(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ハイドロキノン安定化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20241202BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20241202BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20241202BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241202BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/04
A61K8/33
A61K8/86
A61Q19/02
(21)【出願番号】P 2023501400
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2021007699
(87)【国際公開番号】W WO2022010129
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084277
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067884
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】523008185
【氏名又は名称】タイ・グク・ファーム・インダストリー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミ-ナ・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒョン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン-ミン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ナ-ウン・ユク
(72)【発明者】
【氏名】ムン-ジュ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ソ-フン・ロ
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0002465(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0003400(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0095466(KR,A)
【文献】特表2022-514679(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106038391(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105997698(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008266(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243423(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108578261(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0114621(KR,A)
【文献】特開昭61-227516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロキノンまたはその誘導体を有効成分として含み、
前記誘導体が、ハイドロキノンモノベンジルエーテル、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノエチルエーテルまたはこれらの混合物であり、
ポロクサマーを用いてハイドロキノンまたはその誘導体を安定化させ、
前記ポロクサマーは、PPO分子量
が1200~1800g/molであり、かつPEO含有量の百分率
が30~80%である第1ポロクサマーと、PPO分子量
が3000~4500g/molであり、かつPEO含有量の百分率
が30~80%である第2ポロクサマーの組合せであ
り、
前記ハイドロキノンまたはその誘導体は、組成物の総重量に対して0.5~8重量%の量で含有され、かつ、
前記ポロクサマーは、組成物の総重量に対して0.1~20重量%で含有される、組成物。
【請求項2】
前記第1ポロクサマーがポロクサマー188であり、第2ポロクサマーがポロクサマー338、ポロクサマー407またはこれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、ポロクサマーミセルを含み、ミセルが含まれた外部相が水相である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
美白改善用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロキノン(Hydroquinone)またはその誘導体を有効成分として含む組成物に関し、より詳しくは、皮膚副作用を最小化し、皮膚透過率を増加させることができることによる、美白改善効果が最大化可能な組成物に関する。
【0002】
本出願は、2020年7月8日出願の韓国特許出願第10-2020-0084277号及び2021年5月26日出願の韓国特許出願第10-2021-0067884号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
皮膚は、人体を保護する機能を有する重要な組織であって、大きくは、表皮、真皮、皮下組織に分けられる。表皮の基底層に存在するメラノサイトから作られるメラニンは、光エネルギーを吸収してUVによる損傷から真皮下の器官を保護する役割を果たす。しかし、環境汚染による紫外線の露光増加と老化によって、メラニンが過度に合成されるか、または角化作用が円滑に行われずにメラニンが蓄積されると、色素が沈着して、シミ、そばかすを形成して皮膚の色が暗くなる。
【0004】
このような色素沈着現象を防止するために、従来の化粧品分野においては、コウジ酸(Kojic acid)、ビタミンC(L-ascorbic acid)、グルタチオン(Glutathione)などが通常使用されてきた。しかし、これらは、美白効果があまり大きくない。一方、ハイドロキノンは、前記成分と異なって美白効果が卓越であるが、空気や光による酸化によって変色しやすいという問題がある。酸化したハイドロキノンは、ベンゾキノン(p-benzoquinone)を経てキンヒドロン(Quinhydrone)を生成し、これらは細胞毒性を誘発して発癌及びアレルギー誘発特性を有することが知られている。
【0005】
このような問題によって、ハイドロキノンは、各国別に制限的な濃度のみが許可されており、従来には、ハイドロキノンの酸化などを防止するために密閉遮光容器を用いている。しかし、製品を開封した後には、酸素や光に対する露出が不可避であることが実情である。このような理由で、pHを4付近に調節するか、または多様な抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)を適用してハイドロキノンの酸化を減らす方法が報告されている。しかし、アスコルビン酸が抗酸化剤として添加されたハイドロキノン軟膏を使用した場合、皮膚アレルギーが報告されており、ビタミンE(Vitamin E)やアスコルビン酸を適用する場合、抗酸化剤そのものの変色が誘発される場合がある。
【0006】
一方、ジメチルイソソルビド(Dimethyl isosorbide (DMI))を皮膚透過促進剤として適用して、ハイドロキノンの皮膚透過率を高めることができる技術が知られているが、このような技術においては、高温でのハイドロキノンの変色が阻止できないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、皮膚透過率が改善されるだけでなく、ハイドロキノンの酸化安定性が確保されたハイドロキノン組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記皮膚透過率、酸化安定性のみならず、剤形安定性も確保された、ハイドロキノンを有効成分として含む組成物を提供することを他の目的とする。
【0009】
なお、本発明は、上記のような長所を有することで、結果的には皮膚副作用が最小化し、皮膚美白効果が最大化した組成物を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ハイドロキノン(Hydroquinone)またはその誘導体を有効成分として含み、ポロクサマー(poloxamer)を用いてハイドロキノンまたはその誘導体を安定化させることを特徴とする組成物を提供する。
【0011】
また、本発明の一態様は、ハイドロキノンまたはその誘導体を有効成分として含み、ポロクサマーを用いてハイドロキノンまたはその誘導体を安定化させ、二種以上のポロクサマーを混合して使用することで、有効成分の酸化安定性及び剤形安定性がさらに改善された組成物を提供する。
【0012】
本発明者らは、ポロクサマーからミセル(micelle)を形成し、ハイドロキノンまたはその誘導体を当該ミセルの内部または周辺に位置させることでハイドロキノンまたはその誘導体の含量を高め、これを安定化させることができるだけでなく、皮膚透過度も改善可能であることを確認して、本発明を完成させた。また、親水性ブロックの長さが異なる二種以上のポロクサマーを共に用いて三成分系混合物(ハイドロキノンまたはその誘導体及び二種のポロクサマー)を形成することでハイドロキノンまたはその誘導体の安定性をさらに改善できるだけでなく、外部が水相(water phase)である環境においてもゲル化などを防止し、剤形安定性を改善することができることを確認して、本発明の一面を完成させた。本発明の三成分系混合物は、立体障害(steric hindrance)によってゲル化が防止され、親水性ブロックが互いに絡み合って形成された空間にハイドロキノン捕集効率を高めることができることが推測されるが、本発明はこのような理論的推測に限定されない。
【0013】
したがって、本発明の一態様は、ブロック共重合体ポロクサマー一種以上を用いて自己組織化(self-assembly)でミセルを形成し、ミセルにハイドロキノンを捕集することで酸化または光による変色を防止して皮膚副作用を最小化すると共に、皮膚透過率を増加させることができる組成物を提供する。本発明の他の態様は、ハイドロキノンまたはその誘導体を有効成分として含み、一種以上(望ましくは、二種以上)のポロクサマーミセルを含み、ミセルが含まれる外部相が水相であることを特徴とする組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ハイドロキノンまたはその誘導体の可溶化濃度を高め、水相で高濃度においても析出されることなく高い溶解安定性を有することができ、熱、酸素または光などのような外部刺激に対する酸化反応を防止することで保存安定性を増加させることができ、変色を予防することができるので、ハイドロキノンの酸化生成物による毒性が減少し、炎症反応を減らすことができる、ハイドロキノンまたはその誘導体を含有する組成物を提供する。また、本発明の組成物は、ミセルによってハイドロキノンまたはその誘導体の皮膚透過率が向上し、美白効能を高めることができるので、ハイドロキノンまたはその誘導体を有効成分として含む美白改善に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】中心部の疎水性ポリオキシプロピレンと両側の親水性ポリオキシエチレンからなるトリブロック共重合体であるポロクサマーを用いてハイドロキノンを捕集したミセルの概略図である。
【
図2】安定化したハイドロキノンの細胞毒性減少を評価した実験結果である。
【
図3】安定化したハイドロキノンの変色減少を写真から評価した実験結果である。
【
図4】安定化したハイドロキノンの変色減少の色差度の実験結果である。
【
図5】豚の表皮に実施例1と比較例2を塗布した結果である。
【
図6】安定化したハイドロキノンの皮膚送達効率の増加効果を評価した実験結果である。
【
図7】3D皮膚に実施例1、比較例1及び比較例2を塗布してから3日後、断面を切断してメラニンの変化を確認した結果である。
【
図8】ポロクサマーの種類が、ハイドロキノンの安定性及びゲル化に及ぼす影響を評価した結果である。
【
図9】ポロクサマーの含有量がハイドロキノンの苛酷安定性に及ぼす影響を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、前記有効成分としてのハイドロキノンまたはその誘導体は、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノベンジルエーテル、ハイドロキノンモノメチルエーテル及びハイドロキノンモノエチルエーテルからなる群より一種以上を選択でき、望ましくは、ハイドロキノンを使用し得る。
【0017】
ハイドロキノンまたはその誘導体は、組成物の総重量に対して0.1~10重量%、望ましくは0.5~8重量%、より望ましくは1~5重量%の量で含有されることが望ましい。10重量%以上の量で含有される場合、ミセルに捕集されず残されたハイドロキノンが酸化するか、または外部に存在することによって変色を誘発する問題が発生し得る。
【0018】
本発明において、PEO-PPO-PEOから構成された三重共重合体であるポロクサマーとしては、例えば、ポロクサマー101、105、108、122、123、124、181、182、183、184、185、188、212、215、217、231、234、235、237、238、282、284、288、331、333、334、335、338、401、402、403、407などが使用され得る(ポロクサマーの名称に含まれた三桁数字のうち最初の二桁はPPOの分子量(g/mol)を100で割ったおおよその値を意味し、最後の一桁はポロクサマーのうちPEO含量の百分率を10で割った値を意味する)。
【0019】
本発明において、用語「約」または「おおよそ」は、当該数値の±20%を意味し、望ましくは、当該数値の±10%を意味する。
【0020】
本発明において、ポロクサマーは、組成物の総重量に対して0.1~40重量%で含有されることが望ましい。例えば、組成物の総重量に対して0.1~20重量%、より望ましくは0.5~10重量%、さらに望ましくは2.5~5重量%を用い得る。但し、ポロクサマーの最小含有量は、ミセルを形成できる程度でなければならない。ポロクサマーの含有量が少なすぎる場合には、ハイドロキノンを捕集できるほどにミセルが十分に設けられず、含有量が高すぎる場合には、ゲル化する問題が発生する恐れがある。
【0021】
本発明のポロクサマーの場合、高圧乳化のような別の工程が必要なリポソーム(liposome)やナノエマルジョン(nanoemulsion)とは異なり、別工程が不要であり、即ち、自己組織化によって製造可能であるので、生産的な面でより効率的な可溶化及びミセルの形成方法であるといえる。
【0022】
望ましくは、本発明の一態様による組成物は、ポロクサマーとして二種以上のポロクサマーを含むことが望ましく、二種のうち、一種のポロクサマー(第1ポロクサマー)はPPO分子量が約1200~1800g/molであり、PEO含有量の百分率が約30~80%であるポロクサマー、望ましくは40~80%であるポロクサマー(例えば、ポロクサマー188、185、124、184など)であり、他の一種のポロクサマー(第2ポロクサマー)は、PPO分子量が約3000~4500g/molであり、PEO含有量の百分率が約30~80%であるポロクサマー、望ましくは40~80%であるポロクサマー(例えば、ポロクサマー338、407、334、335など)である。物性が異なる二種のポロクサマーを混合して使用する場合、ハイドロキノンの酸化防止と共にゲル化防止の面でより望ましい。
【0023】
より望ましくは、本発明の一態様による組成物は、ポリオキシプロピレンの分子量が約1800g/molであり、ポリオキシエチレンの含有量が約80 重量%であるポロクサマー(例えば、ポロクサマー188)を含み、ポリオキシプロピレンの分子量が約3300g/molであり、ポリオキシエチレンの含有量が約80重量%であるポロクサマー(例えば、ポロクサマー338)とポリオキシプロピレンの分子量が約4000g/molであり、ポリオキシエチレンの含有量が約70重量%であるポロクサマー(例えば、ポロクサマー407)のうちいずれか一つ以上を含む。即ち、本発明の一態様による望ましい組成物は、ポロクサマー188と338の組合せ、ポロクサマー188と407の組合せ、またはポロクサマー188、338及び407の組合せを含む。
【0024】
前記第1ポロクサマー及び第2ポロクサマーが使用される場合、これらの混合物の重量比は、1:0.1~10であることがあり、1:0.2~5が望ましく、1:0.8~1.2の重量比で使用されることがより望ましい。
【0025】
本発明の他の態様において、ポロクサマーの組合せが使用される場合、例えば、第1ポロクサマーと第2ポロクサマーが1:0.01~1の重量割合で混合されて使用され得る。即ち、第1ポロクサマーが同じ含有量または相対的に少ない含有量で使用されることが本発明の多様な目的においてより望ましい。
【0026】
本発明による組成物は、ハイドロキノンまたはその誘導体の安定性をさらに改善するために抗酸化剤をさらに含み得る。抗酸化剤は、ミセルに捕集されたハイドロキノンの保存安定性の改善効果をさらに高めるために使用されるものであって、亜硫酸水素ナトリウム(sodium bisulfite)、亜硫酸ナトリウム(sodium sulfite)、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、グルタチオン(Glutathione)のうち一種以上を使用し得る。もし使用される場合、前記抗酸化剤は、組成物の総重量に対して0.05~15重量%で含有されることが望ましく、より望ましくは0.1~10重量%の量で含有されることが望ましい。過量の抗酸化剤は、抗酸化剤そのものの変色が誘発されるか、またはブロック共重合体によるミセルの相分離現象をもたらし得る。但し、本発明の組成物に含まれる前記抗酸化剤は、ハイドロキノンまたはその誘導体の安定性をさらに改善するためのものであって、抗酸化剤の添加は選択的な事項である。
【0027】
本発明による組成物は、前記成分の他に、ハイドロキノンまたはその誘導体を溶解する物質として、水と親水性溶媒を含み、このような成分は前記ハイドロキノンまたはその誘導体、ポロクサマー及び抗酸化剤を除いた残量に含まれ得る。
【0028】
前記親水性溶媒としては、多価アルコールまたは揮発性有機溶媒などが使用され得る。具体的には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、イソプロピルアルコール、エタノールなどが含まれるが、これらに制限されない。望ましくは、イソプロピルアルコール及び/またはエタノールが使用することができ、前記親水性溶媒は、組成物の総重量に対して5~50重量%の量で使用され得る。親水性溶媒の使用が本発明において必須ではないが、使用する場合、ハイドロキノンまたはその誘導体の保存安定性を高めることができ、より容易にミセルの形成を可能にする。
【0029】
本発明による組成物は、外部が水相である液状組成物であり得るが、液状組成物を凍結乾燥または噴霧乾燥によって固形化または粉末化したものも含まれる。このような固形化または粉末化組成物は、使用前に水相に分散させて使用するため、結果的にはこのような固形組成物においても本発明の組成物の剤形安定性が重要である。
【0030】
本発明の組成物は、有効成分としてハイドロキノンまたはその誘導体を含むので、美白改善用の組成物になり得る。また、本発明の他の態様で、本発明の組成物は皮膚適用組成物である。本発明の組成物は、薬学組成物または化粧料組成物であり得る。
【0031】
本発明の組成物は、化粧品または医薬品などの技術分野で用いられる通常の製法によって、化粧料または薬学組成物などとして製造され得る。これによる本発明の組成物は、化粧水、セラム、ゲル、ローション、クリーム、パウダー、パッチなどの形態に剤形化して多様に適用可能であり、皮膚に適用する場合、美白効果及び効能を提供することができる。
【0032】
本発明に記載された全ての成分は、望ましくは、韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの関連法規、規範(例えば、化粧品安全基準などに関する規定(韓国)、化粧品安全技術規範(中国)、衛生規範(中国))などで規定した最大使用値を超過しない。即ち、望ましくは、本発明による化粧料、薬学またはパーソナルケア用の組成物は、各国の関連法規、規範で許容される含有量限度で本発明による成分を含む。
【0033】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は、多様な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されて解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明が属する分野における平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供される。
【実施例】
【0034】
実施例1及び比較例1、2の製造または準備
先ず、下記の表1に示した組成のように、本発明による実施例1、比較例1及び比較例2を製造した。
【0035】
【0036】
実施例1は、ブロック共重合体に捕集されたハイドロキノン組成物である。比較例1は、ブロック共重合体に捕集されていないハイドロキノン組成物である。比較例2は、捕集されていないハイドロキノン組成物を50℃で12週間変色させた組成物である。
【0037】
具体的には、次のようにして製造した。一定量の蒸溜水を50~60℃に維持してブロック共重合体1を表1の割合で混合した。ブロック共重合体1が完全に溶解するまで1000rpmで撹拌した後、10℃の温度に冷却した。冷却された溶液にブロック共重合体2を徐々に添加して、ミセルが形成されるように常温で撹拌した。その後、真空ポンプで気泡を除去した後、常温で抗酸化剤と親水性溶媒を加え、撹拌して混合した。その後、ハイドロキノンを添加してミセルにハイドロキノンが捕集されるように(
図1参照)1200rpmで撹拌した。
【0038】
比較例1、2は、ブロック共重合体を加えずに、親水性溶媒及びハイドロキノンを表1に示した割合で常温で1000rpmで混合した。
【0039】
比較例3と4としては、市販のハイドロキノンを含むクリームを使用した。比較例2と4は、ハイドロキノンの酸化による細胞毒性効果を確認するために、50℃で12週間保持して酸化させた後、使用した。
【0040】
試験例1:安定化させたハイドロキノンの細胞毒性測定
マウスのメラノーマ細胞(B-16 mouse melanoma cell)の培養液に、実施例1及び比較例1~4の組成物を添加し、同じ濃度での細胞毒性をCCK-8キット(Cell Counting Kit-8;Dojindo社、日本)で測定した。B16細胞を96ウェル細胞培養プレートに分注した後、組成物中のハイドロキノンの濃度が0、0.6、1.26、2.5、5、10、20、40及び80μg/mlになるように処理した。48時間後、CCK-8溶液を添加した。1時間後、細胞培養液の吸光度を405nmで測定して細胞毒性を測定した。その結果を
図2に示した。
【0041】
図2に示したように、未処理の対照細胞群の生存率を100%にしたとき、ポロクサマーを用いてミセルに捕集させたハイドロキノン(実施例1)は、40μg/mlの濃度で50%の細胞生存率を示した。一方、ポロクサマーを含まない水相に溶解させたハイドロキノン(比較例1及び2)は、10μg/mlの濃度で40%以下の細胞生存率を示した。また、市販のハイドロキノンクリームは50℃で酸化させて変色させた場合(比較例4)、10μg/mlの濃度で50%の細胞生存率を示した。このような結果は、本発明のポロクサマーを用いてミセルに捕集させたハイドロキノンが、メラニン形成細胞における毒性減少効果を奏することを示唆する。
【0042】
試験例2:安定化させたハイドロキノンの変色度測定
前記実施例1及び比較例1の組成物の保存安定性を確認した。試験サンプルを50℃で12週間保持した後、色差度を計算した。50℃に保管する前(0週)と後(12週)の組成物を白色不透明の96ウェルプレートに各100μlずつ入れた後、Chromameter CR-400(ミノルタ社、日本)で、L値(lightness)、a値(redness)、b値(yellowness)を3回反復して測定した。全般的な色差度は、下の数1の値として示した。色差度の比較のための基本値は、標準プレートにハイドロキノンを溶解した溶媒である水を同量入れたものを基準にした。その結果を
図3及び
図4に示した。
【数1】
【0043】
図3及び
図4に示したように、50℃で12週経過した後、比較例1の捕集されていないハイドロキノンは、色差度の変化が42であり高い数値を示した。一方、実施例1のポロクサマーによって捕集されたハイドロキノンは、色差度の変化が6であり、比較例1の0週の値と類似であった。これによって、本発明のポロクサマーを用いてハイドロキノンをミセルに捕捉することにより、保存安定性を高めることができることを示唆する。
【0044】
試験例3.安定化させたハイドロキノンの皮膚送達能力評価
前記実施例1及び比較例1の組成物の皮膚送達能力を評価した。試験サンプルに対して、豚の皮膚(porcine skin)を用いて経皮吸収実験を行った。フランツセル(Franz diffusion cell)のレセプター(receptor)に50%エタノールを満たし、ドナー(donor)とレセプターとの間に豚の表皮が上方(ドナー側)に向かうようにし、真皮は下方(レセプター側)に向かうように取り付けた。実施例1及び比較例1の組成物を0.1mlずつ皮膚に塗布した後、均一に塗った。その後、18時間の間、恒温恒湿器に入れた後、皮膚組職を回収した。組成物に露出した皮膚組織のみを用いて、角質、表皮、真皮層に区分して分析した。角質層は、角質テープ(D-Squame standard sampling disc)を用いた。残された豚の皮膚は70℃で15秒間暖めた後、表皮と真皮層に分離し、皮膚層毎に含まれたハイドロキノンを50%エタノールに溶解させた。その結果を
図5及び6に示した。
【0045】
図6に示したように、実施例1の二種のブロック共重合体で捕集されたハイドロキノンは、比較例1に比べて、角質、表皮、真皮層で3倍以上の高い皮膚透過率を示した。このことから、本発明による、ハイドロキノンを捕集したポロクサマーミセルは、皮膚へのハイドロキノンの送達効率も高めることができることを示唆する。
【0046】
試験例4.安定化させたハイドロキノンの人工皮膚での美白及び炎症評価
前記実施例1及び比較例1、2の美白効能を比較するために、表皮とメラニン形成細胞から構成された3D人工皮膚(Tego Science、韓国)を用いた。人工皮膚をUVB 50mJ/cm
2で処理した後、各組成物を25μlずつ人工皮膚に塗布した。3日間培養した後、パラフィンブロックで3D皮膚を切り取って美白効能を測定し、培養液を用いて炎症評価を行った。美白効能は、メラニン量の変化から評価した。フォンタナ・マッソン(Fontana-Masson)染色を用いてメラニンを染色し、顕微鏡で40×倍率でイメージングした後、ImageJプログラムを用いてメラニンの量を定量した。炎症評価は、炎症性分泌因子であるインターロイキン1aの分泌量を用いて、ELISAキット(R&Dシステム、アメリカ)を用いて培養液中のインターロイキン1aの分泌量を測定した。3D人工皮膚におけるメラニン形成抑制効能及び炎症評価結果を表2及び
図7に示した。
【0047】
【0048】
表2及び
図7に示したように、捕集されていないハイドロキノンを塗布した比較例1と、50℃で保持して変色したハイドロキノンを塗布した比較例2の場合、色素沈着抑制効能が各々約39%、15%である一方、ブロック共重合体で捕集して安定化させたハイドロキノンである実施例1の場合、56%の高い色素沈着抑制効能を示した。また、炎症因子であるインターロイキン1aの結果も、安定化させたハイドロキノンの場合、34%減少した。このことから、本発明のポロクサマーを用いてミセルに安定化させたハイドロキノンは、皮膚美白効能を増加させ、炎症のような副作用も減少させることができることを示唆する。
【0049】
ポロクサマーの種類による影響評価
下記の表3の処方によって前記実施例1と同様の方法で多様なポロクサマーを含む組成物を製造した。
【0050】
【0051】
その後、常温で14日間放置した後、変色の有無及びゲル化の程度を評価して、その結果を
図8に示した。
図8に示すように、第1ポロクサマーとしてポロクサマー188を使用して、第2ポロクサマーとして338または407を混合した場合に変色が最も少なかった。また、ポロクサマー407を単独でまたは338と混合した場合、ゲル化により可溶化の面で望ましくなかった。
【0052】
ポロクサマーの含有量による影響評価
下記の表4のように、実施例1と同じ処方を有するが、ポロクサマーの総含有量のみを0~8%に変更して製造し、第1ポロクサマー(ポロクサマー188)と第2ポロクサマー(ポロクサマー338)は、1:1の重量割合を維持した。
【0053】
【0054】
その後、ある程度の苛酷条件である60℃で経時安定性を観察し、その結果を
図9に示した。
図9に示すように、6週までは2.5~6重量%のポロクサマーが安定的であり、12週以上までは2.5~5重量%のポロクサマーを使用したときにハイドロキノンの安定性がさらに良好であった。但し、このような結果は苛酷条件の結果であり、常温では他の含有量においても十分に流通可能な安定性を達成することができた。