(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】回路基板に対する害虫忌避構造
(51)【国際特許分類】
A01M 29/10 20110101AFI20241202BHJP
【FI】
A01M29/10
(21)【出願番号】P 2020188490
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博志
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062772(JP,A)
【文献】特開2000-224949(JP,A)
【文献】特開2018-143126(JP,A)
【文献】特開平10-056941(JP,A)
【文献】特開2010-135136(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105682398(CN,A)
【文献】特開2013-118823(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044780(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底であって開口を有するケーシング内に
,ケーシングの底面との間に隙間を存した状態で収納される回路基板に害虫を接触させない回路基板に対する害虫忌避構造において、上記回路基板
の実装面が上記ケーシングの底面に対して反対側となるようにケーシング内に保持させ、この実装面に紫外線を発光するLEDを実装させ、このLEDが照射する紫外線によって害虫がケーシング内に侵入することを防止
すると共に、ケーシングの底面と基板との隙間へ上記紫外線を導き、この隙間への害虫の侵入を防止して、害虫を回路
基板に対して忌避することを特徴とする回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項2】
上記ケーシングの開口を閉塞する蓋部材を設け、この蓋部材の内側面を高反射率の乱反射面とし
て、この乱反射面で反射された紫外線の一部を上記隙間に導くようにしたことを特徴とする請求項1に記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項3】
上記ケーシングの内周面を、高反射率の乱反射面を有するシート部材で覆
いこのシート部材で反射された紫外線の一部を上記隙間に導くようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項4】
上記LEDに供給する電流値を周期的に増減してLEDの寿命を延長するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項5】
上記回路基板に複数個の上記LEDを実装し、いずれかのLEDの明るさの増減パターンが残りのいずれかのLEDの明るさの増減パターンと相違するように各LEDの明るさを制御するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDから照射される紫外線によって回路基板に対する害虫の接近を防止する害虫忌避構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板は樹脂製のケーシング内に収納されている場合が多く、回路基板からの発熱によりケーシング内の温度は周囲の気温より高くなる傾向にある。そのため、冬季など外気温が低下すると害虫がケーシング内に侵入する場合が生じる。害虫の体は電気的に導体であるため、ケーシング内に害虫が侵入すると回路基板上で短絡などの弊害が生じる。
【0003】
このような弊害を防止するため、ケーシング内に樹脂を充填し硬化させ、回路基板を樹脂でコーティングして、害虫が回路基板に接触できなくする、いわゆるポッティングと呼ばれる手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-174964号公報(段落[0039])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の手法では、充填する樹脂のコストが必要であり、また硬化時間を必要とするため製品の製造タクトが長くなり、かつ回路基板に故障が生じた場合、回路基板に触れることができないので、ユニットごとの交換でしか対応できないなどの不具合がある。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、害虫を忌避して害虫が回路基板に接触することを防止する回路基板に対する害虫忌避構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明による回路基板に対する害虫忌避構造は、有底であって開口を有するケーシング内に,ケーシングの底面との間に隙間を存した状態で収納される回路基板に害虫を接触させない回路基板に対する害虫忌避構造において、上記回路基板の実装面が上記ケーシングの底面に対して反対側となるようにケーシング内に保持させ、この実装面に紫外線を発光するLEDを実装させ、このLEDが照射する紫外線によって害虫がケーシング内に侵入することを防止すると共に、ケーシングの底面と基板との隙間へ上記紫外線を導き、この隙間への害虫の侵入を防止して、害虫を回路基板に対して忌避することを特徴とする。
【0008】
紫外線には害虫を忌避する効果がある。そこで、基板に紫外線を発光するLEDを実装することによってケーシング内を紫外線で照明し、害虫がケーシング内に侵入することを防止するようにした。
【0009】
なお、回路基板に実装されている他の電子部品の陰になって紫外線が照明されない部分が生じないように、上記ケーシングの開口を閉塞する蓋部材を設け、この蓋部材の内側面を高反射率の乱反射面として、この乱反射面で反射された紫外線の一部を上記隙間に導くようにすることが望ましい。
【0010】
また、同様の理由から、上記ケーシングの内周面を、高反射率の乱反射面を有するシート部材で覆いこのシート部材で反射された紫外線の一部を上記隙間に導くようにしてもよい。
【0011】
なお、LEDの寿命を可及的に延長するため、上記LEDに供給する電流値を周期的に増減することが望ましい。
【0012】
また、回路基板が比較的大型の場合には回路基板の下側に紫外線が及びにくいので、このような場合には複数個のLEDを実装することが望ましいが、その場合であってもLEDの寿命を延長することが望まれる。ただし、ケーシング内が常に一定の明るさで照明されるように、上記回路基板に複数個の上記LEDを実装し、いずれかのLEDの明るさの増減パターンが残りのいずれかのLEDの明るさの増減パターンと相違するように各LEDの明るさを制御することが望まれる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、LEDが照射する紫外線によってケーシング内への害虫の侵入を忌避するので、回路基板を樹脂でコーティングしなくても害虫の回路基板への接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および
図2を参照して、1は本発明が適用される電子ユニットの一例である。この電子ユニット1は上方に開口する樹脂製のケーシング3と、そのケーシング3内に、ケーシング3の開口に対して平行な姿勢で収納されている回路基板2とで構成されている。
【0016】
回路基板2の上面には紫外線を発光するLEDを実装した。本実施の形態では2個のLED21、22を実装したが、LEDの個数は2個に限定されるものではなく、1個でもよく、あるいは3個以上であってもよい。
【0017】
両LED21,22から照射される紫外線はケーシング3内を照らして害虫がケーシング内に侵入することを防止する。なお、ケーシング3内に隈なく紫外線が照射されるように、ケーシング3は構成反射率が比較的大きな白色とすることが望ましく、LED21,22から照射された紫外線はケーシング3の内周面31で反射されて内底面32に及ぶようにした。
【0018】
なお、ケーシング3内で紫外線がさらに隈なく照射されるように、蓋部材4を用いてケーシング3の開口を閉塞するようにしてもよい。なお、その際蓋部材4の下面41は紫外線を反射しやすいように、白色もしくは金属光沢の乱反射面になるように処理しておくことが望ましいが、その表面処理のコストを低減させたい場合には、各LED21,22の上方に位置する部分に上記表面処理を施したシール42を貼着してもよい。なお、このシール42はドーム形状にすることによって紫外線を外方に広く反射することが好ましいが、蓋部材4の下面41にこのようなドーム状の凸部を形成してもよい。
【0019】
また、上記と同様の表面処理が施された環状のスリーブ5を用いて回路基板2を囲繞して紫外線の反射量を高めてもよく、また同時に同じような表面処理が施されたシート6をケーシング3の底面に載置して、回路基板2の下方に多くの紫外線が照射されるようにしてもよい。
【0020】
なお、上記LED21,22の寿命を延ばすため、各LED21,22には定格の電流値よりも低い電流値を流して発光させることが望ましい。例えば、PWM制御をする場合であれば、
図4に示すように、LED21に対してA区間では電流を流さず、B区間ではデューティ比30%で電流を流し、C区間ではデューティ比80%で電流を流す3つの区間を繰り返すようにする。ただし、LED22についても同じように同期したデューティ比の制御をするのではなく、A区間では80%の電流を流し、B区間では30%の電流を流し、C区間では電流を流さないように制御することによって、常にいずれかのLEDが発光しているように制御することが望ましい。
【0021】
なお、PWM制御ではなく連続した電流値制御を行う場合には、
図5に示すように、LED21についてはA区間では電流を流さず、B区間では定格の30%の電流を流し、C区間では定格の80%の電流を流すように制御する。その際LED22はA区間では80%の電流を流し、B区間では30%の電流を流し、C区間では電流を流さないように制御する。
【0022】
このように、LED21,22に流れる電流値を定格の電流値よりも下げることによってLED21,22の寿命を延長する。
【0023】
ところで、上記実施の形態では
図1に示すように、ケーシング3内に、ケーシング3の開口と平行になるように回路基板2を内蔵させたが、
図6に示すように、ケーシング7の開口に対して直角方向に1対のガイド溝72を設けて、回路基板2をそのガイド溝72に沿わせてケーシング7内に収納させてもよい。その際、ケーシング7の開口は蓋部材71で閉塞することが望ましい。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
1 電子ユニット
2 回路基板
21,22 LED
3 ケーシング
4 蓋部材
42 シール
5 スリーブ
6 シート
7 ケーシング
71 蓋部材
72 ガイド溝