IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特許7595963正極添加剤を含むリチウム二次電池の活性化方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】正極添加剤を含むリチウム二次電池の活性化方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20241202BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241202BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241202BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/131
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/48
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M10/052
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022568933
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2022005581
(87)【国際公開番号】W WO2022255638
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0071222
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0043177
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】シュル・キ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・ジョ
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187637(WO,A1)
【文献】特開2019-021445(JP,A)
【文献】特開平06-342673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0372784(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0079109(KR,A)
【文献】特開2015-088268(JP,A)
【文献】特開2015-005350(JP,A)
【文献】特開2020-102309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0033380(US,A1)
【文献】特開2010-282874(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118834(WO,A1)
【文献】特開2018-190504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052 - 10/0587
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質および正極添加剤を含有する正極を具備する電極組立体ならびに電解液が収納されたリチウム二次電池の活性化方法であって、
リチウム二次電池をSOC90%以上まで充電する活性化段階を含み、
前記活性化段階で、SOC90%以上まで充電する過程中、二次電池内部のガスを除去する脱気工程を1回以上行い、
前記正極添加剤は、下記の化学式1で示すリチウムコバルト酸化物であり、
前記活性化段階は、
リチウム二次電池をSOC20%以下まで充電する活性化1段階と、
活性化1段階が行われたリチウム二次電池をSOC20%超過40%以下の範囲まで充電する活性化2段階と、
活性化2段階が行われたリチウム二次電池をSOC40%超過70%以下の範囲まで充電する活性化3段階と、
活性化3段階が行われたリチウム二次電池をSOC90%以上まで充電する活性化4段階と、を含み、
前記活性化1段階~3段階のうち少なくとも一つ以上の段階後、脱気工程を行うことを特徴とするリチウム二次電池の活性化方法。
[化学式1]
LiCo(1-q)
前記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【請求項2】
前記脱気工程は、2回または3回行うことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項3】
活性化1段階~3段階後、それぞれ脱気工程を行うことを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項4】
活性化1段階は、0.5C以下の条件で低率充電を行い、
活性化2段階~4段階は、0.5C超過の条件で高率充電を行う、請求項に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項5】
活性化段階は、リチウム二次電池を加圧する過程をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項6】
活性化段階は、40℃~70℃の温度条件下で行われる、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項7】
前記化学式1中、Mは、Zn元素であり、qは、0.2≦q≦0.4である、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項8】
正極添加剤の含有量は、正極合材層の全体重量に対して0.1~5重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項9】
活性化段階後、活性化したリチウム二次電池を40℃~80℃の温度で熟成するエージング段階を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性化方法。
【請求項10】
請求項1に記載のリチウム二次電池の活性化方法に用いられるリチウム二次電池であって、
正極と、
負極と、
正極と負極との間に配置される分離膜を含む電極組立体と、
電解質と、を含み、
前記正極は、正極集電体と、正極集電体上に位置し、正極活物質、下記の化学式1で示す正極添加剤、導電材およびバインダーを含む正極合材層と、を具備し、
前記正極活物質は、下記の化学式2で示すリチウムニッケル複合酸化物である、リチウム二次電池:
[化学式1]
LiCo(1-q)
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
前記化学式1および2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5であり、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【請求項11】
負極は、負極集電体と、負極集電体上に位置し、負極活物質を含有する負極合材層と、を具備し、
前記負極活物質は、炭素物質およびシリコン物質を含有する、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月2日付の韓国特許出願第10-2021-0071222号、および2022年4月7日付の韓国特許出願第10-2022-0043177号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、正極添加剤を含むリチウム二次電池の活性化方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と作動電位を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
最近では、電気自動車のような中大型デバイスの電源としてリチウム二次電池が用いられるに伴い、リチウム二次電池の高容量、高エネルギー密度、および低費用化がより一層要求されており、電極に使用される非可逆添加剤に対しても、より高い非可逆容量を有することが求められている。しかしながら、このような高い非可逆容量を有する正極添加剤の開発に限界があったのが現状である。
【0005】
一方、上記LiCoOのような従来の非可逆添加剤は、一般的にコバルト酸化物などを、過量のリチウム酸化物と反応させて製造される。このように製造された非可逆添加剤は、構造的に不安定で、充電が進行されるにつれて、下記のように多量の酸素ガス(O)を発生させるが、二次電池の初期充電時、非可逆添加剤が全部反応せずに残留する場合、初期充電後に行われる充放電過程で反応を起こして、電池内部に多量の酸素ガスを発生させることができる。このように発生した酸素気体は、電極組立体の体積膨張などを誘発して、電池性能の低下を招く主な要因の一つとして作用することができる。
【0006】
【化1】
【0007】
また、従来通常使用されている非可逆添加剤は、2D浸透ネットワーク(2D percolating network)によってほぼ不導体に近い~10-11S/cmの非常に低い粉体電気伝導度を示す。このような低い粉体電気伝導度は、正極の電気抵抗を高めるが、この場合、低いCレート(C-rate)では200mAh/g以上の大きい容量を示すが、Cレート(C-rate)が増加すると、大きい抵抗によって充放電が進行されるにつれて性能が急速に減少するので、電池の充放電容量が減少し、高速充放電が難しい限界がある。
【0008】
したがって、リチウム二次電池の電気的性能に優れていると共に、電池の安全性が改善されたリチウム二次電池に対する開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これより、本発明の目的は、リチウム二次電池の電気的性能と安全性を改善できるリチウム二次電池の活性化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述のような問題を解決するために、本発明は、一実施形態において、正極活物質および正極添加剤を含有する正極を具備する電極組立体ならびに電解液が収納されたリチウム二次電池を活性化する方法において、リチウム二次電池をSOC(State of Charge)90%以上で充電する活性化段階を含む。
【0011】
この際、上記活性化段階で、SOC90%以上で充電する過程中、二次電池内部のガスを除去する脱気工程(degassing)を1回以上行うことを特徴とする。
【0012】
一実施形態において、上記活性化段階は、リチウム二次電池のSOCレベルによって2つまたはそれ以上の段階に区分される。また、上記脱気工程は、リチウム二次電池のSOCレベルによって区分される段階の間に行う。
【0013】
さらに他の一実施形態において、上記活性化段階は、リチウム二次電池のSOCレベルによって2つまたはそれ以上の段階に区分され、SOCレベルが低い初期段階では、0.5C以下の低率充電を行い、SOCレベルが高い後期段階では、0.5C超過の高率充電を行う。
【0014】
具体的な一実施形態において、上記脱気工程は、2回または3回行うことが可能である。
【0015】
さらに他の一実施形態において、上記活性化段階は、リチウム二次電池をSOC20%以下で充電する活性化1段階と、活性化1段階が行われたSOC20%超過40%以下範囲で充電する活性化2段階と、活性化2段階が行われたリチウム二次電池をSOC40%超過70%以下範囲で充電する活性化3段階と、活性化3段階が行われたリチウム二次電池をSOC90%以上で充電する活性化4段階と、を含んでもよい。この場合、上記活性化1段階~3段階のうち少なくとも一つ以上の段階後、脱気工程を行うことが可能である。
【0016】
具体的な実施形態において、活性化1段階~3段階後、それぞれ脱気工程を行うことができる。この場合には、3回の脱気工程を行うことになる。
【0017】
さらに他の具体的な実施形態において、活性化1段階は、0.5C以下の条件で低率充電を行い、活性化2段階~4段階は、0.5C超過の条件で高率充電を行う。例えば、上記活性化1段階は、リチウム二次電池を0.01C~0.2Cの範囲の定電流で充電し、活性化2段階~4段階は、リチウム二次電池を0.15C~1Cの範囲の定電流で充電して行う。
【0018】
また、上記脱気工程は、真空状態で進行されることができる。
【0019】
また、上記活性化段階は、リチウム二次電池を加圧する過程をさらに含んでもよく、上記活性化段階は、40℃~70℃の温度条件下で行われ得る。また、上記活性化段階は、3.3V~4.5Vの電圧条件下で行われ得る。
【0020】
しかも、上記正極添加剤は、下記の化学式1で示すリチウムコバルト酸化物であってもよい。
【0021】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0022】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0023】
具体的に、上記化学式1中、Mは、Zn元素であり、qは、0.2≦q≦0.4である化合物であってもよい。
【0024】
また、上記正極添加剤の含有量は、正極合材層の全体重量に対して0.1~5重量%であってもよい。
【0025】
また、上記活性化段階後に、活性化したリチウム二次電池を40℃~80℃温度で熟成するエージング段階を含んでもよい。
【0026】
また、本発明は、一実施形態において、正極と、負極と、正極と負極との間に配置される分離膜を含む電極組立体と、電解質と、を含み、
上記正極は、正極集電体と、正極集電体上に位置し、正極活物質、下記の化学式1で示す正極添加剤、導電材およびバインダーを含む正極合材層と、を具備し、
上記正極活物質は、下記の化学式2で示すリチウムニッケル複合酸化物である、リチウム二次電池を提供する。
【0027】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0028】
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
【0029】
上記化学式1および2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5であり、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0030】
また、上記負極は、負極集電体と、負極集電体上に位置し、負極活物質を含有する負極合材層と、を具備することができ、上記負極活物質は、炭素物質およびシリコン物質を含有してもよい。
【0031】
しかも、上記シリコン物質は、負極合材層100重量部において1~20重量部で含まれ得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、活性化時、中間に脱気工程を行うことによって、副反応ガスを除去することができ、これによって、電極の表面に安定したSEI被膜を形成して、電池性能を向上させることができ、電池の安全性が改善されるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施例を有することができるところ、特定の実施例を詳細な説明に詳細に説明しようとする。
【0034】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0035】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0036】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部だけでなく、下部に配置される場合も含むことができる。
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
<リチウム二次電池の活性化方法>
本発明は、一実施形態において、正極活物質および正極添加剤を含有する正極を具備する電極組立体ならびに電解液が収納されたリチウム二次電池を活性化する方法において、リチウム二次電池をSOC(State of Charge)90%以上で充電する活性化段階を含む。この際、上記活性化段階で、SOC90%以上で充電する過程中、二次電池内部のガスを除去する脱気工程(degassing)を1回以上行うことができる。
【0039】
具体的には、上記活性化段階は、リチウム二次電池をSOC(State of Charge)90%以上、90~100%、90~99.9%、95~100%、または95~99%の範囲で充電することになる。本発明では、上記活性化段階は、リチウム二次電池を実質的にフル充電する場合を含む。
【0040】
本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、初期充電時に負極で発生する非可逆反応によって失われるリチウムイオンを補充するために添加される非可逆添加剤、すなわち正極添加剤を正極に含有するリチウム二次電池を対象とする方法であって、電池の初期充電時に正極に含有された正極添加剤の脱リチウム化(delithiation)効率を増加させる効果がある。
【0041】
このために、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、正極に正極活物質と共に正極添加剤を含有するリチウム二次電池に対してSOC100%で充電する活性化段階を含み、上記活性化段階の中間にリチウム二次電池内部のガスを除去する脱気工程(degassing)を1回以上行う構成を有する。一般的に、リチウム二次電池は、正極の合材層に含有された正極添加剤の脱リチウム化および/または分解によって内部にガスが多量生成されるが、これを除去しなければ、電極組立体の体積膨張などを誘発して、電池性能の低下を引き起こすことができる。本発明では、活性化段階の中間に脱気工程を1回以上行うことによって、電極組立体の体積膨張を防止することができ、充電中に発生する総ガス発生量の含有量を減らすことができる。すなわち、活性化段階の中間の脱気工程によって副反応ガスを除去して、電解液と電極界面の間の抵抗減少によって堅固なSEI被膜を形成して、電池の性能を向上させることができる。
【0042】
一例において、上記活性化段階は、リチウム二次電池のSOCレベルによって2つまたはそれ以上の段階に区分される。また、上記脱気工程は、リチウム二次電池のSOCレベルによって区分される段階の間に行う。具体的な例において、上記脱気工程は、2回または3回行うことが可能である。
【0043】
さらに他の一実施形態において、上記活性化段階は、リチウム二次電池のSOCレベルによって2つまたはそれ以上の段階に区分され、SOCレベルが低い初期段階では、0.5C以下の条件で低率充電を行い、SOCレベルが高い後期段階では、0.5C超過条件で高率充電を行うことができる。具体的には、初期段階では、0.1~0.5Cの範囲、0.1~0.4Cの範囲または0.15~0.3Cの範囲で低率充電を行う。また、SOCレベルが高い後期段階では、0.5超過10C以下の範囲、0.8~5Cの範囲、または0.8~1.2Cの範囲の条件で高率充電を行う。これは、充電初期には、低率充電を通じてSEI被膜の安定した形成を誘導し、充電後期には、高率充電を通じて工程効率を上げるためである。
【0044】
一方、一実施形態において、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法において活性化段階は、合計で4段階を含んでもよい。具体的な例において、本発明は、リチウム二次電池をSOC20%以下で充電する活性化1段階と、活性化1段階が行われたSOC20%超過40%以下で充電する活性化2段階と、活性化2段階が行われたリチウム二次電池をSOC40%超過70%以下で充電する活性化3段階と、活性化3段階が行われたリチウム二次電池をSOC100%で充電する活性化4段階と、を含んでもよい。この場合、上記活性化1段階~3段階のうち少なくとも一つ以上の段階後、脱気工程を行うことが可能である。
【0045】
リチウム二次電池は、最初充電が行われると、正極に含有された正極活物質および正極添加剤などのリチウム遷移金属酸化物に由来するリチウムイオンが負極の炭素電極に移動することになるが、上記リチウムイオンは、反応性が強いので、炭素負極と反応してLiCO、LiO、LiOHなどの化合物を形成し、このような化合物によって負極の表面にSEI被膜が形成される。SEI被膜は、電池のイオン移動量が多くなるときに形成される不導体であり、SEI被膜が形成されると、以後の二次電池充電時、負極でリチウムイオンと他の物質が反応することを阻止し、一種のイオントンネルの機能を行うことで、リチウムイオンだけを通過させる役割をする。このようなSEI被膜が形成されたら、リチウムイオンは、負極や他の物質と反応しないので、リチウムイオンの量が可逆的に維持され、二次電池の充放電が可逆的に維持されて、二次電池の寿命が向上することができ、高温で放置されたり充放電が繰り返し行われる場合にも、容易に崩壊しないので、電池の厚さの変化も少なく発生することになる。
【0046】
本発明の活性化1段階は、正極の正極活物質および/または正極添加剤に由来するリチウムイオンが負極の表面にSEI被膜(solid electrolyte interphase)を形成する段階と言える。また、活性化2段階は、活性化1段階が行われたリチウム二次電池に電流を印加して正極添加剤のリチウムイオンの脱リチウム化と分解を誘導することによって、電池を充電させると同時に、電池の内部に正極添加剤によって由来するガスを形成する段階と言える。また、活性化3段階および活性化4段階は、活性化2段階が行われたリチウム二次電池に電流を印加して、一定水準でSOC(State of Charge)が充足するように、電池の初期充電を終える段階と言える。
【0047】
一方、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、上記活性化1段階~3段階のうち少なくとも一つの段階後、脱気工程を行うことができる。または、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、それぞれの活性化1段階~3段階後、脱気工程を順次に行うことができる。具体的な例において、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、
活性化1段階→脱気工程→活性化2段階→活性化3段階→活性化4段階;
活性化1段階→活性化2段階→脱気工程→活性化3段階→活性化4段階;
活性化1段階→脱気工程→活性化2段階→脱気工程→活性化3段階→活性化4段階;
活性化1段階→脱気工程→活性化2段階→活性化3段階→脱気工程→活性化4段階;
活性化1段階→活性化2段階→脱気工程→活性化3段階→脱気工程→活性化4段階;または
活性化1段階→脱気工程→活性化2段階→脱気工程→活性化3段階→脱気工程→活性化4段階などを行うことができる。
【0048】
一方、上記活性化段階では、リチウム二次電池を加圧する過程を含んでもよい。具体的な例において、化学式1の正極添加剤を含むリチウム二次電池の活性化工程において、充電過程中、リチウム二次電池を加圧する過程を含むことによって、活性化工程で発生するガスが電池内部に残存せずに、電池の外部に排出されるようにすることができる。すなわち、リチウム二次電池をSOC100%で充電する過程は、所定の圧力が加えられた加圧条件で行われ得る。ここで、リチウム二次電池を加圧することは、電極組立体が収容された部分を加圧することを意味し、上記リチウム二次電池を加圧して活性化工程中に発生するガスをガスポケット部に捕集することができる。
【0049】
上記加圧過程は、加圧治具のような通常の加圧部材を利用して上記リチウム二次電池を加圧することができる。この際、リチウム二次電池に加えられる圧力は、0kgf/cm超過20kgf/cm以下の範囲であってもよく、または0.5kgf/cm~15kgf/cmの範囲または1kgf/cm~10kgf/cmの範囲であってもよい。上記圧力が極めて高い場合、過度な圧力によって電池が損傷する恐れがある。
【0050】
また、上記脱気工程は、リチウム二次電池内部のガスを除去するのであり、電池分野で一般的に使用される方法が制限されずに行われ得る。脱気工程でも、上記で説明した加圧する過程を含んでもよい。例えば、活性化段階でガスポケット部をピアッシング(piercing)してホールを形成し、上記リチウム二次電池が収容されているチャンバーを真空状態に作って、リチウム二次電池ガスをホールを通じて外部に排出させて除去することができる。そして、開放されている部分を封止することができる。
【0051】
他の一例において、各活性化段階後、脱気工程を順次に行う場合、各脱気工程で互いに同じ条件でガスを除去することができ、または互いに異なる条件でガスを除去することができる。
【0052】
上記で説明したように、活性化2段階は、正極添加剤によって由来するガスが形成される段階であり、活性化2段階~4段階では、活性化1段階より長時間脱気工程を行うことができ、または、充電時、さらに大きい圧力を印加することができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0053】
また、上記活性化1段階は、0.5C以下の条件で低率充電を行い、活性化2段階~4段階は、0.5C超過の条件で高率充電を行うことができる。具体的には、上記活性化1段階は、リチウム二次電池を0.1~0.5Cの範囲、0.1~0.4Cの範囲または0.15~0.3Cの範囲の条件で充電を行うことができる。また、活性化2段階~4段階は、リチウム二次電池を0.5超過10C以下の範囲、0.8~5Cの範囲、または0.8~1.2Cの範囲の条件で充電を行うことができる。これは、活性化1段階では、低い定電流で充電を行い、活性化2段階~4段階では、相対的に高い定電流で充電することによって、電池の安定性および工程効率を同時に高めることができる。
【0054】
また、上記活性化段階は、0.1V~4.5Vの電圧条件下で行われ得る。上記活性化段階で電圧条件は、充電電圧で、一例として、上記活性化1段階は、3.3V~3.6Vの電圧条件下で行われ得、活性化2段階~活性化4段階は、それぞれ3.4V~3.7Vの電圧条件下で行われ得る。
【0055】
本発明は、各活性化段階の電圧条件を上記のように制御することによって、活性化1段階でSEI被膜を均一に形成することができ、SEI被膜が形成された後、活性化2段階~4段階で正極活物質の酸化還元反応、すなわち正極活物質の可逆反応率を低く維持しつつ、正極添加剤の相変化を促進して、初期充電時、正極添加剤の脱リチウム化(delithiation)を高い割合で誘導することができる。また、活性化2段階~4段階で、上述した電圧条件を外れる低い電圧条件で充電が行われて、正極添加剤の非可逆反応を十分に誘導しないことを防止することができ、上述した電圧条件を外れる高い電圧で充電が行われて、電池の寿命と容量が低下し、過量のガスが瞬間的に発生して安全性が低くなる問題を予防することができる。
【0056】
また、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、各活性化段階を行うことで段階的にSOCを高めることができる。例えば、活性化1段階が行われたリチウム二次電池のSOCは、SEI被膜の形成のために10%以下であってもよく、活性化2段階が行われたリチウム二次電池のSOCは、正極添加剤の非可逆反応を十分に誘導して電池内ガスが発生するように、10%超過40%未満であってもよく、活性化3段階が行われたリチウム二次電池のSOCは、40%超過70%以下であってもよい。
【0057】
一例として、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、活性化1段階のSOCを10~18%に調節し、活性化2段階のSOCを30~38%に調節し、活性化3段階のSOCを60~70%に調節し、活性化4段階のSOCを100%に調節することができる。
【0058】
また、各活性化段階は、電極の抵抗を低減するために、常温より高い温度条件で行われ得る。具体的に、各活性化段階は、それぞれ40℃~70℃の温度条件下で行われ得、より具体的には、それぞれ40℃~60℃;45℃~60℃;50℃~65℃;50℃~60℃または52℃~58℃の温度条件下で行われ得る。本発明は、各活性化段階を上記範囲を満たす温度条件下で行うことによって、正極のより低い抵抗条件で二次電池を充電することができるので、活性化段階の効率が増加することができ、活性化1段階で形成されるSEI被膜の均一度を向上させることができる。
【0059】
これと共に、各活性化段階の実行時間は、それぞれ1分~100分間行われ得、具体的には、それぞれ1分~100分;1分~60分;1分~40分;10分~40分;20分~40分;10分~30分;1分~10分;および2分~9分間行われ得る。
【0060】
一例として、上記活性化1段階は、2~8分間行われ得、活性化2段階は、30~39分間行われ得、活性化3段階は、21~29分間行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0061】
また、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、活性化3段階後、活性化したリチウム二次電池を熟成するエージング段階をさらに含んでもよい。上記エージング段階は、熱エネルギーと電気化学エネルギーによってSEI被膜がより安定化され、均一な厚さで再形成されるようにすることができる。このために、上記エージング段階は、40~80℃、50~70℃、55~65℃、または約60℃で0.5時間~30時間の間行うことができる。
【0062】
しかも、活性化4段階後または上記エージング段階後、リチウム二次電池内で発生したガスを除去するために、脱気工程が行われ得る。電池の内部に発生したガスは、電池のスウェリング現象を引き起こすことができるので、脱気工程を行うことで発生したガスを除去することができる。
【0063】
<リチウム二次電池>
本発明は、一実施形態において、
正極と、
負極と、
正極と負極との間に配置される分離膜を含む電極組立体と、
電解質と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【0064】
この際、上記正極は、正極集電体と、上記正極集電体上に正極スラリーを塗布、乾燥およびプレスして製造される正極合材層と、を含み、上記正極合材層は、正極活物質、正極添加剤、導電材およびバインダーを含有する構成を有する。
【0065】
具体的な例において、上記正極添加剤は、下記の化学式1で示すリチウムコバルト酸化物であってもよい:
【0066】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0067】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0068】
具体的に、上記化学式1において、Mは、Zn元素であり、qは、0.2≦q≦0.4であってもよい。
【0069】
上記正極添加剤は、リチウムを過多含有して、初期充電時に負極での非可逆的な化学的物理的反応によって発生したリチウム消耗にリチウムを提供することができ、これによって、電池の充電容量が増加し、非可逆容量が減少して、寿命特性が改善されることができる。
【0070】
このような正極添加剤として、本発明は、化学式1で示すリチウムコバルト酸化物を含んでもよく、この際、化学式1で示すリチウムコバルト酸化物は、LiCoO、LiCo0.5Zn0.5、LiCo0.7Zn0.3などを単独で使用したり併用することができる。上記化学式1で示すリチウムコバルト酸化物は、当業界で通常使用されるニッケル含有酸化物と比較してリチウムイオンの含有量が高く、脱リチウム化に必要な電圧範囲が低いため、電池の活性化時に正極活物質の反応に影響を与えることなく、リチウムイオンを脱離させることができるという利点がある。
【0071】
また、上記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物は、正方晶系(tetragonal)結晶構造を有していてもよく、この中でも、P4/nmcの空間群を有していてもよい。一般的に、正方晶系結晶構造を有するリチウム金属酸化物は、コバルト元素と酸素元素とが成す四面体構造の歪みを有していて、構造的に不安定な構造を有し、このような構造的不安定性によって電池の活性化後の充電時にも、酸素ガスを含むガスが発生する。本発明では、特定範囲を満たす電流および電圧条件下で3段階の活性化段階を連続的に行うことで、初期充電時に正極添加剤の分解および/または脱リチウム化効率を顕著に向上させることができるので、リチウム二次電池の充放電容量を向上させることができると共に、初期充電後の充放電時に発生する酸素ガス(O)の量を顕著に低減させることができる。
【0072】
また、上記正極添加剤の含有量は、正極合材層の全体100重量部に対して0.1~5重量部であってもよく、具体的には、0.1~3重量部;または1~3重量部であってもよい。
【0073】
しかも、上記合材層は、正極活物質と正極添加剤とともに、導電材、バインダー、添加剤などをさらに含んでもよい。
【0074】
一方、本発明において使用される正極は、集電体上に形成された合材層を具備し、上記合材層は、電気的活性を示す正極活物質と非可逆容量を付与する正極添加剤を含む。
【0075】
上記正極合材層は、可逆的なインターカレーションとデインターカレーションが可能な正極活物質として下記の化学式2で示すリチウムニッケル複合酸化物を含んでもよい:
【0076】
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
【0077】
上記化学式2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0078】
上記化学式2で示すリチウムニッケル複合酸化物は、リチウム、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む複合金属酸化物であり、場合によっては、他の遷移金属(M)がドープされた形態を有していてもよい。例えば、上記正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.9Co0.05Mn0.05、LiNi0.8Co0.1Mn0.05Al0.05およびLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含んでもよい。一例として、上記正極活物質は、化学式2で示すリチウムニッケル複合金属酸化物としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2およびLiNi0.8Co0.1Mn0.1をそれぞれ単独で使用したりまたは併用することができる。
【0079】
また、上記正極活物質の含有量は、合材層100重量部に対して85~95重量部であってもよく、具体的には、88~95重量部、90~95重量部、86~90重量部または92~95重量部であってもよい。
【0080】
この際、上記導電材は、正極の電気伝導性などの性能を向上させるために使用でき、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を使用することができる。例えば、上記導電材は、アセチレンブラックを含んでもよい。
【0081】
また、上記導電材は、合材層100重量部に対して1~10重量部で含んでもよく、具体的には、2~8重量部;または2~6重量部で含んでもよい。
【0082】
また、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含んでもよい。一例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)を含んでもよい。
【0083】
また、上記バインダーは、合材層全体100重量部に対して、1~10重量部で含んでもよく、具体的には、1~8重量部;または1~6重量部で含んでもよい。
【0084】
これと共に、上記合材層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には、50μm~300μmであってもよく、より具体的には、100μm~200μm;80μm~150μm;120μm~170μm;150μm~300μm;200μm~300μm;または150μm~190μmであってもよい。
【0085】
また、上記正極は、集電体として当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものを使用することができる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0086】
また、本発明において使用されるリチウム二次電池の負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じて正極と同じ導電材、有機バインダー高分子、添加剤などが選択的にさらに含まれ得る。
【0087】
また、上記負極活物質は、例えば、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure;炭素の6角形ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などの炭素および黒鉛材料や;LixFe(0≦x≦1)、LixWO(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’、Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、BiおよびBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などが使用できる。
【0088】
一例として、上記負極活物質は、黒鉛とケイ素(Si)含有粒子を共に含んでもよく、上記黒鉛としては、層状結晶構造を有する天然黒鉛と等方構造を有する人造黒鉛のうちいずれか一つ以上を含んでもよく、上記ケイ素(Si)含有粒子としては、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であり、ケイ素(Si)粒子、SiO粒子、SiO粒子、またはこれらの粒子のうち一つ以上の粒子が混合されたものを含んでもよい。
【0089】
この場合、上記負極活物質は、全体100重量部に対して黒鉛80~95重量部;およびケイ素(Si)含有粒子1~20重量部で含んでもよい。本発明は、負極活物質に含まれた黒鉛とケイ素(Si)含有粒子の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時のリチウム消耗量と非可逆容量損失を減らし、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0090】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有していてもよく、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μmまたは140μm~160μmの平均厚さを有していてもよい。
【0091】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0092】
また、上記分離膜は、正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜は、当業界で通常使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ガラス繊維;またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用でき、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によってコートされた複合分離膜が使用されることもできる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。また、上記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは、平均5~300μmであってもよい。
【0093】
一方、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収納されたり、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型電池に収納されるが、これに限定されるものではない。
【0094】
また、本発明による上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなってもよく、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。
【0095】
具体的に、上記電解質は、下記の化学式3で示す化合物を含有することができる:
【0096】
[化学式3]
【化2】
【0097】
上記化学式3中、
は、置換または非置換のC1-4のアルキルアミン基;置換または非置換の4~7換のヘテロアルキル基;または置換または非置換の4~7換のヘテロアリール基であり、かつ、上記ヘテロアルキル基およびヘテロアリール基は、1個以上の窒素原子(N)を含み、
nは、1~4の整数である。
【0098】
具体的に、上記化学式3で示す化合物において、上記R1は、ジメチルアミン基、ジエチルアミン基、ジイソプロピルアミン基、ピロリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピロリル基またはイミダゾリル基であり、上記ピロリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピロリル基およびイミダゾリル基に存在する一つ以上の水素は、非置換されるか、C1-4のアルキル基またはニトリル基で置換されることができ、nは、1または2である。
【0099】
一例として、上記化学式3で示す化合物は、下記の化学式4で示す化合物であってもよい:
【0100】
[化学式4]
【化3】
【0101】
上記化学式4で示す化合物は、末端に三重結合を含み、負極の表面に形成されるSEI被膜を強化することができ、電解液内に存在する金属異物などの不純物を吸着して除去することによって、電解液の副反応を抑制することができる。また、上記化合物のR1は、アルキルアミン基、ヘテロアルキル基またはヘテロアリール基に含有された窒素原子を利用してリチウム塩を安定化させることによって、電解液内部にHF、PFなどの分解産物が生成されることを抑制することができるので、酸性であるHF、PFなどによって電池が劣化し、電圧が低くなるのを防止することができる。何よりも、上記R1は、正極合材層に含有された正極添加剤の反応サイト(reaction site)を安定化させて、正極添加剤による正極の電極抵抗が低減されるのを防止する一方で、電池の充放電容量を向上させることができる。
【0102】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0103】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合材などが使用できる。
【0104】
上記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNi、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0105】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用できる。
【0106】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭素ガスをさらに含んでもよく、フルオロエチレンカーボネート(FEC:Fluoro-Ethylene Carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)などをさらに含んでもよい。
【0107】
しかも、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収納されたり、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型に収納される形態であってもよい。例えば、本発明によるリチウム二次電池は、パウチ型の電池であってもよい。
【0108】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0109】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0110】
<製造例.リチウム二次電池の製造>
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1 95重量部、正極添加剤としてLiCo0.7Zn0.3 0.9重量部、バインダーとしてPVdF 1.6重量部、導電材としてカーボンブラック2.5重量部を称量して、N-メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して、正極合材層用スラリーを製造した。アルミホイルに、上記合材層用スラリーを塗布し、乾燥させた後、圧延して、正極合材層(平均厚さ:130μm)を具備する正極を形成した。
【0111】
炭素系活物質として天然黒鉛85重量部、シリコン系活物質としてSiO(酸化ケイ素)5重量部、導電材としてカーボンブラック6重量部およびバインダーとしてPVDF 4重量部をN-メチルピロリドン溶媒に混合して、負極合材層用スラリーを製造し、これを銅ホイルに塗布して、負極合材層(平均厚さ:180μm)を具備する負極を製造した。
【0112】
製造された各正極と負極との間には、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚さ:約16μm)を介在して積層させて、電極組立体を製造した。電極組立体を電池ケースの内部に位置させた後、ケースの内部に電解液を注入した後、電解液が十分に含浸されるように、常温で3日間放置して、リチウム二次電池を製造した。電解液として下記の化学式4で示した化合物を電解液添加剤として含有するE2DVCを注入して、フルセル(full cell)形態のセルを製作した。この際、化学式4で示した化合物は、電解液を基準として1重量%を含有するように称量した。
【0113】
ここで、「E2DVC」とは、カーボネート系電解液の一種であり、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1(体積比)の混合物にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF、1.0M)およびビニレンカーボネート(VC、2重量%)を混合した溶液を意味する。
【0114】
[化学式4]
【化4】
【0115】
<実施例1~6.リチウム二次電池の活性化>
製造例で製造されたリチウム二次電池を対象に活性化段階を行った。この際、各活性化段階を行う温度は、55℃で行われた。一方、活性化1段階は、0.2Cと3.4V、活性化2段階~4段階は、1C、3.6Vの条件下で行われた。各活性化段階での時間、脱気工程の有無および活性化段階での加圧工程の有無を表1に示した。一方、リチウム二次電池を加圧治具で加圧した状態で活性化段階を行うことで、リチウム二次電池内部のガスをガスポケット部に捕集した。そして、脱気工程では、ガスポケット部をピアッシングしてホールを形成し、-5~-90kPaの負圧を加えて、ガスポケット部に捕集されたガスを除去した。活性化段階を終えたリチウム二次電池は、60℃の温度で24時間の間エージングを行い、エージングを終えたリチウム二次電池は、電池内のガスを脱気した。
【0116】
<比較例1.リチウム二次電池の活性化>
製造例で製造されたリチウム二次電池を4.3Vに到達するまで0.3Cで10時間充電して、二次電池の活性化段階を行った。また、活性化段階後、治具を利用して電池内のガスを脱気した。
【0117】
【表1】
【0118】
<実験例>
活性化方法によるリチウム二次電池の性能差異を評価するために、下記のような実験を行った。
【0119】
イ)活性化段階で発生したガスの含有量の分析
実施例および比較例によるリチウム二次電池の活性化工程(formation)時に内部で発生するガスの含有量と総ガスの含有量を分析した。そして、その結果は、下記の表2に示した。
【0120】
【表2】
【0121】
上記表2に示されたように、実施例の条件によって活性化したリチウム二次電池は、比較例によって活性化したリチウム二次電池と比べて総ガス発生量が多かった。また、各活性化段階後、脱気工程を行った実施例1が、実施例2~6と比べて総ガス発生量が多かった。しかも、活性化段階で脱気工程を合計で3回実施した実施例2、4および5を見ると、活性化1段階後、脱気工程を実施した実施例2と4のリチウム二次電池が、実施例5のリチウム二次電池と比べて総ガス発生量が多かった。一般的に、活性化1段階でSEI形成が最も活発なので、活性化1段階後、脱気工程を実施した実施例2と4のリチウム二次電池が、実施例5のリチウム二次電池と比べて総ガス発生量が多いと見られる。
【0122】
実施例の条件によって活性化したリチウム二次電池は、活性化段階中、脱気工程を行うことで、リチウム二次電池内で発生するガスを容易に除去することができる。特に、このような過程を通じて二次電池内で発生するガスがSEI形成を妨害したり副反応で参加するのを防止して、リチウム二次電池の性能を向上させることができるものと見られる。
【0123】
ロ)初期抵抗値の評価
実施例および比較例で活性化したリチウム二次電池をそれぞれSOC50%で2CのCレート(C-rate)で10秒間放電して抵抗を測定して、その結果を表3に示した。
【0124】
【表3】
【0125】
上記表3に示されたように、実施例によって活性化したリチウム二次電池の場合、比較例と比べて抵抗値が低いことが確認された。特に、活性化1段階後、脱気工程を実施した実施例1~4のリチウム二次電池の抵抗値が実施例5~6と比べて低かった。これは、リチウム二次電池内部の副反応ガスを除去して電解液の含浸性が増加し、これによって、均一な電極-電解質反応を引き起こしたと判断される。
【0126】
ハ)サイクル寿命性能の評価
実施例および比較例で活性化したリチウム二次電池をそれぞれ0.1Cの放電電流で終止電圧2Vまで放電させ、単位質量当たりの初期充放電容量を測定した。
【0127】
次に、45℃でそれぞれ0.3Cの条件で100回充放電を繰り返し行うことで、充放電時の容量を測定し、100回充放電を行った後の充放電容量保持率を算出した。その結果は、下記の表4に示した。
【0128】
【表4】
【0129】
上記表4を参照すると、実施例によって活性化したリチウム二次電池は、初期充放電容量が100mAh以上であり、100回充放電後の容量保持率が90%以上である一方で、比較例によって活性化したリチウム二次電池は、初期充放電容量および100回充放電後の容量保持率が実施例と比べて低いことが確認された。
【0130】
実施例によって活性化したリチウム二次電池の場合、活性化時、SOC増加によって副反応ガスを除去することによって、安定的に形成されたSEI被膜がさらなる電解質分解反応などによって分解されずに、良好に維持された。一方、比較例の場合、活性化工程中、脱気工程を行わないので、活性化工程中、リチウム二次電池内で発生するガスがSEI形成を妨害したりまたは副反応に参加したと見られる。これによって、比較例のリチウム二次電池は、SEI被膜の形成反応が微小であり、これによるサイクル中、電解質分解反応が深化されて、サイクル退化を起こしたと予測される。
【0131】
このような結果から、本発明によるリチウム二次電池の活性化方法は、活性化段階中、二次電池内部のガスを除去する脱気工程を1回以上行うことによって、充放電時に発生する総ガス量を低減させることができるので、電池の安全性が改善されるという利点がある。それだけでなく、リチウム二次電池の充放電容量および繰り返し使用後の容量保持率を向上させることができる。
【0132】
以上では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0133】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。