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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】密閉容器および蓋体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/00 20060101AFI20241202BHJP
   B65D 43/16 20060101ALI20241202BHJP
   A45D 33/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B65D53/00 200
B65D43/16
A45D33/00 640
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021126295
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020751
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】中尾 友樹
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070243(JP,A)
【文献】特開2013-132863(JP,A)
【文献】特開2000-262321(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0062920(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体の口部を密に閉じる蓋体とを有しており、
前記蓋体は、天壁と周壁とを有する蓋本体と、前記蓋本体の前記天壁の裏面に形成されているとともに前記容器本体の口部をシールするシール部と、を有している、密閉容器であって、
前記シール部は、前記蓋本体よりも軟質な材料によって形成されているとともに前記天壁の裏面に全周にわたって連続した環状に形成されており、
前記天壁の裏面には、前記シール部のゲート位置に対して、当該ゲート位置と軸線を挟んで径方向に対向する位置に、軸線方向に凹む凹部が形成されている、密閉容器。
【請求項2】
前記天壁には、前記シール部の径方向内側に、柔軟な含浸体が配置されている、請求項1に記載された密閉容器。
【請求項3】
前記容器本体と前記蓋体とは、ヒンジによって連結されており、
前記蓋体は、前記容器本体の口部を密に閉じるとき、前記容器本体に対してアンダーカット嵌合によって係止されている、請求項1または2に記載された密閉容器。
【請求項4】
請求項1に記載された密閉容器の前記容器本体の口部を密に閉じる前記蓋体を得るための、蓋体の製造方法であって、
1次インサート材をインサート品として、当該1次インサート材が天壁の裏面に露出するように埋設された蓋本体を、前記蓋体を形成するための1次成形品として射出成形する、1次成形ステップと、
前記1次成形ステップの後、前記1次成形品をインサート品として、前記1次成形品の前記裏面に、前記1次インサート材を取り囲むように周方向に連続して延びる前記環状のシール部を射出成形する、2次成形ステップと、
を含む、蓋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の密閉容器には、上蓋がヒンジ部を介して化粧料収容部に対して開閉可能な中皿であって、上蓋の内周に設けられたパッキンが当該上蓋を閉じたときに、化粧料収容部の上端周辺に押えつけられるものがある(例えば、特許文献1参照。)。こうした従来の密閉容器によれば、上蓋を閉じることによって、中皿の内部の気密性が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-75239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の密閉容器において、蓋本体(上蓋)をインサート品として、当該蓋本体の裏面に環状のシール部(パッキン)を射出成形する場合、シール部のゲート位置に対して軸線を挟んで径方向に対向する位置に、ウェルドや気泡、白化などが発生する問題があった。このようにシール部にウェルドや気泡、白化などが発生することによって、蓋体と容器本体との間のシール性(密閉性)を低下させる虞がある。
【0005】
本発明の解決すべき課題は、蓋本体をインサート品として当該蓋本体の裏面にシール部をインサート成形するときに、当該シール部に形成され得るウェルドの発生と、当該シール部に生じ得る白化の発生とを抑制することである。
【0006】
すなわち、本発明の目的は、ウェルド、気泡および白化の発生が抑制されたシール部を有する密閉容器および蓋体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る密閉容器は、容器本体と、前記容器本体の口部を密に閉じる蓋体とを有しており、前記蓋体は、天壁と周壁とを有する蓋本体と、前記蓋本体の前記天壁の裏面に形成されているとともに前記容器本体の口部をシールするシール部と、を有している、密閉容器であって、前記シール部は、前記蓋本体よりも軟質な材料によって形成されているとともに前記天壁の裏面に全周にわたって連続した環状に形成されており、前記天壁の裏面には、前記シール部のゲート位置に対して、当該ゲート位置と軸線を挟んで径方向に対向する位置に、軸線方向に凹む凹部が形成されている。
【0008】
本発明に係る密閉容器において、前記天壁には、前記シール部の径方向内側に、柔軟な含浸体が配置されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る密閉容器において、前記容器本体と前記蓋体とは、ヒンジによって連結されており、前記蓋体は、前記容器本体の口部を密に閉じるとき、前記容器本体に対してアンダーカット嵌合によって係止されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る、蓋体の製造方法は、容器本体の口部を密に閉じる蓋体を得るための、蓋体の製造方法であって、1次インサート材をインサート品として蓋本体を射出成形する、1次成形ステップと、前記1次成形ステップの後、前記蓋本体をインサート品として、前記1次品を取り囲むように周方向に連続して延びる環状のシール部を射出成形する、2次成形ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウェルドおよび白化の発生が抑制されたシール部を有する、密閉容器および蓋体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る、密閉容器を概略的に示す平面図である。
図2図1の密閉容器を概略的に示す側面図である。
図3図1の密閉容器をA-A断面で概略的に示す断面図である。
図4図1の密閉容器に係る蓋体を裏面側から概略的に示す平面図である。
図5図4の蓋体をB-B断面で概略的に示す断面図である。
図6図4の蓋体をC-C断面で概略的に示す断面図である。
図7図4の蓋体を構成する、含浸体を有する蓋本体を裏面側から概略的に示す平面図である。
図8図7の蓋本体をD-D断面で概略的に示す断面図である。
図9】蓋体にシール部を射出成型する際に、当該シール部に生じ得る、ウェルド・白化の領域を概略的に示す図である。
図10図1の密閉容器を収納可能なコンパクト容器の一例であって、当該コンパクト容器の、密閉容器が収納される側の領域を概略的に示す断面図である。
図11図10のコンパクト容器であって、当該コンパクト容器の、パフが収納される側の領域を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、密閉容器および蓋体の製造方法について説明をする。
【0014】
以下の説明では、各用語を以下のとおりに定義する。本実施形態において、密閉容器に係る蓋体の摘みが位置する側を「摘み側」ともいい、当該密閉容器のヒンジが位置する側を「ヒンジ側」ともいう。また、摘みおよびヒンジを通る方向をX軸方向ともいう。また、平面視において、X軸方向に対して直交する方向をY軸方向ともいう。さらに、本実施形態では、密閉容器の中心軸線を軸線Oとし、当該軸線Oに対して平行に延びている方向を「軸線方向」ともいう。軸線方向は、X軸方向およびY軸方向に対して直交しており、「上下方向」の意味も含む。特に、本実施形態では、密閉容器の蓋体が位置する側を「上側」ともいい、当該密閉容器の容器本体が位置する側を「下側」ともいう。また、軸線Оの周りを周回する方向を「周方向」ともいい、軸線方向に対して直交する方向を「径方向」ともいう。径方向のうち、軸線Оに位置する側を「径方向内側」ともいい、その反対側を「径方向外側」ともいう。さらに、本実施形態では、密閉容器の内部に形成された収容空間の位置する面を「裏面」とし、密閉容器の外側に位置する面を「表面」とする。
【0015】
(密閉容器)
図1中、符号1は、本発明の一実施形態に係る、密閉容器である。本実施形態では、密閉容器1は、図1に示すように平面視において、軸線Оを中心とする円形の外観形状を有している。本実施形態では、密閉容器1は、図1に示すように平面視において、X軸方向を挟んで対称な形状である。X軸方向は、平面視において、Y軸方向に対して直交している。
【0016】
図2に示すように、密閉容器1は、容器本体2と、容器本体2を密に閉じる蓋体3とを有している。容器本体2と蓋体3とはヒンジ4を介して開閉可能に連結されている。本実施形態では、ヒンジ4は、容器本体2に設けられたピン4aと、蓋体3に設けられたピン支持部4bとによって構成されている。ピン4aは、Y軸方向に延びている。蓋体3に設けられたピン支持部4bは、容器本体2に設けられたピン4aによって回転可能に支持されている。これによって、蓋体3は、容器本体2に対してピン4aの中心軸周りに回転させることができる。すなわち、本実施形態において、蓋体3は、容器本体2に対してヒンジ4を起点に開閉させることができる。ただし、本実施形態に係るヒンジ4の構成は、本発明に係る密閉容器に係るヒンジの構成の一例である。したがって、ヒンジ4の構成は、蓋体3を容器本体2に対して開閉可能に連結する構成であれば、本実施形態に係る構成に限定されるものではない。例えば、密閉容器1において、ヒンジ4は、ピン4aとピン支持部4bとを別体に構成したヒンジとしたが、一体に形成されたヒンジとすることができる。
【0017】
さらに、図3を参照すれば、密閉容器1の内部には、内容物を収容する収容空間Sが形成されている。収容空間Sは、容器本体2と蓋体3とによって形成されている。蓋体3は、蓋本体5を有している。蓋本体5は、天壁5aと周壁5bとを有している。周壁5bは、軸線Оを取り囲むとともに天壁5aの裏面5fから下側に延びている、筒状の周壁である。天壁5aの裏面5fには、シール部6が形成されている。シール部6は、図3に示すように、蓋体3を閉じたとき、容器本体2の口部2aを密に閉塞する。
【0018】
本実施形態では、蓋体3は、容器本体2の口部2aを密に閉じるとき、容器本体2に対してアンダーカット嵌合11によって係止されている。本実施形態では、アンダーカット嵌合11は、容器本体2から径方法外側に突出する第1突起11aと、蓋体3の蓋本体5の周壁5bから径方法内側に突出する第2突起11bとによって構成されている。第2突起11bは、蓋体3を閉じたとき、第1突起11aを上側から乗り越えた後、当該第1突起11aの下面に引っ掛かることによって、当該第1突起11aと嵌合する。これによって、蓋体3は、容器本体2の口部2aを密に閉じるとき、当該容器本体2の口部2aに対して強固に固定される。ただし、第2突起11bは、蓋体3を所定の力で引き上げたとき、第1突起11aを下側から乗り越えることによって、当該第1突起11aとの嵌合を解除させることができる。これによって、蓋体3は、容器本体2に対して開くことができる。なお、本実施形態では、蓋本体5の周壁5bの上部には、摘み12が設けられている。摘み12は、周壁5bの径方向外側面から径方向外側に突出している。使用者は、摘み12を指に引っ掛けることによって、蓋体3を容易に開くことができる。
【0019】
シール部6は、蓋本体5よりも軟質な材料によって形成されている。蓋本体5は、例えば、軟質な合成樹脂によって形成することができる。本実施形態では、シール部6は、蓋本体5の合成樹脂よりも軟質なエラストマ樹脂(例えば、「軟質PE(ポリエチレン)エラストマ樹脂」)によって形成されている。
【0020】
また、図4に示すように、シール部6は、天壁5aの裏面5fに全周にわたって連続した環状に形成されている。さらに、天壁5aには、環状のシール部6の径方向内側に、柔軟な含浸体9が配置されている。含浸体9は、内容物から分離した成分、例えば、油分を吸着させることができる。こうした柔軟な含浸体9としては、例えば、メッシュ部材、不織布、布、紙が挙げられる。本実施形態では、含浸体9として、アルミシートに不織布を積層した積層体を、含浸体として用いている。含浸体9は、収容空間Sに収容された内容物が油分を含有する場合、当該内容物から分離して滲み出した油分を吸着させることができる。
【0021】
図4中、符号Gは、シール部6のゲート位置である。ゲート位置Gは、蓋本体5をインサート品として、天壁5aの裏面5fにシール部6を射出成形するとき、当該天壁5aの裏面5fにおいて、成形型に設けられたゲートが配置される位置である。すなわち、本実施形態では、前記ゲートからは、天壁5aの裏面5fのうちの、ゲート位置Gの位置に成形樹脂が供給される。
【0022】
図5を参照すれば、本実施形態において、天壁5aの裏面5fのゲート位置Gには、窪み7が形成されている。本実施形態では、シール部6を射出成形するとき、成形型に設けられたゲートは窪み7の位置に位置決めされる。すなわち、本実施形態では、前記ゲートから射出される成形樹脂は、天壁5aの裏面5fに形成された窪み7に充填されるとともにシール部6の径方向内側形状を形作る、成形型のキャビティ内に充填される。
【0023】
本実施形態では、シール部6は、第1シール部分6aと、第2シール部分6bとを有している。第1シール部分6aは、蓋体3を閉じたときに、容器本体2の口部2aの上端を押圧することによって容器本体2の口部2aと蓋体3との間をシールする。第2シール部分6bは、蓋体3を閉じたときに、容器本体2の口部2aの径方向外側面を押圧することによって容器本体2の口部2aと蓋体3との間をシールする。ただし、本発明によれば、シール部6のシール構造は、容器本体2の口部2aと蓋体3との間をシールできる構成であれば、本実施形態に係る構成に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態では、シール部6は、天壁5aの裏面5fのゲート位置Gに成形樹脂が供給されることによって、周壁5bの径方向内側面に沿って環状に射出成形される。図6を参照すれば、天壁5aの裏面5fには、シール部6のゲート位置Gに対して、当該ゲート位置Gと軸線Оを挟んで径方向に対向する位置(図5参照)に、軸線方向に凹む凹部8が形成されている。
【0025】
図7には、蓋本体5を裏面5fの側から示す。図7を参照すれば、凹部8は、平面視において、窪み7と軸線Оを挟んで対向する位置に配設されている。具体的には、窪み7および凹部8は、軸線Оを挟んで左右両側に配置されている。本実施形態では、凹部8は、周方向に延びている長孔である。本実施形態では、軸線Оを中心とする角度αの範囲に延びている。角度αは、例えば、53.6°とすることができる。本実施形態では、Y軸方向は、平面視において、窪み7および凹部8の二等分線である。すなわち、本実施形態では、窪み7および凹部8は、それぞれ、平面視において、Y軸方向に対して対称な形状である。図8には、凹部8の断面形状を示す。凹部8は、窪み7とともに周壁5bの径方向内側面と隣接する位置に形成されている。
【0026】
図7を参照すれば、含浸体9を有する蓋本体5をインサート品としてシール部6を射出成形する場合、成形型に設けられたゲートからは、窪み7の位置に成形樹脂が射出される。射出樹脂は、成形型と天壁5aの裏面5fとの間に形成されたキャビティ(周壁5bの径方向内側面)に沿って、摘み側及びヒンジ側の2方向から凹部8に向かって天壁5aの裏面5f上を流れる。2方向から流れた成形樹脂は、凹部8に流れ込んだのち、Y軸方向上で合流する。
【0027】
図9を参照すれば、天壁5aの裏面5fに凹部8が存在しない従来の場合、図9の図面左側の矢印に示すように、摘み側から回り込んだ成形樹脂と、図9の図面右側の矢印に示すように、ヒンジ側から回り込んだ成形樹脂(図面右側の矢印)とは、天壁5aの裏面5f上でそのまま合流する。この場合、成形樹脂と成形型との間(キャビティ内)でのエアの抜けが悪いと、射出成形されたシール部6の合流部Aには、2つの成形樹脂の合流部分が線状に残ることによって、ウェルドが形成されることがある。ウェルドによるシール部6の形状的な変化は、蓋体3と容器本体2との間のシール性(密閉性)を低下させる虞がある。或いは、2つの成形樹脂の間にエアが取り残されて閉じ込められたまま、成形された場合、2つの成形樹脂の合流部分に相当するシール部6の部分には、気泡が形成されてしまうことがある。こうした気泡によるシール部6の形状的な変化もまた、蓋体3と容器本体2との間のシール性(密閉性)を低下させる虞がある。また、或いは、2つの成形樹脂の間にエアが取り残されて閉じ込められたまま、当該2つの成形樹脂によって圧縮されると、射出成形されたシール部の合流部は白化してしまうことがある。この場合も、白化によるシール部6の物性的な変化(例えば、白化部分は、他の部分よりも硬化してしまう。)もまた、蓋体3と容器本体2との間のシール性(密閉性)を低下させる虞がある。
【0028】
これに対し、図7を参照すれば、本実施形態では、摘み側から回り込んだ成形樹脂の樹脂表面(図7では、紙面手前側の成形樹脂の面をいう。以下、同様。)と、ヒンジ側から回り込んだ成形樹脂の樹脂表面とは、凹部8に流れ込むことによって、Y軸方向に向かうにしたがって凹部8の底面8aに向かって傾斜する。この状態で、2つの成形樹脂が合流すると、前記キャビティ内のエアは、上側(ここでは、凹部8の底面8aよりも天壁5aの裏面の側)から抜け易くなる。これによって、2つの成形樹脂の合流部分が線状に残ることによって成形後のシール部6に生じ得る、ウェルドの発生が抑えられる。また、2つの成形樹脂が合流する際、2つの成形樹脂の間に取り残されたエアもまた、上側に抜くことができる。これによって、2つの成形樹脂の間に取り残されたエアは、2つの成形樹脂の間に取り残されて閉じ込められることがないため、成形後のシール部6に生じ得る気泡の形成も抑制される。さらに、2つの成形樹脂の間に取り残されたエアが上側に抜けることによって閉じ込められることがないため、当該エアが2つの成形樹脂によって圧縮されることによって生じ得る白化の発生も抑制することができる。
【0029】
図1を参照すれば、密閉容器1は、容器本体2と、容器本体2の口部2aを密に閉じる蓋体3とを有している。蓋体3は、天壁5aと周壁5bとを有する蓋本体5と、天壁5aの裏面5fに形成されているとともに容器本体2の口部2aをシールするシール部6と、を有している。シール部6は、蓋本体5よりも軟質な材料によって形成されているとともに、図4に示すように、天壁5aの裏面5fに全周にわたって連続した環状に形成されている。天壁5aの裏面5fには、シール部6のゲート位置Gに対して、当該ゲート位置Gと軸線Оを挟んで径方向に対向する位置に、軸線方向に凹む凹部8が形成されている。密閉容器1によれば、蓋本体5をインサート品としてシール部6を射出成型するとき、当該シール部6に生じ得る、ウェルド、気泡および白化の発生が抑制される。これによって、密閉容器1は、従来に比べてシール性が向上する。
【0030】
また、密閉容器1において、天壁5aには、シール部6の径方向内側に、柔軟な含浸体9が配置されている。この場合、内容物が油分などを含有する場合、内容物から分離した油分などの分離物が滲み出したときも、シール部6の径方向内側に、柔軟な含浸体9が配置されているため、当該漏出物を含浸体9に吸着させることができる。したがって、密閉容器1によれば、内容物からの分離物をシール部6から漏出することを抑制することができる。
【0031】
また、図3を参照すれば、密閉容器1において、容器本体2と蓋体3とは、ヒンジ4によって連結されており、蓋体3は、容器本体2の口部2aを密に閉じるとき、容器本体2に対してアンダーカット嵌合11によって係止されている。容器本体2と蓋体3とをねじ嵌合によって係止する構成の場合、蓋体3の大きくねじ込めば、シール部6を容器本体2の口部2aにより強く密着させることができる。すなわち、容器本体2と蓋体3とをねじ嵌合によって係止する構成の場合、蓋体3の深くねじ込めば、容器本体2の口部2aをより密に閉じることができる。これに対し、アンダーカット嵌合11によって容器本体2と蓋体3とを係止する構成の場合、蓋体3を閉じたときにシール部6を容器本体2の口部2aに密着させるために生じる力は一定のままで増加しない。このため、容器本体2と蓋体3とをアンダーカット嵌合させる構成に用いられるシール部6は、そのシール性をより向上させるためには、容器本体2と蓋体3とをねじ嵌合させる構成に用いられるシール部に比べて、より高い精度が求められる。したがって、密閉容器1のように、容器本体2と蓋体3とをアンダーカット嵌合させる構成の密閉容器に対して、本発明を採用すれば、そのシール性をより向上させるため、容器本体2の口部2aをより密に閉じることができる点で有効である。
【0032】
図10および11には、密閉容器1を収納可能なコンパクト容器の一例を示す。図中、符号100は、化粧品を使用するためのコンパクト容器である。コンパクト容器100は、容器本体101と、蓋体103とを有している。容器本体101と、蓋体103とは、ヒンジ(図示省略)を介して開閉可能に連結されている。この例では、ヒンジは、図面の紙面裏側に配置されている。コンパクト容器100の内部には、密閉容器1と、化粧道具105(この例では、パフ)とを収容する収容空間が形成されている。この例では、容器本体2の内部に配置された中枠102によって、密閉容器1を配置する領域(図10参照。)と、化粧道具105を配置する領域(図11参照。)とに仕切られている。蓋体3の裏面には、鏡104が取り付けられている。
【0033】
(蓋体の製造方法)
次に、容器本体2の口部2aを密に閉じる蓋体3を得るための、本発明の一実施形態に係る、蓋体の製造方法について説明をする。この蓋体の製造方法では、1次インサート材をインサート品として蓋本体5を射出成形する、1次成形ステップと、前記1次成形ステップの後、1次インサート材を有する蓋本体5をインサート品として、前記1次インサート材を取り囲むように周方向に連続して延びる環状のシール部6を射出成形する、2次成形ステップと、を含む。
【0034】
本実施形態では、1次成形ステップにおいて、1次インサート材は、含浸体9である。本実施形態では、蓋本体5を射出成形するための成形型の内部に、インサート品として、含浸体9を配置する。次いで、成形型の内部に蓋本体5を形成するための樹脂材料を供給する。これによって、蓋体3を形成するための1次成形品として、含浸体9が天壁5aの裏面5fに露出するように埋設された蓋本体5を得ることができる。
【0035】
次いで、本実施形態では、2次成形ステップにおいて、シール部6を射出成型するための成形型の内部に、インサート品として、前記1次成形品を配置する。前記1次成形品は、1次成形ステップにおいて成形された、含浸体9を有する蓋本体5である。次いで、成形型の内部にシール部6を形成するための樹脂材料を供給する。これによって、蓋本体5の裏面5fに、含浸体9を取り囲むように周方向に連続して延びる環状のシール部6が射出成形された、蓋体3を得ることができる。
【0036】
本実施形態に係る、蓋体の製造方法は、ウェルド、気泡および白化の発生が抑制されたシール部6を有する蓋体3を得るための、蓋体の製造方法に適している。したがって、本実施形態に係る、蓋体の製造方法によれば、蓋本体5をインサート品として当該蓋本体5の裏面5fにシール部6をインサート成形するときに、ウェルド、気泡および白化の発生が抑制されたシール部6を射出成型することができる。
【0037】
上述したところは、本発明の一実施形態について説明を行ったにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、ゲート位置Gと凹部8との位置関係は、平面視において、軸線Оを挟んで対向する位置であれば、形成される周方向位置はY軸の軸線上に限られず、いずれの位置にあっても良い。密閉容器1は、コンパクト容器用のレフィル容器として説明したが、密閉容器1単体で使用することができる。また、密閉容器1の内部構造、容器本体2および蓋体3の構造(蓋本体5およびシール部6の構造を含む。)も。密閉容器1の構造に限定されない。
【符号の説明】
【0038】
1:密閉容器, 2:容器本体, 3:蓋体, 5:蓋本体, 5a:天壁, 5f:天壁の裏面,5b:周壁, 6:シール部, 4:ヒンジ, 4a:ピン, 4b:ピン支持部, 7:窪み, 8:凹部, 8a:凹部の底面, 9:含浸体, 11:アンダーカット嵌合, 11a:第1突起、 11b:第3突起, 12:摘み, 13:位置決め穴, 100:コンパクト容器, 101:容器本体, 102:中枠, 103;蓋体, 104:鏡, 105:化粧道具, G:ゲート位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11