IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NSKステアリング&コントロール株式会社の特許一覧

特許7596005ステアリング装置およびステアリング装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ステアリング装置およびステアリング装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/181 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
B62D1/181
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024511626
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2023008954
(87)【国際公開番号】W WO2023189339
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2022053061
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 光輝
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067311(JP,A)
【文献】特開2020-172206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0129888(US,A1)
【文献】特開2015-214181(JP,A)
【文献】特開2017-226361(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064460(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0251147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるステアリングシャフトの外側に配置され且つ第1取付部を有する筒状の第1ステアリングコラムと、
前記第1ステアリングコラムの外側に配置され且つ前記第1取付部に対して第1方向の一方側に配置される第2取付部を有する筒状の第2ステアリングコラムと、
前記第1取付部及び前記第2取付部のうち一方に取り付けられる第1固定部と、前記第1取付部及び前記第2取付部のうち他方に取り付けられる第2固定部と、を備え、前記第1固定部と前記第2固定部との間の第1方向に沿った相対距離を変えるアクチュエータ装置と、を備え、
前記第1取付部又は前記第2取付部は、入り口側の開口部と、前記開口部に連通する収納部と、を有し、
前記第1固定部は、第1方向に交差する第2方向に突出する凸部を有し、
第2方向から見て、前記凸部は第1円弧部と直線部とを有し前記収納部に収納可能であり、当該凸部が前記収納部に収納された状態において当該直線部は第1方向に沿って延びており、
前記第1固定部を前記第1取付部または前記第2取付部から取り外し当該直線部が第1方向に沿って延びる状態において、
第2方向から見て、前記凸部における第1方向に沿う最大距離である第1距離は、前記収納部における第1方向に沿う最大距離である第2距離よりも大きい、
ステアリング装置。
【請求項2】
前記第1取付部又は前記第2取付部における前記開口部の最小幅を第3距離とし、
前記収納部は、第2円弧部を含み、
前記第2円弧部の中心を通る直線と当該収納部に面する内壁部との2つの交点同士の最小距離を第4距離とし、
前記凸部の前記第1円弧部の中心を通る直線と当該凸部の縁との2つの交点同士の最大距離を第5距離とし、最小距離を第6距離とした場合に、
前記第1固定部を前記第1取付部または前記第2取付部から取り外した状態において、
前記第6距離は、前記第3距離よりも小さく、
前記第5距離は、前記第4距離よりも大きい、
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記第1取付部又は前記第2取付部は、前記開口部及び前記収納部を挟んで第1方向の一方側及び他方側に配置される第1保持部及び第2保持部を有し、
前記第1保持部及び前記第2保持部の第1方向に沿った距離は同一である、
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記第1取付部又は前記第2取付部は、前記開口部及び前記収納部を挟んで第1方向の一方側及び他方側に配置される第1保持部及び第2保持部を有し、
前記第1保持部及び前記第2保持部の第1方向に沿った距離は同一である、
請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記第1取付部又は前記第2取付部には、前記開口部に面する一対の入口壁部が設けられ、
第2方向から見て、
当該一対の入口壁部のそれぞれは、第1方向及び第2方向に交差する第3方向に沿って延びる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記第1取付部又は前記第2取付部には、前記開口部に面する一対の入口壁部が設けられ、
第2方向から見て、
当該一対の入口壁部のそれぞれは、
第3方向の一方側から他方側に行くに従って第1方向に沿った距離が小さくなるように傾斜する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記第1取付部又は前記第2取付部には、前記開口部に面する一対の入口壁部が設けられ、
第3方向から見て、
当該入口壁部と前記収納部に面する内壁部との境界部は、湾曲部である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前記凸部における前記第1円弧部には、突起部が設けられる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項9】
ナットは、ナット本体部と前記凸部とを有し、当該凸部は前記ナット本体部における第2方向の両側に設けられ、
前記突起部は、第2方向の片側の凸部に設けられる、
請求項8に記載のステアリング装置。
【請求項10】
前記第1取付部又は前記第2取付部における前記収納部に面する内壁部の内周には、当該内周側に突出する突出部が設けられる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項11】
第1方向に延びるステアリングシャフトの外側に配置され且つ第1取付部を有する筒状の第1ステアリングコラムと、
前記第1ステアリングコラムの外側に配置され且つ前記第1取付部に対して第1方向の一方側に配置される第2取付部を有する筒状の第2ステアリングコラムと、
前記第1取付部及び前記第2取付部のうち一方に取り付けられる第1固定部と、前記第1取付部及び前記第2取付部のうち他方に取り付けられる第2固定部と、を備え、前記第1固定部と前記第2固定部との間の第1方向に沿った相対距離を変えるアクチュエータ装置と、を備え、
前記第1取付部又は前記第2取付部は、入り口側の開口部と、前記開口部に連通する収納部と、を有し、
前記第1固定部は、第1方向に交差する第2方向に突出する凸部を有し、
第2方向から見て、前記凸部は第1円弧部と直線部とを有し前記収納部に収納可能であり、当該凸部が前記収納部に収納された状態において当該直線部は第1方向に沿って延びており、
前記第1固定部を前記第1取付部または前記第2取付部から取り外した状態において、
第2方向から見て、前記凸部における第1方向に沿う第1距離は、前記収納部における第1方向に沿う第2距離よりも大きい、
ステアリング装置の製造方法であって、
前記凸部の前記直線部を、第1方向及び第2方向に交差する第3方向に沿った状態で且つ前記第1固定部が前記第1取付部又は前記第2取付部の一方に対して第3方向の一方側に位置するように、前記アクチュエータ装置を配置する第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記アクチュエータ装置を第3方向の他方側に向けて移動させ、前記第1固定部の前記凸部を前記開口部から前記収納部に挿入する第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記凸部を中心として前記アクチュエータ装置を揺動させて当該凸部を前記収納部に嵌合させる第3ステップと、
前記第3ステップの後に、前記第2固定部を前記第1取付部又は前記第2取付部の他方に取り付ける第4ステップと、を含む、
ステアリング装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置およびステアリング装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置は、例えば、ステアリングシャフトの外側に設けられる第1ステアリングコラムと、第1ステアリングコラムの外側に設けられる第2ステアリングコラムと、第1ステアリングコラムと第2ステアリングコラムとの軸方向距離を変えるアクチュエータ装置(駆動機構)と、を備える(例えば、特許文献1参照)。アクチュエータ装置の一端部は、第1ステアリングコラムに取り付けられ、他端部は第2ステアリングコラムに取り付けられる。具体的には、第1ステアリングコラムには切欠き部を有するブラケットが設けられ、アクチュエータ装置の一端部には、凸部を有するナットが設けられる。ナットの凸部がブラケットの切欠き部に嵌合する。
【0003】
ここで、特許文献1においては、側方から見て、アクチュエータ装置は、ステアリングシャフトの軸方向(水平方向)に対して斜め下方に交差して延びる。具体的には、アクチュエータ装置は、車両後方に行くに従って下方に傾斜する。従って、例えば、アクチュエータ装置におけるナットにおける位置が後方に移動する場合に、凸部からの力は切欠き部に対して斜め下方に加わる。斜め下方の力は、水平方向分力と下方向分力とに分けられ、切欠き部には下方向分力も伝わるため、下側が開口した切欠き部が変形して開きやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5796776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1においては、アクチュエータ装置の凸部とブラケットの切欠き部との間に隙間が生じやすくなる。隙間が生じると、車両走行時に凸部と切欠き部とが干渉して異音が生じる可能性があるため、当該隙間にブッシュを挿入して隙間をなくす作業が必要となり、部品点数および組み立て工程の増加によるコスト増加が懸念される。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、より簡易な作業で、ステアリングコラムの取付部とアクチュエータ装置の凸部との間に隙間が生じにくくなるステアリング装置およびステアリング装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るステアリング装置は、第1方向に延びるステアリングシャフトの外側に配置され且つ第1取付部を有する筒状の第1ステアリングコラムと、前記第1ステアリングコラムの外側に配置され且つ前記第1取付部に対して第1方向の一方側に配置される第2取付部を有する筒状の第2ステアリングコラムと、前記第1取付部及び前記第2取付部のうち一方に取り付けられる第1固定部と、前記第1取付部及び前記第2取付部のうち他方に取り付けられる第2固定部と、を備え、前記第1固定部と前記第2固定部との間の第1方向に沿った相対距離を変えるアクチュエータ装置と、を備え、前記第1取付部又は前記第2取付部は、入り口側の開口部と、前記開口部に連通する収納部と、を有し、前記第1固定部は、第1方向に交差する第2方向に突出する凸部を有し、第2方向から見て、前記凸部は第1円弧部と直線部とを有し前記収納部に収納可能であり、当該凸部が前記収納部に収納された状態において当該直線部は第1方向に沿って延びており、前記第1固定部を前記第1取付部または前記第2取付部から取り外し当該直線部が第1方向に沿って延びる状態において、第2方向から見て、前記凸部における第1方向に沿う最大距離である第1距離は、前記収納部における第1方向に沿う最大距離である第2距離よりも大きい。
【0008】
前述したように、特許文献1においては、アクチュエータ装置は、ステアリングシャフトの軸方向(水平方向)に対して斜め下方に交差して延び、例えば、アクチュエータ装置の凸部からの力は切欠き部に対して斜めに加わって切欠き部が開き、凸部と切欠き部との間に隙間が生じやすくなる。このため、隙間にブッシュを挿入して隙間をなくす作業が必要となり、部品点数および組み立て工程の増加によるコスト増加が懸念される。
【0009】
これに対して、本開示では、凸部が収納部に収納された状態において凸部の直線部は第1方向に沿って延びる。また、アクチュエータ装置は、第1ステアリングコラムおよび第2ステアリングコラムに対して略平行に配置される。従って、アクチュエータ装置の凸部からの力は収納部に対して第1方向に沿って加わるため、開口部および収納部が開きにくくなる。
【0010】
さらに、本開示では、凸部における第1方向に沿う最大距離である第1距離は、収納部における第1方向に沿う最小距離である第2距離よりも大きいため、凸部を収納部に嵌合させた状態では、凸部は収納部の縁から内側に向けて押圧される。以上より、本開示によれば、より簡易な作業で、ステアリングコラムの取付部とアクチュエータ装置の凸部との間に隙間が生じにくくなるステアリング装置が提供可能となる。
【0011】
本開示の他の態様では、前記第1取付部又は前記第2取付部における前記開口部の最小幅を第3距離とし、前記収納部は、第2円弧部を含み、前記第2円弧部の中心を通る直線と当該収納部に面する内壁部との2つの交点同士の最小距離を第4距離とし、前記凸部の前記第1円弧部の中心を通る直線と当該凸部の縁との2つの交点同士の最大距離を第5距離とし、最小距離を第6距離とした場合に、前記第1固定部を前記第1取付部または前記第2取付部から取り外した状態において、前記第6距離は、前記第3距離よりも小さく、前記第5距離は、前記第4距離よりも大きい。
【0012】
このように、第6距離が第3距離よりも小さいため、凸部を開口部に挿入しやすくなる。また、第5距離は第4距離よりも大きいため、凸部を収納部に嵌合させた状態では、凸部は収納部の縁から内側に向けて押圧される。よって、収納部と凸部との間に隙間がより生じにくくなる。
【0013】
本開示の他の態様では、前記第1取付部又は前記第2取付部は、前記収納部を挟んで第1方向の一方側及び他方側に配置される第1保持部及び第2保持部を有し、前記第1保持部及び前記第2保持部の第1方向に沿った距離は同一である。これにより、第1保持部及び第2保持部の第1方向に沿った剛性も均等になる。即ち、アクチュエータ装置における第1固定部の位置が第2固定部に対して軸方向に離れる場合と近づく場合とで、収納部の縁に対して第1方向の両側から凸部の力が加わる。従って、第1固定部が第2固定部に対して離れる場合と近づく場合との双方において、凸部の力に対する剛性が第1方向の両側で均等になり、第1取付部又は第2取付部の耐久性が向上する。
【0014】
本開示の他の態様では、前記第1取付部又は前記第2取付部には、前記開口部に面する一対の入口壁部が設けられ、第2方向から見て、当該一対の入口壁部のそれぞれは、第1方向及び第2方向に交差する第3方向に沿って延びる。凸部は直線部を有し、入口壁部は第3方向に沿って延びる。従って、凸部の直線部を入口壁部と略平行にした状態で凸部を開口部から挿入することにより、より容易に凸部を収納部に嵌めることが可能となる。
【0015】
本開示の他の態様では、前記第1取付部又は前記第2取付部には、前記開口部に面する一対の入口壁部が設けられ、第2方向から見て、当該一対の入口壁部のそれぞれは、第3方向の一方側から他方側に行くに従って第1方向に沿った距離が小さくなるように傾斜する。このように、開口部は、入り口側が広くなるため、凸部を開口部に挿入しやすくなるメリットを有する。
【0016】
本開示の他の態様では、前記一方の取付部には、前記開口部に面する一対の入口壁部が設けられ、第3方向から見て、当該入口壁部と前記収納部に面する内壁部との境界部は、湾曲部である。従って、凸部を収納部に嵌合した状態で凸部を回転させる場合、入口壁部と内壁部との境界部に凸部が引っ掛かりにくくなり、よりスムーズに凸部を収納部に嵌合させることができる。
【0017】
本開示の他の態様では、前記凸部における前記第1円弧部には、突起部が設けられる。凸部に突起部が設けられるため、凸部を収納部に嵌合した状態で凸部を回転させると、突起部が収納部の縁により確実に当接し、また、突起部が圧壊しやすくなる。この圧壊が生じた場合は、凸部と収納部との隙間をより効果的に抑制することができる。即ち、凸部の第1円弧部の全面を径方向外側に移動させて大径の第1円弧部にすると、第1円弧部と収納部とが広い面積で当接する。この場合、第1円弧部の曲率半径にバラツキが生じると、第1円弧部の全面が収納部に均一に当接しにくくなる。これに対して、突起部は第1円弧部の全面よりも収納部との当接面積が小さくなるため、より確実に突起部が収納部に当接し、凸部と収納部との間に隙間が生じにくくなる。
【0018】
本開示の他の態様では、前記ナットは、ナット本体部と前記凸部とを有し、当該凸部は前記ナット本体部における第2方向の両側に設けられ、前記突起部は、第2方向の片側の凸部に設けられる。一方の凸部と他方の凸部との両方に突起部を設ける態様の場合は、両方の凸部と収納部との圧入代が共に高くなる。この場合、ナットの姿勢が捩れると、ねじ軸とナットとが噛み込みやすくなり、ねじ軸がスムーズに回転しにくくなる可能性がある。
【0019】
しかし、本開示によれば、2つの凸部の片方には、突起部を設けないため、ナットの姿勢が捩れにくくなり、ねじ軸とナットとの噛み込みが生じにくくなる。従って、突起部を設けない凸部によりねじ軸がスムーズに回転する効果と、突起部を設けた凸部により突起部と収納部との当接がより確実になって凸部と収納部との隙間の発生をより効果的に抑制する効果と、の双方の効果が得られる。
【0020】
本開示の他の態様では、前記一方の取付部における前記収納部に面する内壁部の内周には、当該内周側に突出する突出部が設けられる。内壁部の内周に突出部が設けられるため、凸部を収納部に収納した状態で凸部を回転させる際に突出部と凸部とがより確実に当接し、凸部と収納部との隙間の発生をより効果的に抑制することができる。
【0021】
本開示の一の態様に係るステアリング装置の製造方法では、第1方向に延びるステアリングシャフトの外側に配置され且つ第1取付部を有する筒状の第1ステアリングコラムと、前記第1ステアリングコラムの外側に配置され且つ前記第1取付部に対して第1方向の一方側に配置される第2取付部を有する筒状の第2ステアリングコラムと、前記第1取付部及び前記第2取付部のうち一方に取り付けられる第1固定部と、前記第1取付部及び前記第2取付部のうち他方に取り付けられる第2固定部と、を備え、前記第1固定部と前記第2固定部との間の第1方向に沿った相対距離を変えるアクチュエータ装置と、を備え、前記第1取付部又は前記第2取付部は、入り口側の開口部と、前記開口部に連通する収納部と、を有し、前記第1固定部は、第1方向に交差する第2方向に突出する凸部を有し、第2方向から見て、前記凸部は第1円弧部と直線部とを有し前記収納部に収納可能であり、当該凸部が前記収納部に収納された状態において当該直線部は第1方向に沿って延びており、前記第1固定部を前記第1取付部または前記第2取付部から取り外した状態において、第2方向から見て、前記凸部における第1方向に沿う第1距離は、前記収納部における第1方向に沿う第2距離よりも大きい、ステアリング装置の製造方法であって、前記凸部の前記直線部を、第1方向及び第2方向に交差する第3方向に沿った状態で且つ前記第1固定部が前記第1取付部又は前記第2取付部の一方に対して第3方向の一方側に位置するように、前記アクチュエータ装置を配置する第1ステップと、前記第1ステップの後に、前記アクチュエータ装置を第3方向の他方側に向けて移動させ、前記第1固定部の前記凸部を前記開口部から前記収納部に挿入する第2ステップと、前記第2ステップの後に、前記凸部を中心として前記アクチュエータ装置を揺動させて当該凸部を前記収納部に嵌合させる第3ステップと、前記第3ステップの後に、前記第2固定部を前記第1取付部又は前記第2取付部の他方に取り付ける第4ステップと、を含む。
【0022】
このように、アクチュエータ装置の凸部を、第1取付部又は第2取付部の一方の収納部に挿入したのち、アクチュエータ装置を揺動させるという簡単な方法で、収納部と凸部との間に隙間がより生じにくくなるステアリング装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示のステアリング装置およびステアリング装置の製造方法によれば、より簡易な作業で、ステアリングコラムの取付部とアクチュエータ装置の凸部との間に隙間が生じにくくなるステアリング装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第1実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
図2図2は、図1のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を取り外した状態を示す図である。
図3図3は、図1のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を組み付けた状態を示す図である。
図4図4は、図1のブラケットの平面図である。
図5図5は、図4のブラケットにアクチュエータ装置におけるナットの凸部を挿入した状態を示す模式図である。
図6図6は、図5のナットを回転させた状態を示す模式図である。
図7図7は、第2実施形態におけるブラケットの平面図である。
図8図8は、第2実施形態のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を取り外した状態を示す図である。
図9図9は、第2実施形態のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を組み付けた状態を示す図である。
図10図10は、第2実施形態の変形例に係るブラケットの平面図である。
図11図11は、第3実施形態に係るブラケットの平面図である。
図12図12は、図11のブラケットにアクチュエータ装置におけるナットの凸部を挿入した状態を示す模式図である。
図13図13は、図12のナットを回転させた状態を示す模式図である。
図14図14は、第4実施形態のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を取り外した状態を示す図である。
図15図15は、第5実施形態に係るナットの斜視図である。
図16図16は、第5実施形態の変形例に係るナットの斜視図である。
図17図17は、図15または図16のナットの凸部をブラケットに挿入した状態を示す模式図である。
図18図18は、図17のナットを回転させた状態を示す模式図である。
図19図19は、第6実施形態に係るナットおよびブラケットを示す平面図である。
図20図20は、図15のナットの凸部をブラケットに挿入した状態を示す模式図である。
図21図21は、図20のナットを回転させた状態を示す模式図である。
図22図22は、第7実施形態に係るブラケットを示す平面図である。
図23図23は、第8実施形態に係るブラケットを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、XYZ直交座標において、Y方向はX方向と直交(交差)する。Z方向は、X方向およびY方向に直交(交差)する。X1側は、X2側の反対側であり、Y1側は、Y2側の反対側であり、Z1側は、Z2側の反対側である。以下の説明において、X方向は第1方向に相当し、Z方向は第2方向に相当し、Y方向は第3方向に相当する。X1側は第1方向の一方側、X2側は第1方向の他方側、Z1側は第2方向の一方側、Z2側は第2方向の他方側、Y1側は第3方向の一方側、Y2側は第3方向の他方側である。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。図1に示すように、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト1と、第1ステアリングコラム2と、第2ステアリングコラム3と、第3ステアリングコラム4と、アクチュエータ装置5、112と、を備える。
【0027】
図1に示すように、ステアリングホイール105は、ステアリングシャフト1における後方端部に連結されている。そして、運転者がステアリングホイール105を操作すると、第1中心軸AX1を中心にステアリングシャフト1が回転し、ステアリングシャフト1に操作トルクが付与される。このように、ステアリングシャフト1は、ステアリングホイール105に連結され且つX方向(第1方向、軸方向)に延びる。
【0028】
第1ステアリングコラム2の内周には、ステアリングシャフト1が挿入される。換言すると、ステアリングシャフト1の外側に筒状の第1ステアリングコラム2が配置される。第1ステアリングコラム2とステアリングシャフト1とは、X方向に沿った相対移動が可能である。
【0029】
第2ステアリングコラム3の内側には、第1ステアリングコラム2が挿入される。換言すると、第1ステアリングコラム2の外側に筒状の第2ステアリングコラム3が配置される。第1ステアリングコラム2と第2ステアリングコラム3とは、アクチュエータ装置5を介してX方向に沿った相対移動が可能である。アクチュエータ装置5は、第2中心軸AX2の軸方向であるX方向(第1方向)に延びる。アクチュエータ装置5は、第1ステアリングコラム2と第2ステアリングコラム3とを連結し且つ第1ステアリングコラム2と第2ステアリングコラム3との軸方向距離(第1方向距離)を変える。アクチュエータ装置5については、詳細に後述する。
【0030】
第3ステアリングコラム4の内側には、第2ステアリングコラム3が配置される。第3ステアリングコラム4の側方は開放されるため、第3ステアリングコラム4の断面形状は略U字状である。第2ステアリングコラム3と第3ステアリングコラム4とは、アクチュエータ装置112を介してX方向に沿った相対移動が可能である。アクチュエータ装置112は、第3中心軸AX3の軸方向であるX方向(第1方向)に延びる。アクチュエータ装置112は、モータ106と、ギヤボックス107と、ねじ軸108と、を備える。ギヤボックス107は、第3ステアリングコラム4に取り付けられる。ギヤボックス107は、モータ106の出力軸に設けたウォームシャフトとねじ軸108に設けたウォームホイールとが噛み合うウォームギヤ機構を収納する。ウォームギヤ機構により、モータ106の回転駆動が、ウォームシャフトおよびウォームホイールを介してねじ軸108の回転になる。ねじ軸108は図外のナットに噛み合っており、ナットは第2ステアリングコラム3のブラケット109に嵌合される。これにより、第2ステアリングコラム3と第3ステアリングコラム4とのX方向に沿った相対移動が可能になる。
【0031】
なお、第3ステアリングコラム4には、ギヤボックス101、電動モータ102およびECU104が設けられる。ギヤボックス101の内部には、電動モータ102のウォームシャフトおよびウォームホイールが収納され、これらのウォームシャフトとウォームホイールとが噛み合う。ECU104は、電動モータ102の動作を制御する。ECU104および電動モータ102によって、ステアリングシャフト1に補助トルクが付与される。つまり、本実施形態のステアリング装置100は、運転者の操舵を電動モータ102で補助する電動パワーステアリング装置である。
【0032】
図2は、図1のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を取り外した状態を示す図である。図3は、図1のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を組み付けた状態を示す図である。
【0033】
図2および図3に示すように、筒状の第2ステアリングコラム3は、第1ステアリングコラム2の外側に配置され側部に開放部33が設けられる。第2ステアリングコラム3には平坦部31および湾曲部32が設けられる。平坦部31はX方向およびZ方向に延びる平面である。開放部33は、平坦部31におけるX2側寄りに配置される。開放部33は、Y方向から見て矩形状である。具体的には、開放部33に面する内周壁部34は、X方向に沿って長い長方形である。平坦部31におけるX1側の端部には、Y1側に突出するフランジ35(第2取付部)が設けられる。フランジ35は、Z1側およびZ2側にそれぞれ1つずつ設けられる。2つのフランジ35には、貫通孔351が設けられる。貫通孔351には、ピン36が挿入される。アクチュエータ装置5における突設部521に貫通孔522が設けられる。ピン36は、フランジ35の貫通孔351および突設部521の貫通孔522に貫通する。ピン36の端部には、スナップリング37が嵌められる。第2ステアリングコラム3におけるZ2側にはブラケット109が取り付けられる。
【0034】
また、図2および図3に示すように、第1ステアリングコラム2の側面には、Y1側に突出するブラケット6(第1取付部)が設けられる。ブラケット6は、開放部33からY1側に突出して露出する。ブラケット6には、ナット7が取り付けられる。なお、ナット7の材質は例えば樹脂であり、ブラケット6の材質は例えば金属である。ただし、ナット7の材質を金属とし、ブラケット6の材質を樹脂としてもよい。
【0035】
図2および図3に示すように、アクチュエータ装置5は、モータ51と、ギヤボックス52(第2固定部)と、ねじ軸53と、ナット7(第1固定部)と、ブラケット6と、を有する。ギヤボックス52の筐体524の内部には、モータ51のウォームシャフト(図示せず)と、ねじ軸53に取り付けられたウォームホイール(図示せず)とが収納され、これらのウォームシャフトとウォームホイールとが噛み合っている。筐体524には、突設部521が設けられる。ねじ軸53の外周には雄ねじが形成される。ナット7の内周には雌ねじが形成され、当該雌ねじは、ねじ軸53の雄ねじと噛み合う。このように、ねじ軸53の軸方向(長手方向)の一方側は、ギヤボックス52を介してフランジ35に取り付けられ、ねじ軸53の軸方向(長手方向)の他方側には、ナット7が噛み合った状態で取り付けられる。ナット7は、ナット本体部74と、凸部71と、を備える。凸部71は、ナット本体部74からZ1側およびZ2側に突出する。凸部71は、Z方向から見て、第1円弧部73と直線部72とを有する。なお、モータ51が作動し、ウォームシャフトが回転するとウォームホイールも回転する。すると、ウォームホイールと共にねじ軸も回転するため、ねじ軸に噛み合ったナット7は軸方向(X方向、第1方向)に移動する。これにより、ナット7(第1固定部)とギヤボックス52(第2固定部)との間のX方向に沿った相対距離が変わる。
【0036】
次に、ブラケット6について説明する。図4は、図1のブラケットの平面図である。図5は、図4のブラケットにアクチュエータ装置におけるナットの凸部を挿入した状態を示す模式図である。図6は、図5のナットを回転させた状態を示す模式図である。
【0037】
ブラケット6は、取付部61と、プレート部62と、を有する。図2に示すように、取付部61は、第1ステアリングコラム2の側面に固定される。プレート部62は、取付部61の両端部からY1側に突出する。
【0038】
図4に示すように、プレート部62には、Z方向から見て開口部66および収納部63が設けられる。開口部66からナット7の凸部71が挿入可能である。プレート部62には、開口部66に面する一対の入口壁部623が設けられる。具体的には、プレート部62には、天面部621と、角部622と、入口壁部623と、第2円弧部624(内壁部)とが設けられる。天面部621は、X方向に沿って延びる。角部622は、Y方向かつX方向に斜めに延びる。X1側の角部622は、Y2側かつX2側に斜めに延びる。X2側の角部622は、Y2側かつX1側に斜めに延びる。入口壁部623は、Y方向に沿って延びる。X1側の入口壁部623とX2側の入口壁部623とは略平行に延びる。第2円弧部624は、中心O1を中心とする軸回りの周方向に円弧状に延びる。第2円弧部624は、収納部63に面する。第2円弧部624は内壁部とも称する。ナット7の凸部71の第1円弧部73は、ブラケット6の第2円弧部624に沿って円弧状に延びる。
【0039】
ここで、図3に示すように、凸部71が収納部63に収納された状態において直線部72はX方向に沿って延びている。Z方向から見て、凸部71をブラケット6から取り外して且つ直線部72がX方向に沿って延びている状態において、凸部71におけるX方向に沿う最大距離は第1距離L1である。また、図4に示すように、収納部63における第1方向に沿う最大距離は第2距離L2である。具体的には、第2円弧部624に沿った円の直径が第2距離L2である。第1距離L1は第2距離L2よりも大きい。
【0040】
なお、図4および図6に示すように、ブラケット6は、開口部66及び収納部63を挟んでX1側およびX2側に配置される第1保持部625及び第2保持部626を有する。第1保持部625において、中心O1を通り且つX方向に沿ったX方向の幅は、第7距離L7である。第2保持部626において、中心O1を通り且つX方向に沿ったX方向の幅は、第8距離L8である。第7距離L7と第8距離L8とは同一である。
【0041】
また、図5に示すように、開口部66の最小幅は第3距離L3である。具体的には、一対の入口壁部623同士のX方向距離が第3距離L3である。また、収納部63における第2円弧部624の中心O1を通る直線と収納部63の内壁部(縁)との2つの交点同士の最小距離は第4距離L4である。具体的には、第2円弧部624に沿った円の直径が第4距離L4である。また、凸部71の第1円弧部73の中心O2を通る直線と凸部71の縁との2つの交点同士の最大距離を第5距離L5とし、最小距離を第6距離L6とする。ナット7の凸部71をブラケット6から取り外した状態において、第6距離L6は、第3距離L3よりも小さく、第5距離L5は、第4距離L4よりも大きい。
【0042】
次いで、ステアリング装置100の製造方法を簡単に説明する。具体的には、アクチュエータ装置5をブラケット6およびフランジ35に取り付ける方法である。
【0043】
まず、第1ステップにおいて、図2に示すように、ナット7の凸部71の直線部72がY方向に沿った状態で且つ凸部71がブラケット6に対してY1側に位置するように、アクチュエータ装置5を配置する。具体的には、アクチュエータ装置5を第1中心軸AX1に対して直交するように配置する。
【0044】
第2ステップにおいて、アクチュエータ装置5をY2側に向けて移動させ、図5に示すように、ナット7の凸部71をブラケット6の開口部66から収納部63に挿入する。この状態では、ナット7の凸部71の第1円弧部73が、ブラケット6の第2円弧部624に当接する。
【0045】
第3ステップにおいて、図6の矢印Pに示すように、凸部71を中心としてアクチュエータ装置5を揺動させて凸部71を収納部63に嵌合させる。
【0046】
第4ステップにおいて、図3に示すように、ギヤボックス52をフランジ35に取り付ける。具体的には、図2に示したようにピン36をフランジ35の貫通孔351および突設部521の貫通孔522に貫通させ、その後、ピン36の端部にスナップリング37を嵌める。
【0047】
以上説明したように、ステアリング装置100において、ナット7(第1固定部)は凸部71を有し、凸部71は、ブラケット6(第1取付部)に取り付けられる。凸部71は、第1円弧部73と直線部72とを有する。ブラケット6は、開口部66と収納部63とを有し、収納部63は第2円弧部624(内壁部)を含む。Z方向から見て、凸部71をブラケット6から取り外して且つ直線部72がX方向に沿って延びている状態において、凸部71におけるX方向に沿う最大距離は第1距離L1である。また、図4に示すように、収納部63における第1方向に沿う最小距離は第2距離L2である。具体的には、第2円弧部624に沿った円の直径が第2距離L2である。第1距離L1は第2距離L2よりも大きい。
【0048】
前述したように、特許文献1においては、アクチュエータ装置は、ステアリングシャフトの軸方向(水平方向)に対して斜め下方に交差して延び、例えば、アクチュエータ装置の凸部からの力は切欠き部に対して斜めに加わって切欠き部が開き、凸部と切欠き部との間に隙間が生じやすくなる。このため、隙間にブッシュを挿入して隙間をなくす作業が必要となり、部品点数および組み立て工程の増加によるコスト増加が懸念される。
【0049】
これに対して、本実施形態では、アクチュエータ装置5は、第1ステアリングコラム2および第2ステアリングコラム3に対して略平行にX方向に延びる。また、凸部71が収納部63に収納された状態において凸部71の直線部72はX方向に沿って延びる。従って、図3に示すように、アクチュエータ装置5の凸部71からの力は収納部63に対してX方向に加わるため、開口部66および収納部63が開きにくくなる。
【0050】
さらに、本実施形態では、凸部71におけるX方向に沿う最大距離である第1距離L1は、収納部63における第1方向に沿う最小距離である第2距離L2よりも大きいため、凸部71を収納部63に嵌合させた状態では、凸部71は収納部63の縁から内側に向けて押圧されている。
【0051】
以上より、本実施形態によれば、より簡易な作業で、ステアリングコラムの取付部とアクチュエータ装置5の凸部71との間に隙間が生じにくくなるステアリング装置100が提供可能となる。
【0052】
また、ナット7(第1固定部)をブラケット6(第1取付部)から取り外した状態において、第6距離L6は、第3距離L3よりも小さく、第5距離L5は、第4距離L4よりも大きい。第6距離L6が第3距離L3よりも小さいため、凸部71を開口部66に挿入しやすくなる。また、第5距離L5は第4距離L4よりも大きいため、凸部71を収納部63に嵌合させた状態では、凸部71は収納部63の縁から内側に向けて押圧される。よって、収納部63と凸部71との間に隙間がより生じにくくなる。
【0053】
そして、収納部63を挟んでX1側およびX2側に配置される第1保持部625及び第2保持部626のX方向に沿った第7距離L7と第8距離L8とは同一である。従って、アクチュエータ装置5におけるナット7の位置がギヤボックス52(第2固定部)から遠ざかる場合と近づく場合とで、収納部63の縁に対してX1側およびX2側の両側から凸部71の力が加わる。従って、ナット7がギヤボックス52から遠ざかる場合と近づく場合との双方において、凸部71の力に対する第1保持部625及び第2保持部626の剛性が均等になり、ブラケット6(第1取付部)の耐久性が向上する。
【0054】
ブラケット6には、開口部66に面する一対の入口壁部623が設けられ、Z方向から見て、一対の入口壁部623のそれぞれは、Y方向に沿って延びる。凸部71は直線部72を有し、入口壁部623はY方向に沿って延びる。従って、凸部71の直線部72を入口壁部623と略平行にした状態で凸部71を開口部66から挿入することにより、より容易に凸部71を収納部63に収納することが可能となる。
【0055】
そして、第1ステップから第4ステップまでを含むステアリング装置100の製造方法は、アクチュエータ装置5をY2側に向けて移動させ、ナット7の凸部71をブラケット6の開口部66から収納部63に挿入したのち、凸部71を中心としてアクチュエータ装置5を揺動させて凸部71を収納部63に嵌合させる。このように、簡単な手順で、アクチュエータ装置5の凸部71とブラケット6の収納部63との間に隙間が生じにくくなるステアリング装置100が提供可能となる。
【0056】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態におけるブラケットの平面図である。図8は、第2実施形態のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を取り外した状態を示す図である。図9は、第2実施形態のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を組み付けた状態を示す図である。第2実施形態は、第1実施形態に対してブラケット6Aの形状が相違する。以下、具体的に説明する。
【0057】
図7に示すように、ブラケット6Aは、取付部61と、プレート部62と、を有する。プレート部62には、Z方向から見て開口部66および収納部63が設けられる。プレート部62には、開口部66に面する一対の入口壁部623Aが設けられる。具体的には、プレート部62には、天面部621と、入口壁部623Aと、第2円弧部624とが設けられる。入口壁部623Aは、Y方向かつX方向に斜めに延びる。X1側の入口壁部623Aは、Y2側かつX2側に斜めに延びる。X2側の入口壁部623Aは、Y2側かつX1側に斜めに延びる。換言すると、Z方向から見て、一対の入口壁部623Aのそれぞれは、Y1側からY2側に行くに従ってX方向に沿った距離が小さくなるように傾斜する。
【0058】
ここで、ブラケット6Aにおける開口部66の最小幅は第1距離L1である。具体的には、一対の入口壁部623AのY2側の端部同士のX方向距離が第1距離L1である。また、第2円弧部624の直径が第2距離L2である。ナット7をブラケット6Aから取り外した状態において、第1距離L1は、第4距離L4よりも大きく且つ第3距離L3よりも小さい。また、第2距離L2は、第1距離L1および第4距離L4よりも大きく且つ第3距離L3よりも小さい。
【0059】
次いで、アクチュエータ装置5をブラケット6およびフランジ35に取り付ける手順も第1実施形態と同様である。即ち、まず、図8に示すように、アクチュエータ装置5をY方向に沿って配置し、ナット7をブラケット6Aに組み付ける。
【0060】
次に、図8の矢印Pに示すようにアクチュエータ装置5をナット7を中心としてX1側に倒すように回転させたのち、図9に示すように、ピン36をフランジ35の貫通孔351および突設部521の貫通孔522に貫通させたのち、ピン36の端部にスナップリング37を嵌める。
【0061】
以上説明したように、一対の入口壁部623Aのそれぞれは、Y1側からY2側に行くに従ってX方向に沿った距離が小さくなるように傾斜する。このように、ブラケット6Aの開口部66は、入り口側が広くなるため、ナット7の凸部71を開口部66に挿入しやすくなるメリットを有する。
【0062】
[第2実施形態の変形例]
図10は、第2実施形態の変形例に係るブラケットの平面図である。第2実施形態の変形例は、第2実施形態に対してブラケット6Bの形状が相違する。以下、具体的に説明する。
【0063】
図10に示すように、ブラケット6Bにおいて、プレート部62には、開口部66に面する一対の入口壁部623Bが設けられる。具体的には、プレート部62には、天面部621と、入口壁部623Bと、第2円弧部624とが設けられる。入口壁部623Bは、Y方向かつX方向に斜めに延びる。X1側の入口壁部623Aは、Y2側かつX2側に斜めに延びる。X2側の入口壁部623Aは、Y2側かつX1側に斜めに延びる。換言すると、Z方向から見て、一対の入口壁部623Aのそれぞれは、Y1側からY2側に行くに従ってX方向に沿った距離が小さくなるように傾斜する。ここで、入口壁部623Bの傾斜角度は、入口壁部623Aの傾斜角度よりも大きい。具体的には、入口壁部623Bの傾斜角度は、例えばY方向に対して30度であり、入口壁部623Aの傾斜角度は、例えばY方向に対して15度である。
【0064】
このように、第2実施形態の変形例においても、ブラケット6Bの開口部66は、入り口側が広くなるため、ナット7の凸部71を開口部66に挿入しやすくなるメリットを有する。
【0065】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態に係るブラケットの平面図である。図12は、図11のブラケットにアクチュエータ装置におけるナットの凸部を挿入した状態を示す模式図である。図13は、図12のナットを回転させた状態を示す模式図である。
【0066】
第3実施形態は、第1実施形態に対してブラケット6Cの形状が相違する。以下、具体的に説明する。
【0067】
図11に示すように、ブラケット6Cにおいて、プレート部62には、開口部66に面する一対の入口壁部623Cが設けられる。入口壁部623Cは、Y方向かつX方向に斜めに延びる。X1側の入口壁部623Cは、Y2側かつX1側に斜めに延びる。X2側の入口壁部623Cは、Y2側かつX2側に斜めに延びる。換言すると、Z方向から見て、一対の入口壁部623Aのそれぞれは、Y1側からY2側に行くに従ってX方向に沿った距離が大きくなる。また、入口壁部623Cは、湾曲する湾曲部である。具体的には、入口壁部623Cは、開口部66側に向けて凸の湾曲部である。また、入口壁部623Cと第2円弧部624との境界部分も滑らかに湾曲している。具体的には、入口壁部623Cと第2円弧部624との境界部分は、開口部66側または収納部63側に向けて凸の湾曲部627(図12参照)である。
【0068】
次に、アクチュエータ装置5をナット7を中心としてX1側に倒すように回転させると、図12および図13に示すように、ナット7の凸部71における第1円弧部73と直線部72との角部が収納部63に引っ掛かりにくくなり、凸部71がスムーズに回転する。
【0069】
以上説明したように、入口壁部623Cと収納部63に面する内壁部との境界部は、湾曲部627である。従って、凸部71を収納部63に嵌合した状態で凸部71を回転させる場合、入口壁部623Cと内壁部との境界部に凸部71が引っ掛かりにくくなり、よりスムーズに凸部71を収納部63に嵌合させることができる。
【0070】
[第4実施形態]
図14は、第4実施形態のステアリング装置の一部を示す斜視図であり、アクチュエータ装置を取り外した状態を示す図である。第4実施形態のステアリング装置は、第1実施形態のステアリング装置に対してブラケットとフランジの位置が逆になる。以下、具体的に説明する。
【0071】
図14に示すように、第1ステアリングコラム2の側面には、Y1側に突出するフランジ35が設けられる。フランジ35は、開放部33からY1側に突き出る。フランジ35には、貫通孔351が設けられる。ピン36Aを貫通孔351に挿入し、ナット7Cの側部の凹部に嵌めることにより、ナット7Cがピン36Aを介してフランジ35に取り付けられる。平坦部31におけるX1側の端部には、ブラケット6Dが設けられる。アクチュエータ装置5Aの凸部71は、ブラケット6Dの開口部66から挿入されて収納部63に嵌められる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によっても、ナット7Cの凸部71をブラケット6Dの開口部66から収納部63に挿入したのち、凸部71を中心としてアクチュエータ装置5Aを揺動させてナット7Cをフランジ35に取り付けることが可能となる。
【0073】
[第5実施形態および変形例]
図15は、第5実施形態に係るナットの斜視図である。図16は、第5実施形態の変形例に係るナットの斜視図である。図17は、図15または図16のナットの凸部をブラケットに挿入した状態を示す模式図である。図18は、図17のナットを回転させた状態を示す模式図である。
【0074】
図15に示すように、第5実施形態に係るナット7Aは、第1実施形態に係るナット7に対して凸部71の第1円弧部73に突起部76が設けられる点が相違する。具体的には、ナット7Aは、ナット本体部74と、凸部71とを備える。凸部71の第1円弧部73には、突起部76が設けられる。突起部76は、略直方体である。突起部76の天面は、円弧状に湾曲している。例えば、突起部76の天面は、第1円弧部73の曲率半径と略同一である。
【0075】
また、図16に示すように、第5実施形態の変形例に係るナット7Bは、第5実施形態に係るナット7Aに対して凸部71が2つ設けられる点が相違する。具体的には、ナット7Bは、ナット本体部74と、2つの凸部71とを備える。一方の凸部71の第1円弧部73には、突起部76が設けられる。突起部76は、略直方体である。突起部76の天面は、円弧状に湾曲している。例えば、突起部76の天面は、第1円弧部73の曲率半径と略同一である。なお、他方の凸部71の第1円弧部73には、突起部76が設けられない。
【0076】
そして、図17および図18に示すように、ナット7Aおよび7Bを回転させると、凸部71の突起部76がナット7Aおよび7Bの第2円弧部624(内壁部)に当たる。なお、第2円弧部624によって突起部76が潰される変形をする場合がある。
【0077】
本実施形態では、凸部71の第1円弧部73の中心O2と突起部76とを通る直線において、当該直線と前記第1円弧部73との交点から当該直線と突起部76の外周端との交点までの距離が第1距離L1である。なお、第1距離L1が第2距離L2よりも大きい。このため、前述のように、第2円弧部624によって突起部76が潰される場合がある。また、凸部71において、第1円弧部73に沿った円の直径は、第2円弧部624に沿った円の直径である第2距離L2よりも小さい。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、凸部71に突起部76が設けられるため、凸部71を収納部63に嵌合した状態で凸部71を回転させると、突起部76が収納部63の内壁部により確実に当接しやすくなる。即ち、凸部71の第1円弧部73の全面を径方向外側に移動させて大径の第1円弧部73にすると、第1円弧部73と収納部63とが広い面積で当接する。この場合、第1円弧部73の曲率半径にバラツキが生じると、第1円弧部73の全面が収納部63に均一に当接しにくくなる。これに対して、突起部76は第1円弧部73の全面よりも収納部63の内壁部との当接面積が小さくなるため、より確実に突起部76が収納部63の内壁部に当接し、凸部71と収納部63との間に隙間が生じにくくなる。
【0079】
また、ナット7Bにおいて、仮に、一方の凸部71と他方の凸部71との両方に突起部76を設けると、一方の凸部71と他方の凸部71とで、凸部71と収納部63との圧入代が共に高くなる。この場合、ナット7の姿勢が捩れると、ねじ軸53とナット7とが噛み込みやすくなりねじ軸53がスムーズに回転しにくくなる。
【0080】
しかし、ナット7Bによれば、2つの凸部71の片方には、突起部76を設けないため、ナット7の姿勢が捩れにくくなり、ねじ軸53とナット7との噛み込みが生じにくくなる。従って、突起部76を設けない凸部71によりねじ軸53がスムーズに回転する効果と、突起部76を設けた凸部71により収納部63と凸部71との間の隙間の発生をより効果的に抑制する効果と、の双方の効果が得られる。
【0081】
[第6実施形態]
図19は、第6実施形態に係るナットおよびブラケットを示す平面図である。図20は、図15のナットの凸部をブラケットに挿入した状態を示す模式図である。図21は、図20のナットを回転させた状態を示す模式図である。第6実施形態に係るナットは、第1実施形態に係るナットに対して凸部の形状が相違する。
【0082】
即ち、第1実施形態に係るナット7の凸部71は、2つの直線部72を有するのに対して、図19に示すように、第6実施形態に係るナットの凸部71Aは、1つの直線部72を有する。第2円弧部624に沿った円の直径が第4距離L4である。第6実施形態においても、第1距離L1は、第4距離L4よりも大きい。第6実施形態によれば、図20および図21に示すように、ナット7Dを開口部66から挿入して収納部63内で回転させることができる。
【0083】
[第7実施形態]
図22は、第7実施形態に係るブラケットを示す平面図である。第7実施形態に係るブラケット6Eは、第1実施形態に係るブラケット6に対して突出部64を設けた点が相違する。突出部64は、収納部63の面する第2円弧部624(内壁部)から内周側に向けて突出する。突出部64は、収納部63の中心O1を挟んで2つ設けられる。突出部64は、Z方向から見て略矩形状である。第2距離L2および第4距離L4は、中心O1を通り、2つの突出部64同士を結ぶ線分の長さである。
【0084】
以上説明したように、第7実施形態では、第2円弧部624(内壁部)の内周に突出部64が設けられるため、凸部71を収納部63に嵌合した状態で凸部71を回転させると、凸部71を収納部63の内壁部とがより確実に当接する。従って、収納部63と凸部71との間の隙間をより効果的に抑制することができる。なお、図15及び図16で説明した突起部76と同様に、凸部71によって突出部64が潰される変形をする場合があり、この場合は、より確実に凸部71が収納部63に嵌合される。
【0085】
[第8実施形態]
図23は、第8実施形態に係るブラケットを示す平面図である。第8実施形態に係るブラケット6Fは、第1実施形態に係るブラケット6に対して突出部65を設けた点が相違する。突出部65は、第2円弧部624から内周側に向けて突出する。突出部65の縁は、Z方向から見てY方向に延びる直線である。突出部65は1つ設けられる。収納部63の中心を挟んで2つ設けられる。突出部64は、Z方向から見て略矩形状である。中心O1を通り、突出部65に直交する線分において、第2距離L2および第4距離L4は、当該線分における突出部65から第2円弧部624までの長さである。
【0086】
以上説明したように、第8実施形態では、第2円弧部624(内壁部)の内周に突出部65が設けられるため、凸部71を収納部に嵌合した状態で凸部71を回転させる際に突出部65に凸部71が当たり、突出部65から凸部71に押圧力が作用する。これにより、収納部63とアクチュエータ装置5の凸部71との間の隙間の発生をより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 ステアリングシャフト
2 第1ステアリングコラム
3 第2ステアリングコラム
31 平坦部
32 湾曲部
33 開放部
34 内周壁部
35 フランジ(第2取付部)
351 貫通孔
36、36A ピン
37 スナップリング
4 第3ステアリングコラム
5 アクチュエータ装置
5A アクチュエータ装置
51 モータ
52 ギヤボックス(第2固定部)
521 突設部
522 貫通孔
524 筐体
53 ねじ軸
6、6A、6B、6C、6D、6E、6F ブラケット(第1取付部)
61 取付部
62 プレート部
621 天面部
622 角部
623、623A、623B 入口壁部
624 第2円弧部(内壁部)
625 第1保持部
626 第2保持部
627 湾曲部
63 収納部
64 突出部
65 突出部
66 開口部
7、7A、7B、7C、7D ナット(第1固定部)
71、71A 凸部
72 直線部
73 第1円弧部
74 ナット本体部
76 突起部
100 ステアリング装置
101 ギヤボックス
102 電動モータ
104 ECU
105 ステアリングホイール
106 モータ
107 ギヤボックス
108 ねじ軸
109 ブラケット
112 アクチュエータ装置
AX1 第1中心軸
AX2 第2中心軸
AX3 第3中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23