(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】免震装置及び免震装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20241202BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20241202BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20241202BHJP
F21V 21/00 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
F16F15/04 E
F16F15/04 H
F16F15/02 N
E04H9/02 351
F21V21/00 100
(21)【出願番号】P 2024122925
(22)【出願日】2024-07-30
【審査請求日】2024-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513254844
【氏名又は名称】奈木野 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161975
【氏名又は名称】米田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】奈木野 龍也
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-090451(JP,A)
【文献】特開昭63-199941(JP,A)
【文献】特開平10-038022(JP,A)
【文献】特開昭64-043643(JP,A)
【文献】特開平05-164168(JP,A)
【文献】特開平07-238989(JP,A)
【文献】特開平10-159895(JP,A)
【文献】特開平11-141603(JP,A)
【文献】特開2006-258112(JP,A)
【文献】特開2001-338519(JP,A)
【文献】特開平11-182620(JP,A)
【文献】特開2014-199124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02-15/08
E04H 9/02
F21V 21/00-21/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象物から第2対象物に伝わる揺れ、又は、前記第2対象物から前記第1対象物に伝わる揺れの少なくとも一方を軽減する免
震装置であって、
第1板状部材と、前記第1板状部材に形成される開口部と、前記第1板状部材に対面して位置する第2板状部材と、を有する筐体と、
前記第1板状部材に対面する第1面と、前記第2板状部材に対面する第2面とを有して、前記筐体に格納されて前記第1板状部材と前記第2板状部材の間に位置するとともに、前記筐体の内側の前記第1板状部材及び前記第2板状部材に沿ってスライド可能なスライド部材と、
前記スライド部材を前記スライド可能にする第1球体と、前記第1球体を回転可能に保持する第1ホルダ部と、を有して、前記開口部の外側における前記第1板状部材と前記第1面との間に位置する第1回転機構を複数有する第1回転機構群と、
前記スライド部材を前記スライド可能にする第2球体と、前記第2球体を回転可能に保持する第2ホルダ部と、を有して、前記第2板状部材と前記第2面との間に位置する第2回転機構を複数有する第2回転機構群と、
前記スライド部材に接続して前記スライド部材から前記開口部を通じて前記筐体の外側に延びて、前記筐体の外側に位置する前記第1対象物に接続する接続部と、
前記筐体の外側において前記第2板状部材に対面して位置する第3板状部材を有して、前記第3板状部材が前記第2板状部材の少なくとも一部を覆い、かつ、前記第2板状部材との間に空間を形成するように前記筐体に取り付けられ、前記第3板状部材に前記第2対象物を固定可能なカバー部材と、
を備え、
前記第1回転機構群は、
複数の前記第1ホルダ部が前記開口部の外側の前記第1板状部材に固定され、前記第1回転機構群における複数の前記第1球体が前記第1面に接触し、又は、複数の前記第1ホルダ部が前記第1面に固定され、前記第1回転機構群における複数の前記第1球体が前記開口部の外側の前記第1板状部材に接触し、
前記第2回転機構群は、
複数の前記第2ホルダ部が前記第2板状部材に固定され、前記第2回転機構群における複数の前記第2球体が前記第2面に接触し、又は、複数の前記第2ホルダ部が前記第2面に固定され、前記第2回転機構群における複数の前記第2球体が前記第2板状部材に接触する、
前記免震装置
と、
水平又は略水平に延びる第1フランジ部と、前記第1フランジ部に対向し、かつ、前記第1フランジ部の下方に位置する水平又は略水平に延びる第2フランジ部と、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部を接続するウェブ部を有して建物の躯体の上部における梁となるH鋼と、
前記第2フランジ部の上面における前記ウェブ部側から前記第2フランジ部の表面に沿って前記第2フランジ部の上面から側面を経て裏面に回り込んだのちに下方に延びる一対の板状部材と、
前記一対の板状部材を貫通し、かつ、前記一対の板状部材と締結可能な締結部材と、
前記一対の板状部材に連結するとともに、前記カバー部材に連結して固定される前記第2対象物である連結部材と、
を備える、免震装置の取付構造。
【請求項2】
前記躯体の上部に支持されて設けられる格子状のぶどう棚を備える、請求項
1に記載の
免震装置の取付構造。
【請求項3】
第1対象物
から吊り下げられて前記第1対象物から第2対象物に伝わる揺れ、又は、前記第2対象物
から吊り下げられて前記第2対象物から前記第1対象物に伝わる揺れの少なくとも一方を軽減する免
震装置であって、
第1板状部材と、前記第1板状部材に形成される開口部と、前記第1板状部材に対面して位置する第2板状部材と、を有する筐体と、
前記第1板状部材に対面する第1面と、前記第2板状部材に対面する第2面とを有して、前記筐体に格納されて前記第1板状部材と前記第2板状部材の間に位置するとともに、前記筐体の内側の前記第1板状部材及び前記第2板状部材に沿ってスライド可能なスライド部材と、
前記スライド部材を前記スライド可能にする第1球体と、前記第1球体を回転可能に保持する第1ホルダ部と、を有して、前記開口部の外側における前記第1板状部材と前記第1面との間に位置する第1回転機構を複数有する第1回転機構群と、
前記スライド部材を前記スライド可能にする第2球体と、前記第2球体を回転可能に保持する第2ホルダ部と、を有して、前記第2板状部材と前記第2面との間に位置する第2回転機構を複数有する第2回転機構群と、
前記スライド部材に接続して前記スライド部材から前記開口部を通じて前記筐体の外側に延びて、前記筐体の外側に位置する前記第1対象物に接続する接続部と、
前記筐体の外側において前記第2板状部材に対面して位置する第3板状部材を有して、前記第3板状部材が前記第2板状部材の少なくとも一部を覆い、かつ、前記第2板状部材との間に空間を形成するように前記筐体に取り付けられ、前記第3板状部材に前記第2対象物を固定可能
であるとともに、前記第3板状部材が底となって前記空間を形成する凹部を有するカバー部材と、
を備え、
前記第1回転機構群は、
複数の前記第1ホルダ部が前記開口部の外側の前記第1板状部材に固定され、前記第1回転機構群における複数の前記第1球体が前記第1面に接触し、又は、複数の前記第1ホルダ部が前記第1面に固定され、前記第1回転機構群における複数の前記第1球体が前記開口部の外側の前記第1板状部材に接触し、
前記第2回転機構群は、
複数の前記第2ホルダ部が前記第2板状部材に固定され、前記第2回転機構群における複数の前記第2球体が前記第2面に接触し、又は、複数の前記第2ホルダ部が前記第2面に固定され、前記第2回転機構群における複数の前記第2球体が前記第2板状部材に接触し
、
前記接続部が前記第1対象物から吊り下げられる場合には、前記第3板状部材から前記第2対象物が吊り下げられ、
前記第3板状部材が前記第2対象物から吊り下げられる場合には、前記接続部から前記第1対象物が吊り下げられる、免震装置。
【請求項4】
前記第1回転機構群を前記第2回転機構群の上方に配置して前記接続部が上方に位置する前記第1対象物に固定されるとともに、前記カバー部材が下方に位置する前記第2対象物に固定された際に前記第1対象物が揺れると、前記接続部を通じて前記スライド部材が揺れ、前記スライド部材を格納する前記筐体への揺れが軽減され、前記筐体に取り付けられた前記カバー部材に固定された前記第2対象物に対する揺れが軽減され、
前記第2回転機構群を前記第1回転機構群の上方に配置して前記接続部が下方に位置する前記第1対象物に固定されるとともに、前記カバー部材が上方に位置する前記第2対象物に固定された際に前記第2対象物が揺れると、前記カバー部材に取り付けられた前記筐体が前記カバー部材を通じて揺れ、前記筐体に格納された前記スライド部材への揺れが軽減され、前記接続部を通じて前記スライド部材に繋がる前記第1対象物に対する揺れが軽減される、請求項
3に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置及び免震装置の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井から吊り下げた照明器具が地震の際に揺れるのを防止する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、照明器具が吊り下がり、かつ、水平方向にスライド可能な可動部を下側から球体で支持することで、天井からの揺れが照明器具に伝わるのを抑制する。しかし、特許文献1の装置では、照明器具を吊り下げる可動部の下側に球体を配置する必要がある。そのため、特許文献1の装置を上下反転させて取り付けることはできず、装置を取り付ける際の向きに制限があるため、汎用性に乏しい。
【0005】
本発明の課題は、上下を反転して取り付けることが可能な汎用性の高い免震装置及び免震装置の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の免震装置は、
第1対象物から吊り下げられて第1対象物から第2対象物に伝わる揺れ、又は、第2対象物から吊り下げられて第2対象物から第1対象物に伝わる揺れの少なくとも一方を軽減する免震装置であって、
第1板状部材と、第1板状部材に形成される開口部と、第1板状部材に対面して位置する第2板状部材と、を有する筐体と、
第1板状部材に対面する第1面と、第2板状部材に対面する第2面とを有して、筐体に格納されて第1板状部材と第2板状部材の間に位置するとともに、筐体の内側の第1板状部材及び第2板状部材に沿ってスライド可能なスライド部材と、
スライド部材をスライド可能にする第1球体と、第1球体を回転可能に保持する第1ホルダ部と、を有して、開口部の外側における第1板状部材と第1面との間に位置する第1回転機構を複数有する第1回転機構群と、
スライド部材をスライド可能にする第2球体と、第2球体を回転可能に保持する第2ホルダ部と、を有して、第2板状部材と第2面との間に位置する第2回転機構を複数有する第2回転機構群と、
スライド部材に接続してスライド部材から開口部を通じて筐体の外側に延びて、筐体の外側に位置する第1対象物に接続する接続部と、
筐体の外側において第2板状部材に対面して位置する第3板状部材を有して、第3板状部材が第2板状部材の少なくとも一部を覆い、かつ、第2板状部材との間に空間を形成するように筐体に取り付けられ、第3板状部材に第2対象物を固定可能であるとともに、第3板状部材が底となって空間を形成する凹部を有するカバー部材と、
を備え、
第1回転機構群は、
複数の第1ホルダ部が開口部の外側の第1板状部材に固定され、第1回転機構群における複数の第1球体が第1面に接触し、又は、複数の第1ホルダ部が第1面に固定され、第1回転機構群における複数の第1球体が開口部の外側の第1板状部材に接触し、
第2回転機構群は、
複数の第2ホルダ部が第2板状部材に固定され、第2回転機構群における複数の第2球体が第2面に接触し、又は、複数の第2ホルダ部が第2面に固定され、第2回転機構群における複数の第2球体が第2板状部材に接触し、
接続部が第1対象物から吊り下げられる場合には、第3板状部材から第2対象物が吊り下げられ、
第3板状部材が第2対象物から吊り下げられる場合には、接続部から第1対象物が吊り下げられる。
【0007】
例えば、第1回転機構群を第2回転機構群の上方に配置して接続部が上方に位置する第1対象物に固定されるとともに、カバー部材が下方に位置する第2対象物に固定された際に第1対象物が揺れると、接続部を通じてスライド部材が揺れ、スライド部材を格納する筐体への揺れが軽減され、筐体に取り付けられたカバー部材に固定された第2対象物に対する揺れが軽減される。また、例えば、第2回転機構群を第1回転機構群の上方に配置して接続部が下方に位置する第1対象物に固定されるとともに、カバー部材が上方に位置する第2対象物に固定された際に第2対象物が揺れると、カバー部材に取り付けられた筐体がカバー部材を通じて揺れ、筐体に格納されたスライド部材への揺れが軽減され、接続部を通じてスライド部材に繋がる第1対象物に対する揺れが軽減される。そのため、本発明の免震装置は、上下を反転して取り付けることが可能であり、汎用性が高い。
【0008】
本発明の実施態様では、
スライド部材を筐体の内側におけるスライド部材の初期位置に向けて付勢する弾性部材を備えもよい。
【0009】
これによれば、スライド部材が地震などの何らかの拍子に移動した場合であっても、弾性部材により初期位置に向けて復帰させることが可能となる。
【0010】
本発明の実施態様では、
弾性部材は、
一端と他端とを有するコイルバネ部材を有して、一端側がスライド部材に接続するとともに、他端側が筐体に接続することでスライド部材と筐体とを接続するとともに、スライド部材を初期位置に向けて付勢する第1弾性部材と、
一端部と他端部とを有する湾曲した板バネ部材を有して、一端部側がスライド部材に接続するとともに、他端部側が筐体に接続することでスライド部材と筐体とを接続するとともに、スライド部材を初期位置に向けて付勢する第2弾性部材と、
を備えてもよい。
【0011】
これによれば、コイルバネ部材を有する第1弾性部材と、板バネ部材を有する第2弾性部材の2種類の弾性部材により、スライド部材を初期位置に向けて復帰させることが可能となる。2種類の弾性部材を用いることで、一方の弾性部材によりスライド部材を初期位置に向けて復帰させる際に、初期位置を通り越す過度な復元力が作用する場合は、他方の弾性部材により過度な復元力を緩衝させることが可能となる。
【0012】
本発明の実施態様では、
カバー部材と第2板状部材との間に位置する第3弾性部材を備え、
カバー部材と第2板状部材との間に第3弾性部材を挟んでカバー部材が筐体に取り付けられてもよい。
【0013】
これによれば、カバー部材から筐体又は筐体からカバー部材に伝わる方向の振動が加えられた際に、第3弾性部材によって、そのような振動を吸収することが可能となる。
【0014】
本発明の実施態様では、
接続部は、
一端側がスライド部材に固定されるとともに、他端側が第1対象物に接続する棒状部材と、
棒状部材に挿入されるスプリング部材と、
スプリング部材をスライド部材に押し付けた状態でスプリング部材及び棒状部材を一体に保持する保持部と、
を備えてもよい。
【0015】
これによれば、接続部からスライド部材又はスライド部材から接続部に伝わる方向の振動が加えられた際に、スプリング部材によって、そのような振動を吸収することが可能となる。
【0016】
また、本発明の免震装置の取付構造は、
第1対象物から第2対象物に伝わる揺れ、又は、第2対象物から第1対象物に伝わる揺れの少なくとも一方を軽減する免震装置であって、
第1板状部材と、第1板状部材に形成される開口部と、第1板状部材に対面して位置する第2板状部材と、を有する筐体と、
第1板状部材に対面する第1面と、第2板状部材に対面する第2面とを有して、筐体に格納されて第1板状部材と第2板状部材の間に位置するとともに、筐体の内側の第1板状部材及び第2板状部材に沿ってスライド可能なスライド部材と、
スライド部材をスライド可能にする第1球体と、第1球体を回転可能に保持する第1ホルダ部と、を有して、開口部の外側における第1板状部材と第1面との間に位置する第1回転機構を複数有する第1回転機構群と、
スライド部材をスライド可能にする第2球体と、第2球体を回転可能に保持する第2ホルダ部と、を有して、第2板状部材と第2面との間に位置する第2回転機構を複数有する第2回転機構群と、
スライド部材に接続してスライド部材から開口部を通じて筐体の外側に延びて、筐体の外側に位置する第1対象物に接続する接続部と、
筐体の外側において第2板状部材に対面して位置する第3板状部材を有して、第3板状部材が第2板状部材の少なくとも一部を覆い、かつ、第2板状部材との間に空間を形成するように筐体に取り付けられ、第3板状部材に第2対象物を固定可能なカバー部材と、
を備え、
第1回転機構群は、
複数の第1ホルダ部が開口部の外側の第1板状部材に固定され、第1回転機構群における複数の第1球体が第1面に接触し、又は、複数の第1ホルダ部が第1面に固定され、第1回転機構群における複数の第1球体が開口部の外側の第1板状部材に接触し、
第2回転機構群は、
複数の第2ホルダ部が第2板状部材に固定され、第2回転機構群における複数の第2球体が第2面に接触し、又は、複数の第2ホルダ部が第2面に固定され、第2回転機構群における複数の第2球体が第2板状部材に接触する、免震装置と、
水平又は略水平に延びる第1フランジ部と、第1フランジ部に対向し、かつ、第1フランジ部の下方に位置する水平又は略水平に延びる第2フランジ部と、第1フランジ部及び第2フランジ部を接続するウェブ部を有して建物の躯体の上部における梁となるH鋼と、
第2フランジ部の上面におけるウェブ部側から第2フランジ部の表面に沿って第2フランジ部の上面から側面を経て裏面に回り込んだのちに下方に延びる一対の板状部材と、
一対の板状部材を貫通し、かつ、一対の板状部材と締結可能な締結部材と、
一対の板状部材に連結するとともに、カバー部材に連結して固定される第2対象物である連結部材と、
を備える。
【0017】
本発明の免震装置の取付構造では、建物の躯体の上部における梁となるH鋼に対して一対の板状部材を強固に固定することが可能となる。そして、強固に固定された一対の板状部材に連結部材を介して免震装置を固定することができる。そのため、免震装置を強固に固定された建物を提供できる。
【0018】
本発明の実施態様では、
躯体の上部に支持されて設けられる格子状のぶどう棚を備えてもよい。
【0019】
これによれば、建物の耐震性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図1の免震装置が取り付けられた状態の一例を示す模式正面図。
【
図3】
図1の免震装置を上下反転して取り付けられた状態の一例を示す模式正面図。
【
図5】
図4の免震装置から第2板状部材、第2回転機構群、接続部及びカバー部材などを省略し、免震装置の筐体内における各部材の位置関係を示す模式平面図。
【
図8】本発明の免震装置の変形例1を示す模式正面図。
【
図9】本発明の免震装置の変形例2を示す模式正面図。
【
図10】本発明の免震装置の変形例3を示す模式正面図。
【
図11】本発明の免震装置の変形例4を示す模式正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一例の免震装置1を示す模式正面図である。免震装置1は、例えば、
図2に示すように建物の躯体の上部に位置する梁Bに吊り下がるように取り付けられる。吊り下げられた
図2の免震装置1には、天井材Cが取り付けられる。
図2の免震装置1では、地震などによって建物(梁B)から天井材Cなどに伝わる揺れを軽減する。また、
図2のように取り付けられた免震装置1の上下を反転すると、例えば、
図3に示すように、免震装置1は、建物の躯体の上部に位置する梁Bから吊り下げられた部材に取り付けられる。吊り下げられた
図3の免震装置1には、照明器具などの吊り下げ設備Fが取り付けられる。
図3の免震装置1では、地震などによって建物(梁B)から吊り下げ設備Fに伝わる揺れを軽減する。
【0022】
図1に戻って、免震装置1は、筐体2と、筐体2に格納されるスライド部材3と、スライド部材3をスライドさせる第1回転機構群4及び第2回転機構群5と、スライド部材3に接続する接続部6と、筐体2の少なくとも一部を覆うカバー部材7と、筐体2とスライド部材3とを接続するコイルバネ部材8と、筐体2とスライド部材3とを接続する板バネ部材9と、筐体2とカバー部材7の間に位置するコイルバネ部材10と、を備える。
【0023】
筐体2は、矩形の断面を有する筒状に形成される。筐体2は、第1板状部材2aと、第1板状部材2aに対面して位置する第2板状部材2bと、第1板状部材2aと第2板状部材2bを接続する第3板状部材2c及び第4板状部材2dと、を備える。また、筒状の筐体2は、両側に矩形状の開口部2eを備える。
【0024】
筐体2の一部を構成する第1板状部材2aは、表面及び裏面が平らな矩形のプレート状に形成される。ここで、
図4には、免震装置1の模式平面図が示される。
図5には、
図4の免震装置1において、第2板状部材2b、第2回転機構群5、接続部6及びカバー部材7などを省略した模式平面図が示される。
図6には、免震装置1の模式側面図が示される。
図5に示すように、第1板状部材2aの中央には、第1板状部材2aの表面から裏面まで貫通している円状の開口部H(貫通孔)が形成される。
図1に戻って、第1板状部材2aに対面して位置する第2板状部材2bは、表面及び裏面が平らな矩形のプレート状に形成される。第2板状部材2bには、第3板状部材2c及び第4板状部材2dが接続する。第3板状部材2c及び第4板状部材2dは、L字状のプレートとして形成される。第3板状部材2cは、第2板状部材2bの接続する第1プレート2c1と、第2板状部材2bに対面する第2プレート2c2とを有する。第4板状部材2dは、第2板状部材2bの接続する第1プレート2d1と、第2板状部材2bに対面する第2プレート2d2とを有する。第2板状部材2b、第3板状部材2c及び第4板状部材2dは、断面が略C字状のプレート部材P(例えばリップ溝形鋼)として一体に形成される。第2プレート2c2と第2プレート2d2は同一平面上又は略同一平面状に位置する。第1板状部材2aは、略C字状のプレート部材Pの内側に挿入された状態で、一端側が第2プレート2c2に支持されるとともに、他端側が第2プレート2d2に支持される。第1板状部材2aと第2プレート2c2は、ボルトやナットなどの締結部材FMにより互いに固定される。第1板状部材2aと第2プレート2d2も同様に締結部材FMにより互いに固定される。第1板状部材2aとプレート部材Pが固定された状態で、第1板状部材2aと第2板状部材2bは、互いに平行又は略平行に位置する。筐体2の内部は、直方体状の空間が形成される。
【0025】
筐体2の内部には、スライド部材3が格納される。スライド部材3は、表面及び裏面が平らな円盤状のプレートとして形成される。スライド部材3は、第1板状部材2aと第2板状部材2bの間に位置する。スライド部材3は、第1板状部材2aに対面する第1面3aと、第2板状部材2bに対面する第2面3bとを有する。スライド部材3は、第1回転機構群4及び第2回転機構群5により、筐体2の内側の第1板状部材2a及び第2板状部材2bに沿って水平又は略水平にスライド可能となる。
図5に示すスライド部材3の初期位置は、第1板状部材2aの中央とスライド部材3の中心Оが重なる位置である。
図1のスライド部材3も初期位置に配置されている。
図1において、スライド部材3は、初期位置から水平又は略水平方向に移動可能となる。
【0026】
筐体2の内部の下側には、スライド部材3をスライド可能にする第1回転機構群4が備わる。
図5に示すように、スライド部材3の下側に位置する第1回転機構群4は、複数(6つ)の第1回転機構4aとして構成されている。第1回転機構4aは、スライド部材3が水平面上又は略水平面上をスライド移動可能にする、例えば、周知のボールキャスターとして構成される。第1回転機構4aは、スライド部材3をスライド可能にする第1球体4a1と、第1球体4a1を回転可能に保持する第1ホルダ部4a2と、を有する。第1ホルダ部4a2は、第1球体4a1を収容し、かつ、第1球体4a1を全方向に回転自在に保持するケーシングとして構成される。第1ホルダ部4a2は、開口部H1を有する。第1球体4a1は、開口部H1から自身の一部が第1ホルダ部4a2の外側に突出した状態で、第1ホルダ部4a2に回転自在に保持される。
図5においては、第1回転機構4aは、第1板状部材2aの開口部Hの外側において、開口部Hを中心とした同心円状に等間隔に配置される。
図1に戻って、第1回転機構4aは、第1板状部材2aとスライド部材3の第1面3aとの間に位置する。第1回転機構4aは、第1ホルダ部4a2の開口部H1から突出した第1球体4a1がスライド部材3の第1面3aに接触する一方で、第1ホルダ部4a2は第1板状部材2aに固定部材FM1を用いて固定される。固定部材FM1は、例えば、ボルトとナットとして構成され、第1板状部材2a及び第1ホルダ部4a2に形成された固定用の穴(図示省略)にボルトを挿入した上でナットを取り付けることで、第1ホルダ部4a2が第1板状部材2aに固定される。第1板状部材2aに固定された複数の第1回転機構4aは、
図1に示すように、複数の第1球体4a1が高さを揃えて水平又は略水平に配置されるとともに、複数の第1球体4a1がスライド部材3を保持するように接触する。
【0027】
筐体2の内部の上側には、スライド部材3をスライド可能にする第2回転機構群5が備わる。第2回転機構群5は、複数(6つ)の第2回転機構5aとして構成されている。第2回転機構5aは、スライド部材3が水平面上又は略水平面上をスライド移動可能にする、例えば、周知のボールキャスターとして構成される。第2回転機構5aは、スライド部材3をスライド可能にする第2球体5a1と、第2球体5a1を回転可能に保持する第2ホルダ部5a2と、を有する。第2ホルダ部5a2は、第2球体5a1を収容し、かつ、第2球体5a1を全方向に回転自在に保持するケーシングとして構成される。第2ホルダ部5a2は、開口部H2を有する。第2球体5a1は、開口部H2から自身の一部が第2ホルダ部5a2の外側に突出した状態で、第2ホルダ部5a2に回転自在に保持される。第2回転機構5aの各部材は、例えば、第1回転機構4aと同様に構成される。各第2回転機構5aは、スライド部材3を間に挟んで各第1回転機構4aと対向して位置する。図示省略してあるが、複数の第2回転機構5aは、複数の第1回転機構4aと同様に、同心円状に等間隔に配置される。各第2回転機構5aは、第2板状部材2bとスライド部材3の第2面3bとの間に位置する。第2回転機構5aは、第2ホルダ部5a2の開口部H2から突出した第2球体5a1がスライド部材3の第2面3bに接触する一方で、第2ホルダ部5a2は第2板状部材2bに固定部材FM2を用いて固定される。固定部材FM2は、例えば、ボルトとナットとして構成され、第2板状部材2b及び第2ホルダ部5a2に形成された固定用の穴(図示省略)にボルトを挿入した上でナットを取り付けることで、第2ホルダ部5a2が第2板状部材2bに固定される。第2板状部材2bに固定された複数の第2回転機構5aは、
図1に示すように、複数の第2球体5a1が高さを揃えて水平又は略水平に配置されるとともに、複数の第2球体5a1がスライド部材3を保持するように接触する。
【0028】
筐体2の内部のスライド部材3には接続部6が取り付けられる。接続部6は、スライド部材3側から第1板状部材2aの開口部H(
図5)を通じて筐体2の外側に直線状に延びる。接続部6は、スライド部材3の中央部を貫通して取り付けられて筐体2の外側に直線状に延びる棒状部材6aと、棒状部材6aに挿入されるスプリング部材6bと、スプリング部材6bをスライド部材3に押し付けた状態でスプリング部材6b及び棒状部材6aを一体に保持する保持部6cと、を備える。棒状部材6aは、一端側がスライド部材3に固定されるとともに、他端側が照明器具などの吊り下げ設備Fが取り付けられる(
図3)。棒状部材6aとしては、例えば、寸切りボルトが採用される。スプリング部材6bとしては、例えば、コイルバネが採用される。保持部6cとしては、例えば、ワッシャー及びナットが採用される。図示省略してあるが、スライド部材3の中央に形成された貫通孔に棒状部材6aが挿入された上で、スライド部材3を挟むように棒状部材6aには2つのスプリング部材6bが挿入される。スライド部材3の両面をスプリング部材6bで挟むようにして、スプリング部材6bをスライド部材3に押し付けた状態でスプリング部材6b及び棒状部材6aが保持部6cによって一体に保持される。保持部6cにより、スライド部材3と接続部6が一体に固定される。
【0029】
筐体2の外側では、筐体2の上からカバー部材7が筐体2に取り付けられる。カバー部材7は、
図1に示すように窪みを有する平面状のプレートとして構成される。カバー部材7は、平面状の一端部7aと、平面状の他端部7bと、一端部7aと他端部7bに接続する凹部7cとを備える。凹部7cは、自身の底となる平面状の底面7c1を有する。カバー部材7は、筐体2の外側において第2板状部材2bに対面して底面7c1が位置し、底面7c1が第2板状部材2bの少なくとも一部を覆う。そして、カバー部材7は、第2板状部材2bとの間に空間Sを形成するように筐体2に取り付けられる。また、カバー部材7と筐体2との間にはコイルバネ部材10が位置し、カバー部材7と筐体2との間にコイルバネ部材10を挟み、カバー部材7が筐体2に取り付けられる。具体的には、一端部7a、他端部7b及び第2板状部材2bに形成された固定用の穴(図示省略)にボルトB1を挿入した上で、ボルトB1にワッシャーW1を挿入した上でナットN1を取り付けて、カバー部材7と筐体2との間にコイルバネ部材10を挟んだ状態でカバー部材7が筐体2に取り付けられる。
図3では、凹部7cの底面7c1には角パイプSPが固定され、角パイプSPを通じて免震装置1が建物の躯体の上部に位置する梁Bに取り付けられる。
【0030】
図1に戻って、筐体2の内側には、筐体2とスライド部材3とを接続するコイルバネ部材8が位置する。コイルバネ部材8は、一端部と他端部を有して螺旋状に形成されるコイルバネ8aと、コイルバネ8aの一端部が固定されるアイボルト8bと、コイルバネ8aの他端部が固定される固定部材FM3と、を備える。
図5に示すように、アイボルト8bは、リング部8b1とボルト部8b2を有する。アイボルト8bは、ボルト部8b2により第3板状部材2c及び第4板状部材2dにそれぞれ2つ取り付けられる。アイボルト8bのリング部8b1にはコイルバネ8aの一端部が固定される。
図1に戻って、固定部材FM3は、ボルトB2と、ワッシャーW2と、ナットN2とを有する。スライド部材3に形成された固定用の穴(図示省略)にボルトB2を挿入した上で、ボルトB2にワッシャーW2を挿入してボルトB2の両側からナットN2を取り付けて、コイルバネ8aの他端部をスライド部材3とナットN及びワッシャーで挟むようにしてコイルバネ8aをスライド部材3に固定する。
図5に示すように、円盤状のスライド部材3の内周部において等間隔に4つのコイルバネ部材8が取り付けられる。コイルバネ部材8は、円盤状のスライド部材3の径方向に沿うように4つ配置される。
【0031】
筐体2の内側には、筐体2とスライド部材3とを接続する板バネ部材9が位置する。板バネ部材9は、一端部と他端部を有して湾曲したプレート状に形成される板バネを備える。一端部は、アイボルト8bのボルト部8b2と第3板状部材2c及びボルト部8b2と第4板状部材2dに挟まれるようにして筐体2に固定される。他端部は、ボルトB2に巻き付くようにして固定部材FM3を通じてスライド部材3に固定される。
図5に示すように、円盤状のスライド部材3の内周部において4つの板バネ部材9が取り付けられ、板バネ部材9bは、ボルトB2からボルト部8b2に向けて円弧を描くように配置される。
【0032】
筐体2とスライド部材3とを接続するコイルバネ部材8及び板バネ部材9により、スライド部材3が初期位置に向けて付勢される。スライド部材3は、コイルバネ部材8及び板バネ部材9によって、
図5において、第1板状部材2aの中央とスライド部材3の中心Оが重なる初期位置にスライド部材3が配置される。
【0033】
図1に戻って、筐体2とカバー部材7の間にはコイルバネ部材10が取り付けられる。コイルバネ部材10はボルトB1に挿入された状態でカバー部材7と筐体2との間に挟まれた状態で筐体2に取り付けられる。コイルバネ部材10は、カバー部材7の四隅にそれぞれ取り付けられる。コイルバネ部材10は、上下方向からの振動(例えば、カバー部材7から伝わる振動や、接続部6から伝わる振動など)を吸収できるように、上下方向からの振動に対してコイルバネ部材10が圧縮して振動を吸収できるように、コイルバネ部材10が、例えば自然長の状態になるようにして筐体2とカバー部材7の間に取り付けられる。
【0034】
以上、免震装置1の主要な構成について説明した。次に、免震装置1の使用方法を説明する。免震装置1は、例えば、
図3に示すように、建物の躯体の上部に位置する梁Bから吊り下げられた部材に取り付けられる。
図3の梁Bとしては、例えばH鋼11が採用される。H鋼11は、水平又は略水平に延びる第1フランジ部11aと、第1フランジ部11aに対向し、かつ、第1フランジ部11aの下方に位置する水平又は略水平に延びる第2フランジ部11bと、第1フランジ部11a及び第2フランジ部11bを接続するウェブ部11cを有する。H鋼11の下部には一対の板状部材12が取り付けられる。一対の板状部材12は、第2フランジ部11bの上面におけるウェブ部11c側から第2フランジ部11bの表面に沿って第2フランジ部の上面11b1から側面11b2を経て裏面11b3に回り込んだのちに下方に延びる一対のプレート部材として構成される。一対の板状部材12には、一対の板状部材12を貫通するとともに、一対の板状部材12と締結可能な締結部材13が取り付けられる。一対の板状部材12に角パイプSPが固定され、角パイプSPがカバー部材7の底面7c1には角パイプSPが固定されることで、免震装置1が建物に取り付けられる。建物に取り付けられた免震装置1の接続部6には、照明器具などの吊り下げ設備Fが取り付けられる。また、免震装置1を取り付ける用途や免震装置1を取り付ける建物の構造に応じて、
図3の免震装置1の上下を反転し、
図2に示すように、建物の躯体の上部に位置する梁Bに接続部6が接続する一方で、カバー部材7の底面7c1には矩形プレート状の天井材Cが取り付けられる。天井材Cには、例えば、カセット型エアコンACが取り付けられ、カセット型エアコンACが免震装置1を間に挟んで建物の上部から吊り下げられる。なお、免震装置1が取り付けられた建物の躯体の上部においては、
図7に示すように、上部から支持されて設けられる格子状のぶどう棚GSが備わる。
【0035】
例えば、
図2では、第1回転機構群4を第2回転機構群5の上方に配置して接続部6が上方に位置する梁Bに固定されるとともに、カバー部材7が下方に位置する天井材Cに固定された状態で免震装置1が建物に取り付けられている。このように免震装置1が取り付けられた建物が地震などで揺れると、建物からの揺れが梁Bを通じて接続部6に伝わる。ここで、接続部6は、保持部6cによりスライド部材3と固定されるため、接続部6を通じてスライド部材3も揺れる。スライド部材3は、水平又は略水平に配置された複数の第1球体4a1と、水平又は略水平に配置された複数の第2球体5a1とにより上下から挟まれるようにして保持される。そのため、建物からの揺れとして横揺れがスライド部材3に伝わる場合には、スライド部材3が水平又は略水平にスライド移動する。一方で、スライド部材3がスライド移動する際には、スライド部材3を挟む複数の第1球体4a1と複数の第2球体5a1が各ホルダ部(第1ホルダ部4a2、第2ホルダ部5a2)に保持された状態で回転することにより、スライド部材3の揺れが筐体2側に伝わるのが軽減され、筐体2に取り付けられたカバー部材7に固定された天井材C及び天井材Cから吊り下げられたカセット型エアコンACに対する揺れも軽減される。なお、同様に、仮に、カセット型エアコンAC側から揺れが発生した場合には、その揺れが建物に伝わるのが軽減される。
【0036】
同様に、
図3では、第2回転機構群5を第1回転機構群4の上方に配置して接続部6が下方に位置する照明器具などの吊り下げ設備Fが固定されるとともに、カバー部材7が上方に位置する角パイプSPに固定された状態で免震装置1が建物に取り付けられている。このように免震装置1が取り付けられた建物が地震などで揺れると、建物からの揺れが角パイプSPを通じてカバー部材7に伝わる。ここで、カバー部材7は、ボルトB1などにより筐体2と固定されるため、カバー部材7を通じて筐体2が揺れる。ここで、筐体2と一体に取り付けられた第1回転機構群4の複数の第1球体4a1と、筐体2と一体に取り付けられた第2回転機構群5の複数の第2球体5a1とが上下からスライド部材3を挟んで保持するように位置する。そのため、建物からの横揺れが筐体2に伝わる場合には、筐体2が水平又は略水平方向に揺れる。筐体2が揺れる際には、筐体2とともに第1回転機構群4と第2回転機構群5も揺れるが、スライド部材3を挟む第1回転機構群4の複数の第1球体4a1と第2回転機構群5の複数の第2球体5a1が各ホルダ部(第1ホルダ部4a2、第2ホルダ部5a2)に保持された状態でスライド部材3の表面を滑るように回転することで、筐体2側の揺れがスライド部材3側に伝わるのが軽減され、スライド部材3に接続する接続部6や接続部6に固定される吊り下げ設備Fへの揺れも軽減される。なお、同様に、仮に、吊り下げ設備Fから揺れが発生した場合には、その揺れが建物に伝わるのが軽減される。
【0037】
地震の横揺れにより、初期位置から水平又は略水平方向に移動したスライド部材3は、
図5に示すようにスライド部材3を初期位置に付勢するコイルバネ部材8及び板バネ部材9によって、水平又は略水平方向の動きが吸収されるとともに、コイルバネ部材8及び板バネ部材9の復元力によって、最終的には初期位置に復帰する。ここで、
図5に示すようにコイルバネ部材8は直線状に配置され、コイルバネ部材8の両端に接続するように弧状に板バネ部材9が配置される。そのため、コイルバネ部材8では吸収しきれないスライド部材3の揺れについては、板バネ部材9により吸収される。逆も同様である。
【0038】
なお、建物からの揺れとして縦揺れが発生した場合には、
図1に示すように筐体2とカバー部材7との間に位置するコイルバネ部材10により縦揺れが吸収されるとともに、スライド部材3の両面を挟むようにして位置するスプリング部材6bにおいても、縦揺れが吸収される。そのため、
図2では天井材C及びカセット型エアコンACに対する揺れが軽減され、
図3では吊り下げ設備Fに対する揺れが軽減される。
【0039】
免震装置1では、
図2及び
図3に示すように、免震装置1の上下を反転して取り付けることが可能となり、汎用性が高くなる。
【0040】
図5に示すように、免震装置1は、スライド部材3を筐体2の内側におけるスライド部材3の初期位置に向けて付勢するコイルバネ部材8及び板バネ部材9を有する。そのため、スライド部材3が地震などの何らかの拍子に水平又は略水平方向に移動した場合であっても、コイルバネ部材8及び板バネ部材9より初期位置に向けて復帰させることが可能となる。コイルバネ部材8と板バネ部材9の2種類の弾性部材を用いることで、一方の弾性部材によりスライド部材3を初期位置に向けて復帰させる際に、初期位置を通り越す過度な復元力が作用する場合は、他方の弾性部材により過度な復元力を緩衝させることが可能となる。
【0041】
図1に戻って、免震装置1は、カバー部材7と第2板状部材2bとの間にコイルバネ部材10を挟んでカバー部材7が筐体2に取り付けられる。そのため、カバー部材7から筐体2又は筐体2からカバー部材7に伝わる方向の振動が加えられた際に、コイルバネ部材10によって、そのような振動を吸収することが可能となる。
【0042】
また、接続部6は、一端側がスライド部材3に固定される棒状部材6aと、棒状部材6aに挿入されるスプリング部材6bと、スプリング部材6bをスライド部材3に押し付けた状態でスプリング部材6b及び棒状部材6aを一体に保持する保持部6cと、を備える。そのため、接続部6からスライド部材3又はスライド部材3から接続部6に伝わる方向の振動が加えられた際に、スプリング部材6bによって、そのような振動を吸収することが可能となる。
【0043】
図3に示すように、免震装置1を取り付けられる建物においては、梁BとなるH鋼11の下部には一対の板状部材12が取り付けられる。一対の板状部材12は、H鋼11の第2フランジ部11bの上面11b1におけるウェブ部11c側から第2フランジ部11bの表面に沿って第2フランジ部の上面11b1から側面11b2を経て裏面11b3に回り込んだのちに下方に延びる。そして、一対の板状部材12を貫通するとともに、一対の板状部材12と締結可能な締結部材13が取り付けられる。そのため、H鋼11に一対の板状部材12を強固に固定できる。そして、一対の板状部材12に角パイプSPが固定され、角パイプSPを通じて免震装置1が取り付けられる。そのため、免震装置1を強固に建物に固定できる。更に、
図7に示すように免震装置1を取り付けた建物においては、建物の躯体の上部から支持されるようにぶどう棚GSを備えることで、建物の耐震性を高めることができる。
【0044】
ここで、本実施形態と特許請求の範囲に記載の文言との対応関係を説明する。本実施形態の免震装置1が「免震装置」に相当する。筐体2が「筐体」、第1板状部材2aが「第1板状部材」、第2板状部材2bが「第2板状部材」に相当する。スライド部材3が「スライド部材」、第1面3aが「第1面」、第2面3bが「第2面」に相当する。第1回転機構群4が「第1回転機構群」、第1回転機構4aが「第1回転機構」、第1球体4a1が「第1球体」、第1ホルダ部4a2が「第1ホルダ部」に相当する。第2回転機構群5が「第2回転機構群」、第2回転機構5aが「第2回転機構」、第2球体5a1が「第2球体」、第2ホルダ部5a2が「第2ホルダ部」に相当する。接続部6が接続部に相当する。カバー部材7が「カバー部材」、底面7c1が「第3板状部材」に相当する。なお、筐体としては、スライド部材などの各部材を収容できるものであればよく、必ずしも閉じた器である必要はない。第3板状部材としては、必ずしも平面状のプレートである必要なく、湾曲したプレートであっても良い。
【0045】
コイルバネ部材8及び板バネ部材9が「弾性部材」に相当する。コイルバネ部材8が「第1弾性部材」に相当する。板バネ部材9が「第2弾性部材」に相当する。コイルバネ部材10が「第3弾性部材」に相当する。棒状部材6aが「棒状部材」、スプリング部材6bが「スプリング部材」、保持部6cが「保持部」に相当する。H鋼11が「H鋼」、一対の板状部材12が「一対の板状部材」、締結部材13が「締結部材」、角パイプSPが「連結部材」に相当する。ぶどう棚GSが「ぶどう棚」に相当する。なお、弾性部材として、コイルバネ部材8及び板バネ部材9を例示したが、コイルバネや板バネに限らず種々の部材を採用できる。
【0046】
以上、本発明の実施の態様を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【0047】
上記では、スライド部材3として円盤状のプレートを例示したが、
図8に示すように、2つの円盤状のプレートの隙間をあけて対面させ、ボルトB2で固定したものを採用しても良い。この場合には、例えば、ボルトB2の中央部にコイルバネ部材8及び板バネ部材9を巻き付けても良い。ボルトの中央部にコイルバネ部材8及び板バネ部材9が接続することで、スライド部材3が水平又は略水平方向にスライド移動しやすくなる。また、カバー部材7には、角パイプSPに代えて吊り下げボルトB3などを固定した上で、吊り下げ設備F(
図8では図示省略)などを吊り下げても良い。更に、カバー部材7と筐体2との間に挟まれるコイルバネ部材10に加えて、コイルバネ部材10との間にカバー部材7を挟むようにコイルバネ部材14を設けても良い。これにより、縦揺れをより効果的に吸収できる。
【0048】
図1においては、第1球体4a1の上部及び第2球体5a1の下部がスライド部材3と接触する例を示したが、
図8に示すように、第1球体4a1の上部が第1板状部材2aに接触し、第2球体5a1の上部がスライド部材3と接触してもよい。また、
図9に示すように第1球体4a1の下部がスライド部材3と接触し、第2球体5a1の下部が板状部材2bと接触してもよい。なお、
図9においては、コイルバネ部材8及び板バネ部材9などは省略してある。
【0049】
スライド部材としては、
図1及び
図8に示したものに限定されず、水平又は略水平にスライド移動可能なものであれば、どのような構成も採用できる。
図8のようなスライド部材を採用した場合には、
図9、
図10及び
図11に示すように第1回転機構群4及び第2回転機構群5の向きを適宜変更しても良い。なお、スライド部材3が移動した際に、接続部6が開口部Hの内周縁に緩衝しない程度の大きさに開口部Hは設定される。例えば、地震の震度などをもとに接続部6などが揺れ動く距離などを算出した上で開口部Hの径や形状などを設定してもよい。また、
図1に示すコイルバネ部材8及び板バネ部材9については設けなくても良い。その場合は、円盤状のスライド部材3の外周部にクッション部材を設け、筐体2とスライド部材3が接触した際の衝撃を緩衝してもよい。なお、
図10及び
図11においては、コイルバネ部材8及び板バネ部材9などは省略してある。
【0050】
図5では、6つの第1回転機構4aを配置する例を示したが、第1回転機構4aは6つ以上でも6つ以下でも良い。第2回転機構5aも同様である。また、第1回転機構4aと第2回転機構5aが上下方向において同一直線状に位置する例を示したが、必ずしも同一直線状に配置される必要はない。また、第1回転機構4aと第2回転機構5aの数が異なっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 免震装置
2 筐体
3 スライド部材
4 第1回転機構群
5 第2回転機構群
6 接続部
7 カバー部材
【要約】
【課題】上下を反転して取り付けることが可能な汎用性の高い免震装置を提供する。
【解決手段】第1対象物から第2対象物に伝わる揺れ、又は、第2対象物から第1対象物に伝わる揺れの少なくとも一方を軽減する免振装置1である。免震装置1は、筐体2と、スライド部材3と、第1及び第2回転機構群4、5と、接続部6と、カバー部材7とを備える。筐体2は、第1板状部材2aと、第1板状部材2aに形成される開口部Hと、第1板状部材2aに対面して位置する第2板状部材2bと、を有する。スライド部材3は、第1板状部材2aに対面する第1面3aと、第2板状部材2bに対面する第2面3bとを有して、筐体2に格納されて第1板状部材2aと第2板状部材2bの間に位置するとともに、筐体2の内側の第1板状部材2a及び第2板状部材2bに沿ってスライド可能である。第1回転機構群4及び第2回転機構5は、スライド部材3をスライド可能にする。
【選択図】
図1