(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】微粒子群の空間配置制御システム、微粒子群の空間配置制御方法、微粒子群の空間配置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20241202BHJP
B05B 12/08 20060101ALI20241202BHJP
B05B 12/04 20060101ALI20241202BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20241202BHJP
B05B 5/08 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B05B17/06
B05B12/08
B05B12/04
A61L2/10
B05B5/08 Z
(21)【出願番号】P 2020134643
(22)【出願日】2020-08-07
(62)【分割の表示】P 2020103081の分割
【原出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】520214363
【氏名又は名称】井上(畑田) 康司
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】畑田 康司
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-027844(JP,A)
【文献】特開平04-235766(JP,A)
【文献】特開平06-262110(JP,A)
【文献】特開2003-297118(JP,A)
【文献】国際公開第2017/095192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 17/06
B05B 12/08
B05B 12/04
A61L 2/10
B05B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、所定空間に微粒子群を生成する微粒子群生成部と、
前記微粒子群生成部が生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する照射部と、
前記微粒子群生成部が生成した微粒子群の形態を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記微粒子群の形態と、成形するべき微粒子群の形態を示す形態情報と、を比較して、前記照射部を制御する制御部と、を備えている微粒子群の空間配置制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記形態情報の入力を受け付ける受付部を有し、
前記制御部は、前記形態情報として、雲の形状、雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件のうちの少なくともいずれか1つをユーザに選択させて前記受付部への入力を促す処理を実行する、
請求項1に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【請求項3】
前記照射部は、前記制御部からの制御により駆動する駆動部を有している、
請求項1又は2に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【請求項4】
前記微粒子群生成部が生成した微粒子群に対して、可視光を照射する光源部を備えている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【請求項5】
前記光源部は、映像面に所定の映像を表示する映像表示部である、
請求項4に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【請求項6】
コンピュータが、
液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群を生成する第1のステップと、
前記第1のステップで生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する第2のステップと、
前記第1のステップで生成した微粒子群の形態を認識する第3のステップと、
前記第3のステップで認識した前記微粒子群の形態と、成形するべき微粒子群の形態を示す形態情報と、を比較して、
前記第1のステップで生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する第4のステップと、
を実行する微粒子群の空間配置制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群を生成する第1のステップと、
前記第1のステップで生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する第2のステップと、
前記第1のステップで生成した微粒子群の形態を認識する第3のステップと、
前記第3のステップで認識した前記微粒子群の形態と、成形するべき微粒子群の形態を示す形態情報と、を比較して、
前記第1のステップで生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する第4のステップと、
を実行させる微粒子群の空間配置制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子群の空間配置制御システム、微粒子群の空間配置制御方法、微粒子群の空間配置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体にエネルギーを印加して微粒子化する装置が知られている。
特許文献1には、屋内の加湿を目的として、水に超音波振動を与えることで、水を霧化する霧化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋内に霧が供給されると、霧は空間内を漂う。そして、空間中を漂う霧を鑑賞することで、浮遊感や解放感を得られることがあり、そのような鑑賞目的のために、霧を発生するといった新たな用途が提案されていた。
一方、従来の霧化装置では、屋内に供給された霧は、時間の経過とともに次第に霧散してゆくため、霧を一定の空間領域に留めることができなかった。
【0005】
本発明は、一定の空間領域に霧等の微粒子群を留めておくことができる微粒子群の空間配置制御システムを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群を生成する微粒子群生成部と、微粒子群生成部が生成した微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する照射部と、を備えている微粒子群の空間配置制御システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の微粒子群の空間配置制御システムによれば、一定の空間領域に微粒子群を留めておくことができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る微粒子群の空間配置制御システムの外観図である。
【
図2】
図1に示す微粒子群の空間配置制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】微粒子群の空間配置制御システムの制御処理を説明する図である。
【
図7】変形例1に係る微粒子群の空間配置制御システムの外観図である。
【
図8】変形例2に係る微粒子群の空間配置制御システムの外観図である。
【
図9】変形例3に係る微粒子群生成部の構造を示す断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る微粒子群の空間配置制御システムの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る微粒子群の空間配置制御システムの外観図である。
【0010】
(1)第1実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。
図1に示すように、微粒子群の空間配置制御システム1は、例えば屋内の所定空間に微粒子群を生成するシステムである。ここで、微粒子群とは、液体又は固体が外部からのエネルギーにより破砕されて生成され、一定のまとまりを持ちながら空間中を漂う微細、かつ流動性を有する物質群を指す。微粒子群としては、例えば自然界において発生する雲が挙げられる。
なお、微粒子群の空間配置制御システム1は、屋内に限られず、屋外で使用されてもよい。
【0011】
すなわち、微粒子群の空間配置制御システム1は屋内に人工的に雲に模した物体(以下、人工雲という)を生成するシステムである。屋内に生成される人工雲は、例えば観賞に用いられる。
微粒子群の空間配置制御システム1は、ユーザが所望する形状の人工雲を生成する。
【0012】
ユーザは、操作端末70に表示される画像データの選択(例:複数の空の写真から選択)や、条件選択(例:所定地域、所定時期を入力)により、生成したい空の外観情報を制御部60に入力する。
操作端末70としては、例えばスマートフォンのような携帯端末が挙げられる。入力作業は、操作端末70を介して行う他、後述する制御部60への直接的な入力により行ってもよい。
【0013】
(2)微粒子群の空間配置制御システム1の全体構成
微粒子群の空間配置制御システム1の構成について説明する。
図2は、
図1に示す微粒子群の空間配置制御システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
図1および
図2に示すように、微粒子群の空間配置制御システム1は、微粒子群生成部10と、認識部20と、照射部30と、拡散部40と、光源部50と、制御部60と、フレーム90(
図1参照)と、を備えている。
【0015】
微粒子群生成部10は、液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群を生成する。微粒子群生成部10は、水、油、無機物に対してエネルギーを印加することで微粒子化する。
微粒子群生成部10が印加するエネルギーは、超音波、電気、熱等の各種のエネルギーが採用されうる。微粒子群生成部10の具体的な構造については後述する。
【0016】
認識部20は、微粒子群生成部10が生成した微粒子群の形態を認識する。
認識部20は、微粒子群が滞留する空間領域を、CMOS等のイメージセンサ(画像認識センサ)により認識する。認識部20には、一般的に画像処理等に利用される、画素数10万~1000万pixel程度のUSBカメラを用いることができる。
【0017】
照射部30は、微粒子群生成部10が生成した微粒子群に対して電磁波を照射して、微粒子群の一部を蒸発あるいは焼失させることで除去する。これにより、所定空間の微粒子群が成形される。
電磁波は、赤外線、紫外線、可視光線等のうち、どのようなものであってもよい。照射部30は、ユーザが所望する範囲の外にある微粒子群を消失させることで、微粒子群をユーザが所望する形状に成形する機能を有する。照射部30の具体的な構造については後述する。
【0018】
拡散部40は、超音波振動子16が生成した微粒子群を、所定空間に拡散する。
拡散部40は、例えば、超音波振動子16が生成した微粒子群に対して送風を行うことで、所定空間に微粒子群を拡散する。なお、拡散部40は、所定空間の空気を吸引することで、所定空間に微粒子群を拡散してもよい。
【0019】
光源部50は、微粒子群生成部10が生成した微粒子群に対して、可視光を照射する。光源部50は、例えば天井に設置される。光源部50は、一般的な照明器具であってもよい。
【0020】
また、光源部50は、空を模した背景を照射してもよい。すなわち、光源部50として、人工雲である微粒子群の背景となる空を表示する平面状のパネルを採用することができる。
光源部50は、ユーザから入力される形態情報を基に、制御部60から出力された命令に従い、色調と光量を調節する。ここで、形態情報とは、ユーザが所望する微粒子群の形態を示す情報である。
【0021】
光源部50としては、パネル型照明を採用することもできる。空の経時的な変化も含めて表現できるよう、光量・光色を変更できるものが好ましい。
例えば、光色の異なるLEDの点灯により、朝、昼、夕方の空、などを表現してもよい。
【0022】
光源部50は、微粒子群生成部10から放出される微粒子群である霧への耐久性を考慮して、防水性の高いものが好ましい。
光源部50は、制御部60と通信ができるよう、通信機能を備えたものが好ましい。
【0023】
制御部60は、認識部20により認識された微粒子群の形態と、成形するべき微粒子群の形態を示す形態情報と、を比較して、照射部30を制御する。制御部60は、受付部61を有している。受付部61は、形態情報の入力を受け付ける。制御部60の具体的な構成については後述する。
【0024】
フレーム90は、各部材を支持する構造物である。
フレーム90は、一般的に産業装置等に使用されるアルミフレーム90の骨組みと、金属または樹脂製のカバーと、を備えている。
フレーム90のうち、ユーザから視認できる部分の色は、人工雲である微粒子群により模される模擬的な空の美観に影響を与えないよう、白色など目立たない色であることが好ましい。
【0025】
(2-1)微粒子群生成部10の構成
微粒子群生成部10の構成について説明する。
図3は、微粒子群生成部10の構造を示す断面図である。
図3に示すように、微粒子群生成部10は、貯水タンク11と、給水チューブ12と、給水ポンプ13と、霧化室14と、フロートスイッチ15と、超音波振動子16と、ノズル17と、を備えている。なお、以下の説明では、微粒子群を霧として説明する。
【0026】
貯水タンク11は、微粒子群である霧の原料となる液体(水道水など)を貯蔵する。貯水タンク11の材質は、ポリエチレンやポリプロピレン等、安価で軽量かつ腐食しにくい樹脂材料が好ましい。一度の給水で大量の霧を生成できるよう、容量は10~30L程度であることが好ましい。
なお、貯水タンク11に貯留される液体としては、水の他、除菌性能のある次亜塩素酸水、又は芳香成分を加えたものを使用しても良い。
貯水タンク11の内部に、給水チューブ12が挿入されている。
【0027】
給水チューブ12は、貯水タンク11内と、霧化室14内と、を接続している。給水チューブ12は、貯水タンク11から液体を、霧化室14に引き上げる。給水チューブ12の素材は、耐水性の樹脂材料(ポリウレタン、PVC、フッ素樹脂など)が好ましい。
【0028】
給水チューブ12は、内部の気泡などが視認できるよう、透明であることが好ましい。引き回しを容易にするため、給水チューブ12の内径は6~20mm程度であることが好ましい。
給水チューブ12の中間部に、給水ポンプ13が設けられている。
【0029】
給水ポンプ13は、貯水タンク11に貯留された液体を霧化室14に移送する吸引力の駆動源となる。給水ポンプ13には、一般的に揚水等に利用されるダイヤフラムポンプを採用することができる。
給水ポンプ13は、制御部60からの指令に基づいて、貯水タンク11内の貯水を、霧化室14内に供給する。霧化室14内の水量は、フロートスイッチ15により検知されている。
【0030】
霧化室14は、直方体状の空間を内部に有する筐体により構成されている。霧化室14の内部には、貯水タンク11から供給された液体が貯留されている。
霧化室14内には、霧化された水が気体となって漂う滞留空間が形成される。霧化室14を構成する筐体の材質は、耐腐食性の金属(アルミニウム、ステンレス)等が好ましい。
【0031】
フロートスイッチ15は、霧化室14内に設けられている。フロートスイッチ15のフロートが水位の変化とともに上下動することで、霧化室14内の水位が検出される。
フロートスイッチ15は、霧化室14における液体の水位が過剰にならないよう、適正な水位に達したことを検知し、制御部60に信号を伝達する。制御部60はフロートスイッチ15からの入力に従い、給水ポンプ13に給水OFFの信号を出力する。フロートスイッチ15としては、一般的な加湿器等に使われるものを採用することができる。
【0032】
超音波振動子16は、霧化室14を構成する筐体の底部に設けられている。超音波振動子16は、超音波振動により液体を微粒子化して、微粒子群を生成する。
超音波振動子16が振動することで、霧化室14の底部に貯留された液体が、振動により破砕され、霧化する。
超音波振動子16としては、1~5MHz程度の周波数の圧電素子が利用できる。
【0033】
例えば、1.6MHz、又は2.4MHzの周波数の圧電素子を使用すると、それぞれ粒子径が約4μm、約3μmの霧を生成できる。粒子径が細かいほど、少ない水量で濃い(視認しやすい)霧を生成することが可能であるため、周波数の高い圧電素子を使用することが好ましい。霧化量は1~30L/hが好ましい。霧化した水は、霧化室14内の滞留空間を漂う。
【0034】
ノズル17は、霧化室14を構成する筐体の一部に設けられ、霧化室14の内部と、外部とを連通する開口を形成する。図示の例では、ノズル17の基部が、筐体の上面に接続されている。
ノズル17は、霧化室14内を滞留する霧を、先端部の吐出口から所定空間に向けて吐出する。所定空間をゆっくりと漂う霧を表現するためには、放出速度は低速で、放出範囲は広範囲であることが好ましい。このため、ノズル17は、基部から先端部に向けて次第に内径が大きくなる形状であることが好ましい。
【0035】
また、微粒子群は重力方向に移動しやすいため、ノズル17の吐出方向は斜め上方に向けることが好ましい。ノズル17の材質は、成形の容易な耐水性の樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)であることが好ましい。
ノズル17の吐出口を多孔質フィルタで覆ってもよい。これにより、微粒子群の粒子サイズを一定にして、濃度の高い微粒子群を生成することができる。
【0036】
微粒子群生成部10には、拡散部40としての送風ファン41が連結されている。送風ファン41は、霧化室14を構成する筐体のうち、ノズル17と反対側の位置に設けられている。
筐体は、送風ファン41からの送風が、霧化室14内の滞留空間に流れ込む構造となっている。
このため、送風ファン41が送風を行うと、超音波振動子16により生成した霧をノズル17に向けて送り出す気流が発生する。この気流は、滞留空間を漂う霧をノズル17に向けて送り出し、霧とともにノズル17を介して筐体の外部に放出される。
【0037】
送風ファン41は、霧のノズル17からの放出量を調節できるよう、ON/OFFだけでなく、流量調節が可能なものを採用することが好ましい。
また、霧の充満した環境で利用するため、防湿性の高いファンを利用することが好ましい。送風ファン41は、制御部60からの指令に基づいて送風を行う。
【0038】
(2-2)照射部30の構成
照射部30の構成について説明する。
図4は、照射部30の構造を示す断面図である。
図4に示すように、照射部30は、駆動部31(アクチュエータ)と、赤外線ヒータ32と、反射板33と、可視光カットフィルタ34と、ヒートシンク35と、冷却ファン36と、ハウジング37と、を備えている。
照射部30は、認識部20と一体に構成されている。
【0039】
駆動部31は、制御部60からの制御により駆動する。駆動部31は、一体に構成された認識部20と照射部30を、最適な位置に向けるための移動手段である。駆動部31には、小サイズで任意の方向に搭載物を制御できるアクチュエーターとして、監視カメラ等に使われるパンチルト式の機構を採用することができる。
【0040】
赤外線ヒータ32は、赤外線の照射源であり、微粒子群を非接触で加熱し、蒸発あるいは焼失させて消失する。すなわち、図示の例では、照射部30は、電磁波として赤外線を微粒子群に照射する。
赤外線ヒータ32には、照射の立ち上がりが早く、微粒子群である霧に吸収されやすい3μm付近の波長の光を生成できるヒータとして、カーボンファイバーヒータを使用することが好ましい。
赤外線ヒータ32の出力は500~5000W程度であることが好ましい。
【0041】
反射板33は、赤外線ヒータ32より照射された赤外光を反射し、平行光として放出させる。反射板33には、平行光型の遠赤外線ラインヒータ等で利用される反射板33を採用することができる。反射板33の材質は、鏡面磨きの金属(アルミニウム、ステンレス等)が好ましい。
【0042】
反射板33の内側は、可視光成分の照射を低減するため、可視光を吸収する赤外線反射膜によりコーティングされてもよい。このような赤外線反射膜に採用される赤外線反射性と可視光吸収性の高い被覆材としてSi,Al,Zr,Tiなどの金属の化合物を原料とする黒色顔料を選択することができる。
【0043】
可視光カットフィルタ34は、不可視の赤外光のみを透過するフィルタである。可視光カットフィルタ34を設けることで、赤外線ヒータ32の発する光のうち、赤色光などの可視光を透過させずに、人工雲により模される模擬的な空の外観に影響を与えないようにすることができる。
可視光カットフィルタ34としては、赤外光を透過し、可視光を吸収する色ガラスを採用することができる。
【0044】
ヒートシンク35は、赤外線ヒータ32の余熱を放熱する部材である。ヒートシンク35には、一般的に放熱部材として利用される熱伝導性の良い金属(アルミ、銅など)を採用することが好ましい。
【0045】
冷却ファン36は、ヒートシンク35の吸収した熱を空気中に放熱する。
冷却ファン36には、10~100MM四方程度のサイズの一般的なDCファンを採用することができる。
【0046】
ハウジング37は、照射部30の筐体となる部材である。
ハウジング37は、認識部20や駆動部31に赤外線ヒータ32の熱が伝わらないように断熱する機能をもつ。ハウジング37の材質は、耐熱性を有する樹脂(ポリイミド、PPS、PSU)が好ましい。
【0047】
次に、照射部30の動作原理について説明する。
照射部30の赤外線ヒータ32から照射された赤外光は、反射板33に反射し、平行光として微粒子群に照射される。
赤外線ヒータ32の照射方向における前方に設けられた可視光カットフィルタ34により、可視光成分がカットされ、不可視の赤外光のみが、微粒子群に照射される。
【0048】
赤外線ヒータ32から生じる余熱は、ヒートシンク35に吸熱され、冷却ファン36により外部に放熱される。
断熱性のハウジング37で照射部30をカバーしているので、周囲の部材への伝熱が抑えられる。図示を省略しているが、発熱対策として、サーモスタットなど過昇温検知センサを照射部30に設け、閾値以上の温度上昇が生じた際は、赤外線ヒータ32への電源供給をOFFにしてもよい。
【0049】
なお、照射部30を複数設けてもよい。この場合には、複数の照射部30を、微粒子群生成部10が微粒子群を生成する所定空間に対して、互いに相対する位置に配置してもよい。相対する位置とは、所定空間の中心部を基準にして、互いに反対側となる位置である。
【0050】
(2-3)制御部60の構成
制御部60の構成について説明する。
図5は、制御部60の構成を示すブロック図である。
【0051】
図5に示すように、制御部60は、プロセッサ61と、記憶装置62と、通信インタフェース63と、入出力インタフェース64とを備える。
【0052】
プロセッサ61は、記憶装置62に記憶されたプログラムを起動することによって、制御部60の機能を実現するように構成される。プロセッサ61は、コンピュータの一例である。プロセッサ61の機能は、例えば、以下を含む。
・微粒子群生成部10に微粒子群を生成させる機能。
・照射部30に微粒子群を照射させる機能
【0053】
プロセッサ61は、操作端末70、および認識部20から入力された情報、以下の情報を解析する。
・成形するべき微粒子群の形態
・所定空間に漂う微粒子群の形態
・所定空間に漂う微粒子群に対して、照射部30が照射するべき範囲
【0054】
プロセッサ61は、ユーザから操作端末70を介して入力された形態情報から、成形するべき微粒子群の形態を特定する。すなわち、プロセッサ61は、形態情報の入力を受け付ける受付部61として機能する。
【0055】
プロセッサ61は、形態情報として、雲の属性、すなわち、雲の形状、雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件のうちの少なくともいずれか1つをユーザに選択させて受付部61への入力を促す処理を実行する。雲の形状とは、巻雲、巻積雲、積乱雲、高層雲等の雲の種類を示す名称である。
雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件とは、特定の時期、特定の時間帯に特定の地域で特に生じやすい雲の形状を、これらの発生する環境から特定する指標である。
【0056】
プロセッサ61は、認識部20である画像認識センサが取得した微粒子群の形状を解析して、現時点において所定空間に漂う現状の微粒子群の形態を把握する。
プロセッサ61は、形態情報が示す微粒子群の形態と、現状の微粒子群の形態と、を比較することで、所定空間に漂う微粒子群に対して、照射部30が照射するべき範囲を特定する。
【0057】
プロセッサ61は、駆動部31へ入力する駆動信号、および照射部30に入力する照射信号を生成する。駆動信号は駆動部31が駆動する量を示す信号である。照射信号は、照射部30が照射する範囲、強度、および時間を示す信号である。
【0058】
記憶装置62は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置62は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0059】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0060】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・ユーザが選択するために、ユーザに対して提示される雲の属性に関する情報
・ユーザから入力された形態情報
・認識部20が認識した現状の微粒子群の形態に関する情報
【0061】
入出力インタフェース64は、制御部60に接続される入力デバイスからユーザの指示を取得し、かつ、制御部60に接続される出力デバイスに情報を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0062】
通信インタフェース63は、制御部60と外部機器との間の通信を制御するように構成される。
外部機器とは、微粒子群生成部10、照射部30、認識部20、拡散部40、光源部50、操作端末70である。
【0063】
(3)制御処理
本実施形態の制御処理について説明する。
図6は、本実施形態の制御処理のフローチャートである。この説明では、原料となる液体を水とし、微粒子群を霧として、それぞれの処理を説明する。
【0064】
図6に示すように、プロセッサ61は、ユーザから形態情報の入力の受付(S11)を実行する。
具体的には、プロセッサ61は、形態情報として、雲の属性、すなわち、雲の形状、雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件のうちの少なくともいずれか1つをユーザに選択させて受付部61への入力を促す処理を実行する。ユーザからの入力は、操作端末70を介して行われる。
【0065】
ステップS11の後に、プロセッサ61は、光源部50の調整(S12)を実行する。
具体的には、制御部60は、ユーザから入力される形態情報を基に、光源部50に対して色調と光量を調節する指令を送信する。
【0066】
ステップS12の後に、プロセッサ61は、霧生成前の外観の記録(S13)を実行する。
具体的には、制御部60は、認識部20および照射部30を制御し、認識部20が所定空間の全体を撮像できるよう駆動部31を動かし、初期状態の所定空間の外観を記録する。
【0067】
ステップS13の後に、プロセッサ61は、所定空間への霧の放出(S14)を実行する。
具体的には、制御部60は、微粒子群生成部10を制御し、形態情報から得られた霧の希望生成範囲をカバーするよう、流量を調節して霧を放出する。
この際、微粒子群生成部10では、液体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群である霧が生成され、所定空間に放出される。
【0068】
ステップS14の後に、プロセッサ61は、霧の滞留範囲の認識(S15)を実行する。
具体的には、制御部60は、認識部20および照射部30を制御し、駆動部31を動かして霧生成後の画像を記録する。そして、初期状態との比較から、霧の滞留範囲を認識する。
【0069】
ステップS15の後に、プロセッサ61は、霧が要求範囲を満たすかどうかの判断(S16)を実行する。
具体的には、制御部60は、霧の滞留範囲と、形態情報の比較を行う。
【0070】
ステップS16において、霧が要求範囲を満たさない場合(S16のNO)には、プロセッサ61は、ステップS14の処理に戻る。
具体的には、形態情報により要求された領域が、霧で満たされていなければ、ステップS14に戻って継続して霧を放出する。
【0071】
ステップS16において、霧が要求範囲に満たされている場合(S16のYES)には、プロセッサ61は、要求範囲外の霧の除去(S17)を実行する。
具体的には、要求範囲が霧で満たされていれば、形態情報との差分から、要求範囲外に滞留した霧の位置を把握する。
【0072】
そして、制御部60は、駆動部31を駆動させて照射部30の位置を制御しながら、照射部30により、要求範囲外に滞留した霧に赤外線を照射して、当該領域に滞留した霧を消失させる。
これらの処理により、ユーザが所望する霧が所定空間に成形される(S18)。また、一連の処理を繰り返すことで、形態情報に即した形態の霧を維持できる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、微粒子群生成部10が微粒子群を生成する。このため、微粒子群を継続して所定空間に供給することができる。
そして、微粒子群生成部10が生成した微粒子群に対して、照射部30が電磁波を照射して、その一部を除去して成形する。
このため、仮に微粒子群生成部10が連続して微粒子群を供給することで、微粒子群の範囲が広がりすぎたとしても、不要な領域に位置する微粒子群を照射部30が除去することができる。このため、所定空間の所望する範囲に、常に微粒子群が滞留している状況を作ることができる。このように、一定の空間領域に微粒子群を留めておくことができる。
【0074】
このように、微粒子群である人工雲を生成することで、屋外で雲の浮かぶ空を眺めた際の開放感を忠実に再現できる。「時間とともに形態が変化するが、全体としては一定の空間領域にとどまる雲」を、仕切られた閉鎖空間ではなく、屋内に直接生成することができ、より屋外に近い状態を再現できる。
例えば、病室等のように、屋外への外出が制限される環境でも、微粒子群の空間配置制御システム1を用いて人工雲を室内に生成することで、屋外にいるような開放感を得ることができる。
【0075】
このように、映像や光ではなく、液滴からなる微粒子群を生成すると、微粒子群の流れ等により触覚を刺激できる。また、粒子の原料に嗅覚や味覚を刺激する物質や、揮発する際に音を生じる物質を含ませることが可能である。
例えば海辺の香りに近い芳香成分を利用し、海辺の空を再現することができる。五感に訴えかけることで、副交感神経の活性化、癒し効果、覚醒効果、などを得ることが期待できる。
【0076】
また、自然界には、単調な中に不規則な変化を含むパターンがあり、それが人間に癒し効果を与えることが1/fゆらぎなどの研究で知られている。
自然界の雲の動きについても、1/fゆらぎに近い信号が存在することが示されている。本発明で生成する人工雲である微粒子群も、特定の範囲に滞留する点で単調であるが、不規則な流動を含むため、同様の癒し効果が得られる可能性がある。
【0077】
また、照射部30が、電磁波として、赤外線を微粒子群に照射する。このため、比較的入手しやすい汎用的な赤外線照射装置を活用して、簡易な構成で照射部30を構成することができる。
【0078】
また、微粒子群生成部10が、超音波振動により液体を微粒子化して、微粒子群を生成する超音波振動子16を備えている。
このため、固体を破砕して微粒化するような構成と比較して、少ないエネルギーで微粒子群を生成することができる。
【0079】
また、拡散部40が、超音波振動子16が生成した微粒子群を、所定空間に拡散する。このため、所定空間への微粒子群の拡散を促すことで、所定空間に効率的に微粒子群を滞留させることができる。
【0080】
また、拡散部40としての送風ファン41が、超音波振動子16が生成した微粒子群に対して送風を行うことで、所定空間に前記微粒子群を拡散する。このため、送風により発生した気流に乗せて、微粒子群を効率的に所定空間に送出することができる。
【0081】
また、認識部20が、微粒子群生成部10が生成した微粒子群の形態を認識し、制御部60が、認識部20により認識された微粒子群の形態と、成形するべき微粒子群の形態を示す形態情報と、を比較して、照射部30を制御する。このため、照射部30により、微粒子群をユーザが所望する形態に成形することができる。
【0082】
また、制御部60が、形態情報の入力を受け付ける受付部61を有し、制御部60が、形態情報として、雲の形状、雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件のうちの少なくともいずれか1つをユーザに選択させて受付部61への入力を促す処理を実行する。
このため、ユーザが制御部60から提案される雲の属性を選択することで、所望する形態の入力を簡易な作業にすることができる。
【0083】
また、駆動部31が、制御部60からの制御により駆動する。
このため、照射部30の位置を変化させることが可能になり、照射部30の照射態様に自由度を与え、様々な形態の微粒子群を生成することができる。
【0084】
また、照射部30が、認識部20と一体に構成されている。このため、認識部20と微粒子群との位置関係を、照射部30と微粒子群との位置関係と近くすることができる。
これにより、認識部20から取得した現状の微粒子群の形態に関する情報に基づいて行われる照射部30の制御処理の負担を低減することができる。
【0085】
また、照射部30が複数設けられ、複数の照射部30が、所定空間に対して、互いに相対する位置に配置されていてもよい。
この場合には、複数の照射部30が、互いに相対する位置から微粒子群に赤外線を照射することが可能になり、効率的に微粒子群の成形を行うことができる。
【0086】
また、光源部50が、微粒子群生成部10が生成した微粒子群に対して、可視光を照射する。このため、微粒子群で可視光の散乱を生じさせ、自然界の雲に近い視覚的効果を得ることができる。
【0087】
また、光源部50が、空を模した背景を照射してもよい。この場合には、屋内に漂う微粒子群を、青空に浮遊する雲に模すことができ、より一層優れた視覚的効果を得ることができる。
【0088】
(4)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0089】
(4-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、拡散部40として、微粒子群を吸引する吸引部42を備えている例である。
図7は、変形例1に係る微粒子群の空間配置制御システム2の外観図である。
【0090】
図7に示すように、微粒子群の空間配置制御システム2は、微粒子群生成部10と、認識部20と、照射部30と、拡散部40と、光源部50と、制御部60と、を備えている。このうち、拡散部40を除く構成については第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0091】
微粒子群の空間配置制御システム2の拡散部40は、前述の送風ファン41の他に、吸引部42を備えている。
吸引部42は、所定空間の空気を吸引することで、所定空間に微粒子群を拡散する。
図示の例では、吸引部42は、所定空間に対して、送風ファン41と反対側の位置に配置されている。吸引部42は、天井と光源部50との間に配置されている。
【0092】
吸引部42が所定空間の空気を吸引すると、所定空間に漂う微粒子群が吸引部42に吸引されることにより、所定空間に拡散される。吸引部42は、例えば、既存の排気設備からダクト等を引いて構成しても良い。
【0093】
このように、変形例1に係る微粒子群の空間配置制御システム2では、拡散部40としての吸引部42が、所定空間の空気を吸引することで、所定空間に前記微粒子群を拡散する。
このため、送風ファン41から距離が離れている地点に吸引部42を配置することで、所定空間の全体にわたって、微粒子群を拡散することができる。
【0094】
また、吸引部42が天井と光源部50との間に配置されているので、微粒子群を斜め上方向に移動する流れができる。このため、微粒子群生成部10におけるノズル17からの微粒子群の放出が緩やかでも、微粒子群が下降するのを抑え、ノズル17からの放出方向に向けて広がりやすくすることができる。
【0095】
(4-2)変形例2
変形例2について説明する。変形例2は、除湿機能を備える例である。
図8は、変形例2に係る微粒子群の空間配置制御システム3の外観図である。
図8に示すように、微粒子群の空間配置制御システム3は、微粒子群生成部10と、認識部20と、照射部30と、拡散部40と、光源部50と、制御部60と、除湿部80と、を備えている。このうち、除湿部80を除く構成については第1変形例と同一であり、その説明を省略する。
【0096】
除湿部80は、所定空間に漂う微粒子群としての霧や、赤外線照射により加熱された空気を吸引することで、所定空間を除湿する。除湿部80は、図示のように吸引部42と併用してもよいし、単独で採用してもよい。除湿部80が回収した水を貯水タンク11に戻してもよい。
【0097】
除湿部80は、ユーザの要望に合った空気環境を再現するため、冷暖房等の空調設備と連携してもよい。この場合、ユーザが制御部60に入力するデータに、気温や湿度に関する条件も追加し、空気調節機能も含めたシステムとして運用することも可能である。
【0098】
このように、変形例2に係る微粒子群の空間配置制御システム3では、除湿機能を有することで、室内の湿度制御が可能になる。このため、空気環境もユーザの要求に合ったものに調節することが可能になる。また、除湿部80が回収した水を貯水タンク11に戻すことで、水の消費量を抑えることも可能である。
【0099】
(4-3)変形例3
変形例3について説明する。変形例3は、微粒子群生成部10Bが、UV殺菌灯81(紫外線照射部)、および温度調整機構82を備えている例である。
図9は、変形例3に係る微粒子群生成部10Bの構造を示す断面図である。
【0100】
微粒子群生成部10は、貯水タンク11と、給水チューブ12と、給水ポンプ13と、霧化室14と、フロートスイッチ15と、超音波振動子16と、ノズル17と、UV殺菌灯81と、温度調整機構82と、を備えている。このうち、UV殺菌灯81および温度調整機構82を除く構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0101】
UV殺菌灯81は、筐体内で微粒子化されて生成された微粒子群(この例では霧)、および当該微粒子群の原料(この例では水)のうちの少なくともいずれか一方に対して紫外線を照射して殺菌を施す。UV殺菌灯81は、筐体の内部のうち、超音波振動子16と、ノズル17と、の間に位置する部分に配置されている。
このように、UV殺菌灯81を設けることで、生成する微粒子群の内部で微生物が増殖するのを抑制することができる。
【0102】
温度調整機構82は、筐体の底部に設けられている。温度調整機構82としては、ペルチェ温調方式を採用することができる。温度調整機構82は、原料である水、又は原料から生成される微粒子群(霧)のうちの少なくともいずれか一方の温度を調節する。
例えば、微粒子群を冷却することで、照射部30からの赤外線照射による温度上昇が外気温に与える影響を相殺することができる。
【0103】
また、微粒子群を冷却することで、外気温が高い条件・湿度が低い条件で、微粒子群が消失しやすくなる問題を回避することができる。
微粒子群の空間配置制御システム1の一部に温湿度センサを追加する、もしくは外部機器から温湿度測定データを受信することで、環境に応じて霧の温度を調節する制御を入れることも可能である
【0104】
(5)その他の変形例
空に近い外観にデザインされた天井を利用することも可能である。また、大型のディスプレイに青空等の映像を映し、背景として利用することも可能である。
夜空を模倣する方法として、天井・壁に星空などをプロジェクターにより投影する技術を採用してもよい。天井に投影した画像を背景として、手前に雲を生成しても良い。
【0105】
多様な空を表現するため、虹・太陽・月などを模した照明や構造物を追加しても良い。例えば虹を生成する場合、自然界で虹が発生する条件に合わせ、利用者の目線から40~42°になる角度で、キセノンランプなど広い波長を含む白色光を照射すると、利用者が虹を視認できる。
【0106】
微粒子群の原料となる液体に有効成分を加えることで、付加的な効果を得てもよい。例えば、次亜塩素酸水を原料とすることで、除菌・消臭効果のある霧を生成することができる。
また、精油などの芳香成分や、電子タバコ等に使われるリキッドのように、味覚・嗅覚の双方を刺激する成分を原料としても良い。
【0107】
ナノバブルやマイクロバブル、毒性のない微生物を含有させた液体を霧の原料とすることで、霧に機能性を持たせることができる。例えば、オゾンをナノバブルとして含有させることで、持続性のある殺菌性をもたせる技術が知られている。
また、藻など光合成能をもつ微生物を霧に含ませることで、CO2の吸収や空気浄化性能を持たせることも期待できる。
【0108】
液体を微粒化する際のエネルギーとして、超音波振動に代えて、加圧空気と水を同時にノズルから噴射し、霧を生成する技術を利用しても良い。
また、タンクから供給された液体(エチレングリコールと水の混合物など)を加熱し、冷やしながら排出することで大量のミストを作る技術を利用してもよい。
また、ドライアイスなどを用い、空気中の水蒸気を液滴化したものを利用することも可能である。
【0109】
照射部30からの赤外線照射に代えて、透明フィルムヒーターやカーボンナノチューブ、シリカなど遠赤外線放射物を混合した樹脂からの熱放射を利用しても良い。
人工雲を生成したい空間領域に合わせてワイヤーフレーム状に熱放射体を配置し、ワイヤーフレーム構造の内側に霧を放出することで、フレームの内側に位置する領域だけに霧を蓄積させることができる。
【0110】
また、ワイヤーフレーム構造の除去したい位置に合わせて吸引口を設け、吸引により霧を除去することも可能である。吸引ではなく、乾燥空気をフレーム外縁部のみに放出し、霧を除去しても良い。
また、電極に高電圧を印加し、荷電粒子の流れを生じさせることで、粒子群を除去する技術を利用してもよい。ワイヤーフレーム構造に電圧を印加し、荷電させた粒子を除去しても良い。
【0111】
認識部20および照射部30を移動させる駆動部31の構造として、パンチルト式のアクチュエーター以外に、ロボットハンドや、直動軸・シータ軸のモーター制御機構を利用しても良い。また、認識部20および照射部30は、画像認識センサや赤外線照射器をアレイ状に配列し、移動ではなく、該当する位置の画像認識センサや赤外線照射器を動作させることで、所定位置の認識・照射を行っても良い。
【0112】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る微粒子群の空間配置制御システム4は、リラクゼーション設備として利用される。
図10は、本発明の第2実施形態に係る微粒子群の空間配置制御システム4の外観図である。
図10に示すように、微粒子群の空間配置制御システム4は、微粒子群生成部10が、照射部30よりも下方に配置され、微粒子群である霧を床に滞留させるように放出している。
【0113】
このため、椅子に着座したユーザの足に霧を吐出することができる。ユーザの足元付近で赤外線照射により微粒子群を除去することで、微粒子群の拡散を利用者の手前で止めることができる。
利用者は赤外線照射の熱による加温と加湿により、代謝改善などの健康増進効果や、保湿による美容効果が得られる。また、滞留した微粒子群が雲海のような外観を持ち、眺めることで視覚的効果が得られる。
【0114】
<その他の利用方法>
・加湿ヒータ・加湿器としての利用
微粒子群を除去する際に生じる蒸気と熱を利用し、人工雲を眺める加湿ヒータや加湿器として利用することも可能である。微粒子群を除去する際に赤外線照射を用いることで、加熱殺菌効果も得られる。
【0115】
・微生物を利用した空気清浄機としての利用
微粒子群に藻など光合成能をもつ微生物を含有させ、二酸化炭素の吸収と酸素放出による空気浄化能を持たせることができる。微粒子状にすることで水の単位体積あたりの表面積を最大化でき、ガス交換効率を最大化できる。
【0116】
・舞台等の装飾としての人工雲の利用
音楽ライブ、アミューズメントパーク等で、装飾の一部として人工雲を利用することが可能である。例えばアミューズメントパークの建造物に雲をかけ、より幻想的な空間を演出することが考えられる。また、花見における桜など、屋外で鑑賞する対象に、付加的な装飾として人工雲を追加することも可能である。
【0117】
・立体プロジェクターとしての雲の利用
生成した人工雲を、広告やその他映像を投影するプロジェクターとして利用できる。既存技術よりも濃い微粒子群を一定の位置に生成できるため、よりクリアな映像を利用者に見せることが可能である。
【0118】
・ゲーム・アトラクションにおける利用
サバイバルゲームにおける障害物など、ゲーム性を上げる構成要素として人工雲を利用することも可能である。本発明により任意の位置・形状で人工雲を生成できるため、例えば人工雲により目標物の視認性を阻害したり、雲の位置が徐々に移動して視認性が良い場所、悪い場所が経時的に変化したりする、といったゲーム上の演出が可能である。
【0119】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【0120】
以上の各実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
【0121】
(付記1)
液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群を生成する微粒子群生成部と、
前記微粒子群生成部が生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する照射部と、を備えている微粒子群の空間配置制御システム。
【0122】
(付記2)
前記照射部は、前記電磁波として、赤外線を前記微粒子群に照射する、
(付記1)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0123】
(付記3)
前記微粒子群生成部は、超音波振動により液体を微粒子化して、前記微粒子群を生成する超音波振動子を備えている
(付記1)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0124】
(付記4)
前記超音波振動子が生成した微粒子群を、前記所定空間に拡散する拡散部を備えている、
(付記1)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0125】
(付記5)
前記拡散部は、前記超音波振動子が生成した微粒子群に対して送風を行うことで、前記所定空間に前記微粒子群を拡散する、
(付記4)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0126】
(付記6)
前記拡散部は、前記所定空間の空気を吸引することで、前記所定空間に前記微粒子群を拡散する、
(付記4)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0127】
(付記7)
前記微粒子群生成部が生成した微粒子群の形態を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記微粒子群の形態と、成形するべき微粒子群の形態を示す形態情報と、を比較して、前記照射部を制御する制御部と、を備えている、
(付記1)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0128】
(付記8)
前記制御部は、前記形態情報の入力を受け付ける受付部を有し、
前記制御部は、前記形態情報として、雲の形状、雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件のうちの少なくともいずれか1つをユーザに選択させて前記受付部への入力を促す処理を実行する、
(付記7)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0129】
(付記9)
前記照射部は、前記制御部からの制御により駆動する駆動部を有している、
(付記7又は8)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0130】
(付記10)
前記照射部は、前記認識部と一体に構成されている、
(付記7から9)のいずれかに記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0131】
(付記11)
前記照射部は複数設けられ、
複数の前記照射部は、前記微粒子群生成部が微粒子群を生成する前記所定空間に対して、互いに相対する位置に配置される、
(付記7から10)のいずれかに記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0132】
(付記12)
前記微粒子群生成部が生成した微粒子群に対して、可視光を照射する光源部を備えている、
(付記1から11)のいずれかに記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0133】
(付記13)
前記光源部は、空を模した背景を照射する、
(付記12)に記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0134】
(付記14)
前記所定空間を除湿する除湿部を備えている、
(付記1から13)のいずれかに記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0135】
(付記15)
前記微粒子群生成部は、微粒子化されて生成された微粒子群、および当該微粒子群の原料のうちの少なくともいずれか一方に対して紫外線を照射して殺菌を施す紫外線照射部を有する、
(付記1から14)のいずれかに記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0136】
(付記16)
前記微粒子群生成部には、微粒子化されて生成された微粒子群を吐出する吐出口が形成され、
前記吐出口は、多孔質フィルタにより覆われている、
(付記1から15)のいずれかに記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0137】
(付記17)
前記微粒子群生成部は、微粒子化されて生成された微粒子群、および当該微粒子群の原料のうちの少なくともいずれか一方の温度を調整する温度調整機構を有する、
(付記1から16)のいずれかに記載の微粒子群の空間配置制御システム。
【0138】
(付記18)
コンピュータが、
液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群を生成する第1のステップと、
前記微粒子群生成部が生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する第2のステップと、
を実行する微粒子群の空間配置制御方法。
【0139】
(付記19)
コンピュータに、
液体又は固体に対して外部からエネルギーを印加して、微粒子群を生成する第1のステップと、
前記微粒子群生成部が生成した前記微粒子群に対して電磁波を照射して、前記微粒子群の一部を除去する第2のステップと、
を実行させる微粒子群の空間配置制御プログラム。
【0140】
(付記20)
コンピュータが、
超音波振動により水を微粒子化するステップと、
水の微粒子化により生成された微粒子群に対して送風して、所定空間に向けて前記微粒子群を供給するステップと、
前記所定空間に供給された前記微粒子群の形態を認識するステップと、
ユーザに対して、雲の形状、雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件のうちの少なくともいずれか1つをユーザに選択させて、微粒子群の形態を示す形態情報として入力を促すステップと、
認識された所定空間の微粒子群の形態と、前記形態情報と、を比較して、前記微粒子群の一部を除去して成形するために、前記微粒子群に対して赤外線を照射して蒸発させるステップと、を実行する、
微粒子群の生成方法。
【0141】
(付記21)
コンピュータに、
超音波振動により水を微粒子化するステップと、
水の微粒子化により生成された微粒子群に対して送風して、所定空間に向けて前記微粒子群を供給するステップと、
前記所定空間に供給された前記微粒子群の形態を認識するステップと、
ユーザに対して、雲の形状、雲が発生する時期的条件、時間的条件、地域的条件のうちの少なくともいずれか1つをユーザに選択させて、微粒子群の形態を示す形態情報として入力を促すステップと、
認識された所定空間の微粒子群の形態と、前記形態情報と、を比較して、前記微粒子群の一部を除去して成形するために、前記微粒子群に対して赤外線を照射して蒸発させるステップと、を実行させる、
微粒子群の生成プログラム。
【符号の説明】
【0142】
1,2,3、4 微粒子群の空間配置制御システム
10 微粒子群生成部
16 超音波振動子
20 認識部
30 照射部
31 駆動部(アクチュエータ)
40 拡散部
50 光源部
60 制御部
70 操作端末
80 除湿部
81 UV殺菌灯(紫外線照射部)
82 温度調整機構