(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】表示装置およびこれを用いた空間入力装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20241202BHJP
G09F 13/00 20060101ALI20241202BHJP
G09F 13/16 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G02B30/56
G09F13/00 R
G09F13/16 F
(21)【出願番号】P 2021120761
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】安次嶺 勉成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-179868(JP,A)
【文献】特開2020-009267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/188548(US,A1)
【文献】特表2016-516176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
G09F 13/00
G09F 13/16
G09F 13/18
G06F 3/04842
G06F 3/0346
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射を利用して空中像を表示可能な表示装置であって、
底面または底部に意匠としての光拡散領域が形成された透明な導光層と、
前記導光層の底面側に配置された再帰反射層と、
前記導光層の上面側に配置され、第1の偏光方向の光を透過可能な偏光ビームスプリッターと、
第1の偏光方向の光または当該第1の偏光方向と異なる第2の偏光方向の光を前記導光層内に照射する照射手段とを有し、
第1の偏光方向の光を照射したとき、前記光拡散領域によって反射された光が前記偏光ビームスプリッターを透過し、前記意匠が視認可能であり、
第2の偏光方向の光を照射したとき、前記再帰反射層によって反射された光が前記偏光ビームスプリッターを透過し、前記意匠の空中像が視認可能である、表示装置。
【請求項2】
第2の偏光方向の光が照射されたとき、前記光拡散領域によって反射された光が前記偏光ビームスプリッターによって反射され、この反射された光が前記再帰反射層によって反射された後、前記偏光ビームスプリッターを透過する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記照射手段は、前記導光層の第1の側部側から第1の偏光方向の光を照射し、または前記導光層の第1の側部と直交する第2の側部側から第1の偏光方向を照射する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記照射手段は、前記導光層の第1の側部側から第1の偏光方向の光と第2の偏光方向の光を選択的に照射可能である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記照射手段は、偏光方向を変更可能な偏光板を含み、前記偏光板が第1の位置にあるとき第1の偏光方向の光を生成し、前記偏光板が第2の位置にあるとき第2の偏光方向の光を生成する、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
第1の偏光方向と第2の偏光方向は、振動方向が直交する直線偏光である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1つに記載の表示装置と、
前記表示装置により表示された意匠または空中像が操作対象によって選択されたことを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき前記照射手段を制御する制御手段と、
を含む空間入力装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記空中像が前記操作対象によって選択されたとき、選択確定を通知するために前記意匠を表示させる、請求項7に記載の空間入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射を利用して空中に像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示に立体感を得る構成として、レンズ構造またはプリズム構造を付与することによって、立体視を可能とした、立体ディスプレイが特許文献1に開示されている。また、再帰反射を用いた空中表示(Aerial Imaging by Retro-Reflection:AIRR)が知られている。例えば、特許文献2の表示装置は、空中に形成される像をより広い角度から観察可能とするため、2つの再帰反射部材を用い、その一方の再帰反射部材を光源の出射軸上に配置している。特許文献3の画像表示装置は、画像の結像位置の調整を容易にするため、ハーフミラー、再帰反射部材、および画像出力装置をそれぞれ平行に配置し、ハーフミラーまたは画像出力装置の位置を変更し結像位置を調整可能にしている。特許文献4の画像表示装置は、画像の視認性の低下を抑制するため、光が位相差部材(λ/4板)を透過する回数を低減し、かつ再帰反射部材と位相差部材との間に埃などが入り込み難くしている。特許文献5の空中映像表示装置は、装置の薄型化を図るため、ビームスプリッターに対しディスプレイおよび再帰反射部材を平行に配置し、ディスプレイ上に偏向光学素子を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-517528号公報。
【文献】特開2017-107165号公報
【文献】特開2018-81138号公報
【文献】特開2019-66833号公報
【文献】特開2019-101055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、従来の空中像を表示する表示装置の概略断面図である。表示装置10は、ハウジング12内に、画像を出力するディスプレイ等の光源14、ビームスプリッター16および再帰反射部材18を配置する。光源14からの光L1は、ビームスプリッター16で反射され、その反射光L2が再帰反射部材18に進む。再帰反射部材18は、入射した光と同じ方向に光を反射する光学部材であり、再帰反射部材18の反射光L3が入射光L2と同じ方向に進み、ビームスプリッター16を透過した光L4が、収束後再度拡散し、観察者の視点Uの目の前の空中に映像20が結像される。ビームスプリッター16で反射された光L2が再帰反射部材18の表面の保護フィルム等によって正反射されると、再帰反射部材18の後方に光源14の虚像22が生成され、ユーザーの視点Uからは、空中像20の背景に虚像22が重ねて見えるため、空中像20の視認性が低下してしまう。
【0005】
また、本発明者は、
図2(C)に示すように、背面映像と空中像で異なる表示をし、立体感を演出するような提案も行っている。この表示装置30は、第1の導光層40と、その上方に配置されたハーフミラー50と、第1の導光層40の下方に配置された第2の導光層60と、その下方に配置された再帰反射層70と、第1の導光層40の側部を照射するLED1と、第2の導光層60の側部を照射するLED2とを有する。第1の導光層40の底面には、光拡散面である意匠P1(例えば、円形)が形成され、第2の導光層60の底面には、意匠P1と重複しない位置に光拡散面である意匠P2(例えば、リング形状)が形成される。LED1を点灯させたとき(LED2は非点灯)、その光は第1の導光層40内に進み、光拡散面P1で反射され、その結果、
図2(A)に示すように、ユーザーの視点Uからは、意匠P1が視認される。
【0006】
他方、LED2を点灯させたとき(LED1は非点灯)、その光は、第2の導光層60内に進み、光拡散面P2で反射され、その反射光の一部がハーフミラー50で反射され、その反射光が再帰反射層70で反射され、その光がハーフミラー50を介して再結像される。その結果、
図2(B)に示すように、ユーザーの視点Uからは、意匠P2とその空中像P2’が視認される。このような表示装置では、意匠P1を表示させるための導光層40と空中像P2’を表示させるための導光層60をそれぞれ設ける必要があり、さらに、意図的に上下の意匠P1、P2の位置をずらさないといけないなどの課題もある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決し、空中像の視認性を改善した表示装置およびこれを用いた空間入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示装置は、再帰反射を利用して空中像を表示可能なものであって、底面または底部に意匠としての光拡散領域が形成された透明な導光層と、前記導光層の底面側に配置された再帰反射層と、前記導光層の上面側に配置され、第1の偏光方向の光を透過可能な偏光ビームスプリッターと、第1の偏光方向の光または当該第1の偏光方向と異なる第2の偏光方向の光を前記導光層内に照射する照射手段とを有し、第1の偏光方向の光を照射したとき、前記光拡散領域によって反射された光が前記偏光ビームスプリッターを透過し、前記意匠が視認可能であり、第2の偏光方向の光を照射したとき、前記再帰反射層によって反射された光が前記偏光ビームスプリッターを透過し、前記意匠の空中像が視認可能である。
【0009】
ある態様では、第2の偏光方向の光が照射されたとき、前記光拡散領域によって反射された光が前記偏光ビームスプリッターによって反射され、この反射された光が前記再帰反射層によって反射された後、前記偏光ビームスプリッターを透過する。ある態様では、前記照射手段は、前記導光層の第1の側部側から第1の偏光方向の光を照射し、または前記導光層の第1の側部と直交する第2の側部側から第1の偏光方向を照射する。ある態様では、前記照射手段は、前記導光層の第1の側部側から第1の偏光方向の光と第2の偏光方向の光を選択的に照射可能である。ある態様では、前記照射手段は、偏光方向を変更可能な偏光板を含み、前記偏光板が第1の位置にあるとき第1の偏光方向の光を生成し、前記偏光板が第2の位置にあるとき第2の偏光方向の光を生成する。ある態様では、第1の偏光方向と第2の偏光方向は、振動方向が直交する直線偏光である。
【0010】
本発明に係る空間入力装置は、上記記載の表示装置と、前記表示装置により表示された意匠または空中像が操作対象によって選択されたことを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき前記照射手段を制御する制御手段とを含む。ある態様では、前記制御手段は、前記空中像が前記操作対象によって選択されたとき、選択確定を通知するために前記意匠を表示させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導光層を照射する光の偏光方向を制御することで意匠と空中像の輝度比を制御し、空中像の視認性を改善することができる。さらに第1の偏光方向の光または第2の偏光方向の光を選択的に照射することで意匠または空中像の表示をシームレスに切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来の空中像を表示する表示装置の概略断面図である。
【
図2】空中像を表示する表示装置の他の例を説明する図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の実施例に係る表示装置の平面図、
図3(B)は、
図3(A)のA-A線断面図である。
【
図4】
図4(A)は、第1の光源を点灯させたとき意匠P1が上方から視認される例を示し、
図4(B)は、第1の光源から出射された光の進行方向を模式的に示す図である。
【
図5】
図5(A)は、第2の光源を点灯させたときに空中像P1’が上方から視認される例を示し、
図5(B)は、第1の光源から出射された光の進行方向を模式的に示す図である。
【
図6】
図6(A)は、本発明の第2の実施例に係る表示装置の平面図、
図6(B)は、
図6(A)のA-A線断面図である。
【
図7】本発明の実施例に係る表示装置を適用した空間入力装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の表示装置は、特殊なメガネ等をかけなくても3次元空間内に再帰反射を用いた映像を表示する。ある態様では、本発明の表示装置は、空中に表示された映像を利用したユーザー入力インターフェースに適用される。なお、以下の実施例の説明で参照される図面は、発明の理解を容易にするために誇大または強調した部分を含んでおり、実際の製品の形状やスケールをそのまま表したものではないことに留意すべきである。
【実施例】
【0014】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
図3(A)は、本発明の実施例に係る表示装置の概略平面図、
図3(B)は、
図3(A)に示す表示装置のA-A線概略断面図である。本実施例の表示装置100は、導光層(または導光板)の側部から照射する光の偏光方向を制御することで空中像と元映像の輝度比を調整し、かつ空中像と原画像との表示の切替えをシームレスに行うことを可能にする。
【0015】
本実施例の表示装置100は、第1の光源110、第1の偏光板(偏光フィルター)120、第2の光源130、第2の偏光板140、導光層150、再帰反射層160、偏光ビームスプリッター170を含んで構成される。
【0016】
第1の光源110は、導光層150の第1の側部152に配置され、一定の出射角(または放射角)を持つ光をX方向に向けて出射する。第1の光源110は、特に限定されないが、例えば、発光ダイオードのような無偏光の発光素子を用いることができる。第1の光源110が出射する光の波長(色)は特に限定されないが、例えば、第2の光源130が出射する光の波長と同じであってもよいし、異ならせても良い。導光層150の第1の側部152がY方向に一定の長さを有する場合には、第1の光源110は、Y方向に沿うように複数の発光素子を配置させるものであってもよい。
【0017】
第1の光源110に対向して第1の偏光板(偏光子)120が配置される。第1の偏光板120は、例えば、偏光フィルムあるいはDBEF(反射型偏光素子)であり、第1の光源110から出射された光の進行方向と直角な面内において一定の方向に振動する直線偏光の光を生成する光学素子である。第1の偏光板120は、その直線偏光の偏光方向が偏光ビームスプリッター170で透過することができる偏光方向と概ね一致するように調整される。図の例では、第1の偏光板120は、概ねY方向に振動する直線偏光の光を生成する。第1の偏光板120で生成された直線偏光の光L1は、導光層150の第1の側部152から内部に入射され、導光層150の内部を一様に照射する。
【0018】
第2の光源130は、導光層150の第2の側部154に配置され、一定の出射角(または放射角)を持つ光をY方向に向けて出射する。第2の光源130は、特に限定されないが、例えば、発光ダイオードのような無偏光の発光素子を用いることができる。導光層150の第2の側部154がX方向に一定の長さを有する場合には、第2の光源130は、X方向に沿うように複数の発光素子を配置させるものであってもよい。
【0019】
第2の光源130に対向して第2の偏光板(偏光子)140が配置される。第2の偏光板140は、第1の偏光板120と同様に構成され、第2の光源130から出射された光の進行方向と直角な面内において一定の方向に振動する直線偏光の光を生成する。第2の偏光板140は、第1の偏光板120と同じ方向の直線偏光の光を生成するが、第2の光源130および第2の偏光板140は、第1の側部152と直交する第2の側部154に配置されるため、導光層150内に入射される第2の偏光板140の直線偏光の光L2は、第1の偏光板120の直線方向の光L1に対し直角であり、すなわち、光L2の偏光方向は、偏光ビームスプリッター170で透過することができる偏光方向に対し概ね直角である。第2の偏光板140で生成された直線偏光の光L2は、導光層150の第2の側部154から内部に入射され、導光層150の内部を一様に照射する。
【0020】
導光層150は、平坦な上面、平坦な底面および上面と底面とを接続する側面とを備えた板状またはフィルム状の透明な光学部材である。導光層150の平面形状は特に限定されないが、例えば矩形状である。導光層150が矩形状であるとき、第1の側部152と第2の側部154とは概ね直交する。導光層150は、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス、アクリル製のプラスチック、ポリカーボネート樹脂、あるいはシクロオレフィン系樹脂などから構成される。また、導光層150は、第1の光源110あるいは第2の光源130からの光を入射するためZ方向に一定の厚さを有する。
【0021】
導光層150の底部または底面には、光をZ方向に拡散または散乱させるための意匠(原画像)としての光拡散面P1が形成される。光拡散面P1は、例えば、導光層150の底面をレーザーや印刷により微細構造に加工され、また、偏光状態が保存されるような構造であることが望ましく、例えば、マイクロストラクチャ、微粒子を分散したような光散乱体であることができる。光拡散面P1の形状や大きさは、特に限定されないが、もし、表示装置100を空間入力に使用する場合には、ユーザー入力に応じた意匠(例えば、入力ボタンの形状などアイコンの形状)に加工される。図の例では、光拡散面P1は、環状(リング状)である。
【0022】
導光層150の下方に再帰反射層160が形成される。再帰反射層160は、入射光と同じ方向に光を反射する光学部材であり、その構成は特に限定されないが、例えば、三角錐型再帰反射素子、フルキューブコーナー型再帰反射素子などのプリズム型再帰反射素子やビーズ型再帰反射素子によって構成される。
【0023】
また、再帰反射層160は、反射光の直線偏光の振動方向が入射光の直線偏光の振動方向と異なるように調整される。意匠P1とその空中像P1’の輝度比をより大きくしたい場合には、反射光が偏光ビームスプリッター170を透過できるように、反射光の直線偏光が入射光の直線偏光と直角(90度)になるように調整することが好ましい。反射光の偏光方向を調整する方法は特に限定されないが、再帰反射層160で光が反射される回数で偏光方向を調整したり、あるいは再帰反射層160の反射面に位相差を生じさせるような位相差フィルムを貼り付けることで反射光の偏光方向を調整するようにしてもよい。さらに、再帰反射層160と導光層150との間に、λ/4フィルムのような位相差フィルムを介在させるようにしてもよい。
【0024】
導光層150の上面側に偏光ビームスプリッター170が配置される。偏光ビームスプリッター170は、入射光をp偏光成分とs偏光成分とに分割することができる偏光分離素子であり、ある特定の方向に直線偏光された光成分を透過することができる。第1の偏光板120の直線方向は、偏光ビームスプリッター170で透過する直線偏光と概ね同じ方向になるように調整されため、導光層150の光拡散面P1でZ方向に反射された第1の光源110の直線偏光の光L1の大部分が偏光ビームスプリッター170を透過する。一方、導光層150の光拡散面P1でZ方向に反射された第2の光源130の直線偏光の光L2の大部分が偏光ビームスプリッター170で反射され、偏光ビームスプリッター170で反射された光が再帰反射層160に進み、再帰反射層160で反射された光は、入射した光と同一方向に進み、かつ入射した光の偏光方向が調整され(例えば、90度回転した直線偏光に調整され)、この反射光の大部分が偏光ビームスプリッター170を透過する。
【0025】
次に、本実施例の表示装置100の表示動作について説明する。第1の光源110の点灯/非点灯、第2の光源130の点灯/非点灯は、図示しない制御部によって制御され、ある態様では、第1の光源110が点灯されるとき、第2の光源130が非点灯され、第1の光源110が非点灯されるとき、第2の光源130が点灯される。例えば、表示装置100を空間入力装置に適用した場合に、制御部は、ユーザーの入力操作状態に応じて第1および第2の光源110、130の点灯/非点灯を制御し、あるいは表示装置100の表示目的に応じて第1および第2の光源110、130の点灯/非点灯を制御する。
【0026】
図4(A)は、第1の光源110を点灯させたときに意匠(光拡散面)P1がユーザーによって視認される例を示し、
図4(B)は、第1の光源110からの光の進行方向を模式的に示す図である。第1の光源110から出射された光L1は、第1の偏光板120によって直線偏光の光L1に変換され、光L1は、導光層150の側部152から入射し、導光層150内を照射する。光L1の一部は、光拡散面P1によって上方向(Z方向)に向けて反射され、このとき、光L1の直線偏光は概ね保存される。光拡散面P1で反射された光L1の直線偏光は、偏光ビームスプリッター170で透過される偏光方向と概ね一致するため、光L1の大部分が偏光ビームスプリッター170を透過する。その結果、ユーザーがZ方向の視点Uから表示装置100を観察したとき、ユーザーは、光拡散面である意匠P1を視認することができる。
【0027】
図5(A)は、第2の光源130を点灯させたときに意匠(光拡散面)P1の空中像P1’’がユーザーによって視認される例を示し、
図5(B)は、第2の光源130からの光の進行方向を模式的に示す図である。第2の光源130から出射された光L2は、第2の偏光板140によって直線偏光の光L2に変換され、光L2は、導光層150の側部154から入射し、導光層150内を照射する。光L2の一部は、光拡散面P1によって上方向(Z方向)に向けて反射され、このとき、光L2の直線偏光は概ね保存される。光拡散面P1で反射された光L2の直線偏光は、偏光ビームスプリッター170で透過される偏光方向と概ね直交するため、光L2の大部分が偏光ビームスプリッター170で反射される。
【0028】
偏光ビームスプリッター170で反射された光は、再帰反射層160に進行し、そこで入射方向と同じ方向に反射される。このとき、光L2の直線偏光の状態は保存されず、再帰反射層160の反射によって無偏光状態になるか、あるいは位相差フィルムを介して元の直線偏光が一定角度回転した直線偏光になる。その結果、再帰反射層160で反射された光L2の大部分またはその一部が偏光ビームスプリッター170を透過し、その後再結像することで空中像P1’が生成される。ユーザーがZ方向の視点Uから表示装置100を観察したとき、ユーザーは、表示装置100の表面から浮き上がった意匠P1の空中像P1’を視認することができる。また、第1の光源110が非点灯であるため全体の輝度が抑えられ、空中像P1’のコントラストまたは視認性が改善される。
【0029】
このように本実施例によれば、導光層150へ入射される光の偏光方向を制御することで意匠P1と空中像P1’の輝度比を制御し、空中像P1’の視認性を改善することができる。また、第1の光源110と第2の光源130の点灯/非点灯を切替えることで意匠P1または空中像P1’の表示の切替えをシームレスに行うことができる。
【0030】
なお、上記実施例では、光源と偏光板との組み合わせにより直線偏光の光を導光層150へ入射させたが、これは一例であり、これ以外にも、レーザーダイオードのように直線偏光の光を出射するような発光素子を用いた場合には、必ずしも偏光板は不要であり、レーザーダイオードから出射された光が偏光板を通過せずに導光層150へ直接入射されるようにしてもよい。
【0031】
また、上記実施例では、第1の光源110と第2の光源130とを用意したが、同一波長(同一の色)の光を用いる場合には、単一の光源から出射する光をビームスプリッターや導波管等により2つに分割し、分割された光を第1の偏光板120および第2の偏光板140にそれぞれ出射するようにしてもよい。
【0032】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、導光層150の側部152、154から偏光方向の異なる光を入射させたが、第2の実施例では、導光層150の側部152から偏光方向の異なる光を入射させる。
【0033】
図6(A)は、第2の実施例の表示装置100Aの平面図、
図6(B)は、A-A線概略断面図である。表示装置100Aは、導光層150の側部512側に配置された第1の光源110と、第1の偏光板120と、第1の偏光板120の偏光方向を制御可能なアクチュエータ200とを含む。アクチュエータ200は、図示しない制御部からの駆動信号Sに応答して第1の偏光板120を回転させ、第1の偏光板120から導光層150へ入射される光L1の偏光方向を制御する。
図6(A)に示すように、第1の偏光板120が第1の位置にあるとき、光L1の直線偏光の振動方向がY方向に概ね平行であり、アクチュエータ200が第1の偏光板120を第1の位置から90度回転させたとき、
図6(B)に示すように、第1の偏光板120から出射される光L2の直線偏光の振動方向がZ方向に概ね平行になる。
【0034】
第1の偏光板120が第1の位置にあるとき、第1の実施例で説明したように、光L1が光拡散面P1で反射し、その反射光が偏光ビームスプリッター170を透過し、ユーザーは、意匠P1を視認することができる。
【0035】
第1の偏光板120が第2の位置にあるとき、第1の偏光板120から出射された光L2は、光拡散面P1で反射し、その反射光が偏光ビームスプリッター170でさらに反射し、その反射光が再帰反射層160で反射され、その反射光が偏光ビームスプリッター170を透過し、その後再結像することで意匠P1の空中像P1’が生成される。ユーザーは、表示装置100Aを上方から観察したとき、空中像P1’を視認することができる。
【0036】
本実施例によれば、導光層の一方の側部側から偏光方向の異なる光を入射するようにしたので、表示装置100Aの小型化、省スペース化を図ることができる。なお、上記の例では1つの光源から出射される光の偏光方向を第1の偏光板120で切替えるようにしたが、これに限らず、導光層150の側部152に、第1の光源110と第1の偏光板120の組合せと、第2の光源130と第2の偏光板140の組合せを配置させ、第1の偏光板120と第2の偏光板140の直線偏光の方向が互いに直角するようにしてもよい。
【0037】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、第1または第2の実施例の表示装置をユーザー入力インターフェースに適用した空間入力装置に関する。
図7(A)に、本実施例の表示装置100/100Aを空間入力装置に適用した例を示す。空間入力装置300は、表示装置100/100Aを収容したハウジング310と、操作対象(例えば、ユーザーの指など)320の3次元距離を検出する3次元距離センサ330と、制御部340とを含んで構成される。
【0038】
導光層150の底面には、例えば、
図7(B)に示すように左右のスクロールキー350、352やアイコン画像360~370が入力ボタンを表示させるための意匠(光拡散面)が形成される。制御部340が第1の光源110を点灯させたとき、ユーザーは、ハウジング310の表面にこれらの入力ボタン350~370を視認することができ、制御部340が第2の光源130を点灯させたとき、ハウジング310から浮き上がった位置に入力ボタンの空中像380を視認することができる。
【0039】
また、制御部340は、3次元距離センサ330の検出結果を受け取り、当該検出結果に基づき操作対象320が近接する入力ボタンを識別し、識別した入力ボタンがユーザーによって選択されたものと判定する。
【0040】
ある態様では、制御部340は、空中像380の入力ボタンの選択をユーザーに強いる場合に第2の光源130を点灯させ、入力ボタンが選択されたとき、制御部340は、第1の光源110を点灯させ(第2の光源130は非点灯)、空中像380を切替えることで入力確定をユーザーに知らせる。
【0041】
なお、空中像380の切替えは、上記に限らず、例えば通常の入力操作のときに第1の光源110を点灯させて意匠(原画像)を表示させ、入力確定を知らせるために第2の光源130を点灯させて空中像380を表示させるようにしてもよい。また、別の態様では、制御部340は、第1の光源110と第2の光源130とを同時に点灯させ、意匠と空中像380の双方を表示させることで、入力確定を知らせるようにしてもよい。さらに操作対象320の検出方法は、上記に限らず、例えば、赤外線を利用した近接センサ、静電容量型の検出センサ、機械式スイッチ、撮像素子などを利用して操作対象320の位置を検出するようにしてもよい。
【0042】
このように本実施例の空間入力装置によれば、空中像380と意匠(原画像)の表示をシームレスに切替えることで、用途要件により、非接触入力と接触入力の切替えを視覚的に伝える入力デバイスが可能になる。また、表示する映像の輝度比を制御することで操作性の高いユーザーインターフェースを提供することができる。
【0043】
本実施例の空間入力装置は、あらゆるユーザー入力に適用することができ、例えば、コンピュータ装置、車載用電子機器、銀行等のATM、駅等のチケットの購入機、エレベータの入力ボタンなどに適用することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
100/100A:表示装置
110:第1の光源
120:第1の偏光板
130:第2の光源
140:第2の偏光板
150:導光層
152、154:側部
160:再帰反射層
170:偏光ビームスプリッター
300:空間有力装置
310:ハウジング
320:操作対象
330:3次元距離センサ
340:制御部
350~370:入力ボタン