(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】電子機器、非接触スイッチ、および光電センサ
(51)【国際特許分類】
H05K 5/00 20060101AFI20241202BHJP
H01H 9/02 20060101ALI20241202BHJP
H01H 35/00 20060101ALI20241202BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20241202BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H05K5/00 B
H01H9/02 A
H01H35/00 G
H01H36/00 302H
H01L23/28 K
(21)【出願番号】P 2019166210
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-07
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】去来川 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】西川 和義
【合議体】
【審判長】篠塚 隆
【審判官】富澤 哲生
【審判官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-48739(JP,A)
【文献】特開平9-321448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00
H01H 9/02, 35/00, 36/00
H01L 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、電子部品が実装された1枚以上の基板と、
前記筐体内に充填されている熱可塑性ホットメルト樹脂と、
前記基板を前記筐体内の所定位置で固定するための基板保持部と、を備え、
前記筐体内は、複数の空間に分割されており、
前記複数の空間は、前記基板と前記基板保持部との間の第1空間、前記筐体と前記基板との間の第2空間、および、前記基板同士の間の第3空間の少なくともいずれかであって、それぞれに前記熱可塑性ホットメルト樹脂が充填されており、
前記第1空間が存在する場合
に、当該第1空間内
における、
(1-a)
前記基板と前記基板保持部との
該基板の厚み方向における距離
、
前記第2空間が存在する場合
に、当該第2空間内
における、
(2-a)前記筐体と前記基板との
該基板の厚み方向における距離、および
、
前記第3空間が存在する場合
に、当該第3空間内
における、
(3-a)一方の前記基板と他方の前記基板との
該一方の前記基板の厚み方向における距離が0.3mm
より大きく1.5mm
以下であり、
前記第1空間が存在する場合に、当該第1空間内における、
(1-b)前記基板上に実装された電子部品と前記基板保持部との該基板の厚み方向における距離、
前記第2空間が存在する場合に、当該第2空間内における、
(2-b)前記筐体と前記基板上に実装された電子部品との該基板の厚み方向における距離、および、
前記第3空間が存在する場合に、当該第3空間内における、
(3-c)一方の前記基板上に実装された電子部品と他方の前記基板上に実装された電子部品との該一方の前記基板の厚み方向における距離が0.3mm以上1.5mm未満であり、
前記第3空間が存在する場合に、当該第3空間内における、
(3-b)一方の前記基板と他方の前記基板上に実装された電子部品との該一方の前記基板の厚み方向における距離が0.3mmより大きく1.5mm未満である、電子機器。
【請求項2】
前記基板保持部は、前記熱可塑性ホットメルト樹脂の充填時に該熱可塑性ホットメルト樹脂の流動を導くための導流構造を備えている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記導流構造は、前記基板保持部の一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔である請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記導流構造は、前記基板保持部の面に設けられた凹部である請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記熱可塑性ホットメルト樹脂を前記筐体内に充填するための入り口としての開口部と、前記開口部から前記空間に前記熱可塑性ホットメルト樹脂を導くための流路部と、を備える流動分岐部材をさらに備える請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記熱可塑性ホットメルト樹脂は、ポリアミド系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、および、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂のいずれかまたはこれらの組合せである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子機器を2つ備え、
第1の前記電子機器は、前記電子部品としてアクチュエータを備え、
第2の前記電子機器は、前記電子部品としてセンサを備え、
前記アクチュエータと前記センサとの距離が所定値以下になると、前記センサの出力がONとなる非接触スイッチ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子機器によって構成される光電センサであって、前記電子部品として投光部および受光部の少なくともいずれか一方を備える光電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装された基板が筐体内に設けられ、該筐体内に樹脂が充填される電子機器などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品が実装された基板を筐体内に設けた電子機器において、基板を保護することを目的として、基板と筐体内との間の空間をホットメルト樹脂で充填することが行われている。
【0003】
特許文献1には、封止後に耐水性能が低下することを抑制することを目的とする電子機器が開示されている。具体的には、該電子機器は、ゲートを通して充填された樹脂が、ケース部材の内表面と流動制御部材の外表面との間の第1流路を流れるとともに、流動制御部材の内部の第2流路を流れてケース部材の内部に広がった後に固化することにより形成された封止樹脂120とを備える。第1流路の断面形状と第2流路の断面形状とは、第1流路を流れる樹脂が第2流路を流れる樹脂よりも早くに第2開口部に到達するように定められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の電子機器では、ホットメルト樹脂の流動末端が基板上に位置するように設計されているため、閉じ込められたガスの断熱圧縮により、基板の変形や電子部品の破壊が発生する場合がある。
【0006】
また、2つ以上の複数の異なる基板を部品の内側で保持する場合、ホットメルト樹脂の流動制御が困難となる。この場合、従来技術のようにホットメルト樹脂の流動末端を基板上にもってこようとすると、部品とケース内側との間隙を拡大する必要が生じる。一方で、ホットメルト樹脂は冷却時の体積収縮率が大きいため、間隙が大きいと樹脂の体積抑制が困難となり、ヒケ(変形による凹み)が発生する。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、封止性に優れた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
すなわち、本開示の一態様(以下、「本実施形態」ともいう)に係る電子機器は筐体と、前記筐体内に配置され、電子部品が実装された1枚以上の基板と、前記筐体内に充填されている熱可塑性ホットメルト樹脂と、前記基板を前記筐体内の所定位置で固定するための基板保持部と、を備え、前記筐体内は、複数の空間に分割されており、前記複数の空間は、前記基板と前記基板保持部との間の第1空間、前記筐体と前記基板との間の第2空間、および、前記基板同士の間の第3空間の少なくともいずれかであって、それぞれに前記熱可塑性ホットメルト樹脂が充填されており、(1)前記第1空間が存在する場合における、前記基板または当該基板上に実装された電子部品と、前記基板保持部との距離、(2)前記第2空間が存在する場合における、前記筐体と、前記基板または当該基板上に実装された電子部品との距離、および、(3)前記第3空間が存在する場合における、一方の前記基板または当該基板上に実装された電子部品と、他方の前記基板または当該基板上に実装された電子部品との距離が0.3mm~1.5mmである。
【0010】
本開示の一態様に係る電子機器の作製過程では、筐体内に熱可塑性ホットメルト樹脂を流し込んで冷却する。熱可塑性ホットメルト樹脂は、小さい空間では流動抵抗が高く、冷却時の体積収縮率が大きいという性質を有している。そのため、熱可塑性ホットメルト樹脂の充填時には、筐体内の特に小さな空間で樹脂の未充填箇所が発生したり、筐体内の他の部品が圧迫されたりすることがある。かといって、筐体内の空間を大きくすれば多量の樹脂を流し込むことになり、体積の減少量が増えるために出来上がった樹脂にヒケが生じる。
【0011】
しかし、上記構成によれば、熱可塑性ホットメルト樹脂充填時の樹脂の流動性に優れ、かつ、筐体内の空間も十分小さいので、筐体内の熱可塑性ホットメルト樹脂の未充填箇所の発生および冷却後の熱可塑性ホットメルト樹脂のヒケの発生を抑制することができる。これにより、電子機器における筐体内の空隙体積を小さくすることができるため、封止性に優れた電子機器を提供することができる。
【0012】
なお、「距離」とは、「筐体の面と、基板保持部を構成する基板保持部板の面とが平行であり、前記面に対して垂直な方向における、筐体の面の表面形状と、基板保持部板の面の表面形状との距離」を意図している。また、「樹脂」は、樹脂化合物だけでなく、シリカなどの充填剤、酸化防止剤などの安定剤、および可塑剤などの添加物を含有する混合物をも包含する。
【0013】
上記実施形態に係る電子機器において、前記基板保持部は、前記熱可塑性ホットメルト樹脂の充填時に該熱可塑性ホットメルト樹脂の流動を導くための導流構造を備えていてよい。本構成によれば、熱可塑性ホットメルト樹脂の流動を制御して筐体内の空間における熱可塑性ホットメルト樹脂の未充填箇所の発生を抑制することができるため、封止性により優れた電子機器を提供することができる。
【0014】
上記実施形態に係る電子機器において、前記導流構造は、前記基板保持部の一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔であってよい。上記構成によれば、熱可塑性ホットメルト樹脂の流動を制御して筐体内の空間における熱可塑性ホットメルト樹脂の未充填箇所の発生をより確実に抑制することができるため、封止性により優れた電子機器を提供することができる。
【0015】
上記実施形態に係る電子機器において、前記導流構造は、前記基板保持部の面に設けられた凹部であってよい。上記構成によれば、熱可塑性ホットメルト樹脂の流動を制御して筐体内の空間における熱可塑性ホットメルト樹脂の未充填箇所の発生をより確実に抑制することができるため、封止性により優れた電子機器を提供することができる。
【0016】
上記実施形態に係る電子機器において、前記電子機器は、前記熱可塑性ホットメルト樹脂を前記筐体内に充填するための入り口としての開口部と、前記開口部から前記空間に前記熱可塑性ホットメルト樹脂を導くための流路部と、を備える流動分岐部材をさらに備えていてよい。上記構成によれば、熱可塑性ホットメルト樹脂の流動を制御して筐体内の空間における樹脂の未充填箇所の発生をより確実に抑制することができるため、封止性にさらに優れた電子機器を提供することができる。
【0017】
上記実施形態に係る電気機器において、前記熱可塑性ホットメルト樹脂は、ポリアミド系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、および、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂のいずれかまたはこれらの組合せであってよい。本構成によれば、低温低圧で電子機器に樹脂を充填することができるため、内蔵される電子部品、筐体などの樹脂製部品ならびにケーブルなどが受ける熱ダメージおよび応力ダメージを低減することができる。ここで、「ポリアミド系樹脂」とは、ポリアミドに由来する構成単位を主構成要素として含む樹脂であり、ポリアミドの単独重合体およびポリアミドと共重合可能な単量体とポリアミドとの共重合体の両方が含まれる。他に「系樹脂」と記載して列挙した樹脂も同様である。
【0018】
また、本実施形態に係る非接触スイッチは、上記電子機器を2つ備え、第1の前記電子機器は、前記電子部品としてアクチュエータを備え、第2の前記電子機器は、前記電子部品としてセンサを備え、前記アクチュエータと前記センサとの距離が所定値以下になると、前記センサの出力がONとなる。
【0019】
また、本実施形態に係る光電センサは、上記電子機器によって構成される光電センサであって、前記電子部品として投光部および受光部の少なくともいずれか一方を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、封止性に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電子機器の、
図2におけるA-A線で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る電子機器の外観の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図3は、本実施形態に係る電子機器の、基板保持部と基板との配置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の変形例に係る電子機器の、基板保持部の概略を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る電子機器の、
図2におけるB-B線で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る電子機器を用いた非接触安全スイッチの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る電子機器を用いた光電センサの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0023】
§1 適用例
図1、
図2および
図5を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る電子機器の、
図2におけるA-A線で切断した断面を模式的に示す図である。
図2は、本実施形態に係る電子機器の外観の一例を示す図である。
図5は、本実施形態に係る電子機器の、
図2におけるB-B線で切断した断面を模式的に示す図である。
【0024】
図1および
図5に示す通り、本実施形態に係る電子機器1は、筐体10と、筐体10内に配置されて電子部品25が実装された3枚の基板20と、基板20を筐体10内の所定位置で固定する基板保持部30とを備える。本実施形態における筐体10は、空気の抜け穴としてエアベント部15を輸している。また、本実施形態に係る電子機器1は、筐体10内の空間に熱可塑性ホットメルト樹脂が充填されている(図示せず)。さらに、本実施形態に係る電子機器1は流動分岐部材50を備えており、
図2における矢印G1に示した位置から矢印G1が示す方向に、流動分岐部材50を介して熱可塑性ホットメルト樹脂が充填される。
【0025】
本実施形態における筐体10内は、基板20によって、(A)基板20と基板保持部30との間の空間、(B)筐体10と基板20との間の空間、および、(C)基板20同士の間の空間に分割されている。本適用例において、基板20または基板20上に実装された電子部品と、基板保持部30との距離、筐体10と、基板20または基板20上に実装された電子部品との距離、一方の基板20または基板20上に実装された電子部品と、他方の基板20または基板20上に実装された電子部品との距離は、いずれも0.3mm~1.5mmである。
【0026】
本実施形態における電子機器1は、作製時に筐体10内に熱可塑性ホットメルト樹脂を充填するが、筐体10内における上記の各距離が0.3mm~1.5mmであるので、充填時の熱可塑性ホットメルト樹脂の流動性に優れ、かつ、筐体内の空間も十分小さい。そのため、筐体内の熱可塑性ホットメルト樹脂の未充填箇所の発生および冷却後の熱可塑性ホットメルト樹脂のヒケの発生を抑制することができる。これにより本発明の一側面に係る実施の形態では、筐体10内の空隙体積を小さくすることができ、封止性に優れた電子機器1を提供することができる。
【0027】
§2 構成例
以下に、本実施形態に係る電子機器1の構成の一例について
図1、
図2および
図5を用いて説明する。
図1および
図5の例では、電子機器1は、筐体10と、電子部品25が実装された基板20と、熱可塑性ホットメルト樹脂と、基板保持部30と、流動分岐部材50とを備えている。以下では、「熱可塑性ホットメルト樹脂」を単に「樹脂」と省略して記載する。
【0028】
<電子機器を構成する部材>
(筐体)
本実施形態における筐体10は、内部に基板20と、樹脂と、流動分岐部材50と、基板保持部30とを格納している。一例において、筐体10は、上記以外にも、基板20に接続されたケーブル部品などを格納していてもよい。
【0029】
本実施形態における筐体10は、電子機器1の作製時に、
図5における矢印G1に示した位置から矢印G1が示す方向に樹脂を充填するために、G1が示す位置が開口している(充填口)。また、本実施形態における筐体10は、充填口から樹脂を充填する際に流動する樹脂が筐体10内の空気を押し出していけるよう、空気の抜け穴としてエアベント部15が開口している。
【0030】
また、筐体10は、電子機器1が優れた封止性を有するように、充填口およびエアベント部15が封止された場合に密閉される。筐体10の大きさおよび形状は、電子機器1の使用方法に応じて、適宜設計すればよい。筐体10は、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、およびPA(ポリアミド)樹脂によって構成され得る。
【0031】
(基板)
本実施形態における基板20は、筐体10内に配置され、電子部品25が実装されている。基板20において実装され得る電子部品25としては、例えば、アンテナ部品、発光素子、受光素子、各種センサ部品、制御用IC、増幅回路、および電源回路などが挙げられる。本実施形態における基板20は、ガラスエポキシ基板(FR-4)、ガラスコンポジット基板(CEM-3)、および紙フェノール基板(FR-1、2)などによって構成される。
【0032】
(基板保持部)
基板保持部30は、基板20を筐体10内の所定位置において固定するための部材である。基板保持部30の大きさおよび形状は、電子機器1の適用方法に応じて、適宜設計すればよい。一例において、基板保持部30は、流動分岐部材50をも固定することができる。この場合、流動分岐部材50は咬合可能な凸部または凹部などを有していてもよい。
【0033】
基板保持部30は、筐体10と同様の樹脂によって構成され得るが、筐体10を構成する素材と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
(流動分岐部材)
本実施形態における流動分岐部材50は、筐体10へ流し込んだ樹脂を筐体10内の複数の空間に行き渡らせるための、分岐した管を有する部材である。本実施形態における流動分岐部材50は、樹脂を筐体10内に充填するための入り口としての開口部と、開口部から筐体10内の空間に樹脂を導くための流路部とを備える(いずれも図示せず)。
【0035】
開口部は、電子機器1の作製過程で外部から流動分岐部材50内へ(
図5における矢印G1が示す方向に)樹脂を流し込むための入口である。一例において、開口部は、流動分岐部材50において開口している面の中央部に位置する。流路部は、開口部に続く、分岐を有する管と、分岐した管の先の開口に設けられた溝とからなる。流動分岐部材50は、流路部を有していることで、開口部から流し込まれた樹脂を、管を通して、その先の溝に流すことができる。
【0036】
流動分岐部材50の開口部および流路部の断面積は特に限られないが、一例においては0.2mm2以上である。本実施形態に係る電子機器1においては、流動分岐部材50の開口部および流路部の断面積の大きさを調節することでも、樹脂の流動性を制御できるため、電子機器1の体積を必要以上に大きくすることなく、筐体内の樹脂の未充填箇所の発生および冷却後の樹脂のヒケの発生を抑制することができる。そのため、封止性に優れた電子機器を提供することができる。
【0037】
(樹脂)
本実施形態に係る電子機器1に充填される樹脂(熱可塑性ホットメルト樹脂)としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、および、ポリオレフィン系樹脂のいずれかまたはこれらの組合せを用いることができる。一例において、低温(例えば160℃以上220℃以下)かつ低圧(10MPa以下)で成形可能な樹脂を用いると、電子機器1の作製時に、筐体10に内蔵される電子部品25およびケーブル部品などの各種部材へ与え得る熱ダメージおよび応力ダメージを低減することができる。また、本実施形態においては、樹脂の流動性をより向上させる観点、および筐体10内における小さな空間(例えば、空間内の最短距離が1.0mm未満)においても樹脂の未充填箇所の発生を抑制する観点からは、例えば、樹脂の溶融粘度は500dPa・s以下とすることができる。電子機器1の封止性(例えば、切削油などに対する耐油性、IP67およびIP69Kなどの規格を満たす耐水性、および製品化の際のECOLAB認証において求められる耐薬品性など)を向上させる観点からは、ポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、中でも、結晶性を有するポリエステル系樹脂が好ましい。
【0038】
なお、「ポリアミド系樹脂」とは、ポリアミドに由来する構成単位を主構成要素として含む樹脂であり、ポリアミドの単独重合体およびポリアミドと共重合可能な単量体とポリアミドとの共重合体の両方が含まれる。他に「系樹脂」と記載して列挙した樹脂も同様である。また、「樹脂」は、樹脂化合物だけでなく、シリカなどの充填剤、酸化防止剤などの安定剤、および可塑剤などの添加物を含有する混合物をも包含する。
【0039】
<各部材の配置>
本実施形態に係る電子機器1において、上述の部材は、筐体10の内部に格納されている。以下、
図1および
図5を用いて筐体10内の各部材の配置の一例を説明する。
【0040】
(基板)
図5では、筐体10内には基板20が3枚備えられており、次のように配置されている。すなわち、
図5に示した筐体10のx軸方向に沿った1つの面の近傍において、該面に平行して1枚、および、筐体10のy軸方向に沿った対向する二面の近傍において、該面にそれぞれ平行して1枚ずつ、それぞれ配置されている。なお、本実施形態において、基板20は3枚配置されているが、本開示に係る電子機器1が備える基板20は1枚以上あればよい。
【0041】
本実施形態において、本実施形態における基板20は、基板保持部30によって、筐体10内の所定の位置に固定されている。また、基板20は、さらに筐体10に固定されていてもよい。基板20が強固に固定されていると、充填する樹脂の流動応力が大きい場合であっても位置ずれを防ぐことができる。
【0042】
基板20は、筐体10内の空間を分割している。一例において、分割されている空間は、基板20と基板保持部30との間の空間、筐体10と基板20との間の空間、あるいは、基板20同士の間の空間であり得る(それぞれ、特許請求の範囲における「第1空間」、「第2空間」、「第3空間」に該当)。本実施形態における筐体10内の空間は、基板20と基板保持部30との間の空間、上述した3枚の基板20と該基板20近傍の筐体10の3辺との間の空間、および3枚の基板20に囲まれた空間を含む。
【0043】
なお、後述の通り、本実施形態における基板保持部30は、3枚の基板20に囲まれた空間に位置するため、「基板20と基板保持部30との間の空間」は、「3枚の基板20に囲まれた空間」に包含され得る。
【0044】
図1に示すように、基板20と基板保持部30との距離をd1、筐体10と基板20との距離をd2、一方の基板20と他方の基板20との距離をd3、基板20上に設けられている電子部品と基板保持部30との距離をd4、筐体10と基板20上に設けられている電子部品との距離をd5として、それぞれについて説明する。本実施形態に係る電子機器1において、d1~d5は、いずれも0.3mm~1.5mmである。d1~d5がこの範囲内にあれば、樹脂充填時の樹脂の流動性に優れ、かつ、筐体内の空間も十分小さいので、筐体内の樹脂の未充填箇所の発生および冷却後の樹脂のヒケの発生を抑制することができる。このような電子機器1は、筐体10内の空隙体積が小さいため、封止性に優れている。
【0045】
なお、上記の「距離」は、「筐体の面と、基板保持部を構成する基板保持部板の面とが平行であり、前記面に対して垂直な方向における、筐体の面の表面形状と、基板保持部板の面の表面形状との距離」を意図している。
【0046】
(基板保持部)
本実施形態における基板保持部30は、3枚の基板20に囲まれた空間に位置する。一例において、基板保持部30は、流動分岐部材50をも固定することができるが、その場合は流動分岐部材50から流出する樹脂の流動を妨げないことが好ましい。
【0047】
上述の通り、本実施形態における基板保持部30は、距離d1~d5を、いずれも0.3mm~1.5mmになるように、基板20を固定することができる。
【0048】
なお、基板保持部30と基板20との配置および形状は、特に限られないが、例えば
図3に示すようにすることができる。
図3は、本実施形態に係る電子機器の、基板保持部と基板との配置の一例を示す概略図である。
図3に示すように、基板保持部30と基板20との配置を示す構造体80では、基板保持部30は、平行に位置する2枚の基板20の
端面のうち、向かい合う2面を固定し、かつ、基板保持部30は、該基板20の間にも位置していることで、2枚の基板を固定している。
【0049】
構造体81における基板保持部30は、構造体80における2枚の基板20の端面のうち、前述の2面の端面とは直交する端面の一方に、さらに1枚の基板20を3枚目の基板20として固定している。すなわち、3枚目の基板20は、他の2枚の基板20と直交している。
【0050】
構造体82は、構造体80において、さらにもう1枚の基板20を、構造体80における2枚の基板20と平行に備えている。構造体82における3枚目の基板20は、構造体80の2枚の基板20と同様、基板保持部30によって、向かい合う2面の端面が固定されている。また、基板保持部30は、3枚の基板20の間の2箇所の空間にも位置している。
【0051】
構造体83では、構造体80を、基板20の長手方向に2つ繋げた構造をしている。ただいし、基板20の長手方向の長さは、構造体80の基板20よりも短く、これにより、基板20をより強固に固定している。
【0052】
構造体84における基板保持部30は、構造体80における平行する2枚の基板20の両方の基板20の端面を固定しているが、2枚の基板20の長手方向の長さが異なっている。構造体84では、基板保持部30の端部から基板20までの長さが異なっていることで、長さの異なる2枚の基板20を固定している。
【0053】
構造体85における基板保持部30は、構造体80における2枚の基板20のうち、一方の基板20を、他方の基板20とは直交する位置において固定している。構造体80の基板20とは直交する基板20を固定している、構造体85における基板保持部30は、該基板20の向かい合う2面の端面ではなく、片方の面を固定している。
【0054】
上述の構造体は、あくまで一例にすぎず、基板保持部30と基板20との配置および形状は、これに限られるものではない。
【0055】
(流動分岐部材)
本実施形態における流動分岐部材50は、電子機器1の作製時に、筐体10の充填口から筐体10内に向けて(すなわち
図5における矢印G1に示す位置から矢印G1が示す方向に)樹脂を充填できるよう、充填口を有する面に沿って開口部を有し、流路部は筐体10内に格納されている。
【0056】
本実施形態における流動分岐部材50は、
図5に示すように、基板20が分割する複数の空間それぞれに流路部が続いている。このように、本実施形態における電子機器1は、樹脂充填時の樹脂の流動性に優れている。そのため、筐体10内の樹脂の未充填箇所の発生を抑制することができる。
【0057】
本実施形態において、流動分岐部材50は、基板保持部30に固定されている。固定の方法としては、例えば、流動分岐部材50と基板保持部30とにそれぞれ設けた凸部および凹部が互いに咬合する方法などが挙げられるが、これに限られない。
【0058】
(樹脂)
樹脂(熱可塑性ホットメルト樹脂)は、筐体10内において基板20によって分割されている空間それぞれに充填され、基板20を被覆している。樹脂の被覆厚みは、封止性の観点では特に制約がないが、電子機器1の耐電圧性の観点から、0.3mm以上が好ましいことがある。一例において、樹脂の被覆厚みが0.3mm以上であれば、十分な絶縁保護機能を確保できる。
【0059】
また、樹脂は、耐水性および耐電圧性の観点から、筐体10内の空間に隙間なく充填される。本実施形態において、樹脂が充填される筐体10内の空間におけるd1~d3は0.3mm~1.5mmであるので、樹脂の被覆厚みが0.3mm以上であることは、樹脂充填時の樹脂の流動性を確保して樹脂の未充填箇所の発生を抑制し、冷却後の樹脂のヒケを抑制する観点からも好ましい。
【0060】
§3 樹脂による筐体の封止
電子機器1の作製にあたり、筐体10の内部に樹脂を充填して封止する過程の一例について説明すれば、次の通りである。まず、筐体10内に流動分岐部材50、ケーブル部品などが接続されている基板20および基板保持部30を上記のように配置する。各部材が格納された筐体10を、樹脂成形用の金型に設置し、流動分岐部材50を介して、樹脂を充填する。樹脂の成形および充填は、射出成形機およびギアポンプ方式のアプリケーターなどを用いて、常法に従って行うことができる。すなわち、樹脂の成形および充填時の各種条件は、用いる樹脂および作製する電子機器1によって適宜調整すればよい。ただし、樹脂によっては、長時間溶融すると樹脂中の成分が分離する場合がある。このような場合には、成形機として、逐次溶融方式を採用する成形機を用いればよい。樹脂の充填後、金型内で冷却してから取り出すことで、電子機器1を作製することができる。
【0061】
本実施形態において筐体10に充填される樹脂は、粘度が高いなどの特性を有するため、流動する際には流動抵抗の影響を大きく受ける。流動抵抗は、樹脂が流動する空間が大きいほど小さくなる。筐体10内は基板20によって複数の空間に分割されているが、流動抵抗の大きい空間では空気が抜けにくくなり、該空気の断熱圧縮抵抗により樹脂の流動が停止して樹脂の未充填箇所が発生する。さらに、空間を押し広げようとする力が生じて基板20の変形および電子部品25の破損が生じることもある。しかし、樹脂の流動抵抗を小さくするために基板20によって分割された各空間を広くすると、電子機器1の作製には、多くの樹脂が必要となる。
【0062】
上述の通り、電子機器1の作製過程では、筐体10内に樹脂を流し込んだ後に冷却を行うことがあるが、樹脂は冷却時の体積収縮率が大きい。そのため、多量の樹脂を流し込むと冷却による体積の減少量も多くなり、樹脂にヒケが生じてしまう。筐体10内に充填された樹脂にヒケ生じていることは、筐体10の嵌合部などを通じて外部から空気が入り、電子機器1の封止性が損なわれるため好ましくない。さらに、電子機器1の小型化が困難となる観点からも、基板20によって分割された各空間を広くすることは好ましいことではない。
【0063】
本実施形態において、基板20によって分割された各空間における部材間の距離d1~d3は、いずれも0.3mm~1.5mmであるので、筐体10内の空間を十分小さくできるので、冷却後の樹脂のヒケを抑制することができる。また、樹脂の流動末端をエアベント部15へ誘導することができ、筐体10内の樹脂の未充填箇所の発生を抑制できる。これにより、電子機器における筐体内の空隙体積を小さくすることができるため、封止性に優れた電子機器を提供することができる。筐体10内の樹脂の未充填箇所の発生を抑制して電子機器の封止性高めることは、電子機器1の耐水性および耐電圧性を高めることにも繋がるため好ましい。
【0064】
さらに、本実施形態に係る電子機器1は、流動分岐部材50を備えている。
図5に示すように、流動分岐部材50の流路部は、基板20が分割する複数の空間それぞれに続いている。このため、本実施形態における電子機器1は、樹脂を充填するときに、樹脂の流動末端をより確実にエアベント部15に誘導することができ、筐体10内の樹脂の未充填箇所の発生を抑制することができる。したがって、本開示の一態様によれば、封止性に優れ、かつ小型の電子機器1を提供することができる。
【0065】
§4 電子機器の適用例
本実施形態に係る電子機器1は、例えば、非接触安全スイッチおよび光電センサへ適用することができる。以下、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る電子機器を用いた非接触安全スイッチの一例を示す図である。
図7は、本実施形態に係る電子機器を用いた光電センサの一例を示す図である。
【0066】
(非接触安全スイッチへの適用例)
図6は、上記の電子機器1を非接触安全スイッチ100(非接触スイッチ)に適用した場合の構成例を示す図である。非接触安全スイッチ100は、アクチュエータ6として動作する電子機器1、および、センサ本体7として動作する電子機器1との組合せによって実現される。アクチュエータ6とセンサ本体7との距離が所定値以下になると、センサ本体7の出力がONとなるとともに、アクチュエータ6とセンサ本体7との距離が所定値より大きくなると、センサ本体7の出力がOFFとなる。非接触安全スイッチ100の種類としては、リードスイッチタイプとRFIDタイプとが挙げられる。
【0067】
リードスイッチタイプは、アクチュエータ6側に電子部品としての磁石が内蔵され、センサ本体7側に電子部品としてのリードスイッチが複数内蔵される構造となっている。アクチュエータ6とセンサ本体7との距離が近くなると、センサ本体7における磁界が強くなることによりリードスイッチの接点が動作し、センサ本体7からの出力がONとなる。
【0068】
RFIDタイプは、アクチュエータ6側に電子部品としてのRFIDが内蔵され、センサ本体7側に電子部品としてのRFIDリーダが内蔵される構造となっている。アクチュエータ6がセンサ本体7に近づくと、センサ本体7側のRFIDリーダがアクチュエータ6側のRFIDからIDデータを読み取り、予め記憶しているIDと照合して一致していれば、センサ本体7の出力がONとなる。このように、RFIDタイプはID照合を行うので、別のRFID、別のタイプのRFIDを読み取ったりしても誤動作を防止することができる(無効化防止機能)。また、センサ本体7に備えられているICでソフトウェアを実行することにより、センサ自体の故障を検出することも可能である。
【0069】
以上のように、非接触安全スイッチ100は摺動部がないため、摺動による摩耗粉を生じることがない。よって、非接触安全スイッチ100は、半導体製造装置や、食品または化粧品の製造ラインなどにおける、安全ドアの開閉検出のためのスイッチとして好適に用いることができる。また、上記のように、電子機器1は、筐体10の内部に樹脂が充填された構造であるので、洗浄時の周囲からの水や塵埃の影響を受けにくい。よって、より信頼性の高い非接触安全スイッチ100を提供することができる。
【0070】
(光電センサへの適用例)
図7は、上記の電子機器1を光電センサ200に適用した場合の構成例を示す図である。光電センサ200は、投光部8として動作する電子機器1、および、受光部9として動作する電子機器1との組合せによって実現される。なお、1つの電子機器1が、投光部8および受光部9の両方の機能を有する光電センサ200であってもよい。
【0071】
投光部8によって投光された光が検出物体によってさえぎられたり反射したりすると、受光部9に到達する量が変化する。受光部9は、この変化を検出して電気信号に変換し、出力する。投光部8としての電子機器1は、電子部品としての発光素子89を備え、受光部9としての電子機器1は、電子部品としての受光素子99を備えている。なお、投光部8としての電子機器1は、さらに電源部を備えていてもよく、受光部9としての電子機器1は、さらに増幅部、制御部、および電源部を備えていてもよい。
【0072】
このように、光電センサ200は、検出物体に機械的に触れることなく検出できるので、検出物体およびセンサ自体に傷が生じにくく、摩耗が生じることもない。よって、上記の非接触安全スイッチ100と同様、半導体製造装置や、食品または化粧品の製造ラインなどにおける物体の検出に好適に用いることができる。また、上記のように、電子機器1は、筐体10の内部に樹脂が充填された構造であるので、洗浄時の周囲からの水や塵埃の影響を受けにくい。よって、より信頼性の高い光電センサ200を提供することができる。
【0073】
§5 変形例
図4を用いて、本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
図4は、本実施形態の変形例に係る電子機器の、基板保持部の概略を示す斜視図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0074】
本変形例における基板保持部3010は、樹脂の充填時に該樹脂の流動を導くための導流構造を備えている。より具体的には、導流構造は、基板保持部30の表面に設けられた凹部3015である。本変形例における基板保持部3010は、凹部3015を設けることによって、筐体10内の各空間における部材間の距離を適宜調節し、樹脂の流動を制御することができる。そのため、より確実に筐体10内の樹脂の未充填箇所の発生を抑制できる。凹部3015の形状および配置は特に限られず、電子機器1の適用方法によって適宜設定すればよい。
【0075】
また、導流構造は、
図4に示す基板保持部3012のように、凹部3015に加えて、一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔3016をさらに設けていてもよい。基板保持部3012が貫通孔3016をさらに設けていることによって、例えば、筐体10内の樹脂の流動末端を所望の空間に導くことができる。筐体10内の形状などに応じて樹脂の流動を制御できるので、筐体内の樹脂の未充填箇所の発生および冷却後の樹脂のヒケの発生を抑制することができる。そのため、封止性に優れた電子機器を提供することができる。なお、貫通孔3016の形状および配置は特に限られず、適宜設計すればよい。
【0076】
本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
§6 実施例
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0078】
〔実施例〕
上記実施形態において
図1、2および5を用いて説明した電子機器を作製し、筐体内の樹脂の充填状態、耐水性および耐電圧性を評価した。
【0079】
(電子機器の作製)
樹脂は東洋紡製バイロショット(ポリエステル系)を用い、成形機はキヤノン電子製LS-300iを使用した。成形機の設定は、シリンダ温度240℃、射出速度20mm/secおよび射出圧力4.0MPaとした。
【0080】
(評価)
充填状態の評価として、X線検査装置を用い、筐体の外部と連通している未充填箇所の有無を確認した。
【0081】
耐水性の評価として、IP67規格試験およびIP69K規格試験を行い、基準を満たしているかどうかを確認した。
【0082】
耐電圧性の評価として、規格IEC60947-5-2およびIEC60947-5-2を満たしているかどうかを確認した。
【0083】
(結果)
・充填状態:筐体の外部と連通している未充填箇所は確認されなかった。
・耐水性:試験後の絶縁抵抗値は2.55GΩを超えており、両方の規格において基準を満たしていた。
・耐電圧性:AC1000V電圧下における漏れ電流が1mA以下であり、いずれの基準も満たされていた。
【0084】
〔比較例〕
電子機器が基板保持部を備えていない以外は、実施例と同様に操作を行った。結果は以下の通りであった。
・充填状態:筐体の外部と連通している未充填箇所が確認された。
・耐水性:試験後の絶縁抵抗値は20MΩを下回り、どちらの規格の基準も満たしていなかった。
・耐電圧性:AC750V電圧下における漏れ電流が1mA以上であり、いずれの基準も満たしていなかった。
【0085】
また、
図1における右側の基板20と筐体10の右側の面との間の空間において、筐体10と、基板20または基板20上に実装された電子部品との距離(距離d2および距離d5などに相当)を0.1mm~1.7mmとなるように変化させて樹脂を充填させ、充填状態を検査する試験も実施した。
【0086】
結果として、筐体10と、基板20または基板20上に実装された電子部品との距離が0.3mm~1.5mmである場合に、未充填箇所のない良好な充填が行われることが確認された。
【符号の説明】
【0087】
1 電子機器
6 アクチュエータ
7 センサ本体
8 投光部
9 受光部
10 筐体
15 エアベント部
20 基板
25 電子部品
30、3010、3012 基板保持部
50 流動分岐部材
80、81、82、83、84、85 構造体
89 発光素子
99 受光素子
100 非接触安全スイッチ
200 光電センサ
3015 凹部
3016 貫通孔