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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/02 20120101AFI20241202BHJP
【FI】
F16H57/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024509224
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011608
(87)【国際公開番号】W WO2023182445
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2022047604
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝則
(72)【発明者】
【氏名】湯川 洋久
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 智雄
(72)【発明者】
【氏名】児島 謙治
(72)【発明者】
【氏名】東山 晃
(72)【発明者】
【氏名】湯本 泰章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 務
(72)【発明者】
【氏名】沼田 和也
(72)【発明者】
【氏名】川原 淳之介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和慶
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-45401(JP,A)
【文献】特開2015-135155(JP,A)
【文献】特開2022-78412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/02
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給する第1ポンプおよび第2ポンプと、を有する車両用の動力伝達装置であって、
前記ハウジングは、
前記動力伝達機構と前記第1ポンプを収容する第1室と、
前記第1室に水平線方向で隣接配置された第2室と、を有し、
前記第1室内において前記第1ポンプは、当該第1ポンプの回転軸を、前記動力伝達機構の回転軸に沿わせた向きで配置されており、
前記第2室内において前記コントロールバルブは、縦置き配置されており、
前記第2室内において前記第2ポンプは、当該第2ポンプの回転軸を、上下方向に沿わせた向きで縦置き配置されている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記コントロールバルブと前記第2ポンプは、前記第2室内で前記動力伝達機構の回転軸方向に並んでいる、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2室は、前記第1室から見て車両前方側に位置しており、
前記車両前方側から見て、前記コントロールバルブは切欠部を有しており、
前記車両前方側から見て、前記第2ポンプは、少なくとも一部が前記切欠部に配置されている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記車両前方側から見て前記切欠部は、前記コントロールバルブの下部に設けられており、
前記上下方向における一方側から見て、前記第2ポンプと前記コントロールバルブは、重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2ポンプは、
モータを収容するモータ部と、
前記モータの回転力でオイルを吸引加圧するポンプ部と、を有しており、
前記モータ部と前記ポンプ部は、前記第2ポンプの回転軸方向で並んでおり、
前記車両前方側から見て前記第2ポンプは、前記モータの回転軸を、前記動力伝達機構の回転軸に直交させた向きで設けられている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記ポンプ部は、前記モータ部よりも下側に位置している、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項において、
前記第1室内に配置されたストレーナを有し、
前記第1ポンプと前記第2ポンプは、前記ストレーナを共用する、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項7において、
両前方側から見て、前記コントロールバルブは、前記第1ポンプおよび前記ストレーナと重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-45401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この車両用の駆動装置(動力伝達装置)のケース(ハウジング)内では、油圧制御装置(コントロールバルブ)が起立姿勢で配置されている。さらに、ケース内では、電動オイルポンプとメカオイルポンプが、動力伝達装置の回転軸に沿う向きで、同軸に配置されている。
そのため、電動オイルポンプとメカオイルポンプは、動力伝達軸の回転軸方向に並んで配置される。電動オイルポンプとメカオイルポンプが回転軸方向で並んでいると、ケースにおける電動オイルポンプとメカオイルポンプを収容する部位が回転軸方向に大きくなる。
そこで、動力伝達装置を回転軸方向に大型化させずに、2つのポンプをケース内に配置できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給する第1ポンプおよび第2ポンプと、を有する車両用の動力伝達装置であって、
前記ハウジングは、
前記動力伝達機構と前記第1ポンプを収容する第1室と、
前記第1室に水平線方向で隣接配置された第2室と、を有し、
前記第1室内において前記第1ポンプは、当該第1ポンプの回転軸を、前記動力伝達機構の回転軸に沿わせた向きで配置されており、
前記第2室内において前記コントロールバルブは、縦置き配置されており、
前記第2室内において前記第2ポンプは、当該第2ポンプの回転軸を、上下方向に沿わせた向きで縦置き配置されている、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、第1ポンプの回転軸と第2ポンプ回転軸が、ハウジング内で同軸に配置されていないので、動力伝達装置を回転軸方向に大型化させずに、2つのポンプをハウジング内に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、車両における動力伝達装置の配置を説明する模式図である。
図2図2は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
図3図3は、ケースを第2カバー側から見た模式図である。
図4図4は、ケースを第1カバー側から見た模式図である。
図5図5は、ケースを車両前方側から見た模式図である。
図6図6は、油圧制御回路の概略構成を説明する図である。
図7図7は、変形例にかかる動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0009】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0013】
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0014】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。
【0015】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0016】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁(弁体)を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0017】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0018】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0019】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0020】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、車両Vにおける動力伝達装置1の配置を説明する模式図である。
図2は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
【0022】
図1に示すように、車両Vの前部において動力伝達装置1は、左右のフレームFR、FRの間に配置される。動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
図2に示すように、ハウジングHSの内部に、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
【0023】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0024】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0025】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0026】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合しており、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0027】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも表記する。
【0028】
図3は、ケース6を、第2カバー8側から見た平面図である。図4は、ケース6を、第1カバー7側から見た平面図である。なお、図3の拡大図では、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの図示を省略して、隔壁部62に設けた接続部625、627周りを示している。図3および図4では、接合部611、612の位置を判り易くするために、ハッチングを付して示している。
【0029】
図3に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。
周壁部61は、動力伝達装置1の回転軸に沿う向きで設けられており、動力伝達装置の外壁部を構成する。
隔壁部62は、周壁部61の内側で、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
【0030】
図2に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第3室S3である。
【0031】
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第3室S3には、バリエータ3が収容される。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止される。第3室S3側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止される。
ケース6では、第1カバー7と第2カバー8との間の空間(第1室S1、第3室S3)の下部に、動力伝達装置1の作動や、動力伝達装置1の構成要素の潤滑に用いられるオイルが貯留される。
【0032】
図3に示すように、ケース6は、第2カバー8側(紙面手前側)の端面が、第2カバー8との接合部611となっている。接合部611は、周壁部61の第2カバー8側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部611には、第2カバー8側の接合部811(図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第2カバー8は、互いの接合部611、811同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の開口が第2カバー8で封止された状態で保持されて、閉じられた第1室S1が形成される。
【0033】
図3に示すように、ケース6の隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~X4)に対して略直交する向きで設けられている。隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を間隔をあけて囲む周壁部641が、設けられている。図3において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(図2における第2カバー8側)に突出している。
【0034】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(図2参照)が回転可能に支持される。
【0035】
図3に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
【0036】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔622を囲む円筒状の支持壁部632が設けられている。図3において支持壁部632は、紙面手前側(図2における第2カバー8側)に突出している。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(図2参照)が回転可能に支持される。
【0037】
図3に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0038】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、支持穴623を囲む円筒状の支持壁部633が設けられている。図3において支持壁部633は、紙面手前側(図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部633は、支持穴623の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部633の内周には、ベアリングBを介して、減速機構4のアイドラ軸44(図2参照)の一端側が、回転可能に支持されている。
【0039】
図3に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0040】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。図3において支持壁部634は、紙面手前側(図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部634は、貫通孔624の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(図2参照)が、回転可能に支持されている。
図2に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0041】
図3に示すように、ケース6では、前記した弧状の周壁部641の下側であって、ファイナルギア45よりも車両前方側の領域に、ストレーナ10とメカオイルポンプMOP(第1ポンプ)が配置される収容部67が設けられている。
ストレーナ10は、周壁部641の外周とファイナルギア45の外周を結ぶ直線Lmと交差する位置に配置されている。ストレーナ10は、ファイナルギア45との干渉を避けつつ、周壁部641側の上方に寄せて配置されている。
メカオイルポンプMOPは、ストレーナ10から見て車両前方側(図中、右側)に配置されている。メカオイルポンプMOPは、当該メカオイルポンプMOPの回転軸X5を、動力伝達機構の回転軸X1~X4に沿わせた向きで設けられている。
【0042】
図3に示すように隔壁部62では、周壁部641の下側にストレーナ10との接続部625と、メカオイルポンプMOPとの接続部627が設けられている。
接続部625の接続口625aと接続部627の接続口627aは、同一方向を向いて開口している。接続部625の接続口625aは、隔壁部62内に設けた油路626に連絡している。接続部627の接続口627aは、隔壁部62内に設けた油路628に連絡している。
油路626、628は、隔壁部62内を収容部68側(図中、右側)に、直線状に延びている。油路626は、ケース6内の油路を介して、収容部68(収容室S2)内に収容された電動オイルポンプEOPに接続されている。油路628は、ケース6内の油路を介して、収容部68内に設置されたコントロールバルブCV(図2参照)に連絡している。
【0043】
図4に示すように、ケース6の第1カバー7側の面では、第3室S3を囲む周壁部61の下部で、油路626に対応する領域が、紙面手前側(第1カバー7側)に膨出している。
【0044】
周壁部61における第1カバー7側の端面には、第1カバー7との接合部612が設けられている。接合部612は、隔壁部62の第1カバー7側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部612の内側が、隔壁部62となっている。
接合部612には、第1カバー7側の接合部711(図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第1カバー7は、互いの接合部612、712同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の開口が第1カバー7で封止された状態で保持されて、閉じられた第3室S3が形成される。
【0045】
図4に示すように、貫通孔622は、貫通孔621から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
周壁部61の内側では、鉛直線VL方向における上側の領域に、バリエータ3のプライマリプーリ31とセカンダリプーリ32とが位置している。
周壁部61は、プライマリプーリ31が設けられた領域の下部側が、ケース6の下部側に大きく膨らんでおり、この膨らんだ領域の下部側に、油路626に対応する膨出領域600が位置している。
回転軸X1方向から見て、膨出領域600は、周壁部61を車両前方側に横切って、収容部68まで及ぶ範囲に設けられている。
【0046】
図2に示すように、ケース6では、車両前方側の側面に、収容部68が付設されている。
収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68は、回転軸X1に沿う向きで設けられている。回転軸X1の径方向から見て収容部68は、ケース6の周壁部61の領域から、第1カバー7の側方まで及ぶ回転軸X1方向の範囲を持って形成されている。
【0047】
収容部68の底壁部682は、エンジンENG側の略半分の領域が、周壁部61と一体になっている。底壁部682の反対側の略半分の領域は、周壁部61の延長上で、第1カバー7の外周との間に隙間を開けて設けられている。
【0048】
図5は、収容部68を車両前方側から見た図である。尚、図5では、囲繞壁681の接合部683の位置を判り易くするために、接合部683に交差したハッチングを付して示している。
車両前方側から見て収容部68は、底壁部682の外周を全周に亘って混む囲繞壁681を有している。囲繞壁681の紙面手前側の端面は、第3カバー9との接合部683となっている。接合部683は、囲繞壁681の第3カバー9側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。
図2に示すように、接合部683には、第3カバー9側の接合部911が全周に亘って接合される。収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、収容部68の開口が第3カバー9で封止された状態で保持されて、閉じられた収容室S2(第2室)が形成される。
【0049】
図5に示すように、収容室S2内には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが収容される。
収容室S2内において、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPは、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xに沿う向きに並んで設けられている。
【0050】
図5に示すように、収容室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向(紙面、手前奥方向)に沿わせた向きで、縦置きされている。
収容室S2では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数の調圧弁SP(スプール弁)が、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)調圧弁SP(スプール弁)の進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる。
【0051】
これにより、調圧弁SP(スプール弁)の進退移動が阻害されないようにしつつ、コントロールバルブCVが収容室S2内で縦置きされる。よって、収容室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0052】
図5に示すように、車両前方側から見てコントロールバルブCVは、矩形形状のバルブボディ921に切欠部923を設けた略L字形状を成している。収容室S2において切欠部923は、第1カバー7と重なる領域の下部に位置している。
車両前方側から見て切欠部923は、コントロールバルブCVにおける電動オイルポンプEOP側の側縁921aと、下側の側縁921bとに跨がる範囲を切除したことにより生じた領域である。
コントロールバルブCVでは、切欠部923を設けたことにより、側縁921aから反対側(側縁921c側)にオフセットした側縁921a’と、下側の側縁921bから上側(側縁921d側)にオフセットした側縁921b’が形成されている。
これら側縁921a’、921b’と、側縁921aに沿う仮想線Laと、側縁921b仮想線Lbと、で囲まれた領域が、切欠部923の領域である。車両前方側から見て、コントロールバルブCVでは、電動オイルポンプEOPの一部を収容可能とする領域として切欠部923が形成されている。
車両前方側から見て切欠部923には、電動オイルポンプEOPの少なくとも一部が収容されている。
【0053】
電動オイルポンプEOPは、制御部931と、モータ部932と、ポンプ部933が、モータの回転軸Z1方向で直列に並んだ基本構成を有する。
電動オイルポンプEOPは、回転軸Z1を、動力伝達装置1の回転軸Xに直交させた向きで設けられている。この状態において、電動オイルポンプEOPの回転軸Z1は、鉛直線VL方向(上下方向)に沿う向きで配置される。さらに、電動オイルポンプEOPは、ポンプ部933を、収容室S2内の最下部に配置させている。ポンプ部933の吸入口933aと吐出口933bは、モータ部932との境界側に位置しており、ケース内油路にそれぞれ接続されている。
【0054】
吸入口933aは、ケース内油路と、前記した隔壁部62内の油路626(図3参照)とを介してストレーナ10に接続されている。
ストレーナ10は、コントロールバルブCVの収容室S2とは別の第1室S1に収容されている(図3参照)。ストレーナ10が付設されたメカオイルポンプMOPもまた、第1室S1に収容されている。
図5に示すように、車両前方側から見て、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPは、収容室S2の紙面の奥側の破線で示す位置に配置されている。車両前方側から見て、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPは、コントロールバルブCVと重なる位置関係で設けられている。
【0055】
本実施形態では、電動オイルポンプEOPのポンプ部933を、収容室S2内の最下部に位置させることで、ポンプ部933の吸入口933aと、ストレーナ10との鉛直線VL方向の位置が近づくようにしている。
これにより、ストレーナ10と電動オイルポンプEOPの吸入口933aとを接続する油路の油路長が短くなるようにしている。
【0056】
コントロールバルブCVの上部側は、電動オイルポンプEOPの上方まで及んでいる。鉛直線VL方向(電動オイルポンプEOPの回転軸Z1方向)から見ると、電動オイルポンプEOPが、コントロールバルブCVと重なる位置関係で設けられている。
第1カバー7の側方には、車両VのフレームFRが位置しており、ハウジングHSを車幅方向(図中、左右方向)に拡大する余裕がない。
本実施形態では、電動オイルポンプEOPを収容室S2に配置するにあたり、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPとを単純に並列に並べるのではなく、コントロールバルブCVに設けた切欠部923に電動オイルポンプEOPを配置している。
【0057】
これにより、電動オイルポンプEOPは、フレームFR側の一部を、切欠部923からフレームFR側に突出させて配置されている。突出幅Wxは、電動オイルポンプEOPの回転軸X方向の幅W3から、切欠部923の回転軸X方向の幅W2を減算した分に相当する(Wx=W3-W2)。
よって、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを、動力伝達機構の回転軸X方向で単純に並べる場合に比べて、切欠部923の幅W2の分だけ、収容室S2の幅を短くできる。
【0058】
このように、(a)コントロールバルブCVを縦置き配置することで、収容室S2の車両前後方向への拡大量を抑えている。(b)コントロールバルブCVの切欠部923を利用することで、収容室S2の車幅方向への拡大量を抑えている。
このように、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを収容室S2内で縦置きすることで、車幅方向と車両前後方向への収容室S2の拡大量を抑えている。
【0059】
これにより、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを、ケース6内の第1室S1とは異なる収容室S2(収容部68)内に配置するに際して、動力伝達装置1のハウジングHSが車幅方向と車両前後方向に拡大することを防いでいる。
【0060】
コントロールバルブCV内の油圧制御回路95は、オイルポンプで発生させた油圧から、動力伝達機構(前後進切替機構2、バリエータ3など)の作動油圧を調圧する。
【0061】
動力伝達装置1は、オイルポンプとして、メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOPを1つずつ備えている。これらオイルポンプは、ハウジングHS内の下部に貯留されたオイルOLを、ストレーナ10を介して吸引し、吸引したオイルOLを加圧して、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95(図6参照)に供給する。
【0062】
図6は、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95の一例を説明する図であり、油圧制御回路95におけるバリエータ3(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)の作動油圧の調圧に関わる部分を示した図である。
【0063】
第1調圧弁951は、当該第1調圧弁951でのオイルOLのドレン量を調整することで、オイルポンプOPで発生させた油圧からライン圧を調整する。
第1調圧弁951により調整されたライン圧は、プライマリ調圧弁953およびセカンダリ調圧弁954と、第2調圧弁952に供給される。なお、ライン圧は、油圧制御回路95が備える他の調圧弁にも供給される。
【0064】
第2調圧弁952は、ライン圧からパイロット圧を調整する。
第2調圧弁952で調整されたパイロット圧は、プライマリソレノイド955と、セカンダリソレノイド956に供給される。
【0065】
プライマリソレノイド955と、セカンダリソレノイド956は、制御装置(図示せず)の指令に基づいて作動して、プライマリ調圧弁953とセカンダリ調圧弁954に供給される信号圧を調圧する。
【0066】
プライマリ調圧弁953とセカンダリ調圧弁954では、スプール弁が、信号圧に応じて軸線方向(図中、Xp方向)に移動する。
スプール弁が軸線方向に移動すると、第1調圧弁951で調圧されたライン圧が、スプール弁の位置に応じた圧力に調圧されたのち、対応するプーリ(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)の受圧室に供給される。
【0067】
前記した第1調圧弁951は、油圧制御回路95における最も上流側(オイルポンプOP側)に位置しており、オイルポンプOPで発生させた油圧が最初に供給される。
第1調圧弁951では、オイルポンプOPで発生させた油圧からライン圧を調整する際に、オイルポンプOPで発生させたオイルの一部がドレンされる。
【0068】
第1調圧弁951は、コントロールバルブCV内に設けられており、コントロールバルブCVの下部には、第1調圧弁951からドレンされるオイルOLの排出孔951aが開口している。
【0069】
ここで、コントロールバルブCVは、油圧制御回路95内の調圧弁(スプール弁)が進退移動する方向Xpを、水平線HL(図5参照)方向に沿わせた向きで配置する必要がある。
そのため、コントロールバルブCVは、収容室S2内で縦置きになる。
図5に示すように、コントロールバルブCVは、切欠部923の側方に調圧弁(スプール弁)を水平線方向に沿わせた向きで配置できるだけの幅W1が残るように、切欠部923の水平線方向の最大幅W2が設定されている。
そして、コントロールバルブCVの電動オイルポンプEOP側の側縁921aは、電動オイルポンプEOPの回転軸Z1を第1カバー7側に超えた位置にある。
これにより、収容室S2内の空間のうち、電動オイルポンプEOPの設置に必要な領域を除いた略総ての領域が、車両前方側から見てコントロールバルブCVと重なるようにしている。すなわち、調圧弁(スプール弁)の水平配置に加えて、電動オイルポンプEOPの設置のために切欠部923を設けつつ、コントロールバルブCVの容積を確保している。
【0070】
以上の通り、本実施形態にかかる車両用の動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)からの駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構(トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5)と、
動力伝達機構を収容するハウジングHSと、
動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールバルブCVと、
コントロールバルブCVにオイルOLを供給するメカオイルポンプMOP(第1ポンプ)および電動オイルポンプEOP(第2ポンプ)と、を有する。
ハウジングHSは、
動力伝達機構とメカオイルポンプMOPを収容する第1室S1と、
第1室S1に水平線HL方向で隣接配置された収容室S2(第2室)と、を有する。
第1室S1内において電動オイルポンプEOPは、当該電動オイルポンプEOPの回転軸X5を、動力伝達機構の回転軸Xに沿わせた向きで配置されている。
収容室S2内においてコントロールバルブCVは、縦置き配置されている。
収容室S2内において電動オイルポンプEOPは、当該電動オイルポンプEOPの回転軸Z1を、上下方向(鉛直線VL方向)に沿わせた向きで縦置き配置されている。
【0071】
このように構成すると、メカオイルポンプMOPの回転軸X5と、電動オイルポンプEOPの回転軸Z1が、ハウジングHS内で同軸に配置されていないので、動力伝達装置1を回転軸X方向に大型化させずに、2つのポンプをハウジングHS内に配置できる。
【0072】
(i)ハウジングHSは、
内部に第1室S1が形成されるケース6と、
動力伝達装置1を車両Vに搭載した状態で、ケース6の車両前方側の側面に付設された収容部68と、
収容部68の開口を、車両前方側から塞ぐ第3カバー9と、を有している。
収容室S2は、ケース6の周壁部61と、収容部68と、第3カバー9との間に形成される。
第1室S1と、収容室S2(第2室)は、ケース6の周壁部61を間に挟んで隣接している。
【0073】
このように構成すると、第1室S1とは別の空間である収容室S2(第2室)に、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが収容される。
これにより、ケース6内に空間的な余裕が生じるので、ハウジングHS(ケース6)内のレイアウト性が向上する。
ハウジングHSの下部にコントロールバルブCVを設けると、コントロールバルブCVの分だけ、動力伝達装置が鉛直線VL方向に大型化する。
ハウジングHSの車両前方側の側面に設けた収容室S2にコントロールバルブCVを設置することで、動力伝達装置1の鉛直線VL方向の大きさを抑えることができる。
【0074】
また、ハウジングHSの車両前方側の側面に設けた収容室S2にコントロールバルブCVを設置する場合、動力伝達装置1が車両前方側に大型化することを防ぐ必要がある。
そのため、油圧制御回路95内の調圧弁が、当該調圧弁の進退移動方向が水平線方向に沿う方向となるように、コントロールバルブCVを縦置きする。コントロールバルブCVを縦置きすると、動力伝達装置1が車両前方側に大型化する程度を抑えることができる。
【0075】
(2)コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPは、収容室S2内で、動力伝達機構の回転軸X方向に並んでいる。
【0076】
コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが、動力伝達機構の回転軸Xの径方向に並んでいると、動力伝達装置1が径方向に大型化する。
コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが、動力伝達機構の回転軸X方向に並んでいると、動力伝達装置1の径方向への大型化を抑制できる。
例えば、収容室S2が、動力伝達機構の回転軸Xの車両前方側に位置していると、動力伝達装置1の回転軸X方向への大型化を抑制できる。この場合、動力伝達機構の回転軸X方向は、車幅方向となる。動力伝達装置1の車幅方向の両側には、それぞれ、車体のフレームFRやエンジンENG(駆動源)が位置しており空間的な余裕がない。動力伝達装置1の車両前方側には、比較的に空間的な余裕があるので、車両前方側の収容室S2で、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを縦置きすることで、車両側のレイアウトに大きく影響を及ぼすことなく、動力伝達装置1を車両Vに搭載できる。
【0077】
(3)収容室S2(収容室S2)は、第1室S1から見て車両前方側に位置している。
車両前方側から見て、コントロールバルブCVは、切欠部923を有している。
車両前方側から見て、電動オイルポンプEOPは、少なくとも一部が、コントロールバルブCVの切欠部923内に配置されている。
【0078】
電動オイルポンプEOPの少なくとも一部が、コントロールバルブCVの切欠部923内に配置されていると、収容室S2の回転軸X方向の幅(範囲)を抑えることができる。
車両前方側から見て、電動オイルポンプEOPを切欠部923内に位置させた分だけ、回転軸X方向の幅を抑えることができる。
コントロールバルブCVに切欠部が設けられていない場合には、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを、回転軸X方向で単純に並べることになる。切欠部923を利用することで、切欠部が設けられてない場合に比べて、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPの設置に必要な収容室S2の回転軸X方向の容積(車幅方向の大型化)を抑えることができる。
これにより、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを、収容部68内にコンパクトに収容できる。
【0079】
(4)車両前方側から見て切欠部923は、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向で、コントロールバルブCVの下部に設けられている。
鉛直線VL方向(上下方向)における一方側から見て、電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVは、重なる位置関係で設けられている。
【0080】
このように構成すると、鉛直線VL方向から見て、電動オイルポンプEOPは、少なくとも一部がコントロールバルブCVと重なる位置関係で、収容室S2内に配置される。
これにより、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを、収容部68内にコンパクトに収容できる。
また、車両前方側から見て収容室S2の奥側に位置する第1室S1では、ケース6の下部にストレーナ10が配置される。車両前方側から見てストレーナ10は、収容室S2の下部領域と重なる位置関係で設けられている。そのため、電動オイルポンプEOPを、ケース6の下部のオイル溜りに近づけて配置できる。
これにより、ストレーナ10と電動オイルポンプEOPとを接続するケース内油路の油路長を短くできる。ケース内油路が長くなると、電動オイルポンプEOPがストレーナ10を介してオイルOLを吸引する際の抵抗(吸入抵抗)が大きくなる。ケース内油路の油路長を短くできることにより、吸入抵抗の低減が期待できる。
【0081】
(5)電動オイルポンプEOPは、モータを収容するモータ部932と、モータの回転力でオイルOLを吸引加圧するポンプ部933と、を有する。
モータ部932とポンプ部933は、電動オイルポンプEOPの回転軸Z1方向で並んでいる。
車両前方側から見て電動オイルポンプEOPは、モータの回転軸Z1を、動力伝達機構の回転軸Xに直交させた向きで設けられている。
【0082】
このように構成すると、収容室S2を回転軸X方向に大型化させずに、電動オイルポンプEOPを配置できる。
【0083】
(6)ポンプ部933は、モータ部932よりも下側に位置している。
【0084】
このように構成すると、収容室S2内においてポンプ部933を、鉛直線VL方向の最下部に配置できる。この場合、車両前方側から見て、ポンプ部933におけるオイルの吸入口933aを、ハウジングHS内の下部に配置したストレーナ10に近づけることができる。
これにより、ストレーナ10とオイルOLの吸入口933aとを接続するケース内油路の油路長をさらに短くできるので、吸入抵抗のさらなる低減が期待できる。
【0085】
(7)第1室S1内の下部に配置されたストレーナ10を有する。
メカオイルポンプMOP(第1ポンプ)と電動オイルポンプEOP(第2ポンプ)は、ストレーナ10を共用する。
【0086】
ストレーナ10は、コントロールバルブCVの収容室S2とは別の第1室S1内に配置される。第1室S1内にコントロールバルブCVが配置されていないので、第1室S1内でのレイアウトの自由度が向上する。
また、コントロールバルブCVとの位置関係を考慮せずに、第1室S1内の最適な位置にストレーナ10を配置できるので、ストレーナ10の配置の自由度が向上する。
例えば、ストレーナ10は、電動オイルポンプEOPやコントロールバルブCVよりも小さいので、ケース6内の隙間を利用して配置できる。
例えば、ケース6では、前後進切替機構2の構成要素である回転体と、ファイナルギア45との間の下部領域に空間的な余裕がある。この空間(収容部67)に、ストレーナ10を配置できるので、ケース6の鉛直線VL方向の大きさを、さらに抑えることができる。
【0087】
(8)車両前方側から見て、コントロールバルブCVは、メカオイルポンプMOPおよびストレーナ10と重なる位置関係で設けられている。
【0088】
このように構成すると、コントロールバルブCVと、メカオイルポンプMOPと、ストレーナ10とが、車両前後方向で並んで配置される。収容室S2の幅W_maxは、コントロールバルブCVの幅W1に、縦置きされた電動オイルポンプEOPが、切欠部923から回転軸X方向にはみ出した分の幅Wxを足した分を確保すれば良い。
これにより、収容室S2を回転軸X方向に大型化する程度を抑えて、電動オイルポンプEOPを収容室S2に配置できる。
【0089】
(ii)車両前方側から見て、電動オイルポンプEOPは、収容室S2(ケース部)における第1カバー7と重なる位置に配置されている。コントロールバルブCVは、収容室S2におけるケース6と重なる位置に配置されている。
コントロールバルブCV内の調圧弁は、車幅方向に沿わせた向きで、鉛直線VL方向で複数並んでいる。
【0090】
動力伝達装置1の第1カバー7側の側方には、車両VのフレームFRが位置している。
そのため、収容部68を第1カバー7側(図5における右側)に拡大することは好ましくない。
そのため、収容室S2における第1カバー7と重なる位置に電動オイルポンプEOPを縦置き配置すると共に、コントロールバルブCVにおける調圧弁(スプール弁)が設けられた領域をケース6と重なる位置に配置する。
これにより、収容部68の第1カバー7側(図5における右側)への拡大を好適に抑制できる。
【0091】
コントロールバルブCV内の調圧弁を水平線HL方向に沿わせた向きで配置するために、コントロールバルブCVを横置きのままで、収容室S2内に配置すると、動力伝達装置1が車両前後方向に大型化する。
そのため、前記した実施形態では、コントロールバルブCVを縦置きにして、水平線HL方向に沿わせた向きで配置した調圧弁(スプール弁)を鉛直線VL方向で複数並べている。これにより、動力伝達装置1が車両前後方向への大型化の程度を抑えている。
【0092】
そして、収容部68内において電動オイルポンプEOPを、コントロールバルブCVの切欠部923に配置することで、動力伝達装置1が回転軸X方向(車幅方向)に大型化する程度を抑えている。車両Vにおける動力伝達装置1の周囲は、車幅方向の制限が厳しい。
そのため、コントロールバルブCVを縦置きにして、電動オイルポンプEOPを、コントロールバルブCVの切欠部923に配置することで、厳しい制限の中で、動力伝達装置1を適切に配置できる。
【0093】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、収容室S2に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0094】
図7は、変形例にかかる動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
前記した実施形態では、ストレーナ10を収容する第1室S1と、電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVを有用する収容室S2とが、周壁部61と一体となった収容部68の底壁部682によって分かれている場合を例示した。図7に示すように、第1室S1と収容室S2とが開口684を介して連通しているケース6Aを採用した動力伝達装置1Aとしても良い。
この動力伝達装置1Aでは、コントロールバルブCVが開口684を塞いで、第1室S1と収容室S2とを区画するように配置される。
このような構成の動力伝達装置1Aであっても、動力伝達装置1Aの大型化を防ぎつつ、ハウジングHS内に空間的な余裕が生じさせて、ハウジングHS内のレイアウト性を向上させることができる。
【0095】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0096】
1、1A 動力伝達装置(動力伝達機構)
2 前後進切替機構(動力伝達機構)
3 バリエータ(動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
5 差動装置(動力伝達機構)
6 ケース
668 収容室(ケース部)
10 ストレーナ
923 切欠部
932 モータ部
933 ポンプ部
CV コントロールバルブ
MOP メカオイルポンプ(第1ポンプ)
EOP 電動オイルポンプ(第2ポンプ)
HS ハウジング
S1 第1室
S2 第2室
T/C トルクコンバータ(動力伝達機構)
ENG エンジン(駆動源)
X、X1~X4、Z1 回転軸
X5 回転軸(第1ポンプの回転軸)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7