(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】正極およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241202BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241202BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241202BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241202BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 D
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/36 E
(21)【出願番号】P 2022571316
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2022001654
(87)【国際公開番号】W WO2022164281
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0012872
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フィ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ハク・ユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ラ・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ヒュク・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・イル・キム
(72)【発明者】
【氏名】スル・キ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フン・イ
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-087879(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0117496(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110429252(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、および前記正極集電体上に順に積層された第1正極活物質層および第2正極活物質層を含むリチウム二次電池用正極であって、
前記第1正極活物質層および前記第2正極活物質層は、バイモーダル正極活物質を含み、
前記第1正極活物質層は、単粒子形状の小粒径粒子
と、二次粒子形状の大粒径粒子を含み、
前記第2正極活物質層は、二次粒子形状の小粒径粒子
と、二次粒子形状の大粒径粒子を含み、
前記第1正極活物質層と前記第2正極活物質層の厚さの比は、3:7~7:3であ
り、
前記第1正極活物質層に含まれる大粒径粒子の平均粒径(D
50
)が5μm~20μmであり、前記第1正極活物質層に含まれる小粒径粒子の平均粒径(D
50
)が3μm~10μmであり、
前記第2正極活物質層に含まれる大粒径粒子の平均粒径(D
50
)が5μm~20μmであり、前記第2正極活物質層に含まれる小粒径粒子の平均粒径(D
50
)が3μm~10μmであり、
前記第1正極活物質層は、大粒径粒子と小粒径粒子を85:15~55:45の重量比で含み、
前記第2正極活物質層は、大粒径粒子と小粒径粒子を85:15~55:45の重量比で含み、
前記第1正極活物質層および第2正極活物質層に含まれるバイモーダル正極活物質は、それぞれ独立して、化学式1で表される組成を有し、
[化学式1]
Li
x
[Ni
a
Co
b
M
1
c
M
2
d
]O
2
前記化学式1中、
前記M
1
は、MnおよびAlから選択される1種以上であり、
前記M
2
は、B、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、TaおよびWから選択される1種以上であり、
0.9≦x≦1.1、0.7≦a<1、0<b<0.3、0<c<0.3、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である、リチウム二次電池用正極。
【請求項2】
前記化学式1中、0.8≦a<1、0<b<0.2、0<c<0.2、0≦d≦0.1である、請求項
1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項3】
前記第1正極活物質層は、点状導電材をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項4】
前記第2正極活物質層は、点状導電材および線状導電材をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項5】
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月29日付けの韓国特許出願第10-2021-0012872号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、多層の正極活物質層を含む正極およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化し、広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、中でも、作用電圧が高く容量特性に優れたLiCoO2などのリチウムコバルト複合金属酸化物が主に使用されている。しかし、LiCoO2は、脱リチウムによる結晶構造の不安定化のため、熱的特性が非常に劣っている。また、高価であるため、電気自動車などの分野における動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
LiCoO2の代わりに使用するための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO4など)またはリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiO2など)などが開発されている。中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を有することから大容量の電池の実現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に関する研究および開発がより活発になされている。しかし、LiNiO2は、LiCoO2に比べて熱安定性が劣り、充電状態で外部からの圧力などによって内部短絡が生じると、正極活物質自体が分解し、電池の破裂および発火を引き起こす問題があった。
【0006】
そのため、LiNiO2の優れた可逆容量は維持し、且つ、低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をCo、Mnで置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物、Niの一部をCo、Alで置換したニッケルコバルトアルミニウム系リチウム複合遷移金属酸化物、Niの一部をCo、Mn、Alで置換したニッケルコバルトマンガンアルミニウム系複合遷移金属酸化物などが開発されている。
【0007】
一方、高容量のリチウム遷移金属酸化物の使用時に、高電圧での酸化安定性が低下して安定性が悪くなるか、長期充放電を行う間に粒子間のクラックが多く発生して導電経路(path)が途絶える現象が発生し、このような現象は、サイクル抵抗が増加する原因となる。
【0008】
したがって、容量、効率、寿命、出力特性および熱安定性がいずれも改善したリチウム二次電池用正極の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのものであり、容量、効率、寿命、出力特性および熱安定性をいずれも改善することができるリチウム二次電池用正極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、正極集電体、および前記正極集電体上に順に積層された第1正極活物質層および第2正極活物質層を含むリチウム二次電池用正極であって、前記第1正極活物質層および前記第2正極活物質層は、バイモーダル正極活物質を含み、前記第1正極活物質層は、単粒子形状の小粒径粒子を含み、前記第2正極活物質層は、二次粒子形状の小粒径粒子を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0011】
また、本発明の前記正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、特定の条件を満たす2層の正極活物質層を含むことで、容量、効率、寿命、出力特性および熱安定性をいずれも改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例および比較例で製造した正極活物質を用いて製造した半電池の容量維持率特性を示す図である。
【
図2】実施例および比較例で製造した正極活物質を用いて製造した半電池の抵抗増加率特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0015】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指すためのものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0016】
本明細書において、「平均粒径(D50)」は、粒径分布曲線で体積累積量の50%に該当する粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。例えば、前記正極活物質の平均粒径(D50)の測定方法は、正極活物質の粒子を分散媒の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、HORIBA社製、LA-960)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における体積累積量の50%に該当する平均粒径(D50)を算出することができる。
【0017】
本明細書において、「単粒子形状の正極活物質」は、従来の方法で製造された数十~数百個の一次粒子が凝集して形成される球状の二次粒子形状の正極活物質と対比する概念であり、10個以下の一次粒子からなる正極活物質を意味する。具体的には、本発明において、単粒子形状の正極活物質は、1個の一次粒子からなる単粒子であってもよく、数個の一次粒子が凝集した二次粒子形状であってもよい。
【0018】
本明細書において、「一次粒子」は、走査電子顕微鏡により正極活物質を観測した時に認識される粒子の最小単位を意味し、「二次粒子」は、複数個の一次粒子が凝集して形成された二次構造体を意味する。
【0019】
本明細書において、「粒子」は、マイクロメートル単位の粒を指し、これを拡大して観測すると、数十ナノ単位の結晶形状を有する「グレーン」に区分することができる。これをさらに拡大して観測すると、原子が一定の方向の格子構造をなす形態の区分された領域を確認することができ、これを「結晶粒」とする。XRDで観測する粒子のサイズは、結晶粒径と定義される。結晶粒径は、XRDデータを用いて、シェラーの式(Scherrer equation)により定量的に求めることができる。
【0020】
本明細書において、過焼成は、正極活物質の製造時に、既存の適正な焼成温度よりも50℃~200℃程度より高い温度で焼成することを意味する。例えば、正極活物質として、Ni:Co:Mnのモル比が80:10:10であるリチウム複合遷移金属酸化物を製造する時に、従来、適正な焼成温度が750℃~900℃と知られているが、過焼成は、前記適正な焼成温度よりも50℃~100℃程度高い温度で焼成することを意味する。
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
正極
本発明者らは、正極が2層の正極活物質層を含み、正極集電体上に形成された第1正極活物質層が、平均粒径(D50)が相違する二次粒子形状の正極活物質および単粒子形状の正極活物質を含み、第1正極活物質層上に形成された第2正極活物質層が、平均粒径(D50)が相違する二次粒子形状の2種の正極活物質を含む場合、容量、効率、寿命、出力特性および熱安定性に優れたリチウム二次電池を実現することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明の正極は、正極集電体、および前記正極集電体上に順に積層された第1正極活物質層および第2正極活物質層を含むリチウム二次電池用正極に関する。前記第1正極活物質層および前記第2正極活物質層は、バイモーダル正極活物質を含むことができる。すなわち、第1正極活物質層は、大粒径粒子(第1正極活物質)および小粒径粒子(第2正極活物質)を含むことができ、第2正極活物質層は、大粒径粒子(第3正極活物質)および小粒径粒子(第4正極活物質)を含むことができる。
【0024】
前記第1正極活物質層は、複数個の一次粒子が凝集して形成された二次粒子形状の第1正極活物質(大粒径粒子)および単粒子形状の第2正極活物質(小粒径粒子)を含むことができる。
【0025】
前記第2正極活物質層は、複数個の一次粒子が凝集して形成された二次粒子形状の第3正極活物質(大粒径粒子)および複数個の一次粒子が凝集して形成された二次粒子形状の第4正極活物質(小粒径粒子)を含むことができる。
【0026】
すなわち、本発明は、前記第1正極活物質は第2正極活物質より平均粒径(D50)が大きく、前記第3正極活物質は第4正極活物質より平均粒径(D50)が大きいリチウム二次電池用正極を提供する。前記第1正極活物質は、前記第3正極活物質と同じものであることができる。
【0027】
前記正極集電体上に第1正極活物質層が存在し、前記第1正極活物質層上に前記第2正極活物質層が存在する場合、前記正極集電体上に第1または第2正極活物質層のみ存在する場合に比べて、バッファ層が存在することから熱伝達速度が遅くて熱安定性を改善することができ、第1正極活物質層と第2正極活物質層の厚さの比および各層に含まれる活物質、導電材、バインダーの比率を適切に調節することで、正極を含む電池の抵抗および出力をより改善することができる。一方、前記正極集電体上に第2正極活物質層が存在し、前記第2正極活物質層上に前記第1正極活物質層が存在する場合には、圧延時に電極表面部の正極活物質粒子が割れる確率が高くなり、寿命および抵抗の面で不利な問題がある。
【0028】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0029】
本発明によると、前記第1正極活物質層と前記第2正極活物質層の厚さの比は、3:7~7:3、具体的には5:5~6:4であることができる。第1正極活物質層と第2正極活物質層の厚さの比が前記範囲内である場合、正極表面の正極活物質の粒子の割れが防止され、抵抗および熱安定性が改善する利点がある。
【0030】
本発明によると、前記第1正極活物質、第2正極活物質、第3正極活物質および第4正極活物質は、それぞれ独立して、下記の化学式1で表される組成を有することができる。
【0031】
[化学式1]
Lix[NiaCobM1
cM2
d]O2
【0032】
前記化学式1中、
前記M1は、MnおよびAlから選択される1種以上であり、
前記M2は、B、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、TaおよびWから選択される1種以上であり、
0.9≦x≦1.1、0.7≦a<1、0<b<0.3、0<c<0.3、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【0033】
前記aは、活物質内のリチウム以外の金属元素のうちニッケルの原子分率を意味し、0.7≦a<1、0.8≦a<1または0.85≦a≦0.95であることができる。
【0034】
前記bは、活物質内のリチウム以外の金属元素のうちコバルトの原子分率を意味し、0<b<0.3、0<b<0.2、0.01≦b<0.2または0.02≦b≦0.1であることができる。
【0035】
前記cは、活物質内のリチウム以外の金属元素のうちM1元素の原子分率を意味し、0<c<0.3、0<c<0.2、0.01≦c<0.2または0.02≦c≦0.1であることができる。
【0036】
前記dは、活物質内のリチウム以外の金属元素のうちM2元素の原子分率を意味し、0≦d≦0.1または0≦d≦0.05であることができる。
【0037】
本発明によると、前記第1正極活物質は、平均粒径(D50)が5μm~20μm、具体的には8μm~18μm、さらに具体的には10μm~16μmであることができ、前記第2正極活物質は、平均粒径(D50)が3μm~10μm、具体的には4μm~10μm、さらに具体的には4μm~8μmであることができる。前記第1正極活物質と前記第2正極活物質の平均粒径(D50)が上述の数値範囲を同時に満たす場合、正極のエネルギー密度が大きいだけでなく、圧延時に正極活物質間のパッキングが容易である利点がある。
【0038】
本発明によると、前記第3正極活物質は、平均粒径(D50)が5μm~20μm、具体的には8μm~18μm、さらに具体的には10μm~16μmであることができ、前記第4正極活物質は、平均粒径(D50)が3μm~10μm、具体的には4μm~10μm、さらに具体的には4μm~8μmであることができる。前記第3正極活物質と前記第4正極活物質の平均粒径(D50)が上述の数値範囲を同時に満たす場合、正極のエネルギー密度が大きいだけでなく、圧延時に正極活物質間のパッキングが容易である利点がある。
【0039】
前記第1正極活物質の結晶粒径は100nm~150nmであることができ、前記第2正極活物質の結晶粒径は200nm~250nmであることができる。また、前記第3正極活物質の結晶粒径は100nm~150nmであることができ、前記第4正極活物質の結晶粒径は70nm~100nmであることができる。
【0040】
前記第1および第3正極活物質の結晶粒径が前記範囲内である場合、正極活物質粒子内に存在するクラックが少ないことができ、前記第2正極活物質の結晶粒径が前記範囲内である場合、正極活物質粒子内に存在するクラックが少ないだけでなく、BET比表面積が小さくて、副反応がほとんど生じないことができる。
【0041】
前記第1正極活物質のBET比表面積は0.3m2/g~0.7m2/gであることができ、前記第2正極活物質のBET比表面積は0、2m2/g~0.4m2/gであることができる。また、前記第3正極活物質のBET比表面積は0.3m2/g~0.7m2/gであることができ、前記第4正極活物質のBET比表面積は0.7m2/g~1.2m2/gであることができる。
【0042】
前記BET比表面積は、BELSORP‐mini II(Mictrotrac‐BEL社製)を用いて、液体窒素温度(77K)下での窒素ガス吸着量により測定することができ、それぞれの正極活物質のBET比表面積が前記範囲内である場合、正極活物質と電解質との副反応を防止することができる。
【0043】
本発明によると、前記第1正極活物質層は、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質を、85:15~55:45、具体的には85:15~60:40、さらに具体的には80:20~70:30の重量比で含むことができる。この場合、電池の容量特性および圧延密度特性が有利であることができる。
【0044】
前記第1正極活物質の含量と前記第2正極活物質の含量の和は、第1正極活物質層の全重量に対して、80重量%~99重量%、より具体的には85重量%~98重量%であることができる。上記の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0045】
本発明によると、前記第2正極活物質層は、前記第3正極活物質と前記第4正極活物質を85:15~55:45、具体的には85:15~60:40、さらに具体的には80:20~70:30の重量比で含むことができる。この場合、電池の容量特性および圧延密度特性が有利であることができる。
【0046】
前記第3正極活物質の含量と前記第4正極活物質の含量の和は、第2正極活物質層の全重量に対して、80重量%~99重量%、より具体的には85重量%~98重量%であることができる。上記の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0047】
前記第1正極活物質層および前記第2正極活物質層は、それぞれ独立して、正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0048】
前記導電材は、電極に導電性を与えるために使用されるものであり、本発明によると、前記第1正極活物質層は、点状導電材をさらに含むことができ、前記第2正極活物質層は、点状導電材および線状導電材をさらに含むことができる。前記点状導電材の具体的な例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどが挙げられ、前記線状導電材の例としては、Low‐BET CNT(低BET比表面積カーボンナノチューブ)、SWCNT(単層カーボンナノチューブ)などが挙げられる。前記第2正極活物質層が点状導電材と線状導電材をさらに含む場合、正極活物質粒子間の導電ネットワークが良好になって電子伝導性が改善し、リチウムイオンの移動が容易になって出力および寿命が改善することができる。
【0049】
前記導電材は、第1正極活物質層および第2正極活物質層それぞれの正極活物質層の全重量に対して1重量%~30重量%含まれることができる。
【0050】
前記バインダーは、正極活物質の粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンプルロライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、第1正極活物質層および第2正極活物質層それぞれの正極活物質層の全重量に対して1重量%~30重量%含まれることができる。
【0051】
前記正極は、通常の正極製造方法により製造されることができる。具体的には、正極活物質、および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されることができる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。
【0052】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有する程度であれば十分である。
【0053】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0054】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含むリチウム二次電池を提供することができる。
【0055】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりであるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0056】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を輸納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0057】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0058】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0059】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。
【0060】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質の材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0061】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量に対して80重量%~99重量%含まれることができる。
【0062】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分であり、通常、負極活物質層の全重量に対して0.1重量%~10重量%添加されることができる。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン‐ブタジエンゴム、ニトリル‐ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0063】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であり、負極活物質層の全重量に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下添加されることができる。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0064】
前記負極活物質層は、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0065】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液の含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0066】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0067】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0068】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液が優れた性能を示すことができる。
【0069】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO2、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0070】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。この際、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1重量%~5重量%含まれることができる。
【0071】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた容量、効率、寿命および出力特性を示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0072】
したがって、本発明によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供されることができる。
【0073】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0074】
前記リチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであることができる。
【0075】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおいて単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0076】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0077】
実施例および比較例
実施例および比較例で使用した正極活物質の粒子の形状、組成、平均粒径(D50)、結晶粒径およびBET比表面積を下記表1に示した。
【0078】
【0079】
実施例1
前記表に示した正極活物質Aおよび正極活物質Bを8:2の重量比で混合した後、混合した正極活物質Aおよび正極活物質Bと、カーボンブラックおよびPVDFバインダーを97.5:1.0:1.5の重量比でNMP溶媒の中で混合し、第1正極スラリーを製造した。前記第1正極スラリーをアルミニウム集電体(厚さ:12μm)の一面に塗布し、130℃で乾燥して、前記アルミニウム集電体上に第1正極活物質層を形成した。
【0080】
前記表に示した正極活物質Cおよび正極活物質Dを8:2の重量比で混合した後、混合した正極活物質Cおよび正極活物質Dと、カーボンブラックとSWCNTを90:10の重量比で混合した導電材およびPVDFバインダーを97.5:1.0:1.5の重量比でNMP溶媒の中で混合し、第2正極スラリーを製造した。前記第2正極スラリーを前記第1正極活物質層上に塗布し、130℃で乾燥した後、圧延して正極を製造した。
【0081】
この場合、第1正極活物質層と第2正極活物質層の厚さの比は5:5であった。
【0082】
実施例2
第1正極活物質層と第2正極活物質層の厚さの比が6:4になるように第1正極スラリーおよび第2正極スラリーの塗布量を調節した以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0083】
実施例3
正極活物質Aおよび正極活物質Bを7:3の重量比で混合し、第1正極活物質層と第2正極活物質層の厚さの比が6:4になるように第1正極スラリーおよび第2正極スラリーの塗布量を調節した以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0084】
比較例1
前記表に示した正極活物質Cおよび正極活物質Dを8:2の重量比で混合した後、混合した正極活物質Cおよび正極活物質Dと、カーボンブラックとSWCNTを90:10の重量比で混合した導電材およびPVDFバインダーを97.5:1.0:1.5の重量比でNMP溶媒の中で混合し、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体(厚さ:12μm)の一面に塗布し、130℃で乾燥した後、圧延して正極を製造した。
【0085】
比較例2
前記表に示した正極活物質Aおよび正極活物質Bを8:2の重量比で混合した後、混合した正極活物質Aおよび正極活物質Bと、カーボンブラックおよびPVDFバインダーを97.5:1.0:1.5の重量比でNMP溶媒の中で混合し、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体(厚さ:12μm)の一面に塗布し、130℃で乾燥した後、圧延して正極を製造した。
【0086】
比較例3
アルミニウム集電体上に第2正極スラリーを塗布して第2正極活物質層を形成し、前記第2正極活物質層上に第1正極スラリーを塗布して第1正極活物質層を形成した以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0087】
実験例
実験例1:半電池の特性の評価
実施例1~3および比較例1~3で製造した正極を用いて半電池を製造し、半電池それぞれに対して、初期充放電容量、初期効率、寿命特性、抵抗特性、出力特性を評価した。
【0088】
先ず、実施例1~3および比較例1~3で製造したそれぞれの正極とLi金属ディスク負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースの内部に位置させてから、前記ケースの内部に電解液を注入し、リチウム二次電池を製造した。この場合、電解液としてEC/EMC(5/5、vol%)有機溶媒に1MのLiPF6を溶解させた電解液を注入し、半電池を製造した。
【0089】
前記のように製造された半電池を25℃で0.2Cの定電流で電圧が4.25Vになるまで充電し、その後、電圧が2.5Vに達するまで0.2Cの定電流で放電した。初期充電容量と初期放電容量の値を下記表2に示し、初期充電容量に対する初期放電容量の比率を初期効率(@0.2C)とし、これを下記表2に示した。充放電時に、Cレートを1.0C、2.0Cに調節した以外は、上述と同じ方法で初期効率(@1.0C)および初期効率(@2.0C)を求め、これを下記表2に示した。
【0090】
【0091】
また、45℃、2.5~4.25Vの範囲で、0.3Cの定電流で充放電サイクルを30回繰り返し実施しながら半電池の容量を測定し、特に、1回目のサイクル容量に対するN回目のサイクル容量の比率を容量維持率(Capacity Retention、%)とし、これを
図1に示した。また、1回目の放電サイクルで求めたDCIRに対するN回目の放電サイクルで求めたDCIRの比率を抵抗増加率(ΔDCIR、%)とし、これを
図2に示した。
【0092】
最後に、前記のように製造された半電池に対して、-10℃(低温)および25℃(常温)それぞれで、ΔSOC 30(SOC 35%からSOC 20%)だけ放電し、1、350秒間0.4C IRドロップにより電圧値の変化を確認し、これを下記表3に示した。
【0093】
【0094】
前記表2、3および
図1、2を参照すると、実施例1~3の正極を含む電池は、比較例1~3の正極を含む電池に比べて、容量、効率、容量維持率、低温および常温出力特性がいずれも優れていることを確認することができる。比較例1および2の正極を含む電池の場合には、正極活物質層が単層構造としてリチウムイオンが移動する経路が少ないため、実施例1、2に比べて、容量、効率、容量維持率、低温および常温出力特性が良好でない問題がある。
【0095】
比較例3の正極を含む電池の場合には、正極の表面に存在する正極活物質粒子の割れがひどくなり、電池の抵抗が大きくなる問題がある。
【0096】
実験例2:熱安定性の評価(DSC,示差走査熱量測定)
実施例1~3および比較例1~3で製造した正極を用いて半電池を製造し、半電池それぞれに対して熱安定性を評価した。
【0097】
先ず、実施例1~3および比較例1~3で製造したそれぞれの正極とLi金属ディスク負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースの内部に位置させてから、前記ケースの内部に電解液を注入し、リチウム二次電池を製造した。この場合、電解液としてEC/DMC/EMC(3/4/3、vol%)有機溶媒に1MのLiPF6を溶解させた電解液を注入し、半電池を製造した。
【0098】
前記のように製造された半電池を0.1Cの定電流で充電してSOC100%の状態で分解し、DSC測定用セルにそれぞれの半電池から得られた正極と新たな電解液を投入し、常温から500℃まで10℃/分に昇温しながら示差走査熱量計(Setaram社製、HP(High Pressure)‐DSC)を用いて、熱流量が最大であるピークが示される温度を下記表4に示した。
【0099】
【0100】
前記表4を参照すると、実施例1~3の正極を含む電池の場合、二重層によるバッファ層(buffer layer)効果によって熱伝達が少ないため、比較例1および2の正極を含む電池よりも熱安定性に優れることを確認することができる。また、実施例1~3の正極を含む電池の場合、比較例3の正極を含む電池よりも正極の表面に存在する正極活物質粒子の割れが改善し(正極活物質粒子がほとんど割れない)熱安定性に優れることを確認することができる。