(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ロボット制御装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20241202BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2020080586
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】315014671
【氏名又は名称】東京ロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 史朗
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-204145(JP,A)
【文献】特開2016-81403(JP,A)
【文献】特開2001-129787(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147149(WO,A1)
【文献】特表2013-537487(JP,A)
【文献】山下翔平,外3名,”移動ロボットの顔向きによるすれ違いやすさの評価”,ロボティクスメカトロニクス講演会2019講演会論文集,一般社団法人日本機械学会,2019年06月05日,p.1A1-B14(1)-(4)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ロボットを制御するロボット制御装置であって、
現在地から目的地までの移動経路を生成する移動経路生成部と、
生成された前記移動経路に沿って前記移動ロボットを移動させる移動制御部と、
所定距離内における前記移動経路上の障害物を検出する障害物検出部と、
前記障害物を前記移動経路から除くための所定の対応を実行する障害物対応部と、
を備え、
前記移動ロボットは、正面に顔部を備える頭部と、
前記頭部を駆動する駆動手段と、を備え、
前記障害物検出部は、前記障害物が人か否かを検出し、
前記障害物対応部は、前記障害物が人か否かに応じて選択した一又は複数の前記所定の対応を実行し、
検出した前記障害物が人である場合は、
前記障害物検出部は、前記人の頭の位置を検出し、
前記障害物対応部は、前記所定の対応として、前記
移動ロボットの前記駆動手段を制御して前記
移動ロボットの前記顔部を前記人の頭に向ける、ロボット制御装置。
【請求項2】
検出した前記障害物が人であって、かつ当該人が複数いる場合に前記移動ロボットに最も近い人を特定する特定部をさらに備え、
前記障害物対応部は、前記所定の対応として前記
移動ロボットの前記顔部を前記人の頭に向ける場合は、前記
移動ロボットの前記顔部を前記特定部が特定した前記人の頭に向ける、請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
検出した前記障害物が人であって、かつ当該人が複数いる場合に前記移動ロボットが移動した際に最初に接触あるいは衝突すると予測される人を特定する特定部をさらに備え、
前記障害物対応部は、前記所定の対応として前記
移動ロボットの前記顔部を前記人の頭に向ける場合は、前記
移動ロボットの前記顔部を前記特定部が特定した前記人の頭に向ける、請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
検出した前記障害物が人ではない場合は、
前記障害物検出部は、前記移動ロボットの周辺にいる人の頭の位置を検出し、
前記障害物対応部は、前記所定の対応として、前記駆動手段を制御して前記顔部を周辺にいる前記人の頭に向ける、請求項1から3のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記所定の対応として、所定の報知を行うための報知手段をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記移動ロボットは前記報知手段としてスピーカを備え、
前記障害物対応部は、前記所定の対応として、前記障害物が人か否かに応じて選択される所定の音を前記スピーカを用いて出力する、請求項5に記載のロボット制御装置。
【請求項7】
前記所定の音は、働きかけの強さが異なる複数種類の音声を含み、
前記障害物対応部は、前記所定の音の種類を所定の時間毎に働きかけの度合いが強くなるように変更する、請求項6に記載のロボット制御装置。
【請求項8】
前記障害物対応部は、前記所定の音の音量を所定の時間毎に大きくする、請求項6又は7に記載のロボット制御装置。
【請求項9】
前記障害物対応部が出力する前記所定の音の種類、音量、出力回数、および出力継続時間の少なくとも一つ以上は、予め設定可能に構成される、請求項6から8のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項10】
前記スピーカは、前記所定の音が前記
移動ロボットの前記頭部から出力されるように配置される、請求項6から9のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項11】
前記障害物対応部は、前記報知手段による働きかけの強さを所定の時間毎に変更する、請求項5から10
のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項12】
前記移動経路生成部は、前記障害物が検出された場合に、現在地から当該障害物を回避して前記目的地に到達する移動経路を生成し、
前記障害物対応部は、現在地から前記障害物を回避して前記目的地に到達する移動経路が生成できなかった場合に、前記所定の対応を実行する、請求項1から11のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項13】
前記移動経路生成部は、前記障害物が検出された場合であって、かつ前記障害物対応部が前記所定の対応を実行してから所定時間経過しても前記障害物が前記移動経路から除かれない場合に、現在地から当該障害物を回避して前記目的地に到達する移動経路を生成する、請求項1から11のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項14】
前記移動制御部は、移動中に前記障害物が検出された場合は、前記移動ロボットを減速又は停止させる、請求項1から13のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項15】
前記障害物対応部は、前記障害物が検出された場合に前記移動ロボットが停止した場合には、前記所定の対応として、前記移動ロボットの停止状態を維持する、請求項14に記載のロボット制御装置。
【請求項16】
前記移動ロボットはマニピュレータ機構を有する一又は複数の腕部をさらに備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項17】
前記障害物対応部は、検出した前記障害物が人ではない場合に、前記所定の対応として前記腕部を用いて前記障害物を指し示す、請求項16に記載のロボット制御装置。
【請求項18】
移動ロボットを制御するロボット制御方法であって、
現在地から目的地までの移動経路を生成する移動経路生成ステップと、
生成された前記移動経路に沿って前記移動ロボットを移動させる移動制御ステップと、
前記移動経路上の障害物を検出する障害物検出ステップと、
前記障害物を前記移動経路から除くための所定の対応を実行する障害物対応ステップと、を含み、
前記障害物検出ステップでは、前記障害物が人か否かを検出し、
前記障害物対応ステップでは、前記障害物が人か否かに応じて選択した一又は複数の前記所定の対応を実行し、
前記障害物検出ステップにおいて、検出した前記障害物が人である場合は、
前記障害物検出ステップにおいて、前記人の頭の位置を検出し、
前記障害物対応ステップにおいて、前記所定の対応として、前記移動ロボットの頭部の正面に設けられた顔部を前記人の頭に向ける、
ロボット制御方法。
【請求項19】
移動ロボットを制御するロボット制御プログラムであって、
現在地から目的地までの移動経路を生成する移動経路生成ステップと、
生成された前記移動経路に沿って前記移動ロボットを移動させる移動制御ステップと、
前記移動経路上の障害物を検出する障害物検出ステップと、
前記障害物を前記移動経路から除くための所定の対応を実行する障害物対応ステップと、を含み、
前記障害物検出ステップでは、前記障害物が人か否かを検出し、
前記障害物対応ステップでは、前記障害物が人か否かに応じて選択した一又は複数の前記所定の対応を実行し、
前記障害物検出ステップにおいて、検出した前記障害物が人である場合は、
前記障害物検出ステップにおいて、前記人の頭の位置を検出し、
前記障害物対応ステップにおいて、前記所定の対応として、前記移動ロボットの頭部の正面に設けられた顔部を前記人の頭に向ける、
ロボット制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ロボットの制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や倉庫のみならず、商業ビルや空港、介護施設等、様々な場所にロボットが適用されている。例えば特許文献1では、工場で人と共有する作業領域を自律走行する人協働型の移動ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、移動ロボットが計画した目的地までの移動経路を移動する際、障害物が移動経路に立ち塞がることがある。特許文献1の移動ロボットは、移動経路を立ち塞ぐ障害物と接触した場合には、接触時に加わる力を検知して、移動ロボットの移動を停止するように構成される。
【0005】
このような移動ロボットの移動経路に障害物がある場合は、移動経路上の障害物に周囲の人間が気づき、これを取り除くまでは移動経路を確保することができないので、作業効率が低下するという課題がある。
【0006】
本発明は、上述の技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、移動経路上に障害物がある場合でも作業効率を低下させないロボット制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的課題は、以下の構成を有するロボット制御装置等により解決することができる。
【0008】
すなわち、本発明に係るロボット制御装置は、移動ロボットを制御するロボット制御装置であって、現在地から目的地までの移動経路を生成する移動経路生成部と、生成された前記移動経路に沿って前記移動ロボットを移動させる移動制御部と、所定距離内における前記移動経路上の障害物を検出する障害物検出部と、前記障害物を前記移動経路から除くための所定の対応を実行する障害物対応部と、を備え、前記障害物検出部は、前記障害物が人か否かを検出し、前記障害物対応部は、前記障害物が人か否かに応じて選択した一又は複数の前記所定の対応を実行する。
【0009】
このような構成によれば、移動経路上に障害物が検出された場合に、当該障害物を移動経路から除くために実行する所定の対応を障害物が人か否かに応じて選択することができるので、障害物に応じてより適切な働きかけを選択し、移動経路から障害物を効率よく取り除くことができる。これにより、移動経路上に障害物が検出された場合でも、移動ロボットの作業効率の低下を抑制することができる。また、後述する所定の対応を複数組み合わせて実行することもできるので、よりきめ細かい、多様な対応を実現することが可能となり、障害物をより効率的に取り除くことができる。
【0010】
前記移動ロボットは、正面を顔部とする頭部と、前記頭部を駆動する駆動手段と、をさらに備え、検出した前記障害物が人である場合は、前記障害物検出部は、前記人の頭の位置を検出し、前記障害物対応部は、前記所定の対応として、前記駆動手段を制御して前記顔部を前記人の頭に向ける、ものであってよい。
【0011】
このような構成によれば、障害物が人である場合に当該人の頭に顔部を向けるので、当該人に対して移動経路から立ち退くことを積極的に促すことができる。
【0012】
検出した前記障害物が人であって、かつ当該人が複数いる場合に前記移動ロボットに最も近い人を特定する特定部をさらに備え、前記障害物対応部は、前記所定の対応として前記顔部を前記人の頭に向ける場合は、前記顔部を前記特定部が特定した前記人の頭に向ける、ものであってよい。
【0013】
このような構成によれば、障害物としての人が複数人検出された場合であっても、人の行動原理と同様の順番で特定された人に対して、順次、違和感なく退避を促すことができる。
【0014】
前記移動ロボットは、正面を顔部とする頭部と、前記頭部を駆動する駆動手段と、をさらに備え、検出した前記障害物が人ではない場合は、前記障害物検出部は、前記移動ロボットの周辺にいる人の頭の位置を検出し、前記障害物対応部は、前記所定の対応として、前記駆動手段を制御して前記顔部を周辺にいる前記人の頭に向ける、ものであってよい。
【0015】
このような構成によれば、障害物が物である場合に、周囲にいる人の頭に顔部を向けるので、障害物を移動経路から取り除くことを周囲にいる人に積極的に訴えることができる。
【0016】
前記所定の対応として、所定の報知を行うための報知手段をさらに備える、ものであってよい。
【0017】
このような構成によれば、報知手段を用いて、障害物を移動経路から取り除くことを周囲にいる人により明確に訴えることができる。
【0018】
前記移動ロボットは前記報知手段としてのスピーカをさらに備え、前記障害物対応部は、前記所定の対応として、前記障害物が人か否かに応じて選択される所定の音を前記スピーカを用いて出力する、ものであってよい。
【0019】
このような構成によれば、スピーカを用いて人の聴覚に訴えることができるので、障害物を移動経路から除くことをより強く、より明確に訴えることができる。また、出力する音は、障害物が人か否かに応じて選択されるので、より適切な音を選択して、障害物を移動経路から効率よく取り除くことができる。
【0020】
前記所定の音は、働きかけの強さが異なる複数種類の音声を含み、前記障害物対応部は、前記所定の音の種類を所定の時間毎に働きかけの度合いが強くなるように変更する、ものであってよい。
【0021】
このような構成によれば、働きかけの強さを徐々に強くすることができるので、いきなり強い言葉を発するなどして人を不快にさせることなく、人の行動に応じて段階的に強くなる適切な強度での働きかけを実現することができる。
【0022】
前記障害物対応部は、前記所定の音の音量を所定の時間毎に大きくする、ものであってよい。
【0023】
このような構成によれば、いきなり大音量を発するなどして人を驚かせることなく、人の行動に応じて段階的に大きくなる適切な音量での働きかけを実現することができる。
【0024】
前記障害物対応部が出力する前記所定の音の種類、音量、出力回数、および出力継続時間の少なくとも一つ以上は、予め設定可能に構成される、ものであってよい。
【0025】
このような構成によれば、移動ロボットが適用される場所等に応じた適切な音を設定することが可能になる。
【0026】
前記スピーカは、前記所定の音が前記頭部から出力されるように配置される、ものであってよい。
【0027】
このような構成によれば、所定の音を、人と略同様の位置から出力することができるので、音を聞く側の人に違和感を生じさせず、より効果的に音を伝えることができる。
【0028】
前記障害物対応部は、前記報知手段による働きかけの強さを所定の時間毎に変更する、ものであってよい。
【0029】
このような構成によれば、前記報知手段によって、人の行動に応じて段階的に強くなる適切な強度での働きかけを実現することができる。
【0030】
前記移動経路生成部は、前記障害物が検出された場合に、現在地から当該障害物を回避して前記目的地に到達する移動経路を生成し、前記障害物対応部は、現在地から前記障害物を回避して前記目的地に到達する移動経路が生成できなかった場合に、前記所定の対応を実行する、ものであってよい。
【0031】
このような構成によれば、移動経路上に障害物が検出された場合には、当該障害物を回避して目的地まで到達可能な移動経路が再生成され、又、そのような経路が再生成されなかった場合には、障害物を移動経路から除くための所定の対応が実行されるので、移動ロボットが目的地までの移動経路を積極的に確保して、作業効率を高めることができる。
【0032】
前記移動経路生成部は、前記障害物が検出された場合であって、かつ前記障害物対応部が前記所定の対応を実行してから所定時間経過しても前記障害物が前記移動経路から除かれない場合に、現在地から当該障害物を回避して前記目的地に到達する移動経路を生成する、ものであってよい。
【0033】
このような構成によれば、移動経路上に障害物が検出された場合には、障害物を移動経路から除くための所定の対応が実行され、その後所定時間経過しても障害物が移動経路から取り除かれない場合には、当該障害物を回避して目的地まで到達可能な移動経路が再生成されるので、移動ロボットが目的地までの移動経路を積極的に確保して、作業効率を高めることができる。
【0034】
前記移動制御部は、移動中に前記障害物が検出された場合は、前記移動ロボットを減速又は停止させる、ものであってよい。
【0035】
このような構成によれば、移動経路の再設定、又は障害物への所定の対応を、障害物に接触または衝突する前に、安全に実行することができる。
【0036】
障害物対応部は、前記障害物が検出された場合に前記移動ロボットが停止した場合には、前記所定の対応として、前記移動ロボットの停止状態を維持する、ものであってよい。
【0037】
このような構成によれば、例えば、移動ロボットの作業を停止させてでも静かに運用したい状況にも対応できる移動ロボットを提供することができる。
【0038】
前記移動ロボットは、マニピュレータ機構を有する一又は複数の腕部をさらに備える、ものであってよい。
【0039】
このような構成によれば、上述の各機能を備える移動マニピュレータを実現することができる。
【0040】
前記障害物対応部は、検出した前記障害物が人ではない場合に、前記所定の対応として前記腕部を用いて前記障害物を指し示す、ものであってよい。
【0041】
このような構成によれば、移動経路から取り除いてほしい障害物を周囲の人により的確に伝えることができる。
【0042】
本発明は、方法として観念することもできる。すなわち、本発明にかかるロボット制御方法は、移動ロボットを制御するロボット制御方法であって、現在地から目的地までの移動経路を生成する移動経路生成ステップと、生成された前記移動経路に沿って前記移動ロボットを移動させる移動制御ステップと、前記移動経路上の障害物を検出する障害物検出ステップと、前記障害物を前記移動経路から除くための所定の対応を実行する障害物対応ステップと、を含み、前記障害物検出ステップでは、前記障害物が人か否かを検出し、前記障害物対応ステップでは、前記障害物が人か否かに応じて選択した一又は複数の前記所定の対応を実行する。
【0043】
本発明は、コンピュータプログラムとして観念することもできる。すなわち、本発明に係るロボット制御プログラムは、移動ロボットを制御するロボット制御プログラムであって、現在地から目的地までの移動経路を生成する移動経路生成ステップと、生成された前記移動経路に沿って前記移動ロボットを移動させる移動制御ステップと、前記移動経路上の障害物を検出する障害物検出ステップと、前記障害物を前記移動経路から除くための所定の対応を実行する障害物対応ステップと、を含み、前記障害物検出ステップでは、前記障害物が人か否かを検出し、前記障害物対応ステップでは、前記障害物が人か否かに応じて選択した一又は複数の前記所定の対応を実行する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、移動経路上に障害物がある場合でも作業効率を低下させないロボット制御装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、ロボット制御装置が適用される移動ロボットの概略構成図である。
【
図2】
図2は、移動ロボットの外観を示
す概略構成図である。
【
図3】
図3は、移動ロボットの頭部を説明する図である。
【
図4】
図4は、移動制御を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、移動処理を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、移動経路上の障害物を検出する方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、障害物対応処理を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、人対応処理の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[実施形態]
図1から
図3は、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置(コントローラ1)が適用される移動ロボット100の構成を説明する図である。移動ロボット100は、人と共有の作業領域内を移動することが想定されるロボットであって、例えば、工場等で部品をピックして所定場所に運搬する機能等を有する移動マニピュレータや、空港等の施設で旅行者等を案内するサービスロボット等に適用されてよい。本実施形態では、移動ロボット100が、
図2に示すような頭部30とマニピュレータ機構を有する腕部40とを備える略人型の移動マニピュレータに適用された例について説明する。
【0047】
図1に示すとおり、本実施形態の移動ロボット100は、移動ロボット100の動作を制御するロボット制御装置として機能するコントローラ1と、移動機構駆動手段2と、頭部駆動手段3と、検出手段4と、報知手段5と、を含んで構成される。
【0048】
コントローラ1は、移動経路生成部11、移動制御部12、障害物検出部13、および障害物対応部14等の機能部を有する。コントローラ1は、例えば、プロセッサとしての中央演算装置(CPU)、記憶媒体としての読み出し専用メモリ(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等がバスを介して接続されて構成される情報処理装置である。また、コントローラ1が備えるROMには、前述の各機能部がそれぞれに有する各機能を実行するためのプログラム(制御プログラム)が格納されている。すなわち、コントローラ1は、記憶媒体に格納された各種プログラムを実行することによって、移動経路生成部11、移動制御部12、障害物検出部13、および障害物対応部14の各機能部の機能を実現するように構成される。なお、コントローラ1を構成するプロセッサおよび記憶媒体として上述した構成は例示であって、これらに加えて、或いは代えて、GPU、フラッシュメモリ、ハードディスク、ストレージ等を含んでもよい。また、上述の各機能部の機能は、必ずしもコントローラ1のみによって実現される必要はなく、機能部毎に適宜選択された複数のコントローラがそれぞれ、或いは協調することによって実現されるように構成されてもよい。コントローラ1の各機能部の機能について以下説明する。
【0049】
移動経路生成部11は、移動ロボット100が移動しようとする経路(移動経路)を生成する。具体的には、移動経路生成部11は、作業領域の地図情報(マップデータ)に基づいて所定位置から目的地までの経路を生成するパスプランニングを実行する。生成された経路は移動ロボット100の移動経路として設定される。ここでの所定位置は、予め定められた所定の位置であってもよいし、移動ロボット100の現在位置であってもよい。移動経路生成部11が実行するパスプランニングの具体的な手法は特に限定されず、既存の移動マニピュレータ等の移動ロボットに用いられている公知の手法が適宜採用されてよい。
【0050】
移動制御部12は、移動経路生成部11が生成した移動経路に沿って移動ロボット100を移動させるために、移動機構駆動手段2を制御する。このように、本実施形態の移動ロボット100は、生成した移動経路に沿って自律的に移動するいわゆる自律走行型の移動ロボットとして構成される。移動機構駆動手段2については
図2を参照して後述する。
【0051】
検出手段4は、移動ロボット
100の周囲環境に存在する障害物を検出する。ここでの障害物は、物だけでなく人も含む。また、検出手段4は、障害物を検出する手段として用いられるだけでなく、移動ロボット100が自律走行するために移動ロボット100の周辺環境を認識するための手段としても構成されてよい。検出手段4は、例えば、センサ(イメージセンサ、ライダ、レーザスキャナ等)、ステレオカメラ等の少なくとも一つを含む。本実施形態の検出手段4は、イメージセンサから構成されるものとし、検出手段4を以下ではセンサ4とも称する。なお、イメージセンサは、光学系を通して検出した光を電気信号に変換する撮像素子を有するセンサであってその種類については特に制限されない。センサ4は、少なくとも前方を含む周囲環境に存在する障害物を検出可能に構成され、例えば、
図3(a)で示す顔部31に構成された人の目に相当する部分等に設けられてよい。また、いわゆる360度カメラと言われるような全方位を検出できるセンサ4が例えば頭部30の頭頂部に設けられてもよい。本実施形態のセンサ4は、移動ロボット100の少なくとも前方を含む周辺に存在する障害物の位置、及び障害物が人である場合には当該人の位置と姿勢を認識可能な画像データを検出して、検出データ(画像データ)をコントローラ1(障害物検出部13)に送信する。
【0052】
障害物検出部13は、センサ4が取得した検出データ(画像データ)に基づいて、移動経路上の障害物を検出する。また、障害物検出部13は、障害物が人であるか否かを識別し、障害物が人である場合には当該人の位置と姿勢を検出する。さらに、障害物検出部13は、移動経路上の障害物だけでなく、移動ロボット100の周辺に存在する人の位置と姿勢を検出するように構成されてよい。ただし、障害物検出部13が検出する人の姿勢は、必ずしも体全体の構えではなく、少なくとも人の頭の位置が検出可能であればよい。なお、画像データに基づいて人の位置と姿勢とを検出する手法として、公知の種々の手法を採用し得るが、本実施形態では、画像データから人の骨格(ボーン)を検出して人の位置と姿勢とを検出する手法(ボーンモデル)が採用されてよい。これにより、障害物検出部13は、移動経路上、および移動ロボット100の周辺にいる人の頭の位置を容易に検出することができる。
【0053】
また、障害物検出部13が検出する「移動経路上にある障害物」とは、移動ロボット100が移動経路上を移動した際に、障害物に接触あるいは衝突するおそれのある障害物を含んでもよい。換言すれば、ここでの「移動経路」は、移動ロボット100が移動する予定の経路に対応して引かれる単なる線として観念されるだけでなく、移動ロボット100の水平方向幅に対応する幅を持つ帯として観念されてよい。「移動経路上にある障害物」の検出方法の具体例については
図8を参照して後述する。
【0054】
障害物対応部14は、障害物検出部13が障害物を検出した場合に、当該障害物に対する所定の対応を実行する。ここでの所定の対応は、例えば、頭部30を駆動する、報知手段5から所定の報知を行う、等の対応を含む。所定の対応は、障害物の種類(例えば人か否か)や状況に応じて適宜選択されてよい。所定の対応の詳細については
図9および
図10を参照して後述する。
【0055】
頭部方向制御部14aは、移動ロボット100に備わる頭部30(
図2参照)を駆動するために、頭部駆動手段3を制御する。具体的には、頭部方向制御部14aは、頭部駆動手段3を介して頭部30の正面の向く方向を制御する。頭部駆動手段3の詳細については
図2を参照して後述する。なお、本実施形態の頭部方向制御部14aは、障害物対応部14の一機能部として説明される。
【0056】
報知制御部14bは、報知手段5を用いて所定の報知を行う。本実施形態の報知手段5はスピーカとし、報知手段5を以下ではスピーカ5とも称する。すなわち、報知制御部14bは、スピーカ5を用いて所定の音を出力する。所定の音の詳細については後述する。なお、本実施形態の報知制御部14bは、障害物対応部14の一機能部として説明される。
【0057】
図2は、移動ロボット100の構成を説明する図であって、主に移動ロボット100の外観例を示す。
【0058】
図示するように、本実施形態の移動ロボット100は、略人型の形状を有しており、ロボット本体部10と、ロボット本体部10を支持する移動台車20と、ロボット本体部10の上端に設けられた頭部30と、ロボット本体部10の前面から延びる腕部40とから構成されている。
【0059】
ロボット本体部10を支持する移動台車20は、主に、移動ロボット100が置かれた面(床面)の上を移動する機能を有する。移動台車20の種類は特に制限されないが、本実施形態では全方位移動台車が採用される。全方位移動台車とは、例えば駆動輪として複数のオムニホイールを備える等して、全方向に移動することができるように構成された台車である。本実施形態の移動台車20は、
図2で示されるように、外観に表されるスカート21の内側に、三つの駆動輪22と、駆動輪22をベルト等を介して駆動するための移動機構駆動手段2とから構成されてよい。本実施形態の移動機構駆動手段2は一または複数のモータから構成されるものとし、以下では、移動機構駆動手段2をモータ2とも称する。
【0060】
頭部30は、略人型の移動ロボット100において、人の頭(首より上の部分)に相当する構成としてロボット本体部10の上端に設けられてよい。また、頭部30は、人がその正面を顔として認識できるように構成されるのが望ましい。頭部30は、正面が向く方向を制御可能に構成される。具体的には、本実施形態の移動ロボット100は、一又は複数の頭部駆動手段3(アクチュエータ3)を備え、頭部駆動手段3を介して頭部を動かすことによりその正面の向きを制御できるように構成される。なお、以下では、頭部30の正面を顔部31と称する。
【0061】
本実施形態の移動ロボット100は、頭部30を床面に対して水平方向(左右方向)に回転させる鉛直方向の回転軸を有し頭部30の左右方向への回転駆動を可能とする頭部駆動手段3(サーボモータ3a)を有する。これにより、移動ロボット100は、頭部30のみを鉛直方向に対して左右へ回転駆動させることができる。ただし、サーボモータ3aの配置は、図示する配置に制限されず、顔部31の向きを左右方向に動かすことができる限り適宜変更されてよい。例えば、サーボモータ3aは、ロボット本体部10を移動台車20に対して左右へ回転駆動させるようにロボット本体部10の下端に設けられてもよい。この場合、サーボモータ3aは、頭部30をロボット本体部10とともに垂直方向に対して左右へ回転駆動させることにより顔部31の向きを変えることができる。
【0062】
また、移動ロボット100は、頭部30を床面に対して上下方向に駆動させる水平方向の回転軸を有し頭部30の上下を仰ぎ見る動作を可能とする頭部駆動手段3(サーボモータ3b)を有してもよい。これにより、移動ロボット100は、顔部31の向きを上下方向にも動かすことができる。
【0063】
図3は、本実施形態の頭部30の構成例をより具体的に説明する図である。頭部30の形状は、正面を顔部31として認識できる限り特に制限されない。例えば、顔部31は、正面を顔部31として容易に認識されるように、頭部30の正面部分にのみ視認される構造的な特徴を有していることが望ましい。例えば、
図3(a)のように、人の顔を模した二つの目に相当する構成を頭部30の正面にのみ設けることにより、正面が顔部31として容易に認識され得る。また、
図3(b)に示すように、例えば透過部材からなる特徴的な部分(太矢印で示す部分)が頭部30の正面にのみ設けられてもよい。或いは、図示しないが、例えば略長球形等の頭部30において、正面のみを平面にする等してもよい。
【0064】
また、頭部30は、図示するように、人間の首に相当する構成(頸部)を介してロボット本体部10に設けられてもよいし、ロボット本体部10の上端に直接設けられてもよい。すなわち、サーボモータ3a、3bは、頸部に設けられてもよいし、頭部30に設けられてもよい。また、検出手段4は、頭部30において、例えば、
図3(a)に示す目に相当する部分や、
図3(b)に示す透過部材からなる部分から外部環境を検出するように設けられてもよい。また、スピーカ5は、頭部30、例えば顔部31から音を出力するように設けられてよい。以上が頭部30の構成例である。
図2に戻って説明を続ける。
【0065】
図2に示すとおり、本実施形態の移動ロボット100はロボット本体部10の前面に腕部40を備える。腕部40は、マニピュレータ機構を備え、運搬する部材等を把持するための把持機構41が自由端に相当する先端に設けられている。ただし、腕部40の形状、数、および配置は図示する態様に制限されず目的に応じて適宜変更されてよい。例えば、移動ロボット100は、ロボット本体部10の両側面に腕部40を備える双腕ロボットとして構成されてもよい。
【0066】
以上が、本実施形態の移動ロボット100の構成例である。なお、移動ロボット100は、
図2では省略されているが、移動ロボット100の動作を制御するのに必要となる他の構成、例えば、腕部40等を駆動する他のアクチュエータや、電力源となるバッテリ等を備えてもよい。
【0067】
次に、
図4から
図10を参照して、移動ロボット100の動作について説明する。
【0068】
図4は、本実施形態の移動ロボット100が行う移動制御を説明するフローチャートである。コントローラ1が備える記憶媒体には、図示のフローチャートを参照して以下に説明する処理を実行する制御プログラムが格納されている。
【0069】
ステップS11では、コントローラ1はタスク取得処理を実行する。タスク取得処理は、移動ロボット100が後述の移動経路生成処理(S12)によって移動経路を生成するために必要な情報を取得するための処理である。タスク取得処理では、例えば、ピックする部品の識別情報(部品ID)や目的地の位置情報(例えば位置座標)等が取得される。取得方法に制限はなく、例えば公知の無線通信技術を利用して取得してもよいし、不図示の情報入力手段(例えばタッチパネル等)を介して取得するように構成されてもよい。
【0070】
ステップS12では、コントローラ1(移動経路生成部11)は、現在地から目的地までの移動経路を生成する。目的地は、タスク取得処理によって取得した情報に応じて設定されてよい。例えば、タスク取得処理によって部品IDを取得した場合には、移動経路生成部11は、当該部品IDにより特定される部品が置かれている場所を目的地とし、現在地から当該目的地までの経路を生成する。生成された経路は、移動ロボット100の移動経路として設定される。その際、候補となる経路が複数生成された場合には目的地まで最も早く到達できる経路または目的地までの距離が最も短い経路を優先する等の設定条件が予め定められていてもよい。目的地までの移動経路が設定されると、移動ロボット100を目的地まで移動させるための移動処理が実行される(S13)。
【0071】
ステップS13では、コントローラ1(移動制御部12)は、移動ロボット100を目的地まで移動させる移動処理を実行する。移動処理では、移動制御部12がモータ2を制御して、移動ロボット100を設定された移動経路に沿って目的地まで移動させる。本ステップで実行される移動処理の具体的な手法は特に制限されず、公知の種々の手法が適宜採用されてよい。例えば、移動ロボット100は、パスプランニングにより計画された経路と、予め記憶された作業領域のマップデータとに基づいて、オドメトリ、スキャンマッチング等の公知の自己位置推定を行いながらモータ2を制御して、目的地までの自律的な移動(自律走行)を実現するように構成されてよい。
【0072】
ステップS13の移動処理の詳細について、
図5を参照して説明する。
【0073】
図5は、本実施形態の移動ロボット100が行う移動処理を説明するフローチャートである。本フローチャートで説明する移動処理は、移動ロボット100が設定された移動経路に沿って目的地まで移動している間、常時実行される。なお、コントローラ1が備える記憶媒体には、図示のフローチャートを参照して以下に説明する処理を実行する制御プログラムが格納されている。
【0074】
ステップS131では、コントローラ1(障害物検出部13)は、所定距離内における移動経路上の障害物を検出する。障害物検出部13が移動経路上の障害物を検出する方法の具体例について、
図6を用いて説明する。
【0075】
図6は、本実施形態の障害物検出部13が移動経路上の障害物を検出する方法を説明する図である。
図6では、移動ロボット100と検出手段4により検出された障害物300とが示されている。移動ロボット100から延びる点線矢印は、生成された移動経路を示す。また、移動ロボット100から延びる実線矢印は、移動ロボット100の直近の移動方向(現在地からの移動方向)、すなわち、現在地から、移動経路上において最初に方向転換する地点(経由点)に向かう方向である。
【0076】
本実施形態の障害物検出部13による障害物の検出は、移動ロボット100および障害物300を、上方から床面に投射された単純な二次元図形とみなし、当該二次元図形同士が干渉する否かを判定することにより行われてもよい。
図6で例示されるように、移動ロボット100は、例えば、移動台車20や腕部40の各リンクに対応して投射された円の連なりで表現される。また、障害物(人)300は、腕を水平方向に伸ばした場合に水平方向に広がる領域を考慮した円で表現される。なお、障害物が人でない場合には、障害物の外形に応じて適宜選択された二次元図形で表現されてよい。なお、投射された二次元図形の外縁例えば円の直径は、上方から見た移動ロボット100の水平方向幅の最大値、および障害物300の水平方向幅の最大値にそれぞれ一致する必要は必ずしもない。投射された二次元図形は、若干広くして余裕を持たせたり、現実的な可動範囲を考慮して狭めたりするなど適宜調整されてよい。
【0077】
また、移動ロボット100に対応する円は、移動ロボット100が所定距離または所定時間移動する間の移動経路に沿って生成される。
図6では、点線円で示す所定距離内を移動する移動ロボット100に対応する円が時系列に示されている。本図では、現在地の移動ロボット100に対応する円を(t)とし、移動経路に沿って時系列に生成された円を(t+1)、(t+2)として示している。そして、障害物検出部13は、所定距離内において、移動ロボット100に対応する円と障害物300に対応する円とが接触(干渉)するか否かを計算する。接触するか否かは、例えば円と円との中心間距離と、各円のそれぞれの半径とに基づいて容易に計算することができる。これにより、障害物検出部13は、例えば図示のように、移動ロボット100が(t+2)において障害物300と接触あるいは衝突し得ること、すなわち、(t+2)の位置において障害物300に移動経路を妨げられることを容易に検出することができる。
【0078】
なお、図中の点線円で示す所定距離、すなわち現在地を基準として移動経路上の障害物を検出する距離的範囲は、適宜設定されてよい。ここでの所定距離は、主に、移動ロボット100から遠すぎる位置にある障害物が検出されることを除く意図で設定される距離であって、例えば5m等、移動ロボット100の移動速度や作業領域の広さ等に応じて適宜設定されてよい。図では、経由点よりも近い範囲、すなわち、移動ロボット100が直近の移動方向に動いた場合に衝突し得る障害物を検出する例が示されているが、これに限られない。障害物を検出する所定距離内は適宜設定されてよく、原則として検出手段4が検出可能な範囲内において、経由点を超える範囲で設定されてもよい。
【0079】
なお、衝突検証用図形として上述のような二次元図形を生成する衝突判定手法は一例であって、これに限られない。障害物検出部13は、衝突検証用図形として、例えば移動ロボット100の水平方向幅に対応する幅を持つ帯を移動経路に沿って生成してもよい。また、障害物検出部13は、三次元図形を生成する公知の他の衝突判定手法を採用してもよい。この場合には、移動ロボット100および障害物300は、衝突検証用図形として三次元の球体の連なりまたはポリゴンメッシュで表されてもよい。
【0080】
図5に戻って説明を続ける。ステップS131の処理において移動経路上に障害物が検出されない場合には(NO判定)、目的地に到達するまで、ステップS131からステップS132の処理が繰り返し実行される。移動経路上に障害物が検出された場合には(YES判定)、ステップS133の処理が実行される。
【0081】
ステップS133では、コントローラ1は、事前の設定に基づいて、障害物を回避する別の移動経路を生成するか否か判断する。障害物が検出された際は移動経路を再生成すると予め設定されていた場合には(YES判定)、ステップS134の処理に進む。障害物が検出された際は移動経路を再生成すると予め設定されていない場合には(NO判定)、ステップS134の障害物対応処理に進む。なお、移動経路の再生成に関する設定方法に制限はなく、例えば公知の無線通信技術を介して設定されてもよいし、不図示の情報入力手段(例えばタッチパネル等)を介して設定されるように構成されてもよい。また、移動経路の再生成に関する事前の設定は、されなくてもよい。この場合、ステップS133の処理は削除されてよく、コントローラ1は、移動経路上に障害物が検出された場合には(S131、YES判定)、ステップS134の処理を実行する。
【0082】
ステップS134では、コントローラ1(移動経路生成部11)は、ステップS131で検出された障害物を回避して現在地から目的地まで到達可能な移動経路(回避ルート)の生成を試みる。この際、回避ルートの生成条件として、目的地に到達するまでに要する距離又は時間の上限が予め設定されてもよい。例えば、100mの距離的上限が設定されている場合には、目的地までの通路上に障害物が検出され、当該通路の幅を鑑みて障害物を避けて越えられない場合であって、かつ唯一の迂回路では現在地から目的地までの距離が100mを超える場合には、回避ルートは生成されず、新たな移動経路は再設定されない。なお、ステップS12での移動経路生成処理と同様に、候補となる経路が複数生成された場合には目的地まで最も早く到達できる経路または目的地までの距離が最も短い経路を優先する等の条件が予め定められていてもよい。
【0083】
回避ルートが生成されると(S134、YES判定)、生成された回避ルートを移動経路として再設定する移動経路再設定処理が実行され(S135)、再設定された移動経路に沿って目的地に到達するまでステップS131からステップS132の処理が繰り返し実行される。その間、移動ロボット100は移動経路に沿って移動し、目的地に到達したと判定されると(S132、YES判定)、移動処理は終了する。
【0084】
他方、ステップS134において、現在地から障害物を回避して目的地まで到達可能な経路が存在しない、或いは、上述の上限又は設定条件を満たす経路が存在しないことによって回避ルートが生成されない場合は(S134、NO判定)、障害物を取り除くための所定の対応を実行するためにステップS136の障害物対応処理に進む。
【0085】
なお、ステップS131で障害物が検出されてから、障害物対応処理(S136)又は移動経路再設定処理(S135)が実行されるまでの間、コントローラ1(移動制御部12)は、移動ロボット100の移動を減速または停止させる処理(減速処理)を実行してもよい。これにより、移動中に障害物を検出した場合に、障害物に衝突する前に、障害物対応処理(S136)又は移動経路再設定処理(S135)を安全に実行することができる。なお、減速の度合い及び停止する位置(障害物との距離)は、予め設定されていてもよいし、障害物を検出した時点における移動ロボット100の移動速度等に応じて適宜調整されてもよい。
【0086】
以上が本実施形態の移動ロボット100が行う移動処理の詳細である。次に、
図7を参照して、障害物対応処理の詳細について説明する。
【0087】
図7は、本実施形態の移動ロボット100が行う障害物対応処理(S136)を説明するフローチャートである。コントローラ1が備える記憶媒体には、図示のフローチャートを参照して以下に説明する処理を実行する制御プログラムが格納されている。
【0088】
ステップS1361では、コントローラ1(障害物検出部13)が障害物が人か否かを判定する。障害物が人か否かは、検出手段4が取得した検出データ(画像データ)を解析することで容易に判別することができる。なお、検出手段4は、障害物の温度から人か否かを判別するために、障害物から放射される赤外線を検出可能に構成されてもよい。障害物が人である場合には(YES判定)、検出された障害物(人)が複数であるか否かを判定するためにステップS1362の処理が実行される。障害物が人でない場合には(NO判定)、人ではない障害物に対して物対応処理を実行するためにステップS1365に進む。物対応処理の詳細については
図10を参照して後述する。
【0089】
ステップS1362では、コントローラ1は、検出された人が複数か否かを判定する。検出した人が複数ではなく一人であれば(NO判定)、検出された人に対して人対応処理を実行するためにステップS1364の処理にすすむ。人対応処理の詳細については
図9を参照して後述する。他方、検出された人が複数であれば(YES判定)、人対応処理を実行する対象を特定するために人特定処理(S1363)を実行する。人特定処理の詳細については
図8を参照して説明する。
【0090】
図8は、人特定処理を説明する図である。
図8は、移動ロボット100と人との位置関係を上方から見た図であって、移動ロボット100と、移動ロボット100から延びる点線矢印で示す移動経路と、移動ロボット100から延びる実線矢印で示す直近の移動方向と、点線円で示す移動ロボット100からの所定距離と、人Aおよび人Bを含む複数の人と、が示されている。
【0091】
図8に示す人Aおよび人Bは、両者とも所定距離内における移動経路上に検出された障害物としての人である。このように、所定距離内における移動経路上の障害物として人が複数検出された場合には、コントローラ1は、移動ロボット100が移動した際に最初に接触あるいは衝突すると予測される人を特定する。具体的には、移動ロボット100に一番近い人(人A)が、最初に衝突が予測される人と特定される。ただし、最初に衝突が予測される人を特定するにおいて人の移動速度や移動方向が考慮されてもよい。この場合、例えば、人Aが移動ロボット
100からゆっくりと遠ざかる一方で、人Bが移動ロボット
100に速やかに近づいている場合には、人Bが最初に衝突が予測される人として特定される場合があってもよい。人特定処理により人対応処理を実行する対象が特定されると、ステップS1364の人対応処理が実行される。
【0092】
ステップS1364では、障害物が人であると判定されたので(S1361、YES判定)、検出された障害物に対して、対象が人である場合に選択される一又は複数の所定の対応を実行する。具体的に、
図9を参照しながら説明する。
【0093】
図9は、人対応処理を説明する図である。本実施形態の人対応処理は、少なくとも次の三つの対応のうちのいずれか一つ以上を含む。具体的には、人対応処理は、移動ロボット100の移動を停止する(人対応1)、人の頭に顔部31を向ける(人対応2)、および所定の音を出力する(人対応3)のいずれか一つを、または、いずれか二つ以上を組み合わせて実行する。なお、図中の点線矢印は、移動ロボット100の移動経路を示す。
【0094】
図9(a)は、移動ロボット100が、人対応1および人対応3のいずれか一方又は両方を実行している様子を説明する図である。図示するように、移動ロボット100は、障害物である人の前で静止してよい(人対応1)。例えば、上述の減速処理によって障害物の手前で停止した場合には、その停止状態を維持する。このような対応は、人の行動を優先するものであり、原則として、人が移動ロボット100の存在に気づき移動経路から立ち退いてくれるのを静かに待つことになる。
【0095】
また、移動ロボット100は、
図9(a)の状態でスピーカ5を介して所定の音を出力してもよい(人対応3)。所定の音は、ブザー音等の警告音でもよいし、「すみません、どいてください」「とおります」といった音声でもよい。これら所定の音の種類は、予め記憶された複数パターンの中から事前の設定等に応じて適宜選択されてよい。音の種類だけでなく、音量、音の繰り返し回数(出力回数)、および、音の出力継続時間等も事前に設定可能に構成されてよい。これにより、移動ロボット100は、移動ロボット100が利用されるシーンや、移動ロボット100を管理するユーザの要望に応じた適切な音を出力することができる。
【0096】
また、静止する人対応1と組み合わせて所定の音を出力する場合には、出力するタイミングも適宜設定されてよい。例えば、静止状態が5秒継続しても人が退避しない場合に音を出力するように設定されてよい。
【0097】
また、出力する音の種類、音量、繰り返し回数等を人対応処理の継続時間に応じて変化させてもよい。例えば、「すみません」「どいてください」「どけ!」等の、言葉の強さ(意味合い)に応じて働きかけの強さが異なる複数種類の音を用意し、働きかけの度合いが徐々に強くなるように、出力する音の種類を所定時間毎により強い言葉に変更してもよい。なお、ここでの所定時間は適宜設定されてよい。また、段階的に変更する際の時間間隔が等間隔である必要はない。
【0098】
また、音の種類だけでなく、所定の音の音量を所定時間毎に徐々に大きくしてもよい。このように、人対応3では、音量を徐々に大きくしたり、音の種類(言葉の内容)を段々と強くしたりすることにより、働きかけの強度(働きかけの度合いの強さ)を段階的に高めることができる。これにより、移動ロボット100は、いきなり大音量で強い言葉を発するなどして人を不快にしたり驚かせたりすることなく、人の行動に応じて段階的に変化する適切な強度で退避を促すことができる。
【0099】
図9(b)は、移動ロボット100が人の頭に顔部31を向ける対応(人対応2)を実行している様子を説明する図である。図示するように、障害物対応部14(頭部
方向制御部14a)は、人対応処理として顔部31を人の頭に向けてもよい。これにより、移動経路上の人に対して、静止するだけの人対応1よりは強く、音を出力する人対応3よりかは柔らかく退避を促すことができる。なお、人対応1および人対応3の少なくとも一方と組み合わせて実行されてよく、その組み合わせタイミングは適宜設定されてよい。例えば、静止状態から所定時間経過後に顔部31を人の頭に向けて、さらに所定時間経過した場合に音を出力するように構成されてよい。これにより、状況に応じて、よりきめ細かい働きかけを行うことが可能になる。以上が本実施形態の人対応処理の詳細である。障害物対応部14は、障害物が人である場合には、上述の人対応1~3から選択した一又は複数の所定の対応を人に対して実行するように構成される。
【0100】
次に、ステップS1365に係る物対応処理の詳細について
図10を参照して説明する。
【0101】
図10は、物対応処理を説明する図である。物対応処理は、障害物が人ではないと判定された場合(S1361、NO判定)に行われる処理であって、少なくとも次の二つの対応のうちのいずれか一つ又は両方を含む。具体的には、物対応処理は、移動ロボット100の移動を停止した後に、周辺にいる人の頭に顔部31を向ける(物対応1)、および周辺にいる人に音を出力する(物対応2)のいずれか一方を、または組み合わせて実行される。なお、上述の人対応1と同様に、障害物の手前で静止する物対応3を実行してもよい。図中の点線矢印は、移動ロボット100の移動経路を示す。
【0102】
図10(a)は、移動ロボット100が、障害物(物)の手前で停止している状態を示す。この時、障害物検出部13が移動ロボット100の周囲にいる人の位置、特に周囲にいる人の頭の位置を検出する。
【0103】
そして、
図10(b)に示すように、障害物対応部14(頭部
方向制御部14a)は、物対応処理として、周辺にいる人の頭に顔部31を向けてよい(物対応1)。これにより、移動ロボット100は、障害物に移動経路を妨げられていることを周囲にいる人に積極的に訴えかけることができる。また、この時、顔部31を向けた人に所定の音を出力することで(物対応2)、移動経路から障害物を除いてほしいことを周囲の人に直接訴えかけることができる。この時に出力する音の種類は、人対応処理時とは変えて、例えば次のような音声であってもよい。
【0104】
すなわち、障害物対応部14(報知制御部14b)は、物対応処理(物対応2)によって、「物をどかしてください」等の、移動経路から障害物を取り除くことを要求する音声を周囲の人に出力してもよい。これにより、移動ロボット100は、移動経路の確保のために、移動経路から障害物を取り除くことを周囲の人により的確に訴えることができる。また、音を出力するスピーカ5として、いわゆる指向性スピーカが採用されてもよい。これにより、例えばむやみに音を発せられない現場等であっても、周辺にいる特定の人にのみ助けを求めることが可能となる。また、物対応2は
図10(a)に示す静止状態(物対応3)において実行されてもよい。その場合には、移動ロボット100は、音を出力する対象を限定せずに、周辺に向けて「誰かどかしてください」等の音を出力してもよい。なお、物対応処理において音を出力する際においても、人対応処理において上述したのと同様に、音の種類、音量、音の繰り返し回数、音の出力継続時間は適宜変更可能に構成されてよい。
【0105】
また、図示しないが、障害物対応部14は、物対応処理として、腕部40を用いて取り除いてほしい障害物を指し示してもよい(物対応4)。これにより、移動ロボット100は、移動経路から取り除いてほしい障害物を周囲の人により的確に伝えることができる。なお、障害物を指し示す動作としては種々の動作が採用され得る。例えば、移動ロボット100は、人が対象物を指差すように腕部40の先端を障害物に向ける動作を行ってもよいし、さらに、腕部40の先端を障害物に対して前後させる等して取り除いてほしい障害物をより強調して指し示すような動作を行ってもよい。なお、物対応4についても、上述の物対応1から3のいずれか一つ以上と組み合わせて実行されてよい。
【0106】
以上が、本実施形態の物対応処理の詳細である。障害物対応部14は、障害物が物である場合には、上述の物対応1~4から選択した一又は複数の所定の対応を周囲の人に対して実行するように構成される。
【0107】
以上が、一実施形態の移動ロボット100が行う移動制御の詳細である。なお、
図4、
図5および
図7で示すフローチャートは本実施形態の移動制御を説明するための例示であって、必ずしも図示するとおりに実行されることを制限するものではなく、上述の技術的効果を奏する限り適宜変更されてもよい。
【0108】
例えば、上述したとおり
図5で示すステップS133は削除されてもよい。この場合には、移動ロボット100は、障害物が検出された場合には回避ルートの生成を試み、適切な回避ルートが生成されなかった場合に、障害物対応処理を実行するように構成されてもよい。
【0109】
また、移動ロボット100は、障害物が検出され(S131、YES判定)、障害物対応処理として上述の所定の対応を実行してから所定時間経過しても障害物が移動経路から除かれない場合に、現在地から当該障害物を回避して目的地に到達する移動経路(回避ルート)の生成を試みてもよい(S134)。このように、移動ロボット100は、障害物を検出した場合に、まずは障害物対応処理を実行し、その後所定時間経過しても障害物が移動経路から取り除かれない場合に、回避ルートを生成するように構成されてよい。なお、ここでの所定時間は適宜設定されてよく特に制限されない。
【0110】
以上が本実施形態の移動ロボット100の詳細である。以上説明したように、移動ロボット100は、移動経路上に障害物が検出された場合には、当該障害物を回避して目的地まで到達可能な移動経路を再生成し、又、そのような経路が再生成できなかった場合には、障害物を移動経路から除くための所定の対応を実行する。あるいは、移動ロボット100は、移動経路上に障害物が検出された場合には、障害物を移動経路から除くための所定の対応を実行し、又、所定の対応を実行しても当該障害物が取り除かれない場合には、障害物を回避して目的地まで到達可能な移動経路を再生成する。これにより、移動ロボット100は、移動経路を障害物に塞がれた場合でも、移動経路を積極的に確保して目的地まで移動することができるので、作業効率の低下を抑制することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0112】
例えば、報知手段5は、必ずしもスピーカである必要はなく、ランプ、レーザ、ディスプレイ等、光を用いて人の視覚に訴えるものであってもよい。また、障害物対応部14は、障害物対応処理において、このように構成された報知手段5を用いて所定の報知を行う場合でも、働きかけの強さを所定の時間毎に変更してもよい。例えば、報知手段5としてディスプレイを用いて所定の報知が行われる場合でも、障害物対応部14は、上述のスピーカを用いた所定の報知と同様に、当該ディスプレイに表示される内容に係る働きかけの強さが所定時間毎により強くなるように変更してもよい。
【0113】
また、
図2で示す移動ロボット100の構成は、少なくとも頭部30を備え、移動経路に沿って移動可能に構成される限り適宜変更されてよい。例えば、移動ロボット100は、ロボット本体部10を備えなくてもよい。この場合、頭部30は、移動台車20に直接設けられるように構成されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、少なくともロボット制御装置等を製造する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 コントローラ
3 頭部駆動手段(駆動手段)
5 スピーカ
11 移動経路生成部
12 移動制御部
13 障害物検出部
14 障害物対応部
21 スカート
22 駆動輪
30 頭部
40 腕部
100 移動ロボット
300 障害物