(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】二次電池用集電体に活物質をコーティングするためのダイコーター用シムおよびダイコーター
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20241202BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20241202BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241202BHJP
【FI】
B05C5/02
H01M4/139
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2023535042
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 KR2022016788
(87)【国際公開番号】W WO2023096191
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0167134
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】マン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヒョク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】クク・テ・キム
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-107500(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038970(WO,A1)
【文献】特開2021-120148(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2035826(KR,B1)
【文献】国際公開第2018/143342(WO,A1)
【文献】特開2015-026471(JP,A)
【文献】特開2020-072007(JP,A)
【文献】特開2021-010867(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0094920(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/02
H01M 4/139
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に塗布するダイコーター用シムにおいて、
前記ダイコーター用シムの幅方向に沿って延在するベースと、
前記ベースの両端からそれぞれ突出して延在する第1ガイドおよび第2ガイドと、
前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間で前記幅方向に沿って前記ベースから延在する段差部を含む電極スラリースリットであって、前記段差部の厚さが前記ベースの厚さより薄く、前記段差部が前記ベースの一面に対してなす段差空間が電極スラリー吐出流路を形成する、電極スラリースリットと、
前記ベースの他面に対応する前記第1ガイドおよび前記第2ガイドの表面上にそれぞれ形成されたグルーブを含む第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットであって、各グルーブの一端が絶縁コーティング液吐出流路を形成する、第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットと、
を含む、ダイコーター用シム。
【請求項2】
前記段差部は、前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間で前記幅方向の一部の領域まで延在する、請求項1に記載のダイコーター用シム。
【請求項3】
前記第1絶縁コーティング液スリットと前記第2絶縁コーティング液スリットの吐出口を形成する各グルーブの一端は、それぞれ前記第1ガイドと前記第2ガイドの突出端部まで延在する、請求項1に記載のダイコーター用シム。
【請求項4】
各グルーブの一端は、前記第1ガイドと前記第2ガイドの互いに対向する内側縁から離隔されている、請求項3に記載のダイコーター用シム。
【請求項5】
前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間に位置し、前記ベースから突出して延在する第3ガイドをさらに含み、
前記段差部は、前記第1ガイドと前記第3ガイドとの間に配置された第1段差部と、前記第3ガイドと前記第2ガイドとの間に配置された第2段差部からなり、
前記電極スラリースリットは、前記第1段差部により第1電極スラリー吐出流路を形成する第1電極スラリースリットと、前記第2段差部により第2電極スラリー吐出流路を形成する第2電極スラリースリットからなり、
前記ベースの他面に対応する前記第3ガイドの表面上に形成された一対のグルーブを含み、前記一対のグルーブの一端が絶縁コーティング液吐出流路を形成する第3絶縁コーティング液スリットおよび第4絶縁コーティング液スリットを含む、請求項1に記載のダイコーター用シム。
【請求項6】
前記第3絶縁コーティング液スリットと前記第4絶縁コーティング液スリットの吐出口は
いずれも、第1絶縁コーティング液スリット及び第2絶縁コーティング液スリットの吐出口と同じ方向を向いている、請求項5に記載のダイコーター用シム。
【請求項7】
前記第1段差部の幅と前記第2段差部の幅は同一である、請求項5に記載のダイコーター用シム。
【請求項8】
絶縁コーティング液流入口を備える上部ブロックと、
前記上部ブロックと結合し、電極スラリーを収容するマニホールドが備えられた下部ブロックと、
前記上部ブロックと下部ブロックとの間に介在されてスリットを形成し、前記スリットを介して絶縁コーティング液と電極スラリーを共に吐出するダイコーター用シムと、
を含み、
前記ダイコーター用シムは、一面に電極スラリー吐出流路を形成し、反対側の他面に絶縁コーティング液吐出流路を形成し、
前記電極スラリー吐出流路と前記絶縁コーティング液吐出流路は、前記ダイコーター用シム上で互いに物理的に分離されてい
り、
前記ダイコーター用シムは、
前記ダイコーター用シムの幅方向に沿って延在するベースと、
前記ベースの両端からそれぞれ突出して延在する第1ガイドおよび第2ガイドと、
前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間で前記幅方向に沿って前記ベースから延在する段差部を含む電極スラリースリットであって、前記段差部の厚さが前記ベースの厚さより薄く、前記段差部が前記ベースの一面に対してなす段差空間が電極スラリー吐出流路を形成する、電極スラリースリットと、
前記ベースの他面に対応する前記第1ガイドおよび前記第2ガイドの表面上にそれぞれ形成されたグルーブを含む第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットであって、各グルーブの一端が絶縁コーティング液吐出流路を形成する第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットと、
を含む、ダイコーター。
【請求項9】
前記段差部は、前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間で前記幅方向の一部の領域まで延在する、請求項
8に記載のダイコーター。
【請求項10】
前記ベースと前記段差部との間の境界は、前記下部ブロックに備えられたマニホールドの後端に一致し、
前記段差部の端部は、前記マニホールドの前端に一致するか、または前記マニホールドの前端から突出している、請求項
9に記載のダイコーター。
【請求項11】
前記段差部の端部は、前記マニホールドの前端に対して10mm以下の長さで突出している、請求項
10に記載のダイコーター。
【請求項12】
前記第1絶縁コーティング液スリットと第2絶縁コーティング液スリットの吐出口を形成する各グルーブの一端は、それぞれ前記第1ガイドと前記第2ガイドの突出端部まで延在する、請求項
8に記載のダイコーター。
【請求項13】
各グルーブの一端は、前記第1ガイドと前記第2ガイドの互いに対向する内側縁から離隔されている、請求項
12に記載のダイコーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用集電体上に電極スラリーと絶縁コーティング液を効果的に同時にコーティングし得るダイコーター用シムおよびダイコーターに関するものである。
【0002】
本出願は、2021年11月29日付の韓国特許出願第10-2021-0167134号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加により、二次電池の需要も急激に増加している。その中でも、リチウム二次電池は、エネルギー密度と作動電圧が高く、保存と寿命特性に優れるという点から、各種モバイル機器はもちろん、多様な電子製品のエネルギー源として広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池などには、集電体の表面に活物質層および絶縁層が形成された電極が用いられる。このような電極は、ダイコーターなどのコーティング装置を用いて活物質などを含む電極スラリーと、絶縁性物質などを含む絶縁コーティング液との両者を、電極合剤層の縁の一部が重なるように、集電体の表面に塗布して乾燥させることにより、製造される。
【0005】
図1は、電極スラリーを塗布するための従来のダイコーター1を図示している。ダイコーター1は上部ブロック2と下部ブロック3とを含み、上部ブロック2と下部ブロック3との間にはダイコーター用シム4が介在されており、複数のボルト部材で締結してそれらを相互結合する。下部ブロック3には一定の体積の電極スラリーを収容するマニホールド5が備えられており、マニホールド5は外部の電極スラリー供給部(図示せず)と連通する。
【0006】
ここで、ダイコーター用シムは、上部ブロックと下部ブロックとの間に好適な高さのスリットを形成する役割を果たすと同時に、電極スラリーがスリットに向かって吐出されるように電極スラリーの流動方向を制限し、またスリット以外の他の部分に電極スラリーが漏れないように密封する役割も果たす。ダイコーター用シムは幅方向の両端に突出されたガイドをそれぞれ備え、このガイド間の距離は電極スラリーが集電体上に塗布される幅を決定する。
【0007】
絶縁コーティング液は、集電体上に塗布された電極スラリーの幅方向の両側の縁上に塗布されるが、一般的には集電体に電極スラリーを塗布した後に、別途の装置を用いた追加的な工程で行われる。このように、電極スラリーと絶縁コーティング液を別途の工程で集電体上に塗布することは、生産効率の側面から好ましくない。
【0008】
このような問題を解決するために、1つのダイコーター用シムに電極スラリーと絶縁コーティング液をそれぞれ吐出する独立されたスリットを形成する技術が紹介されたが、ダイコーター内でいずれか1つの溶液の漏れが生じる場合、2つの溶液(電極スラリーと絶縁コーティング液)が混合されるか、またはスリットの出口で2つの溶液が混合されて吐出されることによって、集電体の品質不良を引き起こすなどの問題が発生した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、二次電池用集電体上に電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に効果的にコーティングし得るダイコーター用シムおよびダイコーターを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述された問題を解決するために、電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に効果的にコーティングし得るダイコーター用シムおよびダイコーターを提供する。一例において、本発明に係るダイコーター用シムは、幅方向に沿って延在するベースと、上記ベースの両端からそれぞれ突出して延在する第1ガイドおよび第2ガイドと、上記第1ガイドと第2ガイドとの間で幅方向に沿って上記ベースから延在する段差部を含み、上記段差部の厚さは上記ベースの厚さより薄く、上記段差部が上記ベースの一面に対してなす段差空間が電極スラリー吐出流路を形成する電極スラリースリットと、上記ベースの他面に対応する上記第1ガイドおよび第2ガイドの表面上にそれぞれ形成されたグルーブを含み、上記グルーブの一端が上記絶縁コーティング液の吐出流路を形成する第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットと、を含む。
【0011】
具体例において、上記段差部は、上記第1ガイドと第2ガイドとの間で幅方向の一部の領域まで延在し得る。
【0012】
そして、上記第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットの吐出口を形成する上記グルーブの一端は、上記第1ガイドおよび第2ガイドの突出端部まで延在し得る。
【0013】
具体例において、上記グルーブの一端は、上記第1ガイドおよび第2ガイドの互いに対向する内側縁から離隔され得る。
【0014】
他の一例において、上記第1ガイドと第2ガイドとの間に位置し、上記ベースから突出して延在する第3ガイドをさらに含み、上記段差部は、上記第1ガイドと第3ガイドとの間に配置された第1段差部と、上記第3ガイドと第2ガイドとの間に配置された第2段差部からなり、上記電極スラリースリットは、上記第1段差部により第1電極スラリー吐出流路を形成する第1電極スラリースリットと、上記第2段差部により第2電極スラリー吐出流路を形成する第2電極スラリースリットからなり、上記ベースの他面に対応する上記第3ガイドの表面上に形成された一対のグルーブを含み、上記一対のグルーブの一端が上記絶縁コーティング液の吐出流路を形成する第3絶縁コーティング液スリットおよび第4絶縁コーティング液スリットを含む。
【0015】
具体例において、上記第3絶縁コーティング液スリットおよび第4絶縁コーティング液スリットの吐出口は、それぞれ第1ガイドおよび第2ガイドに対向し得る。
【0016】
また、上記第1段差部および第2段差部の幅は同一であり得る。
【0017】
一方、本発明は、絶縁コーティング液流入口を備える上部ブロックと、上記上部ブロックと結合し、電極スラリーを収容するマニホールドが備えられた下部ブロックと、上記上部ブロックと下部ブロックとの間に介在されてスリットを形成し、上記スリットを介して上記絶縁コーティング液と電極スラリーを共に吐出するダイコーター用シムと、を含み、上記ダイコーター用シムは、一面に電極スラリー吐出流路を形成する一方、反対側の他面に上記絶縁コーティング液の吐出流路を形成し、上記電極スラリー吐出流路と上記絶縁コーティング液吐出流路は、上記ダイコーター用シム上で互いに物理的に分離されているダイコーターを提供する。
【0018】
一例において、上記ダイコーター用シムは、幅方向に沿って延在するベースと、上記ベースの両端からそれぞれ突出して延在する第1ガイドおよび第2ガイドと、上記第1ガイドと第2ガイドとの間で幅方向に沿って上記ベースから延在する段差部を含み、上記段差部の厚さは上記ベースの厚さより薄く、上記段差部が上記ベースの一面に対してなす段差空間が電極スラリー吐出流路を形成する電極スラリースリットと、上記ベースの他面に対応する上記第1ガイドおよび第2ガイドの表面上にそれぞれ形成されたグルーブを含み、上記グルーブの一端が絶縁コーティング液吐出流路を形成する第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットと、を含む。
【0019】
また、上記段差部は、上記第1ガイドと第2ガイドとの間で幅方向の一部の領域まで延在し得る。
【0020】
具体例において、上記ベースと上記段差部との間の境界は、上記下部ブロックに備えられたマニホールドの後端に一致し、上記段差部の端部は、上記マニホールドの前端に一致するか、または上記マニホールドの前端から突出し得る。
【0021】
例えば、上記段差部の端部は、上記マニホールドの前端に対して10mm以下の長さほど突出し得る。
【0022】
別の一例において、上記第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットの吐出口を形成する上記グルーブの一端は、上記第1ガイドおよび第2ガイドの突出端部まで延在し得る。
【0023】
具体例において、上記グルーブの一端は、上記第1ガイドおよび第2ガイドの互いに対向する内側縁から離隔され得る。
【発明の効果】
【0024】
上記のような構成を備えた本発明のダイコーター用シムは、絶縁コーティング液と電極スラリーを共に吐出するように構成されており、特に電極スラリー吐出流路と絶縁コーティング液吐出流路は、ダイコーター用シム上で互いに物理的に分離されている。
【0025】
これにより、本発明のダイコーター用シムは、ダイコーターの内部で電極スラリーおよび/または絶縁コーティング液が漏れても互いに混合されるという問題が効果的に防止される。
【0026】
したがって、本発明は、二次電池用集電体上に電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に効果的にコーティングすることを可能にする。
【0027】
本発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されない別の効果は以下の詳細な説明から通常の当業者にとって明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来技術に係るダイコーターの構成を図示した図面である。
【
図2】本発明に係るダイコーター用シムが備えられたダイコーターの構造を図示した図面である。
【
図3】
図2のダイコーターが組み立てられた状態で切開線「A-A」および「B-B」に沿って切開した断面図である。
【
図4】
図2のダイコーターが組み立てられた状態で前面から見た図面である。
【
図5】
図2に図示されたダイコーター用シムの詳細構造を図示した図面である。
【
図6】
図2のダイコーターを用いて電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に塗布する状態を概略的に図示した図面である。
【
図7】本発明に係るダイコーター用シムの他の実施形態を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、多様な変更を加え得、様々な実施形態を有し得る。そのため、特定の実施形態を以下において詳細に説明する。
【0030】
しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術の範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0031】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。
【0032】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0033】
本発明は、電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に効果的にコーティングし得るダイコーター用シムおよびダイコーターを提供する。
【0034】
一例において、本発明に係るダイコーター用シムは、幅方向に沿って延在するベースと、上記ベースの両端からそれぞれ突出して延在する第1ガイドおよび第2ガイドと、上記第1ガイドと第2ガイドとの間で幅方向に沿って上記ベースから延在する段差部を含み、上記段差部の厚さは上記ベースの厚さより薄く、上記段差部が上記ベースの一面に対してなす段差空間が電極スラリー吐出流路を形成する電極スラリースリットと、上記ベースの他面に対応する上記第1ガイドおよび第2ガイドの表面上に形成されたグルーブ(溝)を含み、上記グルーブの一端が絶縁コーティング液吐出流路を形成する第1絶縁コーティング液スリットおよび第2絶縁コーティング液スリットと、を含む。
【0035】
特に、本発明に係るダイコーター用シムは、その一面に電極スラリー吐出流路を形成する一方、反対側の他面に絶縁コーティング液吐出流路を形成することにより、集電体上に電極スラリーと絶縁コーティング液を共に塗布し得、さらに電極スラリーと絶縁コーティング液の各吐出流路がダイコーターのシム上で互いに物理的に分離されていることにより、いずれか1つの溶液がダイコーター内で漏れても2つの溶液が互いに混合されることが防止される。
【0036】
以下、図面により、本発明に係る二次電池用集電体上に電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に効果的にコーティングし得るダイコーター用シムおよびダイコーターについて詳細に説明する。
【0037】
(第1実施形態)
図2は、本発明に係るダイコーター用シム300が備えられたダイコーター10の構造を図示した図面であり、これを参照してダイコーター10およびダイコーター用シム300の全体的な構成を詳細に説明すると次の通りである。
【0038】
ダイコーター10は上部ブロック100と下部ブロック200とを含み、上部ブロック100と下部ブロック200との間にはダイコーター用シム300が介在されている。
【0039】
上部ブロック100と下部ブロック200はダイコーター10の本体をなす部分であり、上部ブロック100には絶縁コーティング液流入口110が備えられており、下部ブロック200には外部から供給される電極スラリーを収容するマニホールド210が備えられている。
【0040】
ダイコーター用シム300は、上部ブロック100と下部ブロック200との間に介在されて電極スラリーを吐出するのに好適な高さのスリットを形成する。そして、ダイコーター用シム300は、スラリーが逆流せずにスリットに向かって吐出されるように電極スラリーの流動方向を制限し、またスリット以外の他の部分に電極スラリーが漏れないように密封する役割も果たす。
【0041】
図2に示されたように、ダイコーター用シム300は、幅方向の両端に突出されたガイド311、312をそれぞれ備え、このガイド311、312間の距離は電極スラリーが集電体上に塗布される幅を決定する。
【0042】
本発明のダイコーター用シム300が電極スラリーを吐出するためのスリットを形成することは従来と同一であり、さらに本発明のダイコーター用シム300は絶縁コーティング液と電極スラリーを共に吐出するように構成されている。
【0043】
特に、本発明のダイコーター用シム300は、その一面に電極スラリー吐出流路を形成する一方、反対側の他面に絶縁コーティング液吐出流路を形成しており、電極スラリー吐出流路と絶縁コーティング液吐出流路はダイコーター用シム300上で互いに物理的に分離されたことに特徴がある。このように電極スラリー吐出流路と絶縁コーティング液吐出流路が物理的に分離されていることにより、ダイコーター10の内部でどんな液体(電極スラリーおよび/または絶縁コーティング液)が漏れても他の液体と混合されるという問題が効果的に防止される。
【0044】
このような本発明のダイコーター用シム300の詳細な構成については、
図3~
図5を参照して詳細に説明する。
図3は、
図2のダイコーター10が組み立てられた状態で切断線「A-A」および「B-B」に沿って切開した断面図であり、
図4は、
図2のダイコーター10が組み立てられた状態で前面から見た図面であり、
図5は、
図2に図示されたダイコーター用シム300の詳細構造を図示した平面図である。
【0045】
まず、
図5を参照すると、ダイコーター用シム300は、幅方向に沿って延在するベース310と、ベース310の両端からそれぞれ突出して延在する第1ガイド311および第2ガイド312を含み、このような構造は
図1の従来技術に対応する。
【0046】
ここで、本発明のダイコーター用シム300は、第1ガイド311と第2ガイド312との間で幅方向に沿ってベース310から延在する段差部320を含む。段差部320の厚さはベース310の厚さより薄く、これにより段差部320はベース310の一面(下部ブロックと対向する面)に対して段差空間をなすことになる。段差部320が作る空間は、
図3の「A-A」断面と
図4の正面図に示されたように、マニホールド210が形成された下部ブロック200と連通しているため、段差部320はマニホールド210に収容された電極スラリー吐出流路を形成する電極スラリースリット330をなすことになる。
【0047】
そして、第1ガイド311および第2ガイド312には、ベース310の他面(上部ブロックと対向する面)に対応する表面上にそれぞれグルーブ345が含まれており、グルーブ345の一端が絶縁コーティング液吐出流路を形成することにより、第1ガイド311および第2ガイド312上には第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342が備えられる。
図3の「B-B」断面と
図4の正面図を見ると、第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342は上部ブロック100側に形成されており、これにより電極スラリースリット330と第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342は相互物理的に分離されている。
【0048】
すなわち、第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342周辺の第1ガイド311および第2ガイド312の上下面は、上部ブロック100と下部ブロック200に緊密に接触しているため、第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342は、上部ブロック100と共に周辺とは隔離され独立された絶縁コーティング液吐出流路を形成する。
【0049】
そして、電極スラリースリット330は、第1ガイド311と第2ガイド312との間の段差部320がなす空間によって形成され、これにより電極スラリー吐出流路は段差部320と下部ブロック200によって第1ガイド311および第2ガイド312とは分離される。
【0050】
したがって、ダイコーター10の内部において、第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342は上部ブロック100側に配置され、電極スラリー吐出流路は下部ブロック200側に配置されて空間的に分離されているため、どんな溶液(電極スラリーおよび/または絶縁コーティング液)がダイコーター10の内部で漏れても2つの溶液が混合されるという問題はほとんど起こらなくなる。
【0051】
本発明の一実施形態において、段差部320は、第1ガイド311と第2ガイド312との間で幅方向の一部の領域まで延在し得る。段差部320の長さは、下部ブロック200のマニホールド210に対して第1ガイド311および第2ガイド312を効果的に分離する役割を果たすため、ある程度の長さを有する必要がある。しかしながら、段差部320の長さが長すぎると、電極スラリー吐出流路における流動プロファイルに悪影響、例えば、電極スラリーを吐出するときに渦流によって気泡が存在するなどの問題があり得るので、段差部320の長さを好適に設計する必要がある。
【0052】
具体例において、ベース310と段差部320との間の境界は、下部ブロック200に備えられたマニホールド210の後端(
図3を基準にして左側の端部)に一致するようにしてマニホールド210の緊密な密封を確保し、延在している段差部320の端部は、少なくともマニホールド210の前端に一致するか、またはマニホールド210の前端から突出し得る。例えば、延在している段差部320の端部は、マニホールド210の前端に対して10mm以下の長さほど突出し得る。
【0053】
そして、第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342の吐出口を形成するグルーブ345の一端は、第1ガイド311および第2ガイド312の突出端部まで延在し得る。このような構成は、
図3の「B-B」断面に示されており、これにより、第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342の吐出口はダイコーター10の先端部に位置する。
【0054】
そして、具体例において、グルーブ345の一端は、第1ガイド311および第2ガイド312の互いに対向する内側縁から離隔され得る。第1絶縁コーティング液スリット341および第2絶縁コーティング液スリット342の吐出口を形成するグルーブ345の一端が第1ガイド311および第2ガイド312の内側縁から離隔された距離は、第1ガイド311および第2ガイド312の内側縁が規定する電極スラリーの吐出幅の両端に対して離隔された距離に該当する。これは、電極スラリーと絶縁コーティング液を同時に吐出するときに、若干の流動性がある絶縁コーティング液が吐出された電極スラリーの縁とすぐに混ざらないようにするためである。これにより、電極スラリーの縁は絶縁コーティング液によって効果的に保護され、本発明のダイコーター10を用いて電極スラリーBと絶縁コーティング液Cを同時に集電体Aに塗布する
図6はこれを示したものである。
【0055】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、コイル状で供給される集電体に電極スラリーと絶縁コーティング液を2列以上で塗布した後、スリッティング加工を行う場合に適合した実施形態である。
【0056】
すなわち、第2実施形態は、集電体にそれぞれ「絶縁コーティング液-電極スラリー-絶縁コーティング液」の構造からなる活物質コーティングを2列以上で同時に塗布するのに適合した実施形態に該当する。
【0057】
第2実施形態において、ダイコーター10をなす上部ブロック100と下部ブロック200の構成には大きな変化はなく、主な違いはダイコーター用シム300にある。ただし、第2実施形態のダイコーター用シム300には追加的な絶縁コーティング液スリット343、344があるため、上部ブロック100にはそれに対応する追加的な絶縁コーティング液流入口110が必要となる場合がある。
【0058】
第2実施形態に係るダイコーター用シム300の構成は
図7に示されており、上述した第1実施形態と違いがある部分を中心として第2実施形態を説明する。
【0059】
図7を参照すると、第2実施形態のダイコーター用シム300は、第1ガイド311と第2ガイド312との間に位置し、ベース310の中間部分から突出して延在する第3ガイド313をさらに含む。
【0060】
そして、ベース310の中間部分に第3ガイド313が備えられることによって、段差部320は、第1ガイド311と第3ガイド313との間に配置された第1段差部321と、第3ガイド313と第2ガイド312との間に配置された第2段差部322とに分離される。また、これに対応して、電極スラリースリット330は、第1段差部321により1つの電極スラリー吐出流路を形成する第1電極スラリースリット331と、第2段差部322によりもう1つの電極スラリー吐出流路を形成する第2電極スラリースリット332に分けられる。
【0061】
そして、第3ガイド313のベース310の他面に対応する表面(上部ブロックと対向する表面)には一対のグルーブ345が形成されており、一対のグルーブ345の一端はそれぞれ追加的な絶縁コーティング液吐出流路を形成する第3絶縁コーティング液スリット343および第4絶縁コーティング液スリット344を構成する。
【0062】
第1実施形態を参照して
図7を見ると、第1ガイド311と第3ガイド313との間と第3ガイド313と第2ガイド312との間は両者が対称的な構造をなす。すなわち、第2実施形態のダイコーター用シム300は、集電体Aの移送方向(
図6参照)に対して第1実施形態のダイコーター用シム300の2個が並列的に結合した構造であると言える。
【0063】
したがって、
図7のダイコーター用シム300を用いると、スリッティング加工に適合するように集電体に活物質を同時に2列に塗布し得る。もし、2列の電極スラリーそれぞれの幅を同一に作る場合であれば、第1段差部321および第2段差部322の幅を同一に構成すればよい。ここで、絶縁コーティング液の幅は電極スラリーの幅とは無関係にほぼ一定であるため、第3絶縁コーティング液スリット343および第4絶縁コーティング液スリット344の構成はそれほど変わる必要はない。
【0064】
以上、図面と実施形態などにより本発明をより詳細に説明した。しかし、本明細書に記載された図面または実施形態などに記載された構成は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらに代替し得る多様な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、二次電池用集電体上に電極スラリーと絶縁コーティング液を同時にコーティングするダイコーターに適用するのに適合している。
【符号の説明】
【0066】
10:ダイコーター
100:上部ブロック
110:絶縁コーティング液流入口
200:下部ブロック
210:マニホールド
300:ダイコーター用シム
310:ベース
311:第1ガイド
312:第2ガイド
313:第3ガイド
320:段差部
321:第1段差部
322:第2段差部
330:電極スラリースリット
331:第1電極スラリースリット
332:第2電極スラリースリット
341:第1絶縁コーティング液スリット
342:第2絶縁コーティング液スリット
343:第3絶縁コーティング液スリット
344:第4絶縁コーティング液スリット
345:グルーブ