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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】洗浄用スポンジローラ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241202BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
H01L21/304 644C
A47L13/16 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020134743
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030618
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500004069
【氏名又は名称】アイオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】大久保 絵里
(72)【発明者】
【氏名】真野 稔正
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/065849(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/147747(WO,A1)
【文献】特開2002-280344(JP,A)
【文献】米国特許第6070284(US,A)
【文献】特許第5032497(JP,B2)
【文献】特許第6027101(JP,B2)
【文献】特開平07-051640(JP,A)
【文献】特開昭59-197439(JP,A)
【文献】特開2011-066386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
A47L 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気孔を有し、湿潤状態で弾性を有する多孔質材によって構成された円筒状のスポンジ体と、
前記スポンジ体の内径部を挿通し、前記スポンジ体の内周面を固定的に支持する軸体状のコアと、を備え、
前記コアを、連続気孔を有する多孔質の焼結体によって構成した
ことを特徴とする洗浄用スポンジローラ。
【請求項2】
前記コアを、有機焼結体によって構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄用スポンジローラ。
【請求項3】
前記焼結体が筒形状である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗浄用スポンジローラ。
【請求項4】
前記焼結体の平均気孔径が5μm~800μmであり、気孔率が30%~50%である
ことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の洗浄用スポンジローラ。
【請求項5】
前記スポンジ体は、前記焼結体の連続気孔へ入り込んで前記焼結体と一体化することにより前記コアに固定される
ことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載の洗浄用スポンジローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用スポンジローラに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミハードディスク、ガラスディスク、ウエハ、フォトマスク、或いは液晶ガラス基板等の製造工程では、その表面を極めて精度の高い面に仕上るために、酸化ケイ素、アルミナ、セリア等の各種砥粒を用いた高精度研磨、いわゆるポリッシング加工が行われる。ポリッシング加工された被研磨物の表面には、砥粒や研磨屑が付着しており、これらを除去するために、ポリッシング加工後に十分な洗浄を施す必要がある。
【0003】
ポリッシング加工後の洗浄方法としては、超音波洗浄やジェット水流を用いる方法があるが、高い洗浄効果を得るため、また基板へのダメージを低減するため、弾性多孔質体(例えばポリビニルアセタール系多孔質体)からなるスポンジ体によるスクラブ洗浄が広く用いられている。また、洗浄液としては、通常DI水だけでなく、酸、アルカリ、溶剤といった各基板に適した各種薬剤も使用される。例えば、シリコンウエハの洗浄液としては、アンモニア水と過酸化水素水の混合液、希弗酸、塩酸と過酸化水素水の混合液等が知られている。
【0004】
弾性多孔質体のスポンジ体の形状は多様であるが、その中でも円筒の外周面に多数の突起を有するブラシローラ形状のスポンジ体がスクラブ洗浄(洗浄工程)に好適に用いられており、スポンジ体を回転させながら、その突起の頭頂部を被洗浄体の洗浄面に連続的に接触させることで、良好な洗浄効果が得られる。被洗浄体がスポンジ体の突起のみと接触するため、突起を有さないフラットなスポンジ体に比べて、摩擦が小さく被洗浄体へのダメージが少ない、或いは洗浄液とともに夾雑物が突起の間を容易に通過して被洗浄体から除去されるといった利点がある。
【0005】
洗浄工程では、通常それぞれの基板に対応した専用の洗浄装置が使用され、スポンジ体とコアとによって洗浄用スポンジローラが構成される。コアはスポンジ体の内径部を挿通し、スポンジ体の内周面を固定的に支持する。コアの両端部を洗浄装置の回転駆動部に接続して洗浄用スポンジローラを洗浄装置に装着し、スポンジ体と被洗浄体(突起を有するスポンジ体の場合には突起と被洗浄体)とを接触させた状態でコアとともにスポンジ体を回転させる。
【0006】
被洗浄体或いはスポンジ体にその上部や側面から洗浄液をノズル等で供給する装置もあるが、より洗浄能力を高めるために、コア内部からスポンジ体の内側に洗浄液を供給することも実施されている。
【0007】
コア内部からスポンジ体の内側(内周面)に洗浄液を供給する技術として、軸方向に延びる内孔を有する中空円筒状の硬質のコアに、内孔からコア外周面に貫通する複数の小孔を設ける技術が公知である。コアの一端部は、洗浄装置の駆動回転側の軸支持部に相対回転不能に支持され、他端部は、洗浄装置の従動回転側の軸支持部に相対回転不能に支持される。内孔の一端は閉じており、他端は開いている。従動回転側の軸支持部に支持されるコアの他端部では、内孔と洗浄装置の洗浄液供給路とが連通する。洗浄液は、洗浄液供給路からコアの内孔へ導入され、内孔から複数の小孔を介してスポンジ体の内周面に供給され、スポンジ体の連続気孔を通過してスポンジ体の外表面に流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2009/147747号
【文献】特許第4965253号公報
【文献】特許第5032497号公報
【文献】特許第6027101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
洗浄用スポンジローラを洗浄装置に装着して最初に使用する際には、スポンジ体自身の清浄度を高めるため、実際のスクラブ洗浄を行う前の準備工程として立ち上げ洗浄が行われる。具体的には、スポンジ体を洗浄装置に装着した後、ダミーウエハを使用してスクラブ洗浄を行う。立ち上げ洗浄では、例えば、途中でモニター用ウエハを使用し、ウエハ上の実際のディフェクト数を計数し、ディフェクト数が一定個数以下になっていることが確認された場合に、立ち上げを完了する。或いは、ウエハ上のディフェクト数が十分に減少するまでに要するウエハの処理枚数(規定枚数)を事前に確認しておき、規定枚数のウエハの洗浄を完了した時点で立ち上げを完了する。
【0010】
しかし、内孔からコア外周面に貫通する複数の小孔を設けた従来のコアの場合、コアからスポンジ体へ通水する吐出口(小孔)の場所と個数が固定されるため、立ち上げ洗浄が完了しても、スポンジ体に実際には水が通過していない領域が存在し、その後の使用によって未通過の領域を水が通過することでウエハの汚染の原因となる可能性がある。すなわち、コアから水が吐出する場所が特定の位置(小孔の位置)に限定されるので、スポンジ体内の状態にバラつきが生じる可能性がある。
【0011】
また、スポンジ体へ通水する吐出口(小孔)の場所と個数が固定された上記従来のコアでは、立ち上げ完了後のスクラブ洗浄時においても、場所によってスポンジ体の通水量のバラツキが生じる(通水量が不均一になる)可能性がある。通水量が不均一であると、スポンジ体からウエハ上に直接供給される薬液の濃度が不均一になり、ウエハの全域を均等に洗浄することができない可能性が生じる。
【0012】
そこで本発明は、通水量のバラツキを抑制することが可能な洗浄用スポンジローラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の洗浄用スポンジローラは、円筒状のスポンジ体と軸体状のコアとを備える。スポンジ体は、連続気孔を有し、湿潤状態で弾性を有する多孔質材によって構成される。コアは、スポンジ体の内径部を挿通し、スポンジ体の内周面を固定的に支持する。コアは、連続気孔を有する多孔質の焼結体によって構成される。
【0014】
上記構成では、連続気孔を有する多孔質の焼結体によってコアを構成しているので、焼結体の連続気孔がコア(焼結体)の内側から外周面に向かう水(例えば洗浄水)の通路(通水路)となる。このため、連続気孔を有さないコアに通水用の孔(通水孔)を形成する場合に比べて、通水路をムラなく均一に且つ細密に配設することができ、スポンジ体内での通水量のバラツキを抑制することができる。
【0015】
上記コアは、有機焼結体(樹脂焼結体、焼結体プラスチック)によって構成することが好適である。有機焼結体の場合、金属焼結体(シンタリングメタルス)のように金属の溶出による洗浄への影響が懸念されることがなく、また、加工性及び剛性が無機焼結体(セラミックス)よりも優れているためである。
【0016】
焼結体の形状は、柱形状及び筒形状の何れでもよいが、通水時の圧損を低減するためには筒形状が好適である。なお、柱形状及び筒形状の何れにおいても、その断面形状は、円形に限定されず、他の形状(例えば多角形状等)であってもよい。
【0017】
焼結体の平均気孔径は5μm~800μmが好適であり、気孔率は30%~50%が好適である。平均気孔径が小さく気孔率が低いと通水時の圧損が増大し、平均気孔径が大きく気孔率が高いと十分な強度が確保できない可能性があるためである。
【0018】
スポンジ体は、焼結体の連続気孔へ入り込んで焼結体と一体化することによりコアに固定されてもよい。スポンジ体の内径側は、焼結体の微細な連続気孔へ入り込み、緻密に入組んだ状態で連続してコアと一体化するので、連続気孔を有さないコアに通水孔を形成し、通水孔にスポンジ体が入り込む場合に比べて、スポンジ体をコアに強固に固定することができる。
【0019】
また、筒状のコアを用いる場合、通水時の圧損の増大を抑制するため、コアの内径部の全域にスポンジ体を充填せず、軸方向に連通する空間(通水空間)を確保することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通水量のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る洗浄用スポンジローラの側面図である。
図2】コアの斜視図である。
図3】コアの端部の外周面を撮影した写真である。
図4】洗浄用スポンジローラを成形するための型の一例を示す斜視図である。
図5】洗浄用スポンジローラの製造方法の一例を示す断面図である。
図6】洗浄用スポンジローラの端面を撮影した写真である。
図7】比較例のコアを示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のVIIb-VIIb断面図である。
図8】通水性試験の結果を示す表である。
図9】実施例の通水状態を撮影した写真である。
図10】比較例の通水状態を撮影した写真である。
図11】耐久試験(1)を説明するための図である。
図12】耐久試験(1)の結果を示す表である。
図13】耐久試験(2)を説明するための図である。
図14】耐久試験(2)の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る洗浄用スポンジローラ(以下スポンジローラと称する)1について、図1図5を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、スポンジローラ1は、円筒形状のスポンジ体3と、軸体状のコア(回転軸)2とを備える。
【0024】
スポンジ体3は、外周面4から略均一な密度で突出する複数の突起5を有する。各突起5は、円柱形状であり、スポンジ体3の外周面4上の基端部から頂部(先端部)に向かって一体的に突出する。突起5の形状は、円柱形状に限定されず、他の形状であってもよい。また、スポンジ体3の外周面4に突起5を設けず、平坦な湾曲面としてもよい。
【0025】
スポンジ体3は、微細な連続気孔を有し、例えば含水状態で弾性を有するポリビニルアセタール系多孔質素材(PVAt系多孔質素材)から構成される。PVAt系多孔質素材は、乾燥状態で硬化し、湿潤状態で軟化する。また、PVAt系多孔質素材は、吸水性及び保水性に優れ、湿潤時に好ましい柔軟性と適度な反発弾性を示し、耐磨耗性にも優れている。
【0026】
コア2は、スポンジ体3の内径部を挿通し、スポンジ体3の内周面を固定的に支持する。本実施形態のコア2は、図2に示すように円筒形状であるが、コア2の形状は円筒形状に限定されず、他の形状(例えば、断面が多角形の筒形状、円柱形状、断面が多角形の柱形状等)であってもよい。
【0027】
コア2は、連続気孔を有する多孔質の焼結体によって構成される。図3はコア2の端部の外周面の写真であり、微細な気孔によりコア2の外周面が細かく凹凸していることが判る。本実施形態のコア2は、有機焼結体によって構成される。有機焼結体の素材(原料)は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、超高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)などを用いることができる。
【0028】
本実施形態のスポンジ体3は、焼結体の連続気孔へ入り込んで焼結体と一体化することによりコア2に固定される。PVAt系多孔質素材から成るスポンジ体3の場合、例えば平均重合度500~3000でケン化度80%以上のポリビニルアルコール(原料)を一種又はそれ以上混合して水溶液とし、この水溶液に架橋剤としてアルデヒド類、触媒として鉱酸類、及び気孔形成剤として澱粉等を加え、これらの混合液を、図4及び図5に示すような所定の型11内に注入し、40~80℃で反応させて型11から取り出した後、水洗により気孔形成剤等を除去することによって得られる。
【0029】
型11は、外型12と内型13と底板14とキャップ15とを有する。外型12及び内型13は、共に円筒状に形成されている。内型13は、外型12の内径と同一か又はそれよりも僅かに小さい外径を有し、外型12内に挿入される。コア2は、内型13のほぼ中心に挿入される。底板14は、外型12及び内型13の下端を塞ぐと共に、コア2の下端を支持する。キャップ15は、外型12の上端の内周面に嵌合される。コア2は、底板14とキャップ15とによって位置決めされる。
【0030】
内型13の内周面とコア2の外周面との間には、スポンジ体3を形成するための略円筒状の空間16が区画される。内型13には、突起5を形成するための貫通孔17が複数形成され、各貫通孔17は空間16と連通する。混合液は、外型12とキャップ15との間に挿入された注型ノズル18から空間16へ注入され、空間16から各貫通孔17へ流入する。同時に、貫通孔17内の空気は、空間16へ移動し、空間16の上端から大気へ放出される。これにより、混合液が貫通孔17の末端まで確実に充填される。
【0031】
スポンジ体3は、コア2とともに型11から取り出されて水洗される。コア2が連続気孔を有する焼結体によって構成されているため、注型ノズル18から注入された混合液は、コア2の連続気孔を流通してコア2の内径部まで充填され、スポンジ体3は、コア2の外周面から内径部へ連続して形成される。
【0032】
このように、スポンジ体3の内径側は、焼結体の微細な連続気孔へ入り込み、緻密に入組んだ状態で連続してコア2と一体化するので、連続気孔を有さないコアに通水孔を形成し、通水孔にスポンジ体が入り込む場合に比べて、スポンジ体3をコア2に強固に固定することができる。
【0033】
スポンジローラ1は、スクラブ洗浄に好適に用いることができる。スクラブ洗浄とは、ウレタンパッド等とスラリー状の研磨剤とを用いた被洗浄面の化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)の後に、スラリー状の研磨剤を中心とするパーティクルを被洗浄面から除去するために行う処理である。洗浄液としては、純水やアルカリ性溶液(例えばアンモニア水)や酸性溶液(例えば希フッ酸)が用いられる。
【0034】
図1に示すスポンジローラ1によってスクラブ洗浄を行う場合、例えばコア2の一端部と他端部とを、洗浄装置(図示省略)の駆動回転側の軸支持部と従動回転側の軸支持部とにそれぞれ相対回転不能に支持する。従動回転側の軸支持部に支持されるコア2の他端部では、コア2の内径部と洗浄装置の洗浄液供給路とが連通する。洗浄液は、洗浄液供給路からコア2の内径部へ導入され、内径部から焼結体の連続気孔を介してスポンジ体3の内周面に供給され、スポンジ体3の連続気孔を通過してスポンジ体3の外表面に流出する。
【0035】
コア2にスポンジ体3と重ならないスポンジ非支持領域(図1の例では両端部)が存在する場合、スポンジ非支持領域の外周面からの漏水(洗浄液の流出)を防ぐため、スポンジ非支持領域の外周面をシール部材6によって被覆してもよい。シール部材6は、焼結体の外周面に巻き付けるシート材や、焼結体の外周面に塗布される被覆層の他、焼結体の外周に装着される環状部材(スポンジ体3の軸方向(長手方向)の移動や変位を規制するフランジ等を含む)であってもよい。
【0036】
焼結体の平均気孔径は5μm~800μmが好適であり、気孔率は30%~50%が好適である。平均気孔径が小さく気孔率が低いと通水時の圧損が増大し、平均気孔径が大きく気孔率が高いと十分な強度が確保できない可能性があるためである。
【0037】
上記気孔率とは、乾燥機で十分に乾燥された乾燥状態の直方体の焼結体を乾式自動密度計にて測定し、直方体の見掛け体積と真体積とから、次式(1)にて算出される値である。
【0038】
気孔率(%)=(見掛け体積-真体積)/見掛け体積×100…(1)
【0039】
上記平均気孔径は、焼結体の内部組織に存在する複数の気孔の径の平均値である。本実施形態で規定する平均気孔径の値は、水銀ポロシメーターを用いて測定した値である。
【0040】
洗浄装置からコア2の内径部へ洗浄水(洗浄液)を供給する通水時において、圧損の増大を抑制するため、コア2の内径部にスポンジ体3を充填せず、軸方向に連通する空間(通水空間)を確保することが好ましい。このため、本実施形態では、スポンジ体3の生成時にコア2の内径部へ侵入した余剰のスポンジ体を、スポンジ体3の生成後に切除している。なお、コア2の内径部に余剰のスポンジ体が生成されないように、コア2の内周面から内径部への混合液の流入を阻止する円柱状又は円筒状の遮蔽軸19(図5参照)をコア2の内径部に挿入した状態で混合液の注型を行ってもよい。
【実施例
【0041】
次に、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
【0042】
(実施例)
ポリビニルアルコールを水溶液とし、この水溶液に架橋剤としてアルデヒド類、触媒として酸、及び気孔形として澱粉等を加えた混合液とし、図4及び図5に示すようにコア2を付加した型11に混合液を注入し40~80℃で反応させてスポンジ体3を生成し、スポンジ体3及びコア2を型から取り出した後、水洗により気孔形成などを除去し、コア2の内径部の余剰のスポンジ体を切除して、スポンジローラ1を作製した。
【0043】
コア2には、円筒形状(外径30mm、内径18mm、長さ300mm)のポリプロピレン樹脂焼結体(気孔径(空孔径)60μm~150μm、気孔率(空孔率)30%~35%)を用いた。
【0044】
図6は、コア2の内径部から余剰のスポンジ体を切除した後のスポンジローラ1の端面の写真である。図6に示すように、スポンジ体が焼結体の内部に入り込み、スポンジ体とコアが一体となってスポンジローラが形成されていることが確認された。
【0045】
(比較例)
図7に示すように、塩化ビニル製のパイプ(外径32mm、内径26mm、長さ300mm)の外周面に、内径部と連通する孔形状の80個の吐出口23(孔径2.6mm)を形成したコア22を使用し、実施例と同様の方法によってスポンジローラ21を作成した。80個の吐出口23は、円周方向には90°ずつ4箇所(4方向)に、長手方向(軸方向)には等間隔に20箇所に配置した。
【0046】
(通水性試験)
コア2,22の一端面からコア2,22の内径部へ水を供給し、供給した水がコア2,22の内径部からスポンジ体3へ通水してスポンジ体3の外周面から流出する様子を、実施例のスポンジローラ1及び比較例のスポンジローラ21についてそれぞれ観察して評価した。
【0047】
通水性を評価するため、スポンジ体3の外周面から流出して落下する水を受ける容器を、スポンジ体3の下方に設置した。容器の内部を、長手方向に等間隔に5箇所(図1に示すA~Eの領域)に区分した。各領域A~Eにおいて、1分間に流下して溜まる水量を測定し、5箇所の領域A~Eの各水量のうち最大値(最大量)と最小値(最小量)との差(水量差)を、軸方向の位置の相違による通水量のバラツキの指標として算出し、実施例及び比較例の通水性を評価した。
【0048】
試験では、コア2,22へ供給する水量(設定水量)が250mL/min、500mL/min、1000mL/min、1500mL/min、及び2000mL/minの各場合について水量差を求め、水量差が50mL以下の場合は良(○)、50mLを超えて100mL以下の場合は可(△)、100mLを超えている場合は不可(×)と判定した。試験の結果を図8に示す。
【0049】
図8に示すように、比較例では、1分間あたりの設定水量が1000mL及び1500mLの場合、最大量と最小量との差(水量差)が100mL以下であったが、それ以外の水量では100mLを超えており、判定結果は不可であった。特に、少ない水量(250mL/min及び500mL/min)において、軸方向の位置の相違による通水量のバラツキが大きいことが判った。
【0050】
これに対し実施例では、何れの水量においても水量差が50mL以下であり、軸方向の位置の相違による通水量のバラツキが小さく、軸方向(長手方向)で均一にスポンジ体3の外周面から水が流出することが判った。
【0051】
また、通水の初期段階でスポンジ体3の外周面から水が流出する様子を、蛍光性の液体(蛍光塗料を混ぜた水)を供給することにより観察し、実施例と比較例とを比較した。実施例の様子を撮影した写真を図9に、比較例の様子を撮影した写真を図10にそれぞれ示す。図9及び図10において、色が濃い領域ほど通水量が少なく、色が薄くなるに従って通水量が多くなる。従って、濃淡の差が小さいほど通水量のバラツキが小さいことになる。
【0052】
比較例では、図10に示すように、スポンジ体の軸方向の中央付近から水が多く流出していることが判る。これに対し実施例では、図9に示すように、スポンジ体の軸方向の全域から均一に水が流出していることが判る。
【0053】
(耐久試験(1))
スポンジ体3に外力を付加し、捩れ(コア2,22に対するスポンジ体3の回転方向の移動)の発生の有無を実施例及び比較例について確認した。
【0054】
スポンジローラ1,21(コア2,22)をスクラブ洗浄の模擬装置(図示省略)に取付け、800rpmで回転させた。捩れの発生の有無を確認し易くするため、回転開始時にスポンジ体3とコア2,22との間により大きな力が加わるように、図11に示すように、基板(ガラス板)30をスポンジローラ1,21に対して斜めに配置(コア2,22の一端の軸心からスポンジ体3の外周面までの距離L1を、コア2,22の他端の軸心からスポンジ体3の外周面までの距離L2よりも2mm短く設定)し、回転数が800rpmに到達するまでの時間をモーターの下限値である0.2秒に設定し、押し込み量を変更しながら捩れの発生の有無を確認した。押し込み量は、0mm(略無負荷で接触)から4.5mmまで、0.5mmずつ増加した。試験の結果を図12に示す。
【0055】
図12において、○は捩れの発生なし、×は捩れの発生ありを示す。通常の使用時よりも過度に力を加えた条件下において、比較例では押し込み量2.5mm以降で捩れが発生した。一方、実施例では何れの押込み量においても捩れが発生しなかった。
【0056】
(耐久試験(2))
スポンジ体3に外力を付加し、コア2,22に対するスポンジ体3の軸方向の移動の発生の有無を実施例及び比較例について確認した。
【0057】
図13に示すように、コア2,22の軸心が鉛直方向に沿って起立する姿勢でスポンジローラ1,21を所定の高さHから床面に落下させ、スポンジ体3とコア2,22との間に初期状態からのズレ(軸方向の相対移動)が発生するか否かを確認した。落下高さHは、0.25mと0.5mに設定した。試験の結果を図14に示す。
【0058】
図14において、○はズレの発生なし、×はズレの発生ありを示す。比較例では0.25m及び0.5mの高さから落下させた場合、双方ともズレが発生したのに対し、実施例では何れもズレが発生しなかった。
【0059】
以上の試験の結果から、実施例のスポンジローラ1の方が比較例のスポンジローラ21よりも通水性及び耐久性に優れていることが確認された。
【0060】
なお、本発明は、一例として説明した上述の実施形態、実施例及びその変形例に限定されることはなく、上述の実施形態等以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、スポンジ体3の素材はPVAt系多孔質素材に限定されず、連続気孔を有し、湿潤状態で弾性を有する多孔質素材であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、洗浄用スポンジローラとして広く用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1,21:洗浄用スポンジローラ
2,22:コア
3:スポンジ体
4:スポンジ体の外周面
5:スポンジ体の突起
図1
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