(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20241202BHJP
【FI】
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2020104823
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】515084812
【氏名又は名称】OMリサーチ&コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 裕敬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝俊
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特許第6601992(JP,B1)
【文献】特開2006-203529(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220761(WO,A1)
【文献】特許第6802592(JP,B1)
【文献】特開2004-085239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を扱う施設における食品衛生の検査の
入力に要した時間を示す入力履歴を取得する履歴取得部と、
取得された前記入力履歴
が示す検査の入力に要した時間が所定の基準を満たすか否かに基づき
当該検査の適切さを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部と
、
食品衛生の検査が行われる施設における食品の安全に関係する環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、
前記判定部により不適切と判定された場合、環境に関する複数の範囲の各々に対応付けられた食中毒の危険が大きいほど厳しい対処方法のうち、取得された前記環境情報が示す環境を含む範囲に対応付けられた対処方法を、不適切と判定された検査への対処方法として決定する決定部と、
決定された前記対処方法を示す対処データをユーザが利用する端末装置であるユーザ端末に送信する処理を行う処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
食品を扱う施設における食品衛生の検査の
入力が行われた時刻を示す入力履歴を取得する履歴取得部と、
取得された前記入力履歴
が示す検査の入力が行われた時間が所定の時間帯に含まれているか否かに基づき
当該検査の適切さを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部と
、
食品衛生の検査が行われる施設における食品の安全に関係する環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、
前記判定部により不適切と判定された場合、環境に関する複数の範囲の各々に対応付けられた食中毒の危険が大きいほど厳しい対処方法のうち、取得された前記環境情報が示す環境を含む範囲に対応付けられた対処方法を、不適切と判定された検査への対処方法として決定する決定部と、
決定された前記対処方法を示す対処データをユーザが利用する端末装置であるユーザ端末に送信する処理を行う処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項3】
食品を扱う施設における食品衛生の
複数の項目に関する検査の
各々の入力に要した時間を示す入力履歴を取得する履歴取得部と、
前記複数の項目の各々に関し、取得された前記入力履歴
が示す検査の入力に要した時間が当該項目に応じた所定の基準を満たすか否かに基づき
当該検査の適切さを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部と
、
数に関する複数の範囲の各々に対応付けられた数が多いほど厳しい対処方法のうち、前記判定部により不適切と判定された項目の各々に関し検査の重要度に応じて配分された点数の合計を含む範囲に対応付けられた対処方法を、不適切と判定された検査への対処方法として決定する決定部と、
決定された前記対処方法を示す対処データをユーザが利用する端末装置であるユーザ端末に送信する処理を行う処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項4】
食品を扱う施設における食品衛生の
複数の項目に関する検査の
各々の入力が行われた時刻を示す入力履歴を取得する履歴取得部と、
前記複数の項目の各々に関し、取得された前記入力履歴
が示す検査の入力が行われた時刻が当該項目に応じた所定の時間帯に含まれているか否かに基づき
当該検査の適切さを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部と
、
数に関する複数の範囲の各々に対応付けられた数が多いほど厳しい対処方法のうち、前記判定部により不適切と判定された項目の各々に関し検査の重要度に応じて配分された点数の合計を含む範囲に対応付けられた対処方法を、不適切と判定された検査への対処方法として決定する決定部と、
決定された前記対処方法を示す対処データをユーザが利用する端末装置であるユーザ端末に送信する処理を行う処理部と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品衛生管理に関する。
【背景技術】
【0002】
食品衛生管理に関する技術として、特許文献1には、食品を取り扱う事業所及びその従業者の衛生管理の状態の検査結果が、重要度に応じて決められている所定の基準値と比較して悪い結果である場合に、所定の通知先にアラートを通知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食品を扱う施設における食品衛生の検査において、施設の通常業務をこなす従業員が検査を行う際には、通常業務で多忙である等の理由で、食の安全を守るために必要な食品衛生の検査を行うことができない場合があり、そのような場合は、検査の信頼性が低くなる。
そこで、本発明は、食品を扱う施設における食品衛生の検査の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、食品を扱う施設における食品衛生の検査の入力履歴を取得する履歴取得部と、取得された前記入力履歴に基づき前記検査の適切さを判定する判定部と、前記判定部による判定結果を出力する出力部とを備える情報処理装置を提供する。
【0006】
また、前記履歴取得部は、前記検査の入力に要した時間を前記入力履歴として取得し、前記判定部は、取得された前記入力履歴が示す時間が所定の基準に満たない場合に前記検査が不適切と判定してもよい。
【0007】
また、前記判定部は、取得された前記入力履歴が示す入力がされた項目に応じて定められる前記基準を用いて前記判定を行ってもよい。
【0008】
また、前記履歴取得部は、前記検査の入力が行われた時刻を前記入力履歴として取得し、前記判定部は、取得された前記入力履歴が示す時刻が所定の時間帯に含まれている場合に前記検査が不適切と判定してもよい。
【0009】
また、前記判定部は、取得された前記入力履歴が示す入力がされた項目に応じて定められた時間帯を用いて前記判定を行ってもよい。
【0010】
また、前記判定部により不適切と判定された検査への対処方法を決定する決定部と、
決定された前記対処方法で前記施設への対処を行うための処理を行う処理部とを備えてもよい。
【0011】
また、食品衛生の検査が行われる施設における食品の安全に関係する環境を示す環境情報を取得する環境取得部を備え、前記決定部は、取得された前記環境情報が示す環境によって示される食中毒の危険が大きいほど前記対処方法を厳しくしてもよい。
【0012】
また、前記判定部は、前記検査の項目毎に適切さを判定し、前記決定部は、不適切と判定された項目が多いほど前記対処方法を厳しくしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食品を扱う施設における食品衛生の検査の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例に係る検査支援システムの全体構成の一例を表す図
【
図2】サーバ装置のハードウェア構成の一例を表す図
【
図3】ユーザ端末のハードウェア構成の一例を表す図
【
図9】選択された検査項目の拡大表示の一例を表す図
【
図16】検査表示処理における各装置の動作手順の一例を表す図
【
図17】判定処理における各装置の動作手順の一例を表す図
【
図18】対処処理における各装置の動作手順の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1]第1実施例
図1は実施例に係る検査支援システム1の全体構成の一例を表す。検査支援システム1は、食品を扱う施設における食品の衛生管理に関する業務の1つである検査業務を支援するシステムである。検査業務とは、施設内の食品衛生の状態が安全のために求められる基準(例えばHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)で定められた基準)を満たしているか否かを検査する業務である。
【0016】
食品を扱う施設とは、例えば飲食店、飲食品の販売店、飲食品の倉庫及び飲食品の製造工場等であり、食品衛生の検査が行われる施設でもある。これらの施設においては、食品衛生の検査を行う担当者が決められているが、検査業務の担当者は、必ずしも食品衛生の検査の専門的な知識や経験を持つ者とは限らない。
【0017】
例えば、食品販売のイベントに出店している店舗、ショッピングモールに出店している飲食店又は商店街の自営業の飲食店等においては、専門の検査員がいないので、食品衛生の検査に詳しくない従業員が検査を行うことになる。検査支援システム1は、特に、そのように食品衛生の検査の専門的な知識や経験を持たない担当者の検査業務を支援する。
【0018】
検査支援システム1は、ネットワーク2と、サーバ装置10と、ユーザ端末20と、印刷装置3とを備える。ネットワーク2は、移動体通信網及びインターネット等を含む通信システムであり、自システムにアクセスする装置同士のデータのやり取りを中継する。ネットワーク2には、サーバ装置10が有線通信で(無線通信でもよい)、ユーザ端末20が無線通信でアクセスしている。
【0019】
ユーザ端末20は、食品を扱う施設において検査業務を行うユーザが利用する端末であり、スマートフォン及びタブレット端末のように持ち運び可能ないわゆるモバイル端末である。ユーザは、例えば食品を扱う施設の従業員のうち、検査業務を担当する従業員である。ユーザ端末20は、検査を行う項目を記憶し、記憶した項目を表示する。ユーザは、表示された項目について検査を行い、検査結果をユーザ端末20に入力する。
【0020】
図1では、ユーザ端末20を1台しか表していないが、検査対象となる施設が多く存在する場合は、複数のユーザ端末20を複数の検査員がそれぞれ利用して複数の検査が並行して行われる。サーバ装置10は、それら複数のユーザ端末20による検査に関する情報を管理する処理等を行う。サーバ装置10は本発明の「情報処理装置」の一例である。検査に関する情報とは、先に述べた検査項目及び各検査項目に対する検査結果等である。サーバ装置10が行う処理については後程詳しく説明する。
【0021】
図2はサーバ装置10のハードウェア構成の一例を表す。サーバ装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14と、バス15とを備えるコンピュータである。プロセッサ11は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ11は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)を備える。
【0022】
プロセッサ11は、プログラム及びデータ等をストレージ13及び通信装置14の少なくとも一方からメモリ12に読み出し、読み出したプログラム等に従って各種の処理を実行する。メモリ12は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体である。ストレージ13は、ハードディスクドライブ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体である。
【0023】
通信装置14は、有線ネットワーク及び無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)である。プロセッサ11及びメモリ12等の各装置は、情報を通信するためのバス15によって接続される。バス15は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0024】
図3はユーザ端末20のハードウェア構成の一例を表す。ユーザ端末20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信装置24と、入力装置25と、出力装置26と、撮像装置27と、バス28とを備えるコンピュータである。
図2に同名のハードウェアが表されているプロセッサ21等は、性能及び仕様等の違いはあるが
図2と同種のハードウェアである。
【0025】
入力装置25は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えばスイッチ、ボタン、センサなど)である。入力装置25は、写真を撮影する撮像装置(デジタルカメラなど)を含んでいる。出力装置26は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカ、LEDランプなど)である。ユーザ端末20においては、入力装置25及び出力装置26は、一体となった構成(ディスプレイ及びタッチパネルが一体となったタッチスクリーン)を含む。撮像装置27は、レンズ、光学系及びイメージセンサ等を備え、イメージセンサに到達する光が表す画像を撮影する。
【0026】
検査支援システム1が備える各装置における各機能は、各々のプロセッサ、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサが演算を行い、各々の通信装置による通信を制御したり、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0027】
図4は各装置が実現する機能構成を表す。サーバ装置10は、施設情報記憶部101と、印刷制御部102と、読取情報取得部103と、検査情報出力部104と、検査履歴取得部111と、検査信頼性判定部112と、判定結果出力部113と、環境情報取得部121と、対処方法決定部122と、対処処理部123とを備える。ユーザ端末20は、コード読取部201と、検査情報記憶部202と、検査処理部203と、判定結果表示部211と、対処方法表示部221とを備える。
【0028】
施設情報記憶部101は、食品衛生の検査が行われる施設に関する情報である施設情報を記憶する。具体的には、施設情報記憶部101は、食品衛生の検査が行われる施設とその施設について定められた検査方法を示す検査情報とを対応付けた情報を施設情報として記憶する。施設情報記憶部101は本発明の「記憶部」の一例である。食品衛生の検査は、業種、事業形態、施設の設備環境、施設の規模及び扱う食材の種類等の要素に応じて適切な方法が定められる。
【0029】
図5は施設情報の一例を表す。
図5の例では、施設情報記憶部101は、施設A、B、Cに対して「大項目」、「中項目」、「検査項目」、「検査時期」及び「合格基準」をそれぞれ対応付けた情報を施設情報として記憶している。大項目としては、「従業員」、「食材」等が定められている。中項目としては、「手洗い」、「服装」等が定められている。検査項目は、
図5では記号で表されているが、実際には検査の内容を説明する文章で表されているものとする。
【0030】
例えば検査項目K-1は、例えば「手洗いを所定の時間以上行うこと」という検査の内容であるものとする。検査項目K-1に対する合格基準としては、例えばこの「所定の時間」が定められている。
図5の例では、検査項目K-1に対する合格基準として、施設毎に異なる合格基準(施設Aは基準a、施設Bは基準b、施設Cは基準c)が対応付けられている。
【0031】
また、例えば施設Aの手洗いには検査項目K-1、K-2、K-3が対応付けられているが、施設Bの手洗いには検査項目K-1、K-3だけが、施設Cの手洗いには検査項目K-1、K-2だけが対応付けられている。このように、施設情報記憶部101は、施設によって異なる検査項目を対応付けた施設情報を記憶している。
【0032】
印刷制御部102は、施設に対応付けられた情報(以下「対応情報」と言う)を印刷する印刷データを出力する。印刷制御部102は本発明の「印刷出力部」の一例である。対応情報とは、例えば、施設毎に個別に割り当てられた識別情報であり、具体的には施設ID(Identification)である。また、印刷制御部102は、本実施例では、コード化された対応情報を印刷する印刷データを出力する。
【0033】
印刷制御部102は、例えば、施設IDを示す2次元コードを印刷する印刷データを、各施設についてそれぞれ出力する。
図5の例では、施設情報記憶部101が、施設Aには「ID001」、施設Bには「ID002」、施設Cには「ID003」という施設ID(Identification)を識別情報として記憶している。そのため、これらの識別情報は、施設に対応付けられた情報となっている。
【0034】
印刷制御部102は、例えば施設Aについては、「ID001」を示す2次元コードを印刷する印刷データを出力し、施設Bについては、「ID002」を示す2次元コードを印刷する印刷データを出力する。印刷制御部102は、上述した印刷装置3に対して印刷データを出力する。なお、コード化された対応情報は、2次元コードに限らず、1次元コードでもよいし、識別情報を所定のアルゴリズムで変換した記号の羅列等であってもよい。印刷装置3は、出力されてきた印刷データが示す対応情報を用紙等の媒体に印刷する。
【0035】
図6は印刷された対応情報の一例を表す。
図6の例では、「施設A」に対応付けられた対応情報である2次元コード5が用紙4に印刷されている。また、用紙4には、「施設A向け 食品衛生検査の支援情報」及び「検査アプリを起動し、以下の2次元コードを読み取ってください。」という文字列が印刷されている。このように、印刷制御部102は、対応情報を用いて食品衛生の検査を支援するための手順も示す印刷データを出力する。
【0036】
コード読取部201は、印刷された対応情報である2次元コードを読み取る。コード読取部201は、自装置の撮像装置27が撮影した画像を解析して2次元コードが含まれている場合には、その2次元コードが示す情報を読み取る。コード読取部201は、
図6の2次元コード5を読み取った場合には、施設Aの「ID001」という施設IDを読み取る。
【0037】
コード読取部201は、読み取った情報(以下「読取情報」と言う)をサーバ装置10に送信する。サーバ装置10の読取情報取得部103は、送信されてきた読取情報を取得する。読取情報取得部103は、取得した読取情報を検査情報出力部104に供給する。こうして供給される読取情報は、前述したようにユーザ端末20が読み取った施設IDである。
【0038】
検査情報出力部104は、上記のとおり読取情報(施設ID)が供給された場合、すなわち、対応情報を読み取り可能なユーザ端末20からそのユーザ端末20により読み取られた対応情報が送信されてきた場合に、その対応情報が対応付けられた施設と同じ施設に対応付けられた検査情報をそのユーザ端末20に対して出力する。検査情報出力部104は本発明の「情報出力部」の一例である。
【0039】
検査情報出力部104は、まず、供給された読取情報(施設ID)に対応付けて記憶されている検査情報を施設情報記憶部101から読み出す。そして、検査情報出力部104は、読み出した検査情報を、読取情報の送信元であるユーザ端末20に対して出力する。出力された検査情報は、ユーザ端末20の検査情報記憶部202に供給される。検査情報記憶部202には、コード読取部201が読み取った施設IDも供給される。
【0040】
検査情報記憶部202は、供給された検査情報を、供給された施設IDに対応付けて記憶する。
図7は記憶された検査情報の一例を表す。
図7(a)では、施設Aにおける検査情報が記憶されている。この場合の検査情報記憶部202を備えるユーザ端末20は、施設A向けに印刷された対応情報を読み取ったユーザ端末20である。
【0041】
また、
図7(b)では、検査情報記憶部202を備えるユーザ端末20は、施設Bにおける検査情報が施設B向けに印刷された対応情報を読み取ったユーザ端末20である。以上のとおり検査情報が記憶されることで、食品衛生の検査の準備が整ったことになる。検査処理部203は、記憶された検査情報に基づいて、食品衛生の検査に関する処理を行う。検査処理部203は、まず、該当する施設向けの検査画面を表示する。
【0042】
図8は表示された検査画面の一例を表す。
図8の例では、検査処理部203は、大項目である「従業員」のタブT1、「食材」のタブT2、「器具・食器」のタブT3、「保管状況」のタブT4及び「環境」のタブT5と、後述する「判定」のタブT6を含む検査リストを、タブT1を開いた状態で表示している。「従業員」の表示領域C1には、中項目の「手洗い」の表示領域D1、「服装」の表示領域D2及び「手指目視検査」の表示領域D3等が含まれている。
【0043】
以降の表示も検査処理部203によって行われるものとする。各中項目の表示領域には、検査項目「K-1」及び「K-2」等が表示されている。表示領域C1をスクロールさせると、表示されていない中項目の表示領域及び検査項目が表示される。検査項目の左側には、NGボタンE1、写真ボタンE2、コメントボタンE3及びOKボタンE4が表示されている。検査担当者が検査の結果を入力しようとする検査項目をタップ等の操作により選択すると、検査処理部203は、選択された検査項目だけを拡大して表示する。
【0044】
図9は選択された検査項目の拡大表示の一例を表す。
図9の例では、検査項目K-4が拡大して表示されている。拡大表示がされた状態で、NGボタンE1が押されると、「×」マーク(検査結果がNGであることを示すマーク)が表示され、OKボタンE4が押されると、「〇」マーク(検査結果がOKであることを示すマーク)が表示される。写真入力欄E5をタップすると、例えばユーザ端末20の撮像装置が起動されてユーザの操作により写真を撮影し、撮影された写真が写真入力欄E5に表示される。
【0045】
なお、写真入力欄E5をタップした場合にユーザ端末20に記憶されている撮影済みの写真を取り込めるようにしてもよい。コメント入力欄E6には、手入力でコメントを入力してもよいし、コメント例文一覧E7に含まれている例文を選択することでコメントを入力してもよい。検査処理部203は、検査結果の入力操作を受け付けると、受け付けた入力操作の結果を表示する。
【0046】
検査処理部203は、一時中断ボタンB1がタップされると、拡大表示した検査項目K-4への入力を一時中断するものと判断して、
図8の検査画面に戻って検査項目の一覧を表示する。また、検査処理部203は、入力完了ボタンB2がタップされると、拡大表示した検査項目K-4への入力が完了したものと判断して、
図8の検査画面に戻って検査項目の一覧を表示する。
【0047】
また、検査処理部203は、検査結果テーブルを記憶しておき、入力完了ボタンB2がタップされた場合に、その時点までの入力操作の結果を検査結果として検査結果テーブルに反映する。
図10は検査結果テーブルの一例を表す。検査結果テーブルには、「施設ID」、「検査回数」、「検査項目」、「NG」、「OK」、「写真」、「コメント」及び「入力日時」がそれぞれ対応付けて格納されている。
【0048】
「施設ID」及び「検査回数」は、検査処理部203が検査結果テーブルを生成する際に格納されている。
図10の例では、該当する施設IDの検査結果テーブルを初めて生成したので、「1」回が「検査回数」として格納されている。「NG」は検査が不合格であったことを意味し、「OK」は検査が合格であったことを意味する。「NG」の入力は「×」、「OK」の入力は「〇」で表されている。
【0049】
写真は画像データのファイル名で、コメントはテキストデータのファイル名で表されている。入力日時は年月日で表されているが、詳細な時刻まで表されていてもよい。検査処理部203は、検査結果テーブルに格納された検査結果を参照して、検査結果の集計処理を行う。集計処理とは、共通の検査結果(例えばOKの検査結果)の件数を合計した値を集計値として算出する処理である。
【0050】
また、集計処理には、算出した集計値に基づいてさらに別の値を算出する処理も含まれる。具体的には、検査処理部203は、OKの検査結果を集計し、検査項目の全体数に対するOKの集計値の割合(以下「評価率」と言う)を大項目毎及び全体について算出する処理を行う。評価率は、この値が高いほど衛生管理のために実施すべき作業が実施されていることを意味する値であり、より安全な食品の供給が期待できることを示す指標として利用可能である。
【0051】
検査処理部203は、評価率の算出において、各検査項目の検査結果を一律ではなく重みを付けて扱う。例えば検査項目が50個ある場合、一律に扱うと1つのNGにつき評価率が2%減少する。これに対し、各検査項目に重みを付けることで、例えば重要度が高い検査項目がNGだと3%減少し、重要度が低い検査項目だと1%減少するというように評価率が算出される。
【0052】
重要度とは、例えば、食品衛生に対する影響が大きい検査項目ほど重要度が高いという意味である。重要度を加味した重み付けをすることで、重要度を加味しない場合に比べて、評価率の上記指標としての信頼性を高めることができる。検査処理部203は、
図8に表す「判定」のタブT6を押す操作が行われると、先に行った集計の結果を表示する。
【0053】
図11は表示された集計結果の一例を表す。検査処理部203は、大項目毎の評価率を示す結果表F1と、大項目毎の評価率を示すレーダーチャートF2とを表示している。また、検査処理部203は、全体の評価率を「総合評価」として示し、総合評価に応じて決まる呼称である「優秀店」及び総合評価に応じて決まる評価ランクの「S」という文字列を表示している。
【0054】
これらの呼称及び評価ランクは、総合評価の値に応じて例えば「優秀店」及び「S」、「優良店」及び「A」、「良店」及び「B」、「要改善点」及び「C」というように定められる。検査画面に表示されている入力完了ボタンB2を押す操作が行われると、検査処理部203は、検査結果テーブルを更新して記憶する。記憶された検査結果には、施設ID及び検査回数が含まれているため、どの施設の何回目の検査結果であるかが分かるようになっている。
【0055】
検査処理部203は、検査結果の入力操作の履歴(=入力履歴)を示す履歴データを生成する。検査処理部203は、本実施例では、入力された文字、選択された選択肢及び添付した写真の保存先等を検査項目毎に示すデータを履歴データとして生成する。また、検査処理部203は、検査画面において検査項目が表示された時刻と、表示された検査項目の入力が完了した時刻とを検査項目毎に示すデータを履歴データとして生成する。
【0056】
本実施例では、検査項目が表示された時刻とは、
図9に表すように検査項目が拡大表示された時刻であり、検査項目の入力が完了した時刻とは、
図9に表す入力完了ボタンB2がタップされた時刻であるものとする。検査項目が表示された時刻からその検査項目の入力が完了した時刻までの時間は、検査の入力に要した時間を意味する。なお、一時中断がされた場合は、検査項目が拡大表示された時刻から一時中断の操作が行われた時刻までの時間が、検査の入力に要した時間に加えられる。
【0057】
検査処理部203は、生成した履歴データをサーバ装置10に送信する。検査履歴取得部111は、送信されてきた履歴データを受信し、受信した履歴データが示す食品衛生の検査の入力履歴を取得する。検査履歴取得部111は本発明の「履歴取得部」の一例である。
【0058】
検査履歴取得部111は、本実施例では、履歴データが示す前述した時間、すなわち、検査の入力に要した時間を入力履歴として取得する。検査履歴取得部111は、取得した入力履歴を検査信頼性判定部112に供給する。検査信頼性判定部112は、検査履歴取得部111により取得された食品衛生の検査の入力履歴に基づき、その検査の適切さを判定する。検査信頼性判定部112は本発明の「判定部」の一例である。
【0059】
適切な検査とは、検査すべき項目を正確に確認することを意味する。検査が適切であるほど、その検査の信頼性も高いということになる。検査すべき項目を正確に確認するためには、適切な時間をかけて検査を行う必要がある。そこで、検査信頼性判定部112は、本実施例では、検査履歴取得部111により取得された入力履歴が示す時間(検査の入力に要した時間)が所定の基準に満たない場合に検査が不適切と判定する。
【0060】
より詳細には、検査信頼性判定部112は、検査履歴取得部111により取得された入力履歴が示す入力がされた項目(検査項目のこと)に応じて定められる基準を用いて判定を行う。以下ではこの判定に用いられる基準を「判定基準」と言う。検査信頼性判定部112は、検査項目と判定基準とを対応付けた基準テーブルを用いてこの判定を行う。
【0061】
図12は基準テーブルの一例を表す。
図12の例では、検査項目「K-1」、「K-2」、「K-3」及び「K-4」等に、判定基準「T-1」、「T-2」、「T-3」及び「T-4」等が対応付けられている。検査信頼性判定部112は、履歴データが示す各検査項目の検査の入力に要した時間tと判定基準の時間Tとを比較して、時間tが時間T以上である場合は検査が適切であったと判断し、時間tが時間T未満である場合は検査が不適切であったと判定する。
【0062】
検査信頼性判定部112は、各検査項目について判定を行い、その判定結果を判定結果出力部113に供給する。判定結果出力部113は、検査信頼性判定部112による判定結果をユーザ端末20に対して出力する。判定結果出力部113は本発明の「出力部」の一例である。ユーザ端末20の判定結果表示部211は、サーバ装置10から出力されてきた判定結果を表示する。判定結果表示部211は、例えば、検査画面において表示される検査項目の一覧に判定結果を重ねて表示する。
【0063】
図13は表示された判定結果の一例を表す。
図13の例では、判定結果表示部211は、検査項目「K1-2」及び「K1-6」に重ねて「<重要>再度検査を行ってください。」という文字列を表示している。検査項目「K1-2」及び「K1-6」はいずれも「〇」という判定結果になっているが、検査が不適切であったと判断されたため、再検査が指示されている。
【0064】
サーバ装置10の環境情報取得部121は、食品衛生の検査が行われる施設における食品の安全に関係する環境を示す環境情報を取得する。環境情報取得部121は本発明の「環境取得部」の一例である。環境情報取得部121は、例えば、気温、湿度、風又は日差し等の気象条件を示す情報を環境情報として取得する。食中毒は、気温が高く、湿度が高いほど増加する傾向にある。また、野外のイベント等で屋外に設置される施設であれば、食中毒は、風が強く、日差しが強いほど増加する傾向にある。
【0065】
環境情報取得部121は、例えば、インターネット上で気象情報を提供するサービスを利用して、気象条件を示す情報を環境情報として取得する。なお、環境情報取得部121は、他にも、例えば公共のサービス等で食中毒の件数を示す情報が提供されている場合には、施設の周辺地域で発生した食中毒の件数を示す情報を環境情報として取得してもよい。環境情報取得部121は、取得した環境情報を対処方法決定部122に供給する。
【0066】
対処方法決定部122は、検査信頼性判定部112により不適切と判定された検査への対処方法を決定する。対処方法決定部122は本発明の「決定部」の一例である。対処方法決定部122は、本実施例では、3通りの対処方法のうちのいずれかを不適切と判定された検査への対処方法として決定する。3通りの対処方法とは、例えば、注意・改善要求・再検査である。
【0067】
本実施例では、各対処方法を次のように定めるものとする。注意は、検査が不適切であったことと今後の注意を促す通知を検査の担当者に送る対処方法である。改善要求は、注意と同様の内容を通知するとともに、改善策の提示を求める対処方法である。再検査は、改善策の提示に加えて、一定期間内の再検査を求める対処方法である。
【0068】
以上のとおり、注意より改善要求の方が厳しい対処となり、改善要求より再検査の方が厳しい対処となる。なお、対処した結果が施設における事業に与える影響が大きいほど、その対処が厳しいことを意味するものとする。対処方法決定部122は、環境情報と対処方法とを対応付けた対処テーブルを用いて対処方法を決定する。
【0069】
図14は対処テーブルの一例を表す。
図14の例では、「Th1未満」、「Th1以上Th2未満」、「Th2以上」という気温の範囲に、「注意」、「改善要求」、「再検査」という対処方法がそれぞれ対応付けられている。対処方法決定部122は、環境情報取得部121から供給された環境情報が示す気温に対処テーブルにおいて対応付けられている対処方法を、不適切と判定された検査への対処方法として決定する。
【0070】
対処方法決定部122は、例えば、気温が「Th1未満」であれば「注意」を決定し、気温が「Th1以上Th2未満」であれば「改善要求」を決定する。このように、対処方法決定部122は、環境情報取得部121により取得された環境情報が示す気温が高いほど、すなわち、環境情報が示す環境によって示される食中毒の危険が大きいほど、対処方法を厳しくする。
【0071】
対処方法決定部122は、決定した対処方法を対処処理部123に供給する。対処処理部123は、対処方法決定部122により決定された対処方法で施設への対処を行うための処理(以下「対処処理」と言う)を行う。対処処理部123は本発明の「処理部」の一例である。対処処理部123は、本実施例では、決定された対処方法を示す対処データをユーザ端末20に送信する処理、すなわち、施設の食品衛生の検査業務を行うユーザに通知する処理を、対処処理として行う。
【0072】
ユーザ端末20の対処方法表示部221は、送信されてきた対処データを受信し、受信した対処データが示す対処方法を表示する。
図15は表示された対処方法の例を表す。
図15の例では、施設Aの検査画面に「通知」というタグが開いた状態で表示されている。
【0073】
図15(a)では、対処方法表示部221が、「<注意>」及び「貴施設においては、下記の検査項目について不適切な検査が行われている可能性があります。今後はより時間をかけて適切な検査を行うようご注意願います。」という文字列と、該当する検査項目、すなわち、不適切と判定された検査項目(「K-2、K-6、・・・」)とを表示している。
【0074】
図15(b)では、対処方法表示部221が、「<改善要求>」及び「貴施設においては、下記の検査項目について不適切な検査が行われている可能性があります。実態をよく確認し、改善策を作成して提出してください。」という文字列と、該当する検査項目、すなわち、不適切と判定された検査項目(「K-2、K-6、・・・」)とを表示している。
【0075】
図15(c)では、対処方法表示部221が、「<再検査>」及び「貴施設においては、下記の検査項目について不適切な検査が行われている可能性があります。実態をよく確認し、改善策を作成して提出してください。また、1週間後に再検査を行ってください。」という文字列と、該当する検査項目、すなわち、不適切と判定された検査項目(「K-2、K-6、・・・」)とを表示している。
【0076】
以上のとおり、不適切な検査が行われた施設に対しては、上述したいずれかの対処方法が通知される。この通知により、検査業務を行う担当者に、検査業務の改善に取り組む動機付けを提供することができる。
【0077】
サーバ装置10及びユーザ端末20は、上記の構成に基づいて、印刷された対応情報に基づいて検査画面を表示する検査表示処理と、検査の入力履歴に基づき検査の適切さを判定する判定処理と、不適切な検査に対して対処する対処処理とを行う。
図16は検査表示処理における各装置の動作手順の一例を表す。
図16の動作手順は、例えば、検査支援システム1の運用者が各施設向けに対応情報の印刷をサーバ装置10に対して指示する操作を外部装置等から行うことを契機に開始される。
【0078】
まず、サーバ装置10(印刷制御部102)は、コード化された対応情報(本実施例では施設の識別情報を示す2次元コード)を印刷する印刷データを出力してその対応情報を用紙等の媒体に印刷する(ステップS11)。次に、ユーザ端末20(コード読取部201)は、印刷された対応情報である2次元コードを読み取る(ステップS21)。
【0079】
次に、ユーザ端末20(コード読取部201)は、読み取った情報である読取情報(2次元コードが示す施設ID)をサーバ装置10に送信する(ステップS22)。サーバ装置10(読取情報取得部103)は、送信されてきた読取情報を取得する(ステップS23)。次に、サーバ装置10(検査情報出力部104)は、取得された読取情報(施設ID)に対応付けて記憶されている検査情報を施設情報記憶部101から読み出す(ステップS24)。
【0080】
続いて、サーバ装置10(検査情報出力部104)は、読み出した検査情報を、読取情報の送信元であるユーザ端末20に対して出力する(ステップS25)。ユーザ端末20(検査情報記憶部202)は、出力されてきた検査情報を施設IDに対応付けて記憶する(ステップS26)。そして、ユーザ端末20(検査処理部203)は、記憶された検査情報に基づいて、食品衛生の検査に関する処理である検査処理を行う(ステップS31)。
【0081】
図17は判定処理における各装置の動作手順の一例を表す。
図17の動作手順は、例えば、検査の適切さの判定結果を表示させる操作がユーザ端末20において行われることを契機に開始される。まず、ユーザ端末20(判定結果表示部211)は、判定結果の送信の要求と自端末に対応付けられた施設IDとを示す要求データをサーバ装置10に送信する(ステップS41)。
【0082】
サーバ装置10(検査信頼性判定部112)は、要求データが示す施設IDに対応付けて記憶されている入力履歴を読み出す(ステップS42)。次に、サーバ装置10(検査信頼性判定部112)は、読み出した入力履歴に基づいて検査が適切であったか否かを検査項目毎に判定し(ステップS43)、その判定結果をユーザ端末20に送信する(ステップS44)。ユーザ端末20(判定結果表示部211)は、送信されてきた判定結果を表示する(ステップS45)。
【0083】
図18は対処処理における各装置の動作手順の一例を表す。
図18の動作手順は、例えば、定められた時間間隔が経過することを契機に開始される。まず、サーバ装置10(環境情報取得部121)は、環境情報を取得する(ステップS51)。次に、サーバ装置10(対処方法決定部122)は、不適切と判定された検査への対処方法を決定する(ステップS52)。
【0084】
続いて、サーバ装置10(対処処理部123)は、決定された対処方法で施設への対処を行うための対処処理を実行する(ステップS53)。サーバ装置10(対処処理部123)は、本実施例では、決定された対処方法を示す対処データをユーザ端末20に送信する処理を対処処理として実行する。そして、ユーザ端末20(対処方法表示部221)は、送信されてきた対処データが示す対処方法を表示する(ステップS54)。
【0085】
本実施例では、上記のとおり、不適切と判定された結果がユーザ端末20に出力されるので、ユーザ端末20のユーザ(例えば検査業務を担当する従業員)が、不適切に行われた可能性が高い検査を把握することができる。また、本実施例では、検査の入力に要した時間が短すぎる場合に不適切と判定される。これにより、ユーザ端末20のユーザは、実情を確認せず入力だけが短時間で行われた可能性が高い検査を把握することができる。
【0086】
また、本実施例では、検査の適切さを判定する際に基準が固定されていないので、検査項目毎に各々の検査項目にあった基準が定められることで、基準が固定されている場合に比べて判定の精度を向上させることができる。また、本実施例では、環境情報が示す上記の環境に応じて、不適切と判定された検査への対処方法が決定されるので、食中毒の危険が高い環境であっても食中毒の発生を抑制することができる。
【0087】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
【0088】
[2-1]入力時刻
実施例では、検査の入力に要した時間が入力履歴として用いられたが、これに限らない。例えば、検査の入力が行われた時刻(以下「入力時刻」と言う)が入力履歴として用いられてもよい。この場合、ユーザ端末20の検査処理部203が、例えば
図9に表す入力完了ボタンB2がタップされた時刻を入力時刻として示す履歴データを送信する。
【0089】
検査履歴取得部111は、送信されてきた履歴データが示す入力時刻を入力履歴として取得する。検査信頼性判定部112は、検査履歴取得部111により取得された入力履歴が示す入力時刻が所定の時間帯に含まれている場合に検査が不適切と判定する。所定の時間帯とは、例えば飲食店であれば、正午前後のランチの時間帯及び夕方以降のディナーの時間帯である。
【0090】
これらの時間帯には業務が忙しく、丁寧な検査を行うことが難しいはずである。そのような時間帯に入力が行われた検査は、検査対象の確認が不十分である可能性が高いため、検査信頼性判定部112は、検査が不適切と判定する。この判定が行われることで、業務が忙しい等で検査に不向きな時間帯に検査対象を十分に確認せずに行われた可能性が高い検査を把握することができる。
【0091】
なお、施設で行われている業務の種類によって忙しく検査が難しい時間帯が異なるので、業務の種類に応じて所定の時間帯を異ならせてもよい。また、施設の規模が大きければ忙しい時間帯でも検査を行う人員を確保できる場合もあるので、施設の規模に応じて所定の時間帯を異ならせてもよい。具体的には、施設の規模が大きいほど、所定の時間帯を短くするという具合である。
【0092】
また、検査項目によって、忙しい時間帯でも検査しやすいものと検査しにくいものとがある。そこで、検査信頼性判定部112は、検査履歴取得部111により取得された入力履歴が示す入力がされた項目に応じて定められた時間帯を用いて検査の不適切さの判定を行ってもよい。
図19は本変形例の基準テーブルの一例を表す。
図19の例では、検査項目「K-1」、「K-2」、「K-3」及び「K-4」等に、判定基準である「TZ-1」、「TZ-2」、「TZ-3」及び「TZ-4」等の時間帯が対応付けられている。
【0093】
検査信頼性判定部112は、履歴データが示す各検査項目の検査の入力時刻が、各々の検査項目に対応付けられた判定基準の時間帯に含まれていない場合は検査が適切であったと判断し、含まれている場合は検査が不適切であったと判定する。以上のように所定の時間帯を異ならせることで、所定の時間帯が一律の場合に比べて、判定の精度を向上させることができる。
【0094】
[2-2]対処方法
対処方法は実施例で述べたもの(注意・改善要求・再検査)に限らない。例えば、検査品質の改善のための期間(以下「改善期間」と言う)を確保し、その改善期間が経過した後に再検査を行うことを要求する対処方法が用いられてもよい。その場合に、対処処理部123が、改善期間が経過するまでは検査の入力を受け付けないようにする指示を示すデータを対処データとしてユーザ端末20に送信してもよい。
【0095】
ユーザ端末20の検査処理部203は、受信した対処データが示す指示に従い、改善期間が経過するまでは検査の入力を受け付けず、改善期間の経過後に検査の入力を受け付ける。このように改善期間が確保されることで、現状の確認と改善策の検討の時間が取れるので、改善期間を設けずすぐに再検査する場合に比べて、再検査の品質を向上させることができる。
【0096】
[2-3]対処方法の決定方法
実施例では、検査信頼性判定部112により不適切と判定された検査項目が1つでもあれば、対処方法決定部122が対処方法を決定して対処処理部123が対処処理を行ったが、これに限らない。検査信頼性判定部112は、実施例で述べたように、検査の項目毎に適切さを判定している。
【0097】
そこで、対処方法決定部122は、例えば、不適切と判定された項目が所定の基準(以下「対処基準」と言う)を満たす場合に、対処方法を決定してもよい。対処基準は、例えば、不適切と判定された項目の数が閾値以上である場合に満たされる。なお、項目の数を単純に計数するのではなく、検査の重要度に応じて項目毎に点数を配分し、不適切と判定された項目の点数の合計が閾値以上である場合に満たされる対処基準が用いられてもよい。
【0098】
いずれの場合も、検査の不適切さの程度がある程度低い場合は注意等の対処が行われなくなる。これにより、軽微なミスや不手際で検査が不適切になった場合にいちいち対処が行われなくなり、検査担当のユーザの負担を軽くすることができる。なお、対処方法決定部122は、不適切と判定された項目(以下「不適切項目」と言う)が多いほど対処方法を厳しくしてもよい。
【0099】
図20は本変形例の対処テーブルの一例を表す。
図20の例では、「Th11未満」、「Th11以上Th12未満」、「Th12以上」という不適切項目の件数に、「注意」、「改善要求」、「再検査」という対処方法がそれぞれ対応付けられている。対処方法決定部122は、不適切項目の件数を計数し、計数した件数に対処テーブルにおいて対応付けられている対処方法を、不適切と判定された検査への対処方法として決定する。これにより、不適切な検査の度合いが高い施設ほど厳しく対処して検査を改善させることができる。
【0100】
[2-4]不適切検査の判定
検査信頼性判定部112は、実施例では検査を適切・不適切のいずれかと判定したが、これに限らず、例えば3段階以上の適切さのレベルで判定してもよい。このレベルが高いほど、検査がより適切に行われていることを意味する。
【0101】
例えば実施例のように検査の入力に要した時間が用いられる場合であれば、検査信頼性判定部112は、検査の入力に要した時間が長いほど検査の適切さのレベルが高いと判定する。また、上記変形例のように検査の入力が行われた時刻が用いられる場合であれば、検査信頼性判定部112は、検査のしやすさを時間帯ごとに定めておき、検査の入力が行われた時刻が含まれる時間帯が検査のしやすい時間帯であるほど、検査の適切さのレベルが高いと判定する。
【0102】
対処方法決定部122は、例えば、各検査項目について判定された検査の適切さのレベルの数値を合計し、その合計に基づいて対処方法を決定する。具体的には、対処方法決定部122は、レベルの合計が小さいほど対処方法を厳しくする。本変形例によれば、検査信頼性の判定が2段階である場合に比べて、より実情にあった対処方法を決定することができる。
【0103】
[2-5]各機能を実現する装置
図4等に表す各機能を実現する装置は、上述した装置に限らない。例えば、サーバ装置10が実現する機能を2以上の装置で分担して実現してもよいし、ユーザ端末20が実現する機能を2以上の装置で分担して実現してもよい。いずれの場合も、検査支援システム1の全体で
図4等に表す各機能が実現されていればよい。
【0104】
[2-6]発明のカテゴリ
本発明は、上述したサーバ装置10及びユーザ端末20という各情報処理装置の他、各情報処理装置を備える情報処理システム(検査支援システム1はその一例)としても捉えられる。また、本発明は、各情報処理装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、各情報処理装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。本発明として捉えられるプログラムは、プログラムを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、ダウンロードしたプログラムをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…検査支援システム、10…サーバ装置、20…ユーザ端末、101…施設情報記憶部、102…印刷制御部、103…読取情報取得部、104…検査情報出力部、111…検査履歴取得部、112…検査信頼性判定部、113…判定結果出力部、121…環境情報取得部、122…対処方法決定部、123…対処処理部、201…コード読取部、202…検査情報記憶部、203…検査処理部、211…判定結果表示部、221…対処方法表示部。