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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】スライム処理装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/06 20060101AFI20241202BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20241202BHJP
   E02D 5/18 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
E02D15/06 101
E02D5/34 Z
E02D5/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024117405
(22)【出願日】2024-07-23
【審査請求日】2024-07-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391039829
【氏名又は名称】東洋テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】落合 利行
(72)【発明者】
【氏名】山田 正毅
(72)【発明者】
【氏名】早川 哲生
(72)【発明者】
【氏名】所 義登
(72)【発明者】
【氏名】荒岡 利文
(72)【発明者】
【氏名】佐々倉 守人
(72)【発明者】
【氏名】村田 知
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-027558(JP,U)
【文献】特開2002-161692(JP,A)
【文献】特開2005-120784(JP,A)
【文献】中国実用新案第213926453(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 15/06
E02D 5/34
E02D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリートが打ち込まれる杭孔に安定液が満たされた状態で、前記杭孔の底部に堆積したスライムを吸引するスライム処理装置であって、
前記底部に近接して安定液を撹拌する撹拌機と、
前記撹拌機と間を空けた位置で、前記底部に近接して安定液と共にスライムを吸引する吸引ポンプと、
地上から伸びた単一の動力線、前記撹拌機に接続された撹拌機用電線及び前記吸引ポンプに接続されたポンプ用電線が接続された結線室と、を有し、
前記吸引ポンプが、前記結線室を有する、
ことを特徴とするスライム処理装置。
【請求項2】
前記結線室において、前記動力線に含まれた第一電線と前記撹拌機用電線とが結線され、前記動力線に含まれた第二電線と前記ポンプ用電線とが結線されている、
ことを特徴とする請求項1に記載されたスライム処理装置。
【請求項3】
前記結線室において、前記動力線と、前記撹拌機用電線及び前記ポンプ用電線とが結線されている、
ことを特徴とする請求項1に記載されたスライム処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎工における掘削孔の杭底に堆積したスライムを吸引するためのスライム処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎工では、地盤を支持層まで掘削し、掘削孔に、配筋やコンクリートの打設によってコンクリート杭を構築する場所打ちコンクリート杭工法がある。この工法では、地下水圧等による掘削孔の崩壊を防ぐため、ベントナイト泥水等の安定液で掘削孔が満たされた状態で削孔される。削孔によって生じた土砂やスライム(以下、スライム等と記す。)は、杭底に沈殿するところ、これらの不純物の上からコンクリートが打設されると、コンクリートの品質不良が生じる場合や、所望の杭底が形成されない場合がある。特に、底部が拡径した拡底杭の場合、掘削孔の直径は、軸部よりも杭底の方が大きいため、隅に堆積したスライム等の除去が困難である。
【0003】
スライム等を除去するための技術として、例えば、下記特許文献1に記載された技術がある(以下、文献公知1発明と記す。)。文献公知1発明は、サンドポンプの吸引口の下方に、プロペラ式撹拌機が取り付けられたものである。サンドポンプの吸引とプロペラ式撹拌機の回転とは、別々の駆動源に基づいて稼働する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-120784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したとおり、文献公知1発明は、サンドポンプの吸引とプロペラ式撹拌機の回転とが、別々の駆動源で稼働することから、それぞれにケーブルを要する。基礎工の設計条件によっては、例えば、直径が四十から五十ミリメートル程度のケーブルを、地上から杭底に八十メートル程度下ろす場合もあるため、この場合、配線の取り回しや、重量に抗してケーブルを支えることは、困難である。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものであり、撹拌機と吸引ポンプとを備えつつ、動力線の扱いが容易なスライム処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るスライム処理装置は、場所打ちコンクリートが打ち込まれる杭孔に安定液が満たされた状態で、前記杭孔の底部に堆積したスライムを吸引するスライム処理装置であって、前記底部に近接して安定液を撹拌する撹拌機と、前記撹拌機と間を空けた位置で、前記底部に近接して安定液と共にスライムを吸引する吸引ポンプと、地上から伸びた単一の動力線、前記撹拌機に接続された撹拌機用電線及び前記吸引ポンプに接続されたポンプ用電線が接続された結線室と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るスライム処理装置は、前記吸引ポンプが、前記結線室を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るスライム処理装置は、前記結線室において、前記動力線に含まれた第一電線と前記撹拌機用電線とが結線され、前記動力線に含まれた第二電線と前記ポンプ用電線とが結線されている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るスライム処理装置は、前記結線室において、前記動力線と、前記撹拌機用電線及び前記ポンプ用電線とが結線されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスライム処理装置は、場所打ちコンクリートが打ち込まれる杭孔に安定液が満たされた状態で、杭孔の底部に堆積したスライムを吸引するものであって、底部に近接して安定液を撹拌する撹拌機と、撹拌機と間を空けた位置で、底部に近接して安定液と共にスライムを吸引する吸引ポンプと、地上から伸びた単一の動力線、撹拌機に接続された撹拌機用電線及び吸引ポンプに接続されたポンプ用電線が接続された結線室とを有している。すなわち、単一の動力線で、撹拌機及び吸引ポンプへの通電が賄われるため、撹拌機に要する動力線と、吸引ポンプに要する動力線とが、別々であった場合と比較して、動力線の扱いが容易である。また、地上において、巻取装置で容易に動力線を巻き取ることができる。
【0012】
本発明に係るスライム処理装置は、吸引ポンプが、結線室を有している。したがって、止水性や耐久性のある結線室が実現する。
【0013】
本発明に係るスライム処理装置は、結線室において、動力線に含まれた第一電線と撹拌機用電線とが結線され、動力線に含まれた第二電線とポンプ用電線とが結線されている。したがって、撹拌機と吸引ポンプとを、個別に制御することができる。
【0014】
本発明に係るスライム処理装置は、結線室において、動力線と、撹拌機用電線及びポンプ用電線とが結線されている。したがって、撹拌機と吸引ポンプとを、連動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係るスライム処理装置が杭孔に建て込まれている様子が示された杭孔断面概略図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係るスライム処理装置が杭孔に建て込まれた状態の透し側面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係るスライム処理装置が杭孔に建て込まれた状態の平面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係るスライム処理装置の結線室の概略断面図である。
図5図5は、本発明の第二実施形態に係るスライム処理装置の結線室の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下は、本発明の実施形態に係るスライム処理装置の説明である。図1には、本実施形態に係るスライム処理装置10が杭孔1に建て込まれる様子が示されている。図2及び3には、スライム処理装置10が示されている。
【0017】
図1に示されているとおり、本実施形態に係るスライム処理装置10は、場所打ちコンクリート杭工法において、スライム等(図示省略)を除去するために用いられる。すなわち、場所打ちコンクリート杭工法では、場所打ちコンクリート(図示省略)が打ち込まれる杭孔1は、安定液6で満たされた状態で掘削されるところ、掘削によってスライム等が杭底に堆積する。スライム等は、場所打ちコンクリート杭(図示省略)の品質に影響するため、スライム処理装置10によって、スライム等が吸引される。なお、杭孔1は、例えば、アースドリル工法、オールケーシング工法又はリバース工法等によって掘削され、地上から連なった軸部2の下端に、直径が軸部2よりも大きな拡底部3が形成されている。拡底部3は、概ね円形であり、円の中心及びその近傍である中央部4と、円周である隅部5とを有している。
【0018】
図2及び3に示されているとおり、スライム処理装置10は、枠部材11と、この枠部材11に取り付けられた撹拌機25及び吸引ポンプ27と、この吸引ポンプ27に連結されて地上に伸びたフレキシブル管28と、枠部材11に取り付けられて撹拌機25及び吸引ポンプ27の周囲を囲った枠板部13と、重心を調整するための浮き部材29と、拡底部3における位置を移動させるための操作を地上で行う操作部(図示省略)とを有している。なお、以下の説明では、平面視において、拡底部3の中央部4から隅部5に向かう方向を前方、隅部5から中央部4に向かう方向を後方、前後方向と直交する方向を左方又は右方とする(図3参照)。
【0019】
枠部材11は、複数のフレーム材12と、このフレーム材12に固定された複数の補強材34とから構成され、外周を構成する部材として、枠板部13を有している(以下、枠部材11及び枠板部13を合わせて、「枠本体部」と記す。)。フレーム材12は、例えば、H鋼等である。補強材34は、長手の棒状であり、フレーム材12に溶接されている。枠本体部の後部のフレーム材12には、バランスウェイト35が溶接されている。
【0020】
枠板部13は、補強材34に溶接されている。枠板部13は、杭孔1の杭壁7と対面する前枠部14と、この前枠部14の反対側に在る後枠部17と、前枠部14の両端と後枠部17の両端とにそれぞれ連結された両側枠部18とを有している。枠板部13は、平面視において四角形状又は扇形状であり、前枠部14が、後枠部17よりも広く形成されている。各枠部14,17,18に囲まれたことで画定された内側には、処理空間21が形成されている。枠板部13の上端は開放され、上端開口部19が形成され、同様に、枠板部13の下端も開放され、下端開口部20が形成されている。したがって、処理空間21の上下は、上端開口部19及び下端開口部20を通じて開放されている。
【0021】
前枠部14は、拡底部3に対して垂直又は概ね垂直な垂直面部15と、この垂直面部15の上端に連接されて内側に向けて傾斜した傾斜面部16とを有している。垂直面部15は、前枠部14の下部であり、傾斜面部16は、前枠部14の上部である。側枠部18には、拡底部3の深度を測定するための検測テープ23が通された支持部22が形成されている。検測テープ23は、目盛が記され、先端に鉄製の検測用錘24が取り付けられている。検測テープ23は、地上からフレキシブル管28に沿って伸び、支持部22を介して前枠部14の傍に配置されるため、検測用錘24は隅部5に降ろされる。
【0022】
撹拌機25及び吸引ポンプ27は、枠板部13の処理空間21内に配置されている。撹拌機25は、枠本体部の前枠部14寄りに配置され、フレーム材12に取り付けられている。吸引ポンプ27は、枠本体部の後枠部17寄りに配置され、フレーム材12に取り付けられている。撹拌機25は、撹乱羽根26が拡底部3に向けられた姿勢で、拡底部3に近接して配置されている。吸引ポンプ27は、撹拌機25と間を空けた位置で、吸引口が拡底部3に向けられた姿勢で、拡底部3に近接して配置されている。吸引ポンプ27は、羽根部36を有し、この羽根部36は、吸引口の近傍に在る。吸引ポンプ27に連結されたフレキシブル管28は、例えば蛇腹形状であり、弾性変形する。
【0023】
浮き部材29は、エアーや発泡材等のフロートである。浮き部材29は、アングル等の棒状部材を介して、枠本体部に連結されている。具体的には、長尺棒状部材30は、枠部材11の上端において、上端開口部19を渡った状態でフレーム材12に連結されており、短尺棒状部材31は、側枠部18の下端において、外側に向かって張り出した状態で側枠部18に連結されている。浮き部材29は、長尺棒状部材30と短尺棒状部材31との間であって、側枠部18の外側に配置され、各棒状部材30,31に連結されている。
【0024】
撹拌機25及び吸引ポンプ27は、フレーム材12に対して着脱自在であり、浮き部材29も、フレーム材12に対して長尺棒状部材30ごと着脱自在である。したがって、枠本体部、撹拌機25及び吸引ポンプ27、浮き部材29は、それぞれに分離可能である。
【0025】
ここで、吸引ポンプ27を図面に基づいて説明する。図4には、吸引ポンプ27の一部断面が示されている。
【0026】
吸引ポンプ27は、駆動源(図示省略)である三相交流モーター等が収容された本体部37を有し、本体部37の上部に、結線室38が形成されている。図4に示されているとおり、結線室38には、地上から杭底部3に向かって伸びた単一の動力線40と、撹拌機25に接続された撹拌機用電線44と、駆動源に接続されたポンプ用電線46とが接続されている。動力線40及び各電線44,46と結線室38との接続部位は、浸水防止のための水密処理が施されている。
【0027】
動力線40は、例えば、キャブタイヤケーブル等であり、ゴムやポリ塩化ビニル等で被覆されている。動力線40には、複数の電線とアース線43とが含まれている。動力線40に含まれた複数の電線の一部である第一電線41には、リード線[U相]41u、リード線[V相]41v及びリード線[W相]41wが含まれている。また、動力線40に含まれた複数の電線の一部である第二電線42は、リード線[U相]42u、リード線[V相]42v及びリード線[W相]42wが含まれている。したがって、動力線40には、少なくとも、七本のケーブル(アース線43、第一電線41(リード線[U相]41u、リード線[V相]41v、リード線[W相]41w)、第二電線42(リード線[U相]42u、リード線[V相]42v、リード線[W相]43w))が含まれている。なお、図4では、第一電線41及び第二電線42が簡略化されて図示され、各電線41,42のうち、単一のリード線41[U相]u及び42[U相]uのみが表れている。
【0028】
撹拌機用電線44には、複数の電線とアース線45とが含まれている。撹拌機用電線44に含まれた複数の電線は、リード線[U相]44u、リード線[V相]44v、リード線[W相]44wである。ポンプ用電線46には、複数の電線が含まれている。ポンプ用電線46に含まれた複数の電線は、リード線[U相]46u、リード線[V相]46v、リード線[W相]46wである。なお、図4では、撹拌機用電線44及びポンプ用電線46が簡略化されて図示され、単一のリード線[U相]44u、リード線[U相]46uのみが表れている。
【0029】
動力線40のアース線43及び撹拌機用電線44のアース線45は、いずれも結線室38内の一部にボルトで共締めさて固定されている。第一電線41のリード線[U相]41uと、撹拌機用電線44のリード線[U相]44uとが結線され、第一電線41のリード線[V相]41vと、撹拌機用電線44のリード線[V相]44vとが結線され、第一電線41のリード線[W相]41wと、撹拌機用電線44のリード線[W相]44wとが結線されている。同様に、第二電線42のリード線[U相]42uと、ポンプ用電線46のリード線[U相]46uとが結線され、第二電線42のリード線[V相]42vと、ポンプ用電線46のリード線[V相]46vとが結線され、第二電線42のリード線[W相]42wと、ポンプ用電線46のリード線[W相]46wとが結線されている。
【0030】
上記のとおり、スライム処理装置10が構成されている。スライム処理装置10は、単一の動力線40で、撹拌機25及び吸引ポンプ27への通電が賄われるため、撹拌機25に要する動力線と、吸引ポンプ27に要する動力線とが、別々であった場合と比較して、動力線40の扱いが容易である。また、地上において、巻取装置(図示省略)で容易に動力線40を巻き取ることができる。
【0031】
スライム処理装置10では、結線室38が、吸引ポンプ27の本体部37の上部に形成されている。したがって、止水性や耐久性のある結線室38が実現する。また、結線室38では、動力線40の第一電線41と撹拌機用電線44とがシリアル接続され、動力線40の第二電線42とポンプ用電線46とがシリアル接続されているため、撹拌機25と吸引ポンプ27とを、個別に制御することができる。
【0032】
次に、スライム処理装置10の使用方法を説明する。
【0033】
図1に示されているとおり、スライム処理装置10が杭孔1に建て込まれ、安定液6中に沈められる。枠板部13の処理空間21の上下は開放されており(図2参照)、安定液6が、処理空間21を通過して上方に抜けていくため、安定液6からの圧力を受けにくい。よって、スライム処理装置10は容易に沈められる。
【0034】
図2に示されているとおり、拡底部3に到着したスライム処理装置10は、枠板部13の前枠部14が、杭壁7及び隅部5に沿う位置に配置される。撹拌機25及び吸引ポンプ27が稼働すると、撹拌機25によって安定液6が撹拌されることによって水流が発生し、水流によってスライム等も撹拌する。撹拌機25は、枠板部13の内側に配置されているため、スライム等も枠板部13の内側で撹拌するうえ、吸引ポンプ27も枠板部13の内側に配置されているため、処理空間21内において、吸引ポンプ27によって、安定液6と共にスライム等が確実に吸引される。
【0035】
具体的には、撹拌機25は、放射状に水流を発生させるため、一部の水流は、吸引ポンプ27に向かい、スライム等は吸引ポンプ27に直接吸引される(図2中の矢印32)。一方で、吸引ポンプ27とは反対側に発生した水流に乗ったスライム等は、吸引ポンプ27と反対側に離れていくが、離れた先には、前枠部14が在り、傾斜面部16が撹拌機25に向けて傾斜しているため、傾斜面部16に当たった水流は折り返されて吸引ポンプ27に向かう(図2中の矢印33)。その際、拡底部3の隅部5に堆積したスライム等も、水流によって巻き上がり、吸引ポンプ27に向かう。よって、枠板部13の内側(処理空間21)において撹拌されたスライム等は、隅部5に堆積したスライム等も含めて、吸引ポンプ27によって、的確に、かつ、効率的に吸引される。吸引されたスライム等は、フレキシブル管28を通じて地上に排出される。
【0036】
図3において、スライム処理装置10は、拡底部3内の隅部5を周回させられる。地上では、クレーン等(図示省略)によって枠本体部が吊り上げられ、操作部が操作される。スライム処理装置10が拡底部3内を移動し、スライム等が堆積した部位に配置されることで、拡底部3の全域において、的確に、かつ、効率的にスライム等を吸引することができる。
【0037】
スライム処理装置10が安定液6中に沈められる際、また、スライム処理装置10が拡底部3を移動させられる際、フレキシブル管28は、水流による圧力の影響を受け、不本意に曲がったり流されたりする場合があるうえ、撹拌機25や吸引ポンプ27の重さによって、スライム処理装置10は、重心の方向に傾く場合があるが、浮き部材29によって重心が調整される。よって、スライム処理装置10を安定させて移動することができる。
【0038】
スライム処理装置10では、側枠部18に支持部22が形成され、支持部22に、拡底部3の深度を測定するための検測テープ23が通されている。検測テープ23は、地上からフレキシブル管28に沿って伸び、支持部22を介して前枠部14の傍に配置されるため、検測用錘24は隅部5に降ろされる。よって、隅部5における拡底部3の深度を測定することができる。
【0039】
スライム処理装置10では、撹拌機25及び吸引ポンプ27は、フレーム材12に対して着脱自在であり、浮き部材29も、フレーム材12に対して長尺棒状部材30ごと着脱自在である。フレーム材12から撹拌機25及び吸引ポンプ27が取り外されることで、枠本体部の搬送が容易である。また、撹拌機25及び吸引ポンプ27は、他のスライム処理装置にも適用することができ、汎用性が高い。
【0040】
スライム処理装置10では、吸引ポンプ27が、安定液6を撹拌するための羽根部36を有しているため、撹拌機25による安定液6の撹拌に加えて、羽根部36による安定液6の撹拌によって、拡底部3に堆積していたスライム等が、確実に撹拌される。よって、的確に、かつ、効率的にスライム等を吸引することができる。
【0041】
次に、本発明の第二実施形態に係るスライム処理装置210を図面に基づいて説明する。図5は、第二実施形態に係るスライム処理装置210の結線室238が示されている。なお、以下では、第一実施形態に係るスライム処理装置10と異なる構成が主に説明され、スライム処理装置10と同様の構成は、説明が適宜省略されている。
【0042】
スライム処理装置210の動力線240には、少なくとも、アース線243、リード線[U相]240u、リード線[V相]240v及びリード線[W相]240wが含まれている。結線室238では、動力線240と、撹拌機用電線244及びポンプ用電線246とが結線されている、すなわち、動力線240のリード線[U相]240uと、撹拌機用電線244のリード線[U相]244u及びポンプ用電線246のリード線[U相]246uとが結線されている。同様に、動力線240のリード線[V相]240vと、撹拌機用電線244のリード線[V相]244v及びポンプ用電線246のリード線[V相]246vとが結線され、動力線240のリード線[W相]240wと、撹拌機用電線244のリード線[W相]244w及びポンプ用電線246のリード線[W相]246wとが結線されている。
【0043】
スライム処理装置210の結線室238では、動力線240と撹拌機用電線244及びポンプ用電線246とがパラレル接続されているため、撹拌機25と吸引ポンプ227とを、連動させることができる。
【0044】
なお、本発明に係る他の実施形態は、フレキシブル管に替えて剛性が高いロット菅を有している。
別の他の実施形態は、支持部及び検測テープを有していない。
別の他の実施形態は、撹拌機、吸引ポンプ及び浮き部材が、フレーム部に対して固定され、着脱不能である。
別の他の実施形態は、浮き部材を有していない。
別の他の実施形態では、撹拌機の数は任意である。したがって、撹拌機は二機以上であってもよい。
別の他の実施形態は、枠板部を有していない。
別の他の実施形態では、結線室が、吸引ポンプとは別に設けられている。
別の他の実施形態では、複数の撹拌機と撹拌機用電線、及び、複数の吸引ポンプと吸引ポンプ用電線を有し、動力線には、各電線に対応した複数の電線が含まれている。
【0045】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 杭孔
2 軸部
3 拡底部(底部)
4 中央部
5 隅部
6 安定液
7 杭壁
10,210 スライム処理装置
11 枠部材部
12 フレーム材
13 枠板部
14 前枠部
15 垂直面部
16 傾斜面部
17 後枠部
18 側枠部
19 上端開口部
20 下端開口部
21 処理空間
22 支持部
23 検測テープ
24 検測用錘
25 撹拌機
26 撹乱羽根
27,227 吸引ポンプ
28 フレキシブル管
29 浮き部材
30 長尺棒状部材
31 短尺棒状部材
32,33 矢印
34 補強材
35 バランスウェイト
36 羽根部
37 本体部
38,238 結線室
40,240 動力線
41 第一電線
41u リード線[U相]
41v リード線[V相]
41w リード線[W相]
42 第二電線
42u リード線[U相]
42v リード線[V相]
42w リード線[W相]
43,243 アース線
44,244 撹拌機用電線
44u,244u リード線[U相]
44v,244v リード線[V相]
44w,244w リード線[W相]
45,245 アース線
46,246 ポンプ用電線
46u,246u リード線[U相]
46v,246v リード線[V相]
46w,246w リード線[W相]
240u リード線[U相]
240v リード線[v相]
240w リード線[W相]
【要約】
【課題】撹拌機と吸引ポンプとを備えつつ、動力線の扱いが容易なスライム処理装置を提供する。
【解決手段】スライム処理装置10の吸引ポンプ27の結線室38では、動力線40の第一電線41のリード線[U相]41uと、撹拌機用電線44のリード線[U相]44uとが結線され、第一電線41のリード線[V相]41vと、撹拌機用電線44のリード線[V相]44vとが結線され、第一電線41のリード線[W相]41wと、撹拌機用電線44のリード線[W相]44wとが結線され、動力線40の第二電線42のリード線[U相]42uと、ポンプ用電線46のリード線[U相]46uとが結線され、第二電線42のリード線[V相]42vと、ポンプ用電線46のリード線[V相]46vとが結線され、第二電線42のリード線[W相]42wと、ポンプ用電線46のリード線[W相]46wとが結線されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5