(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】寝袋
(51)【国際特許分類】
A47G 9/08 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
A47G9/08 A
(21)【出願番号】P 2022170479
(22)【出願日】2022-10-25
【審査請求日】2022-11-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599144088
【氏名又は名称】株式会社 三裕
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 定子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽一
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】米倉 秀明
【審判官】北村 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-108774(JP,A)
【文献】実開昭61-177024(JP,U)
【文献】特開2001-37609(JP,A)
【文献】特開平10-201594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状の底面部材と、
前記底面部材の長辺から立ち上がる長方形状の長辺部材と、短辺から立ち上がる長方形状又は正方形状の短辺部材とからなる、側面部材と、
前記側面部材の上部に取り外し自在に連結される上面部材と
、
前記底面部材の対向する2つの長辺の各々に、それらの少なくとも一部分から外方に突出する押さえ部材と
を備え、
前記底面部材、前記側面部材及び前記上面部材によって形成される内部空間が直方体形状を有
し、
前記押さえ部材は、前記側面部材の上で互いに連結することで、収納する際に前記側面部材の上を覆うように押さえることができ、
前記底面部材は、前記側面部材を内側に折り畳み、その状態における長さ方向の両端部を内側に折り込むか又は全体を長さ方向に丸めたときに、その形状を保持するための保持部材を有する、
寝袋。
【請求項2】
前記2つの長辺の各々に設けられた前記押さえ部材の各々が前記底面部材の前記2つの長辺の各々から外方に突出する長さは、前記底面部材の短辺の半分より短い、
請求項
1に記載の寝袋。
【請求項3】
前記上面部材は、長辺が前記内部空間の長さに対応する長さであり、短辺が前記内部空間の幅より長く、前記長辺より内側の位置と前記短辺の位置とにおいて前記側面部材の上部と連結される、
請求項1に記載の寝袋。
【請求項4】
前記上面部材は、長辺及び短辺が、それぞれ前記内部空間の長さ及び幅より長く、前記長辺より内側の位置と前記短辺より内側の位置とにおいて前記側面部材の上部と連結される、
請求項1に記載の寝袋。
【請求項5】
前記上面部材は、使用者が前記内部空間に入ったときに前記使用者の頭部の位置に対応する一部分以外において前記側面部材と連結される、
請求項
3又は請求項
4に記載の寝袋。
【請求項6】
前記上面部材は、前記長辺又はその近傍において、前記側面部材の外表面とさらに連結される、
請求項
3に記載の寝袋。
【請求項7】
前記上面部材は、前記長辺又はその近傍と前記短辺又はその近傍とにおいて、前記側面部材の外表面とさらに連結される、
請求項
4に記載の寝袋。
【請求項8】
前記底面部材は、少なくとも前記内部空間の側の面とは反対側の面が防水性を有する、
請求項1に記載の寝袋。
【請求項9】
前記押さえ部材は、略長方形状を有する、
請求項
1に記載の寝袋。
【請求項10】
前記底面部材は
、運搬に使用するためのハンド
ルを外表面にさらに有する、
請求項1に記載の寝袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝袋に関し、特に、寝室となる内部空間が広く確保されており、保温性に優れ、構成部材を多用途に用いることができるとともに、持ち運びに便利なコンパクト形状で収納することが容易な寝袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の寝袋は、一般に、平坦な上面部材と平坦な下面部材とが、それらの縁でファスナなどによって開閉自在に連結された構造を有する。このような構造の寝袋においては、使用者が寝袋に入ったときに使用者の横に余分な空間が生じ、寝袋内部の保温性が低下したり、内部空間が十分に確保されず、例えば寝返りをし難いなどのように使用者の動きが制限されたりすることがあった。
【0003】
こうした問題点を解決するため、特許文献1に開示される寝袋が提案されている。この寝袋は、保温材を充填した上掛シートと下敷シートとを、保温材を充填したマチ部材を介して連続させ、断面を筒型に形成したものである。しかし、この寝袋は、特許文献1の
図1-
図5に示されているように、足下のマチ部材と頭部付近のマチ部材とでは、立ち上がり方が異なっている。すなわち、足下のマチ部材は下敷シートから直立しているのに対して、頭部方向に向かうにつれてマチ部材が内側に倒れ込むように設けられている。それに加えて、この寝袋は、その内部空間が、使用者である人の外形に合わせて形成されており、すなわち、足元から頭部方向に向かうにつれて次第に幅広くなり、使用者の肩に対応する部分から頭部に対応する部分にかけて幅が狭くなるように形成されている。したがって、この寝袋は、使用者の周囲、特に上半身から頭部の周囲にスペースがなく、窮屈である。
【0004】
また、特許文献1に開示された寝袋は、上掛シートがマチ部材を介して下敷シートと一体的に形成されており、上掛シートのみを取り外すことができるように構成されたものではない。さらに、寝袋を収容することができる収納袋が、寝袋の足下外面に一体的に設けられているが、保温材が詰められているために各部材に厚みがあってかさばる寝袋を小さくまとめて袋に収容することは、きわめて煩雑である。
【0005】
特許文献2には、従来の平坦な構造の寝袋において、上面部材である上掛け部と下面部材である敷部とを連結及び分離可能な寝袋が提案されている。しかし、この寝袋は、ファスナを閉じて内部に使用者が入ったときに、使用者の横に余分な空間が生じ、寝袋内部の保温性が低下する問題がある。また、上掛け部を敷部に取り付けたときに、特許文献2の
図1に示されるように、頭部の横が空く構造であり、ここから空気が出入りするため、この点でも保温性に問題がある。
【0006】
特許文献3には、従来の平坦な構造の寝袋において、本体にポケットを設け、使用しないときに本体を丸めてこのポケットに収納することができる寝袋が提案されている。しかし、この寝袋も、保温材が詰められているために厚みがあてかさばる寝袋を小さくまとめて袋に収容することは、きわめて煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-103994号公報
【文献】実用新案登録第3202039号公報
【文献】特開平8-24104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、使用者の体の周囲における空間を十分に確保することができるとともに、保温性に優れており、構成部材を取り外し自在とすることによってそれぞれ単独で使用することができ、さらに手間がかからずに容易かつコンパクトに収納可能な寝袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、寝袋を提供する。寝袋は、底面部材と、底面部材から立ち上がる側面部材と、側面部材の上部に取り外し自在に連結される上面部材とを備える。底面部材、側面部材及び上面部材によって内部空間(寝室)が形成される。内部空間は、略直方体形状を有する。
【0010】
寝袋は、底面部材の対向する側辺の各々の少なくとも一部分から外方に突出する2つの押さえ部材をさらに備えることが好ましい。2つの押さえ部材は、内側に折り畳まれた側面部材の上を覆うように近づけて、互いに連結することができる。2つの押さえ部材の各々が底面部材の2つの長辺の各々から外方に突出する長さは、底面部材の短辺の半分より短いことが好ましい。
【0011】
上面部材は、長辺が内部空間の長さに対応する長さであり、短辺が内部空間の幅より長いことが好ましい。上面部材は、長辺より内側の位置と短辺の位置とにおいて側面部材の上部と連結される。この場合、上面部材は、長辺又はその近傍において、側面部材の外表面とさらに連結されることがより好ましい。
別の実施形態においては、上面部材は、長辺及び短辺が、それぞれ内部空間の長さ及び幅より長くすることもできる。この場合には、上面部材は、長辺より内側の位置と短辺より内側の位置とにおいて側面部材の上部と連結される。上面部材は、長辺又はその近傍と前記短辺又はその近傍とにおいて、側面部材の外表面とさらに連結されることがより好ましい。
【0012】
上面部材は、使用者が内部空間に入ったときに使用者の頭部の位置に対応する一部分以外において側面部材と連結されるようにすることができる。
【0013】
底面部材は、少なくとも内部空間の側の面とは反対側の面が防水性を有することが好ましい。寝袋は、取り外し自在な中敷部材を内部空間にさらに備えることが好ましい。
【0014】
底面部材は、側面部材を内側に折り畳み、その状態における長さ方向の両端部をさらに内側に折り込むか又は全体を長さ方向に丸めたときに、その形状を保持するための保持部材と、運搬に使用するためのハンドルと
を外表面にさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内部空間が略直方体形状であることによって、使用者が内部空間に寝たときに、頭部の圧迫感がない、体の周囲に空間があり寝返りしやすい、体の周囲の空間、特に頭部付近にものを置きやすい、頭部の空間でスマートフォンなどを用いた作業を行いやすい、などといった効果を有する。また、本発明によれば、底面部材10から外方に突出する押さえ部材を備えることによって、寝袋1を容易かつコンパクトに収納することができる。さらに、本発明によれば、寝袋の側面が二重構造になるため内部空間ISは優れた保温性を有する。さらに、本発明によれば、上面部材が取り外し自在に連結されるため、上面部材のみを単独で掛け布団などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る寝袋を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る寝袋の底面部材及び押さえ部材を外表面の方向から見た図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る寝袋の上面部材を内表面の方向から見た図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る寝袋の中敷部材を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る寝袋の内部空間に使用者が入った状態を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る寝袋を収納する際の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(寝袋の構造)
図1は、本発明の一実施形態に係る寝袋1を示す分解斜視図である。
図2は、寝袋1の底面部材10及び押さえ部材50を外表面の側から見た図である。
図3は、寝袋1の上面部材30を内表面の方向から見た図である。
図4は、寝袋1の中敷部材40を示す図である。
寝袋1は、大きく分けて5つの部材、すなわち、底面部材10、側面部材20、上面部材30、中敷部材40、及び押さえ部材50で構成される。なお、内部空間(寝室)ISに使用者Hが入ったときに、使用者Hの頭部が位置する方向を
図1の左下方向とし、足が位置する方向を
図1の右上方向とする。また、寝袋1の上面部材30がある方向(
図1の上方向)を上部、底面部材10がある方向(
図1の下方向)を下部という。さらに、各部材の内部空間ISの方向の面を各部材の内表面、その反対側の面を各部材の外表面という。
【0019】
[底面部材]
底面部材10は、長辺10Lと短辺10Sとを有する略長方形のシート状部材とすることができる。ただし、底面部材10は、長方形に限定されるものではなく、例えば、楕円形や長円形などでもよい。底面部材10の素材として、例えばポリエステル、ナイロン、綿などの布地を用いることができる。必要に応じて、底面部材10は、2枚の布地の間に保温材として羽毛や中綿などの充填物を封入した構造とすることもできる。底面部材10の外表面10Bは、地面に接することもあり得るため、例えばポリウレタンラミネート加工などを施すことによって防水性を持たせることが好ましい。底面部材10そのものを、防水性を有するシート状部材で作製してもよい。
【0020】
図2に示されるように、底面部材10の外表面10Bには、寝袋1をコンパクトに収納して持ち運び可能な状態にするためにベルトなどの保持部材102が設けられる。保持部材102は、例えばサイドリリースバックルなどの留め具102a、102bと、アジャスタなどの長さ調製具102cとを有することが好ましい。また、底面部材10の外表面10Bには、コンパクトに収納した寝袋1を持ち運ぶためのハンドル部材103が設けられる。ハンドル部材103は、使用者Hが内部空間ISに入って横になったときに異物感を感じないように、柔軟性のある素材で作製されていることが好ましい。保持部材102及びハンドル部材103は、外表面10Bにおいて底面部材10の幅方向にわたって固定された基材104に取り付けられる。
【0021】
[押さえ部材]
底面部材10には、対向する側辺、すなわち2つの長辺10Lの各々に、略長方形の形状の押さえ部材50a、50bが取り付けられていることが好ましい。押さえ部材50a、50bは、寝袋1を収納する際に、側面部材20がかさばらないように押さえる。押さえ部材50a、50bは、それぞれ、その長辺50aL、50bLが底面部材10の長辺10Lより短く、底面部材10の長辺10Lの長さ方向の一部分に、そこから外方に突出するように取り付けられている。押さえ部材50a、50bは、限定されるものではないが、強度の高い材料を用いて作製されることが好ましい。
【0022】
別の実施形態においては、押さえ部材50a、50bの長辺50aL、50bLを底面部材10の長辺10Lと同じ長さとし、底面部材10の長辺10Lの長さ方向全体から外方に突出するように押さえ部材50a、50bが取り付けられていてもよい。ただし、このように構成した場合には、後述のように収納したときに全体のサイズが多少大きくなる可能性がある。
【0023】
押さえ部材50aの、底面部材10の側とは反対側の長辺50aLには、スライドファスナ部材51aが設けられ、押さえ部材50bの、底面部材10の側とは反対側の長辺50bLには、スライドファスナ部材51bが設けられている。スライドファスナ部材51aとスライドファスナ部材51bとは、一対のスライドファスナ51を形成し、互いに連結することができるようになっている。一対のスライドファスナ51は、閉じた後に自然と開くことのないように、ロック機能付きのファスナであることが好ましい。なお、押さえ部材50a、50bとしての効果を奏する限り、スライドファスナ51に代えて、例えば、面ファスナ、スナップファスナなどを用いてもよい。
【0024】
押さえ部材50a、50bの各々の短辺50aS、50bSの長さ、すなわち、押さえ部材50a、50bが底面部材10の長辺10Lから外方に突出する長さは、底面部材10の短辺10Sの長さの半分より短いことが好ましい。このような長さにすることによって、よりコンパクトに寝袋1を収納することができる。しかし、短辺50aS、50bSの長さは、これに限定されるものではなく、押さえ部材50a、50bとしての効果を奏する限り、底面部材の短辺10Sの長さの半分と同じでもよく、短辺10Sより多少長くてもよい。上記のとおり、底面部材10から外方に突出し、互いに連結可能な押さえ部材50a、50bを備えることによって、寝袋1を収納する際に側面部材20が膨らんでかさばらないように押さえることができるため、容易かつコンパクトに収納することができる。
【0025】
[側面部材]
底面部材10の各辺には、側面部材20が、底面部材10の内表面の方向に立ち上がるように取り付けられている。側面部材20は、対向するように立設された長方形状の2つの長辺部材20Lと、対向するように立設された長方形状又は正方形状の2つの短辺部材20Sとを有し、2つの長辺部材20L及び2つの短辺部材20Sは、互いにそれぞれの短辺同士で連結されて寝袋1の側面を形成する。
【0026】
長辺部材20Lは、底面部材10の長辺10Lに取り付けられ、短辺部材20Sは、底面部材10の長辺10Sに取り付けられる。しかし、側面部材20は、底面部材10の長辺10L及び短辺10Sから立ち上がるように取り付けられることに限定されるものではなく、底面部材10の長辺10L及び短辺10Sより内側の内表面から立ち上がるように取り付けられてもよい。あるいは、底面部材10が、例えば楕円形や長円形の場合も、その辺ではなく、内側の内表面のいずれかの位置から側面部材20が立ち上がるように取り付けられていてもよい。
【0027】
側面部材20は、例えばポリエステル、ナイロン、綿などの布地を用いて作製することができる。側面部材20は、2枚の布地の間に保温材として羽毛や中綿などの充填物を封入した構造を有することが好ましい。充填物は、側面部材20ができるだけ自立可能となり、かつ保温機能が向上するように、寝袋1の使用時に内部に空気を多く含むようになっていることが好ましく、例えば充填物として羽毛を用いる場合には、グレードの高い種類の羽毛をより多く含むことが好ましい。本実施形態においては、例えば
図1に示されるように、側面部材20は、充填物が各々に充填された複数の小区画に分かれた構造となっているが、これに限定されるものではなく、例えば長辺部材20L及び短辺部材20Sのそれぞれを小区画に分けることなく全体に充填物が充填された構造でもよい。側面部材20の少なくとも外表面に、撥水加工又は防水加工が施されることが好ましい。
【0028】
2つの長辺部材20L及び2つの短辺部材20Sで囲まれた内部空間ISは、略直方体形状を形成する。内部空間ISの長さ(長辺部材20Lの長さに対応する)、幅(短辺部材20Sの長さに対応する)及び高さ(長辺部材20L及び短辺部材20Sの幅に対応する)は、いずれも限定されるものではないが、使用者Hが内部空間ISの中で寝たときの身長、体幅、及び体厚に概ね対応する長さ、幅及び高さであることが好ましい。内部空間ISが略直方体形状であることによって、使用者Hが内部空間ISに寝たときに、頭部の圧迫感がない、体の周囲に空間があり寝返りしやすい、体の周囲の空間、特に頭部付近にものを置きやすい、頭部の空間でスマートフォンなどを用いた作業を行いやすい、などといった利点がある。使用者Hが内部空間ISに寝た状態は、
図5に示されている。なお、2つの長辺部材20Lの一方又は両方における使用者Hの頭部付近にポケットを設けて、スマートフォンやその他の小物を収容できるようにしてもよい。
【0029】
側面部材20の上部には、スライドファスナ部材21が設けられている。スライドファスナ部材21は、後述される上面部材30の対応する位置に設けられたスライドファスナ部材31と連結される。ここで、側面部材20の上部は、長辺部材20L及び短辺部材20Sの上端と、上端から外表面側又は内表面側に若干下がった位置とを含む。
図1においては、スライドファスナ部材21が、長辺部材20L及び短辺部材20Sの上端に設けられた状態を示す。具体的には、側面部材20の2つの長辺部材20Lの上端20LUに、長辺スライドファスナ部材21Lが設けられ、足下方向の短辺部材20Sの上端20SUに、短辺スライドファスナ部材21Sが設けられている。
【0030】
本実施形態においては、長辺スライドファスナ部材21Lは、長辺部材20Lの上端20LUの長さのうち、頭部方向の一部分には設けられていない。また、短辺スライドファスナ部材21Sは、2つの短辺部材20Sのうち、使用者Hの頭部方向の短辺部材20Sには設けられていない。すなわち、スライドファスナ部材21は、使用者Hが内部空間ISに入ったときに使用者Hの頭部の位置に対応する一部分以外の側面部材20に設けられている。このように、内部空間ISに入った使用者Hの頭部に対応する位置に長辺スライドファスナ部21L及び短辺スライドファスナ部21Sを設けずに、後述する上面部材30の頭部の位置に対応する一部分が折り返し可能になるように構成することができる。長辺スライドファスナ部材21Lが設けられない部分は、限定されるものではないが、使用者Hの顔の長さに対応する長さであることが好ましく、例えば、長辺部材20Lの上端20LUの長さ全体の15%~30%(1/7~2/7)であることが好ましい。
【0031】
別の実施形態においては、側面部材20の上端20LU及び20SUの全てにスライドファスナ部材21を設け、上面部材30の対応する位置に設けられたスライドファスナ部材31と連結して、側面部材20の内部空間ISを上面部材30で密閉できるようにしてもよい。内部空間ISを密閉することによって、内部空間ISの保温性をより高めることができるとともに、使用者Hのプライバシーをより確実に保つことができる。
【0032】
なお、スライドファスナ部材21の始点及び終点の位置は、特に限定されるものではない。例えば、足下方向の短辺部材20Sの中央部に始点を設け、2つの長辺部材20Lのそれぞれに終点を設けて、短辺部材20Sからそれぞれの長辺部材20Lの終点に向かってスライドファスナの開閉を可能とすることができる。あるいは、一方の長辺部材20Lのいずれかの位置に始点と終点とを隣接して設け、始点から終点に向かって、側面部材20の上端を一周するようにスライドファスナの開閉を行うことができるようにしてもよい。
【0033】
[上面部材]
側面部材20の上部には、上面部材30を取り外し自在に連結することができる。
図3に示されるように、上面部材30は、長辺30Lと短辺30Sとを有する長方形の部材とすることができる。ただし、上面部材30は、長方形に限定されるものではなく、例えば、楕円形や長円形などでもよい。
【0034】
上面部材30は、例えばポリエステル、ナイロン、綿などの布地を用いて作製することができる。上面部材30は、2枚の布地の間に保温材として羽毛や中綿などの充填物を封入した構造を有することが好ましい。本実施形態においては、例えば
図1に示されるように、上面部材30は、充填物が各々に充填された複数の小区画に分かれた構造となっているが、これに限定されるものではなく、例えば小区画に分けることなく全体に充填物が充填された構造でもよい。上面部材30の少なくとも外表面に、撥水加工又は防水加工が施されることが好ましい。
【0035】
本実施形態においては、上面部材30の長辺30Lの長さは、側面部材20の長辺部材20Lと概ね同じ長さ(すなわち、内部空間ISの長さに対応する長さ)であり、短辺30Sの長さは、側面部材20の短辺部材20Sより長く(すなわち、内部空間ISの幅より長く)なっている。上面部材30の内表面には、長辺30Lより内側の位置に長辺スライドファスナ部材31Lが設けられ、短辺30Sの一部に沿って短辺スライドファスナ部材31Sが設けられている。
【0036】
上面部材30は、長辺スライドファスナ部材31L及び短辺スライドファスナ部材31Sと、側面部材20の長辺スライドファスナ部材21L及び短辺スライドファスナ部材21Sとを連結することによって、側面部材20に取り外し自在に取り付けられる。なお、スライドファスナ部材21及びスライドファスナ部材31に代えて、例えば、面ファスナ、スナップファスナなどを用いて、上面部材30と側面部材20とを取り外し自在に連結するようにしてもよい。
【0037】
長辺スライドファスナ部材31Lは、側面部材20のスライドファスナ部材21Lの位置に対応して、上面部材30の長さのうち頭部の位置に対応する一部分(
図1及び
図3の30Fの部分)には設けられていない。すなわち、上面部材30は、使用者Hが内部空間ISに入ったときに頭部の位置に対応する一部分30F以外において側面部材20と連結される。スライドファスナ部材31Lが設けられない部分30Fは、限定されるものではないが、上面部材30の長さ全体の15%~30%(1/7~2/7)であることが好ましい。寝袋の内部空間ISに使用者Hが寝た状態を表す
図5に示されるように、上面部材30の一部分30Fを折り返して使用することによって、上面部材30を側面部材20に連結したときでも、閉塞感の少ない寝心地を得ることができる。上面部材30が複数の小区画に分けられた構造の場合、折り返し部分30Fは、折り返し量の調整が容易になるように、他の部分よりさらに細かい小区画に分けられていることが好ましい。
【0038】
別の実施形態においては、側面部材20の説明においても記載したように、上面部材30は、使用者Hが内部空間ISに入ったときに頭部の位置に対応する一部分30Fの部分も側面部材20と連結されるようにしてもよい。この場合には、上面部材30の長辺スライドファスナ部材31Lの長さを上面部材30の長さと同じとし、短辺スライドファスナ部材31Sを、使用者の頭部方向の短辺30Sにも設ける。また、側面部材20においても、その上端20LU、20SU全体に、スライドファスナ部材21を設ける。
【0039】
本実施形態においては、上述のように、短辺30Sの長さは、側面部材20の短辺部材20Sより長い。したがって、上面部材30を側面部材20に連結したときに、上面部材30の長辺30Lと長辺スライドファスナ部材31Lとの間の部分が、側面部材20の長辺部材20Lの外表面の一部を覆うように垂れ下がる。上面部材30のこの垂れ下がり部分によって、寝袋1の側面は、長辺部材20Lと垂れ下がり部分とが重なった二重構造となり、長辺部材20Lのみのときより断熱効果又は風よけ効果が向上する。上面部材30の長辺30L又はその近傍を長辺部材20Lの外表面に固定することができるように、上面部材30及び長辺部材20Lのそれぞれ対応する位置に、スライドファスナ、面ファスナ、スナップファスナなどを設けてもよい。これにより、上面部材30の垂れ下がった部分の風によるばたつきを防止し、断熱効果又は風よけ効果がさらに向上する。
【0040】
上面部材30の垂れ下がり部分の長さは、側面部材20の高さの半分より長いことが好ましいが、これに限定されるものではなく、断熱効果、風よけ効果、掛け布団としての使用のしやすさなどを考慮して、適宜決定することができる。
【0041】
上述のとおり、上面部材30の短辺30Sは、側面部材20の短辺部材20Sより長い。すなわち、上面部材30の幅は、使用者Hの体幅より広くなっている。したがって、上面部材30は、それ単独で、例えば車中泊などの際の掛け布団として使用することもできる。例えば上面部材30の短辺の長さを短辺部材20Sの長さと等しくすると、上面部材30は、それ単独で掛け布団として利用するには幅が狭すぎるが、本発明の上面部材30であれば、掛け布団として単独で十分に利用することができる。
【0042】
別の実施形態においては、上面部材30の長辺30Lの長さを、側面部材20の長辺部材20Lより長く(すなわち、内部空間ISの長さより長く)することもできる。この場合、上面部材30の内表面には、長辺30Lより内側の位置に長辺スライドファスナ部材31Lが設けられ、短辺30Sより内側の位置に短辺スライドファスナ部材31Sが設けられる。
【0043】
この実施形態においては、上面部材30を側面部材20に連結したときに、上面部材30の長辺30Lと長辺スライドファスナ部材31Lとの間の部分が垂れ下がるだけでなく、上面部材30の短辺30Sと短辺スライドファスナ部材31Sとの間の部分も、側面部材20の短辺部材20Sの外表面の一部を覆うように垂れ下がる。これにより、寝袋1の側面は、長辺部材20Lに加えて短辺部材20Sの部分においても二重構造となり、断熱効果又は風よけ効果がさらに向上する。上面部材30の短辺30S又はその近傍を短辺部材20Sの外表面に固定することができるように、上面部材30及び短辺部材20Sのそれぞれ対応する位置に、スライドファスナ、面ファスナ、スナップファスナなどを設けてもよい。これにより、上面部材30の垂れ下がった部分の風によるばたつきを防止し、断熱効果又は風よけ効果がさらに向上する。
【0044】
[中敷部材]
底面部材10の内表面の上に、底面部材10と概ね同一形状の中敷部材40を配置することができる。中敷部材40は、それ単独でも敷き物として使用できるように、取り外し自在であることが好ましい。
図4に示されるように、中敷部材40は、長辺40Lと短辺40Sとを有する略長方形の部材であり、例えばポリエステル、ナイロン、綿などの2枚の布地の間に、固綿、ウレタンなどの中材42を入れた構造とすることができる。
【0045】
図4の実施形態においては、中敷部材40は、内部を4つの小区画41a、41b、41c、41dに分割し、それぞれの小区画に、中材42a、42b、42c、42dを入れた構造である。中材42a、42b、42c、42dは、小区画41a、41b、41c、41dから取り出すことができるようになっていることが好ましい。小区画の数は4つに限定されるものではなく、別の実施形態においては、例えば3つの小区画又は5つ以上の小区画に分割してもよい。さらに、各区画の大きさは同一であることには限定されず、例えば、6つの小区画に分割し、長さ方向両端部分に位置する2つの区画を他の4つの区画より小さく形成することもできる。この場合、両端部分の区画には中材を入れない構造とすれば、折り畳みやすくなり、よりコンパクトに収納することができる。さらに別の実施形態においては、内部を単一の空間とし、1枚の中材42を入れた構造としてもよい(
図1には、この構造を有する中敷部材40が示されている)。
【0046】
(寝袋の使用方法)
次に、寝袋1の使用方法を説明する。寝袋1は、上述された構造、すなわち、底面部材10、側面部材20、上面部材30、中敷部材40、及び押さえ部材50を有する構造とすることができる。底面部材10、側面部材20及び押さえ部材50と、上面部材30と、中敷部材40とは、それぞれ、取り外し自在に構成されている。
【0047】
すべての部材を用いて寝袋として使用する場合には、内部空間IS内の底面部材10の上に中敷部材40を配置し、側面部材20と上面部材30とを連結する。寝袋1の側面は、長辺部材20Lと垂れ下がり部分とが重なった二重構造となり、優れた断熱効果又は風よけ効果を奏する。必要に応じて、上面部材30の一部分30Fを折り返してもよい。一部分30Lを折り返して使用することによって、閉塞感の少ない寝心地を得ることができる。さらに、上面部材30の長辺30L又はその近傍を、側面部材20の長辺部材20Lの外表面に固定してもよい。これにより、上面部材30の垂れ下がった部分の風によるばたつきを防止し、断熱効果又は風よけ効果がさらに向上する。
【0048】
夏季には、必要に応じて、上面部材30を側面部材20に連結することなく、底面部材10及び側面部材20のみ(必要に応じて中敷部材40を配置して)で寝袋として使用することもできる。取り外した上面部材30は、幅が使用者の体幅より広くなっているため、それ単独で別の使用者の掛け布団として使用することもできる。また、車中泊などの際には、底面部材10、側面部材20及び中敷部材40を使用せず、上面部材30のみを掛け布団として使用することもできる。さらに、中敷部材40は、それ単独で、敷き物として使用しても良い。
【0049】
寝袋1は、手間がかからずに容易かつコンパクトに収納することができる。
図6は、寝袋1を収納する際の手順を示す。寝袋1を収納する場合には、まず、内部空間ISに上面部材30及び中敷部材40を入れた状態で、
図6(a)に示されるように、側面部材20の長辺部材20L及び短辺部材20Sを内側に折り畳む。このとき、押さえ部材50は、側面部材20の側方に広げておく。上面部材30は、底面部材10の大きさに合わせて折り畳んで入れることが好ましい。
【0050】
次に、
図6(b)に示されるように、押さえ部材50a、50bの長辺50aLと長辺50bLとを、内側に倒した側面部材20を圧迫しながらその上を覆うように、矢印Aの方向に近づけ、スライドファスナ部材51aとスライドファスナ部材51bとを連結する。このように、押さえ部材50a、50bによって、内部空間ISに上面部材30及び中敷部材40を入れて折り畳んだ状態でも側面部材20が膨らむことを防止して、容易かつコンパクトに寝袋1を収納することができる。さらに、押さえ部材50a、50bの短辺50aS、50bSの各々を底面部材10の短辺10Sの長さの半分より短くすれば、押さえ部材50aと押さえ部材50bとを連結したときに、側方から絞り込むとともに上方から圧迫して、より強く側面部材20を押さえ込むことができるため、寝袋1の収納形態をよりコンパクトにすることができる。
【0051】
次に、
図6(b)の状態になった寝袋1を、その長さ方向の両端部を内側(図中の矢印Bの方向)にさらに折り込むことによって、
図6(c)に示されるように全体をコンパクトに丸めることができる。なお、
図6(b)の状態になった寝袋1は、全体を端部から長さ方向に丸めるようにしてもよい。丸めた寝袋1は、底面部材10の外表面10Bに設けられたベルト(保持部材)102で固定することによって、丸められた形状を保持することができる。ベルト102は、アジャスタ102cによって長さを調整し、留め具102a、102bを連結すれば、よりコンパクトにまとめることができる。丸められた寝袋1は、ハンドル103を用いて容易に運搬することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 寝袋
10 底面部材
10L 長辺
10S 短辺
10B 外表面
102 保持部材(ベルト)
102a、102b 留め具
102c 長さ調整具
103 ハンドル
104 基
20 側面部材
20L 長辺部材
20LU 上端
20S 短辺部材
20SU 上端
21 スライドファスナ部材
21L 長辺スライドファスナ部材
21S 短辺スライドファスナ部材
30 上面部材
30L 長辺
30S 短辺
30F 折り返し部
31 スライドファスナ部材
31L 長辺スライドファスナ部材
31S 短辺スライドファスナ部材
40 中敷部材
40L 長辺
40S 短辺
41a、41b、41c、41d 小区画
42a、42b、42c、42d 中材
50a、50b 押さえ部材
50aL、50bL 長辺
50aS、50bS 短辺
51 スライドファスナ
51a、51b スライドファスナ部材
IS 内部空間(寝室)
H 使用者