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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】プラズマを用いる連続的な処理
(51)【国際特許分類】
   C12N 11/00 20060101AFI20241202BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C12N11/00
C12M1/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021559857
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060183
(87)【国際公開番号】W WO2020208152
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】19168499.2
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516236805
【氏名又は名称】ネクサバイオーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NexaBiome Limited
【住所又は居所原語表記】West of Scotland Science Park,Block 2,Unit 1 & 2,Kelvin Campus,2317 Maryhill Road,Glasgow G20 0SP United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100207136
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 有希
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジェイソン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】マティ,マイケル
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0053789(US,A1)
【文献】実開平03-118917(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0110182(US,A1)
【文献】特開平10-192735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0373923(US,A1)
【文献】特開昭49-086957(JP,A)
【文献】特開2016-056390(JP,A)
【文献】特開平08-138881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12M
B65G
B03C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリオファージを物体に付着させるための連続的な方法であって、以下の工程を含む、方法:
(a)移動表面の上またはその近くに該物体を配置する工程;
(b)プラットフォームを接地することによってその周囲に対して該移動表面の電位を制御する工程;
(c)放電に曝露することによって、該物体を活性化する工程;および
(d)該物体を、付着させるバクテリオファージと接触させる工程。
【請求項2】
前記移動表面が導電性である、請求項1に記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項3】
前記移動表面の電位が、電極からの静電位の発生によって制御される、請求項1に記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項4】
前記移動表面がコンベアベルトである、請求項1から3のいずれかに記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項5】
前記放電がコロナ放電である、請求項1から4のいずれかに記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項6】
前記物体が直径2mmまたはそれ以下の粒子である、請求項1から5のいずれかに記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項7】
前記物体が直径1mm未満の粒子である、請求項1から6のいずれかに記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項8】
前記物体が直径1mm~20mmの食品ペレットである、請求項1から6のいずれかに記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項9】
前記粒子が食品または飼料ペレットである、請求項6または7に記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項10】
前記移動表面が、物体を収容するためのインデントを含む、請求項1から9のいずれかに記載のバクテリオファージを物体に付着させる方法。
【請求項11】
バクテリオファージを付着させることによって物体を処理するための装置であって、以下を備える、装置:
(a)処理される該物体を支持するための移動表面;
(b)処理される物体を活性化するよう位置づけられた放電を発生可能な放電デバイスであって、放電を発生するための第1の電極および該移動表面を電気的に接地することによりその周囲に対して該移動表面の電位を制御するための第2の電極を備える、デバイス;ならびに
(c)該バクテリオファージと処理される該物体とを接触させるための手段。
【請求項12】
前記移動表面が、物体を収容するためのインデントを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記移動表面が導電性である、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記移動表面が前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されている、請求項11から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
請求項1から10に記載のいずれかの方法を実施するための、請求項11から14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
バクテリオファージを物体に付着させるための、請求項11から15のいずれかに記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子または高分子が付着した製品を製造するための方法および装置に関する。このような高分子はバクテリオファージを含む。したがって、本発明の方法の製品は、本発明の製品または方法あるいは当該製品と接触する材料の細菌汚染の予防および改善のためのものである。
【背景技術】
【0002】
バクテリオファージ(「ファージ」)は、細菌内で感染し、複製するウイルスである。「溶解」バクテリオファージは、細菌細胞が細菌内のビリオンの複製後に破れて開き(溶解)破壊される原因となる。細胞が破壊されると、ファージの子孫は感染する新しい宿主を見つけ得る。バクテリオファージは地球上で最も多い生命体である。それらは細菌が成長するすべての環境で見出され得る。例えば、バクテリオファージは、地下水および地表水、土壌、食品(例えば、ザワークラウト、ワイン)、下水および汚泥で検出される。それらはまた、ヒトおよび動物から、例えば、糞便、尿、唾液(saliva)、唾液(spit)、ルーメンおよび血清から単離されている。例えば噴霧によって、製品に遊離バクテリオファージを付与することが知られている。しかし、このような処理は、細菌汚染の予防または治療に確実に有効であるかが分かっていない。
【0003】
バクテリオファージは、中枢神経系を含む異なる器官および組織に浸透することができ、細菌宿主と共に腸内細菌叢の一部である。それらは水生生態系における全細菌死亡率の10~80%を占めており、細菌集団を制限する重要な要因である。
【0004】
バクテリオファージは、固体および液体培地の両方に分散することができる。国際特許出願WO03/093462は、固定化バクテリオファージを化学的方法または放電を用いて基材に共有結合させることができることを開示しており、自由に拡散することは不可能であるが、細胞に感染する能力を保持し、それによりその後細菌溶解を引き起こして遊離バクテリオファージを放出する。
【0005】
WO2007/072049では、パルスフィールドコロナ放電を使用するための方法が開発され、放電によって活性化された粒子をバクテリオファージ溶液に浸漬した。同様に、WO2012/175749では、バクテリオファージ溶液を活性化種子と組み合わせた。
【0006】
バクテリオファージの治療用途は公知である。WO03/093462は、抗菌剤として使用するための生物学的活性を保持しながらウイルス(特にバクテリオファージ)を固定化するための方法を開示する。バクテリオファージの自然環境が水性であることを考えると、WO03/093462に開示される脱水に対する安定性が水性媒体中の自然安定に向かう傾向があると広く考えられている。
【0007】
WO2012/175749は、バクテリオファージが付着した小粒子を記載し、この小粒子は、これらに開示されているその細菌汚染を改善するために食品との組合せに適している。
【0008】
WO2014/049008は、細菌感染の治療または予防に特に適した、バクテリオファージが付着した小粒子を記載している。
【0009】
Wangら(2015)[明細書の最後にある参照文献[1]]は、酸素雰囲気中で1分間の低圧プラズマ処理(放電処理の一形態)が、バクテリオファージの表面への付着を増強したことを示している。
【0010】
このような表面の処理は、分子または高分子(ファージを含む)の安定な結合を可能にし、「活性化」と呼ばれる。コロナ放電または他のプラズマ発生電気的方法による表面活性化は周知である(例えば、Bartonら[2];Canavanら[3];Recekら[4];Kerkeniら[5]および他)。工業的実施(例えば印刷)において、このような電気処理が表面の親水性(湿潤性)を増加させ、したがって接着性が向上することは、周知である。このような水素結合の増加による接着性の増大は、共有結合を達成するために上記特許に記載された電気的に活性化された表面とバクテリオファージとの間の急速な接触の使用とは異なる。
【0011】
さらに、US7,250,195は、コロナ放電を発生させ、生体材料(アミノ酸およびタンパク質を含むがバクテリオファージを含まない)を基材上に堆積させるための真空チャンバに導入することを開示している。
【0012】
WO2014/134297は、バクテリオファージが共有結合できる基材の表面にカルボン酸残基を形成することによって、バクテリオファージを表面に共有結合させる方法を開示している。
【0013】
当該分野では、バッチ製造方法のみが実用的である。例えば、材料を浅い活性化容器に入れ、上からコロナ活性化に供し、その直後に、固定化されるバクテリオファージを含む溶液と接触させる。この方法は、固定化が一表面で起こるシート(平面)材料に対して多かれ少なかれ許容されるが、また、糸状および粒子状材料にとってはその使用は非効率的である。
【0014】
コロナ放電を用いる物品の連続処理方法が知られている。例えば、US2015/0373923は、細菌の生存率を低下させるための作物(新芽植物など)を処理するためのプラズマ処理装置を開示し、US2004/0086433は、物体をコロナ放電に曝露するためのコンベアを備えた装置を開示している。さらに、US3,017,339は、コロナ放電で熱可塑性チューブを処理するための方法および装置を開示している。しかし、高分子(バクテリオファージなど)を物品に付着させるためにコロナ放電を用いた物品の連続処理のための方法は開発されていない。
【0015】
したがって、バクテリオファージを共有結合した製品を製造するための連続的な製造方法が必要である。これは、バクテリオファージが付着した小粒子を含む製品に特に当てはまる。工業界で一般的に使用される方法(例えば、標準的なコロナ放電処理)は、小粒子の活性化には適さない。フィルムとは異なり、小粒子は、静電気の蓄積によって引き起こされる力によって分散される影響を受け、さらに、代表的には、吹き込まれた空気が、これらの工業プロセスで電極を冷却するために使用され、これはフィルムに対しては影響を与えないが、小粒子を移動させ得、その活性化を妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、細菌汚染の予防および改善のための製品を製造するための連続的な方法、およびそのような製品を製造するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、分子または高分子を物体に付着させるための方法を提供し、この方法は、以下の工程を含む:
表面の上またはその近くに物体を配置する工程;
その周囲に対して表面の電位を制御する工程;
物体を、放電に曝露することによって活性化する工程;および
物体を、付着させる分子または高分子と接触させる工程。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本明細書にも記載されているように、感染性バクテリオファージをそれに付着させるように微粒子を処理するプロセスにおける、本明細書に記載の装置100の模式図を示す。
図2】本明細書にも記載されているように、感染性バクテリオファージをそれに付着させるように微粒子を処理するための、本明細書に記載の装置200の等角図を示す。
図3】本明細書にも記載されているように、感染性バクテリオファージをそれに付着させるように微粒子を処理するための、本明細書に記載の装置200の断面図を示す。
図4】本明細書にも記載されているように、感染性バクテリオファージをそれに付着させるように微粒子を処理するための、本明細書に記載の装置200の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
物体は、表面と直接接触する必要はないが、表面の電位が物体の電位に直接影響を与えおよび/または規定するように表面に近接している必要がある。
【0020】
表面の電位、およびそれゆえ表面と接触している物体または表面に近接している物体は、表面を電気的にアースすることによって制御され得る。したがって、表面はアース(接地)され得る。あるいは、表面の電位、およびそれゆえに表面と接触している物体または表面に近接している物体は、表面および/または表面に接触しているかまたは関連付けられた物体によって蓄積された電荷を制限することによって制御され得る。これは、電荷を連続的に放散させること、または正味の電荷が所定のしきい値に達したときに電荷を放散させることによって行われる。つまり、表面によって蓄積された過剰な負または正の電荷の全部または一部は、接地または他の手段によって放散され得る。放散される電荷は、最大10,000ボルト/センチメートルの電位を有し得、放電中に500ミリジュールのエネルギーを生成し得る。
【0021】
表面の電位の制御は、表面伝導を行うことによって便利に達成され得る。したがって、接地に対応するために、表面または表面に取り付けられている物体またはその一部が導電性であり得る。好ましくは、表面または表面が付着されている物体または表面の一部が部分的または完全に金属であり、したがって本質的に導電性である。
【0022】
放電はコロナ放電であり得る。コロナ放電の発生により、コロナ源を含む装置内に電気抵抗の源が必要となり、これは電極、接地/処理領域の周囲、またはその両方から可能である。
【0023】
コロナ放電発生電極はセラミックであり得る。特に処理プラットフォームが導電性である、すなわち金属元素または導電材料を含むとき、セラミック電極は有利であり、そしてコロナ放電の生成に適している。また、セラミック電極は高電圧による劣化に対して耐性があるため、有利に延長した耐用寿命を有する。
【0024】
電極周囲の抵抗としてセラミックを使用すると、効果的かつ信頼性の高い処理を得ながら、均等に放電の力を有利に分配する。
【0025】
あるいは、接地領域に電気抵抗の源が付着した金属電極を、処理効果がより大きな距離を飛び越える場合のアプリケーションに用いてもよい。
【0026】
また、この装置に含まれるかまたはこの方法で使用されるコンベアベルトを用いることによって小さな電気抵抗が提供される。この抵抗は、処理の効果を等しく保つのに有利に役立つからである。
【0027】
あるいは、またはさらに、表面の電位は、表面およびその上に置かれた物体の放電への曝露によって引き起こされる電位を対向または調節するために用いることができる位置にある第2の電極によって制御され得る。
【0028】
好ましくは、この追加電極は、放電源から物体および/または表面の反対側に配置される。
【0029】
このようにして、表面上にあるかまたは表面と接触している物体の電位もまた、表面の電気(静電)電位を制御する手段によって制御される。これは、物体が表面と間接的に接触している場合にも当てはまり得、その電位もまた表面の電位と協調して制御され得る。
【0030】
表面は、代表的には、移動表面であり、それによって、物体への分子/高分子の連続的な付着を可能とする。表面はコンベアプラットフォームであり得る。それは、所定の経路に沿って物体を搬送するのに適した移動表面である。好ましくは、表面はコンベアベルトである。したがって、表面およびその上の物体の静電電位を制御するための第2の追加電極は、コンベアプラットフォームの下に配置され得る。
【0031】
したがって、本発明は、連続的な処理プロセスに特に適している。連続的な処理プロセスは、バッチ処理プロセスと対照的である。バッチ処理プロセスでは、一定量の物体または投入基材が、所定の開始点および終了点を有する方法によって処理される。これに対して、連続処理では、処理される材料または物体の量は、利用可能な材料の量およびプロセスが実行される時間によって規定される。処理プロセスおよびインプットとアウトプットとのフローが安定すると、その方法の製品は、連続プロセスが停止するまで不確定な期間生成され得る。
【0032】
必然的に、静電荷の蓄積の機会が大幅に少ないため、静電効果はバッチプロセスにとってそれほど重要ではなく、有害でもない。また、連続的なベルト駆動プロセスが可撓性の表面を必要とするのに対し、バッチプロセスは金属板などの剛性(すなわち、非可撓性)の表面の周囲に構築され得る。さらに、電気的活性化は断続的にしか使用されないため、蓄積された電荷が自然に放散する機会は著しく大きくなる。
【0033】
これまで、放電を用いた物品の処理が、電荷超過のため物体の位置決めに有害な影響を及ぼすことなく、広範な種々の基材材料および物体に対して行われてきた。一般に、処理された物体のサイズおよび/または質量は、電荷の存在または蓄積による任意の力を些細なものとするのに十分であった。
【0034】
したがって、放電を用いる粒子の処理が、処理プロセス中に電荷を帯びることによって実質的に防止されることは予想外であった。処理される粒子の集団の全部または一部の動きにより、処理の信頼性を低下させ、処理は期待および/または必要とされるよりも少ない程度となる。
【0035】
したがって、本発明者らは、電位の制御を可能にする本発明の方法および装置を開発し、処理される物体に作用し得る静電効果を排除、低減、またはそれ以外に制御するという利点をもたらす。小物体は、静電荷によって小粒子が互いに反発するかまたは引き付けられ、制御されない分散または制御されない凝集に至り得るという点で、静的効果の影響を不釣り合いに受ける。いずれの場合も、粒子の効率的な処理は困難または不可能となる。過度に高い荷電の粒子は、コロナを通過せず、活性化されない程度まで、放電によって反発される。さらに、静電気の蓄積は、小粒子をランダムかつ予測できない方法で分散させ得、これにより、放電によって効率的に活性化することができない。このような効果は、粒子が単層に形成される場合に特に顕著であり、したがって不利である。
【0036】
さらに、処理される物体に対するこれらの静電効果は、外部放電にさらされることによって引き起こされるかまたは悪化し得る。
【0037】
この物体は、それへの分子または高分子の付着のための基材を提供する。したがって、物体と基材という用語は、本明細書において同じ意味で使用される。
【0038】
「基材」という用語は、適切な放電に基材を曝露した後に分子または高分子が固定化され得る任意の固相材料を意味すると解される。当該基材は、多くの形態をとり得るが、例えば、ナイロンおよびアミノまたはカルボキシル表面基を有する任意の他のポリマー、セルロースまたは他のヒドロキシル含有ポリマー、ポリスチレンまたは他の類似ポリマー、磁性粒子、生物学的物質を含む種々のプラスチックまたはマイクロビーズである。当該基材はまた、治療/医学で一般的に使用される材料から作られてもよい。例えば、手術で使用するためのナイロン糸;開いた傷の手当用のプラスチック、リントまたはガーゼ材料;マイクロビーズ(これは摂取可能である);接着剤(例えばシアノアクリレート);および/または生体物質(例えばコラーゲンまたはヒアルロン酸)。より好ましくは、当該材料は、タンパク質およびバルク材料(例えば、セルロースまたは他の植物由来ポリマー)を含む食品または飼料粒子であり得る。
【0039】
本発明に係る「活性化された/活性化する/活性化」という用語は、当該基材を(バクテリオファージ頭部またはキャプシド基に結合可能な表面化学を残す)様々な化学基と反応させることによって基材の活性化を意味すると解される。当該基材の活性化は放電(好ましくはコロナ放電)によって達成される。しかし、放電の他の形態が使用されてもよい。特に当該基材の活性化は、パルス状のコロナ放電および/または電子ビームを適用することによって達成され得る。分子または高分子と活性化された基材との間の接触は、分子または高分子と基材との間に共有結合を形成することにつながる。したがって、本発明の文脈における「付着する」という用語の使用は、共有結合を意味する。
【0040】
基材は、粒子であってもよい。粒子は直径2mmまたはそれ以下の大きさ、好ましくは直径1mmまたはそれ以下、最も好ましくは1~1000μmの範囲であり得る。粒子は、実質的に球状であり得る。
【0041】
適切には、粒子は、食品ペレットであり得る。食品ペレットは、人間および/または動物による消費に適している。好ましくは、食品ペレットは、動物飼料としての使用に適している。ペレットは、好ましくは、それらが置かれているかまたは支持されている表面から測定して、高さ1mm~20mmの範囲であり得る。ペレットは、実質的に球状、円筒状、または球状円筒形であり得る。
【0042】
また、物体は、種子(例えば植物種子)であり得る。種子は、植物種子などの小さな物体の取り扱いに対する静電気の影響のために、本発明によって有利に処理され得る。本発明による処理に適した種子は、直径10mmまたはそれ以下の大きさであり得、好ましくは0.2~5mmの範囲である。
【0043】
分子または高分子は、生体分子または生体内の実体であり得る。生体分子は、抗体、サイトカイン、または他のシグナル伝達分子であり得る。あるいは、またはさらに、分子または高分子は、多量体タンパク質もしくは抗体、またはウイルスなどの生物学的実体であり得る。好ましくは、高分子はウイルスであり、最も好ましくは、高分子はバクテリオファージである。
【0044】
本発明に係る「バクテリオファージ」という用語は、細菌の特定の株に感染するバクテリオファージを示すものである。バクテリオファージが特定の菌株を認識して感染させることができることが当業者に理解される。したがって、基材は、複雑なバクテリオファージの頭基特異的結合を可能にするように有利に活性化され得る材料であってもよい。バクテリオファージは、バクテリオファージコートタンパク質と基材との間に形成される共有結合を介して固定化される。より好ましくは、バクテリオファージは、バクテリオファージの添加およびカップリングの前に、基材を活性化することによって、それらの頭基またはヌクレオキャプシドを介して基材に固定化される。
【0045】
したがって、本発明に係る基材に固定化されたバクテリオファージは、菌体の増殖を阻害することによって細胞溶解を介して細菌の選択的な殺滅を誘導することによって「殺菌剤」として株特異的細菌感染と戦うために利用され得る。基材に固定化されたバクテリオファージは、細菌性汚染材料を「殺菌」するために抗菌剤/消毒剤として使用することもできる。したがって、好ましくは、バクテリオファージは、固定化時に感染性を保持する。
【0046】
表面はまた、粒子を収容するためのキャビティまたはインデントを含んでいてもよい。キャビティまたはインデントの口は、好ましくは、その中の粒子が放電によって活性化される際に、放電の発生源に面する。好ましくは、インデントまたはキャビティは、単一の粒子を収容するようにサイズ設定される。
【0047】
好ましくは、キャビティまたはインデントによって収容される粒子は、直径1cmまたはそれ以上である。大きな粒子を処理するために必要な力は、より小さい粒子の場合よりも有意に高い。これは、力の要件が寸法の線形増加に対する逆二乗法に従うためである。
【0048】
したがって、表面は、粒子が収まるインデントで作られてもよい。粒子の一部は、キャビティまたはインデントから表面の表面の上に突出する。したがって、粒子の突出部分を効果的に処理するためにコロナ放電がカバーしなければならない線形範囲は有意に低いものであり得る。このようにして、粒子全体を処理する必要なく、粒子の有意かつ有効な部分を活性化させることができる。したがって、より低い電力の放電源を使用することができる。そのようなより低い電力の放電源は、入手、実行、および維持するのに有利により安価である。
【0049】
本発明はまた、分子または高分子を付着させることによって物体を処理するための装置を提供し、以下を備える:
処理される粒子を支持するための表面;
その周囲に対して該表面の電位を制御するための手段;
放電を発生可能な放電デバイス。
【0050】
本発明はまた、分子または高分子を粒子に付着させるための本発明の装置の使用を提供する。
【0051】
本発明はまた、以下を備える電極アセンブリを提供する:
放電を発生可能な放電デバイスを備え、表面の活性部分から発生する放電を発生可能な放電発生表面を有する電極をさらに備え、ここで該表面の異なる部分からの放電の発生を可能とするように該表面が可動である。
【0052】
放電は、放電発生表面が動いている間に、連続的に発生され得る。
【0053】
電極の表面が可動であることの利点は、電極の動作中に放散しなければならない熱エネルギーが電極の特定の部分に発生することであり、この部分は使用時に変化され得、動作中に生成される熱エネルギーをより均等に分配する。このようにして、電極のホットスポットは避けられ、信頼性の向上とともに電極の動作寿命が増大する。
【0054】
この可動電極は回転可能であり、好ましくは電極は円筒状である。このような構成は、連続使用時に電極を移動する利点を生み出すために一方向の移動のみが必要であるという点で便利である。
【0055】
電極アセンブリは、電極の不活性部分を冷却する手段をさらに備え得る。好ましくは冷却手段は空冷であり、最も好ましくは冷却手段は強制空冷である。
【0056】
電極アセンブリは、電極の不活性領域に対して密接に間隔をあけて配置されたバリアを備え、そのバリアは電極の不活性部分から電極の活性部分を分離する。この構成は、物体が活性化されている電極の「活性」側を、冷却され得る電極の「不活性」側から分離する利点を有する。このようにして2つの温度環境が分離され、冷却機構がバリアの反対側の処理機構に影響を与えることを防ぐ。
【0057】
バリアは、ゴムまたはプラスチックから製造され得るが、好ましくは、バリアはシリコーン材料から製造される。
【0058】
バリアは、電極の表面に接触しているか、または電極表面から密接に間隔をあけて分離していてもよく、好ましくは電極表面から10~1000μmに配置されている。
【0059】
このような材料および構成は、電極の表面に付着した粒子または他の物質を除去するためにバリアがスクレーパーとして作用することを可能にする利点を有する。このようにして、電極はより長い時間連続的に稼働することができる。
【0060】
本発明はまた、分子または高分子を基材に付着させるための本発明の電極アセンブリの使用を提供する。
【0061】
本発明は、添付図面を参照して以下の具体的な実施形態で図示される。
【実施例
【0062】
(実施例1)
感染性バクテリオファージをそれに付着させるように微粒子を処理するための装置100を図1に示す。
【0063】
装置の以下のコンポーネントを図1に示す:
101-ベルト上に堆積される微粒子を含むホッパー;
102-移動ベルトであり、これは導電性材料で製造されているか、または第2の電極の付加によって導電性を有するように製造されている。これにより粒子が接地されるため、静電気蓄積の問題を大幅に削減または排除する;
103-ベルトを横断するバリアは、微粒子の1つ(単層)がコロナ領域に入ることを確実にする;
104-回転セラミック電極であり、これは材料を活性化するためにコロナを生成する。回転電極は空気流の流れを通して最上部表面の冷却を可能にする;
105-空気は、冷却を可能にするために、電極の最上部の上を流れる;
106-シリコンポリマーブレードは、空気流から供給物を分離し、付着する任意の粒子を電極表面から掬い取る;
107-液体がコロナに接触するのを防ぐためのバリア;
108-活性化された供給物上にファージ懸濁液を噴霧するデバイスであって、これはファージ懸濁液のためのリザーバを有する;
109-ファージ固定化供給物を収集するホッパー。
【0064】
このように、動作中、移動(コンベア)ベルト102は、ホッパー101からその上に堆積した微粒子を有する。粒子は2mmまたはそれ以下であり、静電気効果は、それらを拡散時に移動させたり、制御されない方法で分散させたりし得る。ベルト上に堆積した粒子はバリア103の下を移動してベルト102を横断して横方向に走行し、粒子のバルク処理に備えて、ベルト102上に粒子の塊を形成し平坦化して単層になる。
【0065】
コンベア表面は導電性材料で製造されているか、またはその電位が第2の電極を用いて操作される。これは、粒子をアースまたは接地する役割を果たし、静電気を除去し、それにより静電気によるコンベア上の微粒子の動きを排除する。このような効果は、粒子が単層に形成される場合に特に顕著である。
【0066】
コンベア上を移動する粒子の単層は、次いでコロナ放電110を通過し、粒子の表面の活性化を引き起こす。活性化により、粒子の表面上に反応性フリーラジカルが生成する。
【0067】
コロナ放電104を生成する電極は、好ましくはセラミックである。これは、コンベアベルトが導電性を有しており、このためセラミック電極が相溶性のために好ましいことによる。また、セラミック電極104は円筒状であり、コロナ放電110を生じながら回転する。円筒状電極104の曲面の最も低い部分は、コンベアベルトの移動方向に横方向に配置され、コンベアベルト102上を走行する粒子に面する。電極はコンベアベルトに面した表面のこの最も低い部分からコロナ放電を生じる。
【0068】
コロナ放電を生じながらの円筒状電極104の共振回転により、電極表面が回転するにつれて、電極の以前に不活性であった部分が使用されるようになり、電極の活性部分が絶えず変化している。コロナ放電の発生は熱を発生させ、電極の活性部分の温度が上昇する原因となる。電極の回転により、電極104の以前の活性部分が冷却領域105に回転することができるようになり、そこで空気が、電極104の不活性な上方の部分に亘って流れ、電極のその部分がもう一度活性になる前にそれを冷却する。
【0069】
また、シリコーンポリマーブレード106は、セラミック電極の曲がった円筒状表面の長さに沿って密接かつ平行に分離して配置される。これらのシリコーンポリマーブレード106の存在により、電極の「不活性」側の雰囲気から電極の「活性」側の雰囲気を分離することができる。このようにして、電極の「不活性」側に空気が通過する冷却システムの有効性が向上し、「不活性」側を通過する冷却空気が、電極の「活性」側に面するコンベアベルト上に生じた微粒子の壊れやすい単層に吹きかけることまたは影響を及ぼすことを防ぐ。また、電極104のこれらの曲面と密接かつ平行に分離するブレード106の配置により、静電荷またはその他の理由で電極の表面に付着したかもしれない粒子が、処理プロセス中に回転する電極から掬い取られるようになる。
【0070】
次に、コンベア上の活性化粒子は、スクリーン107の開口を通って、キャリア液体中のバクテリオファージの懸濁液が、リザーバ108から活性化粒子に噴霧される噴霧領域に入る。活性化粒子にバクテリオファージを噴霧することにより、バクテリオファージの表面が、活性化粒子の表面に存在するフリーラジカルと反応して、バクテリオファージを粒子に共有結合させる。この方法で付着したバクテリオファージは、感染性を保持することができ、脱水、化学的活性化または捕食の影響を大幅に受けにくくなる。懸濁液は1mlあたり1×10~1×1012個のバクテリオファージを含む。懸濁液は、スプレーノズルを通して懸濁液を通過させ、平均直径のYμmの液滴で形成された噴霧を形成することによって適用される。ポンプは、1秒あたりのYmlの流量で懸濁液を適用するために使用される。スプレーノズルは、バクテリオファージ含有スプレーが適用されている間、活性化ファージからYmmに配置される。
【0071】
バクテリオファージが粒子に共有結合されると、コンベアは粒子を貯蔵ホッパー109に送り込む。
【0072】
(実施例2)
感染性バクテリオファージをそれに付着させるように微粒子を処理するための装置200を図2および3に示す。
【0073】
装置の以下のコンポーネントを図2および3に示す:
202-移動ベルトであって、その電位とその上に置かれたアイテムの電位が第2の/反対側の電極210を介して制御される。これにより粒子が接地されるため、静電気蓄積の問題を大幅に削減または排除する。
204-回転セラミック電極であって、これは材料を活性化するためにコロナを発生する。回転電極は空気流の流れを通して最上部表面の冷却を可能にする;
205-冷却パイプであって、冷却を可能にするために、電極の最上部の上に空気を供給する/空気を流す;
206-シリコンポリマーブレードは、空気流から供給物を分離し、付着する任意の粒子を電極表面から掬い取る;
207-液体がコロナに接触するのを防ぐためのバリア;
210-対電極;および
212-高電圧(HV)ケーブル。
【0074】
このように、動作中、移動(コンベア)ベルト202は、ホッパーまたは他の容器(図示せず)からその上に堆積した微粒子を有する。粒子は、静電気効果がそれらを拡散時に移動させたり、制御されない方法で分散させたりし得るようなサイズである。ベルト上に堆積した粒子はバリア(図示せず)の下を移動してベルト202を横断して横方向に走行し、粒子のバルク処理に備えて、ベルト202上に粒子の塊を形成し平坦化して単層にする。
【0075】
コンベア表面の電位は、対電極として機能する第2の電極を用いて操作される。これは、粒子によって生じる静電気電荷を制御し、静電気によるコンベア上の微粒子の移動を制御または防止するのに役立つ。このような効果は、粒子が単層に形成される場合に特に顕著である。
【0076】
コンベヤ上を走行する粒子の単層は、その後コロナ放電を通過し、これは粒子の表面の活性化を引き起こす。活性化により、粒子の表面上の反応性フリーラジカルが発生する。
【0077】
コロナ放電204を発生する電極はセラミックである。また、セラミック電極204は円筒状であり、コロナ放電を生じながら回転する。円筒状電極204の曲面の最も低い部分は、コンベアベルトの移動方向に対して横方向に配置され、コンベアベルト202上を走行する粒子に面する。電極は、コンベアベルトに面したその表面のこの最も低い部分からコロナ放電を生じる。コロナ放電を発生させる電気エネルギーは、高電圧(HV)ケーブル212を介して供給される。HVケーブルは他の導電性材料から60mmの安全な間隔で保持される。
【0078】
コロナ放電を生じながら円筒状電極204の共振回転により、電極表面が回転するにつれて、電極の以前に不活性であった部分が使用されるようになり、電極の活性部分が絶えず変化している。コロナ放電の生成は熱を発生させ、電極の活性部分の温度が上昇する原因となる。電極の回転により、電極204の以前の活性部分が冷却パイプ205の近傍に回転することができるようになり、そこで空気が、電極204の不活性な上方の部分に亘って流れ、電極のその部分が再び活性になる前にそれを冷却する。
【0079】
また、シリコーンポリマーブレード206は、セラミック電極の曲がった円筒状表面の長さに沿って密接かつ平行に分離して配置される。これらのシリコーンポリマーブレード206の存在により、電極の「不活性」側の雰囲気から電極の「活性」側の雰囲気を分離することができる。このようにして、電極の「不活性」側に空気が通過する冷却システムの有効性が向上し、「不活性」側を通過する冷却空気が、電極の「活性」側に面するコンベアベルト上に生じる微粒子の壊れやすい単層に吹きかけることまたは影響を及ぼすことを防ぐ。また、電極204のこれらの曲面と密接かつ平行に分離するブレード206の配置により、静電荷またはその他の理由で電極の表面に付着したかもしれない粒子が、処理プロセス中に回転する電極から掬い取られるようになる。
【0080】
次に、コンベア上の活性化粒子は、スクリーン(図示せず)の開口を通って、キャリア液体中のバクテリオファージの懸濁液がリザーバ(図示せず)から活性化粒子に噴霧される噴霧領域に入る。活性化粒子にバクテリオファージを噴霧することにより、バクテリオファージの表面が活性化粒子の表面に存在するフリーラジカルと反応して、バクテリオファージを粒子に共有結合させる。この方法で付着したバクテリオファージは、感染性を保持することができ、脱水、化学的活性化または捕食の影響を大幅に受けにくくなる。懸濁液は1mlあたり1×10~1×1012個のバクテリオファージを含む。懸濁液は、スプレーノズルを通して懸濁液を通過させ、液滴で形成された噴霧を形成することによって適用される。
【0081】
バクテリオファージが粒子に共有結合されると、コンベアは粒子を貯蔵ホッパー(図示せず)に送る。
【0082】
本発明はこのように、それに物質を付着させるために基材を処理するための方法および装置、当該装置を用いて本発明の方法を適用することによって提供される装置および製品の使用を提供する。
【0083】
(参考文献)
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図1
図2
図3
図4