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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】積ブロック
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20241202BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
E02D29/02 304
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021080107
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2022174365
(43)【公開日】2022-11-24
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000126447
【氏名又は名称】アスザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正徳
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05711130(US,A)
【文献】特開2009-221777(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0991703(KR,B1)
【文献】特開2000-314143(JP,A)
【文献】特開2005-256602(JP,A)
【文献】特開2002-242186(JP,A)
【文献】実開平04-108630(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に沿って所定勾配で積み上げて用いられると共に、上下方向および左右方向に隣接するものどうしを締結具により締結して用いられる積ブロックであって、
少なくとも正面、背面、上面、下面、右側面および左側面を有するブロック本体と、
前記上面から前記下面に向けて前記ブロック本体を貫通し、締結部材であるボルトの締め付けを容易にするために上面側開口部は所用深さ範囲にわたって他の部分よりも大径に形成された貫通孔と、
前記上面に埋設されたねじインサートと、
前記上面の背面側角部に埋設された左右方向締結具と、
前記上面の左右方向全体にわたって配設された嵌合用の凸部と、
前記下面の左右方向全体にわたっており、且つ下側に位置する前記ブロック本体における前記貫通孔の上方を被うように配設された嵌合用凹部と、を具備し、
前記ねじインサートの埋設位置は、前記ブロック本体を前記所定勾配で積み上げた際に、直上に位置する前記ブロック本体における前記貫通孔の下面側開口位置に位置決めされており、
前記貫通孔は左右方向に長い長孔に形成されており、
前記嵌合用凹部は、前記ブロック本体を前記所定勾配で積み上げた際に、下側に位置する前記ブロック本体における前記嵌合用の凸部の配設位置に位置合わせされていることを特徴とする積ブロック。
【請求項2】
前記ねじインサートは、前記所定勾配に応じた複数箇所且つ左右方向の位置を異ならせて埋設されていることを特徴とする請求項1記載の積ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積ブロックに関し、より詳細にはカーブ部分における法面を被覆する際に用いて好適な積ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
法面保護工事には、いわゆる積ブロックと称されるコンクリート製のブロックが用いられる。このような積ブロックは、例示するまでもなく多様なものが提供されているが、非特許文献1に開示されているように、施工効率の向上を目的として、積ブロックの大型化が図られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】アスザック株式会社、”省力化積みブロック クイックブロック”、[online]、アスザック株式会社、[令和3年4月27日検索]、インターネット〈URL:https://www.asuzac-concrete.jp/quickblock/tokuchou.htm〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示されているような大型化した積ブロックを用いた場合、積み上げた積ブロックどうしは胴込コンクリートによって一体化されている。近年においては更なる施工効率の向上を図るため、胴込コンクリートを省略すべく塊型の積ブロックが用いられることがある。このような塊型の積ブロックを用いた場合において上下に隣接するブロックどうしを連結する際は、高さ方向に貫通する貫通孔に締結部材を挿通させてブロック本体に埋設した締結具に螺着させる構成が用いられる。
【0005】
しかしながら図7に示すように、カーブ部分においては、法面の高さ位置によって曲率半径R1,R2が相違し、法面の高さ位置が異なると、それぞれの高さ位置において単曲線部分の起点位置(BC)から終点位置(EC)までの路線延長(設置中心線CL1,CL2)が異なる。これによりカーブ部分の起点位置BCにおいては、図8に示すように上下に隣接する積ブロックの平面積み上げ位置は一致するが、カーブ部分の終点位置ECに近づくにつれて積ブロックの長手方向で徐々にずれてしまう。そして図9に示すように、カーブ部分の終点位置ECでは上下に離接する積ブロック100において貫通孔34と上下方向締結具38の平面位置が完全にずれ、貫通孔34に締結部材としてのボルト90を挿通させても上下方向締結具38に螺着することができない。このようなことから、貫通孔34の平面位置と上下方向締結具38の平面位置が一致するように、各段における積ブロック100の平面敷設位置を予め算出しておく必要があり、煩雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明においては、カーブ部分における法面の被覆に用いられ、上下に隣接する積ブロックどうしの平面積み上げ位置が敷設延長方向にずれてしまっても、締結部材を締結具に確実に締結させることができ、各段における積ブロックの平面敷設の計算が省略可能な積ブロックの提供を目的としている。
【0007】
すなわち本発明は、法面に沿って所定勾配で積み上げて用いられると共に、上下方向および左右方向に隣接するものどうしを締結具により締結して用いられる積ブロックであって、少なくとも正面、背面、上面、下面、右側面および左側面を有するブロック本体と、前記上面から前記下面に向けて前記ブロック本体を貫通し、締結部材であるボルトの締め付けを容易にするために上面側開口部は所用深さ範囲にわたって他の部分よりも大径に形成された貫通孔と、前記上面に埋設されたねじインサートと、前記上面の背面側角部に埋設された左右方向締結具と、前記上面の左右方向全体にわたって配設された嵌合用の凸部と、前記下面の左右方向全体にわたっており、且つ下側に位置する前記ブロック本体における前記貫通孔の上方を被うように配設された嵌合用凹部と、を具備し、前記ねじインサートの埋設位置は、前記ブロック本体を前記所定勾配で積み上げた際に、直上に位置する前記ブロック本体における前記貫通孔の下面側開口位置に位置決めされており、前記貫通孔は左右方向に長い長孔に形成されており、前記嵌合用凹部は、前記ブロック本体を前記所定勾配で積み上げた際に、下側に位置する前記ブロック本体における前記嵌合用の凸部の配設位置に位置合わせされていることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、カーブ部分における法面を被覆するために積み上げられた上下に隣接する積ブロックどうしは、平面積み上げ位置が積ブロックの敷設延長方向にずれてしまっても、締結部材を締結具に確実に締結させて上下の積ブロックどうしを一体化できる。したがって、予め各段における積ブロックの平面敷設位置の算出を省略することができる。
【0009】
また、前記ねじインサートは、前記所定勾配に応じた複数箇所且つ左右方向の位置を異ならせて埋設されていることが好ましい。
【0010】
これにより、一つの積ブロックで多様な積み上げ勾配に対応することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明における積ブロックの構成によれば、カーブ部分における法面を被覆する際において法面に沿って積み上げられた上下に隣接する積ブロックの平面積み上げ位置が積ブロックの敷設延長方向にずれてしまっても、締結部材を締結具に確実に締結させることができる。すなわち、予め各段における積ブロックの平面敷設位置の算出を省略することができ、施工コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態における積ブロックの正面図、背面図、上面図、下面図および右側面図である。
図2図1中のA-A線、B-B線およびC-C線における断面図である。
図3】本実施形態における(カーブ部分の起点位置)における積ブロック(1段目および2段目)の平面図である。
図4】本実施形態における(カーブ部分の終点位置)における積ブロック(1段目および2段目)の平面図である。
図5】本実施形態における積ブロックを積み上げた状態を示す要部断面図である。
図6】他の実施形態における積ブロックの一例を示す平面図である。
図7】カーブ部分における積ブロックの平面積み上げ位置を示す中心線である。
図8図7中のカーブ部分の起点位置BCにおける積ブロック(1段目および2段目)の平面図である。
図9図7中のカーブ部分の終点位置ECにおける積ブロック(1段目および2段目)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本実施形態における積ブロックについて説明する。本実施形態においては、傾斜面を保護するための積ブロック100を例示しているが、この形態に限定されるものではない。図1および図2に示すように、本実施形態の積ブロック100は、正面10、背面20、上面30、下面40、右側面50、左側面60を有するブロック本体70と、上面30から下面40に貫通する貫通孔34と、上面30に埋設された左右方向締結具36、上下方向締結具38を有している。なお、図1において左側面図は右側面図と対称にあらわれるため図の掲載を省略している。
【0014】
本実施形態におけるブロック本体70は、正面10、背面20、上面30および下面40から臨んだ際におけるブロック本体70の外形はいずれも長方形をなしている。また、右側面50および左側面60から臨んだ際のブロック本体70の外形はいずれも上底が下底よりも短い台形をなしている。そして、背面20、右側面50および左側面60は、いずれも上面30に対して直交する平坦面に形成されている。
【0015】
ブロック本体70の正面10は設置後において露出法面となる化粧面である。本実施形態においては正面10に粗面加工が施されていると共に、高さ方向の全体にわたって延びる凹部12が幅方向に所要間隔をあけて複数箇所に配設されているが、この形態に限定されるものではない。ブロック本体70の背面20は、被覆対象である法面(図示はせず)に向かい合う面であり、本実施形態においては上面30および下面40と直角をなす平坦面に形成されている。
【0016】
また、ブロック本体70の上面30には、幅方向の全体にわたって嵌合用の凸部32が配設されている。凸部32は正面側端縁31から背面側に向けて所要距離離間した位置に設けられている。凸部32よりも背面側の位置には、上面30から下面40に貫通する貫通孔34が2箇所に配設されている。貫通孔34はブロック本体70の幅方向に長い長孔に形成されている。貫通孔34の上面側開口部は所要深さ範囲にわたって他の部分よりも大径に形成されているので、締結部材としてのボルト90の締め付け作業が容易になる。
【0017】
上面30の背面側角部には、左右方向(水平方向)に隣接する積ブロック100どうしを連結するための左右方向締結具36が埋設されている。左右方向締結具36の周囲には所要範囲にわたって連結板80(図5参照)を配設するための連結板用凹部37が形成されている。また、貫通孔34と左右方向締結具36との間の平面位置には上下方向(高さ方向)に隣接する積ブロック100どうしを連結するための上下方向締結具38が埋設されている。上下方向締結具38の埋設位置は、積ブロック100を所定勾配で積み上げた際に、上側の積ブロック100に形成されている貫通孔34の下面側開口位置に位置決めされている。なお、左右方向締結具36および上下方向締結具38としては、ねじインサートが好適に用いられる。
【0018】
上下方向締結具38は、積ブロック100の積み上げ勾配に応じてそれぞれ異なる平面位置に埋設されることになる。このため、積ブロック100の積み上げ勾配に応じ、3分勾配用の積ブロック100、4分勾配用の積ブロック100、5分勾配用の積ブロック100、・・・といったように複数種類の積ブロック100が用意される。
【0019】
また、ブロック本体70の下面40には、下側に配設された積ブロック100に対して所定勾配で積ブロック100を積み上げた際に、下側の積ブロック100の凸部32の平面配設位置に位置合わせした状態で嵌合用凹部42が配設されている。嵌合用凹部42はブロック本体70の幅方向の全体にわたって配設されている。また、下面40には水抜きパイプ(図示はせず)を配設するための凹溝44が形成されている。凹溝44は背面20には開口しているが、正面10には開口(連通)していないため、水抜きパイプ(図示はせず)を配設する際には、正面10の一部を切除等して凹溝44を正面10に開口させる(図5参照)。
【0020】
次に、本実施形態における積ブロック100を用いたカーブ部分の法面被覆方法について説明する。作業者は図5および図7に示すように、道路線形に沿った法面の法尻位置に1段目の設置中央線CL1に沿って基礎Bを敷設した後、基礎Bの上に第1段目の積ブロック100を敷設する。道路の延長方向(敷設延長方向)に隣り合う積ブロック100は道路の線形に沿って折れ線状に敷設される。左右方向に隣り合う積ブロック100は、連結板用凹部37に連結板80を配設して左右方向締結具36に締結部材としてのボルト90を締結させることで連結される。ボルト90の高さは上面30の高さ位置以下となるように調整されている。以上をカーブ部分の起点位置BCからカーブ部分の終点位置ECまで繰り返し行う。なお、図3図4においては、1段目の積ブロック100を破線であらわすと共に、2段目の積ブロック100を実線であらわしている。
【0021】
1段目の積ブロック100の敷設が完了した後、作業者は2段目の積ブロック100をカーブ部分の起点位置BCから2段目の設置中央線CL2に沿って敷設する(図5参照)。作業者は、図3に示すように、2段目の積ブロック100の貫通孔34にボルト90を挿通して1段目の積ブロック100に埋設されている上下方向締結具38にボルト90の先端を螺着させ、1段目の積ブロック100に2段目の積ブロック100を連結させる。作業者は、カーブ部分の起点位置BCから終点位置ECに向けて1段目の積ブロック100の敷設方法と同様の手順を繰り返すと共に上下方向に隣接する1段目の積ブロック100との連結作業を繰り返し実行し、2段目の積ブロック100の敷設および1段目の積ブロック100との連結を行う。
【0022】
カーブ部分の起点位置BCから終点位置ECに近づくにつれ、図4に示すように1段目の積ブロック100の敷設位置に対する2段目の積ブロック100の敷設位置が道路延長方向に徐々にずれが生じる。これは図7に示すように、1段目のカーブ部分における中心点Oに対する曲率半径R1と2段目のカーブ部分における中心点Oに対する曲率半径R2が異なることに起因する。本実施形態の貫通孔34のように、積ブロック100の幅方向(道路延長方向)に長い長孔を採用することで、上下に隣接する積ブロック100の道路延長方向における平面敷設位置にずれが生じても、図4に示すようにボルト90を上下方向締結具38に螺着することができる。これにより、上下に隣接する積ブロック100どうしが確実に連結可能になる。
【0023】
このように、本実施形態の積ブロック100の構成によれば、カーブ部分の法面に沿って積ブロック100を敷設する際に、貫通孔34の平面位置と上下方向締結具38の平面位置が一致するように積ブロック100の平面敷設位置を予め算出しておく必要がない。すなわち、カーブ部分の起点位置BCから終点位置ECに向かって単純に積ブロック100を敷設しても、上下方向に隣接する積ブロック100どうしを確実にボルト90と上下方向締結具38とで連結させることができる。このようにして積み上げられた積ブロック100の要部断面図を図5に示す。
【0024】
以上に本発明にかかる積ブロックについて実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態におけるブロック本体70(積ブロック100)は、正面10、背面20、上面30、下面40、右側面50および左側面60を有する六面体に形成された形態を例示しているが、六面体に限定されるものではない。上面30および下面40が五角形以上に形成され、5以上の側面(側周面)を有するブロック本体70の形態を採用することもできる。
【0025】
また、以上の実施形態においては、積み上げ勾配に応じて上下方向締結具38が埋設された積ブロック100の形態を例示しているが、この形態に限定されるものではない。図6(A)に示すように上下方向締結具38は、積ブロック100の所定の積み上げ勾配に応じた貫通孔34の下面側開口位置に位置合わせした複数箇所に埋設させておくこともできる。上下方向締結具38を複数箇所に埋設する場合には、図6(B)に示すような千鳥状配列に代表されるように左右方向の位置を異ならせておけば、互いの上下方向締結具38の位置を離れさせた状態にすることができ、十分な引き抜き強度を待たせることができる。
【0026】
さらには、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0027】
10 正面
12 凹部
20 背面
30 上面
31 正面側端縁
32 凸部
34 貫通孔
36 左右方向締結具
38 上下方向締結具
40 下面
42 嵌合用凹部
44 凹溝
50 右側面
60 左側面
70 ブロック本体
80 連結板
90 ボルト(締結部材)
100 積ブロック
B 基礎
BC 起点位置
EC 終点位置
O 中心点
R1 1段目の曲率半径
R2 2段目の曲率半径
CL1 1段目の設置中心線
Cl2 2段目の設置中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9