(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241202BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20241202BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20241202BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
F16H57/04 G
F16H57/031
F16H1/28
F16H48/08
(21)【出願番号】P 2023137585
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2021575653の分割
【原出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2020018993
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】安井 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 隆義
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-171767(JP,A)
【文献】特開2004-260898(JP,A)
【文献】特開平5-96959(JP,A)
【文献】特開昭62-278371(JP,A)
【文献】実開昭62-18499(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 57/031
F16H 1/28
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの下流に接続
され且つオイルにより潤滑される歯車機構と、
ボックスと、を有し、
前記ボックス
は、前記歯車機構の外周を覆う壁部と、前記壁部の外周を覆うジャケット部と、を有し、
前記壁部と前記ジャケット部との間に、導入口を介して冷却液が導入され且つ排出口を介して前記冷却液が排出される弧状部分を有する冷却室が形成され、
前記冷却室内部において、前記導入口から離れるように軸方向に突出するスペーサが設けられており、
前記スペーサの軸方向側の先端は前記冷却室内部における軸方向側の壁と隙間を空けて対向し、
軸方向から見たとき、前記冷却室の前記弧状部分に沿うように構成された弧状の形状の部分を有する前記スペーサを周方向において挟むように前記導入口と前記排出口とが配置されている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
プレートを有し、
前記プレートは、前記壁部の内周を、前記歯車機構が配置された第1スペースと、前記歯車機構が配置されていない第2スペースと、に区分し、
径方向から見たとき、前記冷却室は、前記第2スペースと重なる部分を有する、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記冷却室は、前記壁部の下部に隣接して形成されている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、傘歯車式の差動機構と、遊星歯車機構を有する電気自動車用の動力伝達装置が開示されている。
この遊星歯車機構は、ラージピニオンギアとスモールピニオンギアとを有するステップドピニオンギアを、備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力伝達装置において、構成部品に供給される潤滑用のオイルの冷却効率を高めることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における動力伝達装置は、
モータと、
前記モータの下流に接続され且つオイルにより潤滑される歯車機構と、
ボックスと、を有し、
前記ボックスは、前記歯車機構の外周を覆う壁部と、前記壁部の外周を覆うジャケット部と、を有し、
前記壁部と前記ジャケット部との間に、導入口を介して冷却液が導入され且つ排出口を介して前記冷却液が排出される弧状部分を有する冷却室が形成され、
前記冷却室内部において、前記導入口から離れるように軸方向に突出するスペーサが設けられており、
前記スペーサの軸方向側の先端は前記冷却室内部における軸方向側の壁と隙間を空けて対向し、
軸方向から見たとき、前記冷却室の前記弧状部分に沿うように構成された弧状の形状の部分を有する前記スペーサを周方向において挟むように前記導入口と前記排出口とが配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、オイルの冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】動力伝達装置の遊星減速ギア周りの拡大図である。
【
図4】動力伝達装置の差動機構周りの拡大図である。
【
図6】動力伝達装置の差動機構の分解斜視図である。
【
図13】第4ボックスの下部の、冷却室周りの拡大図である。
【
図14】冷却室を第4ボックスの周壁部側から視た図である。
【
図15】冷却室の蓋部を取り外した状態を示す図である。
【
図18】スペーサの蓋部への組み付けを説明する図である。
【
図19】冷却室における冷却液の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明するスケルトン図である。
図2は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する断面の模式図である。
図3は、動力伝達装置1の遊星減速ギア4周りの拡大図である。
図4は、動力伝達装置1の差動機構5周りの拡大図である。
【0009】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動機構5に入力する遊星減速ギア4(減速機構)と、を有する。動力伝達装置1は、また、ドライブシャフトDA、DBと、パークロック機構3と、を有する。
動力伝達装置1では、モータ2の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、パークロック機構3と、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。ドライブシャフトDA、DBの軸線は、モータ2の回転軸Xと同軸である。
【0010】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフトDA、DBを介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。差動機構5は、遊星減速ギア4の下流に接続されている。ドライブシャフトDA、DBは、差動機構5の下流に接続されている。
【0011】
図2に示すように、動力伝達装置1の本体ボックス10は、モータ2を収容する第1ボックス11と、第1ボックス11に外挿される第2ボックス12と、を有する。本体ボックス10は、また、第1ボックス11に組み付けられる第3ボックス13と、第2ボックス12に組み付けられる第4ボックス14と、を有する。
【0012】
第1ボックス11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
第1ボックス11は、支持壁部111をモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられている。モータ2は、支持壁部111の内側に収容される。
【0013】
接合部112は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。接合部112は、支持壁部111よりも大きい外径で形成されている。
【0014】
第2ボックス12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
周壁部121は、第1ボックス11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ボックス11と第2ボックス12は、第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0015】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ボックス11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
第1ボックス11では、支持壁部111の外周に複数の凹溝111bが設けられている。複数の凹溝111bは、回転軸X方向に間隔をあけて設けられている。凹溝111bの各々は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121が外挿される。凹溝111bの開口が周壁部121で閉じられている。支持壁部111と周壁部121との間に、冷却液CLが通流する複数の冷却路CPが形成される。
【0016】
冷却液CLの導入口124aが、周壁部121の接合部122側に設けられている。冷却液CLの排出口124bが、周壁部121の接合部123側に設けられている。導入口124aおよび排出口124bは、周壁部121を回転軸Xの径方向に貫通する孔である。導入口124aおよび排出口124bのそれぞれに、冷却液CLが通流する配管(不図示)が接続している。冷却液CLは、ウォーターポンプ(不図示)によって車両内部に配設された配管(不図示)を循環している。冷却液CLは、導入口124aから冷却路CPに導入されてモータ2を冷却する。冷却液CLは、モータ2の冷却後、排出口124bから排出される。冷却液CLは、配管(不図示)を通って、後記する第4ボックス14に設けられた冷却室CRに導入される。
【0017】
第1ボックス11の支持壁部111の外周では、凹溝111bが設けられた領域の両側に、リング溝111c、111cが形成されている。リング溝111c、111cには、シールリング113、113が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング113は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0018】
第2ボックス12の他端121bには、内径側に延びる壁部120が設けられている。壁部120は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフトDAが挿通する開口120aが開口している。
壁部120では、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲む筒状のモータ支持部125が設けられている。
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0019】
第2ボックス12の周壁部121は、動力伝達装置1の車両への搭載状態を基準とした鉛直線方向の下側の領域において、径方向の厚みが、上側の領域よりも厚くなっている。
この径方向の厚みが厚い領域には、回転軸X方向に貫通してオイル溜り部128が設けられている。
オイル溜り部128は、連通孔112aを介して、第3ボックス13の接合部132に設けた軸方向油路138に連絡している。連通孔112aは、第1ボックス11の接合部112に設けられている。
【0020】
第3ボックス13は、回転軸Xに直交する壁部130を有している。壁部130の外周部には、回転軸X方向から見てリング状を成す接合部132が設けられている。
第1ボックス11から見て第3ボックス13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。第3ボックス13の接合部132は、第1ボックス11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。第3ボックス13と第1ボックス11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ボックス11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、第3ボックス13で塞がれている。
【0021】
第3ボックス13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフトDAの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフトDAの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフトDAの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ボックス11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフトDAがベアリングB4を介して支持されている。
【0022】
周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)には、モータ支持部135が設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xを間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と第3ボックス13の壁部130とを接続している。
【0023】
モータ支持部135は、接続壁136を介して第3ボックス13で支持されている。モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
ベアリングB1と隣り合う位置には、リップシールRSが設けられている。
【0024】
第3ボックス13では、接続壁136の内周に、後記する油孔136aが開口している。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)に、油孔136aからオイルOLが流入するようになっている。リップシールRSは、接続壁136内のオイルOLのモータ2側への流入を阻止するために設けられている。
【0025】
第4ボックス14は、遊星減速ギア4と差動機構5の外周を囲む周壁部141と、周壁部141における第2ボックス12側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。第4ボックス14は、歯車機構である遊星減速ギア4および差動機構5を収容するボックスとして機能する。
第4ボックス14は、第2ボックス12から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。第4ボックス14の接合部142は、第2ボックス12の接合部123に回転軸X方向から接合されている。第4ボックス14と第2ボックス12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0026】
動力伝達装置1の本体ボックス10の内部には、モータ2を収容するモータ室Saと、遊星減速ギア4と差動機構5を収容するギア室Sb(第1室)とが形成されている。
モータ室Saは、第1ボックス11の内側で、第2ボックス12の壁部120と、第3ボックス13の壁部130との間に形成されている。
ギア室Sbは、第4ボックス14の内径側で、第2ボックス12の壁部120と、第4ボックス14の周壁部141との間に形成されている。
【0027】
ギア室Sbの内部には、プレート部材8が設けられている。
プレート部材8は、第4ボックス14にボルトBで固定されている。
プレート部材8は、ギア室Sbを、遊星減速ギア4と差動機構5を収容する第1ギア室Sb1と、パークロック機構3を収容する第2ギア室Sb2とに区画している。
回転軸X方向において第2ギア室Sb2は、第1ギア室Sb1と、モータ室Saとの間に位置している。
【0028】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔を空けて囲むステータコア25とを、有する。
【0029】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、第3ボックス13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側に位置するベアリングB1は、第2ボックス12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0030】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0031】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0032】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ボックス11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、支持壁部111の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252と、を有している。
【0033】
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用している。ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0034】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0035】
第2ボックス12の壁部120(モータ支持部125)には、開口120aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、第4ボックス14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、第4ボックス14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0036】
図3に示すように、モータシャフト20では、第4ボックス14内に位置する領域に、段部201が設けられている。段部201は、モータ支持部125の近傍に位置している。段部201とベアリングB1との間の領域の外周には、モータ支持部125の内周に支持されたリップシールRSが当接している。
リップシールRSは、モータ2を収容するモータ室Saと、第4ボックス14内のギア室Sbとを区画している。
【0037】
第4ボックス14の内径側には、遊星減速ギア4と差動機構5を潤滑するためのオイルOLが封入されている(
図2参照)。
リップシールRSは、モータ室SaへのオイルOLの流入を阻止するために設けられている。
【0038】
図3に示すように、モータシャフト20では、段部201から他端20bの近傍までの領域が、外周にスプラインが設けられた嵌合部202となっている。
嵌合部202の外周には、パークギア30とサンギア41がスプライン嵌合している。
【0039】
パークギア30は、当該パークギア30の一方の側面が、段部201に当接している(図中、右側)。パークギア30の他方の側面に、サンギア41の円筒状の基部410の一端410aが当接している(図中、左側)。
基部410の他端410bには、モータシャフト20の他端20bに螺合したナットNが、回転軸X方向から圧接している。
サンギア41とパークギア30は、ナットNと段部201との間に挟み込まれた状態で、モータシャフト20に対して相対回転不能に設けられている。
【0040】
サンギア41は、モータシャフト20の他端20b側の外周に、歯部411を有している。歯部411の外周には、段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0041】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432とを有している。
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432が、回転軸Xに平行な軸線X1方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
大径歯車部431は、小径歯車部432の外径R2よりも大きい外径R1で形成されている。
段付きピニオンギア43は、軸線X1に沿う向きで設けられている。この状態において、大径歯車部431はモータ2側(図中、右側)に位置している。
【0042】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔を空けて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、径方向外側に突出する複数の係合歯421が設けられている。複数の係合歯421は、回転軸X周りの周方向に互いに間隔を空けて複数設けられている。
リングギア42は、外周に設けた係合歯421を、第4ボックス14の支持壁部146に設けた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0043】
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432の内径側を軸線X1方向に貫通した貫通孔430を有している。
段付きピニオンギア43は、貫通孔430を貫通したピニオン軸44の外周で、ニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0044】
ピニオン軸44の外周では、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBと、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBとの間には、中間スペーサMSが介在している。
【0045】
図4に示すように、ピニオン軸44の内部には、軸内油路440が設けられている。軸内油路440は、軸線X1に沿ってピニオン軸44の一端44aから、他端44bまで貫通している。
ピニオン軸44には、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させる油孔442、443が設けられている。
【0046】
油孔443は、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。
油孔442は、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。ピニオン軸44において油孔443、442は、段付きピニオンギア43が外挿された領域内に開口している。
【0047】
さらに、ピニオン軸44には、オイルOLを軸内油路440に導入するための導入路441が設けられている。
ピニオン軸44の外周において導入路441は、後記する第2ケース部7の支持孔71a内に位置する領域に開口している。導入路441は、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させている。
【0048】
支持孔71aの内周には、ケース内油路781が開口している。ケース内油路781は、第2ケース部7の基部71から突出するガイド部78の外周と、支持孔71aとを連通させている。
軸線X1に沿う断面視においてケース内油路781は、軸線X1に対して傾斜している。ケース内油路781は、回転軸X側に向かうにつれて、基部71に設けたスリット710に近づく向きで傾斜している。
【0049】
ケース内油路781には、後記するデフケース50が掻き上げたオイルOLが流入する。ケース内油路781には、また、デフケース50の回転による遠心力で外径側に移動するオイルOLが流入する。
ケース内油路781から導入路441に流入したオイルOLは、ピニオン軸44の軸内油路440に流入する。軸内油路440に流入したオイルOLは、油孔442、443から径方向外側に排出される。油孔442、443から排出されたオイルOLは、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。
【0050】
ピニオン軸44では、導入路441が設けられた領域よりも他端44b側に、貫通孔444が設けられている。貫通孔444は、ピニオン軸44を直径線方向に貫通している。
ピニオン軸44は、貫通孔444と、後記する第2ケース部7側の挿入穴782との軸線X1回りの位相を合わせて設けられている。挿入穴782に挿入された位置決めピンPが、ピニオン軸44の貫通孔444を貫通する。これによって、ピニオン軸44は、軸線X1回りの回転が規制された状態で、第2ケース部7側で支持される。
【0051】
図4に示すように、ピニオン軸44の長手方向の一端44a側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第1軸部445となっている。第1軸部445は、デフケース50の第1ケース部6に設けた支持孔61aで支持されている。
ピニオン軸44の長手方向の他端44b側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第2軸部446となっている。第2軸部446は、デフケース50の第2ケース部7に設けた支持孔71aで支持されている。
【0052】
ここで、第1軸部445は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない一端44a側の領域を意味する。第2軸部446は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない他端44b側の領域を意味する。
ピニオン軸44では、第1軸部445よりも第2軸部446のほうが、軸線X1方向の長さが長くなっている。
【0053】
以下、差動機構5の主要構成を説明する。
図5は、差動機構5のデフケース50周りの斜視図である。
図6は、差動機構5のデフケース50周りの分解斜視図である。
図4から
図6に示すように、差動機構5のデフケース50は、第1ケース部6と第2ケース部7を回転軸X方向で組み付けて形成される。本実施形態では、デフケース50の第1ケース部6と第2ケース部7が、遊星減速ギア4のピニオン軸44を支持するキャリアとしての機能を有している。
【0054】
図6に示すように、デフケース50の、第1ケース部6と第2ケース部7との間に、ピニオンメートシャフト51と、ピニオンメートギア52が配置される。3つのピニオンメートギア52と、3つのピニオンメートシャフト51と、が設けられている。
ピニオンメートシャフト51は、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。
ピニオンメートシャフト51の各々の内径側の端部は、共通の連結部510に連結されている。
【0055】
ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51の各々に1つずつ外挿されている。ピニオンメートギア52の各々は、回転軸Xの径方向外側から、連結部510に接触している。
この状態においてピニオンメートギア52の各々は、ピニオンメートシャフト51で回転可能に支持されている。
【0056】
図4に示すように、ピニオンメートシャフト51には、球面状ワッシャ53が外挿されている。球面状ワッシャ53は、ピニオンメートギア52の球面状の外周に接触している。
【0057】
デフケース50では、回転軸X方向における連結部510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54Aは第1ケース部6で回転可能に支持される。サイドギア54Bは、第2ケース部7で回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。
【0058】
図6に示すように、第1ケース部6は、リング状の基部61を有している。基部61は、回転軸X方向に厚みW61を有する板状部材である。
図4に示すように、基部61の中央部には、開口60が設けられている。基部61における第2ケース部7とは反対側(図中、右側)の面には、開口60を囲む筒壁部611が設けられている。筒壁部611の外周は、ベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている。
【0059】
図6に示すように、基部61における第2ケース部7側の面には、第2ケース部7側に延びる3つの連結梁62が設けられている。
連結梁62は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている。連結梁62は、基部61に対して直交する基部63と、基部63よりも幅広の連結部64と、を有している。
【0060】
図4に示すように、連結部64の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝65が設けられている。
連結部64の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う形状で円弧部641が形成されている。
ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して円弧部641に支持される。
【0061】
連結梁62の、基部63と連結部64との境界部にギア支持部66が接続されている。ギア支持部66は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。ギア支持部66の中央部に貫通孔660が形成されている。
【0062】
ギア支持部66の、基部61とは反対側(図中、左側)の面に、貫通孔660を囲む凹部661が設けられている。凹部661には、サイドギア54Aの裏面を支持するリング状のワッシャ55が収容される。
サイドギア54Aの裏面には、円筒状の筒壁部541設けられており、ワッシャ55は筒壁部541に外挿されている。
【0063】
図6に示すように、基部61の連結梁62、62は、回転軸X周りの周方向で間隔を空けて配置されている。連結梁62、62の間の領域に、ピニオン軸44の支持孔61aが開口している。
基部61には、支持孔61aを囲むボス部616が設けられている。
図3に示すように、ボス部616には、ピニオン軸44に外挿されたワッシャWcが、回転軸X方向から接触する。
【0064】
図6に示すように、基部61の、中央の開口60からボス部616までの範囲に、油溝617が設けられている。油溝617は、ボス部616に近づくにつれて、回転軸X周りの周方向の幅が狭くなる先細り形状で形成されている。油溝617は、ボス部616に設けた油溝618に連絡している。
【0065】
連結部64では、支持溝65の両側に、ボルト穴67、67が設けられている。
第1ケース部6の連結部64には、第2ケース部7側の連結部74が回転軸X方向から接合される。ボルト穴67、67には、第2ケース部7側の連結部74を貫通したボルトB(
図5参照)が螺入される。第1ケース部6と第2ケース部7は、ボルトBによって互いに接合される。
【0066】
図6に示すように、第2ケース部7は、リング状の基部71を有している。
図4に示すように、基部71は、回転軸X方向に厚みW71を有する板状部材である。
基部71の中央部には、基部71を厚み方向に貫通する貫通孔70が設けられている。
基部71における第1ケース部6とは反対側(図中、左側)の面には、貫通孔70を囲む筒壁部72と、筒壁部72を間隔を空けて囲む周壁部73が設けられている。
周壁部73の先端には、回転軸X側に突出する突起部73aが設けられている。突起部73aは、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
【0067】
図6に示すように、周壁部73の外径側には、ピニオン軸44の3つの支持孔71aが開口している。3つの支持孔71aは、回転軸X周りの周方向に互いに間隔を空けて配置されている。
周壁部73の内径側には、基部71を厚み方向に貫通する3つのスリット710が設けられている。
回転軸X方向から見てスリット710は、周壁部73の内周に沿う弧状を成している。スリット710は、回転軸X周りの周方向に所定の角度範囲で形成されている。
【0068】
第2ケース部7においてスリット710は、回転軸X周りの周方向に互いに間隔を空けて配置されている。スリット710の各々は、支持孔71aの内径側を、回転軸X周りの周方向に横切って設けられている。
【0069】
回転軸X周りの周方向で隣り合うスリット710、710の間には、第1ケース部6から離れる方向に突出した3つの突出壁711が設けられている。突出壁711は、回転軸Xの径方向に沿って直線状に延びている。突出壁711は、外径側の周壁部73と内径側の筒壁部72とに跨がって設けられている。
【0070】
3つの突出壁711は、回転軸X周りの周方向に互いに間隔を空けて配置されている。突出壁711は、スリット710に対して、回転軸X周りの周方向に大凡45度位相をずらして設けられている。
【0071】
周壁部73の外径側では、回転軸X周りの周方向で隣り合う支持孔71a、71aの間に、第1ケース部6側に窪んだボルト収容部76、76が設けられている。
ボルト収容部76の内側には、ボルトの挿通孔77が開口している。挿通孔77は、基部71を厚み方向(回転軸X方向)に貫通している。
【0072】
図4に示すように、基部71における第1ケース部6側(図中、右側)の面には、第1ケース部6側に突出する連結部74が設けられている。
連結部74は、第1ケース部6側の連結梁62と同数設けられている。
【0073】
連結部74の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝75が設けられている。
【0074】
連結部74の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う円弧部741が設けられている。
円弧部741では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される。
第2ケース部7では、基部71の表面71bに、サイドギア54Bの裏面を支持するリング状のワッシャ55が載置される。サイドギア54Bの裏面には、円筒状の筒壁部540が設けられている。ワッシャ55は筒壁部540に外挿されている。
【0075】
第2ケース部7の基部71には、ガイド部78が設けられている。ガイド部78は、第1ケース部6側(図中右側)に突出している。ガイド部78は、第1ケース部6のボス部616(
図6参照)と同数設けられている。
【0076】
図4に示すように、軸線X1に沿う断面視において、ガイド部78の支持孔71aには、第1ケース部6側からピニオン軸44が挿入される。ピニオン軸44は、位置決めピンPにより、軸線X1回りの回転が規制された状態で位置決めされている。
この状態において、ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43の小径歯車部432が、ワッシャWcを間に挟んで、軸線X1方向からガイド部78に当接している。
【0077】
デフケース50では、第2ケース部7の筒壁部72に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部72に外挿されたベアリングB2は、第4ボックス14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部72は、ベアリングB2を介して、第4ボックス14で回転可能に支持されている。
【0078】
支持部145には、第4ボックス14の開口部145aを貫通したドライブシャフトDBが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフトDBは、支持部145で回転可能に支持されている。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフトDBに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0079】
図2に示すように、デフケース50の第1ケース部6は、筒壁部611に外挿されたベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている。
第1ケース部6の内部には、第3ボックス13の挿通孔130aを貫通したドライブシャフトDAが、回転軸X方向から挿入されている。
ドライブシャフトDAは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0080】
図4に示すように、デフケース50の内部では、ドライブシャフトDA、DBの先端部の外周に、サイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54BとドライブシャフトDA、DBとが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0081】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されている。サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の連結部510が位置している。
本実施形態では、3つのピニオンメートシャフト51が、連結部510から径方向外側に延びている。ピニオンメートシャフト51の各々に、ピニオンメートギア52が支持されている。ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0082】
図2において太線で示しているが、第4ボックス14のギア室Sbの下部には、潤滑用のオイルOLを貯留するオイル貯留部OPが形成されている。デフケース50の下部側は、オイル貯留部OP内に位置している。
【0083】
本実施形態では、連結梁62が最も下側に位置した際に、連結梁62がオイル貯留部OP内に位置する高さまで、オイルOLが貯留されている。
オイル貯留部OPのオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
【0084】
図7から
図12は、オイルキャッチ部15を説明する図である。
図7は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。
図8は、
図7に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図9は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図であって、デフケース50を配置した状態を示した図である。
図10は、
図9に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図11は、
図9におけるA-A断面の模式図である。
図12は、動力伝達装置1を上方から見た場合におけるオイルキャッチ部15と、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)との位置関係を説明する模式図である。
なお、
図7および
図9では、第4ボックス14の接合部142と、支持壁部146の位置を明確にするために、ハッチングを付して示している。
図7および
図9における鉛直線VLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした鉛直線VLである。回転軸X方向から見て鉛直線VLは、回転軸Xと直交している。また、水平線HLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした水平線HLである。回転軸X方向から見て水平線HLは、回転軸Xおよび鉛直線VLと直交している。
【0085】
図7に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には、中央の開口部145aを間隔を空けて囲む支持壁部146が設けられている。支持壁部146の内側(回転軸X)側が、デフケース50の収容部140となっている。
第4ボックス14内の上部には、オイルキャッチ部15の空間と、ブリーザ室16の空間が形成されている。
【0086】
第4ボックス14の支持壁部146では、鉛直線VLと交差する領域に、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる連通口147が設けられている。
【0087】
オイルキャッチ部15とブリーザ室16は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、それぞれ位置している。
オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転中心(回転軸X)を通る鉛直線VLからオフセットした位置に配置されている。
図12に示すように、上方からオイルキャッチ部15を見ると、オイルキャッチ部15は、デフケース50の真上からオフセットした位置に配置されている。
【0088】
図8に示すように、オイルキャッチ部15は、支持壁部146よりも紙面奥側まで及んで形成されている。オイルキャッチ部15の下縁には、紙面手前側に突出して支持台部151(棚部)が設けられている。支持台部151は、支持壁部146よりも紙面手前側であって、第4ボックス14の接合部142よりも紙面奥側までの範囲に設けられている。
【0089】
図7に示すように、回転軸X方向から見て、オイルキャッチ部15の鉛直線VL側(図中、右側)には、連通口147が、支持壁部146の一部を切り欠いて形成されている。連通口147は、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる。
回転軸X方向から見て連通口147は、鉛直線VLをブリーザ室16側(図中、右側)から、オイルキャッチ部15側(図中、左側)に横切る範囲に設けられている。
【0090】
図9に示すように、本実施形態では、動力伝達装置1を搭載した車両の前進走行時に、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
そのため、オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。そして、連通口147の周方向の幅は、鉛直線VLを挟んだ左側のほうが、右側よりも広くなっている。鉛直線VLを挟んだ左側は、デフケース50の回転方向における下流側であり、右側が上流側である。これにより、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入できるようになっている。
【0091】
さらに、
図12に示すように、前記したピニオン軸44の第2軸部446の回転軌道の外周位置と、大径歯車部431の回転軌道の外周位置は、回転軸Xの径方向でオフセットしている。第2軸部446の回転軌道の外周位置のほうが、大径歯車部431の回転軌道の外周位置よりも内径側に位置している。
そのため、第2軸部446の外径側に空間的な余裕がある。この空間を利用して、オイルキャッチ部15を設けることで、本体ボックス10内の空間スペースの有効利用が可能となっている。
【0092】
図12に示すように、第2軸部446は、モータ2から見て小径歯車部432の奥側に突出している。第2軸部446の周辺部材(例えば、第2軸部446を支持するデフケース50のガイド部78)が、オイルキャッチ部15に近接した位置になる。
よって、当該周辺部材からオイルキャッチ部15へのオイルOL(潤滑油)の供給をスムーズに行うことができる。
【0093】
図8に示すように、支持台部151の奥側には、油孔151aの外径側の端部が開口している。油孔151aは、第4ボックス14内を内径側に延びている。油孔151aの内径側の端部は、支持部145の内周に開口している。
図2に示すように、支持部145において油孔151aの内径側の端部は、リップシールRSとベアリングB2との間に開口している。
【0094】
図10および
図12に示すように、支持台部151には、オイルガイド152が載置されている。
オイルガイド152は、キャッチ部153と、キャッチ部153から第1ボックス11側(
図10における紙面手前側)に延びるガイド部154とを有している。
【0095】
図12に示すように、上方から見て支持台部151は、回転軸Xの径方向外側で、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)の一部に重なる位置に、段付きピニオンギア43(大径歯車部431)との干渉を避けて設けられている。
回転軸Xの径方向から見て、キャッチ部153は、ピニオン軸44の第2軸部446と重なる位置に設けられている。さらにガイド部154は、ピニオン軸44の第1軸部445と大径歯車部431と重なる位置に設けられている。
【0096】
そのため、デフケース50が回転軸X回りに回転する際に、デフケース50で掻き上げられたオイルOLが、キャッチ部153とガイド部154側に向けて移動する。
【0097】
キャッチ部153の外周縁には、支持台部151から離れる方向(上方向)に延びる壁部153aが設けられている。回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部が、オイルガイド152に貯留される。
【0098】
キャッチ部153の奥側(
図10における紙面奥側)では、壁部153aに切欠部155が設けられている。
切欠部155は、油孔151aに対向する領域に設けられている。キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部が、切欠部155の部分から油孔151aに向けて排出される。
【0099】
ガイド部154は、キャッチ部153から離れるにつれて下方に傾斜している。ガイド部154の幅方向の両側には、壁部154a、154aが設けられている。壁部154a、154aは、ガイド部154の長手方向の全長に亘って設けられている。壁部154a、154aは、キャッチ部153の外周を囲む壁部153aに接続する。
そのため、キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部が、ガイド部154側にも排出される。
【0100】
図11に示すように、ガイド部154は、デフケース50との干渉を避けた位置を、第2ボックス12側に延びている。ガイド部154の先端154bは、第2ボックス12の壁部120に設けた油孔126aに、回転軸X方向の隙間を空けて対向している。
壁部120の外周には、油孔126aを囲むボス部126が設けられている。ボス部126には、回転軸X方向から配管127の一端が嵌入している。
【0101】
配管127は、第2ボックス12の外側を通って第3ボックス13まで及んでいる。配管127の他端は、第3ボックス13の円筒状の接続壁136に設けた油孔136a(
図2参照)に連通している。
【0102】
回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルキャッチ部15に到達する。オイルOLはガイド部154と配管127を通って、接続壁136の内部空間Scに供給される。
【0103】
図2に示すように、第3ボックス13には、内部空間Scに連通する径方向油路137が設けられている。
径方向油路137は、内部空間Scから径方向下側に延びる。径方向油路137は、接合部132内に設けた軸方向油路138に連通する。
【0104】
軸方向油路138は、第1ボックス11の接合部112に設けた連通孔112aを介して、第2ボックス12の下部に設けたオイル溜り部128に連絡している。
オイル溜り部128は、周壁部121内を回転軸X方向に貫通している。オイル溜り部128は、第4ボックス14に設けたギア室Sbのオイル貯留部OPに連絡する。
【0105】
ギア室Sbでは、円板状のプレート部材8が、回転軸Xに直交する向きで設けられている。前記したようにプレート部材8(プレート)は、第4ボックス14内のギア室Sbを、デフケース50側の第1ギア室Sb1(第1スペース)と、モータ2側の第2ギア室Sb2(第2スペース)に区画している。
【0106】
第4ボックス14のギア室Sbの下部に、ギア室Sbに隣接して冷却室CR(第2室)が設けられている。
図13は、第4ボックス14の下部の、冷却室CR周りの拡大図である。
図14は、冷却室CRを第4ボックス14の周壁部141側(
図2の紙面左側)から視た図である。
図15は、冷却室CRの蓋部9を取り外した状態を示す図である。
図16は、冷却液CLの流れを説明する図である。
図17は、蓋部9の構成を示す図である。
図18は、スペーサ94の蓋部9への組み付けを説明する図である。
図19は、冷却室CRにおける冷却液CLの流れを説明する図である。
【0107】
図13に示すように、冷却室CRは、ジャケット部143および蓋部9を備える。冷却室CRの内部には冷却液CLが導入される。前記したように、ギア室Sbの下部にはオイル貯留部OPが形成されている。冷却室CRに導入された冷却液CLは、オイル貯留部OPに貯留されたオイルOLを冷却する。
【0108】
ジャケット部143は、支持壁部146の外周面を覆う壁部である。
図15に示すように、ジャケット部143は、回転軸X方向から視ると円筒形状の支持壁部146に沿った弧状を成している。ジャケット部143は、例えば、鋳造等によって、支持壁部146と一体的に形成することができる。
【0109】
図13に示すように、ジャケット部143は、回転軸X方向に沿って延びる。ジャケット部143の回転軸X方向の一端側に設けられた基端部143aが、第4ボックス14の下部において接合部142に接続している。基端部143aの対向端には後記する蓋部9との接合部143bが設けられている。
【0110】
ジャケット部143の内壁面143cは、支持壁部146の外周面に対して隙間を介して対向している。
図15に示すように、ジャケット部143と支持壁部146の間には、回転軸X方向から視て弧状の内部空間が画成される。この弧状の内部空間が冷却室CRの内部となる。また、ジャケット部143の接合部143bと支持壁部146の接合部146bによって、冷却室CRの開口部CRoが形成される。
【0111】
蓋部9は、冷却室CRの開口部CRoを閉止する。
図14に示すように、蓋部9は、回転軸X方向から視て弧状の板状部材である。
【0112】
蓋部9の回転軸Xの周方向における一端91aと他端91bの近傍には、それぞれ導入口92aおよび排出口92bが設けられている。導入口92aおよび排出口92bは、蓋部9を回転軸X方向に貫通する孔であり、それぞれに配管PIが接続している。
図16に示すように、蓋部9の導入口92aは、配管PIを介して冷却路CPの排出口124bに接続している。
【0113】
冷却液CLは、冷却路CP(
図2参照)の内部を通流してモータ2を冷却した後に、冷却路CPの排出口124bから排出される。冷却液CLは、配管PIを通って冷却室CRの導入口92aから冷却室CR内部に導入される。
【0114】
図16に示すように、冷却室CRに導入された冷却液CLが、冷却室CRの内部を流れる。これによって、冷却室CRを形成する支持壁部146(
図15参照)が冷やされる。ギア室Sb(
図13参照)の一部でもある支持壁部146が冷やされることによって、ギア室Sb内のオイル貯留部OPに貯留されているオイルOLが冷却される。
【0115】
図16に示すように、冷却室CRの内部を通流した冷却液CLは、排出口92bから排出される。排出された冷却液CLは、車両の内部に配設された配管(不図示)を通り、再び冷却路CPの導入口124a(
図2参照)に導入される。
【0116】
図13に示すように、蓋部9の端面93が、冷却室CRの内部に面する。端面93には、冷却室CRの内部に突出するスペーサ94が取り付けられている。
図17に示すように、スペーサ94は、蓋部9と同様に円弧状の部材である。スペーサ94は、蓋部9の導入口92aと排出口92bの間に取り付けられる。
図13に示すように、スペーサ94は、回転軸Xの径方向に厚みを有している。蓋部9とスペーサ94は、異なる素材で製造しても良い。蓋部9を例えば金属製とし、スペーサ94は例えば樹脂製としても良い。
【0117】
図18に示すように、スペーサ94には、スペーサ94を蓋部9に取り付けるための突起95が設けられている。蓋部9の端面93には、突起95を挿入可能な穴部93aが設けられている。蓋部9の穴部93aの内周面には、環状溝93bが形成されている。突起95は、穴部93aに対して軸線Y方向(一方向)に挿入可能な咬合部として機能する。突起95と対応する穴部93aの数と設置箇所は限定されないが、スペーサ94が蓋部9に安定して取り付けられるよう、複数設けても良い。
【0118】
突起95には、突起95の先端から基端に向かって、軸線Y方向に沿って切り込んだスリット95aが形成されている。スリット95aは、例えば、軸線Y回りの周方向に90°間隔で4つ形成することができる。
【0119】
スリット95aによって分割された突起95の先端には、それぞれ、軸線Yの径方向外方に突出する鉤部95bが形成されている。突起95は、穴部93aの内径αに整合する大きさに設定されている。鉤部95bは、穴部93aの内径αよりも大きく設定され、かつ穴部93aの環状溝93bに嵌入する大きさに設定されている。
【0120】
蓋部9を取り付ける際は、突起95を一方向、すなわち穴部93aの底部方向に押し込む。
図18では、突起95の動きを二点鎖線で示している。突起95の先端の鉤部95bが穴部93aに当たると、外周からの押圧力によって撓み、スリット95aの幅が収縮する。スリット95aの収縮によって鉤部95bの先端の外径が縮み、穴部93aの内径αに整合する大きさになると、突起95は穴部93aに挿入される。突起95の先端が環状溝93bまで到達すると、鉤部95bが環状溝93bに嵌入してスリット95aが元の幅に復元する。これによって、突起95は穴部93aに係合した状態となり、スペーサ94は蓋部9に取り付けられる。
なお、この取り付け態様はあくまで一例であり、ボルト固定等の他の取り付け方法によってもスペーサ94を蓋部9に取り付けることができる。
【0121】
図13に示すように、冷却室CRは、回転軸Xの径方向から視て、第1ギア室Sb1および第2ギア室Sb2に跨るように形成されている。第1ギア室Sb1は、冷却室CRの手前側(図中、左側)である開口部CRo側に位置する。第2ギア室Sb2は、開口部CRoから離れた、冷却室CRの奥側(図中、右側)に位置する。
【0122】
蓋部9が冷却室CRの開口部CRoを閉止した状態で、スペーサ94は冷却室CRの手前側(図中、左側)に位置している。スペーサ94は、回転軸Xの径方向に厚みを有することで、冷却室CRの手前側の容積を小さくする容積詰めとして作用する。
図19に破線で示すように、スペーサ94が無かった場合、導入口92aから排出口92bまでの冷却液CLの流れは、冷却室CRの手前側に留まりやすく、冷却室CRの奥側まで届きにくい。一方、実施の形態のように、スペーサ94がある場合、スペーサ94が冷却室CRの手前側で張り出す。これによって、一点鎖線で示すように、冷却液CLは冷却室CRの手前側だけでなく、奥側にも流れるように誘導される。すなわち、スペーサ94は、導入口92aから導入された冷却液CLを開口部CRoから離れる方向にガイドするガイド部材として機能する。
【0123】
図13に示すように、冷却室CRの手前側(図中、左側)の上部に位置する第1ギア室Sb1においては、オイルOLはデフケース50に掻き上げられるため、オイルOLの流れが激しい。一方、冷却室CRの奥側(図中、右側)の上部に位置する第2ギア室Sb2では、オイルOLの流れが比較的穏やかである。そこで、スペーサ94を設けて、冷却室CRの奥側に向かう冷却液CLの流れを形成することで、冷却液CLが、第2ギア室Sb2側のオイルOLをじっくりと冷却することが可能となる。これによって、オイル貯留部OPのオイルOL全体の冷却効率を向上することができる。
【0124】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。
【0125】
図2に示すように、モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0126】
図3に示すように、遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっている。段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0127】
サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、第4ボックス14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0128】
ここで、段付きピニオンギア43の、小径歯車部432の外径R2は、大径歯車部431の外径R1よりも小さくなっている(
図3参照)。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速される。減速された回転は、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0129】
そして、デフケース50が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフトDA、DBが回転軸X回りに回転する。これにより動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、W(
図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0130】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留するオイル貯留部OPが形成されている。オイル貯留部OPに貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。
【0131】
図9に示すように、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
第4ボックス14の上部には、オイルキャッチ部15が設けられている。オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。デフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入する。オイルOLは、オイルキャッチ部15内で支持台部151に載置されたオイルガイド152に供給される。
【0132】
このように、デフケース50によって掻き上げられたオイルOLの多くはオイルキャッチ部15に流入する。一部のオイルOLは、重力に従って落下し、オイル貯留部OPに戻って貯留される。
図13に示すように、オイル貯留部OPの下部には、冷却液CLが流れる冷却室CRが設けられている。デフケース50によって掻き上げられたオイルOLの温度は上昇するが、オイル貯留部OPに戻ったオイルOLは、冷却液CLとの熱交換によって冷却される。冷却されたオイルOLは、再びデフケース50に掻き上げられて潤滑に用いられる。
【0133】
オイル貯留部OPのオイルOLを冷却する冷却液CLは、冷却路CP(
図2参照)を流れた後に冷却室CRに導入される。すなわち、実施の形態は、モータ2の冷却に用いる冷却液CLを、オイルOLの冷却にも用いるため、オイルOLの冷却用に新たな冷却液CLを設ける必要が無い。また、実施の形態は、冷却の優先度が高いモータ2を、オイルOLよりも先に冷却することで、動力伝達装置1全体における好適な熱マネジメントを行うことができる。
【0134】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
モータ2と、
モータ2の下流に接続する遊星減速ギア4および差動機構5(歯車機構)と、
遊星減速ギア4および差動機構5を収容する第4ボックス14(ボックス)と、を有する。
第4ボックス14には、遊星減速ギア4、差動機構5及びオイルOLが収容されるギア室Sb(第1室)が形成される。
第4ボックス14には、ギア室Sbに隣接し且つ冷却液CLが導入される冷却室CR(第2室)が形成されている。
【0135】
第4ボックス14内には、遊星減速ギア4および差動機構5を収容するギア室Sbが形成される。ギア室Sb内には、遊星減速ギア4および差動機構5を潤滑するオイルOLが収容される。ギア室Sbに隣接して、冷却室CRが形成される。冷却室CR内に導入される冷却液CLによって、ギア室Sbと冷却室CRを区画する支持壁部146が冷やされる。冷やされた支持壁部146を利用して、ギア室Sb内のオイルOLを冷却することができる。実施の形態は、オイルOLの冷却効率を高めることができる。なお、第4ボックス14自体に冷却室CRを形成している。第4ボックス14とは別の部材を設けて支持壁部146を冷やす場合と比較して、冷却効率を高めることができ、且つ、動力伝達装置1のコンパクト化にもつながる。
【0136】
(2)冷却室CRは、ギア室Sbの下部に隣接して形成されている。
【0137】
オイルOLは、遊星減速ギア4によって攪拌された後、ギア室Sbの下部のオイル貯留部OPに貯留される。冷却室CRをギア室Sbの下部に隣接して形成することで、オイル貯留部OPのオイルOLを直接的に冷却することができるので冷却効率を高めることができる。
【0138】
(3)冷却室CRは、回転軸X方向(軸方向)から視たときに弧状の形状として構成されている。
冷却室CRを弧状とすることで、円筒状の第4ボックス14の支持壁部146に沿うように形成できるので動力伝達装置1の大型化を抑制することができる。
【0139】
(4)動力伝達装置1は、
冷却室CRの開口部CRoに取付けられる蓋部9を有する。
蓋部9は、冷却液CLの導入口92aと、冷却液CLの排出口92bと、を有する。
動力伝達装置1は、また、導入口92aから導入された冷却液CLを開口部CRoから離れる方向にガイドするスペーサ94(ガイド部材)を有する。
【0140】
冷却室CRの蓋部9に、冷却液CLの導入口92aと排出口92bを設けた場合、蓋部9の近傍に冷却液CLの流れができやすい。そこで、スペーサ94を設けて、冷却液CLを開口部CRoから離れた奥側に流れるように誘導することで、冷却効率を高めることができる。
【0141】
(5)動力伝達装置1は、
ギア室Sb内を、遊星減速ギア4および差動機構5が配置された第1ギア室Sb1(第1スペース)と、遊星減速ギア4が配置されていない第2ギア室Sb2(第2スペース)と、に区分するプレート部材8(プレート)を有する。
スペーサ94は、第1ギア室Sb1側から第2ギア室Sb2側に向かって冷却液CLをガイドする。
【0142】
遊星減速ギア4が設けられた第1ギア室Sb1ではオイルOLの流れが激しい。一方、遊星減速ギア4が設けられていない第2ギア室Sb2ではオイルOLの流れが比較的穏やかである。スペーサ94が第2ギア室Sb2側に向かう冷却液CLの流れを形成することで、第2ギア室Sb2側においてオイルOLをじっくりと冷却することが可能となり、冷却効率を向上することができる。
【0143】
(6)スペーサ94は、蓋部9に取付けられている。
これによって、蓋部9およびスペーサ94の開口部CRoへの組み付け工程を簡素化することができる。
【0144】
(7)スペーサ94は、軸線Y方向(一方向)に挿入可能な突起95(咬合部)が蓋部9に挿入されることにより、蓋部9に取付けられている。
これによって、スペーサ94を蓋部9に容易に取り付けることができ、組付け工程を簡素化することができる。
【0145】
(8)動力伝達装置1において、モータ2を冷却した冷却液CLが冷却室CRに導入される。
モータ2の冷却液CLをギア室SbのオイルOLの冷却にも用いることで、新たな冷却液CLを準備する必要が無い。また、モータ2を冷却した後に、ギア室SbのオイルOLを冷却する。これによって、モータ2を優先して冷却することができるので、動力伝達装置1全体としての熱マネジメントを好適に行うことができる。
【0146】
以上、本願発明の実施の形態を説明したが、本願発明は、これら実施の形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0147】
1:動力伝達装置
14:第4ボックス
146 :支持壁部
2:モータ
4:遊星減速ギア(歯車機構)
5:差動機構(歯車機構)
8:プレート部材(プレート)
9:蓋部
92a:導入口
92b:排出口
94:スペーサ(ガイド部材)
95:突起
CL:冷却液
CR:冷却室(第2室)
CRo:開口部
OL:オイル
Sb:ギア室(第1室)
Sb1:第1ギア室(第1スペース)
Sb2:第2ギア室(第2スペース)
X:回転軸
Y:軸線