23の上面において、コンベア20の幅方向のほぼ全体に亘って配置される。この場合、給餌は、例えば、止まり部材に給餌容器(図示せず)を設置すれば良い。
【符号の説明】
【0060】
1,2:飼育装置、 10:飼育エリア形成部材、 11:フレーム、 12,13:飼育エリア設備、 20:コンベア、 21,22:支持ローラ、 23:ベルト、 30:給餌装置、 31:ホッパ、 32:回転ブラシ、 41,41a:産卵床シート、 42,42a:保護シート、 51:産卵床シート保持部材、 52:保護シート保持部材、 61:残餌回収容器、 62:産卵床シート回収容器、 63:保護シート回収容器、 63a:分離板、 A1,A2:飼育エリア