(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ラミネートチューブ容器及びラミネートチューブ容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 35/10 20060101AFI20241202BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B65D35/10 B
B65D65/40 A
(21)【出願番号】P 2017210146
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-10-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000156824
【氏名又は名称】関西チューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117145
【氏名又は名称】小松 純
(72)【発明者】
【氏名】大野 二三一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 直彦
(72)【発明者】
【氏名】岩下 智治
(72)【発明者】
【氏名】森 雅史
【合議体】
【審判長】田口 傑
【審判官】神山 茂樹
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-3000506(JP,A)
【文献】特開平10-17216(JP,A)
【文献】特開平10-139958(JP,A)
【文献】特開2016-124276(JP,A)
【文献】特開2013-224158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートチューブ用原反によって形成された略円筒状の胴部と当該胴部の一方の端部に溶着された略円錐状の肩部と円筒状の口部からなるラミネートチューブ容器であって、当該ラミネートチューブ容器における前記肩部及び口部が曲げ弾性率40~100MPa、融点110~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm
3の超低密度ポリエチレン樹脂によって形成され、前記ラミネートチューブ容器を構成する口部にキャップが螺着又は嵌合されており、ラミネートチューブを構成する肩部が、肩角度120°<θ<180°であり、前記超低密度ポリエチレン樹脂が、さらにMFR(メルトフローレート)1g/10min~5g/10minであることを特徴とするラミネートチューブ容器。
【請求項2】
マンドレルにラミネートチューブ用原反を周着しターンテーブルを回転させながらラミネートチューブ容器を製造する方法において、前記マンドレルの先端には形成されたラミネートチューブの口部を形成するための凸状部が形成され、当該凸状部の付け根部分近傍にリング状に成形した曲げ弾性率40~100MPa、融点110~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm
3の超低密度ポリエチレン樹脂によって形成された溶融樹脂を配置した後、ターンテーブル上に設けられた成形金型のキャビティ内に前記マンドレルを圧入し、前記溶融樹脂をキャビティ内に押圧充填しつつラミネートチューブ用原反の端部を溶融樹脂で包囲することによってラミネートチューブ用原反によって形成された略円筒状の胴部の端部に溶融樹脂によって形成された略円錐状の肩部と円筒状の口部を溶着し、肩角度が120°<θ<180°に形成され
、前記溶融樹脂が、MFR(メルトフローレート)1g/10min~5g/10minの超低密度ポリエチレン樹脂によって形成されていることを特徴とするラミネートチューブ容器の製造方法。
【請求項3】
前記ラミネートチューブ容器の製造方法において、更に口部へキャップを螺着又は嵌合する工程を有することを特徴とする請求項
2に記載されたラミネートチューブ容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器における内容物(バルク)の使い切り性を向上させ、バルク残量を低減させるラミネートチューブ容器に関する。特にコンプレッション方式によってラミネートチューブ容器を製造する際に、柔軟性を有した材料の原料となるプリフォームの必要以上の製造装置への付着を防止し、連続生産可能なラミネートチューブ容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペースト状、ゲル状等の医薬品、医薬部外品、調味料、化粧品及び化学材料等を内容物とするチューブ容器には種々の形態のものが知られている。この種のチューブ容器は、キャップと、キャップが螺着される抽出口を有する円筒状の口部と、当該口部に連接する円錐状の肩部及びラミネートチューブ用原反によって形成された略筒状の胴部とから構成されている。
筒状胴部の材料としては、アルミ、鉛、すず等の金属製のもの、ポリエチレン等の素材を使用したプラスチック製のもの、アルミ、紙、ポリエチレン等の素材を多層ラミネートしたもの等が挙げられる。
【0003】
これらのチューブ容器において内容物を取り出すためには、胴部を手指で押すことが必要である。手指で押されたバルクは、胴部の軸方向端部を塞ぐように成形されている円錐状の肩部の内側に押圧され、胴部に比し小径の抽出口を通って外部へ押し出される。このようなチューブ容器の構造上、チューブ本体を押し潰しても、肩部および口部の内側の周辺部分のバルクを完全に使い切ることができなかった。又、肩部および口部自体は一般に高密度ポリエチレン等の樹脂で形成されており、剛性が高いことから押し潰すことは困難である。
【0004】
バルクの残留量を減らすための手法としては、チューブ本体の肩部を斜めに曲げて形成する考案や(例えば、特許文献1参照。)、肩部を潰す構造を有する容器(例えば、特許文献2参照。)が知られていた。
ラミネートチューブ容器においては、肩部と口部を柔軟性のある材料で形成したチューブ容器が開発されていた(特許文献3、特許文献4)。
【0005】
さらに、コンプレッション法にて、肩部および口部が柔軟性のあるラミネートチューブ容器を製造する場合、押し出し機からリング状に形成されたプリフォームをすり切り板(ストリッパープレート)によって、マンドレルの凸状部の周囲に落下させる工程において、プリフォームをリング状に保持することが困難になったり、ストリッパープレートの表面に付着し落下が困難となる場合があったが、これらの問題点を解決したラミネートチューブ容器も開発されていた(特許文献5)。
しかしながら、開示された範囲の材料においても、十分な柔軟性が得られなかったり、プリフォームの安定した供給および肩部および口部の成形性に未だ課題が残っているのが現状である。
【0006】
又、肩部および口部を柔軟性のある材料で形成すると、使用終盤で肩部が変形(潰れる等)してしまい、キャップが円滑に嵌合できないうえ、気密性も劣化する問題があった。特に内容物の高価な医薬品等は、一回に押し出す量が比較的少ない場合が多い。例えば、胴部の直径が19.05mm、内容量20gの虫刺され用薬の場合は、一回の使用量が平均0.04~0.05gであり、胴部の直径が12.7mm、内容量5gの軟膏の場合は、一回の使用量が平均0.03~0.04g程度である。このような一度の使用量が比較的少ない場合においては、使用終盤においてもキャップの取り付けと押し出しを数回にわたって繰り返すため、使用終盤における円滑なキャップ嵌合は特に重要になってくる。
【0007】
上記の問題点に鑑みて、肩部および口部が柔軟性のあるチューブ容器は、山葵などで用いられているチューブ容器全体を柔軟性のある材料で形成されたブローチューブなどに限定されているのが実状である。
本発明者は、ラミネートチューブ用原反によって形成された略円筒状の胴部を使用し、肩部と口部が十分な柔軟性を有したチューブ容器の開発を目指し、バルク残量が低減でき、かつ使用終盤においても円滑にキャップ嵌合でき、さらに安定して肩部および口部の成形ができるラミネートチューブ容器について日夜研究開発を継続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭62-19945号公報
【文献】実開平7-37949号公報
【文献】特開1998-249966号公報
【文献】特開2005-306415号公報
【文献】特開2004-203394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の欠点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、肩部及び口部を柔軟な超低密度ポリエチレン樹脂によって形成し、胴部をラミネート材料で形成することによって、チューブの不規則変形を可及的に防止するとともに、過大な力を要することなく内容物を押し出すことを可能とし、結果としてバルク残量を低減させることにある。
【0010】
又、本発明は、内容物を使い切る終盤において、肩部の必要以上の押圧を抑止するとともに、肩部の変形(潰れ等)を防止し、口部へのキャップの螺着又は嵌合を円滑に保持し得るラミネートチューブ容器の提供を目的とする。
更に本発明の目的は、ラミネートチューブ容器の製造コストを抑えつつ、コンプレッション用のラミネートチューブ製造装置によって、軟質材料の金型等、製造装置への不要な付着を抑止し、ラミネートチューブ容器を円滑に連続生産可能とし、かつ、バルク残量の少ないラミネートチューブ容器の量産を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために次の構成を有する。
(1)金属層が積層されたラミネートチューブ用原反によって形成された略円筒状の胴部と当該胴部の一方の端部に溶着された略円錐状の肩部と円筒状の口部からなるラミネートチューブ容器であって、当該ラミネートチューブ容器における前記肩部及び口部が曲げ弾性率40~100MPa、融点110℃~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm3の超低密度ポリエチレン樹脂によって形成され、ラミネートチューブ容器における胴部が金属材料を積層したラミネート材料で形成されていることを特徴とするラミネートチューブ容器である。
本発明における超低密度ポリエチレン樹脂は、密度0.87g/cm3以上であることが好ましい。密度0.87g/cm3未満になると、柔軟性が強くなり、キャップとの螺着又は嵌合に問題が生じる危険性がある。又、本発明における超低密度ポリエチレン樹脂は、密度0.91g/cm3以下であることが好ましい。0.91g/cm3を超えると、肩部および口部に残るバルクの押し出しに必要以上の力が必要になるためである。 又、本発明におけるラミネートチューブ容器の胴部は、金属材料を積層したものや、その他のラミネート材料で形成されているもの等、広範囲に使用することが可能である。
【0012】
又、本発明における超低密度ポリエチレン樹脂は、融点110℃~130℃であることが好ましい。融点110℃未満では、プリフォームがうまくマンドレル先端に供給できないためである。又、融点130℃を超えるものは、超低密度ポリエチレン樹脂への生成が難しい。
更に、本発明における超低密度ポリエチレン樹脂は、曲げ弾性率40~100MPaであることが好ましい。曲げ弾性率40MPa未満は、樹脂が柔らかくなりすぎるため、キャップとの嵌合に不具合が生じる懸念があるためである。又、曲げ弾性率100MPaを超えると肩部の柔軟性が低下し、本発明における十分な効果が発生し得ないためである。
【0013】
(2)前記超低密度ポリエチレン樹脂が、さらにMFR(メルトフローレート)1g/10min~5g/10minであることを特徴とする上記(1)に記載されたラミネートチューブ容器である。
本発明で使用される超低密度ポリエチレン樹脂の特性としては、MFR(メルトフローレート)1g/10min~5g/10minであることが好ましい。MFR 1g/10min未満では、樹脂の流れが悪いために、樹脂の押し出しが困難になり、プリフォームの成形不良が生じやすくなるためである。又、金型内に十分に樹脂が流れないので、ひけ等の成形不良の発生も懸念されるためである。又、MFR 5g/10minを超えると、樹脂の流れが良くなりすぎるため、プリフォームの形状を保持できない危険性が生じる。
【0014】
(3)前記ラミネートチューブ容器を構成する口部にキャップが螺着又は嵌合されており、ラミネートチューブ容器を構成する肩部が、肩角度(θ)が、120<θ<180°であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載されたラミネートチューブ容器である。
ラミネートチューブ容器にこのような構成を採用することによって、使用終盤において、肩部の必要以上の変形(潰れ等)を防止し、キャップの円滑な嵌合を保持することができる。
ここで肩角度とは、
図1に示す如く、対向する肩部の線Q1、Q2の交点Pを中心とする開口角(θ)のことである。
ラミネートチューブ容器には肩角度が形成されているのが一般的である。ラミネートチューブ容器を構成する口部の径は、胴部の径よりも小さい。そのため、内容物を押し出す際に、胴部より口径の小さい口部への内容物の流動性を向上させるために、肩角度(θ)が形成される。
しかし、肩角度(θ)を120°以下(肩角度はより傾斜する。)に構成すると、肩部の内側に残留する内容物量が増える。一方、肩角度(θ)が180°に近づいてくる(肩角度はより緩やかになる。)と、内容物の口部への流動性が低下するため、残量が少量になってきた際、絞り出しにくくなる。又、肩角度を浅くしすぎると、コンプレッション法によってラミネート容器を製造する際に、肩部と胴部の接着性が劣化する原因となり得る。
【0015】
なお、本発明における上記問題点に鑑みると、肩角度140°以上160°以下が更に好適である。
これは、肩角度を上記範囲内で形成することによって、内容物を使い切る終盤において、口部に螺着されたキャップを円滑に嵌合することができる。すなわち、肩角度(θ)が140°未満では、上述のように肩部の内側により多くの内容物が残留しているため、使用者はかかる残留物を押し出すために肩部の特に胴部との接続部近傍を押圧する。そのため、肩部の形状が変形する(潰れる等)ことになる。本発明における肩部は、曲げ弾性率40~100MPa、融点110℃~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm3の超低密度ポリエチレン樹脂によって形成されているため、一度変形した肩部の形状を元に戻すのは困難である。したがって、肩部の変形によって口部に螺着されたキャップの下部と変形した肩部が接触し又は離間してしまい、キャップの螺着や嵌合が円滑に行うことができないことになる。
【0016】
(4)マンドレルに金属層が積層されたラミネートチューブ用原反を周着しターンテーブルを回転させながらラミネートチューブ容器を製造する方法において、前記マンドレルの先端には形成されたラミネートチューブの口部を形成するための凸状部が形成され、当該凸状部の付け根部分近傍にリング状に成形した曲げ弾性率40~100MPa、融点110℃~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm3の超低密度ポリエチレン樹脂によって形成された溶融樹脂を配置した後、ターンテーブル上に設けられた成形金型のキャビティ内に前記マンドレルを圧入し、前記溶融樹脂をキャビティ内に押圧充填しつつラミネートチューブ用原反の端部を溶融樹脂で包囲することによってラミネートチューブ用原反によって形成された略円筒状の胴部の端部に溶融樹脂によって形成された略円錐状の肩部と円筒状の口部を溶着することを特徴とするラミネートチューブ容器の製造方法である。
【0017】
(5)前記溶融樹脂が、さらにMFR(メルトフローレート)1g/10min~5g/10minの超低密度ポリエチレン樹脂によって形成されていることを特徴とする上記(3)に記載されたラミネートチューブ容器の製造方法である。
(6)前記ラミネートチューブ容器の製造方法において、更に口部へキャップを螺着又は嵌合する工程を有し、ラミネートチューブ容器を構成する肩部が、肩角度120°<θ<180°に形成されることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載されたラミネートチューブ容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るラミネートチューブ容器の構造を採用することによって、チューブの不規則変形を可及的に防止するとともに、過大な力を要することなく内容物を押し出すことを可能とし、結果としてバルク残量を低減させるという効果を奏する。
又、本発明に係るラミネートチューブ容器は、肩角度を所定の範囲とすることによって、内容物を使い切る終盤において、肩部の必要以上の押圧を抑止するとともに、肩部の変形(潰れ等)を防止し、口部へのキャップの螺着又は嵌合を円滑に保持することができる。
【0019】
更に本発明に係るラミネートチューブ容器の製造方法を採用することによって、ラミネートチューブ容器の製造コストを抑えつつ、コンプレッション用のラミネートチューブ製造装置によって、軟質材料の金型等、製造装置への不要な付着を抑止し、ラミネートチューブ容器を円滑に連続生産可能とし、かつ、バルク残量の少ないラミネートチューブ容器の量産を可能とする優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ラミネートチューブ容器における肩角度を説明するための部分断面図である。(a)は肩角度(θ1)が小さいもの、(b)は肩角度(θ2)が大きい物を示す。
【
図2】実施例及び比較例におけるバルク残量を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るラミネートチューブ容器は、ラミネートチューブ用原反によって形成された略円筒状の胴部と当該胴部の一方の端部に溶着された略円錐状の肩部と円筒状の口部からなるラミネートチューブ容器によって構成されている。
本発明における肩部及び口部は、曲げ弾性率40~100MPa、融点110℃~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm3の超低密度ポリエチレン樹脂によって形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明で使用されるラミネートチューブ用原反としては、2軸延伸ポリエステルフィルム、金属箔、ポリエチレン系樹脂およびエチレン-カルボン酸共重合体樹脂等を積層してなる。
【0023】
2軸延伸ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリブチレンテレフタレート系フィルム(PBT)、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。中でも特にPETが好ましい。
金属箔としては、アルミニウム(AL)、ステンレス、すず、鉛、銅、鉄、ニッケル又はこれらの合金(例えば、JIS 8079材)等が挙げられる。特に入手のし易さや価格、伸びのよさ等の点からAL箔及びAL合金箔が好ましい。ただし、金属箔を使用しないラミネートチューブも本発明の範囲に含まれる。
【0024】
エチレン-カルボン酸共重合体樹脂としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等が挙げられる。かかるエチレン-カルボン酸共重合体樹脂は、上記の金属箔に押出ラミネートにて積層されるのが好ましい。押出ラミネートは積層面上にアンカーコート剤を塗布し、樹脂を押し出すことによって行っても良い。このように押出ラミネートにて積層することによって、金属箔との界面に接着剤層を形成しないため、金属箔とエチレン-カルボン酸共重合体樹脂との層間剥離を防止することができる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
又、共押出延伸フィルムを積層しても良い。共押出延伸フィルムとしては、ポリアミド系樹脂の両面にポリオレフィン系樹脂を積層して共押出延伸されたものを用いることができる。ポリアミド系樹脂としては、内容物の浸透に対するバリヤー性が高く、耐アルカリ性に優れるため、特にナイロン(Ny)が好ましい。ナイロンとしては、例えば、6-ナイロン、66-ナイロン、11ナイロン、MXD6ナイロン等を使用することができる。ポリオレフィン系樹脂としては、L-LDPEが好適である。
【0026】
次に本発明に係るラミネートチューブ容器の製造方法の一例を記載する。
マンドレルに金属層が積層されたラミネートチューブ用原反を周着しターンテーブルを回転させながらラミネートチューブ容器を製造する方法において、前記マンドレルの先端には形成されたラミネートチューブの口部を形成するための凸状部が形成され、当該凸状部の付け根部分近傍にリング状に成形した曲げ弾性率40~100MPa、融点110℃~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm3の超低密度ポリエチレン樹脂によって形成された溶融樹脂を配置した後、ターンテーブル上に設けられた成形金型のキャビティ内に前記マンドレルを圧入し、前記溶融樹脂をキャビティ内に押圧充填しつつラミネートチューブ用原反の端部を溶融樹脂で包囲することによってラミネートチューブ用原反によって形成された略円筒状の胴部の端部に、溶融樹脂によって形成された略円錐状の肩部と円筒状の口部を溶着することを特徴とするラミネートチューブ容器の製造方法である。
前記溶融樹脂が、さらにMFR(メルトフローレート)1g/10min~5g/10minの超低密度ポリエチレン樹脂によって形成されていることを特徴とする上記(3)に記載されたラミネートチューブ容器の製造方法である。
【0027】
本発明はマンドレルにチューブを形成する部材を取り付けてターンテーブル上を反時計回りに回転させながらラミネートチューブ容器に肩部と口部を形成する。
マンドレルには、予めラミネートチューブ用原反が円筒状に巻きつけられている。そしてマンドレルの先端にはラミネートチューブの口部を形成するための凸状部が形成され、当該凸状部の付け根部分近傍にリング状に成形した超低密度ポリエチレン樹脂によって形成された溶融樹脂を配置する。溶融樹脂の配置は、マンドレルの外周部に、リング状に成形しておいた超低密度ポリエチレン樹脂を上方から落下させることによって行う。ここで超低密度ポリエチレン樹脂は、曲げ弾性率40~100MPa、融点110℃~130℃であって、かつ密度0.87~0.91g/cm3である必要がある。
【0028】
本発明は柔軟性を有した肩部の成形が一番の目的であるが、柔軟性を付加する材料は、プリフォームの状態では粘性が高いため、製造装置に付着し、加工の困難性がある。本発明で限定されている特性を有した超低密度ポリエチレン樹脂を使用しないと、リング状に成形したプリフォームが、ストリッパープレートに付着し落下しない可能性があるからである。このような特性の超低密度ポリエチレン樹脂を使用すれば、プリフォームがストリッパープレートに付着することなく供給することができ、所望の柔軟性を有した肩部と口部を成形し得る。
次に ターンテーブル上を反時計回りに回転させて、マンドレルの上方より金型のキャビティを打ち込む。この際、金型を割り型としておけば、マンドレルを回転等、移動させることなく成形された肩部と口部を金型から脱離させることができる。
【実施例】
【0029】
実施例1(本発明品)
以下、本発明に係るラミネートチューブ容器について、内容物(バルク)の使い切り性についての試験結果を以下に記載する。
試験に使用したラミネート用原反は、AL箔の両面にEAAを介し、外層側に向ってPE/PET/PE/着色PE/PEを積層し、内層側にPEを積層して得られたチューブ胴体用原反を円筒状に形成した。
そしてチューブ胴体用原反には、コンプレッション法によって肩部と口部を形成する。この際、肩部と口部は、曲げ弾性率70MPa、融点115℃、密度0.9g/cm
3、MFR2.0g/10minの超低密度ポリエチレンによって形成されている。又、ラミネートチューブ容器を構成する肩部の肩角度は、
図1(b)θ2(150°)で形成した。
実施例2(本発明品)
上述の実施例1のラミネートチューブ容器と同じ胴部を有するチューブに、肩部と口部を以下の物性を有した超低密度ポリエチレンで成形したものを製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。但し、肩角度は
図1(a)θ1(120°)で形成した。
曲げ弾性率:70MPa
融点 :115℃
密度 :0.900g/cm
3
MFR :2.0g/10min
【0030】
比較例1~6
更に比較のため、肩部と口部を成形する材料として、以下の特性を有する材料にて、それぞれラミネートチューブ容器を製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。但し、ラミネートチューブ容器を構成する肩部の肩角度は、いずれも120°で形成した。
比較例1(従来品)
上述の本発明品と同じ胴部を有するチューブに、肩部と口部を以下の物性を有した高密度ポリエチレン(HDPE)で成形したものを製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。
曲げ弾性率:820MPa
融点 :132℃
密度 :0.953g/cm3
MFR :5.0g/10min
比較例2
上述の本発明品と同じ胴部を有するチューブに、肩部と口部を以下の物性を有した低密度ポリエチレン(LDPE)で成形したものを製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。
曲げ弾性率:220MPa
融点 :114℃
密度 :0.928g/cm3
MFR :3.0g/10min
【0031】
比較例3
上述の本発明品と同じ胴部を有するチューブに、肩部と口部を以下の物性を有した低密度ポリエチレン(LDPE)で成形したものを製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。
曲げ弾性率:185MPa
融点 :107℃
密度 :0.919g/cm3
MFR :2.0g/10min
比較例4
上述の本発明品と同じ胴部を有するチューブに、肩部と口部を以下の物性を有した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で成形したものを製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。
曲げ弾性率:340MPa
融点 :123℃
密度 :0.930g/cm3
MFR :2.5g/10min
【0032】
比較例5
上述の本発明品と同じ胴部を有するチューブに、肩部と口部を以下の物性を有した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で成形したものを製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。
曲げ弾性率:50MPa
融点 :93℃
密度 :0.900g/cm3
MFR :4.0g/10min
比較例6
上述の本発明品と同じ胴部を有するチューブに、肩部と口部を以下の物性を有した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で成形したものを製造した。製造方法は、本発明品と同様にコンプレッション法を使用している。
曲げ弾性率:50MPa
融点 :93℃
密度 :0.903g/cm3
MFR :2.0g/10min
【0033】
表1は、各々の樹脂に対する生産性と柔軟性の結果をまとめたものである。
生産性とは、プリフォームの安定した供給(ストリッパープレートに樹脂が付着しないか等)及び成形性(ひけ、寸法精度)を加味し、評価した結果のことである。
表1中の生産性における評価について、○は問題なくラミネートチューブ容器が製造できたことを示している。△はストリッパープレート等にプリフォームが付着し、チューブ成形不良が発生する場合があることを示している。×はプリフォームの成形または供給に問題が発生し、チューブを製造できなかったことを示している。
柔軟性とは、指圧により容易に口部が変形するか評価した結果のことである。
表1中の柔軟性における評価について、○は過大な力を要することなく口部を変形することができ、×は指圧により口部の変形が困難であり、柔軟性が劣っている状態を示している。又、-は生産性が悪く検証するに足るチューブが製造できなかったため柔軟性の評価をしていない。
【0034】
【0035】
表1の結果から明らかなように、実施例1及び実施例2に係るラミネートチューブ容器は、柔軟性に優れ、かつ、生産性も良好であり、コンプレッション用のラミネートチューブ製造装置によって、ラミネートチューブ容器を連続して生産することが可能であることが実証された。
一方、比較例2及び比較例4に係るラミネートチューブ容器は、比較例1(従来品)と比較して十分な柔軟性がないことが分かった。
又、比較例5は、コンプレッション法によるラミネートチューブ容器の製造が困難であることが分かった。
又、比較例3は、ストリッパープレートにプリフォームが付着するため、コンプレッション法によるラミネートチューブ容器の製造に不具合が生じる危険性があり、実際的な使用が困難であることが分かった。
又、比較例6は、十分な柔軟性があったが、コンプレッション法におけるラミネートチューブ容器の製造に不具合が生じる可能性があることが分かった。
【0036】
上記の試験によって、本発明の実施例1及び2に係るラミネートチューブ容器のみ柔軟性に優れ、かつ、安定して連続生産できることが立証された。
次に上記チューブのうち実施例1、実施例2及び比較例1に、市販されているハンドクリームを充填し、3人のモニター(30代女性、40代女性、50代男性)による内容物の吐出試験を行い、バルク残量を計測する試験を行った。
その結果を以下の表2及び
図2に示す。なお、低減率は、比較例1(従来品)のチューブ容器を基準に計算した結果である。
【0037】
【0038】
表2及び
図2の結果から明らかなように、実施例1及び実施例2に係るラミネートチューブ容器におけるバルク残量が、比較例1(従来品)のチューブ容器と比較して大幅に低減していることが分かる。
実施例2の結果は、肩部および口部が柔軟性のある材料で形成されているため、指圧により、口部および肩部付近の内容物を容易に絞り出せた結果だといえる。
しかしながら、3本とも肩部が変形(潰れ等)してしまい使用終盤でのキャップ嵌合に問題が発生する可能性がある。
一方、実施例1のチューブは、実施例2と同等の残量低減性を示しかつ、肩部が変形(潰れ等)していなかった。つまり、肩部付近の内容物を、肩部を変形させずに吐出したことを意味し、従来品と比較して大幅な残量低減かつ使用終盤でのスムーズなキャップ嵌合を実現できたといえる。