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特許7595998紙葉類搬送装置及び紙葉類搬送装置用キャリア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】紙葉類搬送装置及び紙葉類搬送装置用キャリア
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/22 20060101AFI20241202BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20241202BHJP
   B65H 29/24 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B65H5/22 A
A63F7/02 352F
B65H29/24 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024099786
(22)【出願日】2024-06-20
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108247
【氏名又は名称】株式会社ジェッター
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100096105
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 広
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】舛本 貴司
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204164(JP,A)
【文献】特開2023-114900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/22
A63F 7/02
B65H 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類搬送装置に使用されるキャリアであって、
前記紙葉類搬送装置は、
ダクトと、
前記ダクト内において一方向及びその逆方向に流れる空気流を発生させる送風機と、
を備え、
前記キャリアは前記ダクト内を走行可能であり、前記キャリアは前記送風機が前記ダクト内に発生させた空気流により前記ダクト内において前記一方向に走行し、前記ダクト内に投入された紙葉類を後方から押して搬送するものであり、
前記キャリアは、
前記ダクト内を走行可能なキャリア本体と、
前記キャリア本体の上方及び下方の少なくとも何れか一方に突出する少なくとも2個の突出体と、
を備えており、
前記突出体は前記キャリア本体に対して前記ダクトの長さ方向に延びる前記キャリア本体の中心軸に直交する面内において前記中心軸を中心として揺動可能であることを特徴とする紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項2】
前記突出体は前記キャリア本体の上方及び下方の何れか一方から突出しており、
前記突出体は、前記中心軸と直交する面内において一定の幅を有する第一部分と、前記第一部分の一端に連続して形成された球体状の第二部分と、からなり、
前記キャリア本体には前記突出体を差し込み可能な前記中心軸と直交して延びるスリットが形成されており、
前記スリットは、前記キャリア本体の外周面から前記中心軸に向かって延びる第一スリット部分と、前記第一スリット部分の底面に形成され、前記第二部分が篏合可能な第二スリット部分と、からなり、
前記第一スリット部分の幅は、前記中心軸と直交する面内において、前記キャリア本体の外周面から前記底面に向かって徐々に小さくなり、前記底面において前記第一スリット部分の幅は前記突出体の前記第一部分の幅と等しく、
前記スリットに前記突出体を差し込むと、前記突出体の前記第二部分が前記第二スリット部分に篏合し、前記突出体の前記第一部分が前記キャリア本体の外周面から外方に突出しているものであることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項3】
前記突出体は前記キャリア本体の上方及び下方の双方から突出しており、
前記突出体は前記中心軸と直交する面内において一定の幅を有しており、
前記キャリア本体には前記突出体を差し込み可能な前記中心軸と直交して延びる貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の幅は、前記中心軸と直交する面内において、前記キャリア本体の外周面から前記中心軸に向かって徐々に小さくなり、前記貫通孔の中央において前記貫通孔の幅は前記突出体の幅と等しく、
前記貫通孔に前記突出体を差し込むと、前記突出体は前記貫通孔の中央において前記キャリア本体に挟み込まれ、前記突出体は前記キャリア本体の外周面から上方及び下方に突出しているものであることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項4】
前記突出体は前記キャリアの走行方向及びその逆方向において前記中心軸を中心として前後に揺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項5】
前記突出体は前記中心軸が延びる方向において一定の厚さを有しており、
前記中心軸を含む面内における前記第一スリット部分の幅は、前記キャリア本体の外周面から前記底面に向かって徐々に小さくなり、前記底面において前記第一スリット部分の幅は前記突出体の厚さと等しいことを特徴とする請求項2に記載の紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項6】
前記突出体は前記中心軸が延びる方向において一定の厚さを有しており、
前記中心軸を含む面内における前記貫通孔の幅は、前記キャリア本体の外周面から前記貫通孔の中央に向かって徐々に小さくなり、前記貫通孔の中央において前記貫通孔の幅は前記突出体の厚さと等しいことを特徴とする請求項に記載の紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項7】
前記キャリア本体の前面及び後面の少なくとも何れか一方には前記中心軸と直交する方向に延びる直線を底辺とするV字型の溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項8】
前記突出体は、前記キャリアが前記ダクト内を走行中に前記ダクトの内壁に接触したときに、屈曲する程度の柔軟性を有していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の紙葉類搬送装置用キャリア。
【請求項9】
ダクトと、
前記ダクト内を走行可能なキャリアと、
前記ダクト内において空気流を発生させる送風機と、
を備え、
前記送風機が前記ダクト内に発生させた空気流により前記ダクト内において前記キャリアを走行させ、前記ダクト内に投入された紙葉類を前記キャリアを介して搬送する紙葉類搬送装置において、
前記キャリアは請求項1乃至7の何れか一項に記載の紙葉類搬送装置用キャリアからなり、
前記ダクトは、
前記キャリア本体が通過可能な第一ダクト領域と、
前記キャリア本体から突出する前記突出体が通過可能な第二ダクト領域と、
からなり、
前記第一ダクト領域には、前記第一ダクト領域から下方に突出する第二ダクト領域の入り口の両側において、水平面をなす水平領域が形成されており、
前記キャリア本体には、前記キャリアが前記ダクト内を走行するときに、前記水平領域上を走行する水平面が形成されていることを特徴とする紙葉類搬送装置。
【請求項10】
前記突出体は、前記キャリアが前記ダクト内を走行中に前記ダクトの内壁に接触したときに、屈曲する程度の柔軟性を有していることを特徴とする請求項9に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項11】
前記送風機は単一の送風機からなり、
前記空気流が前記ダクト内において一方向及びその逆方向の何れかに流れるように前記空気流が流れる方向を切り換える空気流切り換えユニットをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の紙葉類搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト内に発生させた空気流により紙幣その他のシート状の紙葉類をダクト内において搬送する紙葉類搬送装置及び当該紙葉類搬送装置に使用されるキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
このような紙葉類搬送装置の一例として特許第7123453号公報(特開2023-114893号公報)に記載されたものがある。
図16は同公報に記載された紙葉類搬送装置100の全体構造及び紙葉類搬送装置100が使用される周囲の環境を示す斜視概略図である。
紙葉類搬送装置100は、紙幣その他の紙葉類をその前面で押すことにより当該紙葉類を搬送するキャリア110(図17及び図18参照)と、キャリア110の外形と相似し、かつ、キャリア110が走行可能な内部空間を有するダクト120と、キャリア110が搬送してきた紙葉類を収容する紙葉類収容室130と、ダクト120の一端(図16の右端)に連結して配置され、ダクト120内においてキャリア110を紙葉類収容室130に向かう方向X1に走行させる空気流を発生させる第一送風機140Aと、ダクト120の他端(図16の左端)に連結して配置され、ダクト120内においてキャリア110を紙葉類収容室130から離れる方向X2に走行させる空気流を発生させる第二送風機140Bと、キャリア110をダクト120の内部に送り出すキャリア送り出し装置(図16では図示せず、図15のキャリア送り出し装置150を参照)と、を備えている。
【0003】
図16に示すように、遊技店内には複数個のパチンコ台その他の遊技機器20が図16の左右方向に一列に配置されており、各遊技機器20に隣接して遊技媒体(パチンコ玉やメダルなど)を貸し出すための遊技媒体貸し出し装置21が設置されている。遊技媒体貸し出し装置21に紙幣を投入すると、投入された紙幣の額に応じた数の遊技媒体が払い出される。
ダクト120は遊技機器20及び遊技媒体貸し出し装置21の背面側において遊技機器20及び遊技媒体貸し出し装置21の配列方向と平行に延びるように設置されており、ダクト120は遊技機器20及び遊技媒体貸し出し装置21の一群からそれぞれ離れた位置にある第一送風機140Aと紙葉類収容室130と両端においてそれぞれ接続されている。
図17は紙葉類搬送装置100において用いられるキャリア110を正面側から見たときの斜視図、図18はキャリア110を背面側から見たときの斜視図である。
【0004】
図17及び図18に示すように、キャリア110は「砲弾」型をなしており、具体的には、円柱形状の本体部分110aと、本体部分110aの背面側に本体部分110aと連続して形成された半球形状の後方部分110bと、から構成されている。
キャリア110は本体部分110aの前面110cにおいて紙幣を押すことにより紙幣を搬送する。本体部分110aの前面110cにはその円周に沿って同一の半球形状の複数個の突起110dが等間隔に形成されている。相互に隣接する2個の突起110dの間に紙幣を挟み込み、紙幣を保持するようになっている。
キャリア110は後方部分110bにおいて第一送風機140Aからの空気流(風)を受けることにより前進(X1方向に走行)する。
【0005】
図19はダクト120の斜視図、図20及び図21はキャリア110、紙幣50及びダクト120の相互の位置関係を示す斜視図である。
ダクト120は、図19に示すように、第一領域120aと第二領域120bとから構成されている。
第一領域120aは上下に長い長方形の形状をなしており、その高さは紙幣50の短辺50a(図20参照)が通過できる高さであり、その幅は紙幣50が折り曲がっていたり、あるいは、湾曲している場合であっても、紙幣50が十分に通過できる幅である。
第二領域120bは円形の縦断面を有しており、キャリア110が通過できるような大きさ(半径)に設定されている。
第一領域120aと第二領域120bとは部分的に重なり合っており、第一領域120aが第二領域120bの中心を通り、第二領域120bから上下の方向に同じ長さで突出している。
【0006】
図20及び図21に示すように、キャリア110はその前面110cにおいて紙幣50の短辺50aを押し、ダクト120の内部において紙幣50を搬送する。紙幣50はダクト120の第一領域120aを通過し、キャリア110はダクト120の第二領域120bを通過する。
図16に示すように、紙葉類搬送装置100は、紙葉類収容室130の手前でダクト120から分岐するキャリア収納用ダクト141を備えており、キャリア収納用ダクト141は第二送風機140Bに連結されている。
以上のような構造を有する紙葉類搬送装置100は以下のように作動する。
遊技媒体貸し出し装置21に投入された紙幣は遊技媒体貸し出し装置21の背後からダクト120の内部に投入される。
【0007】
ダクト120の内部に紙幣が投入されるとセンサー(図示せず)が紙幣の存在を検知し、紙幣の存在を知らせる紙幣検知信号を制御装置(図示せず)に送信する。この紙幣検知信号を受信した制御装置はキャリア送り出し装置を作動させ、1個のキャリア110をダクト120の第二領域120bの内部に送り出す。
その後、制御装置は第一送風機140Aを作動させ、第一送風機140Aから紙葉類収容室130に向かう空気流をダクト120の内部に発生させ、ダクト120の内部に送り出されたキャリア110はその後方部分110bにおいてこの空気流の風圧を受けて第二領域120bの内部において方向X1に走行を開始する。
キャリア110は紙葉類収容室130に向かう走行の途中においてその前面110cで紙幣50を捕捉し(図20参照)、紙幣50を押した状態で走行を続ける。この状態では、図21に示すように、キャリア110はダクト120の第二領域120bの内部を走行し、紙幣50はダクト120の第一領域120aの内部を走行する。
【0008】
キャリア110と紙幣50は、紙葉類収容室130の手前のダクト120とキャリア収納用ダクト141との分岐点において分離される。すなわち、キャリア110のみがダクト120からキャリア収納用ダクト141に走行路を転換し、キャリア収納用ダクト141を走行した後、第二送風機140Bの手前に配置されているキャリア収納ユニット(図示せず)に収納される。
一方、紙幣50はキャリア110に押されていた慣性力の作用によってそのままダクト120の内部を走行し、紙葉類収容室130に収容される。
紙幣50が紙葉類収容室130に収容され、かつ、キャリア110がキャリア収納ユニットに収納された後、制御装置は第一送風機140Aの作動を停止させ、次いで、第二送風機140Bを作動させ、キャリア収納用ダクト141及びダクト120の内部に空気流を発生させる。
【0009】
キャリア収納ユニットに収納されていたキャリア110はその前面110cにおいてこの空気流の風圧を受けてキャリア収納用ダクト141及びダクト120(第二領域120b)の内部を方向X2に走行し、キャリア送り出し装置に再び収納される。
以上のプロセスが遊技媒体貸し出し装置21に投入された紙幣50が紙葉類収容室130に収容されるまでの1サイクルである。各遊技媒体貸し出し装置21に投入された紙幣50が上記のプロセスに従って紙葉類収容室130に集められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第7123453号公報(特開2023-114893号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、キャリア110が紙葉類収容室130に向かって方向X1に走行するときは、その後方部分110bにおいて第一送風機140Aの空気流の風圧を受け、紙葉類収容室130から離れる方向X2に走行するときはその前面110cに第二送風機140Bの空気流の風圧を受ける。すなわち、いずれの場合も、キャリア110の本体部分110aの縦断面の領域に風圧を受ける。
このため、キャリア110の走行速度を上げる場合には、キャリア110の本体部分110aの縦断面積は一定(不変)であるため、第一送風機140A及び第二送風機140Bの風量を大きくすることが必要になるが、そのためには、第一送風機140A及び第二送風機140Bをより大容量の、すなわち、より大きいサイズのものにすることが必要になる。
【0012】
しかしながら、紙葉類搬送装置100を設置するためのスペースは限られており、より大きいサイズの第一送風機140A及び第二送風機140Bを用いることは極めて困難であることが多い。
本発明は以上のような従来の紙葉類搬送装置における問題点に鑑みてなされたものであり、第一送風機140A及び第二送風機140Bのサイズ(容量)を変えることなく、キャリアの走行速度を上げる、あるいは、第一送風機140Aまたは第二送風機140Bより小サイズ(小容量)の送風機を用いてもキャリアの走行速度を維持することを可能にする紙葉類搬送装置及び同紙葉類搬送装置に使用されるキャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明は、紙葉類搬送装置(100)に使用されるキャリア(200, 300, 400)であって、前記紙葉類搬送装置(100)は、ダクト(120)と、前記ダクト(120)内において一方向(X1)及びその逆方向(X2)に流れる空気流を発生させる送風機(140A, 140B, 510)と、を備え、前記キャリア(200, 300, 400)は前記ダクト(120)内を走行可能であり、前記キャリア(200, 300, 400)は前記送風機(140A, 140B, 510)が前記ダクト(120)内に発生させた空気流により前記ダクト(120)内において前記一方向(X1)に走行し、前記ダクト(120)内に投入された紙葉類(50)を後方から押して搬送するものであり、前記キャリア(200, 300, 400)は、前記ダクト(120)内を走行可能なキャリア本体(201)と、前記キャリア本体(201)の上方及び下方の少なくとも何れか一方に突出する少なくとも2個の突出体(202, 302)と、を備えており、前記突出体(202, 302)は前記キャリア本体(201)に対して前記ダクト(120)の長さ方向に延びる前記キャリア本体(201)の中心軸(203)に直交する面内において前記中心軸(203)を中心として揺動可能であることを特徴とする紙葉類搬送装置用キャリア(200, 300, 400)を提供する。
【0014】
例えば、前記突出体(202)は前記キャリア本体(201)の上方及び下方の何れか一方から突出しており、前記突出体(202)は、前記中心軸(203)と直交する面内において一定の幅を有する第一部分(202A)と、前記第一部分(202A)の一端に連続して形成された球体状の第二部分(202B)と、からなり、前記キャリア本体(201)には前記突出体(202)を差し込み可能な前記中心軸(203)と直交して延びるスリット(204)が形成されており、前記スリット(204)は、前記キャリア本体(201)の外周面から前記中心軸(203)に向かって延びる第一スリット部分(204A)と、前記第一スリット部分(204A)の底面に形成され、前記第二部分(202B)が篏合可能な第二スリット部分(204B)と、からなり、前記第一スリット部分(204A)の幅は、前記中心軸(203)と直交する面内において、前記キャリア本体(201)の外周面から前記底面に向かって徐々に小さくなり、前記底面において前記第一スリット部分(204A)の幅は前記突出体(202)の前記第一部分(202A)の幅と等しく、前記スリット(204)に前記突出体(202)を差し込むと、前記突出体(202)の前記第二部分(202B)が前記第二スリット部分(204B)に篏合し、前記突出体(202)の前記第一部分(202A)が前記キャリア本体(201)の外周面から外方に突出しているものであることが好ましい。
【0015】
例えば、前記突出体(302)は前記キャリア本体(201)の上方及び下方の双方から突出しており、前記突出体(302)は前記中心軸(203)と直交する面内において一定の幅を有しており、前記キャリア本体(201)には前記突出体(302)を差し込み可能な前記中心軸(203)と直交して延びる貫通孔(205)が形成されており、前記貫通孔(205)の幅は、前記中心軸(203)と直交する面内において、前記キャリア本体(201)の外周面から前記中心軸(203)に向かって徐々に小さくなり、前記貫通孔(205)の中央において前記貫通孔(205)の幅は前記突出体(302)の幅と等しく、前記貫通孔(205)に前記突出体(302)を差し込むと、前記突出体(302)は前記貫通孔(205)の中央において前記キャリア本体(201)に挟み込まれ、前記突出体(302)は前記キャリア本体(201)の外周面から上方及び下方に突出しているものであることが好ましい。
【0016】
例えば、前記突出体(202)は前記キャリア(200)の走行方向及びその逆方向において前記中心軸(203)を中心として前後に揺動可能であることが好ましい。
例えば、前記突出体(202)は前記中心軸(203)が延びる方向において一定の厚さを有しており、前記中心軸(203)を含む面内における前記第一スリット部分(204A)の幅は、前記キャリア本体(201)の外周面から前記底面に向かって徐々に小さくなり、前記底面において前記第一スリット部分(204A)の幅は前記突出体(202)の厚さと等しいことが好ましい。
例えば、前記突出体(302)は前記中心軸(203)が延びる方向において一定の厚さを有しており、前記中心軸(203)を含む面内における前記貫通孔(205)の幅は、前記キャリア本体(201)の外周面から前記貫通孔(205)の中央に向かって徐々に小さくなり、前記貫通孔(205)の中央において前記貫通孔(205)の幅は前記突出体(302)の厚さと等しいことが好ましい。
【0017】
例えば、前記キャリア本体(201)の前面及び後面の少なくとも何れか一方には前記中心軸(203)と直交する方向に延びる直線(410A)を底辺とするV字型の溝(410)が形成されていることが好ましい。
例えば、前記突出体(202, 302)は、前記キャリア(200, 300, 400)が前記ダクト(120)内を走行中に前記ダクト(120)の内壁に接触したときに、屈曲する程度の柔軟性を有していることが好ましい。
【0018】
本発明は、さらに、ダクト(120)と、前記ダクト(120)内を走行可能なキャリアと、前記ダクト(120)内において空気流を発生させる送風機(140A, 140B, 510)と、を備え、前記送風機が前記ダクト(120)内に発生させた空気流により前記ダクト(120)内において前記キャリアを走行させ、前記ダクト(120)内に投入された紙葉類(50)を前記キャリアを介して搬送する紙葉類搬送装置において、前記キャリアは上述の紙葉類搬送装置用キャリア(200, 300, 400)からなり、前記ダクト(120A)は、前記キャリア本体(201)が通過可能な第一ダクト領域(120b)と、前記キャリア本体(201)から突出する前記突出体(202, 302)が通過可能な第二ダクト領域(120a)と、からなり、前記第一ダクト領域(120b)には、前記第一ダクト領域(120b)から下方に突出する第二ダクト領域(120a)の入り口の両側において、水平面をなす水平領域(120d)が形成されており、前記キャリア本体(201)には、前記キャリア(200, 300, 400)が前記ダクト(120)内を走行するときに、前記水平領域(120d)上を走行する水平面(202B)が形成されていることを特徴とする紙葉類搬送装置(500)を提供する。
【0019】
例えば、前記突出体(202, 302)は、前記キャリア(200, 300, 400)が前記ダクト(120)内を走行中に前記ダクト(120)の内壁に接触したときに、屈曲する程度の柔軟性を有していることが好ましい。
前記送風機は単一の送風機(510)からなり、前記空気流が前記ダクト(120)内において一方向(X1)及びその逆方向(X2)の何れかに流れるように前記空気流が流れる方向を切り換える空気流切り換えユニット(520)をさらに備えることが好ましい。
括弧中の参照符号は後述する実施形態との対応関係を示すためだけのものであり、権利範囲を限定するものではない。
【発明の効果】
【0020】
従来のキャリア110は後方部分110bにおいてのみ第一送風機140Aからの空気流を受けて走行していたが、本発明に係るキャリアはキャリア本体に加えて突出体においても第一送風機140Aからの空気流を受けることができるため、従来のキャリア110と比較して、空気流を受ける面積が大きくなっており、従って、走行速度を上げることが可能である。
ただし、突出体のような外側に突出する突出物をキャリアに設ける場合、その突出物がダクト120の内壁に接触することにより、キャリアの走行速度を減少させるおそれがある。
これに対して、本発明に係るキャリアにおいては、キャリア本体から外側に突出する突出体はキャリア本体の中心軸と直交する面内において揺動可能に形成されているため、突出体がダクトの内壁に接触しても、突出体が揺動し、接触から逃げることができるため、キャリアの走行速度を損なうことが少ない。
【0021】
このように、本発明に係るキャリアにおいては、突出体を設けることにより第一送風機140Aからの空気流を受ける面積を増やすことができるとともに、その面積を増やしたことに伴う問題(突出体がダクトの内壁に接触することがあるという問題)を、突出体を揺動可能に形成することによって解決している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一の実施形態に係るキャリアの六面図である。
図2図1に示したキャリアの斜視図である。
図3】第一の実施形態におけるキャリア本体と突出体との位置関係を示す図である。
図4】本発明の第二の実施形態におけるキャリア本体及び突出体の横断面図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係るキャリアの六面図である。
図6図5に示したキャリアの斜視図である。
図7】本発明の第三の実施形態におけるキャリア本体及び突出体の縦断面図である。
図8】本発明の第三の実施形態における突出体及び第一貫通孔部分の部分的な拡大図である。
図9】本発明の第四の実施形態におけるキャリア本体と突出体との位置関係を示す横断面図である。
【0023】
図10】本発明の第五の実施形態に係るキャリアの六面図である。
図11図10に示したキャリアの斜視図である。
図12】従来の紙葉類搬送装置に使用されるダクトの部分的縦断面図である。
図13】本発明の第六の実施形態において使用されるダクトの部分的縦断面図である。
図14】キャリアがダクトの内部を走行する状態を示す縦断面図である。
図15】本発明の第七の実施形態に係る紙葉類搬送装置の概略図である。
【0024】
図16】従来の紙葉類搬送装置の全体構造及び紙葉類搬送装置が使用される周囲の環境を示す斜視概略図である。
図17】従来の紙葉類搬送装置において用いられるキャリアを正面側から見たときの斜視図である。
図18図17に示したキャリアを背面側から見たときの斜視図である。
図19】従来の紙葉類搬送装置において用いられるダクトの斜視図である。
図20】従来の紙葉類搬送装置におけるキャリア、紙幣及びダクトの相互の位置関係を示す斜視図である。
図21】従来の紙葉類搬送装置におけるキャリア、紙幣及びダクトの相互の位置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係るキャリア200の六面図である。具体的には、図1(A)はキャリア200の左側面図(右側面図は左側面図と左右反対向き)、図1(B)はキャリア200を上方から見た平面図、図1(C)はキャリア200の底面図、図1(D)はキャリア200の正面図、図1(E)はキャリア200の背面図である。図2はキャリア200の斜視図である。具体的には、図2(A)はキャリア200を前方から見たときの斜視図、図2(B)はキャリア200を後方から見たときの斜視図である。
図1及び図2に示すように、キャリア200は、ダクト120の第二領域120bの内部を走行可能なキャリア本体201と、キャリア本体201からキャリア本体201の上方に突出する4個の突出体202と、を備えている。
【0026】
キャリア本体201は一定断面を有する柱状体であり、その縦断面は、図2(A)に示すように、水平方向に延びる直線部分202Aと、直線部分202Aの下方において直線部分202Aと平行に延びる直線部分202Aと同一長さの直線部分202Bと、直線部分202A、202Bの各一端(図2(A)の左端)を連結する半円形状部分202Cと、直線部分202A、202Bの各他端(図2(A)の右端)を連結する半円形状部分202Dと、から構成されている。
キャリア本体201の直線部分202Aにはキャリア本体201の中心軸(ダクト120の長さ方向、すなわち、キャリア200の走行方向に延びる中心軸)203の方向に4個のスリット204が等間隔に形成されている。各スリット204は中心軸203と直交する方向(鉛直方向)において中心軸203に向かって延びている。
【0027】
キャリア本体201は軽量かつ低摩擦係数の素材、例えば、テフロン(登録商標)系の素材で作られる。
4個の突出体202の各々は各スリット204に差し込まれており、以下に述べるように、突出体202は中心軸203に直交する面内(後述の図3(A)が描かれている面内)において中心軸203を中心として時計回りの方向及び反時計回りの方向に揺動可能であるように支持されている。
図3はキャリア本体201と突出体202との位置関係を示す図である。具体的には、図3(A)はキャリア本体201及び突出体202の縦断面図、図3(B)は横断面図である。
図3(A)に示すように、各突出体202は、中心軸203と直交する面内において一定の幅を有する長方形形状の第一部分202Aと、第一部分202Aの下端に連続して形成された球体状の第二部分202Bと、から構成されている。
【0028】
図3(A)に示すように、各スリット204は、キャリア本体201の外周面から中心軸203の手前まで延びる第一スリット部分204Aと、第一スリット部分204Aの底面に形成され、突出体202の球体状の第二部分202Bが篏合可能な球状の第二スリット部分204Bと、から構成されている。
球状の第二スリット部分204Bの中心は第一スリット部分204Aの中心線(図3(A)の上下方向に延びる中心線)上にあるとともに、キャリア本体201の中心軸203上に位置している。
図3(A)に示すように、第一スリット部分204Aの内壁は斜面をなしている。具体的には、中心軸203と直交する面内における第一スリット部分204Aの幅(図3(A)の左右方向における長さ)はキャリア本体201の外周面から底面に向かって徐々に小さくなり、底面において第一スリット部分204Aの幅は突出体202の第一部分202Aの幅と等しくなるように形成されている。
【0029】
図3(B)に示すように、突出体202の第一部分202Aの厚さ(図3(B)の左右方向における長さ、すなわち、ダクト120の長さ方向における長さ)は一定であるとともに、第一スリット部分204Aの幅(図3(B)の左右方向における長さ)も一定であり、突出体202の第一部分202Aの厚さは第一スリット部分204Aに篏合可能な厚さに設定されている。
このため、突出体202は第二部分202Bの中心を中心として第一スリット部分204Aの内部を左右両方向に揺動可能である。
突出体202をスリット204に差し込むと、突出体202の第二部分202Bが第二スリット部分204Bに篏合し(図3参照)、突出体202の第一部分202Aがキャリア本体201の外周面から上方に突出する(図2及び図3参照)。
【0030】
キャリア200は、例えば、図16に示した紙葉類搬送装置100において使用することができ、その場合には、ダクト120の形状はキャリア200の形状に合わせて変更される。具体的には、ダクト120の第二領域120bはキャリア本体201が篏合可能な形状に形成され、第一領域120aは第二領域120bから上方に延びるもののみ形成されるとともに、この第一領域120aは突出体202が篏合可能な形状に形成される。
上記のような構造を有する本実施形態に係るキャリア200は以下のように作動する。
ダクト120の内部に投入されたキャリア200は第一送風機140Aからの空気流を受けて紙葉類収容室130に向かって方向X1において走行する。
従来のキャリア110は後方部分110bにおいてのみ第一送風機140Aからの空気流を受けて走行していたが、本実施形態に係るキャリア200はキャリア本体201に加えて突出体202においても第一送風機140Aからの空気流を受けることができるため、従来のキャリア110と比較して、空気流を受ける面積が大きくなっており、従って、走行速度を上げることが可能である。
【0031】
ただし、突出体202のような外側に突出する突出物をキャリアに設ける場合、その突出物がダクト120の内壁に接触することにより、キャリアの走行速度を減少させるおそれがある。
これに対して、本実施形態に係るキャリア200においては、キャリア本体201から外側に突出する突出体202は中心軸203と直交する面内において揺動可能に形成されているため、突出体202がダクト120の内壁に接触しても、キャリア200の走行速度を損なうことが少ない。
上述のように、突出体202の第一部分202Aはスリット204の第一スリット部分204A内において揺動可能である。具体的には、突出体202の第一部分202Aは第二部分202Bの中心の周りに時計回りの方向R1及び反時計回りの方向R2(図3(A)参照)に揺動可能である。
【0032】
このため、何らかの原因によって突出体202の第一部分202Aの左側がダクト120の内壁に接触した場合、第一部分202Aは時計回りの方向R1に揺動することにより、接触から逃げることができ、あるいは、突出体202の第一部分202Aの右側がダクト120の内壁に接触した場合、第一部分202Aは反時計回りの方向R2に揺動することにより、接触から逃げることができる。
このように、本実施形態に係るキャリア200においては、突出体202を設けることにより第一送風機140Aからの空気流を受ける面積を増やすことができるとともに、その面積を増やしたことに伴う問題(突出体202がダクト120の内壁に接触することがあるという問題)を、突出体202を揺動可能に形成することによって解決している。
また、突出体202がダクト120の内壁に接触したときのキャリア200の走行速度の低減を最小にするため、突出体202はダクト120の内壁に接触したときに屈曲する程度の柔軟性を有していることが好ましい。
【0033】
例えば、突出体202は柔軟性に優れるナイロン系の素材で作ることが好ましい。
本実施形態に係るキャリア200は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
例えば、キャリア本体201の形状は上記の形状に限定されるものではなく、円形その他の任意の形状とすることができる。
また、突出体202の数は4には限定されない。突出体202の数は2以上であればよい。突出体202を2個以上とすることにより、そのうちの1個の突出体202が破損しても、他の突出体202が突出体202としての機能を発揮することができる。
【0034】
(第二の実施形態)
第一の実施形態においては、図3(A)に示したように、各突出体202は中心軸203と直交する面内において揺動可能であるように形成されているが、各突出体202は中心軸203を含む面内においても揺動可能であるように形成することができる。
図4は、本実施形態におけるキャリア本体201及び突出体202の図3(B)と同様の横断面図である。
図4に示すように、中心軸203を含む面内における第一スリット部分204Aの幅は、キャリア本体201の外周面から第一スリット部分204Aの底面に向かって徐々に小さくなり、第一スリット部分204Aの底面において第一スリット部分204Aの幅は突出体202の厚さ(中心軸203の方向の長さ)と等しくなるように設定されている。
【0035】
すなわち、本実施形態においては、第一スリット部分204Aは中心軸203と直交する面内においてのみならず(図3(A)参照)、中心軸203を含む面内においても台形形状をなしている。このため、突出体202は中心軸203を含む面内においてもキャリア200の走行方向及びその逆方向において第二部分202Bの中心を中心として前後に揺動可能である。
このように、突出体202が二つの異なる方向における揺動、すなわち、中心軸203と直交する面内における揺動及び中心軸203を含む面内における揺動を行うことが可能であることにより、キャリア200の走行中において突出体202がダクト120の内壁に接触しても、突出体202がその接触から逃げる向きが増えるため、キャリア200の走行速度の減少度合いを少なくすることができる。
【0036】
(第三の実施形態)
第一の実施形態に係るキャリア200においては、突出体202はキャリア本体201の上方にのみ突出するものとして形成されているが、突出体202をキャリア本体201の上方及び下方の双方に突出するものとして形成することも可能である。
図5は本発明の第二の実施形態に係るキャリア300の六面図である。具体的には、図5(A)はキャリア300の左側面図(右側面図は左側面図と左右反対向き)、図5(B)はキャリア300を上方から見た平面図、図5(C)はキャリア300の底面図、図5(D)はキャリア300の正面図、図5(E)はキャリア300の背面図である。図6はキャリア300の斜視図である。具体的には、図6(A)はキャリア300を前方から見たときの斜視図、図6(B)はキャリア300を後方から見たときの斜視図である。
【0037】
図5及び図6に示すように、本実施形態における突出体302はキャリア本体201から上方及び下方の双方に突出している。
図7はキャリア本体201及び突出体302の縦断面図である。
本実施形態における突出体302は一定の幅を有するプレート形状をなしており、上端及び下端の付近にそれぞれ切り欠き302Cが形成されている。
キャリア本体201には突出体302を差し込み可能なスリット状の貫通孔205が中心軸203と直交して延びている。
貫通孔205は、キャリア本体201の上方外周面からキャリア本体201の中心まで延びる第一貫通孔部分205Aと、キャリア本体201の下方外周面からキャリア本体201の中心まで延びる第二貫通孔部分205Bと、からなる。
【0038】
第一貫通孔部分205Aは第一の実施形態におけるスリット204の第一スリット部分204Aと同一の形状をなしている。すなわち、第一貫通孔部分205Aは、中心軸203と直交する面内における第一貫通孔部分205Aの幅(図7の左右方向における長さ)がキャリア本体201の外周面から底面に向かって徐々に小さくなり、第一貫通孔部分205Aの底面において第一スリット部分204Aの幅は最小になるとともに、突出体302の幅と等しくなるように形成されている。
第二貫通孔部分205Bは第一貫通孔部分205Aとは向きが上下反対の同一形状である。
このように、貫通孔205はキャリア本体201の外周面において最も幅が大きく、キャリア本体201の中心において最も幅が小さくなり、かつ、突出体302の幅と等しくなるように形成されている。
【0039】
突出体302の厚さ(キャリア300の走行方向における長さ、すなわち、ダクト120の長さ方向における長さ)は一定である。貫通孔205の厚さも一定であり、貫通孔205の厚さは突出体302が篏合可能である厚さに設定されている(図3(B)と同じ設定)。
このため、突出体302を貫通孔205に差し込むと、突出体302はキャリア本体201の中心(第一貫通孔部分205Aと第二貫通孔部分205Bとの境界)においてキャリア本体201の内壁に両側から挟み込まれた状態になり、貫通孔205の内部に保持された状態になる。貫通孔205に差し込まれた突出体302はキャリア本体201の上方及び下方から突出している。
【0040】
突出体302は、第一の実施形態における突出体202と同様に、中心軸203を中心として時計回りの方向R1及び反時計回りの方向R2に揺動可能である。このため、キャリア300がダクト120の内部を走行中にダクト120の内壁に接触しても、接触に起因するキャリア300の走行速度の減少を最小限に抑えることができる。
また、キャリア300の突出体302はキャリア本体201の上方のみならず下方にも突出しているため、第一送風機140Aから送られてくる空気流をキャリア200よりも多く受けることが可能であり、キャリア200よりも走行速度を上げることができる。
上述のように、突出体302の上端及び下端の付近にそれぞれ切り欠き302Cが形成されている。以下、切り欠き302Cの作用を説明する。
図8は突出体302及び第一貫通孔部分205Aの部分的な拡大縦断面図である。
【0041】
図8に示すように、キャリア本体201の外周には突出壁201Aが形成されている。突出壁201Aは第一貫通孔部分205Aと干渉しない範囲において第一貫通孔部分205Aの直上において第一貫通孔部分205Aの内部に向かって突出している。
さらに、突出壁201Aは、切り欠き302Cより下方にある突出体302の本体部分302Aが第一貫通孔部分205Aの内部で揺動しても、本体部分302Aはとは干渉しないように形成されている。すなわち、本体部分302Aが第一貫通孔部分205Aの内部で揺動しても、本体部分302Aは突出壁201Aの直下を通過するにすぎない。
突出体302は貫通孔205の中央でキャリア本体201に挟み込まれているだけであるので、機構的に突出体302が貫通孔205から抜け出る可能性は否定できないが、突出壁201Aを貫通孔205の上下口に設けることにより、突出体302が貫通孔205から抜け出ることを防止することが可能である。
【0042】
(第四の実施形態)
第三の実施形態においては、突出体302は中心軸203と直交する面内においてのみ揺動可能に形成されているが、第二の実施形態と同様に、突出体302は中心軸203を含む面内においても揺動可能であるように形成することが可能である。
図9は本実施形態におけるキャリア本体201と突出体302との位置関係を示す横断面図である。
図9に示すように、本実施形態における貫通孔205はキャリア300の走行方向(ダクト120の長さ方向)においても、第三の実施形態における第一貫通孔部分205A及び第二貫通孔部分205Bと同様に、内壁が上下対称の斜面状に形成されている。
このため、突出体302は、中心軸203と直交する面内において揺動可能であるとともに、中心軸203を含む面内においてもキャリア300の走行方向の前後に揺動可能である。
これにより、第三の実施形態と比較して、キャリア300の走行中において突出体302がダクト120の内壁に接触しても、突出体302がその接触から逃げる向きが増えるため、キャリア300の走行速度の減少度合いを少なくすることができる。
【0043】
(第五の実施形態)
図10は本発明の第五の実施形態に係るキャリア400の六面図である。具体的には、図10(A)はキャリア400の左側面図(右側面図は左側面図と左右反対向き)、図10(B)はキャリア400を上方から見た平面図、図10(C)はキャリア400の底面図、図10(D)はキャリア400の正面図、図10(E)はキャリア400の背面図である。図11はキャリア400の斜視図である。具体的には、図11(A)はキャリア400を前方から見たときの斜視図、図11(B)はキャリア400を後方から見たときの斜視図である。
キャリア400は、第三または第四の実施形態に係るキャリア300と比較して、キャリア本体201の前面及び後面にV字型の溝410が追加的に形成されている。V字型溝410が形成されている点を除いて、キャリア400はキャリア300と同一の構造を有している。
【0044】
V字型溝410はキャリア本体201の中心軸203と直交する鉛直方向に延びる線を底辺410Aとして有している。キャリア本体201の前面及び後面から底辺410Aに向かって一対の斜面410B,410Cが延びており、二つの斜面410B及び斜面410Cは底辺410Aで交差している。
V字型溝410は二つの斜面410B及び斜面410Cと底辺410Aとから構成されており、底辺410Aの中心にはキャリア本体201の中心軸203が通過している。
V字型溝410の深さは紙幣50をV字型溝410の内部に安定的に収容できる深さであれば任意の深さを選択することができる。例えば、V字型溝410の深さは紙幣50の長辺の1/5から3/5の長さの範囲内に設定される。
【0045】
キャリア400が紙幣50を捕捉すると、紙幣50はV字型溝410の内部に収容され、そのまま紙葉類収容室130に運ばれる。このため、V字型溝410が形成されていないキャリア300と比較して、確実に紙幣50を捕捉し、かつ、安定的に紙幣50を搬送することが可能である。
V字型溝410はキャリア本体201の前面及び後面の双方に形成することは必ずしも必要ではなく、前面及び後面の何れか一方に形成してもよい。
V字型溝410をキャリア本体201の前面及び後面の何れか一方に形成した場合には、キャリア400の前後を区別することが必要になるが(V字型溝410が形成された側が前になる)、V字型溝410をキャリア本体201の前面及び後面の双方に形成する場合には、キャリア400の前後を区別する必要がなくなる。
【0046】
(第六の実施形態)
図12図16に示した紙葉類搬送装置100に使用されるダクト120の部分的縦断面図である。
図12に示すように、第一領域120aと第二領域120b(第二領域120bの上下に二つある第一領域120aのうち下方にあるもの)とが連結される連結箇所120cは角張っている。キャリア110は常に連結箇所120c上を走行するため、連結箇所120cがキャリア110の底面側と接触し、両者間の摩擦が大きくなり、キャリア110の走行速度の減少の一因となっていた。
本実施形態はこのような問題点を解決するものである。
【0047】
図13は本実施形態において使用されるダクト120Aの部分的縦断面図である。
図13に示すように、本実施形態におけるダクト120Aにおいては、第二領域120bには連結箇所120cを始点として外側に延び、一定長さを有する水平領域120dが形成されている。
図14はキャリア200がダクト120Aの内部を走行する状態を示す縦断面図である。
上記のように、キャリア本体201の底面には水平面状の直線部分202Bが形成されている。図14に示すように、キャリア200がダクト120Aの内部を走行するときには、キャリア本体201の直線部分202Bが第二領域120bの水平領域120d上を走行する。
【0048】
直線部分202Bと水平領域120dとの間の摩擦係数はキャリア110の曲面状の外周面と角張っている連結箇所120cとの間の摩擦係数よりは小さいので、キャリア200がダクト120Aの内部を走行するときにダクト120Aから受ける摩擦力はキャリア110がダクト120の内部を走行するときにダクト120から受ける摩擦力より小さい。このため、空気流が同一であれば、キャリア200はキャリア110よりも大きい走行速度及びキャリア110よりも長い走行可能距離を得ることができる。
キャリア200に代えてキャリア300(図5または図6参照)またはキャリア400(図10または図11参照)を用いる場合も同様の効果を得ることができる。
【0049】
(第七の実施形態)
上記の実施形態に係るキャリア200,300,400を使用すれば、キャリア110と比較して、同一の空気流であれば、走行速度を上げることができ、あるいは、より少ない空気流で走行速度を維持することができる。
従来の紙葉類搬送装置100は第一送風機140A及び第二送風機140Bの2個の送風機を使用していたが、キャリア200,300,400を使用することにより、第一送風機140Aまたは第二送風機140Bより小サイズ(小容量)の送風機を1個だけ用いても、紙葉類搬送装置を作動させることが可能である。
図15は本発明の第七の実施形態に係る紙葉類搬送装置500の概略図である。
紙葉類搬送装置500は、従来の紙葉類搬送装置100と比較して、第一送風機140A及び第二送風機140Bに代えて、単一の送風機510と,空気流切り替えユニット520と、を備えている。
【0050】
送風機510は第一送風機140Aまたは第二送風機140Bより小サイズ(小容量)の送風機である。
送風機510の空気流吐出口は空気流切り替えユニット520に接続され、空気流切り替えユニット520はキャリア送り出し装置150を介してダクト120の一端(図15の右端)に接続され、さらに、キャリア収納ユニット160及びキャリア収納用ダクト141を介してダクト120の他端(図15の左端)に接続されている。
紙葉類搬送装置500はキャリア110に代えてキャリア200,300,400の何れかを使用する。
【0051】
空気流切り替えユニット520の作動は制御装置によって制御され、キャリア200,300,400の走行方向に応じて、送風機510からの空気流をダクト120の一端側または他端側に送り込む。キャリア200,300,400は送風機510からの空気流によってダクト120の内部を往復して走行する。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置500によれば、キャリア200,300,400を使用することにより、第一送風機140Aまたは第二送風機140Bより小サイズ(小容量)の送風機510を1個だけ用いても、2個の送風機を使用した従来の紙葉類搬送装置100と同等のキャリアの走行速度を維持することができ、ひいては、紙幣50の搬送効率を維持することができる。
あるいは、送風機510のサイズを大きくすれば、キャリアの走行速度を上げることができ、ひいては、紙幣50の搬送効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
200 本発明の第一の実施形態に係るキャリア
201 キャリア本体
202 突出体
203 中心軸
204 スリット
300 本発明の第二の実施形態に係るキャリア
302 突出体
205 貫通孔
400 本発明の第五の実施形態に係るキャリア
410 V字型溝
500 本発明の第七の実施形態に係る紙葉類搬送装置
510 送風機
520 空気流切り替えユニット
【要約】
【課題】ダクトの内部に送風機からの空気流を送り込み、ダクトの内部でキャリアを走行させることにより、ダクトの内部で紙幣を搬送する紙葉類搬送装置において、従来の送風機よりも小サイズの送風機を用いてもキャリアの走行速度を維持することができるキャリアを提供する。
【解決手段】キャリア本体(201)から上方に突出する突出体(202)を設け、突出体(202)はキャリア本体(201)の中心軸(203)と直交する面内においてキャリア本体(201)の中心軸(203)を中心として揺動可能に形成される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21