(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】果菜送り出し装置
(51)【国際特許分類】
B07C 5/36 20060101AFI20241202BHJP
B65G 47/68 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B07C5/36
B65G47/68 D
(21)【出願番号】P 2021011197
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391017702
【氏名又は名称】日本協同企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】宮田 和男
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-191483(JP,U)
【文献】特開平10-258257(JP,A)
【文献】実開平05-081126(JP,U)
【文献】特開2008-023422(JP,A)
【文献】特開2020-199444(JP,A)
【文献】実開平02-086679(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/36
B65G 47/68
B65G 47/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周方向に数枚の送り羽根が所定間隔で突出しており、各送り羽根は回転軸の回転により回転して、果菜を回転方向側方に送り出す果菜送り出し装置において、
送り羽根は回転方向後方に屈曲できるように回転軸に取り付けられた基板の前面に弾性体が設けられたものであり、
弾性体は果菜に当たりはじめると後方に圧縮され、
基板は弾性体が圧縮されると後方に屈曲し、送り羽根が
果菜を送り出した後も回転すると
屈曲前の状態に戻って、弾性体が当たっている果菜を水平に送り出すことができる、
ことを特徴とする果菜送り出し装置。
【請求項2】
請求項
1記載の果菜送り出し装置において、
基板と弾性体の間に伸縮材があり、伸縮材は弾性体を回転方向前方に押すように伸びており、
弾性体は送り羽根の回転により果菜に当たると回転方向と逆方向に圧縮され、
伸縮体は弾性体が圧縮されると、回転方向と逆方向に圧縮され、
基板は伸縮体が圧縮されると回転方向後方に屈曲し、送り羽根が
果菜を送り出した後も回転すると
屈曲前の状態に戻って、弾性体が当たっている果菜を水平に送り出すことができる、
ことを特徴とする果菜送り出し装置。
【請求項3】
回転軸の周方向に数枚の送り羽根が所定間隔で突出しており、各送り羽根は回転軸の回転により回転して、果菜を回転方向側方に送り出す果菜送り出し装置において、
送り羽根は回転方向後方にスライドできるように回転軸に取り付けられた基板の前面に弾性体が設けられたものであり、
弾性体は果菜に当たりはじめると後方に圧縮され、
基板は弾性体が圧縮されると後方にスライドし、送り羽根が
果菜を送り出した後も回転すると
スライド前の状態に戻って、弾性体が当たっている果菜を水平に送り出すことができる、
ことを特徴とする果菜送り出し装置。
【請求項4】
請求項
3記載の果菜送り出し装置において、
基板と弾性体の間に伸縮材があり、伸縮材は弾性体を回転方向前方に押すように伸びており、
弾性体は送り羽根の回転により果菜に当たると回転方向と逆方向に圧縮され、
伸縮体は弾性体が圧縮されると回転方向と逆方向に圧縮され、
基板は伸縮体が圧縮されると回転方向後方にスライドし、送り羽根が
果菜を送り出した後も回転すると
スライド前の状態に戻って、弾性体が当たっている果菜を水平に送り出すことができる、
ことを特徴とする果菜送り出し装置。
【請求項5】
請求項
3又は請求項
4記載の果菜送り出し装置において、
基板の裏側に基板の後方への過度な屈曲又は過度なスライドを規制するストッパーがある、
ことを特徴とする果菜送り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンベア、その他の搬送機で搬送中に等階級別に判別された果菜を、等階級別に一個ずつ、他の搬送体に送り出す果菜送り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫されたピーマン、ミカン、その他の各種果菜はコンテナに入れて選果場に搬入され、コンテナから搬送コンベアに載せて搬送し、搬送中に、大きさ(サイズ)別、形状別、糖度別などの規格別(等階級別)に判別し、判別された果菜を送り出し装置で等階級別にプールコンベアに送り出し(選別し)、プールコンベアで搬送されてくる選別済み果菜を等階級別に箱詰めしている。送り出し装置として
図6のものがある(非特許文献1)。
【0003】
図6の送り出し装置Aは、回転軸Bの外周に数枚の送り羽根Cが等間隔で突出しており、その送り羽根Cが回転軸Bの回転で回転することにより、搬送コンベアDで搬送されてくる判別済みの果菜Eを、送り羽根Cで搬送コンベアDの下に配置されているプールコンベアFに送り出すものである。送り出し装置Aは果菜Eを送り出すたびに間欠回転し、しかも、一枚の送り羽根Dで一つの果菜Eを送り出す分だけ回転する。
【0004】
図6の送り羽根Cには弾性体Gが貼り付けてあるが、送り羽根Cが剛性の厚板であり、その先端側が回転方向に略く字状に屈曲しているため、回転する送り羽根Cで果菜Eを送り出すと、果菜Eが跳ね上げられてプールコンベアFの上に落下して傷付き易い。また、送り羽根Cが果菜Eに当たるときの衝撃で損傷し易いといった難点もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本協同企画株式会社ホームページ(選果機紹介動画:ピーマン)https://nkk-gr.com/service/service01/special/post-131/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の果菜送り出し装置は前記跳ね上げを解決し、跳ね上げ後の落下による果菜の損傷を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の果菜送り出し装置は、回転軸の周囲に数枚の送り羽根が所定間隔で突出しており、各送り羽根は回転軸の回転により回転して、搬送体で搬送されてくる果菜を側方に送り出すものであり、バネ板であり、バネ板は回転して果菜に当たりはじめると回転方向後方に湾曲し、搬送体の略真上まで回転すると略真っ直ぐな下向き状態に戻って、果菜を水平(略水平を含む:以下において同じ。)に送り出すことができるバネ性を備えたものである。
【0008】
前記送り羽根はバネ板の回転方向前面に弾性体を設けたものであってもよく、弾性体は果菜に当たりはじめると圧縮され、バネ板は弾性体が圧縮されると後方に湾曲し、搬送体の略真上まで回転すると略真っ直ぐな下向き状態に戻って、果菜を水平に送り出すことができるバネ性を備えたものとすることもできる。
【0009】
前記送り羽根は基板の前面に弾性体を設け、基板は回転軸の回転方向後方に屈曲可能であり、弾性体は果菜に当たりはじめると圧縮され、基板は弾性体が圧縮されると後方に屈曲又はスライドし、搬送体の略真上まで回転すると略真っ直ぐな下向き状態に戻って、果菜を水平に送り出すことができるものであってもよい。この場合、基板と弾性体の間に伸縮体を配置して、弾性体が伸縮体で前方に押されているようにすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は次のような効果がある。
(1)送り羽根がバネ板の場合は、果菜に当たった際の衝撃がバネ板で吸収されるので、果菜の跳ね上がりを防止でき、果菜の損傷も防止できる。
(2)送り羽根がバネ板の前面に弾性体を備えたものの場合は、果菜に当たった際の衝撃が弾性体とバネ板の双方で2段階に吸収されるので、果菜がバネ板だけの場合よりも跳ね上がりにくくなる。
(3)送り羽根が後方に屈曲又はスライド可能な基板と弾性体を備えたものの場合は、果菜に当たった際の衝撃が弾性体の圧縮と基板の後方への屈曲又はスライドにより2段階に吸収されるので、送り羽根がバネ板だけの場合よりも、バネ板に弾性体を設けた場合よりも跳ね上がりにくくなる。基板と弾性体の間に伸縮体を配置した場合は、送り羽根が果菜に当たった際の衝撃が弾性体の圧縮と伸縮体が圧縮と基板の後方への屈曲又はスライドにより3段階に吸収されるので、衝撃緩和効果が前記(1)(2)の場合よりも更に高まる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)~(d)は本願発明の果菜送り出し装置による果菜送り出し状態の第一の説明図。
【
図2】(a)~(e)は本願発明の果菜送り出し装置による果菜送り出し状態の第二の説明図。
【
図3】(a)~(e)は本願発明の果菜送り出し装置による果菜送り出し状態の第三の説明図。
【
図4】
図1の果菜送り出し装置を搬送体の上に設置した場合の平面図。
【
図5】
図1の果菜送り出し装置を搬送体の上に設置した場合の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の概要]
図1~
図3は本願発明の果菜送り出し装置の実施形態であり、果菜がピーマンの場合である。この果菜送り出し装置1はベルトコンベア式の搬送体2(
図4)で搬送されてくる果菜Eを、その下に横向きに配置してあるベルトコンベア(プールコンベア)3の上に送りは出す場合である。
図1~
図3の果菜送り出し装置1は回転式であり、回転軸4に送り羽根5が5枚取り付けられている。送り羽根5の枚数は任意枚数とすることができる。
図1~
図3の送り羽根5は、いずれも、回転軸4の外周に等間隔で突設されており、回転軸4の回転に伴って回転する。送り羽根5の取り付け間隔は、搬送体2での果菜の搬送速度、送り羽根5の枚数、回転速度等に合わせて任意の間隔に設計することができる。プールコンベア3は搬送体2の下ではなく横にある場合もある。
【0013】
(実施形態1)
図1(a)~(d)は本願発明の果菜送り出し装置の実施形態1である。
図1(a)~(d)の送り羽根5はバネ板であり、樹脂板、金属板、その他の材質性の平板である。バネ板は果菜Eに当たると少なくとも先端側が回転方向後方に緩やかに湾曲して(
図1(b))、果菜に当たったときの衝撃を吸収でき、送り羽根5が搬送体2の略真上まで回転すると略真っ直ぐな状態(下向き)に戻って(
図1(c))、果菜Eを水平に送り出すことができる復元性を備えている。
【0014】
(実施形態2)
図2(a)~(e)は本願発明の果菜送り出し装置の実施形態2である。この実施形態の送り羽根5は、バネ板6の回転方向前面に弾性体(クッション材)7を取り付けたものである。バネ板6への弾性体7の取り付けは、接着剤や両面テープ等による貼り付け、その他の固定手段での固定とすることができる。
【0015】
弾性体7は搬送体2(
図5)で搬送されてくる果菜Eに当たると、送り羽根5の回転方向逆方向(後方)に圧縮されて(窪んで)、果菜Eに当たったときの衝撃を吸収できる弾性を備えている。一例としては、ウレタン樹脂板、弾性のある他の樹脂板、ゴム板等である。
【0016】
バネ板6は弾性体7の圧縮後に回転方向後方に湾曲し(
図2(c))し、搬送体2の略真上まで回転すると略真っ直ぐな状態(
図2(d))に戻って、果菜Eを側方に水平に送り出すことができる(
図2(e))復元性を備えている。
【0017】
(実施形態3)
図3(a)~(e)は本願発明の果菜送り出し装置の実施形態3である。この実施形態の送り羽根5は、平板状の基板8の根元側を回転軸4の外側に突出する受け材9(
図3(a))に取り付けて基板8の先端側を送り羽根5の回転方向後前方(
図3(a)の矢印X方向)に屈曲し、屈曲前の下の位置(
図3(a)の矢印Y方向)に戻ることができるようにしてある。基板8の表面に弾性体10を設け、基板8と弾性体10の間に伸縮材11を設けてある。
【0018】
基板8は樹脂板、金属板等である。屈曲構造としては各種構造があるが、例えば、基板8が樹脂板の場合は、受け材9に取り付ける根元側をヒンジ構造にして回転軸4の回転方向前後に屈曲でき、屈曲後は元の位置に戻ることができるようにする。基板8が金属板の場合は、基板8を根元側と先端側に分け、両者を蝶番で連結して回転方向後方に屈曲し、屈曲後は元の位置に戻ることができるようにすることもできる。この場合、基板8の根元の外側にストッパーS(
図3(a))を設けて、基板8が後方に屈曲し過ぎると突き当たって、それ以上後方に屈曲しないようにするのが望ましい。
【0019】
弾性体10はウレタン樹脂板、弾性のある他の樹脂板、ゴム板等であり、裏面に薄い支持板12(
図3(a))が貼り付けられている。
【0020】
伸縮材11はコイルスプリング、板バネ、樹脂、ゴム等の弾性材であり、基板8と弾性体10の裏面の支持板12との間に配置されており、通常は弾性体10を前方に押して支承しているが、弾性体10が果菜Eに当たって圧縮されると後方に押されて縮む(圧縮される)ものである。
【0021】
基板8の根元外側のストッパーSには樹脂製、金属製の棒、ブロック、チップ等を使用することができる。
【0022】
図3(a)の果菜送り出し装置1では、送り羽根5が回転して弾性体10が果菜Eに当たると弾性体10が圧縮されて窪んで(
図3(b))、当たったときの衝撃を緩和できる。その後も、送り羽根5の回転が進むと伸縮材11が圧縮され、基板8が後方に屈曲し(
図3(c))、送り羽根5の回転がさらに進んで搬送体2の略真上まで回転すると、基板8が自重で略真っ直ぐな下向き状態(
図3(d))に戻って、搬送体2の上の果菜Eを搬送方向側方に水平に送り出すことができる。
【0023】
(実施形態4)
実施形態3の送り羽根5は、基板8が後方に屈曲するようにしてあるが、基板8(
図3(a))を後方に屈曲しない平板にし、この基板8の根元側を、受け材9(
図3(a))に後方スライド可能に取り付け、基板8の前面に弾性体10を取り付けたものとすることもできる。この場合は、弾性体10が果菜Eに当たると圧縮され、弾性体10が圧縮されると基板8が後方にスライドする。その後の送り羽根5の回転により、基板8が自重で逆方向にスライドして、搬送体2の略真上まで回転すると略真っ直ぐな下向き状態に戻り、搬送体2の上の果菜Eを搬送方向側方に水平に送り出すことができる。この場合も、基板8が後方にスライドし過ぎないようするためのストッパーSを設けるのが望ましい。
【0024】
(実施形態5)
本願発明では、実施形態3、4における伸縮体11をなくしたものであってもよい。この場合は、送り羽根5の回転により弾性体10が果菜Eに当たると、弾性体10が圧縮され、弾性体10が圧縮されると基板8が後方に屈曲する(
図3(c))か、後方にスライドし、送り羽根5の回転がさらに進んで搬送体2の略真上まで回転すると、基板8が自重で略真っ直ぐな下向き状態(
図3(d))に戻って、搬送体2の上の果菜Eを搬送方向側方に水平に送り出すことができる。
【0025】
(使用例)
本願発明の果菜送り出し装置は、
図4、
図5のように搬送体2の上に配置し、その状態で回転軸4を回転させて送り羽根5を回転させる。この回転は、搬送体2で搬送されてくる果菜Eを、一枚の送り羽根5で搬送体2の幅方向側方に送り出して、搬送体2の下に横向きに配置してある等階級別のプールコンベア3の上に載せることができるだけの回転幅とする。搬送体2で搬送されてくる果菜Eは、果菜送り出し装置1に到達する前に、図示しない計測装置で大きさ、重さ等が計測されて等階級が判別されている。その判別結果(データ)に基づいて、果菜送り出し装置1が回転して、側方に送り出される。
【0026】
図4のように、搬送体2は多数列あり、等階級判別済みの果菜を一列に並べて搬送してくる。プールコンベア3は搬送体2の下に多数本あり、Lサイズ用、Mサイズ用、Sサイズ用といったように等階級別に分かれている。各搬送体2の上には本願発明の果菜送り出し装置1が配置されている。果菜送り出し装置1は各列の搬送体2の搬送方向に、Lサイズ用、Mサイズ用、Sサイズ用といったように等階級別に多数本配置されている。
【0027】
例えば、いずれかの搬送体2で一列に並んで搬送されてくる果菜EにLサイズの果菜Eがあると、Lサイズ用の果菜送り出し装置1が回転してLサイズ用のプールコンベア3の上に送り出し、Mサイズの果菜Eが搬送体2で搬送されてくるとMサイズ用の果菜送り出し装置1が回転してMサイズ用のプールコンベア3の上に送り出すことができるようにしてある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
前記実施形態はピーマンの送り出し用としてあるが、本願発明の果菜送り出し装置1はミカン、茄子、その他の果菜の送り出しにも使用できる。この場合、送り羽根5の形状、サイズ、回転軸4への取り付け枚数、取り付け間隔等は、それら果菜の送り出しに適するように設計変更することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 果菜送り出し装置
2 搬送体
3 プールコンベア
4 回転軸
5 送り羽根
6 バネ板
7 弾性体
8 基板
9 受け材
10 弾性体
11 伸縮材
12 支持板
A 送り出し装置
B 回転軸
C 送り羽根
D 搬送コンベア
E 果菜
F プールコンベア
G 弾性体
S ストッパー