(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】回路基板に対する害虫忌避構造
(51)【国際特許分類】
A01M 29/18 20110101AFI20241202BHJP
【FI】
A01M29/18
(21)【出願番号】P 2020191430
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博志
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-113222(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0072074(KR,A)
【文献】特開2009-036713(JP,A)
【文献】実開平06-002477(JP,U)
【文献】特開平09-127963(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0015509(KR,A)
【文献】特開昭58-126732(JP,A)
【文献】特開平01-269444(JP,A)
【文献】特開昭63-301739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0334268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するケーシング内に収納される回路基板に、入力される信号の周波数に応じた可聴領域の音を発音するスピーカ式の発音部品を実装し、この発音部品に高周波の信号を入力して高周波音を発音させることによって回路基板に対する害虫の接触を防止する
と共に、上記発音部品が実装されている面に対して反対側の面側に、上記発音部品から発音される超音波に共振して、ケーシング内における超音波を増幅する共振体を設けたことを特徴とする回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項2】
上記可聴領域の音を発音している間は上記高周波音を発音させないことを特徴とする請求項1に記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項3】
上記発音部品に入力する高周波信号の周波数を周期的に変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項4】
上記発音部品に入力する高周波信号の周波数として予め複数の周波数を設定しておき、これら複数の周波数のうち選択された周波数の信号を上記発音部品に入力する
と共に、これら予め設定された周波数毎に共振するよう共振周波数が相違する複数種類の共振体を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【請求項5】
上記発音部品から高周波音が発音されていることを光によって報知する発光手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の回路基板に対する害虫忌避構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波によって回路基板に対する害虫の接近を防止する害虫忌避構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板は樹脂製のケーシング内に収納されている場合が多く、回路基板からの発熱によりケーシング内の温度は周囲の気温より高くなる傾向にある。そのため、冬季など外気温が低下すると害虫がケーシング内に侵入する場合が生じる。害虫の体は電気的に導体であるため、ケーシング内に害虫が侵入すると回路基板上で短絡などの弊害が生じる。
【0003】
このような弊害を防止するため、ケーシング内に樹脂を充填し硬化させ、回路基板を樹脂でコーティングして、害虫が回路基板に接触できなくする、いわゆるポッティングと呼ばれる手法がある。
【0004】
ただし、このポッティング手法では、充填する樹脂のコストが必要であり、また硬化時間を必要とするため製品の製造タクトが長くなり、かつ回路基板に故障が生じた場合、回路基板に触れることができないので、ユニットごとの交換でしか対応できないなどの不具合がある。また、ブザーなどの発音部品が樹脂に覆われると発音できなくなるという不具合も生じる。
【0005】
そこで、超音波を発音して、この超音波によって害虫が回路基板に接近することを回避することによって回路基板に対する害虫を忌避するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-196142号公報(段落[0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の発明では、高周波を発音するために専用の発音部品を必要としており、コストが高くなるという不具合が生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、超音波を発音するための専用の発音部品を用いることなく超音波によって回路基板に対する害虫の接近を防止する回路基板に対する害虫忌避構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による回路基板に対する害虫忌避構造は、開口を有するケーシング内に収納される回路基板に、入力される信号の周波数に応じた可聴領域の音を発音するスピーカ式の発音部品を実装し、この発音部品に高周波の信号を入力して高周波音を発音させることによって回路基板に対する害虫の接触を防止すると共に、上記発音部品が実装されている面に対して反対側の面側に、上記発音部品から発音される超音波に共振して、ケーシング内における超音波を増幅する共振体を設けたことを特徴とする。
【0010】
各種の可聴領域の報知音を発音するスピーカ式の発音部品が回路基板に実装されている場合、その発音部品から超音波音を発音させることによって新たな発音部品を追加することなく害虫を忌避する。
【0011】
なお、上記可聴領域の音を発音している間は上記高周波音を発音させないことによって、電力消費量を抑え、特に電池を電源としている場合には電池の寿命を延ばすことができる。
【0012】
また、超音波音の周波数が変化しなければ害虫がその超音波音に慣れ、忌避効果が低下するおそれがある。そのような場合には、上記発音部品に入力する高周波信号の周波数を周期的に変化させればよい。
【0013】
また、害虫の種類によっては忌避効果のある超音波の周波数が相違する場合がある。そのような場合には、上記発音部品に入力する高周波信号の周波数として予め複数の周波数を設定しておき、これら複数の周波数のうち選択された周波数の信号を上記発音部品に入力すると共に、これら予め設定された周波数毎に共振するよう共振周波数が相違する複数種類の共振体を設ければよい。
【0014】
ところで、超音波音は人間の聴力では関知できないとされているが、個人差によって超音波を識別できる者がいる可能性がある。そのような場合には、上記発音部品から高周波音が発音されていることを光によって報知する発光手段を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明は、高周波音によって害虫を忌避する際に、別途専用の発音部品を必要としないので、従来のものよりコストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】可聴音と高周波音との発音タイミングを説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および
図2を参照して、1は本発明が適用される電子ユニットの一例であり、図示しない機器、例えばガステーブルの制御装置として機能するものである。この電子ユニット1は上方に開口する樹脂製のケーシング3と、そのケーシング3内に、ケーシング3の開口に対して平行な姿勢で収納されている回路基板2とで構成されている。
【0018】
回路基板2の上面には可聴領域の音と、超音波音とを発音するスピーカ式の発音部品21が実装されている。このスピーカ式の発音部品21は入力される信号の周波数に応じた周波数の音を発音する。従って、可聴領域の周波数の信号が入力されれば可聴領域の音を発音し、高周波領域の信号が入力されれば高周波音を発音するものである。
【0019】
なお、高周波音の音圧は小さいと思われるため回路基板2の下方に共振体31を配置した。これら共振体31は高周波音に対して共振する共振膜を備えており、上記発音部品21から発音される高周波音に共振して、その高周波音の音圧を増幅するためのものである。なお、全ての共振体31の共振周波数を同一になるように設定してもよく、あるいは後述するように、発音部品21が複数の周波数の高周波音を発音する場合には、各周波数の高周波音に対して共振するように設定してもよい。なお、発音部品21が高周波音を発音している間はLED22が点灯して、高周波音が発音されていることを報知するようにした。
【0020】
図3を参照して、上記発音部品21には可聴領域の周波数の信号と超音波領域の周波数の信号とが入力される。回路基板2での消費電力を抑制するため、
図3に示すように、可聴音が発音されている間(A)では超音波音を発音させず、可聴音が発音されていない間(B)のみ超音波音を発音させるようにした。ただし、可聴領域の信号に超音波領域の信号を重畳させて常に超音波音を発音させるようにしてもよい。
【0021】
また、超音波領域の信号の周波数として複数種類の周波数を予め設定しておき、それら複数種類の周波数のうちのいずれかを選択して、その周波数の信号を発音部品21に入力するようにしてもよい。
【0022】
このように複数種類の周波数のうちの選択された周波数に固定してもよいが、
図4に示すように、発音部品21に入力する信号の周波数を予め設定された複数の周波数に周期的に変調するようにしてもよい。
図4に示す例では、20kHz、30kHz、40kHzの3種類の周波数館で周期的に周波数変調をすることにより、害虫が特定の周波数の高周波音に慣れないようにしている。なお、このように周波数を変調させる場合には、上記
図2で示した共振体31の共振周波数をこれら各周波数に一致させるように設定することが望ましい。
【0023】
ところで、上記発音部品21からは可聴領域の音と超音波音とが発音されるが、超音波音は可聴領域音より指向性が高い。そこで、
図5に示すように、回路基板2を奥が広がったケーシング7内に収納し、超音波音はケーシング7内に留まり、可聴音だけがケーシング7の外に出るようにしてもよい。なお、回路基板2はケーシング7の内壁に形成した溝71によって保持されている。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
1 電子ユニット
2 回路基板
3 ケーシング
7 ケーシング
21 発音部品
31 共振体