(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】警告管理装置、警告管理方法、警告管理プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20241202BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241202BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2023528932
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2021023257
(87)【国際公開番号】W WO2022264423
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-07-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛知
(72)【発明者】
【氏名】高間 和志
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179257(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/059490(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/065809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて前記部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する取得部と、
前記基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから前記運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる制御部と
を備え、
前記運行情報は、前記無人搬送車が通過する運行経路を示す運行経路情報を含み、
前記制御部は、前記運行経路情報に基づき前記対象警告装置を選択する警告管理装置。
【請求項2】
前記運行情報は、前記運行経路における前記無人搬送車の位置に関する搬送車位置情報を含み、
前記制御部は、前記搬送車位置情報に基づき前記対象警告装置を選択する請求項
1に記載の警告管理装置。
【請求項3】
前記無人搬送車は、モータを有し、前記モータの駆動力によって運行を行い、
前記取得部は、前記無人搬送車の前記モータのエンコーダの出力を、前記搬送車位置情報として取得する請求項
2に記載の警告管理装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記無人搬送車の位置を検出する位置センサによる検出結果を、前記搬送車位置情報として取得する請求項
2に記載の警告管理装置。
【請求項5】
前記基板生産システムは、部品実装基板の生産のための前記基板への作業を分担する複数の部品実装関連機を備え、
前記取得部は、前記部品実装関連機に関する実装関連機情報を取得し、
前記制御部は、前記実装関連機情報と前記運行情報とに基づき前記対象警告装置を選択する請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の警告管理装置。
【請求項6】
前記実装関連機情報は、前記部品実装関連機への作業を実行可能な作業者の位置に関する作業者位置情報を含み、
前記制御部は、前記作業者位置情報と前記運行情報とに基づき前記対象警告装置を選択する請求項
5に記載の警告管理装置。
【請求項7】
基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて前記部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する取得部と、
前記基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから前記運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる制御部と
を備え、
前記基板生産システムは、部品実装基板の生産のための前記基板への作業を分担する複数の部品実装関連機を備え、
前記取得部は、前記部品実装関連機への作業を実行可能な作業者の位置に関する作業者位置情報を含む実装関連機情報を取得し、
前記制御部は、前記作業者位置情報と前記運行情報とに基づき前記対象警告装置を選択し、
前記部品実装関連機は、作業者による操作を受け付けるユーザインターフェースを有し、
前記作業者位置情報は、前記ユーザインターフェースが作業者によって操作されている前記部品実装関連機を示す警告管理装置。
【請求項8】
基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて前記部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する取得部と、
前記基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから前記運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる制御部と
を備え、
前記基板生産システムは、部品実装基板の生産のための前記基板への作業を分担する複数の部品実装関連機を備え、
前記取得部は、前記部品実装関連機への作業を実行可能な作業者の位置に関する作業者位置情報を含む実装関連機情報を取得し、
前記制御部は、前記作業者位置情報と前記運行情報とに基づき前記対象警告装置を選択し、
前記部品実装関連機は、作業者を検出する第1作業者センサを有し、
前記作業者位置情報は、前記第1作業者センサが作業者を検知している前記部品実装関連機を示す警告管理装置。
【請求項9】
基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて前記部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する取得部と、
前記基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから前記運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる制御部と
を備え、
前記基板生産システムは、部品実装基板の生産のための前記基板への作業を分担する複数の部品実装関連機を備え、
前記取得部は、前記部品実装関連機への作業を実行可能な作業者の位置に関する作業者位置情報を含む実装関連機情報を取得し、
前記制御部は、前記作業者位置情報と前記運行情報とに基づき前記対象警告装置を選択し、
前記作業者位置情報は、作業者によって携帯される通信機器と通信を行う前記部品実装関連機を示す警告管理装置。
【請求項10】
前記無人搬送車は、作業者の位置を検出する第2作業者センサを有し、
前記取得部は、前記第2作業者センサの検出結果を前記作業者位置情報として取得する請求項
6ないし9のいずれか一項に記載の警告管理装置。
【請求項11】
基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて前記部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する取得部と、
前記基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから前記運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる制御部と
を備え、
前記基板生産システムは、部品実装基板の生産のための前記基板への作業を分担する複数の部品実装関連機を備え、
前記取得部は、前記部品実装関連機の稼働状況に関する実装関連機稼働情報を含む実装関連機情報を取得し、
前記制御部は、前記実装関連機稼働情報と前記運行情報とに基づき前記対象警告装置を選択する警告管理装置。
【請求項12】
前記部品実装関連機は、エラーが発生した場合には、担当する基板への作業を停止する非常停止を実行し、
前記実装関連機稼働情報は、前記非常停止を実行する前記部品実装関連機を示す請求項
11に記載の警告管理装置。
【請求項13】
前記部品実装関連機は、開閉可能な扉を有し、
前記実装関連機稼働情報は、前記扉が開いている前記部品実装関連機を示す請求項
11または12に記載の警告管理装置。
【請求項14】
前記警告装置は、作業者の視覚あるいは触覚に作用することで警告を実行する請求項1ないし
13のいずれか一項に記載の警告管理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記無人搬送車の運行の許可の作業者への確認を前記対象警告装置に実行させ、作業者が前記無人搬送車の運行を許可した場合には前記無人搬送車の運行を継続する一方、作業者が前記無人搬送車の運行を許可しない場合には前記無人搬送車を停止させる請求項1ないし
14のいずれか一項に記載の警告管理装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記無人搬送車の位置の作業者への報知を、前記対象警告装置に実行させる請求項1ないし
15のいずれか一項に記載の警告管理装置。
【請求項17】
基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて前記部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する工程と、
前記基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから前記運行情報に基づき選択した対象警告装置に、前記無人搬送車の接近を作業者に報知する警告を
制御部が実行させる工程と
を備え
、
前記運行情報は、前記無人搬送車が通過する運行経路を示す運行経路情報を含み、
前記制御部は、前記運行経路情報に基づき前記対象警告装置を選択する警告管理方法。
【請求項18】
基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて前記部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する工程と、
前記基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから前記運行情報に基づき選択した対象警告装置に、前記無人搬送車の接近を作業者に報知する警告を実行させる工程と
を、コンピュータに実行させ
、
前記運行情報は、前記無人搬送車が通過する運行経路を示す運行経路情報を含み、
前記コンピュータ
は、前記運行経路情報に基づき前記対象警告装置を選択する警告管理プログラム。
【請求項19】
請求項
18に記載の警告管理プログラムを、コンピュータによって読取可能に記録する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて使用される警告装置による作業者への警告を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2では、作業者が存在する現場における無人搬送車(AGV)の運行を管理する技術が記載されている。具体的には、特許文献1では、作業者および無人搬送車との距離に応じて無人搬送車の走行を制御する技術が開示されている。また、特許文献2では、作業者が無人搬送車の走行領域内にいない場合には、障害物センサをオフにしつつ無人搬送車を高速で走行させる一方、作業者が無人搬送車の走行領域内にいる場合には、障害物センサをオンにしつつ無人搬送車を低速で走行させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-132348号公報
【文献】特開2000-187513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいては、部品実装基板の生産に使用される部品や当該部品を供給するフィーダ等の各種の部材を運搬する作業が発生する。そのため、このような部材を上記の無人搬送車に運搬させるといったことが考えられる。また、基板生産システムにおいて作業者と無人搬送車とが存在する場合には、基板生産システムに設けられた警告装置に警告を実行させることで、無人搬送車の存在を作業者に知らせることができる。ただし、かかる警告は、無人搬送車が接近する作業者に対して的確に行うことが求められる。なぜなら、警告は知覚したものの無人搬送車の接近が認められないといった経験を作業者が積み重ねた結果、作業者が警告に鈍感となり、警告の実効性が薄れてしまうおそれがあるからである。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて、無人搬送車が接近する作業者に対して警告を的確に行うことを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る警告管理装置は、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する取得部と、基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる制御部とを備える。
【0007】
本発明に係る警告管理方法は、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する工程と、基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる工程とを備える。
【0008】
本発明に係る警告管理プログラムは、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて部品実装基板の生産に使用される部材を運搬する無人搬送車の運行に関する情報である運行情報を取得する工程と、基板生産システムで使用される複数の警告装置のうちから運行情報に基づき選択した対象警告装置に警告を実行させる工程とを、コンピュータに実行させる。
【0009】
本発明に係る記録媒体は、上記の警告管理プログラムを、コンピュータによって読取可能に記録する。
【0010】
このように構成された本発明(警告管理装置、警告管理方法、警告管理プログラムおよび記録媒体)によれば、複数の警告装置が基板生産システムに設けられており、複数の警告装置のうちから、無人搬送車の運行に関する情報である運行情報に基づき選択された対象警告装置が警告を実行する。つまり、複数の警告装置のうち、無人搬送車の運行に応じた対象警告装置が選択的に警告を実行する。そのため、対象警告装置の近くに作業者がいる場合には、この作業者に対して的確に警告を行うことができる。こうして、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて、無人搬送車が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0011】
また、運行情報は、無人搬送車が通過する運行経路を示す運行経路情報を含み、制御部は、運行経路情報に基づき対象警告装置を選択するように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、無人搬送車の運行経路に応じて適切に選択された対象警告装置に警告を実行させることができる。その結果、無人搬送車が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0012】
また、運行情報は、運行経路における無人搬送車の位置に関する搬送車位置情報を含み、制御部は、搬送車位置情報に基づき対象警告装置を選択するように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、無人搬送車の位置に応じて適切に選択された対象警告装置に警告を実行させることができる。その結果、無人搬送車が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0013】
また、無人搬送車は、モータを有し、モータの駆動力によって運行を行い、取得部は、無人搬送車のモータのエンコーダの出力を、搬送車位置情報として取得するように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、無人搬送車のモータのエンコーダの出力によって、無人搬送車の位置を的確に取得することができる。
【0014】
また、取得部は、無人搬送車の位置を検出する位置センサによる検出結果を、搬送車位置情報として取得するように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、位置センサの検出結果によって、無人搬送車の位置を的確に取得することができる。
【0015】
また、基板生産システムは、部品実装基板の生産のための基板への作業を分担する複数の部品実装関連機を備え、取得部は、部品実装関連機に関する実装関連機情報を取得し、制御部は、実装関連機情報と運行情報とに基づき対象警告装置を選択するように、警告管理装置を構成してもよい。このように、部品実装関連機に関する実装関連機情報を併用することで、部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0016】
例えば、実装関連機情報は、部品実装関連機への作業を実行可能な作業者の位置に関する作業者位置情報を含み、制御部は、作業者位置情報と運行情報とに基づき対象警告装置を選択するように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、作業者の位置に関する作業者位置情報に基づき、作業者が近くにいる部品実装関連機を確認することができる。したがって、作業者位置情報と無人搬送車の運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0017】
また、部品実装関連機は、作業者による操作を受け付けるユーザインターフェースを有し、作業者位置情報は、ユーザインターフェースが作業者によって操作されている部品実装関連機を示すように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、ユーザインターフェースが作業者によって操作されている部品実装関連機を示す作業者位置情報に基づき、作業者が近くにいる部品実装関連機を確認することができる。したがって、作業者位置情報と無人搬送車の運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0018】
また、部品実装関連機は、作業者を検出する第1作業者センサを有し、作業者位置情報は、第1作業者センサが作業者を検知している部品実装関連機を示すように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、第1作業者センサが作業者を検知している部品実装関連機を示す作業者位置情報に基づき、作業者が近くにいる部品実装関連機を確認することができる。したがって、作業者位置情報と無人搬送車の運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0019】
また、作業者位置情報は、作業者によって携帯される通信機器と通信を行う部品実装関連機を示すように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、作業者によって携帯される通信機器と通信を行う部品実装関連機を示す作業者位置情報に基づき、作業者が近くにいる部品実装関連機を確認することができる。したがって、作業者位置情報と無人搬送車の運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0020】
また、無人搬送車は、作業者の位置を検出する第2作業者センサを有し、取得部は、第2作業者センサの検出結果を作業者位置情報として取得するように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、無人搬送車の第2作業者センサが検出した作業者の位置を示す作業者位置情報に基づき、作業者が近くにいる部品実装関連機を確認することができる。したがって、作業者位置情報と無人搬送車の運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0021】
また、実装関連機情報は、部品実装関連機の稼働状況に関する実装関連機稼働情報を含み、制御部は、実装関連機稼働情報と運行情報とに基づき対象警告装置を選択するように、警告管理装置を構成してもよい。つまり、部品実装関連機に対して作業を行う作業者と部品実装関連機との位置関係は、実装関連機稼働情報から推測することができる。したがって、実装関連機稼働情報と運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0022】
また、部品実装関連機は、エラーが発生した場合には、担当する基板への作業を停止する非常停止を実行し、実装関連機稼働情報は、非常停止を実行する部品実装関連機を示すように、警告管理装置を構成してもよい。つまり、非常停止を実行中の部品実装関連機に対しては、作業者が作業を行っている可能性が高い。したがって、非常停止を実行する部品実装関連機を示す実装関連機稼働情報と運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0023】
また、部品実装関連機は、開閉可能な扉を有し、実装関連機稼働情報は、扉が開いている部品実装関連機を示すように、警告管理装置を構成してもよい。つまり、扉が開いている部品実装関連機に対しては、作業者が作業を行っている可能性が高い。したがって、扉が開いている部品実装関連機を示す実装関連機稼働情報と運行情報とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装関連機と無人搬送車との位置関係に基づき、対象警告装置を選択することができる。その結果、無人搬送車が接近する部品実装関連機の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0024】
また、警告装置は、作業者の視覚あるいは触覚に作用することで警告を実行するように、警告管理装置を構成してもよい。つまり、作業者の聴覚に作用する音は、全方位的に広がるため、対象となる作業者に向けて警告を行うには必ずしも適切でない。これに対して、作業者の視覚あるいは触覚に作用する警告を実行することで、対象となる作業者に向けて的確に警告を行うことが可能となる。
【0025】
また、制御部は、無人搬送車の運行の許可の作業者への確認を対象警告装置に実行させ、作業者が無人搬送車の運行を許可した場合には無人搬送車の運行を継続する一方、作業者が無人搬送車の運行を許可しない場合には無人搬送車を停止させるように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、作業者に接近する無人搬送車の運行を、作業者の意図に応じて適切に管理することができる。
【0026】
また、制御部は、無人搬送車の位置の作業者への報知を、対象警告装置に実行させるように、警告管理装置を構成してもよい。かかる構成では、作業者は、自身に接近する無人搬送車の位置を把握して、適切な対応を取ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基板に部品を実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムにおいて、無人搬送車が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る部品実装機の一例の構成を模式的に示す平面図。
【
図2】
図1の部品実装機が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図3】
図1の部品実装機を備えた基板生産システムの一例を模式的に示す平面図。
【
図5】管理コンピュータの構成の一例を示すブロック図。
【
図6】AGVの運行管理の第1例を示すフローチャート。
【
図7】AGVが部品実装機の操作パネルの前方を通過する状況を模式的に示す平面図。
【
図8】AGVの運行管理の第2例を示すフローチャート。
【
図9】AGV位置情報を取得するための構成の変形例を模式的に示す平面図。
【
図10】AGVの運行管理の第3例を示すフローチャート。
【
図11】
図10に示すAGVの運行管理の前提となる部品実装機の構成を示すブロック図。
【
図12】AGVの運行管理の第4例を示すフローチャート。
【
図13】作業者によって携帯される携帯端末装置の構成を示すブロック図。
【
図14】AGVの運行管理の第5例を示すフローチャート。
【
図15】作業者に表示する警告画面の変形例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明に係る部品実装機の一例の構成を模式的に示す平面図である。
図2は
図1の部品実装機が備える電気的構成を示すブロック図である。
図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示す。
【0030】
図2に示すように、部品実装機1は、装置全体を統括的に制御するコントローラ100を備える。コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)で構成されたプロセッサである演算処理部110およびHDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)等で構成された記憶部120と、部品実装機1の駆動系を制御する駆動制御部130とを有する。そして、演算処理部110は記憶部120に記憶される実装プログラムに従って駆動制御部130を制御することで、実装プログラムが規定する手順で部品実装を実行する。さらに、コントローラ100は外部装置と通信を行う通信部140を有する。この通信部140による通信は、有線および無線のいずれでも構わない。
【0031】
図1に示すように、部品実装機1は、基板BをX方向(基板搬送方向)に搬送する搬送部12を備える。この搬送部12は、X方向に並列に配置された一対のコンベア121を基台11上に有し、コンベア121によって基板BをX方向に搬送する。これらコンベア121の間隔は、X方向に直交するY方向(幅方向)に変更可能であり、搬送部12は、搬送する基板Bの幅に応じてコンベア121の間隔を調整する。この搬送部12は、基板搬送方向であるX方向の上流側から所定の作業位置123に搬入するとともに、作業位置123で部品Eが実装された基板Bを作業位置123からX方向の下流側に搬出する。
【0032】
搬送部12のY方向の両側それぞれでは2つの部品供給部21がX方向に並んでおり、各部品供給部21では、複数のテープフィーダ22がX方向に並ぶ。さらに、各部品供給部21では、複数のテープフィーダ22に対応して複数のリール23がX方向に並ぶ。各リール23にはキャリアテープが巻き付けられており、キャリアテープは、所定ピッチで配列された複数の部品Eを収納する。部品Eは、例えば集積回路、トランジスタあるいはコンデンサ等である。各テープフィーダ22は、対応するリール23から引き出したキャリアテープを間欠的に送ることで、その先端部の部品供給箇所24に部品Eを供給する。
【0033】
また、部品実装機1では、Y方向に延びる一対のY軸レール31と、Y方向に延びるY軸ボールネジ32と、Y軸ボールネジ32を回転駆動するY軸モータMyとが設けられ、X軸レール34が一対のY軸レール31にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ32のナットに固定されている。X軸レール34には、X方向に延びるX軸ボールネジ35と、X軸ボールネジ35を回転駆動するX軸モータMxとが取り付けられており、ヘッドユニット40がX軸レール34にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ35のナットに固定されている。したがって、駆動制御部130は、Y軸モータMyによりY軸ボールネジ32を回転させてヘッドユニット40をY方向に移動させ、あるいはX軸モータMxによりX軸ボールネジ35を回転させてヘッドユニット40をX方向に移動させることができる。
【0034】
ヘッドユニット40は、X方向に直線状に並ぶ複数(3本)の実装ヘッド4を有する。実装ヘッド4は、円周状に配列された複数のノズルを有するロータリーヘッドであり、ノズルによって部品Eの吸着・実装を実行する。具体的には、実装ヘッド4は、テープフィーダ22によって部品供給箇所24に供給された部品Eをノズルによって吸着して、作業位置123の基板Bに移載することで、基板Bに部品Eを実装する。
【0035】
また、部品実装機1は、少なくともヘッドユニット40の移動範囲を覆うカバー13と、カバー13を開閉する扉14とを有する。なお、
図1では、カバー13を透過して部品実装機1の内部構成を示している。扉14は、カバー13のY方向の両側に設けられ、各扉14に対しては当該扉14の開閉を検出する扉センサ141(
図2)が設けられている。この扉センサ141は、対象の扉14が開いている場合には、開信号を演算処理部110に出力する一方、対象の扉14が閉じている場合には、閉信号を演算処理部110に出力する。例えば、作業者は、部品実装機1に対して作業を実行する際には扉14を開き、当該作業が完了すると扉14を閉じる。したがって、扉センサ141の出力信号が開信号であるか閉信号であるかに基づき、部品実装機1に対する作業者の作業の有無を推定することができる。
【0036】
また、カバー13の上面には、警告ライト15(
図2)が配置されている。したがって、演算処理部110は、警告ライト15を点灯させることで、部品実装機1に対して作業を行う作業者に警告を行うことができる。
【0037】
さらに、部品実装機1は、ユーザインターフェースとして機能する操作パネル16を備える。この操作パネル16は、Y方向の両側のカバー13の前面に取り付けられ、扉14に隣接するように配置されている。この操作パネル16は、例えばタッチパネルディスプレイで構成され、操作パネル16の前方に立つ作業者に対して操作画面を表示するとともに、当該作業者による操作画面に対する操作を受け付ける。さらに、操作パネル16は、後述する警告を作業者に対して実行する機能も有する。かかる操作パネル16の動作は、演算処理部110によって制御される。
【0038】
図3は
図1の部品実装機を備えた基板生産システムの一例を模式的に示す平面図である。
図3では、基板生産システムSにおいて部品実装機1に対して作業を実行する複数の作業者OP1~OP4が模式的に示されている。この基板生産システムSは、複数の部品実装機1を備え、当該部品実装機1を用いて基板Bに部品Eを実装することで部品実装基板を生産する。特に
図3の例では、直列に配列された所定数(3台)の部品実装機1によって1本の基板生産ラインLが構成され、合計で3本の基板生産ラインLが設けられている。なお、基板生産ラインLの本数や、基板生産ラインLを構成する部品実装機1の台数はここの例に限られない。
【0039】
上述の通り、部品実装機1では、リール23に保持される部品Eを使用して、基板Bへの部品実装が実行される。したがって、リール23の部品Eが使い切られるタイミングに応じて、新たなリール23を部品供給部21まで運搬する必要がある。また、生産する部品実装基板の種類の変更に伴って、テープフィーダ22の種類を変更する場合には、変更後のテープフィーダ22を部品供給部21まで運搬する必要がある。このように部品実装基板の生産に使用される部材(テープフィーダ22あるいはリール23等)の運搬は、AGV(Automatic Guided Vehicle)5によって実行される。つまり、AGV5は、部材の保管庫(図示省略)から部品実装機1までの部材の運搬を実行する。
【0040】
図4はAGVの構成の一例を示すブロック図である。AGV5は、当該AGV5の全体を統括的に制御する演算部51と、外部装置との通信を実行する通信部52とを備える。演算部51はCPU等で構成されたプロセッサであり、通信部52による通信は無線により実行される。また、AGV5は、HDDあるいはSSDで構成された記憶部53を備え、AGV5の運行計画を示す運行経路情報Idpが記憶部53に記憶されている。この運行経路情報Idpは、複数の部品実装機1のうち目的地となる一の部品実装機1に部材を運搬するためにAGV5が移動する運行経路と、当該運行経路に沿った運行を開始する日時とを示す。また、AGV5は、当該AGV5の周囲の環境を検出する周囲センサ54を有する。周囲センサ54による周囲環境の検出は、例えばLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging
Detection and Ranging)によって実行できる。さらに、AGV5は、サーボモータ55を備え、サーボモータ55の駆動力によって運行を行う。このサーボモータ55は、当該サーボモータ55の回転位置を出力するエンコーダ551を有する。このサーボモータ55の出力するサーボモータ55の回転位置は、換言すれば、AGV5の位置を示すAGV位置情報Iaに相当する。
【0041】
そして、演算部51が運行経路情報Idpに基づきサーボモータ55を制御することで、運行経路情報Idpが示す運行経路に沿って、AGV5が運行する。また、周囲センサ54が障害物を検出した場合には、演算部51が周囲センサ54の検出結果に基づきサーボモータ55を制御する。これによって、AGV5は、当該障害物を回避しつつ目的地となる部品実装機1までの運行を行うことができる。
【0042】
また、基板生産システムSは、部品実装機1を用いた部品実装基板の生産や、AGV5による部材の運搬を管理する管理コンピュータ7を備える。
図5は管理コンピュータの構成の一例を示すブロック図である。管理コンピュータ7は、演算を実行する演算部71と、外部装置との通信を実行する通信部72とを備える。演算部71はCPU等で構成されたプロセッサであり、通信部52は、部品実装機1の通信部140およびAGV5の通信部52と通信を実行する。前者との通信は有線あるいは無線で実行され、後者との通信は無線で実行される。また、管理コンピュータ7は、HDDあるいはSSDで構成された記憶部73と、UI(User Interface)74とを備える。UI74は、キーボードやマウス等の入力機器と、ディスプレイ等の出力機器とで構成される。ただし、例えばタッチパネルディスプレイによってUI74の入力機器と出力機器とを一体的に構成してもよい。
【0043】
そして、上述の運行経路情報Idpは、管理コンピュータ7によって取得される。具体的には、演算部51は、基板生産システムSにおける部品実装基板の生産計画に基づき、各部品実装機1に対して部材(テープフィーダ22あるいはリール23)を運搬すべきタイミングを算出し、この結果に基づき運行経路情報Idpを生成する。換言すれば、演算部51(取得部)は、部品実装基板の生産計画に基づき運行経路情報Idpを算出することで、当該運行経路情報Idpを取得する。そして、この運行経路情報Idpは、記憶部73に記憶されるとともに通信部72を介してAGV5に送信され、AGV5は管理コンピュータ7から受信した運行経路情報Idpを記憶部53に記憶する。ただし、演算部51による運行経路情報Idpの取得態様は、部品実装基板の生産計画からの算出に限られず、例えば、演算部71は、通信部72を介して外部装置から運行経路情報Idpを取得してもよいし、UI74に対する作業者の入力に基づき運行経路情報Idpを生成することで運行経路情報Idpを取得してもよい。
【0044】
さらに、記憶部73は、AGV5の運行を制御するための運行制御プログラムPや、運行制御プログラムPによる運行制御で参照される実装機稼働情報Im等を記憶する。なお、管理コンピュータ7は、USB(Universal Serial Bus)メモリや光ディスク等の記録媒体Mに記録された運行制御プログラムPを読み出して、記憶部73に保存する。ただし、運行制御プログラムPの取得態様はこれに限られず、管理コンピュータ7は、外部コンピュータの記憶装置に記録された運行制御プログラムPをダウンロードして、記憶部73に保存してもよい。
【0045】
特に、運行制御プログラムPは、AGV5の接近を作業者に報知する警告の管理を管理コンピュータ7に実行させる。つまり、管理コンピュータ7は、運行制御プログラムPに規定される演算を演算部71によって実行することで、AGV5の接近を作業者に適宜警告しつつ、AGV5の運行管理を実行する。続いては、管理コンピュータ7の演算部71が運行制御プログラムPに基づき実行するAGV5の運行管理について詳述する。
【0046】
図6はAGVの運行管理の第1例を示すフローチャートである。このフローチャートは、運行制御プログラムPに基づく演算部71の制御によって実行される。ステップS101では、演算部71は、記憶部73に記憶されている運行経路情報Idpを参照する。この運行経路情報Idpは、AGV5が待機所(例えば、部材の保管庫に隣接)から目的地となる部品実装機1まで部材を運搬してから待機所に戻る経路を示す。かかる運行経路情報Idpを参照することで、演算部71は、目的地となる部品実装機1まで部材をAGV5により運搬するタイミングや、当該AGV5の運行経路を確認する。そして、ステップS102では、演算部71は、運行経路情報Idpに基づき、AGV5が目的地の部品実装機1を経由した後に待機所に到達したか否かを判断する。AGV5が待機所に到達したと判断される場合(ステップS102で「YES」の場合)には、
図6のフローチャートを終了する。
【0047】
一方、AGV5が待機所に到達していないと判断される場合(ステップS102で「NO」の場合)には、ステップS103に進む。ステップS103では、AGV5が前方を通過する部品実装機1が、基板生産システムSの複数の部品実装機1のうちに存在するかを、演算部71が運行経路情報Idpに基づき判断する。この判断は、作業者による作業の対象となる操作パネル16を基準に実行される。つまり、演算部71は、AGV5がその操作パネル16の前方を通過中の部品実装機1や、AGV5が進行方向に所定距離だけ進む間に当該AGV5がその操作パネル16の前方を通過する予定の部品実装機1が存在するかを判断する。
【0048】
図7はAGVが部品実装機の操作パネルの前方を通過する状況を模式的に示す平面図である。
図7では、複数の部品実装機1を区別するために、これらに異なる符号1a~1fが付されている。
図7では、AGV5が存在する領域と、AGV5の進行方向(図中の白抜き矢印)においてAGV5から所定距離の領域とが、AGV5の通過領域PTaとして示されている。また、AGV5の進行方向に直交する方向における通過範囲PTaの両側において所定幅を有する領域が干渉領域PTbとして示されている。こうしてAGV5に対して設定された通過領域PTaあるいは干渉領域PTbに重複する操作パネル16の前方をAGV5が通過すると、演算部71によって判断される。
図7の例では、部品実装機1b、1cそれぞれの操作パネル16の前方をAGV5が通過することとなる。より具体的には、部品実装機1bには、Y方向の一方側に配置された操作パネル16と、Y方向の当該一方側の逆の他方側に配置された操作パネル16とを有するのに対して、部品実装機1bのこれら2台の操作パネル16のうち、Y方向の一方側の操作パネル16のみが通過領域PTaあるいは干渉領域PTbに重複する。そのため、2台の操作パネル16のうち、一方側の操作パネル16の前をAGV5が通過すると判断される。部品実装機1cについても同様である。なお、複数の部品実装機1それぞれの操作パネル16の位置を示すパネル位置情報は、予め記憶部73に記憶されており、演算部71は、通過領域PTaおよび干渉領域PTbと操作パネル16との位置関係をパネル位置情報に基づき判断する。
【0049】
図6のステップS103で、AGV5がその操作パネル16の前方を通過する部品実装機1が存在しないと判断された場合(「NO」の場合)には、ステップS101に戻る。一方、
図7に示す例では、AGV5がその操作パネル16の前方を通過する部品実装機1b、1cが存在すると判断される(ステップS103で「YES」)。
【0050】
そのため、ステップS104に進んで、該当の部品実装機1b、1cが所定の稼働状況にあるかを、演算部71が実装機稼働情報Imに基づき判断する。所定の稼働状況としては、具体的には、
・部品実装機1がエラーの発生に伴って非常停止している状況
・扉14が開いていて扉センサ141が開信号を出力している状況
等が挙げられる。管理コンピュータ7は、部品実装機1の稼働状況を示す実装機稼働情報Imを各部品実装機1から予め収集して記憶部73に保存している。
【0051】
図7の例では、作業者OP1が部品実装機1bに対して作業を行っており、部品実装機1bの扉14は開いている(すなわち、扉14に対する扉センサ141は開信号を出力している)。したがって、演算部71は、部品実装機1bは所定の稼働状況にあると判断して(ステップS104で「YES」)、この部品実装機1bについて警告を実行する(ステップS105)。具体的には、演算部71は、部品実装機1bの操作パネル16に、AGV5が接近している旨を示す警告画面を表示させる。したがって、部品実装機1bに作業を実行する作業者OP1は、操作パネル16の表示を目視により確認することで、AGV5の接近を知ることができる。こうして、ステップS105で警告が実行されると、ステップS101に戻る。
【0052】
なお、部品実装機1bは、2台の操作パネル16を有している。これに対して、
図7の例では、2台の操作パネル16のうち、Y方向の一方側の操作パネル16は、通過領域PTaおよび干渉領域PTbの少なくとも一方に重複するため警告を実行する一方、Y方向の他方側の操作パネル16は、通過領域PTaおよび干渉領域PTbの両方に重複しないため警告を実行しない。ただし、2台の操作パネル16を区別せずに、2台の操作パネル16の一方が通過領域Paあるいは干渉領域Ptbに重複する場合には、2台の操作パネル16の両方に警告を実行させてもよい。
【0053】
また、
図7の例では、部品実装機1cは部品実装を実行中であり(すなわち、部品実装機1cに非常停止は発生しておらず)、部品実装機1cの扉14も閉じている(すなわち、扉センサ141は閉信号を出力している)。したがって、演算部71は、部品実装機1cは所定の稼働状況にないと判断して(ステップS104で「NO」)、ステップS101に戻る。すなわち、部品実装機1cの操作パネル16は、AGV5の接近を作業者に知らせる警告を実行しない。
【0054】
以上に説明する実施形態によれば、複数の部品実装機1のそれぞれに2台の操作パネル16が設けられており、基板生産システムSでは、複数(部品実装機1の台数×2)の操作パネル16が設けられている。そして、複数の操作パネル16(警告装置)のそれぞれは、AGV5の接近を知らせる警告を作業者OP1~OP4に対して実行することができる。これに対して、管理コンピュータ7の演算部71は、複数の操作パネル16のうちから、AGV5の運行に関する情報である運行経路情報Idp(運行情報)に基づき選択した、部品実装機1bの一の操作パネル16(対象警告装置)に警告を実行させる。つまり、複数の操作パネル16のうち、AGV5の運行に応じた操作パネル16が選択的に警告を実行する。そのため、当該操作パネル16の近くに作業者OP1がいる場合には、この作業者OP1に対して的確に警告を行うことができる。こうして、基板Bに部品Eを実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムSにおいて、AGV5が接近する作業者OP1に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0055】
また、演算部71は、AGV5が通過する運行経路を示す運行経路情報Idp(運行情報)に基づき、警告を実行させる操作パネル16(対象警告装置)を選択する。かかる構成では、AGV5の運行経路に応じて適切に選択された操作パネル16に警告を実行させることができる。その結果、AGV5が接近する作業者OP1に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0056】
また、基板生産システムSは、それぞれ部品Eを基板Bに実装する複数の部品実装機1を備える。これに対して、演算部71は、部品実装機1の稼働状況に関する実装機稼働情報Im(実装機情報)を取得し、実装機稼働情報Imと運行経路情報Idpとに基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択する。このように、実装機稼働情報Imを併用することで、部品実装機1の近くにいる作業者OP1に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0057】
さらに言えば、部品実装機1に対して作業を行う作業者と当該部品実装機1との位置関係は、実装機稼働情報Imから推測することができる。なぜなら、部品実装機1の扉14が開いていたり、部品実装機1が非常停止していたりすれば、この部品実装機1に作業者が作業を実行している可能性が高いからである。したがって、実装機稼働情報Imと運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0058】
また、部品実装機1は、エラーが発生した場合には、基板Bへの部品Eの実装を停止する非常停止を実行する。これに対して、実装機稼働情報Imは、非常停止を実行する部品実装機1を示す。つまり、非常停止を実行中の部品実装機1に対しては、作業者が作業を行っている可能性が高い。したがって、非常停止を実行する部品実装機1を示す実装機稼働情報Imと運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0059】
また、部品実装機1は、開閉可能な扉14を有する。これに対して、実装機稼働情報Imは、扉14が開いている部品実装機1を示す。つまり、扉14が開いている部品実装機1に対しては、作業者が作業を行っている可能性が高い。したがって、扉14が開いている部品実装機1を示す実装機稼働情報Imと運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0060】
また、操作パネル16は、作業者の視覚に作用することで警告を実行する(警告画面の表示)。つまり、作業者の聴覚に作用する音は、全方位的に広がるため、対象となる作業者に向けて警告を行うには必ずしも適切でない。これに対して、作業者の視覚に作用する警告を操作パネル16により実行することで、対象となる作業者に向けて的確に警告を行うことが可能となる。
【0061】
図8はAGVの運行管理の第2例を示すフローチャートである。このフローチャートは、運行制御プログラムPに基づく演算部71の制御によって実行される。この第2例では、演算部71は、記憶部73に記憶されている運行経路情報Idpを参照するとともに(ステップS201)、AGV5の位置を示すAGV位置情報Iaを取得する(ステップS202)。つまり、演算部71は、上述の通り、AGV5のエンコーダ551の出力をAGV位置情報Iaとして取得する。これによって、演算部71は、運行経路情報Idpが示す運行経路のうちから、AGV5の現在位置を特定することができる。
【0062】
ステップS203では、演算部71は、運行経路情報IdpとAGV位置情報Iaとに基づき、AGV5が目的地の部品実装機1を経由した後に待機所に到達したか否かを判断する。AGV5が待機所に到達したと判断される場合(ステップS203で「YES」の場合)には、
図8のフローチャートを終了する。一方、AGV5が待機所に到達していないと判断される場合(ステップS203で「NO」の場合)には、ステップS204に進む。
【0063】
ステップS204では、AGV5が前方を通過する部品実装機1が、基板生産システムSの複数の部品実装機1のうちに存在するかが、演算部71によって判断される。具体的には、演算部71は、運行経路情報Idpが示す運行経路のうちから、AGV位置情報Iaに基づきAGV5の現在位置を特定する。そして、演算部71は、AGV5の現在位置と各部品実装機1の位置とに基づき、AGV5が前方を通過する部品実装機1の有無を判断する。なお、かかる判断は、
図7を用いた上記の例と同様に、通過領域PTaおよび干渉領域PTbと操作パネル16との位置関係に基づき実行される。そして、ステップS204での判断結果に応じて、ステップS205、S206が、第1例のステップ104、S105と同様に実行される。
【0064】
以上に説明する実施形態によれば、演算部71は、AGV位置情報Ia(搬送車位置情報)に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択する。かかる構成では、AGV5の位置に応じて適切に選択された操作パネル16に警告を実行させることができる。その結果、AGV5が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0065】
また、AGV5は、サーボモータ55を有し、サーボモータ55の駆動力によって運行を行う。これに対して、演算部71は、AGV5のサーボモータ55のエンコーダ551の出力を、AGV位置情報Iaとして取得する。かかる構成では、AGV5のサーボモータ55のエンコーダ551の出力によって、AGV5の位置を的確に取得することができる。
【0066】
図9はAGV位置情報を取得するための構成の変形例を模式的に示す平面図である。つまり、上記の例では、サーボモータ55のエンコーダ551の出力を、AGV位置情報Iaとして取得していた。これに対して、
図9の例では、基板生産システムSにおける部品実装機1の設置面に、位置表示器18が敷設されている。この位置表示器18は、例えば銅製のテープであり、基板生産システムSにおける位置座標に応じたパターンを有する。一方、AGV5の周囲センサ54は、位置表示器18のパターンを読み取るパターンセンサ(位置センサ)を含む。かかるパターンセンサとしては、近接する銅を検出するセンサを用いることができる。そして、演算部71は、パターンセンサの読み取り結果を、AGV位置情報Iaとして取得する。かかる構成では、周囲センサ54に含まれるパターンセンサの検出結果によって、AGV5の位置を的確に取得することができる。
【0067】
なお、AGV5の位置を示すAGV位置情報Iaは、上記とは異なる適宜の手法により取得してもかまわない。例えば、AGV5に搭載したGPS(Global Positioning System)受信機(位置センサ)の出力値を、AGV位置情報Iaとして取得してもよい。
【0068】
図10はAGVの運行管理の第3例を示すフローチャートである。
図11は
図10に示すAGVの運行管理の前提となる部品実装機の構成を示すブロック図である。
図11と
図2に示す部品実装機1の構成の違いは、作業者を撮像するための撮像系の有無である。つまり、
図11の部品実装機1では、作業者を撮像する撮像カメラCoが、2枚の扉14のそれぞれに対して配置される。撮像カメラCoは対応する扉14の前方を撮像範囲に含み、当該撮像範囲を撮像する。したがって、撮像カメラCoは対応する扉14を開いて作業を行う作業者を撮像することができる。この撮像カメラCoによる撮像画像は、静止画あるいは動画のいずれでも構わない。撮像カメラCoが撮像する作業者の画像は、作業者が当該撮像カメラCoに対応する扉14の前方に位置することを示す作業者位置情報Ioに相当する。例えば、撮像画像に当該撮像画像を撮像した撮像カメラCoを示す情報を付して作業者位置情報Ioを生成することで、管理コンピュータ7の演算部71等は作業者位置情報Ioに基づき作業者の位置を確認できる。また、部品実装機1のコントローラ100は、撮像カメラCoを制御する撮像制御部150を有し、撮像制御部150は、作業者位置情報Io(すなわち、作業者を含む撮像カメラCoの撮像画像)を演算処理部110に転送する。かかる構成を備える部品実装機1を前提にして、
図10のフローチャートを説明する。
【0069】
AGV運行管理の第3例を示す
図10のフローチャートは、運行制御プログラムPに基づく演算部71の制御によって実行される。この第3例では、ステップS301~S303が、
図6の第1例のステップS101~S103と同様に実行される。その結果、
図7の例によれば、部品実装機1b、1cそれぞれの操作パネル16の前方をAGV5が通過すると判断される(ステップS303)。
【0070】
一方、ステップS303に続くステップS304では、該当の部品実装機1b、1cの撮像カメラCoが、部品実装機1b、1cに対して作業を実行する作業者を撮像しているか否かが、演算部71によって判断される。具体的には、演算部71は、撮像カメラCoにより撮像された画像に画像処理を実行して、当該画像から作業者を認識できた場合には、当該撮像カメラCoの撮像範囲において部品実装機1に作業を実行する作業者がいると判断する。この判断は、作業者の認識をもって行うことができ、作業者が実際に作業を行っていることまでの確認を必ずしも要しない。
【0071】
図7の例では、作業者OP1が部品実装機1bに対して作業を行っている。詳述すると、部品実装機1の操作パネル16に隣接する扉14を開いて作業者OP1は作業を行っており、当該扉14に対応する撮像カメラCoが撮像した作業者OP1の画像は、管理コンピュータ7の演算部71に送信される。そして、演算部71は、撮像カメラCoから受信した撮像画像に含まれる作業者を認識する。このように作業者を含む撮像画像は、上述の通り、作業者の位置を示す作業者位置情報Ioに相当する。
【0072】
したがって、演算部71は、作業者位置情報Ioに基づき、部品実装機1bに対して作業者が作業を実行していると判断して(ステップS304で「YES」)、この部品実装機1bについて警告を実行する(ステップS305)。具体的には、演算部71は、部品実装機1bの操作パネル16に、AGV5が接近している旨を表示する。したがって、部品実装機1bに作業を実行する作業者OP1は、操作パネル16の表示を目視により確認することで、AGV5の接近を知ることができる。こうして、ステップS305で警告が実行されると、ステップS301に戻る。
【0073】
なお、部品実装機1bは、2台の操作パネル16を有している。これに対して、
図7の例では、2台の操作パネル16のうち、Y方向の一方側の操作パネル16は、通過領域PTaおよび干渉領域PTbの少なくとも一方に重複するため警告を実行する一方、Y方向の他方側の操作パネル16は、通過領域PTaおよび干渉領域PTbの両方に重複しないため警告を実行しない。ただし、上述と同様に、2台の操作パネル16を区別せずに、2台の操作パネル16の一方が通過領域Paあるいは干渉領域Ptbに重複する場合には、2台の操作パネル16の両方に警告を実行させてもよい。
【0074】
また、
図7の例では、部品実装機1cに作業を行う作業者はおらず、部品実装機1cの撮像カメラCoが撮像する画像に作業者は含まれない。したがって、演算部71は、部品実装機1cに作業を行う作業者はいないと判断して(ステップS304で「NO」)、ステップS301に戻る。
【0075】
以上に説明する実施形態によれば、演算部71は、作業者の位置に関する作業者位置情報Io(撮像カメラCoによる撮像画像)と運行経路情報Idpとに基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択する。つまり、この作業者位置情報Ioに基づき、作業者が近くにいる部品実装機1を確認することができる。したがって、作業者位置情報IoとAGV5の運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0076】
また、部品実装機1は、作業者を撮像(検出)する撮像カメラCo(第1作業者センサ)を有する。そして、作業者位置情報Ioは、撮像カメラCoにより作業者を撮像している部品実装機1を示す。かかる構成では、撮像カメラCoにより作業者を撮像している部品実装機1を示す作業者位置情報Ioに基づき、作業者が近くにいる部品実装機1を確認することができる。したがって、作業者位置情報IoとAGV5の運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0077】
図12はAGVの運行管理の第4例を示すフローチャートである。このフローチャートは、運行制御プログラムPに基づく演算部71の制御によって実行される。この第4例では、演算部71は、
図8の第2例のステップS201~S204と同様に、ステップS401~404を実行する。つまり、演算部71は、運行経路情報Idpが示す運行経路のうちから、AGV位置情報Iaに基づき特定したAGV5の現在位置と各部品実装機1の操作パネル16の位置とに基づき、その操作パネル16の前方をAGV5が通過する部品実装機1の有無を判断する(ステップS404)。
【0078】
そして、演算部71は、
図10のステップS304、S305と同様に、ステップS405、S406を実行する。つまり、演算部71は、撮像カメラCoによって取得された作業者位置情報Ioに基づき、作業者が作業を実行中の部品実装機1が存在すると判断すると(ステップS405で「YES」)、当該部品実装機1の操作パネル16に警告を実行させる(ステップS406)。
【0079】
以上に説明する実施形態によれば、演算部71は、AGV位置情報Ia(搬送車位置情報)に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択する。かかる構成では、AGV5の位置に応じて適切に選択された操作パネル16に警告を実行させることができる。その結果、AGV5が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0080】
さらに、演算部71は、作業者との位置に関する作業者位置情報Ioと運行経路情報Idpとに基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択する。このように、作業者位置情報IoとAGV5の運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0081】
なお、作業者位置情報Ioの取得方法は、上記の撮像カメラCoによる方法に限られない。つまり、部品実装機1は、作業者による操作を受け付ける操作パネル16(ユーザインターフェース)を有する。そこで、作業者位置情報Ioは、その操作パネル16が作業者によって操作されている部品実装機1を示す情報であってもよい。かかる構成では、操作パネル16が作業者によって操作されている部品実装機1を示す作業者位置情報Ioに基づき、作業者が近くにいる部品実装機1を確認することができる。したがって、作業者位置情報IoとAGV5の運行情報(運行経路情報Idp・AGV位置情報Ia)とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0082】
また、作業者は、
図13に示す携帯端末装置を携帯することができる。ここで、
図13は作業者によって携帯される携帯端末装置の構成を示すブロック図である。携帯端末装置8は、CPU等で構成されたプロセッサである演算部81と、外部装置との通信を実行する通信部82と、UI83とを備える。通信部82は、部品実装機1の通信部140と無線で通信を実行する。UI83は、例えばタッチパネルディスプレイで構成され、携帯端末装置8を携帯する作業者に対して操作画面を表示するとともに、当該作業者による操作画面に対する操作を受け付ける。特に、UI83は、通信部82が部品実装機1から受信した情報を操作画面に表示し、通信部82は、作業者がUI83の操作画面に入力した情報を部品実装機1に送信することができる。さらに、携帯端末装置8は、振動発生器84を備え、振動発生器84は振動を発生することで、携帯端末装置8を携帯する作業者に報知を実行することができる。
【0083】
このような携帯端末装置8を作業者が携帯する場合には、作業者位置情報Ioは、携帯端末装置8(通信機器)と通信を行う部品実装機1を示す情報であってもよい。かかる構成では、作業者によって携帯される携帯端末装置8と通信を行う部品実装機1を示す作業者位置情報Ioに基づき、作業者が近くにいる部品実装機1を確認することができる。したがって、作業者位置情報IoとAGV5の運行情報(運行経路情報Idp・AGV位置情報Ia)とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0084】
あるいは、AGV5の周囲センサ54を作業者位置情報Ioの取得に利用してもよい。この例では、AGV5の周囲センサ54が部品実装機1に対する作業者の位置を検出する。具体的には、周囲センサ54は、LIDARによって周囲環境に対してマッピングを実行する。周囲センサ54は、このマッピングの結果、作業者を検出すると、この作業者の位置を算出することで作業者位置情報Ioを生成する。そして、管理コンピュータ7の演算部71は、AGV5の周囲センサ54から作業者位置情報Ioを取得する。
【0085】
かかる例では、AGV5の周囲センサ54(第2作業者センサ)が検出した作業者の位置を示す作業者位置情報Ioに基づき、作業者が近くにいる部品実装機1を確認することができる。したがって、作業者位置情報IoとAGV5の運行情報(運行経路情報Idp・AGV位置情報Ia)とを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0086】
図14はAGVの運行管理の第5例を示すフローチャートである。このフローチャートは、運行制御プログラムPに基づく演算部71の制御によって実行される。この第5例では、演算部71は、
図8の第2例のステップS201~S203と同様に、ステップS501~503を実行する。つまり、演算部71は、運行経路情報Idpを参照するとともに(ステップS501)、AGV位置情報Iaを取得して(ステップS502)、さらにAGV5が目的地の部品実装機1を経由した後に待機所に到達したかを判断する(ステップS503)。
【0087】
AGV5が待機所に到達していない場合(ステップS503で「NO」)の場合には、演算部71は、周囲センサ54がAGV5から所定範囲内における作業者を検出した否かを判断する(ステップS504)。この所定範囲は、例えば
図7に示した通過領域PTaおよび干渉領域PTbが存在する範囲に設定することができる。周囲センサ54がAGV5から所定範囲内に作業者を検出しない場合(ステップS504で「NO」の場合)には、ステップS502に戻る。
【0088】
一方、AGV5の周囲センサ54が作業者を検出した場合(ステップS504で「YES」の場合)には、周囲センサ54は、当該作業者の位置を示す作業者位置情報Ioを管理コンピュータ7の通信部72に送信し、演算部71は、通信部72が受信した作業者位置情報Ioに基づき作業者の位置を確認する。
【0089】
ステップS505では、演算部71は、作業者の位置と、運行経路情報Idpが示す運行経路とに基づき、作業者が運行経路内に存在するか否かを判断する。作業者が運行経路内にいない場合(ステップS505で「NO」の場合)には、ステップS502に戻る。一方、作業者が運行経路内にいる場合(ステップS505で「YES」の場合)には、演算部71は、部品実装機1の前に作業者が存在するか否かを判断する(ステップS506)。具体的には、複数の部品実装機1のうち、作業者から所定範囲に存在する部品実装機1(近接部品実装機1)の前の作業者の有無が確認される。
【0090】
かかる作業者の有無は種々の方法により実行できる。例えば、
図6の第1例のステップS104と同様に、所定の稼働状況にある近接部品実装機1への作業のために作業者が当該近接部品実装機1の前にいると判断できる。あるいは、
図10の第3例のステップS304と同様に、近接部品実装機1への作業を行う作業者を、当該近接部品実装機1の撮像カメラCoにより撮像した画像に基づき認識することで、作業者が当該近接部品実装機1の前にいると判断できる。
【0091】
そして、作業者が近接部品実装機1の前にいると判断された場合(ステップS506で「YES」の場合)には、演算部71は、該当の近接部品実装機1の操作パネル16に警告を実行させる(ステップS506)。この際、演算部71は、部品実装機1の2台の操作パネル16のうち、作業者が存在する側に位置する操作パネル16に警告を実行させる。
【0092】
このように構成された実施形態においても、複数の操作パネル16が基板生産システムSに設けられており、複数の操作パネル16のうちから、AGV5の運行経路を示す運行経路情報Idpに基づき選択された操作パネル16が警告を実行する。つまり、複数の操作パネル16のうち、AGV5の運行に応じた操作パネル16が選択的に警告を実行する。そのため、操作パネル16の近くに作業者がいる場合には、この作業者に対して的確に警告を行うことができる。こうして、基板Bに部品Eを実装することで部品実装基板を生産する基板生産システムSにおいて、AGV5が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0093】
また、演算部71は、AGV5が通過する運行経路を示す運行経路情報Idpに基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択する。かかる構成では、AGV5の運行経路に応じて適切に選択された操作パネル16に警告を実行させることができる。その結果、AGV5が接近する作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0094】
また、演算部71は、作業者の位置に関する作業者位置情報Ioと、運行経路情報Idpとに基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択する。かかる構成では、作業者の位置に関する作業者位置情報Ioに基づき、作業者が近くにいる部品実装機1を確認することができる。したがって、作業者位置情報IoとAGV5の運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0095】
特に、AGV5は、作業者の位置を検出する周囲センサ54を有し、演算部71は、周囲センサ54の検出結果を作業者位置情報Ioとして取得する。かかる構成では、AGV5の周囲センサ54が検出した作業者の位置を示す作業者位置情報Ioに基づき、作業者が近くにいる部品実装機1を確認することができる。こうして、作業者位置情報IoとAGV5の運行経路情報Idpとを用いることで、作業者が近くにいる部品実装機1とAGV5との位置関係に基づき、警告を実行させる操作パネル16を選択することができる。その結果、AGV5が接近する部品実装機1の近くにいる作業者に対して警告を的確に行うことが可能となる。
【0096】
また、操作パネル16は、作業者の視覚に作用することで警告を実行する(警告画面の表示)。つまり、作業者の聴覚に作用する音は、全方位的に広がるため、対象となる作業者に向けて警告を行うには必ずしも適切でない。これに対して、作業者の視覚に作用する警告を操作パネル16により実行することで、対象となる作業者に向けて的確に警告を行うことが可能となる。
【0097】
このように上記の実施形態では、基板Bが本発明の「基板」の一例に相当し、部品Eが本発明の「部品」の一例に相当し、基板生産システムSが本発明の「基板生産システム」の一例に相当し、AGV5が本発明の「無人搬送車」の一例に相当し、運行経路情報IdpおよびAGV位置情報Iaが本発明の「運行情報」の一例に相当し、演算部71が本発明の「取得部」の一例に相当し、操作パネル16が本発明の「警告装置」の一例に相当し、警告を実行させる操作パネル16が本発明の「対象警告装置」の一例に相当し、演算部71が本発明の「制御部」の一例に相当し、管理コンピュータ7が本発明の「警告管理装置」の一例に相当し、運行経路情報Idpが本発明の「運行経路情報」の一例に相当し、AGV位置情報Iaが本発明の「搬送車位置情報」の一例に相当し、サーボモータ55が本発明の「モータ」の一例に相当し、エンコーダ551が本発明の「エンコーダ」の一例に相当し、周囲センサ54が本発明の「位置センサ」の一例に相当し、部品実装機1が本発明の「部品実装関連機」の一例に相当し、実装機稼働情報Imおよび作業者位置情報Ioが本発明の「実装関連機情報」の一例に相当し、作業者位置情報Ioが本発明の「作業者位置情報」の一例に相当し、操作パネル16が本発明の「ユーザインターフェース」の一例に相当し、撮像カメラCoが本発明の「第1作業者センサ」の一例に相当し、携帯端末装置8が本発明の「通信機器」の一例に相当し、周囲センサ54が本発明の「第2作業者センサ」の一例に相当し、実装機稼働情報Imが本発明の「実装関連機稼働情報」の一例に相当し、扉14が本発明の「扉」の一例に相当し、運行制御プログラムPが本発明の警告管理プログラムの一例に相当し、管理コンピュータ7が本発明の「コンピュータ」の一例に相当し、運行制御プログラムPが本発明の「運行制御プログラム」の一例に相当し、記録媒体Mが本発明の「記録媒体」の一例に相当する。
【0098】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、作業者に表示する警告画面を適宜変更してもよい。
図15は作業者に表示する警告画面の変形例を模式的に示す図である。この変形例では、警告を実行させる操作パネル16を管理コンピュータ7によって制御することで、
図15の画面が表示される。
【0099】
具体的には、警告を実行する操作パネル16は「右側からAGVが接近しています」と表示する。これによって、作業者に対するAGV5の位置(すなわち、作業者の右側)が警告画面に示される。さらに、警告を実行する操作パネル16は、接近してきているAGV5の通行を許可するか否かを作業者に入力させるボタン(「YES」のボタン)を表示する。作業者が「YES」のボタンを操作してAGV5の通行を許可した場合には、通行許可指令が部品実装機1から管理コンピュータ7に送信される。そして、管理コンピュータ7の演算部71は、通行許可指令を確認すると、AGV5の運行を継続させる。一方、作業者が所定時間の間、「YES」のボタンを操作しない場合には、通行禁止指令が部品実装機1から管理コンピュータ7に送信される。そして、管理コンピュータ7の演算部71は、通行禁止指令を確認すると、AGV5を停止させる。
【0100】
このように、演算部71は、AGV5の運行の許可の作業者への確認を操作パネル16(対象警告装置)に実行させ、作業者がAGV5の運行を許可した場合にはAGV5の運行を継続する一方、作業者がAGV5の運行を許可しない場合にはAGV5を停止させる。かかる構成では、作業者に接近するAGV5の運行を、作業者の意図に応じて適切に管理することができる。
【0101】
また、演算部71は、AGV5の位置の作業者への報知を、操作パネル16(対象警告装置)に実行させる。かかる構成では、作業者は、自身に接近するAGV5の位置を把握して、適切な対応を取ることができる。
【0102】
また、AGV5が部品実装機1の前方を通過するか否かの判断方法は
図7に示す例に限られない。したがって、例えば次の変形例に従って判断することもできる。この変形例では、AGV5が部品実装機1の前方を通過すると判断する場合のAGV5と部品実装機1との位置関係を、作業者が管理コンピュータ7のUI74に予め入力して、記憶部73に記憶される。そして、AGV5の運行中に、AGV5と部品実装機1とが当該位置関係を満たした場合に、この部品実装機1の前方をAGV5が通過すると、演算部71が判断する。
【0103】
また、AGV5の接近を示す警告を実行する主体は、操作パネル16に限られない。したがって、部品実装機1に設けられた警告ライト15や携帯端末装置8によって、警告を実行してもよい。警告ライト15によって警告を実行する場合には、ステップS103、S204、S303、S404において、その操作パネル16の前をAGV5が通過すると判断された部品実装機1の警告ライト15を点灯させる。あるいは、ステップS506で、その前に作業者がいると判断された部品実装機1の警告ライト15を点灯させる。
【0104】
携帯端末装置8によって警告を実行する場合には、ステップS103、S204、S303、S404において、その操作パネル16の前をAGV5が通過すると判断された部品実装機1のY方向の両側のうち、AGV5が通過する側に位置する作業者の携帯端末装置8に警告を実行させる。あるいは、ステップS506で、その前に作業者がいると判断された部品実装機1のY方向の両側のうち、AGV5が通過する側に位置する作業者の携帯端末装置8に警告を実行させる。なお、管理コンピュータ7は、例えば当該作業者が携帯する携帯端末装置8に搭載されるGPS受信機の出力値によって作業者の位置を確認することができる。また、AGV5が通過する側に位置する作業者の携帯端末装置8とは、換言すれば、
図7の通過領域PTaおよび干渉領域PTbの少なくとも一方の領域内に位置する携帯端末装置8に相当する。
【0105】
さらに、警告態様は、上記の作業者の視覚に作用する態様に限られない。例えば、携帯端末装置8に警告を実行させる場合には、振動発生器84から作業者に振動を与える、すなわち作業者の触覚に作用する態様で、警告を実行してもよい。あるいは、操作パネル16や携帯端末装置8にスピーカを設けておき、AGV5の接近をスピーカから音声で報知することで、作業者に警告を行ってもよい。この際、作業者の氏名を併せて音声で報知してもよい。
【0106】
また、周囲センサ54が周囲環境を検出するために利用できる技術としては、LIDARに限られない。例えば、カメラ、ステレオカメラ、ToF(Time of Flight)センサあるいは超音波センサを、周囲センサ54による周囲環境の検出に用いることができる。
【0107】
また、部品実装機1の具体的な構成を適宜変更してもよい。例えば、部品実装機1に設ける操作パネル16の台数は2台に限られず、1台あるいは3台以上でもよい。
【0108】
また、部品実装機1とAGV5との位置関係の判断は、操作パネル16を基準に行う必要は必ずしもなく、例えば扉14を基準に行ってもよい。
【0109】
また、上記の例では、基板Bへ部品を実装する作業を担当する部品実装機1が本発明の「部品実装関連機」の一例に相当する。ただし、部品実装関連機の具体例は部品実装機1に限られず、WO2019/234819(US 2021/0122152)等に記載の印刷装置のように、基板Bに半田を印刷する作業を担当する半田印刷機であってもよい。この半田印刷機に対して、部品実装機1の例と同様に、操作パネル16を設けて、これを「警告装置」や「ユーザインターフェース」として機能させることができる。さらに、部品実装機1の例と同様に、扉センサ141、警告ライト15、通信部140あるいは撮像カメラCo等を半田印刷機に適宜設けることができる。また、当然のことながら、半田印刷機と部品実装機1とが直列に配列された基板生産ラインLを備える基板生産システムSにおいて、上記と同様にAGVの運行管理を実行できる。さらに、部品実装関連機には、半田が印刷された基板Bを検査する半田検査機、部品が実装された基板Bを検査する実装検査機あるいは基板Bに印刷された半田を溶融するリフロー炉等が含まれ、これらに対して上記の実施形態を同様に適用できる。
【符号の説明】
【0110】
1…部品実装機
14…扉
16…操作パネル
5…AGV
54…周囲センサ
55…サーボモータ
551…エンコーダ
7…管理コンピュータ
71…演算部
8…携帯端末装置
B…基板
Co…撮像カメラ
E…部品
Ia…AGV位置情報
Idp…運行経路情報
Im…実装機稼働情報
Io…作業者位置情報
S…基板生産システム
M…記録媒体M
P…運行制御プログラムP