(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】栽培環境調整装置及び栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G7/00 601Z
(21)【出願番号】P 2024175038
(22)【出願日】2024-10-04
【審査請求日】2024-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596109686
【氏名又は名称】ユメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小久保 孝志
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-88425(JP,A)
【文献】特開2019-115287(JP,A)
【文献】特開2015-136356(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190405(WO,A1)
【文献】特開2022-72577(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0059010(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延在する吊り下げ棒と、
前記吊り下げ棒に接続され、下方に向かって延在する直管型のLED照明装置の複数と、
前記吊り下げ棒に接続され、下方に向かって延在する直管型の送風装置の複数と
を有する
栽培環境調整装置。
【請求項2】
前記吊り下げ棒は、前記LED照明装置及び前記送風装置を、前記吊り下げ棒の水平方向に移動可能に接続する
請求項1に記載の栽培環境調整装置。
【請求項3】
前記吊り下げ棒と複数の栽培用トレイを収容する栽培フレームラックとを接続する接続部を有する
請求項1に記載の栽培環境調整装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の栽培環境調整装置と、
複数の栽培用トレイを収容する栽培フレームラックと
を有し、
前記栽培フレームラックの正面または背面に対向するように、前記環境調整装置が設置されている
栽培装置。
【請求項5】
前記環境調整装置を2つ有し、
前記栽培フレームラックの正面と背面のそれぞれに対向するように、前記環境調整装置が設置されている
請求項4に記載の栽培装置。
【請求項6】
前記環境調整装置は、前記栽培フレームラックに対して接近・離間する方向に移動可能となっている
請求項4に記載の栽培装置。
【請求項7】
前記栽培フレームラックは、その上部に、正面側から背面側に向かって延在する複数のレールを有し、
前記栽培環境調整装置は、前記レールに沿って移動可能な接続部に接続されている
請求項6に記載の栽培装置。
【請求項8】
前記接続部は、滑車で構成されている
請求項7に記載の栽培装置。
【請求項9】
前記環境調整装置の複数の前記LED照明装置は、前記栽培フレームラック側に向かって光を照射可能であり、
前記環境調整装置の複数の前記送風装置は、前記栽培フレームラック側に向かって送風可能である
請求項4に記載の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培環境調整装置及び栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イチゴなど栽培ポット(培地)を使う人工光の植物工場では、栽培面積・空間の効率を上げるため、多段式の栽培棚や移動式の栽培棚が用いられている。従来の栽培棚は、一般に底板と天板で段が区切られており、底板に栽培ポット、天板にLED照明が配置され、垂直方向に多段化されると、植物の成長(草丈)分の棚間が必要となる。このため、多段化すると、棚の高さが相当高くなり、部屋の天井も高くなるため空調効率も悪くなる。また、棚の天板にLEDを固定させると植物の生長、草丈により、LEDとの距離が変わり照度がバラついてしまう。
【0003】
このような問題を解決するため、栽培棚とLED照明棚を分離して植物体の側面から光の近接照射を行う方法も用いられている(例えば、特許文献1)。特許文献1の装置では、栽培棚とLED照明棚がそれぞれ分離しており、それぞれが台車タイプあるいはレール上を移動するタイプとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置では、台車タイプもレールタイプも床面に設置して用いるため、面積効率も落ち、作業に支障をきたす問題がある。また、従来の装置では、装置内の風通しが十分ではなく、葉焼け(チップバーン)や病害が発生し、植物の発育に影響があるといった問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、栽培面積の効率化を図ると共に、葉焼け(チップバーン)や病害の発生を予防し、植物の栽培を良好に行うことが可能な栽培環境調整装置及び栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水平方向に延在する吊り下げ棒と、
前記吊り下げ棒に接続され、下方に向かって延在する直管型のLED照明装置の複数と、
前記吊り下げ棒に接続され、下方に向かって延在する直管型の送風装置の複数と
を有する
栽培環境調整装置。
また、本発明は、本発明の栽培環境調整装置と、
複数の栽培用トレイを収容する栽培フレームラックと
を有し、
前記栽培フレームラックの正面または背面に対向するように、前記環境調整装置が設置されている
栽培装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、栽培面積の効率化を図ると共に、葉焼け(チップバーン)や病害の発生を予防し、植物の栽培を良好に行うことが可能な栽培環境調整装置及び栽培装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る栽培環境調整装置の一例を示す(a)正面図、(b)側面図である。
【
図2】本発明に適用される栽培フレームラックの一例を示す(a)正面図、(b)側面図である。
【
図3】本発明に適用される栽培フレームラックの一例を示す上面図である。
【
図4】本発明に係る栽培装置の一例を示す正面図である。
【
図5】本発明に係る栽培装置の一例を示す側面図である。
【
図6】本発明に係る栽培装置の一例を示す上面図である。
【
図7】本発明に係る栽培装置に適用される栽培用トレイの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る栽培環境調整装置及び栽培装置の好適な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、発明に係る栽培環境調整装置の一例を示す(a)正面図、(b)側面図である。
図2は、本発明に適用される栽培フレームラックの一例を示す(a)正面図、(b)側面図である。
図3は、本発明に適用される栽培フレームラックの一例を示す上面図である。
図4は、本発明に係る栽培装置の一例を示す正面図である。
図5は、本発明に係る栽培装置の一例を示す側面図である。
図6は、本発明に係る栽培装置の一例を示す上面図である。
図7は、本発明に係る栽培装置に適用される栽培用トレイの一例を示す斜視図である。
【0011】
<栽培環境調整装置1>
本発明に係る栽培環境調整装置1は、
図1に示すように、水平方向に延在する吊り下げ棒2と、吊り下げ棒2に接続され、下方に向かって延在する直管型のLED照明装置3の複数と、吊り下げ棒2に接続され、下方に向かって延在する直管型の送風装置4の複数とを有している。また、本実施形態に係る栽培環境調整装置1は、吊り下げ棒2と複数の栽培用トレイを収容する栽培フレームラック10と接続する接続部6を有している。また、本実施形態の栽培環境調整装置1は、垂直方向に延在した2つの縦フレーム7と、水平方向に延在する横フレーム8とを有しており、図示の構成のように、2つの縦フレーム7の上端と、横フレーム8の両端のそれぞれとが接続していることが好ましい。すなわち、2つの縦フレーム7と1つの横フレーム8とでコの字形状をなしていることが好ましい。
【0012】
本実施形態において、吊り下げ棒2は、
図1に示すように、その両端で2つの縦フレーム7と接続している。吊り下げ棒2は、
図1に示すように、LED照明装置3及び送風装置4の上端側を固定する複数の固定部21を有していることが好ましい。そして、固定部21は、LED照明装置3と送風装置4とを固定した状態で、水平方向(
図1(a)の左右方向)に移動可能となっていることが好ましい。すなわち、吊り下げ棒2は、LED照明装置3及び送風装置4を、吊り下げ棒2の水平方向に移動可能に接続するよう構成されている。これにより、LED照明装置3同士の間隔、送風装置4同士の間隔及びLED照明装置3と送風装置4との間隔を自由に変更することができる。
【0013】
LED照明装置3は、直管型の形状を有しており、吊り下げ棒2から下方に向かって延在している。LED照明装置3は、その延在方向に複数のLEDが並んでおり、図示せぬ電源に接続され、栽培する植物に光を照射するよう構成されている。本実施形態において、LED照明装置3は、吊り下げ棒2の固定部21に固定されており、固定部21の移動により、水平方向(
図1(a)の左右方向)に移動可能となっている。
【0014】
送風装置4は、直管型の形状を有しており、吊り下げ棒2から下方に向かって延在している。送風装置4は、上端に図示せぬ電源に接続されたファン(図示せず)が取り付けられており、また、その延在方向に複数の送風口が並んでいる。このような送風装置4は、ファンを回すことにより直管内に空気が送風され、上記複数の送風口から、栽培する植物側に向かって空気を送り、空気の循環を形成するよう構成されている。これにより、空気が植物全体に行き渡り、葉焼けなどの生理障害を効果的に防止することができる。本実施形態において、送風装置4は、吊り下げ棒2の固定部21に固定されており、固定部21の移動により、水平方向(
図1(a)の左右方向)に移動可能となっている。
【0015】
本実施形態に係る栽培環境調整装置1は、
図1及び
図2に示すように、LED照明装置3及び送風装置4の下端側を固定するための下部固定棒5を有していることが好ましい。これにより、LED照明装置3及び送風装置4の不本意な落下を効果的に防止することができる。また、下部固定棒5は、
図1に示すように、LED照明装置3及び送風装置4の下端側を固定する複数の固定部51を有していることが好ましい。そして、固定部51は、LED照明装置3と送風装置4とを固定した状態で、水平方向(
図1(a)の左右方向)に移動可能となっていることが好ましい。これにより、LED照明装置3同士の間隔、送風装置4同士の間隔及びLED照明装置3と送風装置4との間隔を自由に変更することができる。
【0016】
本実施形態に係る栽培環境調整装置1は、
図1に示すように、吊り下げ棒2と、複数の栽培用トレイを収容する栽培フレームラック10と接続する接続部6を有していることが好ましい。本実施形態において、接続部6は、
図1に示すように、横フレーム8に設けられていることが好ましい。また、接続部6は、
図1に示すように、複数設けられていることが好ましい。
【0017】
<栽培装置>
本発明に係る栽培装置100は、
図4~
図6に示すように、上述した本発明に係る栽培環境調整装置1と、複数の栽培用トレイ20(育苗ポットを収容する栽培用トレイ20)を収容する栽培フレームラック10とを有しており、栽培フレームラック10の正面または背面に対向するように、環境調整装置1が設置されている。なお、本明細書において、
図4の紙面の表側を正面、裏側を背面という。
【0018】
本実施形態に係る栽培装置100は、
図4及び
図5に示すように、環境調整装置1を2つ有しており、栽培フレームラック10の正面と背面のそれぞれに対向するように、環境調整装置1が設置されていることが好ましい。これにより、栽培面積の効率化をより効果的に行うことができる。なお、環境調整装置1は、1つであってもよいし、3つ以上あってもよいし、栽培フレームラック10は、2つ以上あってもよい。
また、本実施形態に係る栽培装置100では、
図5に示すように、環境調整装置1が、栽培フレームラック10に対して接近・離間するように移動可能となっていることが好ましい。これにより、植物に当たる光の照射量を容易に調節することができる。また、移動させることができるため、手入れ等の作業を阻害せず、作業効率をより高いものとすることができる。
【0019】
本実施形態に係る栽培フレームラック10は、
図2及び
図3に示すように、外骨格11と、外骨格11内に設けられ、栽培用トレイ20を設置するための設置用パイプ12と、外骨格11の下部に設けられた車輪13と、外骨格11の上部に設けられたレール接続部14と、レール接続部14に接続されたレール15とを有している。なお、本明細書において、
図2(a)の紙面の表側を正面、裏側を背面、右側を右側面、左側を左側面という。
【0020】
外骨格11は、
図2及び
図3に示すように、四角柱形状に組まれたフレーム11aと、四角柱形状のフレーム11aの各面において上辺から下辺に向かって延在する補強フレーム11bと、四角柱形状のフレーム11aの底面と接続した下部フレーム11cとを有していることが好ましい。
【0021】
本実施形態において、栽培用トレイ20の設置用パイプ12は、
図2及び
図3に示すように、四角柱形状のフレーム11aの正面側の面及び背面側の面における一方の縦の辺から他方の縦の辺に向かって延在する設置用パイプ12aと、四角柱形状のフレーム11aの右側面の補強フレーム11bから左側面の補強フレーム11bに向かって延在し、設置用パイプ12aと水平方向で平行な設置用パイプ12bとを有していることが好ましい。これにより、栽培用トレイ20を安定して設置することができる。また、このように水平方向において平行な2つの設置用パイプ12aと設置用パイプ12bとを有することにより、正面側と背面側の双方に栽培用トレイ20を設置することができる。さらに、このように水平方向において平行な2つの設置用パイプ12aと1つの設置用パイプ12bのセットが、
図2及び
図3に示すように、縦方向に複数有していることが好ましい。これにより、多段での植物の栽培をより効率よく行うことができる。
【0022】
このような構成の設置用パイプ12に適用される栽培用トレイ20としては、例えば、
図7に示すような、フック21aとフック21bとの2つのフックを有する栽培用トレイ20を用いることができる。この栽培用トレイ20を設置用パイプ12に設置する場合、フック21aを設置用パイプ12aに引っかけ、フック21bを設置用パイプ12bに引っかけることで、安定して設置できるとともに、栽培用トレイ20に挿入される育苗ポットに植えられた植物が栽培フレームラック10の正面側または背面側に向くため、LED照明装置3による光の照射を効率よく行うことができる。
【0023】
車輪13は、
図2~
図5に示すように、外骨格11(下部フレーム11c)の下部に設けられており、栽培フレームラック10(栽培装置100)の移動を補助する機能を備えている。また、本実施形態では、
図2に示すように、外骨格11の上部にレール接続部14が設けられている。このレール接続部14には、レール15が接続されている。レール15は、栽培フレームラック10の正面方向から背面方向に向かって延在しており、複数設けられている。レール15には上述した栽培環境調整装置1の接続部6がレール15に沿って移動可能に接続されている。本実施形態において、接続部6は、滑車で構成されていることが好ましい。これにより、より容易に環境調整装置1を栽培フレームラック10により容易に接近・離間させることができる。
【0024】
本実施形態の栽培装置100の栽培環境調整装置1において、複数のLED照明装置3が、栽培フレームラック10側に向かって光を照射可能であり、複数の送風装置4が、栽培フレームラック10側に向かって送風可能であることが好ましい。これにより、より効率よく植物を栽培することができる。なお、複数のLED照明装置3の全てが同じ方向に光を照射していなくてもよく、異なる方向に光を照射するLED照明装置3があってもよい。また、複数の送風装置4の全てが同じ方向に送風していなくてもよく、異なる方向に送風する送風装置4があってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0025】
1 栽培環境調整装置
2 吊り下げ棒
3 LED照明装置
4 送風装置
5 下部固定棒
6 接続部
7 縦フレーム
8 横フレーム
10 栽培フレームラック
11 外骨格
11a フレーム
11b 補強フレーム
11c 下部フレーム
12、12a、12b 設置用パイプ
13 車輪
14 レール接続部
15 レール
20 栽培トレイ
21a、21b フック
100 栽培装置
【要約】
【課題】栽培面積の効率化を図ると共に、葉焼け(チップバーン)や病害の発生を予防し、植物の栽培を良好に行うことが可能な栽培環境調整装置及び栽培装置を提供する。
【解決手段】栽培環境調整装置1は、水平方向に延在する吊り下げ棒2と、前記吊り下げ棒2に接続され、下方に向かって延在する直管型のLED照明装置3の複数と、前記吊り下げ棒2に接続され、下方に向かって延在する直管型の送風装置4の複数とを有する。栽培装置100は、栽培環境調整装置1と、複数の栽培用トレイを収容する栽培フレームラック10とを有し、栽培フレームラック10の正面または背面に対向するように、環境調整装置1が設置されている。
【選択図】
図1