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特許7595994信号処理装置、飛行体、地球局、信号処理システム、方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】信号処理装置、飛行体、地球局、信号処理システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/06 20060101AFI20241202BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20241202BHJP
   G01R 29/08 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
G01S5/06
H04B1/16 Z
G01R29/08 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024073449
(22)【出願日】2024-04-30
【審査請求日】2024-08-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2023年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、経済安全保障重要技術育成プログラム/船舶向け通信衛星コンステレーションによる海洋状況把握技術の開発・実証、海洋DX推進・海洋状況把握に向けた超小型衛星コンステレーションシステムの開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】523129697
【氏名又は名称】株式会社アークエッジ・スペース
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】安達 正一郎
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/259500(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0259033(US,A1)
【文献】特開2009-180540(JP,A)
【文献】特開2019-090791(JP,A)
【文献】国際公開第2020/138108(WO,A1)
【文献】特開平07-270511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0004144(US,A1)
【文献】米国特許第05982164(US,A)
【文献】特開2004-325391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00 - G01S 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の飛行体により時刻又は位置を異ならせて所定時間受信された信号を、所定のデータ数をそれぞれ有する各時刻又は位置の時間領域データ列にそれぞれ変換するAD変換装置と、
前記各時刻又は位置の時間領域データ列を、前記所定のデータ数を高速フーリエ変換(FFT)点数で除した数のセットに分けて各セットに対してそれぞれFFT処理し、当該FFT点数において前記各セットのFFT結果を加算し、当該加算結果を前記FFT点数での周波数領域FFT結果データ列として出力するFFT処理装置であって、前記FFT処理、前記加算、及び前記出力を複数の異なるFFT点数のそれぞれで行うFFT処理装置と、
同じFFT点数での前記AD変換装置のサンプリング周波数と前記同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎の周波数領域FFT結果データ列において、第1の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列と、第2の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、又は、第1の位置の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列と、第2の位置の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、前記乗算結果を逆FFT処理して相関を算出する相関算出装置であって、当該算出を前記複数の異なるFFT点数毎に実行する相関算出装置と、
前記相関が閾値以上であるデータ列を選別するデータ列選別装置であって、前記データ列は、同じFFT点数及び前記区分において閾値以上の前記相関を有する異なる時刻間又は異なる位置間の一対の周波数領域FFT結果データ列、又は、前記一対の周波数領域FFT結果データ列に対応する一対の時間領域データ列である、データ列選別装置と、
を備えた、信号処理装置。
【請求項2】
前記データ列選別装置は、前記相関を一定誤報確率(CFAR)処理して前記データ列を選別する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記信号は、前記1以上の飛行体において異なる中心周波数で受信した信号を含む、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記信号処理装置は、前記1以上の飛行体に設けられ、時刻又は位置を異ならせて所定時間、所定の中心周波数かつ所定の帯域幅の観測帯域で信号を受信する受信器であって、前記中心周波数を切り替えて異なる観測帯域で前記信号を受信する受信器を備え、
前記AD変換装置は、前記観測帯域毎に、受信された信号を、各時刻又は位置の時間領域データ列にそれぞれ変換する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
請求項1~の何れかの信号処理装置と、
前記データ列を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記データ列を地球局に送信する送信器と、
を備えた、飛行体。
【請求項6】
請求項1~の何れかの信号処理装置を備えた地球局。
【請求項7】
1以上の飛行体と地球局とを備えた信号処理システムであって、
前記1以上の飛行体により時刻又は位置を異ならせて所定時間受信された信号を、所定のデータ数をそれぞれ有する各時刻又は位置の時間領域データ列にそれぞれ変換するAD変換装置と、
前記各時刻又は位置の時間領域データ列を、前記所定のデータ数を高速フーリエ変換(FFT)点数で除した数のセットに分けて各セットに対してそれぞれFFT処理し、当該FFT点数において前記各セットのFFT結果を加算し、当該加算結果を前記FFT点数での周波数領域FFT結果データ列として出力するFFT処理装置であって、前記FFT処理、前記加算、及び前記出力を複数の異なるFFT点数のそれぞれで行うFFT処理装置と、
同じFFT点数での前記AD変換装置のサンプリング周波数と前記同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎の周波数領域FFT結果データ列において、第1の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列と、第2の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、又は、第1の位置の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列と、第2の位置の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、前記乗算結果を逆FFT処理して相関を算出する相関算出装置であって、当該算出を前記複数の異なるFFT点数毎に実行する相関算出装置と、
前記相関が閾値以上であるデータ列を選別するデータ列選別装置であって、前記データ列は、同じFFT点数及び前記区分において閾値以上の前記相関を有する異なる時刻間又は異なる位置間の一対の周波数領域FFT結果データ列、又は、前記一対の周波数領域FFT結果データ列に対応する一対の時間領域データ列である、データ列選別装置と、
を備えた、信号処理システム。
【請求項8】
前記各装置を前記飛行体又は前記地球局の一方が備えている、
請求項に記載の信号処理システム。
【請求項9】
前記各装置が、前記飛行体と前記地球局とに分散して設けられている、
請求項に記載の信号処理システム。
【請求項10】
信号処理の方法であって、
1以上のコンピュータが、
1以上の飛行体により時刻又は位置を異ならせて所定時間受信された信号を、所定のデータ数をそれぞれ有する各時刻又は位置の時間領域データ列にそれぞれAD変換し、
前記各時刻又は位置の時間領域データ列を、前記所定のデータ数を高速フーリエ変換(FFT)点数で除した数のセットに分けて各セットに対してそれぞれFFT処理し、当該FFT点数において前記各セットのFFT結果を加算し、当該加算結果を前記FFT点数での周波数領域FFT結果データ列として出力し、前記FFT処理、前記加算、及び前記出力を複数の異なるFFT点数のそれぞれで行い、
同じFFT点数での、AD変換におけるサンプリング周波数と前記同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎の周波数領域FFT結果データ列において、第1の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列と、第2の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、又は、第1の位置の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列と、第2の位置の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、前記乗算結果を逆FFT処理して相関を算出し、当該算出を前記複数の異なるFFT点数毎に実行し、
前記相関が閾値以上であるデータ列を選別し、前記データ列は、同じFFT点数及び前記区分において閾値以上の前記相関を有する異なる時刻間又は異なる位置間の一対の周波数領域FFT結果データ列、又は、前記一対の周波数領域FFT結果データ列に対応する一対の時間領域データ列である、
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法を1以上のコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、観測した電波の信号処理を行う信号処理装置、飛行体、地球局、信号処理システム、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波の発信源の位置を推定するために衛星システムが用いられている(例えば、非特許文献1、2)。このような従来の衛星システムでは、複数の衛星で比較的狭帯域の電波収集を行い、その信号を地上局にダウンリンク伝送し、地上局において信号処理を行い、発信源の位置を推定していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】単一衛星によるドップラ変化率を用いた電波源の位置決定、Fucheng Guo, ’Space Electronic Reconnaissance Localization Theories and Methods’6.3 章
【文献】2機衛星による電波源のTDOA―FDOA 位置決定、Fucheng Guo, ’Space Electronic Reconnaissance Localization Theories and Methods’5.2 章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行体において電波等の信号を監視するため、周波数帯が未知の信号を受信しようとする場合、信号の観測帯域を広帯域にする必要がある。しかし、観測帯域を広帯域とすると、ノイズが大きくなり、SN比が劣化することから、受信した広帯域の信号を周波数領域のデータ列に変換しても、当該データ列のどこに未知の信号が含まれるかが分からず、当該広帯域の信号の中から未知の信号に含まれる信号を検出することが困難であった。
【0005】
本発明の実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、受信したSN比が小さい信号の中から、周波数帯が未知の信号を含むデータ列を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態の信号処理装置は、1以上の飛行体により時刻又は位置を異ならせて所定時間受信された信号を、各時刻又は位置の時間領域データ列にそれぞれ変換するAD変換装置と、前記各時刻又は位置の時間領域データ列を複数の異なる高速フーリエ変換(FFT)点数でそれぞれFFT処理し、各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ出力するFFT処理装置と、同じFFT点数での異なる時刻又は位置の周波数領域FFT結果データ列間の相関を、前記AD変換装置のサンプリング周波数と前記同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎に算出する相関算出装置であって、当該算出を前記複数の異なるFFT点数毎に実行する相関算出装置と、前記相関が閾値以上であるデータ列を選別するデータ列選別装置と、を備える。
【0007】
前記データ列は、前記相関が閾値以上であるFFT点数での周波数領域FFT結果データ列としても良い。
【0008】
前記データ列は、前記相関が閾値以上であるFFT点数での周波数領域FFT結果データ列に対応する前記時間領域データ列としても良い。
【0009】
前記相関算出装置は、同じFFT点数での前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列において、第1の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列と、第2の時刻の前記区分毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、当該乗算結果を逆FFT処理して前記相関を算出しても良い。
【0010】
前記データ列選別装置は、前記相関を一定誤報確率(CFAR)処理して前記データ列を選別しても良い。
【0011】
本発明の一実施形態の飛行体は、上記の何れかの信号処理装置と、前記データ列を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記データ列を地球局に送信する送信器と、を備える。
【0012】
本発明の一実施形態の地球局は、上記の何れかの信号処理装置を備える。
【0013】
本発明の一実施形態の信号処理システムは、1以上の飛行体と地球局とを備えた信号処理システムであって、前記1以上の飛行体により時刻又は位置を異ならせて所定時間受信された信号を、各時刻又は位置の時間領域データ列にそれぞれ変換するAD変換装置と、
前記各時刻又は位置の時間領域データ列を複数の異なる高速フーリエ変換(FFT)点数でそれぞれFFT処理し、各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ出力するFFT処理装置と、同じFFT点数での異なる時刻又は位置の周波数領域FFT結果データ列間の相関を、前記AD変換装置のサンプリング周波数と前記同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎に算出する相関算出装置であって、当該算出を前記複数の異なるFFT点数毎に実行する相関算出装置と、前記相関が閾値以上であるデータ列を選別するデータ列選別装置と、を備える。
【0014】
前記各装置を前記飛行体又は前記地球局の一方が備えていても良い。
【0015】
前記各装置が、前記飛行体と前記地球局とに分散して設けられていても良い。
【0016】
本発明の一実施形態の信号処理の方法であって、1以上のコンピュータが、1以上の飛行体により時刻又は位置を異ならせて所定時間受信された信号を、各時刻又は位置の時間領域データ列にそれぞれAD変換し、前記各時刻又は位置の時間領域データ列を複数の異なる高速フーリエ変換(FFT)点数でそれぞれFFT処理し、各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ出力し、同じFFT点数での異なる時刻又は位置の周波数領域FFT結果データ列間の相関を、前記AD変換装置のサンプリング周波数と前記同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎に算出し、当該算出を前記複数の異なるFFT点数毎に実行し、前記相関が閾値以上であるデータ列を選別する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、受信したSN比が小さい信号の中から、周波数帯が未知の信号を含むデータ列を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る信号処理システムの構成を示す図である。
図2】受信器の詳細構成を示す図である。
図3】飛行体(小型衛星)の運動とデータサンプリングの関係を示す図である。
図4】デジタル信号処理装置の詳細構成を示す図である。
図5】FFT処理装置のFFT処理を説明するための図である。
図6】各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列を区分単位で見たときの概念図である。
図7】相関算出装置の相関算出方法を説明するための図である。
図8】データ列選別装置のデータ選別処理を説明するための図である。
図9】第1実施形態の信号処理装置を含む信号処理システムの動作フローチャートの一例である。
図10】第2実施形態に係る信号処理システムの構成を示す図である。
図11】第3実施形態に係る複数の飛行体、地球局、及び発信源の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る信号処理装置、飛行体、地球局、信号処理システム、方法、及びプログラムについて、図面を参照して説明する。
【0020】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1は、第1実施形態に係る信号処理システムの構成を示す図である。図1に示す信号処理システム1は、電波等の信号を受信し、受信した信号に対して信号処理を行うシステムである。この信号処理システム1は、以下で示すように、受信した信号の中から、周波数帯域が未知である信号を含むデータ列を推定する。信号処理システム1は、電波監視システムとして用いることができる。
【0021】
信号処理システム1は、飛行体2と、地球局3とを備える。飛行体2は、電波等の信号を受信し、当該受信した信号に対して信号処理を行った結果等を地球局3に送信することができる。飛行体2は、例えば、人工衛星、航空機とすることができる。本明細書では、飛行体2は、人工衛星であり、より詳細には小型衛星である。小型衛星は、例えば、1U~6U等のCubeSat規格の衛星、W6Uの衛星、50kg級衛星などとすることができる。1Uは、10cm×10cm×10cmで定義される大きさであり、1U~6Uは、10cm×10cm×(10cm~60cm)である。W6Uは、10cm×20cm×30cmで定義される大きさである。50kg級衛星は、55cm×35cm×55cmの大きさの衛星である。小型衛星は、衛星軌道上で地球を周回移動することができる。衛星軌道は、例えば、低軌道(LEO:Low Earth Orbit)、中軌道(MEO:Middle Earth Orbit)、静止軌道(GEO:Geostatinary Earth Orbit)とすることができ、これらに特に限定されない。
【0022】
飛行体2は、受信アンテナ20、受信器21、デジタル信号処理装置22、記憶装置23、送信器24、送信アンテナ25、位置情報取得装置26、通信用アンテナ27、通信用送受信器28、制御装置29を備え、その他の各種機能を実現する構成要素を備えることができる。当該構成要素としては、太陽光パネル、電池等を含む、飛行体2に搭載された各機器に電力を供給する電源系サブシステム、飛行体2の姿勢を制御する姿勢制御系サブシステム、飛行体2を推進する推進系サブシステム、飛行体2内の温度範囲を制御する熱制御系サブシステムなどを含むことができる。
【0023】
受信アンテナ20は、電波等の信号を受信するための空中線である。ここでいう電波は、例えば、3THz以下の周波数を有する電磁波を対象とすることができるが、これに限定されない。受信アンテナ20は、例えば、地球上から到来する電波を受信する。地球上は、例えば、地上及び/又は海上をいうが、受信アンテナ20が受信可能な電波はこれらに限定されない。すなわち、電波発信源は、地上に設置された設備、地上を移動可能な移動体、海上の船舶、地表面又は海表面の上空の飛行体、宇宙空間の宇宙機を含むことができる。
【0024】
受信器21は、受信した信号に信号処理を行い、受信信号の時間軸波形を示すデジタル信号に変換する。デジタル信号処理装置22は、1以上のコンピュータ及び/又は1以上の処理回路を含んで構成され、受信器21により出力された信号に対し、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)等の信号処理を行い、データ列を選別する。受信器21及びデジタル信号処理装置22の詳細構成は後述する。なお、受信器21の後述するAD変換装置215とデジタル信号処理装置22とにより本実施形態の信号処理装置2Aを構成することができる。
【0025】
記憶装置23は、メモリ及び/又はストレージで構成され、デジタル信号処理装置22により選別されたデータ列を記憶する。送信器24は、記憶装置23に記憶されたデータ列、飛行体2の情報を含んだ情報を、送信アンテナ26を介して地球局3に送信する。飛行体2の情報は、1つの例では、人工衛星の位置(高度)、速度、加速度を含む衛星情報であり、選別されたデータ列に対応する時刻の衛星情報である。送信アンテナ25は、情報を含む信号を送信するための空中線である。送信器24及び送信アンテナ25により送信される情報は、所定の周波数帯を用いて送信される。位置情報取得装置26は、飛行体2の位置情報を取得する。位置情報取得装置26は、例えば、全地球測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)からの信号に基づいて飛行体2の位置(例えば高度)、速度、加速度を算出する。算出された位置、速度、加速度は、送信器24及び送信アンテナ25により送信される飛行体2の情報に含むことができる。
【0026】
通信用アンテナ27は、地球局3からのコマンド信号を受信し、テレメトリ信号を地球局3に送信する空中線である。コマンド信号は、飛行体2を制御するためのコマンドデータを含んだ信号である。コマンド信号は、制御装置29が各構成を制御するための信号であり、通信用送受信器28から制御装置29に送信される。テレメトリ信号は、飛行体2の状態を示すテレメトリデータを含んだ信号である。テレメトリデータは、例えば、飛行体2の位置、速度、加速度を含むことができる。コマンド信号、テレメトリ信号は、干渉回避のため、送信器24及び送信アンテナ25とは異なる周波数帯を用いて通信される。通信用送受信器28は、通信用アンテナ27により受信したコマンド信号を復調し、復調した信号を制御装置29に出力する。通信用送受信器28は、テレメトリ信号を変調し、通信用アンテナ27を介して地球局3に送信する。
【0027】
制御装置29は、1以上のコンピュータ及び/又は1以上の処理回路により構成され、飛行体2の全体的な制御を行う。例えば、制御装置29は、受信器21、デジタル信号処理装置22、記憶装置23、位置情報取得装置26、通信用送受信器28を制御することができる。
【0028】
地球局3は、飛行体2と通信するシステムである。地球局3は、地上に固定して設置しても良いし、地上、海上又は地表面若しくは海表面の上空を移動可能な移動体に配備されていても良い。
【0029】
地球局3は、受信アンテナ30、受信器31、通信用アンテナ32、通信用送受信器33、情報処理装置34を備える。
【0030】
受信アンテナ30は、送信器24、送信アンテナ25を介して送信された情報を受信するための空中線である。受信器31は、受信アンテナ30が受信した情報を復調し、その結果の情報を情報処理装置34に出力する。
【0031】
通信用アンテナ32は、コマンド信号を送信し、テレメトリ信号を受信するための空中線である。通信用送受信器33は、飛行体2の制御信号を変調してコマンド信号を生成及び送信する。また、通信用送受信器33は、テレメトリ信号を受信して復調し、その結果を情報処理装置34に出力する。
【0032】
情報処理装置34は、入出力装置、及び、コンピュータ及び/又は処理回路を含んで構成され、飛行体2の制御信号を生成する。また、情報処理装置34は、受信器31から入力された情報と、ドップラー変化率とに基づいて、電波発信源の位置(例えば、緯度、経度)を推定する。この位置推定方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、非特許文献1に記載の方法を用いることができる。ドップラー変化率は、各時刻の時間領域データ列から求めることができる。本実施形態の情報処理装置34は、飛行体2の制御機能と、電波発信源の位置推定機能とを有するが、各機能を別々のハードウェア構成に基づいて構成しても良い。
【0033】
図2は、受信器の詳細構成を示す図である。受信器21は、ヘテロダイン方式、ダイレクトサンプリング方式、ダイレクトコンバージョン方式のいずれの受信器でも良い。本実施形態の受信器21は、ダイレクトコンバージョン方式である。受信器21は、低雑音アンプ211、干渉波抑圧フィルタ212、ダイレクトコンバージョン213、エイリアス除去フィルタ214、AD変換装置215、局部発振器216、クロック発生器217を備える。
【0034】
低雑音アンプ211は、受信アンテナ20で受信した信号をノイズの発生を抑制して増幅する。干渉波抑圧フィルタ212は、低雑音アンプ211から入力された信号から干渉波を抑圧するフィルタである。ダイレクトコンバージョン213は、干渉波抑圧フィルタ212から入力された信号を低周波数に変換し、I,Q信号を生成する。具体的には、ダイレクトコンバージョン213は、干渉波抑圧フィルタ212から入力された信号と局部発振器216からの局発信号とをミキシングしてI信号(In-phase信号)と、Q信号(Quadrature-phase信号)とを生成する。I信号及びQ信号は、アナログ信号である。エイリアス除去フィルタ214は、I,Q信号に対してそれぞれ設けられ、I,Q信号のエイリアスを除去するフィルタである。
【0035】
AD変換装置215は、I,Q信号に対してそれぞれ設けられ、アナログ信号であるI,Q信号をデジタル信号であるデータ列に変換する。具体的には、AD変換装置215は、クロック発生器217からのサンプリング周波数fsを有するサンプリングクロックでデジタルI,Q信号を生成する。すなわち、デジタルI,Q信号は、サンプリング周波数fsで標本化、量子化、符号化された時間領域データ列である。
【0036】
局部発振器216は、局発信号を生成し、ダイレクトコンバージョン213に提供する。局発信号は、中心周波数fcを決める局発信号周波数を有する信号である。局部発振器216は、制御装置29からの制御信号に基づいて、中心周波数fcを切り替えることができる。クロック発生器217は、サンプリングクロックを生成し、AD変換装置215に提供する。サンプリングクロックは、サンプリング周波数fsを有する信号である。
【0037】
図3を用いて、電波収集と、収集した電波の信号から生成される時間領域データ列との関係を説明する。図3は、飛行体2(小型衛星)の運動とデータサンプリングの関係を示す図である。図3に示すように、電波収集は、1つの例では、1機の飛行体2が衛星軌道を回りながら、異なる時刻ti(iは自然数)から所定時間で飛行体2が電波の受信を行う。例えば、飛行体2は、時刻t1で中心周波数fcかつ帯域幅Bの観測帯域でS秒間信号を受信し、時刻t1とは異なる時刻t2で中心周波数fcかつ帯域幅Bの観測帯域でS秒間信号を受信する。このように、異なる時刻かつ同じ観測帯域で電波の受信を繰り返すことができる。また、飛行体2は、中心周波数fcを切り替えることにより、電波の観測帯域を変えて受信を繰り返すことができる。複数の観測帯域は、隣接する観測帯域同士で重複していても良いし、重複しなくても良い。また、中心周波数fcの切り替えは、周回毎又は覆域毎に行うことができる。また、電波収集は、広帯域で電波を受信するべく、又は、全覆域の電波を受信するべく、複数回地球を周回して行っても良い。
【0038】
中心周波数fcは、局部発振器216の局発信号の周波数により決定することができる。帯域幅Bは、サンプリング周波数fsと比例関係にあることから、AD変換装置215のサンプリング周波数fsにより決定することができる。そのため、サンプリング周波数fsが高い程、帯域幅Bを広帯域化させることができるので、より幅広い周波数帯の信号の受信が可能になり、周波数帯が未知の信号を捕捉しやすくなる。
【0039】
本明細書では、各時刻tiからS秒間受信された信号を、便宜上、各時刻tiの信号として識別するものとすると、AD変換装置215は、各時刻tiの信号を、それぞれ各時刻tiの時間領域データ列に変換する。サンプリング周波数fsでS秒間のサンプルデータ数をKとすると、各時刻tiの時間領域データ列は、K個のデータで構成される時間領域のデジタルI,Q信号である。なお、AD変換装置215に入力される各時刻tiの信号は、各構成211~214を経た信号である。このように、AD変換装置215は、飛行体2により時刻を異ならせて所定時間受信された信号を、各時刻の時間領域データ列にそれぞれ変換する。
【0040】
図4は、デジタル信号処理装置の詳細構成を示す図である。デジタル信号処理装置22は、FFT処理装置221、相関算出装置222、データ列選別装置223を備える。図5は、FFT処理装置のFFT処理を説明するための図である。
【0041】
図5に示すように、FFT処理装置221は、各時刻の時間領域データ列を複数の異なる高速フーリエ変換(FFT)点数でそれぞれFFT処理し、各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ出力する。FFT点数は、サンプリング点数であり、2Nである。Nは、自然数であり、例えば、8、9、10、・・、Lなどの8以上の自然数とすることができる。
【0042】
ここで、各時刻の時間領域データ列のサンプルデータ数Kは、FFT点数より大きいものとする。例えば、K=2Mであり、Mは、M>Nを満たす自然数である。FFT処理装置221は、各時刻の時間領域データ列をFFT点数2N毎に分け、K/2N回FFT処理を行う。具体的には、FFT処理装置221は、各時刻の時間領域データ列を1セット2N個のデータ数となるようにK/2Nセットに分けて各セットに対してFFT処理を実行し、各セットのFFT結果(すなわち周波数領域のデータ列)を得る。そして、各セットのFFT結果を加算し、当該加算結果を周波数領域FFT結果データ列として出力する。図5に示すように、FFT処理装置221は、各時刻の時間領域データ列に対して、複数の異なるN(すなわち、複数の異なるFFT点数)でFFT処理するため、時刻tiの時間領域データ列について、複数の周波数領域FFT結果データ列を出力する。例えば、時刻t1の時間領域データ列に対するFFT処理により、FFT処理装置221は、N=8、9、10・・のときの周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ出力する。図5に示すように、異なるFFT点数での複数の周波数領域FFT結果データ列は、時刻tiの時間領域データ列を由来とする。したがって、複数の周波数領域FFT結果データ列は、時刻tiとFFT点数(N)でラベリングすることができる。
【0043】
相関算出装置222は、同じFFT点数での異なる時刻の周波数領域FFT結果データ列間の相関を、周波数分解能単位に基づいた区分毎に算出する。そして、相関算出装置222は、当該算出を、複数の異なるFFT点数毎に実行する。ここで、周波数分解能単位Δfは、AD変換装置215のサンプリング周波数fsと、当該同じFFT点数2Nとに基づく。ここでは、Δf=fs/2Nであり、fsが一定であるため、Nが大きい程、周波数分解能単位Δfは小さくなる。図6は、各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列を区分単位で見たときの概念図である。図6の例では、時刻tiのN=8、9、10・・での周波数領域FFT結果データ列が示されている。図6に示すように、周波数領域FFT結果データ列は、Nが大きい程、区分、すなわち周波数分解能単位Δfが小さい。換言すれば、FFT点数を異ならせることにより、多様な周波数分解能で信号処理を行うことができるので、電波発信源の電波が有する周波数に整合する信号処理が可能となる。
【0044】
図7は、相関算出装置の相関算出方法を説明するための図である。図7に示すように、本実施形態では、相関算出装置222は、同じFFT点数での区分Δf毎の周波数領域FFT結果データ列において、時刻tiの区分Δf毎の周波数領域FFT結果データ列と、時刻tiとは異なる時刻tjの区分Δf毎の周波数領域FFT結果データ列の複素共役とを乗算し、当該乗算結果を逆FFT処理して相関を算出する。
【0045】
具体的には、同じFFT点数での各区分の周波数領域FFT結果データ列を、FFT結果k(k=0,1,・・,2N-1)とすると、各時刻の周波数領域FFT結果データ列は、複数のFFT結果k(k=0,1,・・,2N-1)で構成される。例えば、各時刻の周波数領域FFT結果データ列の1番目の区分は、FFT結果0であり、2番目の区分は、FFT結果1である。相関算出装置222は、時刻tiの(FFT結果k)×時刻tjの(FFT結果l)*をそれぞれ計算し(k、l=0,1,・・,2N-1)、各乗算結果を逆FFT処理することにより相関を得る。相関は区分間毎に得られる。図7の相関Cは、区分間毎の相関で構成される。
【0046】
データ列選別装置223は、相関が閾値以上であるデータ列を選別する。図8は、データ列選別装置のデータ選別処理を説明するための図である。図8に示すように、本実施形態のデータ列選別装置223は、算出した相関に対して一定誤報確率(CFAR:Cоnstant False Alarm Rate)処理し、信号検出を行う。信号検出される場合、すなわち相関が閾値以上である場合は、受信した信号帯域(電波の周波数帯域)と整合し、積分効果がある場合である。図8では、1つの周波数帯域が検出された例を示しているが、1つのデータ列に対して複数の帯域を検出することができる。この場合、複数の帯域の検出により、複数の電波発信源の存在が推定される。CFAR処理は、セルアベレージCFAR、ワイブルCFARなどのよく知られている公知の処理とすることができる。
【0047】
データ列選別装置223は、相関が閾値以上のデータ列を記憶装置23に記憶させることができる。すなわち、データ列選別装置223は、相関の有無によって、多数のデータ列から、記憶装置23に記憶させるデータ列を選別する。記憶させるデータ列は、相関が閾値以上であるFFT点数での周波数領域FFT結果データ列であっても良いし、相関が閾値以上であるFFT点数での周波数領域FFT結果データ列に対応する時間領域データ列であっても良い。相関が異なる時刻のデータ列間の結果であるから、記憶させるデータ列は、時刻が異なる一対のデータ列とすることができる。1つの例では、データ選別装置223は、相関が閾値以上であり、同じFFT点数での周波数領域FFT結果データ列であって、時刻t1と時刻t2のデータ列を記憶装置23に記憶させる。別の例では、データ選別装置223は、相関が閾値以上であり、同じFFT点数での周波数領域FFT結果データ列に対応する時間領域データ列であって、時刻t1と時刻t2のデータ列を記憶装置23に記憶させる。閾値は、適宜設定可能である。
【0048】
[1-2.動作]
図9は、本実施形態の信号処理装置を含む信号処理システムの動作フローチャートの一例である。図9に示すように、飛行体2において、複数回の電波受信を行う(S01:複数回の電波受信)。例えば、人工衛星である飛行体2は、衛星軌道を回りながら、中心周波数fcかつ帯域幅Bの観測帯域で離散的な時刻ti(iは自然数)からS秒間電波受信をそれぞれ行う。本実施形態では、受信した信号は、受信器21の構成211~214、216により各種の処理がなされる。
【0049】
次に、S01の各信号に対し、AD変換装置215により、サンプリング周波数fsでAD変換処理を行い、各時刻tiの時間領域データ列を生成する(S02:AD変換処理)。1つの例では、各時刻の時間領域データ列のサンプルデータ数Kは、2Mである。
【0050】
FFT処理装置221により、各時刻の時間領域データ列に対し、複数の異なるFFT点数でFFT処理をそれぞれ行い、時刻、FFT点数をパラメータとする周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ生成する(S03:FFT処理)。具体的には、FFT処理装置221は、各時刻の時間領域データ列をFFT点数2N毎に順次FFT処理を行い、この処理をK/2N回繰り返す。換言すれば、各時刻の時間領域データ列を2N個のデータ数を1セットととすると、各時刻の時間領域データ列はK/2Nセットの集まりとなり、各セットに対してFFT処理を行う。例えば、M=14、N=8のとき、214/28=64セットあることから、64回FFT処理を行う。各セットのFFT結果は横軸が周波数であり、FFT処理装置221は、各時刻の各セットのFFT結果を加算し、当該加算結果を各時刻の周波数領域FFT結果データ列とする。このように、S03で、各時刻について複数の異なるFFT点数での周波数領域FFT結果データ列が得られる。
【0051】
相関算出装置222により、相関算出処理を行う(S04:相関算出処理)。すなわち、相関算出処理は、同じFFT点数での異なる時刻の周波数領域FFT結果データ列間の相関を、区分毎に算出し、当該算出を複数の異なるFFT点数毎に実行する処理である。当該区分は、周波数分解能単位Δfであり、Δf=サンプリング周波数fs/FFT点数2Nである。fsが一定であるから、Nが大きい程、Δfは小さい。各区分の周波数領域FFT結果データ列をFFT結果k(k=0,1,・・,2N-1)とすると、相関算出装置222は、時刻tiの(FFT結果k)×時刻tjの(FFT結果l)*をそれぞれ計算し(k、l=0,1,・・,2N-1)、各乗算結果を逆FFT処理することにより相関を得る。
【0052】
データ選別装置223により、S04で得られた相関に基づいてデータ列を選別するデータ列選別処理を行う(S05:データ列選別処理)。ここでは、データ選別装置223は、相関が閾値以上であるデータ列を、記憶装置23に記憶させるデータ列とし、相関が閾値未満であるデータ列を、記憶装置23に記憶させないデータ列として選別する。
【0053】
相関が閾値以上であるデータ列は、記憶装置23に記憶される(S06:記憶処理)。そして、送信器24は、記憶装置23から相関が閾値以上であるデータ列を読み出し、当該データ列を変調し、送信アンテナ25を介して地球局3に送信する(S07:送信処理)。送信器24は、当該データ列に対応する時刻の飛行体2の状態情報(例えば、飛行体2の位置、速度、加速度)を地球局3に送信する。この送信は、データ列の送信と共に行っても良いし、別々に行っても良い。
【0054】
地球局3では、送信されたデータ列及び飛行体2の状態情報を、受信アンテナ30を介して受信器31で受信し(S08:受信処理)、情報処理装置34により、当該データ列、飛行体2の状態情報、ドップラー変化率に基づいて、電波発信源の位置を推定する発信源の位置推定処理を行う(S09:発信源の位置推定処理)。
【0055】
以上のように、複数の異なるFFT点数でFFT処理を行うことで周波数領域のデータ列を多様化し、更に、多様な周波数分解能単位Δfで相関を得ることができ、周波数帯が未知の発信であっても、位置推定の解析に必要なデータ列を選別することができる。相関算出処理及びデータ列選別処理を総括して、整合帯域検出処理と称することができる。
【0056】
[1-3.作用・効果]
(1)本実施形態の信号処理装置2Aは、飛行体により時刻を異ならせて所定時間受信された信号を、各時刻の時間領域データ列にそれぞれ変換するAD変換装置215と、各時刻の時間領域データ列を複数の異なる高速フーリエ変換(FFT)点数でそれぞれFFT処理し、各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ出力するFFT処理装置221と、同じFFT点数での異なる時刻の周波数領域FFT結果データ列間の相関を、AD変換装置215のサンプリング周波数と同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎に算出する相関算出装置222であって、当該算出を複数の異なるFFT点数毎に実行する相関算出装置222と、相関が閾値以上であるデータ列を選別するデータ列選別装置223と、を備えるようにした。
【0057】
これにより、SN比が小さい受信した信号の中から、周波数帯が未知の信号を含むデータ列を推定することができる。この推定されたデータ列は、未知の信号の発信源の位置(例えば、緯度、経度)を推定するために用いることができる。
【0058】
(2)本実施形態の飛行体2は、信号処理装置2Aと、データ列を記憶する記憶装置23と、記憶装置23に記憶されたデータ列を地上局に送信する送信器24と、を備えるようにした。
【0059】
これにより、未知の信号の信号検出に必要なデータ列に絞って地球局3に提供できるので、受信した信号のデータ列を全て記憶したり、地球局3に送信したりする場合と比較して、大容量の記憶装置やデータ回線を不要にすることができる。特に、飛行体2が積載容積に制限のある小型衛星であっても、未知の信号の信号検出のために用いることができる。すなわち、一般に、未知の発信源の信号を捕えるために、広帯域で受信した信号をサンプリングする必要があり、そのためにAD変換器のサンプリング周波数を上げる必要がある。しかし、小型衛星では、サンプリングしたデータを記憶する記憶容量、当該データを地上局にダウンリンク伝送する伝送量に制約があり、サンプリング周波数を上げることが難しかった。一方、本実施形態によれば、信号検出に必要なデータ列に限り地球局3に提供するので、上記の制約を受けずに済む利点がある。
【0060】
[2.第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態と異なる構成のみを説明し、同じ構成については説明を省略する。第2実施形態は、第1実施形態で行ったデジタル信号処理を、地球局3で行うものである。
【0061】
図10は、第2実施形態に係る信号処理システムの構成を示す図である。図10に示すように、第2実施形態では、デジタル信号処理装置22は、飛行体2に代えて、地球局3が備える。そのため、飛行体2において、受信器21からのデジタルI,Q信号は記憶装置23に記憶され、当該信号を、送信器24及び送信アンテナ25を介して地球局3に送信する。
【0062】
地球局3では、飛行体2からのデジタルI,Q信号を受信アンテナ30及び受信器31で受信し、受信した信号は情報処理装置34に入力される。本実施形態の情報処理装置34は、デジタル信号処理装置22を備えており、第1実施形態と同様に、FFT処理、相関算出処理、データ選別処理、発信源の位置推定処理を行う。
【0063】
[3.第3実施形態]
第3実施形態について説明する。第2実施形態と異なる構成のみを説明し、同じ構成については説明を省略する。第3実施形態は、第1実施形態、第2実施形態とは異なり、複数の飛行体2で電波受信を行うものである。
【0064】
図11は、第3実施形態に係る複数の飛行体、地球局、及び発信源の位置関係を示す図である。本実施形態の信号処理システム1は2機の飛行体2を備え、一方が主衛星、他方が副衛星である。各飛行体2は、同時刻に電波受信を行い、各受信器21において同じサンプリング周波数fsでAD変換処理されたデジタルI,Q信号を記憶装置23に記憶させ、当該信号を、各送信器24及び送信アンテナ25を介して地球局3に送信する。
【0065】
地球局3では、飛行体2からのデジタルI,Q信号を受信アンテナ30及び受信器31で受信し、受信した信号は情報処理装置34に入力される。情報処理装置34のデジタル信号処理装置22により、第1実施形態、第2実施形態と同様に、FFT処理、相関算出処理、データ選別処理、発信源の位置推定処理を行う。但し、発信源の位置推定処理では、主衛星と副衛星のダウンリンクしたデータ遅延、ドップラー相関を加味して位置推定を行う。
【0066】
第2実施形態では、1機の飛行体2において、異なる時刻間で相関を算出したのに対し、第3実施形態では、主衛星と副衛星が同時刻に受信した信号を用いて異なる位置間で相関を算出する。すなわち、第2実施形態の各時刻の時間領域データ列、各時刻の周波数領域FFT結果データ列は、本実施形態では、各位置の時間領域データ列、各位置の周波数領域FFT結果データ列に置き換わる。
【0067】
[4.他の実施形態]
他の実施形態を説明する。上記実施形態と異なる構成のみを説明し、同じ構成については説明を省略する。
【0068】
他の実施形態では、受信器21の構成、デジタル信号処理装置22の構成は、飛行体2又は地球局3の一方が備えるようにしても良いし、飛行体2と地球局3とに分散して設けられていても良い。すなわち、AD変換装置215、FFT処理装置221、相関算出装置222、データ列選別装置223は、それぞれ飛行体2又は地球局3の何れかに設けられていればよい。
【0069】
本発明の実施形態に係る信号処理装置は、少なくともデジタル信号処理装置22が含まれていれば良く、第1実施形態の信号処理装置2Aとは異なり、AD変換装置215を含まなくても良い。
【0070】
本発明の他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す処理を実現するプログラムや該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とすることもできる。また他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す処理を実現する方法とすることもできる。また他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す処理を実現するプログラムをコンピュータに供給することができるサーバとすることもできる。また他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す処理を実現する仮想マシンとすることもできる。
【0071】
以上に説明した処理又は動作において、あるステップにおいて、そのステップではまだ利用することができないはずのデータを利用しているなどの処理又は動作上の矛盾が生じない限りにおいて、処理又は動作を自由に変更することができる。また以上に説明してきた各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 信号処理システム
2 飛行体
20 受信アンテナ
21 受信器
211 低雑音アンプ
212 干渉波抑圧フィルタ
213 ダイレクトコンバージョン
214 エイリアス除去フィルタ
215 AD変換装置
216 局部発振器
217 クロック発生器
22 デジタル信号処理装置
23 記憶装置
24 送信機
25 送信アンテナ
26 位置情報取得装置26
27 通信用アンテナ
28 通信用送受信器28
29 制御装置
3 地球局
30 受信アンテナ
31 受信器
32 通信用アンテナ
33 通信用送受信器
34 情報処理装置
【要約】
【課題】受信したSN比が小さい信号の中から、周波数帯が未知の信号を含むデータ列を推定することのできる信号処理装置等を提供する。
【解決手段】信号処理装置2Aは、飛行体により時刻を異ならせて所定時間受信された信号を、各時刻の時間領域データ列にそれぞれ変換するAD変換装置215と、各時刻の時間領域データ列を複数の異なる高速フーリエ変換(FFT)点数でそれぞれFFT処理し、各FFT点数での周波数領域FFT結果データ列をそれぞれ出力するFFT処理装置221と、同じFFT点数での異なる時刻の周波数領域FFT結果データ列間の相関を、AD変換装置のサンプリング周波数と同じFFT点数とに基づく周波数分解能単位に基づいた区分毎に算出する相関算出装置222であって、当該算出を複数の異なるFFT点数毎に実行する相関算出装置222と、相関が閾値以上であるデータ列を選別するデータ列選別装置223と、を備える。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11