(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】付随する炎症のない細菌バイオフィルムの破壊のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20241202BHJP
A01N 63/00 20200101ALI20241202BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20241202BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241202BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241202BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241202BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20241202BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20241202BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
A01N63/00
A01P1/00
A01P3/00
A61K38/17
A61K45/00
A61P31/04
C02F1/50 510C
C02F1/50 520B
C02F1/50 532Z
C07K14/47
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2019550715
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 US2018022508
(87)【国際公開番号】W WO2018170178
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-05
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グッドマン, スティーブン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】バカレッツ, ローレン オー.
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】中村 浩
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/016417(WO,A1)
【文献】特表2013-542185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
C12Q
A61P
A61K
CAPlus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオフィルム中の微生物DNAへのデオキシリボ核酸B II(DNABII)ポリペプチドの結合を阻害するか、
または競合させ
るための、有効量の
、改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドを含む組成物であって、
該改変high mobility group-box 1ドメインは、C45Sの置換を有するか、もしくは、C45Sに加えてC23Sおよび/またはC106Sの置換を有する配列番号2の配列からなり、
該組成物は、該バイオフィルム中の該微生物DNAと接触されることを特徴とし、それによって、該微生物DNAへの該DNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、
または競合させ
る、組成物。
【請求項2】
前記改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、インビトロまたはインビボにおいて前記バイオフィルムと接触される、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記バイオフィルム中の前記微生物DNAは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansから選択される微生物によって形成される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記バイオフィルムは、表面上にある、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
表面上での微生物DNAを含むバイオフィルムの形成を防止するためのインビトロの方法であって、前記表面を、有効量の
、改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドと接触させる工程を含
み、
該改変high mobility group-box 1ドメインは、C45Sの置換を有するか、もしくは、C45Sに加えてC23Sおよび/またはC106Sの置換を有する配列番号2の配列からなる、方法。
【請求項7】
前記改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面は、前記改変high mobility group-box 1ドメインでコーティングされる、請求項
6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオフィルム中の前記微生物DNAは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansから選択される微生物によって形成される、請求項
6~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、有効量の抗生物質で前記表面をコーティングする工程をさらに包含する、請求項
6~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
バイオフィルムを生成する被験体において微生物感染を防止または処置するための、有効量の
、改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドを含む組成物であって、
該改変high mobility group-box 1ドメインは、C45Sの置換を有するか、もしくは、C45Sに加えてC23Sおよび/またはC106Sの置換を有する配列番号2の配列からなり、
該組成物は、投与されることを特徴とし、それによって、微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、
または競合させ
る、組成物。
【請求項12】
前記改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む、請求項1
1に記載の組成物。
【請求項13】
前記微生物感染は、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、またはAggregatibacter actinomycetemcomitansによって引き起こされる、請求項1
1または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、有効量の抗生物質をさらに含む、請求項1
1~1
3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年3月15日に出願された米国仮出願番号第62/471,834号への米国特許法第119条(e)項の下の利益を主張しており、その内容は、その全体が参考として本明細書によって援用される。
背景
【0002】
ヒト身体中のバイオフィルムに残留する細菌は、全ての慢性/再発性疾患のうちの約2/3の原因となる。これらのバイオフィルムは、しばしば、先天性免疫系および適応免疫系を妨げるDNA、抗生物質および他の抗細菌薬剤から主に構成される外側の「スライム」によって、そのバイオフィルムの内側の細菌へのアクセスを獲得することから保護される細菌から構成される。バイオフィルムは、身体から感染を一掃することを極めて困難にする。さらに、バイオフィルムは、しばしば致死的な転帰を伴う急性感染の貯蔵庫として作用し得る。
【0003】
DNABIIのタンパク質ファミリーに由来する少なくとも1種のタンパク質は、すべて公知のユーバクテリアにおいて見出され、細菌細胞の外側で天然に見出される。それらタンパク質は、強い先天性免疫応答を誘発する一方で、宿主被験体は、感染の結果としてファミリメンバーに対する特異的抗体を天然に生成できない。細菌バイオフィルムに伴う大きな課題は、宿主免疫系および/または抗生物質および/または他の抗微生物物質(antimicrobials)がそのバイオフィルム内で保護された細菌へのアクセスを獲得できないことである。
【0004】
バイオフィルムは、産業の環境においても存在する。例えば、バイオフィルムは、生産現場からガソリンスタンドの貯蔵タンクまでの石油プロセス課題の広い範囲に影響を及ぼす。現場では、硫酸還元バイオフィルム細菌が、硫化水素を生成する(サワーオイル)。プロセスパイプラインでは、バイオフィルム活性は、フィルタおよび開口部を妨げるスライムを発生させる。バイオフィルムおよびバイオフィルム生物はまた、パイプラインおよび石油プロセス装置の腐食を引き起こす。これらの課題は、オイルまたはガス生産施設全体から、付着するおよび腐食性のバイオフィルム生物が最終製品貯蔵タンクの表面に見出されてすらいる点まで現れ得る。
【0005】
家庭では、バイオフィルムは、微生物増殖を支持する任意の表面の中または表面上に(例えば、配水管に、食品を用意する表面上に、トイレに、ならびにスイミングプールおよびスパに)見出される。
【0006】
バイオフィルムは、水処理(家庭用および産業用の両方)の広い範囲に影響を及ぼす。それらは処理装置の表面上で増殖し得、装置の性能を妨げる(例えば、熱伝達の低下またはフィルタおよび膜の詰まり)。冷却塔用充填材上で増殖するバイオフィルムは、その充填材の崩壊を引き起こすに十分な重量を加え得る。バイオフィルムは、非常に特殊なステンレス鋼ですら腐食を引き起こす。水処理におけるバイオフィルムは、最終製品の価値を低下させ得る。飲用水配水システム中で増殖するバイオフィルムは、水の審美的品質を低下させる、潜在的に病原性生物、腐食生物または細菌の住処になっている可能性がある。
【0007】
従って、バイオフィルムの保護バリアを破壊して、関連する細菌感染を処置もしくは死滅させ、そしてそれらを表面および水システムから一掃する必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たし、関連する利点も提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
HMGB1(真核生物タンパク質(eukyotic protein))は、非ヒストンクロマチンタンパク質として、40年前に発見された(Goodwinら. 1973)。HMGB1は、DNAに結合するその能力によって、DNA複製、修復および遺伝子調節を含む、核タンパク質相互作用の全領域における構成要素として機能する遍在的に発現される核タンパク質である。それはまた、種々のがん、オートファジー(Tangら. 2011)および非標準の分泌経路(Leeら. 2010)においてタンパク質-タンパク質相互作用を促進する。HMGB1は主に核に存在するが、それは、いくつかの細胞タイプ(活性化免疫細胞(マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞およびナチュラルキラー細胞)、上皮細胞および線維芽細胞を含む)によって、細胞外空間へと分泌および/または放出され得る(Yangら. 2007)。細胞外HMGB1は、サイトカイン誘導、ケモカイン様、および血管新生促進機能を示す(Melloniら. 1995a; 1995b; Pistoia and Raffaghello 2011) (Ranzatoら. 2009) (Abrahamら. 2000; Agnelloら. 2002) (Mardenteら. 2012) (Wangら. 1999)。それはまた、細菌殺滅(Gongら. 2009; Zetterstromら. 2006)、および細胞老化(Davalosら. 2013)に関与する。HMGB1は、微生物感染と戦うために、好中球によって放出される好中球細胞外トラップ(NETs)と会合する。
【0009】
抗生物質は、細菌感染の処置の第1選択肢である。バイオフィルムは、すべての細菌感染のうちのおよそ80%についての必要な構成要素であり、感染性疾患の慢性および再発性の性質に強く影響を及ぼす。また、バイオフィルムの中の細菌は、抗生物質に対する耐性が最大1000倍超である。バイオフィルム媒介性細菌感染の慢性および再発性の性質は、抗生物質の過剰な使用を要求し、このことは、次に、多数の抗生物質に耐性のある細菌の冷静にならざるを得ない出現をもたらしている。抗生物質の過剰な使用の結果としてのこの困惑させるような付随的なダメージは、抗生物質療法の失敗および感染を処置する困難/不能を生じる。また、抗生物質の重大な副作用は、二次感染を生じ得る片利共生微生物叢に負の影響を及ぼすことである。
【0010】
HMGB1は、2つのタンデムDNA結合ドメイン(AおよびBボックス)、および高度に酸性のC末端テールを有する。HMGB1はモノマーとして機能し、その2つのタンデムDNA結合ドメインを使用して、DNA副溝の中に結合し、DNAを曲げる。HMGB1はまた、浮遊状態の細菌に対して抗微生物活性を有する約30の酸性アミノ酸残基からなるC末端ドメインを有する(Gongら. 2009)。出願人は、DNAに結合し、これを曲げるDNABIIタンパク質が、多数のヒト病原体によって形成されるバイオフィルムの構造に不可欠であることを以前に示した(Brandstetterら. 2013; Brocksonら. 2014; Devarajら. 2015; Freireら. 2016; Goodmanら. 2011; Gustaveら. 2013; Idiculaら. 2016; Justiceら. 2012; Novotnyら. 2013a; Novotnyら. 2016; Roccoら. 2016)。HMGB1は、DNABIIタンパク質と配列相同性または構造相同性を共有しないが、いくつかの細菌の機能に関してはインビトロでDNABIIタンパク質を置き換えることが示された(Paullら. 1993; Segallら. 1994)。出願人は、DNABIIタンパク質がバイオフィルムのeDNA依存性細胞外マトリクスを安定化する一方で、組換えHMGB1(rHMGB1)がインビトロで予め形成された細菌バイオフィルムを破壊し(表1)、中耳炎(OM)の実験モデルにおいてNTHIバイオフィルムをチンチラの中耳から一掃し(
図1A~1B)、低減した細菌負荷を直接的に生じる、マウス気道におけるBurkholderia cenocepaciaバイオフィルム発生を阻害する(
図2A~2D)ことを示した。
【0011】
rHMGB1は、バイオフィルムをインビトロおよびインビボで破壊するにあたって有効であると示されたが、潜在的には宿主に対して有害であり得る強い炎症応答を誘導することも、詳細に示されている。アセチル化、リン酸化、メチル化、グリコシル化、ADPリボシル化、およびシステイン残基の酸化を含むいくつかの翻訳後修飾(PTM)は、HMGB1に関して、その位置(核、細胞質または細胞外)、機能、およびDNAに結合する能力を調節することが記載されている(総説(Kangら. 2014))。ヒトHMGB1は、3個のシステイン残基を23位、45位、および106位に含み、そのシステイン残基の酸化は、その炎症特性に影響を与える(Kazamaら. 2008)。C106チオール基およびC23-C45ジスルフィド結合を含むHMGB1は炎症の引き金となる一方で、末端が酸化したシステインは、炎症の消散を促進する(Yangら. 2012)。
【0012】
本明細書で開示される局面は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くまたはすべての置換を含む改変high mobility group-box 1ドメイン、上記改変high mobility group-box 1ドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチド、その単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドを含むベクター、ならびに有効量の、改変high mobility group-box 1ドメインおよび/または前述の単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドおよび/または前述のベクターを含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0013】
出願人は、C45S組換えHMGB1または改変HMGB1(C45S)(「mHMGB1(C45S)」)が、既存のバイオフィルムを、インビトロおよびインビボ(2つの哺乳動物モデルにおいて)の両方で破壊することを示したことを本明細書で示す。インビボでバイオフィルムから浮遊状態へと多量の細菌を分散させることは、目下これらの浮遊細菌が、潜在的な第2部位の感染を生じる前にはアクセスを有しなかった他の部位へのアクセスを獲得できる可能性があるという点で潜在的な欠点を有し得る。また、この分散効果は、敗血症を生じ得る。これらの転帰のいずれも、mHMGB1では観察されておらず、バイオフィルム感染の部位に依存して、これらの潜在的落とし穴に議論の余地があり得るという事実に加えて、これらの潜在的な制限を回避する手段が存在する。
【0014】
さらなる局面は、バイオフィルム中の微生物DNAへのデオキシリボ核酸B II(DNABII)ポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定するための方法に関し、上記方法は、上記バイオフィルム中の微生物DNAと有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたは上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くと接触させる工程であって、それによって、上記微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含するか、または代わりに上記工程から本質的になるか、またはなおさらに上記工程からなる。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記置換C23S、C45S、およびC106Sのうちの1もしくはこれより多く、またはすべてを含む。いくつかの実施形態において、上記接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいてである。いくつかの実施形態において、上記バイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される。いくつかの実施形態において、上記方法は、必要性のある被験体に、有効量の抗生物質を表面に投与する工程であって、必要に応じてコーティングする工程をさらに包含するか、または代わりに上記工程から本質的になるか、またはなおさらに上記工程からなる。
【0015】
なおさらなる局面は、表面上のバイオフィルムの形成を防止するための方法に関し、上記方法は、上記表面と、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたは上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くとを接触させる工程であって、必要に応じてコーティングし、それによって、バイオフィルム形成の間に微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含するか、または代わりに上記工程から本質的になるか、またはなおさらに上記工程からなる。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。いくつかの実施形態において、上記バイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される。いくつかの実施形態において、上記方法は有効量の抗生物質を上記表面に投与する工程であって、必要に応じてコーティングする工程をさらに包含するか、または代わりに上記工程から本質的になるか、またはなおさらに上記工程からなる。
【0016】
さらなる局面は、バイオフィルムを生成する被験体において微生物感染を防止または処置するための方法に関し、上記方法は、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたは上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くを投与する工程であって、それによって、微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を、阻害するか、競合させるか、または力価測定する工程を包含するか、または代わりに上記工程から本質的になるか、またはなおさらに上記工程からなる。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、上記改変high mobility group-box 1ドメインは、上記改変C23S、C45S、およびC106Sを含む。いくつかの実施形態において、上記バイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される。いくつかの実施形態において、上記方法は、有効量の抗生物質を投与する工程をさらに包含するか、または代わりに上記工程から本質的になるか、またはなおさらに上記工程からなる。
【0017】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1またはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見出される。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示される前述の局面が、その言及される位置において1またはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;ならびにC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1またはこれより多くの置換を含む、改変high mobility group-box 1ドメイン。
(項目2)
改変high mobility group-box 1ドメインは前記置換C45Sを含む、項目1に記載の改変high mobility group-box 1ドメイン。
(項目3)
前記改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む、項目1に記載の改変high mobility group-box 1ドメイン。
(項目4)
項目1~3のいずれか1項に記載の改変high mobility group-box 1ドメインをコードする、単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチド。
(項目5)
項目4に記載の単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドを含む、ベクター。
(項目6)
有効量の、項目1~3のいずれか1項に記載の改変high mobility group-box 1ドメインおよび/または項目4に記載の単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドおよび/または項目5に記載のベクターを含む、組成物。
(項目7)
バイオフィルム中の微生物DNAへのデオキシリボ核酸B II(DNABII)ポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるか、または力価測定するための方法であって、該方法は、該バイオフィルム中の該微生物DNAと、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドとを接触させる工程であって、それによって、該微生物DNAへの該DNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるか、または力価測定する工程を包含する方法。
(項目8)
改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C45Sを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいてである、項目7~9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記バイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される、項目7~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記方法は、有効量の抗生物質を表面に投与する工程であって、必要に応じてコーティングする工程をさらに包含する、項目7~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
表面上でのバイオフィルムの形成を防止するための方法であって、該方法は、該表面と、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドとを接触させる工程であって、必要に応じてコーティングし、それによって、バイオフィルム形成の間に滲出した微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるか、または力価測定する工程を包含する方法。
(項目14)
改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C45Sを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいてである、項目13~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記バイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される、項目13~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記方法は、有効量の抗生物質を前記表面に投与する工程であって、必要に応じてコーティングする工程をさらに包含する、項目13~17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
バイオフィルムを生成する被験体において微生物感染を防止または処置するための方法であって、該方法は、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドを投与する工程であって、それによって、微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含する方法。
(項目20)
改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C45Sを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記改変high mobility group-box 1ドメインは、前記置換C23S、C45S、およびC106Sを含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記バイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、Aggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される、項目19~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記方法は、有効量の抗生物質を前記表面に投与する工程であって、必要に応じてコーティングする工程をさらに包含する、項目19~22のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1A~1Bは、rHMGB1およびmHMGB1(C45S)が確立された実験的OM動物モデルにおいて細菌クリアランスを促進することを示す。希釈剤、5μg rHMGB1、または5μg mHMGB1(C45S)を、NTHIに感染して4日後および5日後のチンチラの中耳に直接送達した。動物を24時間後に屠殺し、彼らの中耳を画像化し(
図1A)、
図1Aの下に記載される基準に基づいて盲検的にスコア付けした(
図1B)。バーは、SEMを表す。***P<0.001。画像およびスコア付けは、HMGB1が、予め形成されたNTHIバイオフィルムをインビボで一掃し得たことを示す。
【0019】
【
図2-1】
図2A~2Dは、mHMGB1(C45S)が細菌クリアランスを促進し、B.cenocepaciaに感染したマウスの気道において炎症応答を増大させないことを示す。C57BL/6マウスに、10
7 CFU(i.t.)を感染させ、同時に、rHMGB1またはmHMGB1(C45S)を与えた。18時間後、(
図2A) B.cenocepacia CFUをBALにおいて定量し、(
図2B)肺へと浸潤する全宿主細胞を、BALにおいて計数し、(
図2C)BAL細胞を、抗CD45、CD11bおよびLy-6Gで染色して、好中球移動を測定した。バーは標準偏差を表す。*P<0.05;**P<0.005。(
図2D)72 hpiで肺を集めた。組織を固定し、パラフィン中に包埋し、切片にし、H&Eで染色した。すべてのパネルは、10×倍率を示す。mHMGB1(C45S)処置は、rHMGB1と比較して、B.cenocepacia CFUおよびインビボでの炎症性細胞浸潤において有意な減少を生じたことに注意のこと。
【
図2-2】
図2A~2Dは、mHMGB1(C45S)が細菌クリアランスを促進し、B.cenocepaciaに感染したマウスの気道において炎症応答を増大させないことを示す。C57BL/6マウスに、10
7 CFU(i.t.)を感染させ、同時に、rHMGB1またはmHMGB1(C45S)を与えた。18時間後、(
図2A) B.cenocepacia CFUをBALにおいて定量し、(
図2B)肺へと浸潤する全宿主細胞を、BALにおいて計数し、(
図2C)BAL細胞を、抗CD45、CD11bおよびLy-6Gで染色して、好中球移動を測定した。バーは標準偏差を表す。*P<0.05;**P<0.005。(
図2D)72 hpiで肺を集めた。組織を固定し、パラフィン中に包埋し、切片にし、H&Eで染色した。すべてのパネルは、10×倍率を示す。mHMGB1(C45S)処置は、rHMGB1と比較して、B.cenocepacia CFUおよびインビボでの炎症性細胞浸潤において有意な減少を生じたことに注意のこと。
【0020】
【
図3】
図3は、mHMGB1(C45S)が腹腔において好中球移動を促進しないことを示す。C57BL/6マウスの腹腔に、4% チオグリコレート、rHMGB1、またはmHMGB1(C45S)を注射した。その腹膜滲出物内の細胞を、抗CD45、CD11bおよびLy-6Gで染色して、腹腔(PC)中の全好中球数を決定した。バーはSEMを表す。*P<0.05。mHMGB1(C45S)は、rHMGB1の炎症性活性を欠くことに注意のこと。
【0021】
【
図4】
図4は、細菌性病原体に対するHMGB1改変体の抗バイオフィルム効果を示す。示したHMGB1アイソフォーム(200nM)を、24時間でそれぞれのインビトロで形成した細菌バイオフィルムに添加した。接種して16時間後に、バイオフィルムをLIVE/DEAD(登録商標)で染色し、次いで、CLSMを介して可視化した。画像をComstatによって分析して、平均厚およびバイオマスを計算した。UPECの代表画像を(
図4A)に示す。コントロールと比較した平均厚のパーセント変化を、(
図4C)に示す。800nM rHMGB1および200nM mHMGB1(C45S)を、S.aureus(ESKAPE)バイオフィルム処理に使用した。800nM rHMGB1およびmHMGB1(C45S)を、E.faecium(ESKAPE)バイオフィルムの処理に使用した。これらを、16時間のものとは対照的に、それぞれのタンパク質とともに1時間インキュベートした。バイオマス(示さず)は、同一の傾向を示した。バーはSEMを表す。コントロールと比較した統計的有意差は、対応のないt検定で評価した(*P<0.05)。HMGB1およびその改変体は、確立されたバイオフィルムを有意に破壊できた。
【0022】
【
図5-1】
図5は、mHMGB1(C45S)が、抗生物質媒介性殺滅を強化することを示す。B.cenocepaciaバイオフィルムを24時間にわたって予め形成し、次いで、ミノサイクリン(1mg/ml)、mHMGB1(C45S)(200nM)、またはmHMGB1(C45S)(200nM)+ミノサイクリン(1mg/ml)とともに16時間にわたってインキュベートした。バイオフィルムを、LIVE/DEAD(登録商標)で染色し、CLSMを介して画像化した。生細胞は、各画像の上半分に示され、死細胞は、各画像の下半分に示される。mHMGB1(C45S)およびミノサイクリンの両方の存在下でのみ死細胞が増大することに注意のこと。
【
図5-2】
図5は、mHMGB1(C45S)が、抗生物質媒介性殺滅を強化することを示す。B.cenocepaciaバイオフィルムを24時間にわたって予め形成し、次いで、ミノサイクリン(1mg/ml)、mHMGB1(C45S)(200nM)、またはmHMGB1(C45S)(200nM)+ミノサイクリン(1mg/ml)とともに16時間にわたってインキュベートした。バイオフィルムを、LIVE/DEAD(登録商標)で染色し、CLSMを介して画像化した。生細胞は、各画像の上半分に示され、死細胞は、各画像の下半分に示される。mHMGB1(C45S)およびミノサイクリンの両方の存在下でのみ死細胞が増大することに注意のこと。
【0023】
【
図6】
図6は、rHMGB1およびmHMGB1(C45S)が、実験的OM動物モデルにおいてバイオフィルム消散を促進することを示す。希釈剤または5μg rHMGB1もしくはmHMGB1(C45S)を、NTHIに感染して4日後および5日後のチンチラの中耳に直接送達した。動物を24時間後に屠殺し、彼らの中耳を画像化し(
図6A)、(
図6A)の下に記載される基準に基づいて盲検的にスコア付けした(
図6B)。バーはSEMを表す。***P<0.001。画像およびスコア付けは、HMGB1が予め形成したNTHIバイオフィルムのクリアランスをインビボで促進したことを示す。
【0024】
【
図7】
図7は、mHMGB1(C45S)が細菌クリアランスを促進するが、B.cenocepaciaに感染したマウスにおいて気道炎症を増大
させないことを示す。C57BL/6マウスに、10
7 CFU(i.t.)を感染させ、同時に、5mg rHMGB1またはmHMGB1(C45S)を与えた。(
図7A)B.cenocepaciaの凝集物がα-B.cenocepacia抗体でプローブした切片において蛍光顕微鏡によって見えた。18時間後、(
図7B)CFUをBALにおいて定量し、(
図7C)BAL細胞を、α-CD45、CD11b、およびLy-6Gで染色して、好中球移動を測定した。バーはSDを表す。*P<0.05。(
図7D)72hpiで集めた肺組織を固定し、パラフィン中に包埋し、切片にし、H&Eで染色した。10×倍率。mHMGB1(C45S)処理は、rHMGB1と比較して、インビボで、B.cenocepacia CFUおよび炎症性細胞浸潤における有意な減少を生じた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
定義
別段定義されなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載されるものに類似または等価な任意の材料および方法が本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、デバイスおよび材料がここで記載される。本明細書で引用されるすべての技術的刊行物および特許公報は、それらの全体において本明細書に参考として援用される。本発明が、先行技術のために、このような開示に先立つ権利がないという承認として解釈されるべきものは、本明細書中に存在しない。例えば、Green and Sambrook編(2012) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第4版;シリーズ Ausubelら編(2015) Current Protocols in Molecular Biology;シリーズ Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);MacPhersonら(2015) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press);MacPhersonら(1995) PCR 2:A Practical Approach;McPhersonら(2006) PCR: The Basics (Garland Science);Harlow and Lane編(1999) Antibodies, A Laboratory Manual;Greenfield編(2014) Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney(2010) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 第6版;Gait編(1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins編(1984) Nucleic Acid Hybridization; Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization;Herdewijn編(2005) Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications;Hames and Higgins編(1984) Transcription and Translation;Buzdin and Lukyanov編(2007) Nucleic Acids Hybridization: Modern Applications;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press (1986));Grandi編(2007) In Vitro Transcription and Translation Protocols, 第2版;Guisan編(2006) Immobilization of Enzymes and Cells;Perbal(1988) A Practical Guide to Molecular Cloning, 第2版;Miller and Calos編(1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides編(2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker編(1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);Lundblad and Macdonald編(2010) Handbook of Biochemistry and Molecular Biology, 第4版;およびHerzenbergら編(1996) Weir’s Handbook of Experimental Immunology, 第5版;ならびに出願時に入手可能であったこれら各々の最新の版を参照のこと。
【0026】
全ての数値の指定(例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量(範囲を含む))は、(+)または(-)に1.0または0.1の増分が変動する、適切な場合には、または代わりに±15%、または代わりに10%、または代わりに5%、または代わりに2%が変動する近似値である。常に明示的に述べられているわけではないが、全ての数値の指定の前に用語「約(about)」があることは、理解されるべきである。常に明示的に述べられているわけではないが、本明細書で記載される試薬が例示に過ぎず、このようなものの等価物が当該分野で公知であることも、同様に理解されるべきである。
【0027】
本明細書および請求項において使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、この、その(the)」とは、状況が別段明らかに指さなければ、複数形への言及を含む。例えば、用語「1つのポリペプチド(a polypeptide)」は、その混合物を含め、複数のポリペプチドを含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「含む、包含する(comprising)」とは、組成物および方法が記載された要素を含むが、他を排除しないことを意味することが意図される。組成物および方法を定義するために使用される場合の「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、その意図された使用に関する組み合わせにとって、いかなる本質的な重要性な他の要素をも排除することを意味するものとする。従って、本明細書で定義されるとおりの要素から本質的になる組成物は、単離法および精製法に由来する微量の夾雑物および薬学的に受容可能なキャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、保存剤など)を排除しない。「からなる(consisting of)」とは、本発明の組成物を投与するための他の成分の微量の要素および実質的な方法の工程を超えるものを排除することを意味するものとする。これらの移行句の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0029】
「バイオフィルム(biofilm)」とは、微生物の薄い層もしくは組織化された群衆であって、それらが分泌および/または放出するポリマー(例えば、DNA)と一緒に、ときに構造(これは有機性または無機性であり得る)の表面に接着し得るものを意図する。そのバイオフィルムは、微生物剤(microbiotics)および抗微生物薬剤に非常に耐性である。それらは、歯肉組織、歯および修復物上に住み、う蝕および歯周病(歯周プラーク病としても公知)を引き起こす。それらはまた、慢性中耳感染を引き起こす。バイオフィルムはまた、歯科インプラント、ステント、カテーテルラインおよびコンタクトレンズの表面に形成され得る。それらは、ペースメーカー、心臓弁置換物、人工関節および他の外科的インプラント上で増殖し得る。米国疾病予防管理センターは、院内(病院で獲得した)感染のうちの65%超がバイオフィルムによって引き起こされると概算する。真菌バイオフィルムはまた頻繁に、医療用デバイスを汚染する。それらは、慢性的な腟感染を引き起こし、免疫系を障害された人々において生命を脅かす全身感染をもたらす。バイオフィルムはまた、多くの疾患に関与する。たとえば、嚢胞性線維症患者は、抗生物質耐性バイオフィルムをしばしば生じるPseudomonas感染を有する。
【0030】
「DNABIIポリペプチドまたはタンパク質(DNABII polypeptide or protein)」とは、DNA結合ドメインから構成され、従って、DNAに特異的または一般的な親和性を有するDNA結合タンパク質またはポリペプチドを意図する。一局面において、それらは、副溝においてDNAに結合する。DNABIIタンパク質の非限定的な例としては、組み込み宿主因子(IHF)タンパク質およびE.coli株U93に由来するヒストン様タンパク質(HU)である。バイオフィルムと関連し得る他のDNA結合タンパク質としては、DPS(Genbankアクセッション番号:CAA49169)、H-NS(Genbankアクセッション番号:CAA47740)、Hfq(Genbankアクセッション番号:ACE63256)、CbpA(Genbankアクセッション番号:BAA03950)およびCbpB(Genbankアクセッション番号:NP_418813)が挙げられる。
【0031】
「組み込み宿主因子(integration host factor)」または「IHF」タンパク質とは、それらのDNAを宿主細菌の中に組み込むためにバクテリオファージによって使用される細菌タンパク質である。これらは、遺伝的組換えにおいて、ならびに転写および翻訳調節において機能するDNA結合タンパク質である。それらはまた、細胞外微生物DNAに結合する。E.coliにおけるIHFタンパク質サブユニットをコードする遺伝子は、himA遺伝子(Genbankアクセッション番号: POA6X7.1)およびhimD(POA6Y1.1)遺伝子である。
【0032】
「HU」または「E.coli株U93に由来するヒストン様タンパク質(histone-like protein from E. coli strain U93)」とは、E.coliと代表的には関連するヘテロダイマータンパク質のクラスをいう。HUタンパク質は、DNA接合部に結合することが公知である。関連タンパク質は、他の微生物から単離されている。E.coli HUの完全アミノ酸配列は、Laineら. (1980) Eur. J. Biochem. 103(3):447-481によって報告された。HUタンパク質に対する抗体は、Abcamから市販されている。
【0033】
「微生物DNA(microbial DNA)」とは、バイオフィルムを生成する微生物に由来する1本鎖または2本鎖のDNAを意図する。
【0034】
バイオフィルムを「阻害するか、防止するかまたは破壊する(inhibiting, preventing or breaking down)」とは、バイオフィルムの構造の予防的または治療的な低減を意図する。一局面において、用語「阻害するか、競合させるかまたは力価測定する(inhibiting, competing or titrating)とは、微生物バイオフィルムの構成要素であるDNA/タンパク質マトリクスの形成の低減(例えば、
図1に示されるとおり)を意図する。
【0035】
「ポリヌクレオチドを曲げる(bent polynucleotide)」とは、一方の鎖上に小さなループを含み、これが他方の鎖と対形成しない2本鎖ポリヌクレオチドおよび末端から末端までの距離が天然の熱揺らぎを超えて短い、すなわち、ネイティブのB型2本鎖DNAに関して150bpの持続長を超えて曲がっている任意のポリヌクレオチドを意図する。いくつかの実施形態において、そのループは、1塩基~約20塩基長、もしくは代わりに2塩基~約15塩基長、もしくは代わりに約3塩基~約12塩基長、もしくは代わりに約4塩基~約10塩基長であるか、または代わりに、約4塩基、5塩基、もしくは6塩基、もしくは7塩基、もしくは8塩基、もしくは9塩基、もしくは10塩基を有する。
【0036】
診断または処置の「被験体」とは、細胞または動物(例えば、哺乳動物またはヒト)である。診断または処置を受ける非ヒト動物は、感染を受けるものまたは動物モデル(例えば、サル、ネズミ科(例えば、ラット、マウス)、チンチラ、イヌ科(例えば、イヌ)、ウサギ科(leporids)(例えば、ウサギ)、家畜、競技用動物およびペットである。
【0037】
用語「タンパク質(protein)」、「ペプチド(peptide)」および「ポリペプチド(polypeptide)」は、交換可能に使用され、それらの最も広い意味において、2もしくはこれより多くのサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログまたはペプチド模倣物の化合物をいう。そのサブユニットは、ペプチド結合によって連結され得る。別の実施形態において、そのサブユニットは、他の結合(例えば、エステル、エーテルなど)によって連結され得る。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含まなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸(amino acid)」とは、天然のおよび/または非天然のまたは合成のアミノ酸のいずれかに言及し得る(グリシンならびにDおよびL光学異性体の両方、アミノ酸アナログおよびペプチド模倣物が挙げられる)。ヒト身体において天然に見出される20種のアミノ酸は、以下の表にそれぞれの3文字略語、1文字略語、構造、および相当するコドンの各々とともに示される:
【表A-1】
【表A-2】
【0038】
用語「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」および「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」は、交換可能に使用され、任意の長さのヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはこれらのアナログのいずれか)のポリマー形態をいう。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、公知であろうと公知でなかろうと、任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメント(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、RNAi、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド(例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ)を含み得る。存在するのであれば、そのヌクレオチド構造に対する改変は、そのポリヌクレオチドのアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、重合後に(例えば、標識構成要素との結合体化によって)さらに改変され得る。その用語はまた、2本鎖分子および1本鎖分子の両方に言及する。別段特定または要求されなければ、ポリヌクレオチドである本発明の任意の実施形態は、2本鎖形態、およびその2本鎖形態を構成することが公知であるかまたは推定される2つの相補的な1本鎖形態の各々の両方を包含する。
【0039】
用語「単離された(isolated)」または「組換え(recombinant)」とは、核酸(例えば、DNAまたはRNA)に関して本明細書で使用される場合、それぞれ、高分子およびポリペプチドの天然の供給源に存在する、他のDNAまたはRNAから分離されている分子に言及する。用語「単離された核酸または組換え核酸(isolated or recombinant nucleic acid)」とは、フラグメントとして天然に存在せず、天然の状態では見出されない核酸フラグメントを含むことが意味される。用語「単離された」とはまた、他の細胞タンパク質から単離されているポリヌクレオチド、ポリペプチドおよびタンパク質に言及するために本明細書で使用され、精製ポリペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を包含することが意味される。他の実施形態において、用語「単離されたまたは組換えの(isolated or recombinant)」とは、細胞、組織、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体もしくはそのフラグメントが天然で通常は関連している成分、細胞および他のものから分離されていることを意味する。例えば、単離された細胞は、似ていない表現型または遺伝子型の組織または細胞から分離されている細胞である。単離されたポリヌクレオチドは、そのネイティブのまたは天然の環境において、例えば、染色体上で通常は関連している3’および5’の連続ヌクレオチドから分離される。当業者に明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはそのフラグメントは、それらをその天然に存在する対応物から区別するために「単離(isolation)」を要求しない
【0040】
用語「等価な、等価物(equivalent)」または「生物学的に等価な、生物学的等価物(biological equivalent)」は、特定の分子、生物学的または細胞の物質に言及する場合に交換可能に使用され、望ましい構造または機能性をなお維持しながら最小限の相同性を有するものを意図する。
【0041】
明示的な記載がなくても、そして別段意図されなければ、本発明がポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体に関する場合、このようなものの等価物または生物学的等価物が、本発明の範囲内にあると意図されることは、推測されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「その生物学的に等価な、その生物学的等価物(biolgically equivalent thereof)」は、参照タンパク質、抗体、ポリペプチドまたは核酸に言及する場合の「その等価な、その等価物(equivalent thereof)」と類義語であることが意図され、望ましい構造または機能性をなお維持しながら最小限の相同性を有するものを意図する。本明細書で具体的に記載されなければ、本明細書で言及される任意のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質がまた、その等価物を含むことが企図される。例えば、等価物は、少なくとも約70% 相同性もしくは同一性、または代わりに約80% 相同性もしくは同一性、そして代わりに少なくとも約85%、または代わりに少なくとも約90%、または代わりに少なくとも約95%または代わりに98%の相同性もしくは同一性を意図し、その参照タンパク質、ポリペプチドまたは核酸に対して実質的に等価な生物学的活性を示す。別の局面において、その用語は、参照ポリヌクレオチドもしくはその相補体に高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを意図する。
【0042】
別の配列に対してある種のパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%もしくは95%)の「配列同一性(sequence identity)」を有するポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、整列された場合に、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が、その2つの配列を比較したときに同じであることを意味する。そのアラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, 1987) 補遺30、第7.7.18節、表7.7.1に記載されるもの)を使用して決定され得る。好ましくは、デフォルトパラメーターが、アラインメントに使用される。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターを使用するBLASTである。特に好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメーターを使用するBLASTNおよびBLASTPである:遺伝コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリクス=BLOSUM62;説明=50配列;何でソートするか=HIGH SCORE;データベース=非重複(non-redundant)、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスに見出され得る: ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。
【0043】
「相同性(homology)」または「同一性(identity)」または「類似性(similarity)」とは、2つのペプチド間または2つの核酸分子間での配列類似性に言及する。相同性は、比較目的で整列され得る各配列における位置を比較することによって決定され得る。その比較される配列における位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有される場合、その分子は、その位置において相同である。配列間の相同性の程度は、その配列によって共有されるマッチするかまたは相同である位置の数の関数である。「関連しない(unrelated)」または「相同でない(non-homologous)」配列は、本発明の配列のうちの1つと30%未満の同一性または代わりに25%未満の同一性、20%未満の同一性、または代わりに10%未満の同一性を共有する。
【0044】
「相同性」または「同一性」または「類似性」はまた、参照ポリヌクレオチドもしくはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸分子に言及し得る。
【0045】
「ハイブリダイゼーション(hybridization)」とは、1またはこれより多くのポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間での水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応をいう。水素結合は、ワトソン-クリック塩基対合、フーグスティーン結合によって、または任意の他の配列特異的様式において起こり得る。その複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本もしくはこれより多くの鎖、1本の自己ハイブリダイズする鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、より広範なプロセス(例えば、PCR反応の開始、またはリボソームによるポリヌクレオチドの酵素的切断)における工程を構成し得る。
【0046】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、以下が挙げられる: インキュベーション温度は約25℃~約37℃;ハイブリダイゼーション緩衝液濃度は約6×SSC~約10×SSC;ホルムアミド濃度は約0%~約25%;および洗浄溶液は約4×SSC~約8×SSC。中程度のハイブリダイゼーション条件の例としては、以下が挙げられる: インキュベーション温度は約40℃~約50℃;緩衝液濃度は約9×SSC~約2×SSC;ホルムアミド濃度は約30%~約50%;および洗浄溶液は約5×SSC~約2×SSC。高ストリンジェンシー条件の例としては、以下が挙げられる: インキュベーション温度は約55℃~約68℃;緩衝液濃度は約1×SSC~約0.1×SSC;ホルムアミド濃度は約55%~約75%;および洗浄溶液は約1×SSC、0.1×SSC、または脱イオン水。一般に、ハイブリダイゼーションインキュベーション時間は、5分~24時間であり、1回、2回もしくはより多くの洗浄工程であり、洗浄インキュベーション時間は約1分間、2分間、または15分間である。SSCは、0.15M NaClおよび15mM シトレート緩衝液である。他の緩衝液システムを使用するSSCの等価物が使用され得ることは、理解される。
【0047】
ポリヌクレオチドに適用される場合の用語「コードする(encode)」とは、そのネイティブの状態において、または当業者に周知の方法によって操作される場合に、ポリペプチドおよび/またはそのフラグメントのmRNAを生成するようにそのポリヌクレオチドが転写および/または翻訳される場合、そのポリペプチドを「コードする」といわれるそのポリヌクレオチドに言及する。そのアンチセンス鎖は、このような核酸の相補体であり、そのコードする配列は、そこから導き出され得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される用語「処置する(treating)」、「処置(treatment)」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、障害もしくはその兆候もしくは症状を完全にもしくは部分的に防止するという点で予防的であり得る、ならびに/または障害および/もしくはその障害に帰し得る有害効果の部分的もしくは完全な治癒という点で治療的であり得る。
【0049】
「防止する(prevent)」ことは、障害もしくは効果に罹りやすいシステムまたは被験体にいてインビトロまたはインビボでその障害または効果を防止することを意図する。このようなものの例は、バイオフィルムを形成することが公知の微生物に感染したシステムにおいてそのバイオフィルムの形成を防止することである。
【0050】
「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、本発明の組成物において使用され得る任意の希釈剤、賦形剤またはキャリアに言及する。薬学的に受容可能なキャリアとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物)、水、塩もしくは電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム)、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。適切な薬学的キャリアは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company(この分野における標準的な参考教科書)に記載される。それらは好ましくは、意図した投与形態、すなわち、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などに関して選択され、従来の薬学業務と一致する。
【0051】
「投与「(administration)」とは、1用量において、処置の過程全体を通じて連続してまたは間欠的にもたらされ得る。最も有効な手段を決定するための方法および投与量は、当業者に公知であり、治療に使用される組成物、治療目的、処置されている標的細胞および処置されている被験体に伴って変動する。単一のまたは多数の投与は、処置している医師によって選択されている用量レベルおよびパターンで行われ得る。適切な投与製剤および薬剤を投与するための方法は、当該分野で公知である。投与経路がまた決定され得、最も有効な投与経路を決定するための方法は、当業者に公知であり、処置に使用される組成物、処置目的、処置されている被験体の健康状態または疾患ステージ、および標的細胞または組織に伴って変動する。投与経路の非限定的な例としては、経口投与、鼻投与、注射および局所適用が挙げられる。
【0052】
用語「有効量(effective amount)」とは、有益なまたは望ましい結果または効果を達成するために十分な量をいう。治療適用または予防適用の状況では、その有効量は、問題の状態のタイプおよび重篤度、ならびに個々の被験体の特性(例えば、全身的な健康状態、年齢、性別、体重、および薬学的組成物への耐性)に依存する。免疫原性組成物の状況では、いくつかの実施形態において、その有効量は、病原体に対する防御応答を生じるために十分な量である。他の実施形態において、その免疫原性組成物の有効量は、抗原に対して抗体生成を生じるために十分な量である。いくつかの実施形において、その有効量は、必要性のある被験体に受動免疫を付与するために要求される量である。免疫原性組成物に関して、いくつかの実施形態において、その有効量は、上記の要因に加えて、意図された使用、特定の抗原性化合物の免疫原性の程度、および被験体の免疫系の健康状態/応答性に依存する。当業者は、これらおよび他の要因に依存して、適切な量を決定し得る。
【0053】
インビトロ適用の場合には、いくつかの実施形態において、その有効量は、問題の適用のサイズおよび性質に依存する。それはまた、インビトロ標的の性質および感受性、ならびに使用中の方法に依存する。当業者は、これらおよび他の考慮事項に基づいてその有効量を決定し得る。その有効量は、実施形態に依存して、1またはこれより多くの組成物投与を含み得る。
【0054】
薬剤および組成物は、医薬の製造において、ならびに従来の手順に従う投与によってヒトおよび他の動物の処置のために使用され得る(例えば、薬学的組成物中の活性成分)。
【0055】
本発明の薬剤は、任意の適切な投与経路によって治療のために投与され得る。その好ましい経路がレシピエントの状態および組成物、ならびに処置されている疾患に伴って変動することも、認識される。
【0056】
固相支持体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱が挙げられる。キャリアの性質は、ある程度まで可溶性であるかまたは不溶性のいずれかであり得る。その支持体材料は、そのカップリングされる分子がポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは抗体に結合し得る限りにおいて、実質的に任意の考えられる構造物構成を有し得る。従って、支持体の構成は、ビーズにおけるように球状であってもよいし、試験管の内表面またはロッドの外表面におけるように円筒状であってもよい。あるいは、その表面は、シートまたは試験片などのように平らであってもよいし、または代わりにポリスチレンビーズであってもよい。当業者は、抗体もしくは抗原を結合するための多くの他の適切なキャリアを知っているかまたは慣用的な実験を使用して同様のことを確認し得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「抗体(antibody)」、「抗体(antibodies)」および「免疫グロブリン(immunoglobulin)」は、抗体全体および任意の抗原結合フラグメントまたはその単一の鎖を含む。従って、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子のうちの少なくとも一部を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。用語「抗体(antibody)」、「抗体(antibodies)」および「免疫グロブリン」はまた、抗原に対する特異的結合を保持する任意のアイソタイプの免疫グロブリン、抗体のフラグメントを含み、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv、scFv、dsFv、Fdフラグメント、dAb、VH、VL、VhH、およびV-NARドメイン;ミニボディー、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディーおよびκボディー;抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体フラグメントおよび1またはこれより多くの単離されたものが挙げられるが、これらに限定されない。このようなものの例としては、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、またはこれらの任意の部分、結合タンパク質のうちの少なくとも一部分、キメラ抗体、ヒト化抗体、1本鎖抗体、ならびに抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を含む融合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。その免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体(Ab)の定常領域は、宿主組織への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。タンパク質名、例えば、抗IHF、抗HU、抗OMP P5の前に使用される場合の用語「抗(anti-)」は、特定のタンパク質に結合するおよび/または特定のタンパク質に対する親和性を有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体に言及する。例えば、「抗IHF(anti-IHF)」は、IHFタンパク質に結合する抗体をいう。その特異的抗体は、この抗体が惹起されたタンパク質以外のタンパク質に対する親和性を有し得るかまたはそのタンパク質に結合し得る。例えば、抗IHFは、IHFタンパク質に対して特異的に惹起されるが、配列相同性を通じてまたは構造相同性を通じてかのいずれかで関連する他のタンパク質にも結合し得る。
【0058】
その抗体は、望ましい生物学的活性を示す限りにおいて、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および抗体フラグメントであり得る。抗体は、任意の適切な生物学的供給源(例えば、マウス、ラット、ヒツジおよびイヌ科)から単離され得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体(monoclonal antibody)」とは、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体をいう。モノクローナル抗体は、各モノクローナル抗体が抗原上の単一の決定基に対して指向されることから、非常に特異的である。その抗体は、例えば、放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素、蛍光タンパク質などで、検出可能に標識され得る。その抗体は、他の部分、例えば、特異的結合対のメンバー(例えば、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対のメンバー)などのような)にさらに結合体化され得る。その抗体はまた、固体支持体(ポリスチレンプレートまたはビーズなどが挙げられるが、これらに限定されない)に結合され得る。
【0060】
モノクローナル抗体は、当該分野で公知のハイブリドーマ技術または組換えDNA法を使用して生成され得る。ハイブリドーマは、抗体生成リンパ球および非抗体生成がん細胞(通常は、骨髄腫またはリンパ腫)の融合から実験室で生成される細胞である。ハイブリドーマは増殖し、特異的モノクローナル抗体の連続サンプルを生成する。抗体を生成または選択するための代替技術としては、目的の抗原に対するリンパ球のインビトロでの曝露、および細胞、ファージ、もしくは類似のシステムでの抗体ディスプライライブラリーのスクリーニングが挙げられる。
【0061】
用語「ヒト抗体(human antibody)」は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本明細書で開示されるヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によってまたはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)。しかし、用語「ヒト抗体」とは、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上へグラフト化されている抗体を含むことは意図されない。従って、本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」とは、そのタンパク質の実質的に全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ、(VL、VH))が、ごく僅かな配列変化またはバリエーションはあるものの、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である抗体をいう。同様に、霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジーなど)、齧歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)および他の哺乳動物が指される抗体は、このような種、亜属、属、亜科、科に特定的な抗体を指す。さらに、キメラ抗体は、上記のうちの任意の組み合わせを含む。このような変化またはバリエーションは、必要に応じて、非改変抗体に対するヒトまたは他の種における免疫原性を保持または低減する。従って、ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体とは異なる。ヒト抗体が、機能的に再配列されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖および/または軽鎖)遺伝子を発現し得る非ヒト動物または原核生物もしくは真核生物の細胞によって生成され得ることは、指摘される。さらに、ヒト抗体が1本鎖抗体である場合、それは、ネイティブのヒト抗体において見出されないリンカーペプチドを含み得る。例えば、Fvは、重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域を繋ぐ、リンカーペプチド(例えば、2~約8個のグリシンもしくは他のアミノ酸残基)を含み得る。このようなリンカーペプチドは、ヒト起源のものと見做される。
【0062】
本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、その抗体が、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって、ヒト免疫グロブリン配列を使用するシステムから得られる場合、特定の生殖細胞系列配列に「由来(derived from)」する。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に「由来」するヒト抗体は、このようにして、ヒト抗体のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列とを比較することによって同定され得る。選択されたヒト抗体は、代表的には、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合、そのヒト抗体をヒトであると同定するアミノ酸残基を含む。ある種の場合に、ヒト抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%、または99%同一であり得る。代表的には、特定のヒト生殖細胞系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から10個以下のアミノ酸差異を示す。ある種の場合に、そのヒト抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から5個以下、またはさらに4個以下、3個、2個、または1個のアミノ酸差異を示し得る。
【0063】
「ヒトモノクローナル抗体(human monoclonal antibody)」とは、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体をいう。その用語はまた、組換えヒト抗体を意図する。これらの抗体を作製する方法は、本明細書で記載される。
【0064】
用語「組換えヒト抗体(recombinant human antibody)」とは、本明細書で使用される場合、組換え手段によって調製、発現、作製または単離される全てのヒト抗体(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックもしくはトランス染色体(transchromosomal)である動物(例えば、マウス)またはこれらから調製されるハイブリドーマから単離される抗体、抗体を、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)から発現するように形質転換された宿主細胞から単離されたその抗体、組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体)を含む。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、ある種の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合には、インビボでの体細胞変異誘発)に供され得、従って、その組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VHおよびVL配列に由来しかつ関連する一方で、インビボでヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然には存在しないこともある配列である。これらの抗体を作製する方法は、本明細書で記載される。
【0065】
本明細書で使用される場合、キメラ抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子が、代表的には遺伝子操作によって、異なる種に属する抗体可変領域および定常領域遺伝子から構築されている抗体である。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体(humanized antibody)」または「ヒト化免疫グロブリン(humanized immunoglobulin)」とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含むヒト/非ヒトキメラ抗体をいう。大部分については、ヒト化抗体は、レシピエントの可変領域に由来する残基が、望ましい特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類のような非ヒト種の可変領域(ドナー抗体)に由来する残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてもドナー抗体においても見出されない残基を含み得る。そのヒト化抗体は、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)のうちの、代表的には、ヒト免疫グロブリンのうちの少なくとも一部、ヒト抗体に由来する対応して位置したアミノ酸で置換された、フレームワーク領域、定常領域またはCDRにおける1またはこれより多くのアミノ酸を含む非ヒト抗体も含み得る。一般に、ヒト化抗体は、その同じ抗体の非ヒト化バージョンと比較した場合に、ヒト宿主において低減した免疫応答を生じると予測される。そのヒト化抗体は、抗原結合もしくは他の抗体機能に対して実質的に影響を有しない保存的アミノ酸置換を有し得る。保存的置換のグループ分けとしては、以下が挙げられる:グリシン-アラニン、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、セリン-スレオニンおよびアスパラギン-グルタミン。
【0067】
用語「ポリクローナル抗体(polyclonal antibody)」または「ポリクローナル抗体組成物(polyclonal antibody composition)」とは、本明細書で使用される場合、異なるB細胞株に由来する抗体の調製物をいう。それらは、特定の抗原に対して分泌される免疫グロブリン分子の混合物であり、各々が異なるエピトープを認識する。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「抗体誘導体(antibody derivative)」とは、全長抗体または抗体のフラグメントであって、ここでそのアミノ酸のうちの1またはこれより多くが、アルキル化、peg化、アシル化、エステル形成またはアミド形成などによって、例えば、その抗体を第2の分子に連結するために、化学的に改変されるものを含む。これは、peg化抗体、システインpeg化抗体、およびこれらの改変体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「標識(label)」とは、検出されるように組成物に直接的または間接的に結合体化される、直接的または間接的に検出可能な化合物または組成物(例えば、N末端ヒスチジンタグ(N-His)、磁性的に活性な同位体(例えば、115Sn、117Snおよび119Sn)、非放射活性同位体(例えば、13Cおよび15N)、ポリヌクレオチドもしくはタンパク質(例えば、「標識された(labeled)」組成物を生成するための抗体))を意図する。その用語はまた、挿入された配列(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)など)の発現の際にシグナルを提供するポリヌクレオチドに結合体化される配列を含む。用語「標識」は一般に、検出されるべき組成物に共有結合的に付着される組成物を意図すると同時に、それは具体的には、ある種の条件(例えば、温度、pHなど)下で蛍光を発することが公知の天然に存在するヌクレオチドおよびアミノ酸、ならびに一般には、検出されるべき組成物中に存在し得る任意の天然の蛍光を排除する。その標識は、それ自体で検出可能であり得る(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)か、または酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒し得る。その標識は、小規模検出に適切であり得るか、またはハイスループットスクリーニングにより適切であり得る。よって、適切な標識としては、磁性的に活性な同位体、非放射活性同位体、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、およびタンパク質(酵素を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。その標識は、単に検出されてもよいし、定量されてもよい。単に検出される応答は一般に、単に存在が確認される応答を含むのに対して、定量される応答は一般に、定量可能な(例えば、数字として報告可能な)値(例えば、強度、偏光、および/または他の特性)を有する応答を含む。発光または蛍光アッセイでは、その検出可能な応答は、結合に実際に関与するアッセイ構成要素と関連した発光団もしくは発蛍光団を直接使用して、または別の(例えば、レポーターまたはインジケーター)構成要素と関連した発光団もしくは発蛍光団を間接的に使用して、生成され得る。シグナルを生成する発光標識の例としては、生物発光および化学発光が挙げられるが、これらに限定されない。検出可能な発光応答は一般に、発光シグナルの変化または発光シグナルの発生を含む。発光標識アッセイ構成要素の適切な方法および発光団は、当該分野で公知であり、例えば、Haugland, Richard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (第6版)に記載される。発光プローブの例としては、エクオリンおよびルシフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「免疫結合体(immunoconjugate)」とは、第2の薬剤(例えば、細胞傷害性薬剤、検出可能な薬剤、放射活性薬剤、標的化薬剤、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、半合成抗体、または多重特異的抗体)と会合または連結された抗体または抗体誘導体を含む。
【0071】
適切な蛍光標識の例としては、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、Lucifer Yellow、Cascade BlueTM、およびTexas Redが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な光学的色素、Haugland, Richard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (第6版)に記載される。
【0072】
別の局面において、その蛍光標識は、細胞または組織にまたはその表面に存在する細胞構成要素への共有結合的付着を促進するように官能化される(例えば、細胞表面マーカー)。適切な官能基としては、イソチオシアネート基、アミノ基、ハロアセチル基、マレイミド、スクシンイミジルエステル、およびスルホニルハライドが挙げられるが、これらに限定されず、これらは全て、その蛍光標識を第2の分子に付着させるために使用され得る。その蛍光標識の官能基の選択は、リンカー、薬剤、マーカー、または第2の標識薬剤のいずれかへの付着部位に依存する。
【0073】
「真核生物細胞(eukaryotic cell)」とは、モネラ界を除く生物界(life kingdom)の全てを含む。それらは、膜結合した核を通じて容易に区別され得る。動物、植物、真菌、および原生動物は、その細胞が、内膜および細胞骨格によって複雑な構造へと組織化された真核生物または生物である。最も特徴的な膜結合構造は、核である。具体的に記載されなければ、用語「宿主(host)」とは、真核生物宿主(例えば、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物の細胞が挙げられる)を含む。真核生物細胞または宿主の非限定的な例としては、サル、ウシ、ブタ、マウス、ラット、鳥類、爬虫類およびヒトが挙げられる。
【0074】
通常、核または任意の他の膜結合オルガネラを欠いている「原核生物細胞(prokaryotic cell)」とは、2つの領域、細菌および古細菌へと分けられる。染色体DNAに加えて、これらの細胞はまた、エピソームといわれる環状ループ中に遺伝的情報を含み得る。細菌細胞は、非常に小さく、おおよそ動物のミトコンドリアの大きさである(直径約1~2μmおよび長さ10μm)。原核生物細胞は、3つの主要な形状を特徴とする:ロッド形状、球状、および螺旋。真核生物のような精巧な複製プロセスを経る代わりに、細菌細胞は、2分裂によって分かれる。例としては、Bacillus細菌、E.coli細菌、およびSalmonella細菌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
「ネイティブの(native)」または「天然の(natural)」抗原は、ポリペプチド、タンパク質またはエピトープを含むフラグメントであり、これは、天然の生物学的供給源から単離されており、被験体において抗原レセプター、特に、T細胞抗原レセプター(TCR)に特異的に結合し得る。
【0076】
用語「抗原(antigen)」および「抗原性(antigenic)」とは、抗体または抗体-リガンド対のメンバーとして作用する他のものによって認識されるべき能力を有する分子に言及する。「特異的結合(specific binding)」とは、抗原と免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域との相互作用をいう。抗体-抗原結合は、インビボで起こってもよいし、インビトロで起こってもよい。当業者は、高分子(タンパク質、核酸、脂肪酸、脂質、リポポリサッカリドおよびポリサッカリドを含む)が抗原として作用する可能性を有することを理解する。当業者は、抗体リガンドとして作用する可能性を有するタンパク質をコードする核酸が、必然的に抗原をコードすることをさらに理解する。当業者は、抗原が全長分子に限定されないが、部分的な分子をも含み得ることをさらに理解する。用語「抗原性」は、抗原の特性を有する分子に対する形容詞的に言及する。その用語は、免疫原性である物質(すなわち、免疫原)および免疫学的非応答性、またはアネルギーを誘導する物質(すなわち、アネルゲン)を包含する。
【0077】
「質変化した抗原(altered antigen)」とは、その相当する野生型抗原のものとは異なる一次配列を有するものである。質変化した抗原は、合成法または組換え法によって作製され得、翻訳中または翻訳後に、例えば、リン酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、タンパク質分解切断、抗体分子、膜分子もしくは他のリガンドへの連結によって差次的に改変される抗原性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない(Fergusonら. (1988) Ann. Rev. Biochem. 57:285-320)。本明細書で開示される合成抗原または質変化した抗原は、天然のエピトープと同じTCRに結合することが意図される。
【0078】
本明細書でネイティブまたは野生型の抗原としても言及される「自己抗原(self-antigen)」とは、その抗原に対する自己寛容性に起因して、その被験体において免疫応答をほとんどまたは全く誘導しない抗原性ペプチドである。自己抗原の例は、メラノーマ特異的抗原gp100である。
【0079】
用語「受動免疫「passive immunity」」とは、抗体の移行を通じて一方の被験体から別の被験体へと免疫が移行することをいう。受動免疫は、天然には、移行抗体が胎児へと移行される場合のように起こり得る。受動免疫はまた、抗体組成物が非免疫被験体に投与される場合におけるように、人工的に起こり得る。抗体ドナーおよびレシピエントは、ヒト被験体であっても非ヒト被験体であってもよい。抗体は、実施形態に依存して、ポリクローナルであってもモノクローナルであってもよく、インビトロで生成されてもインビボで生成されてもよく、そして精製されていても部分精製されていても精製されていなくてもよい。本明細書で開示されるいくつかの実施形態において、受動免疫は、特定の抗原を特異的に認識するかまたは結合する抗体または抗原結合フラグメントの投与を通じて、その必要性のある被験体に付与される。いくつかの実施形態において、受動免疫は、特定の抗原を特異的に認識するかまたは結合する抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチドまたは組換えポリヌクレオチドの投与を通じて付与される。
【0080】
「免疫応答(immune response)」とは、外来物質に対するリンパ球の抗原特異的応答に広く言及する。要素「免疫原(immunogen)」および「免疫原性(immunogenic)」とは、免疫応答を誘発する能力を有する分子に言及する。全ての免疫原は抗原である;しかし、全ての抗原が免疫原性であるわけではない。本明細書で開示される免疫応答は、液性(抗体活性を介して)または細胞媒介性(T細胞活性化を介して)であり得る。その応答は、インビボで起こってもよいし、インビトロで起こってもよい。当業者は、種々の高分子(タンパク質、核酸、脂肪酸、脂質、リポポリサッカリドおよびポリサッカリドが挙げられる)が免疫原性である可能性を有することを理解する。当業者は、免疫応答を誘発し得る分子をコードする核酸が、必然的に免疫原をコードすることをさらに理解する。当業者は、免疫原が全長分子に限定されないが、部分的分子を含み得ることをさらに理解する。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「被験体において免疫応答を誘導する(inducing an immune response in a subject)」とは、当該分野で十分理解される用語であり、抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答において、少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約100倍、さらにより好ましくは少なくとも約500倍、さらにより好ましくは少なくとも約1000倍の、またはより高い増大が、その被験体へとその抗原(またはエピトープ)を導入した後に、その被験体へとその抗原(またはエピトープ)を導入する前の免疫応答(あるとすれば)に対して検出または測定され得ることを意図する。抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答としては、抗原特異的(またはエピトープ特異的)抗体の生成および抗原(またはエピトープ)に特異的に結合する分子を表面上に発現する免疫細胞の生成が挙げられるが、これらに限定されない。所定の抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答が誘導されているか否かを決定するための方法は、当該分野で周知である。例えば、抗原特異的抗体は、当該分野で公知の種々のイムノアッセイのうちのいずれか(ELISA(ここでは例えば、固定化された抗原(またはエピトープ)に対するサンプル中の抗体の結合が検出可能に標識された二次抗体(例えば、酵素標識マウス抗ヒトIg抗体)で検出される)が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して検出され得る。
【0082】
用語「免疫応答を調節する(modulate an immune response)」とは、免疫応答を誘導する(増大させる、誘発する)こと;および免疫応答を低減する(抑制する)ことを含む。免疫調節方法(またはプロトコル)は、被験体において免疫応答を調節するものである。
【0083】
用語「ベクター」とは、外来の遺伝物質を別の細胞へと人工的に運ぶために使用されるポリヌクレオチド(通常はDNA)であって、ここでそれは、複製または発現され得るものをいう。非限定的な例示的ベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、および人工染色体が挙げられる。このようなベクターは、種々の供給源(細菌供給源およびウイルス供給源が挙げられる)に由来し得る。プラスミドの非限定的な例示的ウイルス供給源は、アデノ随伴ウイルスである。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「組換え発現システム(recombinant expression system)」とは、組換えによって形成されるある種の遺伝物質の発現のための遺伝的構築物に言及する;用語「構築物(construct)」とは、この点において、本明細書で定義されるとおりの用語「ベクター」と交換可能である。
【0085】
「HMGドメイン(HMG domain)」、「high mobility group (HMG) boxドメイン(high mobility group (HMG) box domain)」、または「HMGB」とは、DNAの結合に関与するアミノ酸配列に言及する(Strosら, Cell Mol Life Sci. 64(19-20):2590-606 (2007))。一実施形態において、そのHMG-boxドメインの構造は、不規則な配列にある3つのヘリックスからなる。別の実施形態において、HMG-boxドメインは、タンパク質が非B型DNA構成(ねじれているかまたは巻いていない)を高親和性で結合することを可能にする。HMG-boxドメインは、high mobility groupタンパク質において見出され、これは、DNA依存性プロセス(例えば、転写、複製およびDNA修復(これらの全ては、クロマチンのコンホメーションの変化を要求する))の調節に関与する(Thomas (2001) Biochem. Soc. Trans. 29(Pt 4):395-401)。「HMGB1」は、DNAの副溝に結合しこれを曲げることが報告されているhigh mobility group box(HMGB) 1タンパク質である。組換えのまたは単離されたタンパク質およびポリペプチドは、Atgenglobal、ProSpecBio、Protein1およびAbnovaから市販されている。
【0086】
HMG-boxタンパク質は、種々の真核細胞生物において見出され、配列依存性および配列非依存性のDNA認識に基づいて、広くは2つの群に分けられ得る;前者は通常、1つのHMG-boxモチーフを含む一方で、後者は、多数のHMG-boxモチーフを含み得る。HMG-boxドメインを含むポリペプチドの非限定的な例としては、以下が挙げられる:クロマチンのHMG1(HMGB1)、HMG2(HMGB2)、HMGB3およびHMGB4非ヒストン構成要素;差次的な生殖腺形成に関与するSRY(性別決定領域Yタンパク質);転写因子のSOXファミリー(Harleyら. (2003) Endocr. Rev. 24(4):466-87);器官形成および胸腺細胞分化の調節に関与する配列特異的LEF1(リンパ系エンハンサー結合因子1)およびTCF-1(T細胞因子1)(Labbeら. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(15):8358-63);転写および複製に関与する構造特異的認識タンパク質SSRP;MTF1ミトコンドリア転写因子;RNAポリメラーゼIによる転写に関与するnucleolar transcription factors UBF 1/2(上流結合因子);Abf2酵母ARS結合因子(Choら. (2001) Biochim. Biophys. Acta. 1522(3):175-86);酵母転写因子lxr1、Rox1、Nhp6bおよびSpp41;真菌の有性生殖に関与するmating type protein(MAT)(Barveら. (2003) Fungal Genet. Biol. 39(2):151-67);ならびにYABBY植物特異的転写因子。
【0087】
HMG-boxドメインを含むポリペプチドの例示的な配列としては、NP_002119(ヒトHMGB1)、NP_001124160(ヒトHMGB2)、NP_005333(ヒトHMGB3)およびNP_660206(ヒトHMGB4)が挙げられる。ヒトHMGB1の約9~約76のアミノ酸残基は、例えば、HMG-boxドメインを形成し、約90~約138のアミノ酸残基は、別のHMG-boxドメインを形成する。これら2個のHMG-boxドメインのうちのいずれかを含むHMGB1フラグメントは、本開示の意味の範囲内で、例えば、HMG-boxドメインを含むポリペプチドをも構成する。本明細書で記載される例では、組換えHMGB1(ヒトに由来し、E.coliにおいて組換え発現され、精製される)は、mHMGB1(C45S)に対する比較対照(comparator)として使用され、以下の配列を有する:
【化1】
【0088】
用語「改変high mobility group-box 1ドメイン(modified high mobility group-box 1 domain)」とは、本明細書で使用される場合、例えば、ヒトに由来するHMGB1のコンセンサス配列ポリペプチド:
【化2】
に基づいて、23位、45位、および/または106位におけるシステイン残基の置換を介して変異されているHMGB1をいう。
【0089】
改変high mobility group-box 1ドメインの非限定的な例示的配列としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
mHMGB1(C23S、C45S - 二重変異体):
【化6】
【0094】
mHMGB1(C23S、C106S - 二重変異体):
【化7】
【0095】
mHMGB1(C45S、C106S - 二重変異体):
【化8】
【0096】
mHMGB1(C23S、C45S、C106S - 三重変異体):
【化9】
【0097】
これらの改変high mobility group-box 1ドメインをコードする核酸配列はまた、本明細書中以下で提供される:
【0098】
【0099】
【0100】
mHMGB1(C106S):
【化12-1】
【化12-2】
【0101】
mHMGB1(C23S、C45S - 二重変異体):
【化13】
【0102】
mHMGB1(C23S、C106S - 二重変異体):
【化14】
【0103】
mHMGB1(C45S、C106S - 二重変異体):
【化15】
【0104】
mHMGB1(C23S、C45S、C106S - 三重変異体):
【化16】
【0105】
用語「改変high mobility group-box 1ドメイン」は、HMGB1コンセンサス配列と少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%または少なくとも約99%同一性を有するそれらの等価物をさらに包含し、HMGB1コンセンサス配列に対するアラインメントに基づいて、等価な配列において相当する位置で同じ置換を含むことは、認識される。
【0106】
改変high mobility group-box 1ドメインの等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1またはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは認識される。
【0107】
改変high mobility group-box 2を生じる相当するアミノ酸置換は、ヒトに由来するHMGB2のコンセンサス配列のポリペプチド:
【化17】
に基づいて、23位、45位、および/または106位におけるシステイン残基で行われ得る。
【0108】
改変high mobility group-box 2ドメインの非限定的な例示的配列としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
mHMGB2(C23S、C45S - 二重変異体):
【化21-1】
【化21-2】
【0113】
mHMGB2(C23S、C106S - 二重変異体):
【化22】
【0114】
mHMGB2(C45S、C106S - 二重変異体):
【化23】
【0115】
mHMGB2(C23S、C45S、C106S - 三重変異体):
【化24】
【0116】
これらの改変high mobility group-box 2ドメインをコードする核酸配列はまた、本明細書中以下で提供される:
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
mHMGB2(C23S、C45S - 二重変異体):
【化28-1】
【化28-2】
【0121】
mHMGB2(C23S、C106S - 二重変異体):
【化29】
【0122】
mHMGB2(C45S、C106S - 二重変異体):
【化30】
【0123】
mHMGB2(C23S、C45S、C106S - 三重変異体):
【化31】
【0124】
改変high mobility group-box 3を生じる相当するアミノ酸配列置換は、ヒトに由来するHMGB3のコンセンサス配列のポリペプチド:
【化32】
に基づいて、23位、45位、および/または104位におけるシステイン残基で行われ得る。
【0125】
改変high mobility group-box 2ドメインの非限定的な例示的配列としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
mHMGB3(C23S、C45S - 二重変異体):
【化36】
【0130】
mHMGB3(C23S、C104S - 二重変異体):
【化37】
【0131】
mHMGB3(C45S、C104S - 二重変異体):
【化38】
【0132】
mHMGB3(C23S、C45S、C104S - 三重変異体):
【化39】
【0133】
これらの改変high mobility group-box 2ドメインをコードする核酸配列はまた、本明細書中以下で提供される:
【0134】
mHMGB3(C23S):
【化40-1】
【化40-2】
【0135】
【0136】
mHMGB3(C104S):
【化42-1】
【化42-2】
【0137】
mHMGB3(C23S、C45S - 二重変異体):
【化43】
【0138】
mHMGB3(C23S、C104S - 二重変異体):
【化44】
【0139】
mHMGB3(C45S、C104S - 二重変異体):
【化45-1】
【化45-2】
【0140】
mHMGB3(C23S、C45S、C104S - 三重変異体):
【化46】
【0141】
改変high mobility group-box 2を生じる相当するアミノ酸配列置換は、ヒトに由来するHMGB2のコンセンサス配列のポリペプチド:
【化47】
に基づいて、45位、104位、164位、および/または178位におけるシステイン残基で行われ得る。
【0142】
改変high mobility group-box 2ドメインの非限定的な例示的配列としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0143】
mHMGB4(C45S):
【化48-1】
【化48-2】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
mHMGB4(C45S、C104S - 二重変異体):
【化52】
【0148】
mHMGB4(C45S、C164S - 二重変異体):
【化53】
【0149】
mHMGB4(C45S、C178S - 二重変異体):
【化54-1】
【化54-2】
【0150】
mHMGB4(C104S、C164S - 二重変異体):
【化55】
【0151】
mHMGB4(C104S、C178S - 二重変異体):
【化56】
【0152】
mHMGB4(C164S、C178S - 二重変異体):
【化57】
【0153】
mHMGB4(C45S、C104S、C164S - 三重変異体):
【化58】
【0154】
mHMGB4(C45S、C104S、C178S - 三重変異体):
【化59】
【0155】
mHMGB4(C45S、C164S、C178S - 三重変異体):
【化60】
【0156】
mHMGB4(C104S、C164S、C178S) - 三重変異体):
【化61】
【0157】
mHMGB4(C45S、C104S、C164S、C178S - 四重変異体):
【化62】
【0158】
これら改変high mobility group-box 2ドメインをコードする核酸配列はまた、本明細書中以下で提供される:
【0159】
【0160】
mHMGB4(C104S):
【化64-1】
【化64-2】
【0161】
【0162】
【0163】
mHMGB4(C45S、C104S - 二重変異体):
【化67-1】
【化67-2】
【0164】
mHMGB4(C45S、C164S - 二重変異体):
【化68】
【0165】
mHMGB4(C45S、C178S - 二重変異体):
【化69】
【0166】
mHMGB4(C104S、C164S - 二重変異体):
【化70-1】
【化70-2】
【0167】
mHMGB4(C104S、C178S - 二重変異体):
【化71】
【0168】
mHMGB4(C164S、C178S - 二重変異体):
【化72-1】
【化72-2】
【0169】
mHMGB4(C45S、C104S、C164S - 三重変異体):
【化73】
【0170】
mHMGB4(C45S、C104S、C178S - 三重変異体):
【化74】
【0171】
mHMGB4(C45S、C164S、C178S - 三重変異体):
【化75-1】
【化75-2】
【0172】
mHMGB4(C104S、C164S、C178S) - 三重変異体):
【化76】
【0173】
mHMGB4(C45S、C104S、C164S、C178S - 四重変異体):
【化77】
【0174】
開示を実施するための態様
出願人は、DNABIIタンパク質が、バイオフィルムのeDNA依存性細胞外マトリクスを安定化する一方で、組換えHMGB1(rHMGB1)が、インビトロで予め形成された細菌バイオフィルムを破壊し(表1)、NTHIバイオフィルムを、中耳炎(OM)の実験的モデルにおいてチンチラの中耳から一掃し(
図1A~1B)、そしてマウス気道においてBurkholderia cenocepaciaバイオフィルム発生を阻害し、低減した細菌負荷を直接的に生じた(
図2A~2D)ことを本明細書で示す。
【0175】
rHMGB1は、インビトロおよびインビボでバイオフィルムを破壊することにおいて有効であることが示されたが、宿主にとって潜在的に有害であり得る強い炎症性応答を誘導することはまた、十分に記録される。アセチル化、リン酸化、メチル化、グリコシル化、ADP-リボシル化、およびシステイン残基の酸化を含むいくつかの翻訳後修飾(PTM)は、その位置(核、細胞質または細胞外)、機能、およびDNAを結合する能力を調節するHMGB1に関して記載されている(総説(Kangら. 2014))。ヒトHMGB1は、23位、45位、および106位における3個のシステイン残基を含み、そのシステイン残基の酸化は、その炎症特性に影響を与える(Kazamaら. 2008)。C106チオール基およびC23-C45ジスルフィド結合を含むHMGB1は、炎症の引き金を引く一方で、末端で酸化されたシステインは、炎症の消散を促進する(Yangら. 2012)。
【0176】
開示された研究において、出願人は、HMGB1の改変体形態(mHMGB1)を生成した。ここで出願人は、45位のシステインをセリンで置換した(C45S)。出願人は、mHMGB1(C45S)が、多数のヒト病原体によって形成される、インビトロで予め形成されたバイオフィルムを破壊する、OMの実験的モデルにおいてNTHIバイオフィルムを一掃する、およびマウス気道においてB.cenocepacia細菌負荷を低減することにおいて有効であると同時に、それが炎症性応答を増強しないことを示した。出願人のデータは、出願人が、多数のヒト病原体に対して望ましい抗バイオフィルム機能を保持するが、望ましくない、強い炎症促進性応答を高めることにおいて欠陥のあるHMGB1改変体(mHMGB1)を生成したことを示唆する。さらに、この研究は、HMGB1の他の等価な改変(例えば、C23SおよびC106S)が類似の結果を生じ得ることを示唆する。従って、出願人は、改変C23S、C45S、およびC106Sを含む三重変異HMGB1、ならびにC23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1またはこれより多くの改変を含むさらなる変異HMGB1を生成する。
【0177】
出願人のアプローチは、それが耐性機構を発生させるように細菌にさらなる圧をかける殺菌活性を有する化合物に依拠しないが、むしろバイオフィルム細胞外マトリクスを標的とし、過剰な炎症の非存在下で疾患の消散をもたらすバイオフィルムの破壊を生じるという点で現代の技術を超える改善である。
【0178】
この方法および組成物は、多数の多様なバイオフィルム媒介性感染(中耳炎、尿路感染、肺炎、歯肉炎、インプラント周囲炎、歯周炎、嚢胞性線維症、心内膜炎および熱傷創感染が挙げられるが、これらに限定されない)の処置において有用である。
【0179】
この方法および組成物は、抗生物質または他の抗微生物と組み合わせて、デバイス挿入の標的部位を「滅菌(sterilize)」して、デバイス関連感染を防止するために有用である。
【0180】
C45S組換えHMGB1または改変HMGB1(C45S)(「mHMGB1(C45S)」)は、インビトロおよびインビボで(2つの哺乳動物モデルで)の両方で既存のバイオフィルムを破壊することが示された。インビボでバイオフィルムから浮遊状態へと多量の細菌を分散させることは、目下これらの浮遊細菌が、潜在的な第2部位の感染を生じる前にはアクセスを有しなかった他の部位へのアクセスを獲得できる可能性があるという点で潜在的な欠点を有し得る。また、この分散効果は、敗血症を生じ得る。これらの転帰のいずれも、mHMGB1では観察されておらず、バイオフィルム感染の部位に依存して、これらの潜在的落とし穴に議論の余地があり得るという事実に加えて、これらの潜在的な制限を回避する手段が存在する。実際に、C45S変異は、分枝状DNA構造(細菌バイオフィルム内の細胞外DNAは、これらの構造を構成すると考えられる)に対する分子の親和性を増大し、その炎症応答をも弱め、よってより良好な治療的応答を与えると思われる。
【0181】
よって、本明細書で開示される局面は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くのまたは全ての置換を含む改変high mobility group-box 1ドメイン、その改変high mobility group-box 1ドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチド、その単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドを含むベクター、ならびに有効量の、その改変high mobility group-box 1ドメインおよび/または前述の単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドおよび/または前述のベクターを含む組成物に関する。一局面において、そのポリヌクレオチドはDNAであり、別の局面において、そのポリヌクレオチドはRNAである。そのポリヌクレオチドを原核生物システムまたは真核生物システムにおいて発現することによってそのmHMGB1ポリペプチドを生成する組換え法がまた、提供される。さらなる局面において、そのシステムにおいて生成されるタンパク質が単離される。従って、本開示はまた、原核生物および真核生物の宿主細胞システムにおいて生成されるポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0182】
さらなる局面は、バイオフィルム中の微生物DNAへのデオキシリボ核酸B II(DNABII)ポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定するための方法に関し、上記方法は、そのバイオフィルム中の微生物DNAと、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたは上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くとを接触させる工程であって、それによって、その微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。いくつかの実施形態において、接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいてである。いくつかの実施形態において、そのバイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、および/またはAggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される。いくつかの実施形態において、上記方法は、有効量の抗生物質を表面に投与する工程であって、必要に応じてコーティングする工程をさらに包含する。
【0183】
なおさらなる局面は、表面上のバイオフィルムの形成を防止するための方法に関し、上記方法は、comprising その表面と、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くまたは全ての置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチド、または上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くとを接触させる工程であって、必要に応じてコーティングし、それによって、バイオフィルム形成の間に微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。いくつかの実施形態において、接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいてである。いくつかの実施形態において、そのバイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、および/またはAggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される。いくつかの実施形態において、その方法は、その表面に有効量の抗生物質を投与する工程であって、必要に応じてコーティングする工程をさらに包含する。
【0184】
さらなる局面は、バイオフィルムを生成する被験体において微生物感染を防止または処置するための方法に関し、上記方法は、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチド、または上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くを投与する工程であって、それによって、微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。いくつかの実施形態において、そのバイオフィルムは、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、および/またはAggregatibacter actinomycetemcomitansによって形成される。いくつかの実施形態において、上記方法は、有効量の抗生物質を投与する工程をさらに包含する。
【0185】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1またはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは、認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見出される。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示された前述の局面が、その言及される位置において1もしくはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;およびC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
【0186】
開示を実施するための態様
ポリペプチド
本明細書で開示される局面は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインに関する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、1個、2個または全3個の置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0187】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1もしくはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見出される。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示される前述のポリペプチド局面が、その言及される位置において1もしくはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;およびC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
【0188】
そのタンパク質およびポリペプチドは、精製法、化学合成法および組換え法を含む、当業者に公知の多くのプロセスによって得られ得る。ポリペプチドは、抗体での免疫沈降のような方法、ならびにゲル濾過、イオン交換、逆相およびアフィニティークロマトグラフィーのような標準的技術によって、宿主細胞システムのような調製物から単離され得る。このような方法論に関しては、例えば、Deutscherら. (1999) Guide To Protein Purification: Methods In Enzymology (Vol. 182, Academic Press)を参照のこと。よって、本発明はまた、これらのポリペプチドを得るためのプロセス、ならびにこれらのプロセスによって得られ得るおよび得られる生成物を提供する。
【0189】
そのポリペプチドはまた、市販の自動化ペプチド合成機(例えば、Perkin/ Elmer/Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA, USAによって製造されるもの、Model 430Aもしくは43lA)を使用して化学合成によって得られ得る。その合成されたポリペプチドは沈殿され得、例えば、高速液体クラマトグラフィー(HPLC)によって、さらに精製され得る。よって、本発明はまた、タンパク質の配列および試薬(アミノ酸および酵素)を提供し、そのアミノ酸を適切な配向および直線状の配列において一緒に連結することによって、本発明のタンパク質を化学合成するためのプロセスを提供する。
【0190】
あるいは、そのタンパク質およびポリペプチドは、例えば、Sambrookら. (2012)前出において例えば、記載されるように、本明細書で記載される宿主細胞およびベクターシステムを使用して、周知の組換え法または変異誘発によって得られ得る。
【0191】
本発明のポリペプチドはまた、種々の固相キャリア(例えば、インプラント、ステント、パスタ剤、ゲル、歯科インプラントもしくは医療用インプラント)、または液相キャリア(例えば、ビーズ、滅菌もしくは水性の溶液、薬学的に受容可能なキャリア、懸濁物またはエマルジョン)と組み合わされ得る。非水性溶媒の例としては、プロピルエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよび植物性油が挙げられる。抗体を調製するか、またはインビボで免疫応答を誘導するために使用される場合、そのキャリアはまた、特異的免疫応答を非特異的に増大させるために有用なアジュバントを含み得る。当業者は、アジュバントが要求され、1つを選択するか否かを容易に決定し得る。しかし、単に例証目的で、適切なアジュバントとしては、フロイント完全および不完全アジュバント、無機塩およびポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なアジュバントとしては、モノホスホリルリピドA(MPL)、E.coliの易熱性エンテロトキシンの変異誘導体、コレラ毒素の変異誘導体、CPGオリゴヌクレオチドおよびスクアレンに由来するアジュバントが挙げられる。
【0192】
ポリヌクレオチドおよびベクター
本明細書で開示される局面は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドおよび/またはその単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドを含むベクターに関する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0193】
一般に、遺伝物質(例えば、DNAまたはRNA)を1もしくはこれより多くのベクターへとパッケージングするための方法は、当該分野で周知である。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。例えば、その遺伝物質は、パッケージングベクターおよび細胞株を使用してパッケージングされ得、旧来の組換え法を介して導入され得る。
【0194】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1もしくはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは、認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見いだされる。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示される単離されたポリヌクレオチドおよびベクターが、そのその言及される位置において1もしくはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;およびC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
【0195】
いくつかの実施形態において、そのパッケージングベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター(必要に応じてAAV8)が挙げられ得るが、これらに限定されない。そのパッケージングベクターは、細胞への遺伝物質の送達を促進するエレメントおよび配列を含む。例えば、そのレトロウイルス構築物は、複製能力のないレトロウイルスベクターをパッケージするために必要とされる全てのビリオンタンパク質をトランスでコードし、複製能力のあるヘルパーウイルスの生成なしに、高力価で複製能力のないレトロウイルスベクターをパッケージングし得るビリオンタンパク質を生成するために、複製能力のないレトロウイルスゲノムに由来する少なくとも1つのレトロウイルスヘルパーDNA配列を含むパッケージングプラスミドである。そのレトロウイルスDNA配列は、そのウイルスのウイルス5’ LTRのネイティブのエンハンサーおよび/またはプロモーターをコードする領域を欠き、ヘルパーゲノムのパッケージングを担うpsi機能的配列および3’LTRの両方を欠くが、外来のポリアデニル化部位(例えば、SV40ポリアデニル化部位)、およびウイルス生成が望ましい細胞タイプにおいて効率的転写を指向する外来のエンハンサーおよび/またはプロモーターをコードする。そのレトロウイルスは、白血病ウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV))、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、またはテナガザル白血病ウイルス(GALV)である。その外来のエンハンサーおよびプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)即時(IE)エンハンサーおよびプロモーター、モロニーマウス肉腫ウイルス(MMSV)のエンハンサーおよびプロモーター(U3領域)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のU3領域、脾臓フォーカス形成ウイルス(Spleen Focus Forming Virus)(SFFV)のU3領域、またはネイティブのモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)プロモーターに結合されたHCMV IEエンハンサーであり得る。
【0196】
そのレトロウイルスパッケージングプラスミドは、プラスミドベースの発現ベクターによってコードされる2つのレトロウイルスヘルパーDNA配列からなり得、例えば、ここで第1のヘルパー配列は、同種指向性MMLVまたはGALVのgagおよびpolタンパク質をコードするcDNAを含み、そして第2のヘルパー配列は、envタンパク質をコードするcDNAを含む。その宿主範囲を決定するEnv遺伝子は、異種指向性、両指向性、同種指向性、多指向性(ミンクフォーカス形成)または10A1マウス白血病ウイルスenvタンパク質、またはテナガザル白血病ウイルス(GALV)envタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスenv(gp160)タンパク質、水疱性口内炎ウイルス(VSV)Gタンパク質、ヒトT細胞白血病(HTLV)タイプIおよびII env遺伝子生成物をコードする遺伝子、前述のenv遺伝子のうちの1もしくはこれより多くの組み合わせに由来するキメラエンベロープ遺伝子、または前述のenv遺伝子生成物の細胞質および膜貫通部分、ならびに望ましい標的細胞上の特異的表面分子に対して指向されるモノクローナル抗体をコードするキメラエンベロープ遺伝子に由来し得る。類似のベクターベースのシステムは、他のベクター(例えば、スリーピングビューティーベクターまたはトランスポゾンエレメント)を使用し得る。
【0197】
得られるパッケージされた発現システムは、次いで、本明細書で開示される方法局面に関して詳細に考察される適切な投与経路を介して導入され得る。
【0198】
組成物
さらなる局面は、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメイン、ならびに/または前述の単離されたポリヌクレオチドもしくは組換えポリヌクレオチドならびに/または前述のベクターを含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0199】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1もしくはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは、認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見出される。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示される組成物局面が、その言及される位置において1もしくはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;ならびにC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
【0200】
簡潔には、請求された組成物のうちのいずれか1つを含むが、これに限定されない本開示の薬学的組成物は、本明細書で記載されるとおりの改変high mobility group-box 1ドメインを、1もしくはこれより多くの薬学的にまたは生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤もしくは賦形剤と組み合わせて含み得る。
【0201】
周知のキャリアの例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱が挙げられる。そのキャリアの性質は、開示の目的のために可溶性または不溶性のいずれかであり得る。当業者は、抗体を結合するために他の適切なキャリアについて知っているか、または慣用的な実験を使用して、そのようなものを確認し得る。
【0202】
このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝化塩類溶液、リン酸緩衝化生理食塩水など);炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール);タンパク質;ポリペプチドもしくはアミノ酸(例えば、グリシン);抗酸化剤;キレート化剤(例えば、EDTAもしくはグルタチオン);アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤をも含み得る。本開示の組成物は、経口投与、静脈内投与、局所投与、経腸投与、および/または非経口投与のために製剤化され得る。ある種の実施形態において、本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【0203】
その組成物の投与は、処置の過程全体を通じて、1用量で、連続的または間欠的にもたらされ得る。投与の最も有効な手段および投与量を決定するための方法は、当業者に公知であり、治療に使用される組成物、治療目的および処置されている被験体に伴って変動する。単一のまたは多数の投与が、処置している医師によって選択されている用量レベルおよびパターンで行われ得る。適切な投与製剤および薬剤の投与方法は、当該分野で公知である。さらなる局面において、本開示の細胞および組成物は、他の処置と組み合わせて投与され得る。
【0204】
ベクター、組換え発現システム、および/または組成物は、当該分野で公知の方法を使用して宿主に投与される。本開示の組成物のこの投与は、実験的およびスクリーニングアッセイのために所望の疾患、障害、もしくは状態の動物モデルを生成するために行われ得る。
【0205】
簡潔には、請求された組成物のうちのいずれか1つを含むが、これに限定されない本開示の薬学的組成物は、本明細書で記載されるとおりの1もしくはこれより多くのベクターまたは組換え発現システムを、1もしくはこれより多くの薬学的にまたは生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤もしくは賦形剤と組み合わせて含み得る。このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝化塩類溶液、リン酸緩衝化生理食塩水など);炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール);タンパク質;ポリペプチドもしくはアミノ酸(例えば、グリシン);抗酸化剤;キレート化剤(例えば、EDTAもしくはグルタチオン);アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含み得る。本開示の組成物は、経口投与、静脈内投与、局所投与、経腸投与、および/または非経口投与のために製剤化され得る。ある種の実施形態において、本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【0206】
本開示の薬学的組成物は、処置または防止されるべき疾患、障害、または状態に適した様式で投与され得る。投与の量および頻度は、患者の状態、その患者の疾患のタイプおよび重篤度のような因子によって決定されるが、適切な投与量は、臨床試験によって決定され得る。
【0207】
治療法
本明細書で開示される局面は、治療法に関する。例えば、局面は、バイオフィルム中の微生物DNAへのデオキシリボ核酸B II(DNABII)ポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定するための方法に関し、上記方法は、そのバイオフィルム中の微生物DNAと、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたは上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くとを接触させる工程であって、それによって、その微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。いくつかの実施形態において、接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいてである。
【0208】
さらなる局面は、表面上のバイオフィルムの形成を防止するために方法に関し、上記方法は、その表面と、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたは上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くとを接触させる工程であって、必要に応じてコーティングし、それによって、バイオフィルム形成の間に微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。いくつかの実施形態において、接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいてである。
【0209】
さらなる局面は、バイオフィルムを生成する被験体における微生物感染を防止または処置するための方法に関し、上記方法は、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたは上記で開示される組成物のうちのいずれか1つもしくはこれより多くを投与する工程であって、それによって、微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0210】
いくつかの局面において、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含むポリペプチドは、上記で記載される任意のポリペプチドに対する生物学的等価物を含むか、または代わりにその等価物から本質的になるか、またはなおさらにその等価物からなる。
【0211】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1もしくはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは、認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見出される。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示される方法局面が、その言及される位置において1もしくはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;ならびにC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
【0212】
いくつかの局面において、その単離されたタンパク質もしくは組換えタンパク質は、哺乳動物タンパク質である。特定の局面において、その哺乳動物タンパク質は、ヒトタンパク質である。
【0213】
上記の方法のうちのいずれかは、被験体に、有効量の、抗微生物物質、抗原性ペプチドまたはアジュバントのうちの1もしくはこれより多くを投与する工程をさらに包含するか、または代わりにこの工程から本質的になるか、またはなおさらにこの工程からなる。その被験体は、一局面において、非ヒト動物またはヒト患者である。
【0214】
そのポリペプチドは、局所的に、経皮的に、舌下に、直腸に、膣に、眼に、皮下に、筋肉内に、腹腔内に、尿道に、鼻内に、吸入によって、または経口的に、を含む方法によって投与される。
【0215】
いくつかの局面において、その被験体は、小児患者であり、そのポリペプチドは、その小児患者のための製剤において投与される。
【0216】
上記の実施形態のうちのいずれかにおいて、そのバイオフィルムは、表1において同定される微生物に由来する微生物DNAを含み得る。
【0217】
一実施形態において、そのポリペプチドは、微生物感染に局所的に投与される。
【0218】
一実施形態において、本開示は、必要性のある被験体において免疫応答を誘導または提供するための方法を提供し、上記方法は、その被験体に、有効量の、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを投与する工程を包含するか、または代わりにこの工程から本質的になるか、またはなおさらにこの工程からなる。別の実施形態において、その投与は、免疫応答が望ましい場所に対して局所である。C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインの例は、上記で記載される。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0219】
その単離されたタンパク質もしくは組換えタンパク質は、哺乳動物タンパク質であり得るか、または特定の局面においては、ヒトタンパク質であり得る。その被験体は、いくつかの局面において、非ヒト動物またはヒト患者である。
【0220】
本発明の薬剤および組成物は、他の抗微生物薬剤および/または表面抗原と同時にまたは連続して投与され得る。1つの特定の局面において、投与は、感染の部位に局所的に投与される。投与の他の非限定的な例としては、経皮的に、舌下に、直腸に、膣に、眼に、皮下に、筋肉内に、腹腔内に、尿道に、鼻内に、吸入によって、または経口的に、を含む1もしくはこれより多くの方法が挙げられる。
【0221】
一実施形態において、バイオフィルムを破壊するか、またはバイオフィルムを生成する微生物感染を阻害、防止もしくは処置することにおける医薬の製造のための、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含むか、または代わりにこれから本質的になるか、またはなおさらにこれからなる上記のポリペプチドのうちのいずれかの使用がまた、提供される。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。
【0222】
これらの方法のうちのいくつかに関しては、接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいて行われ得る。接触させる工程がインビトロにおいてである場合、その方法は、動物研究または臨床研究の前に本発明の薬剤の有効性を決定する手段を提供し、本発明の薬剤が、さらなる抗微生物物質と相乗作用的に機能するか否かを決定するために使用され得る。動物モデルにおいてインビボで行われる場合、その方法は、ヒト患者での研究の前に、本発明の薬剤の有効性を決定する手段を提供し、本発明の薬剤が、さらなる抗微生物物質(例えば、抗生物質)と相乗作用的に機能するか否かを決定するために使用され得る。
【0223】
本発明の方法によって処置され得る微生物感染および疾患としては、表1において同定される生物、例えば、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、またはAggregatibacter actinomycetemcomitansによる感染が挙げられる。これらの微生物感染は、上気道、中気道または下気道(耳炎、副鼻腔炎または気管支炎)に存在し得るが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性の咳嗽、嚢胞性線維症(CF)および市中肺炎(CAP)の合併症および/または主原因の増悪においても存在し得る。
【0224】
感染は、口腔においても起こり得(う蝕、歯周炎)、Streptococcus mutans、Porphyromonas gingivalis、Aggregatibacter actinomycetemcomitansによって引き起こされ得る。感染は、皮膚にも局在し得(膿瘍、「ぶどう球菌」感染、膿痂疹、熱傷の二次感染、ライム病)、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Pseudomonas aeruginosaおよびBorrelia burdorferiによって引き起こされ得る。尿路感染(UTI)も処置され得、代表的にはEscherichia coliによって引き起こされる。消化管(GI)の感染(下痢、コレラ、胆石、胃潰瘍)は、代表的にはSalmonella enterica serovar、Vibrio choleraeおよびHelicobacter pyloriによって引き起こされる。生殖路の感染としては、代表的にはNeisseria gonorrhoeaeによって引き起こされるものが挙げられる。膀胱のまたは留置デバイスの感染は、Enterococcus faecalisによって引き起こされ得る。移植した補綴デバイス(例えば、人工股関節もしくは人工膝関節置換術)または歯科インプラントもしくは医療用デバイス(例えば、ポンプもしくはモニタリングシステム)と関連する、代表的には種々の細菌によって引き起こされる感染は、本発明の方法によって処置され得る。これらのデバイスは、本明細書で記載されるとおりの薬剤でコーティングされ得るか、またはその薬剤と結合体化され得る。
【0225】
Streptococcus agalactiaeによって引き起こされる感染は、新生児における細菌敗血症の主原因である。このような感染はまた、本発明の方法によって処置され得る。同様に、髄膜炎を引き起こし得るNeisseria meningitidisによって引き起こされる感染がまた、処置され得る。
【0226】
従って、本発明の方法に適用可能な投与経路としては、鼻内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、局所適用、静脈内、直腸、鼻、口、ならびに他の経腸および非経口の投与経路が挙げられる。投与経路は、薬剤および/または望ましい効果に依存して、組み合わされ得る(望ましい場合)か、または調節され得る。活性薬剤は、単一用量で、または多数の用量で投与され得る。これらの方法および送達に適切な経路の実施形態は、全身経路または局所経路を含む。一般に、本発明の方法に適した投与経路としては、経腸経路、非経口経路または吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
吸入投与以外の非経口投与経路としては、局所、経皮、皮下、筋肉内、眼窩内、嚢内(intracapsular)、髄腔内、胸骨内および静脈内の経路、すなわち、消化管を経るもの以外の任意の投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。非経口投与は、阻害薬剤の全身送達もしくは局所送達をもたらすために行われ得る。全身送達が望ましい場合、投与は、代表的には、薬学的調製物の侵襲性もしくは全身に吸収される局所もしくは粘膜投与を要する。
【0228】
本発明の化合物はまた、経腸投与によって被験体に送達され得る。経腸の投与経路としては、経口送達および直腸(例えば、坐剤を使用する)送達が挙げられるが、これらに限定されない。
【0229】
皮膚または粘膜を通じてその活性物を投与するための方法としては、適切な薬学的調製物の局所的適用、経皮的伝達(transcutaneous transmission)、経皮的伝達(transdermal transmission)、注射および表皮投与が挙げられるが、これらに限定されない。経皮的伝達に関しては、吸収促進剤またはイオン導入法が適した方法である。イオン導入による伝達は、数日間またはより長い期間にわたって、破壊されていない皮膚を通る電気パルスを介して、それらの生成物を連続して送達する市販の「パッチ」を使用して達成され得る。
【0230】
本発明の方法の種々の実施形態において、その活性物は、連続的な、毎日、少なくとも1回/1日(QD)でおよび種々の実施形態において、1日に2回(BID)、3回(TID)またはさらに4回、経口投与される。代表的には、その治療上有効な1日用量は、少なくとも約1mg、または少なくとも約10mg、または少なくとも約100mgまたは約200~約500mgおよびときには、その化合物に依存して、約1g~約2.5g程度の多さまでである。
【0231】
投与は、カプセル剤、錠剤、経口懸濁物、筋肉内注射用の懸濁物、静脈内注入用の懸濁物、局所適用用のゲルもしくはクリーム剤または関節内注射用の懸濁物を使用して、本発明の方法に従って達成され得る。
【0232】
本明細書で記載される組成物の投与量、毒性および治療上の有効性は、例えば、LD50(集団のうちの50%に対して致死的な用量)およびED50(集団のうちの50%において治療上有効な用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって決定され得る。毒性効果と治療上の効果との間の用量比は、治療指数であり、それは、比 LD50/ED50として表され得る。高い治療指数を示す組成物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用してもよいが、非感染細胞に対する潜在的ダメージを最小限にし、それによって、副作用を低減するために、罹患した組織の部位にこのような化合物を標的化する送達システムをデザインするように注意を払うべきである。
【0233】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量の範囲を製剤化するにあたって使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性のない、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。その投与量は、使用される投与形態および利用される投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。その方法において使用される任意の化合物に関して、その治療上有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に予測され得る。用量は、細胞培養物中で決定される場合に、IC50(すなわち、症状の最大阻害の半数を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて製剤化され得る。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0234】
いくつかの実施形態において、治療上のまたは予防上の効果を達成するために十分な組成物の有効量は、約0.000001mg/キログラム体重/投与~約10,000mg/キログラム体重/投与の範囲に及ぶ。適切には、その投与量範囲は、約0.0001mg/キログラム体重/投与~約100mg/キログラム体重/投与である。投与は、初期用量として提供され得、続いて、1またはこれより多くの「ブースター」用量が提供され得る。ブースター用量は、初期用量の1日後、2日後、3日後、1週間後、2週間後、3週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後または12ヶ月後に提供され得る。いくつかの実施形態において、ブースター用量は、以前の投与に対する被験体の応答の評価後に投与される。
【0235】
当業者は、ある種の因子が、被験体を有効に処置するために必要とされる投与量およびタイミングに影響を及ぼし得ることを認識する(その疾患もしくは障害の重篤度、以前の処置、その被験体の全身的な健康状態および/もしくは年齢、ならびに存在する他の疾患が挙げられるが、これらに限定されない)。さらに、治療上有効な量の本明細書で記載される治療用組成物での被験体の処置は、1回の処置または一連の処置を含み得る。
【0236】
併用療法
本発明の組成物および関連方法は、他の治療剤の投与と組み合わせて使用され得る。これらとしては、DNase酵素、抗生物質、抗微生物物質、または他の抗体の投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0237】
いくつかの実施形態において、その方法および組成物は、本開示の組成物と相乗的に作用するデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素、例えば、DNaseを含む。DNaseは、DNA骨格におけるホスホジエステル結合の切断を触媒する任意の酵素である。十字型構造のみならず、DNAの種々の二次構造をも標的とすることが公知のDNase酵素の3つの非限定的な例としては、DNAse I、T4 EndoVIIおよびT7 Endo Iが挙げられる。ある種の実施形態において、バイオフィルムを不安定化するために必要とされる抗DNABII抗体の有効量は、DNaseと組み合わされた場合に低減される。インビトロで投与される場合、そのDNaseは、そのアッセイに直接的に、またはその酵素を安定化することが公知の適切な緩衝液中に、添加され得る。DNaseの有効単位用量およびアッセイ条件は変動し得、当該分野で公知の手順に従って最適化され得る。
【0238】
他の実施形態において、その方法および組成物は、抗生物質および/または抗微生物物質と組み合わされ得る。抗微生物物質は、微生物(例えば、細菌、真菌、または原生動物)を殺滅するかまたはその増殖を阻害する物質である。バイオフィルムは、抗生物質の作用に対して概して耐性であるが、本明細書で記載される組成物および方法は、バイオフィルムが関わる感染を、感染を処置するための旧来からの治療法に敏感にするために使用され得る。他の実施形態において、本明細書で記載される方法および組成物との組み合わせでの抗生物質または抗微生物物質の使用は、抗微生物物質および/またはバイオフィルム低減薬剤の有効量の低減を可能にする。本発明の方法との組み合わせにおいて有用な抗微生物物質および抗生物質のいくつかの非限定的な例としては、ミノサイクリン、アモキシシリン、アモキシシリン-クラブラン酸(clavulanate)、セフジニル、アジスロマイシン、およびスルファメトキサゾール-トリメトプリムが挙げられる。そのバイオフィルム低減薬剤との組み合わせでの抗微生物物質および/または抗生物質の治療上有効な用量は、旧来の方法によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態において、そのバイオフィルム低減薬剤との組み合わせでの抗微生物薬剤の用量は、他の細菌感染(例えば、感染の原因論がバイオフィルムを含まない細菌感染)において有効であることが示された平均有効用量である。他の実施形態において、その用量は、その平均有効用量の0.1倍、0.15倍、0.2倍、0.25倍、0.30倍、0.35倍、0.40倍、0.45倍、0.50倍、0.55倍、0.60倍、0.65倍、0.70倍、0.75倍、0.8倍、0.85倍、0.9倍、0.95倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍または5倍である。その抗生物質または抗微生物物質は、その抗DNABII抗体の添加の前に、この抗体の添加と同時に、またはこの抗体の添加の後に、添加され得る。
【0239】
他の実施形態において、その方法および組成物は、その細菌感染を処置する抗体と組み合わされ得る。本明細書で記載される方法および組成物との組み合わせにおいて有用な抗体の一例は、関連しない外膜タンパク質(例えば、OMP P5)に対して指向される抗体である。この抗体単独での処置は、バイオフィルムをインビトロで減量(debulk)しない。この抗体およびバイオフィルム低減薬剤との併用療法は、同じ濃度において単独で使用されるいずれかの試薬によって達成され得るものより大きな効果を生じる。バイオフィルム低減薬剤またはバイオフィルムを低減する方法と組み合わされた場合に相乗効果を生じ得る他の抗体としては、抗rsPilA、抗OMP26、抗OMP P2、および抗完全OMP調製物が挙げられる。
【0240】
本明細書で記載される組成物および方法は、バイオフィルムが関わる細菌感染を、バイオフィルムなしの細菌感染を処置するにあたって有効であるが、他の点ではバイオフィルムが関わる細菌感染を処置するにあたって有効ではない一般的治療モダリティーに対して敏感にするために使用され得る。他の実施形態において、本明細書で記載される組成物および方法は、バイオフィルムが関わる細菌感染を処置するにおいて有効である治療モダリティーと組み合わせて使用され得るが、このようなさらなる治療およびバイオフィルム低減薬剤または方法の組み合わせは、そのバイオフィルム低減薬剤またはそのさらなる治療剤のいずれかの有効用量が低減され得るように相乗効果を生じる。他の場合には、このようなさらなる治療およびバイオフィルム低減薬剤または方法の組み合わせは、処置が増強されるように相乗効果を生じる。処置の増強は、その感染を処置するために必要とされる時間量がより短くなることによって証明され得る。
【0241】
さらなる治療的処置は、バイオフィルムを低減するために使用される方法または組成物の前に、またはこれらと同時に、またはこれらの後に追加され得、同じ製剤内で、または別個の製剤として、含まれ得る。
【0242】
抗体およびその誘導体
本開示はまた、本明細書で開示されるC23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1を結合するおよび/または特異的に認識する抗体を提供する。
【0243】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1もしくはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは、認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見出される。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示される抗体局面が、その言及される位置において1またはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;ならびにC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
【0244】
その抗体は、本明細書で記載される種々の抗体のうちのいずれかであり得、このようなものの非限定的な例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ベニヤ化抗体(veneered antibody)、ダイアボディー、ヒト化抗体、抗体誘導体、組換えヒト化抗体、またはこれらのうちの各々の誘導体もしくはフラグメントが挙げられる。一局面において、そのフラグメントは、その抗体のCDRを含むか、または代わりにそのCDRから本質的になるか、またはなおさらにそのCDRからなり、このようなものの例は、本明細書で提供される。一局面において、その抗体は、検出可能に標識されるか、またはその抗体に結合体化された検出可能な標識をさらに含む。本明細書で開示されるモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞株がまた、提供される。上記の実施形態のうちの1もしくはこれより多くを含むか、または代わりにこれら実施形態から本質的になるか、またはなおさらに、これら実施形態からなる組成物が、本明細書でさらに提供される。その抗体およびフラグメントのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、ならびにその抗体ポリペプチドおよびそのフラグメントを組換え生成するかまたは化学合成するための方法が、さらに提供される。その抗体ポリペプチドは、真核生物細胞もしくは原核生物細胞において、または当該分野で公知であり、本明細書で記載される他の方法によって生成され得る。
【0245】
抗体はまた、当該分野で公知でありかつ文献中に十分記載される従来技術を使用して生成され得る。ポリクローナル抗体の生成には、いくつかの方法論が存在する。例えば、ポリクローナル抗体は、代表的には、適切な哺乳動物(例えば、ニワトリ、ヤギ、モルモット、ハムスター、ウマ、マウス、ラット、およびウサギが挙げられるが、これらに限定されない)を免疫することによって生成される。抗原は、その哺乳動物へと注射され、Bリンパ球を誘導して、その抗原に対して特異的な免疫グロブリンを生成する。免疫グロブリンは、その哺乳動物の血清から精製され得る。この方法論のバリエーションとしては、アジュバントの改変、投与の経路および部位、部位ごとの注射容積ならびに最適な生産のための動物ごとの部位の数および動物の人道的取り扱いが挙げられる。例えば、アジュバントは、代表的には、抗原に対する免疫応答を改善または増強するために使用され得る。大部分のアジュバントは、流入領域リンパ節への抗原の流し込み放出(stow release)を可能にする注射部位抗原デポーを提供する。他のアジュバントは、大きな表面積に対するタンパク質抗原分子の濃縮を促進する界面活性剤および免疫刺激分子を含む。ポリクローナル抗体生成のためのアジュバントの非限定的な例としては、フロイントアジュバント、Ribiアジュバントシステム、およびTitermaxが挙げられる。ポリクローナル抗体は、当該分野で公知の方法を使用して生成され得、その方法のうちのいくつかは、米国特許第7,279,559号;同第7,119,179号;同第7,060,800号;同第6,709,659号;同第6,656,746号;同第6,322,788号;同第5,686,073号;および同第5,670,153号に記載される。
【0246】
モノクローナル抗体は、当該分野で公知であり、文献中に十分に記載される従来のハイブリドーマ技術を使用して生成され得る。例えば、ハイブリドーマは、適切な不死化細胞株(例えば、骨髄腫細胞株(例えば、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、P3X63Ag8,653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U397、MIA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 313、HL-60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2A、CHO、PerC.6、YB2/O)などが挙げられるが、これらに限定されない)、もしくはヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)、その融合生成物、またはこれらに由来する任意の細胞または融合細胞、あるいは当該分野で公知のとおりの任意の他の適切な細胞株(以下のウェブアドレス、例えば、atcc.org、lifetech.com(最終アクセス日:2007年11月26日)におけるものを参照のこと)と、抗体生成細胞(例えば、単離されたかもしくはクローニングされた脾臓、末梢血、リンパ、扁桃、または他の免疫もしくはB細胞含有細胞が挙げられるが、これらに限定されない)、あるいは重鎖もしくは軽鎖の定常領域もしくは可変領域もしくはフレームワークもしくはCDR配列を(内因性もしくは異種の核酸として、組換えもしくは内因性の、ウイルスの、細菌の、藻類の、原核生物の、両生類の、昆虫の、爬虫類の、魚類の、哺乳動物の、齧歯類の、ウマの、ヒツジの、ヤギの、ヒツジの、霊長類の、真核生物の、ゲノムのDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNAもしくはRNA、クロロプラストDNAもしくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、1本鎖、2本鎖もしくは3本鎖、ハイブリダイズしたなど、またはこれらの任意の組み合わせのいずれかとして)を発現する任意の他の細胞とを融合することによって生成され得る。抗体生成細胞はまた、末梢血から、または特定の実施形態において、目的の抗原で免疫されているヒトもしくは他の適切な動物の脾臓もしくはリンパ節から、得られ得る。任意の適切な宿主細胞はまた、本開示の、抗体、その特異的フラグメントもしくは改変体をコードする異種または内因性の核酸を発現するために使用され得る。融合した細胞(ハイブリドーマ)または組換え細胞は、選択的培養条件または他の適切な公知の方法を使用して単離され得、限界希釈もしくは細胞ソーティング、または他の公知の方法によってクローニングされ得る。
【0247】
必須の特異性の抗体を生成または単離する他の適切な方法が使用され得、組換え抗体をペプチドもしくはタンパク質ライブラリー(例えば、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、cDNAなどが挙げられるが、これらに限定されない)、ディスプレイライブラリー;例えば、種々の商業的供給業者(例えば、MorphoSys(Martinsreid/Planegg, Del.)、BioInvent(Lund, Sweden)、Affitech(Oslo, Norway))から入手可能な場合)から、当該分野で公知の方法を使用して選択する方法が挙げられるが、これらに限定されない。当該分野で公知の方法は、特許文献中に記載され、これら文献のうちのいくつかとしては、米国特許第4,704,692号;同第5,723,323号;同第5,763,192号;同第5,814,476号;同第5,817,483号;同第5,824,514号;同第5,976,862号が挙げられる。代替の方法は、当該分野で公知であるようにおよび/または本明細書で記載されるように、ヒト抗体のレパートリーを生成し得るトランスジェニック動物を免疫することに依拠する(例えば、SCIDマウス、Nguyenら. (1977) Microbiol. Immunol. 41:901-907 (1997); Sandhuら. (1996) Crit, Rev. Biotechnol. 16:95-118; Erenら. (1998) Mumma 93:154-161)。このような技術としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: リボソームディスプレイ(例えば、Wanesら. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4937-4942; Hanesら. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:14130-14135));単一細胞抗体生成技術(例えば、選択リンパ球抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wenら, (1987) J. Immunol 17:887-892; Babcookら. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-7848);ゲルマイクロドロップとフローサイトメトリー(Powellら. (1990) Biotechnol. 8:333-337;1細胞システム(Cambridge, Mass.); Grayら. (1995) J. Imm. Meth. 182:155-163;およびKennyら, (1995) Bio. Technol. 13:787-790);B細胞選択(Steenbakkersら. (1994) Molec. Biol. Reports 19:125-134)。
【0248】
本開示の抗体誘導体はまた、本明細書で開示される抗体またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを、適切な宿主に送達することによって(例えば、乳汁中にこのような抗体を生成するトランスジェニック動物または哺乳動物(例えば、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなど)に提供するために)、調製され得る。これらの方法は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,827,690号;同第5,849,992号;同第4,873,316号;同第5,849,992号;同第5,994,616号;同第5,565,362号;同および第5,304,489号に記載される。
【0249】
用語「抗体誘導体」は、その抗体またはフラグメントの直線状のポリペプチド配列に対する翻訳後修飾を含む。例えば、米国特許第6,602,684 B1号は、抗体(完全抗体分子、抗体フラグメント、または免疫グロブリンのFc領域に等価であり、増強されたFc媒介性細胞傷害性を有する領域を含む融合タンパク質、そのように生成された糖タンパク質を含む)の改変されたグリコール形態の生成のための方法を記載する。
【0250】
本明細書で開示される抗体はまた、共有結合的付着が、その抗体が抗イディオタイプ応答を生成することを妨げないように、その抗体への任意のタイプの分子の共有結合的付着によって改変される誘導体を含む。抗体誘導体としては、グリコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンドもしくは他のタンパク質への連結などによって改変された抗体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、その誘導体は、1もしくはこれより多くの非古典的アミノ酸を含み得る。
【0251】
抗体誘導体はまた、植物の一部またはこれらから培養された細胞においてこのような抗体、改変体の特定の部分を生成するトランスジェニック植物および培養された植物細胞(例えば、タバコ、トウモロコシ、およびウキクサが挙げられるが、これらに限定されない)を提供するために、本明細書で開示されるポリヌクレオチドを送達することによって調製され得る。例えば、Cramerら. (1999) Curr. Top. Microbol. Immunol. 240:95-118およびその中で引用される参考文献は、例えば、誘導性プロモーターを使用して、多量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉の生産を記載する。トランスジェニックトウモロコシは、商業生産レベルにおいて、他の組換えシステムにおいて生成されたかまたは天然の供給源から精製されたものに等価な生物学的活性を有する哺乳動物タンパク質を発現するために使用されている。例えば、Hoodら. (1999) Adv. Exp. Med. Biol. 464:127-147およびその中で引用される参考文献を参照のこと。抗体誘導体はまた、抗体フラグメント(例えば、1本鎖抗体(scFv’s)を含むトランスジェニック植物種子(タバコ種子およびジャガイモ塊茎が挙げられる)から多量に生成されている。例えば、Conradら. (1998) Plant Mol. Biol. 38:101-109およびその中で引用される参考文献を参照のこと。従って、抗体はまた、公知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して生成され得る。
【0252】
抗体誘導体はまた、例えば、免疫原性を改変するために、あるいは結合、親和性、オンレート(on-rate)、オフレート(off-rate)、結合力、特異性、半減期、もしくは任意の他の適切な特性を低減するか、増強するか、または改変するために外因性の配列を付加することによって生成され得る。一般に、非ヒトまたはヒトのCDR配列のうちの一部または全ては、その可変領域および定常領域の非ヒト配列がヒトまたは他のアミノ酸と置き換えられる一方で維持される。
【0253】
一般に、そのCDR残基は、直接的に、そして大部分は実質的に、抗原結合に影響を及ぼすことに関与する。抗体のヒト化または操作(engineering)は、任意の公知の方法(例えば、米国特許第5,723,323号;同第5,976,862号;同第5,824,514号;同第5,817,483号;同第5,814,476号;同第5,763,192号;同第5,723,323号;同第5,766,886号;同第5,714,352号;同第6,204,023号;同第6,180,370号;同第5,693,762号;同第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,225,539号;および同第4,816,567号に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して行われ得る。
【0254】
抗体の一般的構造は、当該分野で公知であり、ここで簡潔にまとめられるのみである。免疫グロブリンモノマーは、ジスルフィド結合によって接続される2本の重鎖および2本の軽鎖を含む。各重鎖は、ジスルフィド結合を介して直接結合される軽鎖のうちの一方と対形成される。各重鎖は、定常領域(これは、抗体のアイソタイプに依存して変動する)および可変領域を含む。その可変領域は、3つの超可変領域(または相補性決定領域)を含み、これらはCDRH1、CDRH2およびCDRH3と称され、フレームワーク領域内で支持される。各軽鎖は、定常領域および可変領域を含み、その可変領域は、重鎖の可変領域に類似の様式でフレームワーク領域によって支持される3つの超可変領域(CDRL1、CDRL2およびCDRL3と称される)を含む。
【0255】
重鎖および軽鎖の各対の超可変領域は、標的抗原を結合し得る抗原結合部位を提供するために相互に協働する。重鎖および軽鎖の対の結合特異性は、その重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の配列によって規定される。従って、特定の結合特異性を生じるCDR配列のセット(すなわち、その重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の配列)が一旦決定されると、そのCDR配列のセットは、原則的に、同じ抗原結合特異性を有する異なる抗体を提供するために、任意の抗体定常領域と連結した任意の他の抗体フレームワーク領域内の適切な位置へと挿入され得る。
【0256】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体は、DNABIIタンパク質を、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12M未満の解離定数(KD)で結合する。
【0257】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体は可溶性Fabである。
【0258】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、そのHCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、そのHCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。
【0259】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体は全長抗体である。
【0260】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体はモノクローナル抗体である。
【0261】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体はキメラであるかまたはヒト化されている。
【0262】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体は、Fab、F(ab)’2、Fab’、scFv、およびFvからなる群より選択される
【0263】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体はFcドメインを含む。本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体はウサギ抗体である。本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。
【0264】
本明細書で提供される抗体の局面のうちのいくつかにおいて、その抗体は、ヒト抗体フレームワーク領域を含む。
【0265】
他の局面において、本明細書で提供される抗体のCDRにおける1もしくはこれより多くのアミノ酸残基は、別のアミノ酸で置換される。置換は、アミノ酸の同じファミリー内での置換であるという意味において「保存的(conservative)」であり得る。その天然に存在するアミノ酸は、以下の4つのファミリーへと分けられ得、保存的置換はそれらのファミリー内で起こる。
【0266】
1)塩基性側鎖を有するアミノ酸:リジン、アルギニン、ヒスチジン。
【0267】
2)酸性側鎖を有するアミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸。
【0268】
3)非電荷の極性側鎖を有するアミノ酸:アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン。
【0269】
4)非極性側鎖を有するアミノ酸:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン。
【0270】
別の局面において、1もしくはこれより多くのアミノ酸残基は、抗体の1もしくはこれより多くのCDRに付加されるかまたはそのCDRから欠失される。このような付加または欠失は、CDRのN末端もしくはC末端において、またはそのCDR内のある位置において起こる。
【0271】
アミノ酸の付加、欠失または置換によって抗体のCDRのアミノ酸配列を変動させることによって、種々の効果(例えば、標的抗原に対する増大した結合親和性)が得られ得る。
【0272】
このような変動させたCDR配列を含む本開示の抗体が、その開示された抗体と類似の特異性および感受性プロフィールでなお結合することは、認識されるべきである。これは、結合アッセイを通じて試験され得る。
【0273】
抗体の定常領域がまた、変動され得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ:IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)またはIgMのFc領域とともに提供され得る。定常領域配列の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
【0274】
ヒトIgD定常領域, Uniprot: P01880 配列番号37
【化78】
【0275】
ヒトIgG1定常領域, Uniprot: P01857 配列番号38
【化79-1】
【化79-2】
【0276】
ヒトIgG2定常領域, Uniprot: P01859 配列番号39
【化80】
【0277】
ヒトIgG3定常領域, Uniprot: P01860 配列番号40
【化81】
【0278】
ヒトIgM定常領域, Uniprot: P01871 配列番号41
【化82】
【0279】
ヒトIgG4定常領域, Uniprot: P01861 配列番号42
【化83-1】
【化83-2】
【0280】
ヒトIgA1定常領域, Uniprot: P01876 配列番号43
【化84】
【0281】
ヒトIgA2定常領域, Uniprot: P01877 配列番号44
【化85】
【0282】
ヒトIgκ定常領域, Uniprot: P01834 配列番号45
【化86】
【0283】
本明細書で提供される抗体のうちのいくつかの局面において、その抗体は、迅速な結合および細胞取り込みならびに/またはゆっくりとした放出を促進するために構造改変を含む。いくつかの局面において、そのDNABII抗体は、迅速な結合および細胞取り込みならびに/またはゆっくりとした放出を促進するために、抗体のCH2定常重鎖領域において欠失を含む。いくつかの局面において、Fabフラグメントは、迅速な結合および細胞取り込みならびに/またはゆっくりとした放出を促進するために使用される。いくつかの局面において、F(ab)’2フラグメントは、迅速な結合および細胞取り込みならびに/またはゆっくりとした放出を促進するために使用される。
【0284】
抗体、フラグメントおよびその等価物は、使用および/または貯蔵のための製剤を提供するために、キャリア(例えば、薬学的に受容可能なキャリア)または他の薬剤と組み合わされ得る。
【0285】
本開示のキメラ抗体、ヒト化抗体または霊長類化抗体は、標準的な分子生物学技術を使用して調製された参照モノクローナル抗体の配列に基づいて調製され得る。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、目的のハイブリドーマから得られ得、標準的な分子生物学技術を使用して非参照(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作され得る。例えば、キメラ抗体を作製するために、マウス可変領域が、当該分野で公知の方法を使用してヒト定常領域に連結され得る(米国特許第4,816,567号)。ヒト化抗体を作製するために、マウスCDR領域は、当該分野で公知の方法を使用してヒトフレームワークへと挿入され得る(米国特許第5,225,539号および米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号)。同様に、霊長類化抗体を作製するために、マウスCDR領域は、当該分野で公知の方法を使用して霊長類フレームワークに挿入され得る(WO 93/02108およびWO 99/55369)。
【0286】
部分的から完全までのヒト抗体を作製するための方法は、当該分野で公知であり、任意のこのような技術は、使用され得る。一実施形態によれば、完全ヒト抗体配列は、ヒト重鎖および軽鎖抗体遺伝子を発現するように操作されたトランスジェニックマウスにおいて作製される。このようなトランスジェニックマウスの多数の系統が作製されており、これらは、種々の抗体クラスを生成し得る。望ましい抗体を生成しているトランスジェニックマウスに由来するB細胞は、融合されて、望ましい抗体の連続生成のためにハイブリドーマ細胞株を作製し得る(例えば、Russelら. (2000) Infection and Immunity April 2000:1820-1826; Galloら. (2000) European J. of Immun. 30:534-540; Green (1999) J. of Immun. Methods 231:11-23; Yangら. (1999A) J. of Leukocyte Biology 66:401-410; Yang (1999B) Cancer Research 59(6):1236-1243; Jakobovits (1998) Advanced Drug Reviews 31:33-42; Green and Jakobovits (1998) J. Exp. Med. 188(3):483-495; Jakobovits (1998) Exp. Opin. Invest. Drugs 7(4):607-614; Tsudaら. (1997) Genomics 42:413-421; Sherman-Gold (1997) Genetic Engineering News 17(14); Mendezら. (1997) Nature Genetics 15:146-156; Jakobovits (1996) Weir’s Handbook of Experimental Immunology, The Integrated Immune System Vol. IV, 194.1-194.7; Jakobovits (1995) Current Opinion in Biotechnology 6:561-566; Mendezら. (1995) Genomics 26:294-307; Jakobovits (1994) Current Biology 4(8):761-763; Arbonesら. (1994) Immunity 1(4):247-260; Jakobovits (1993) Nature 362(6417):255-258; Jakobovitsら. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(6):2551-2555;および米国特許第6,075,181号を参照のこと)。
【0287】
本明細書で開示される抗体はまた、キメラ抗体を作製するために改変され得る。キメラ抗体は、抗体の重鎖および軽鎖の種々のドメインが、1より多くの種に由来するDNAによってコードされるものである。例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと。
【0288】
あるいは、本明細書で開示される抗体はまた、ベニヤ化抗体を作製するために改変され得る。ベニヤ化抗体は、1つの種の抗体の外側のアミノ酸残基が第2の種の外側のアミノ酸残基で賢明な方法で置き換えられるかまたは「ベニヤ化(veneered)」され、その結果、その第1の種の抗体がその第2の種において免疫原性でなく、それによって、その抗体の免疫原性を低減するものである。タンパク質の抗原性は、その表面の性質に主に依存することから、抗体の免疫原性は、別の哺乳動物種の抗体において通常は見出される残基とは異なる露出した残基を置き換えることによって低減され得る。外側の残基のこの賢明な置換は、内側ドメインに対して、またはドメイン間接触に対して、ほとんどまたは全く効果を有するべきでない。従って、リガンド結合特性は、可変領域フレームワーク残基に限定される質的変化の結論として、影響を受けないべきである。そのプロセスは、「ベニヤ化する(veneering)」といわれる。なぜなら抗体の外側表面または皮のみ、質が変化され、その支持残基は妨げられないままだからである。
【0289】
「ベニヤ化」のための手順は、Kabatら. (1987) Sequences of Proteins of Immunological interest, 第4版, Bethesda, Md., National Institutes of Healthによってコンパイルされたヒト抗体可変ドメインの利用可能な配列データ、このデータベースに対する更新、ならびに他のアクセス可能な米国および外国のデータベース(核酸およびタンパク質両方)を利用する。ベニヤ化抗体を生成するために使用される方法の非限定的例としては、EP 519596;米国特許第6,797,492号;およびPadlanら. (1991) Mol. Immunol. 28(4-5):489-498に記載されるものが挙げられる。
【0290】
用語「抗体誘導体」はまた、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントである「ダイアボディー(diabodies)」を含み、ここでフラグメントは、同じポリペプチド鎖の中で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(例えば、EP 404,097; WO 93/11161;およびHollingerら. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448を参照のこと)。その同じ鎖上にあるその2つのドメインの間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、そのドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対形成を余儀なくされ、2つの抗原結合部位を作製する(米国特許第6,632,926号(Chenら)もまた参照のこと。これは、親抗体の超可変領域へと挿入される1もしくはこれより多くのアミノ酸残基、およびその抗原に対する親抗体の結合親和性より少なくとも約2倍強い標的抗原に対する結合親和性を有する抗体改変体を開示する)。
【0291】
用語「抗体誘導体」はさらに、以下を含む:操作された抗体分子、フラグメントおよび単一ドメイン(例えば、scFv、dAbs、ナノボディー、ミニボディー、Unibodies、およびAffibodiesならびにHudson (2005) Nature Biotech 23(9):1126-36;米国特許出願公開US 2006/0211088;PCT公開WO 2007/059782;米国特許第5,831,012号。
【0292】
用語「抗体誘導体」はさらに、「直線状抗体(linear antibodies)」を含む。直線状抗体を作製するための手順は当該分野で公知であり、Zapataら. (1995) Protein Eng. 8(10):1057-1062に記載される。簡潔には、これらの抗体は、抗原結合領域の対を形成するタンデムEdセグメントの対(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直線状抗体は、二重特異的または一重特異的であり得る。
【0293】
本明細書で開示される抗体は、組換え細胞培養物から、公知の方法(プロテインA精製、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない)によって回収および精製され得る。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)はまた、精製に使用され得る。
【0294】
本開示の抗体は、天然に精製される生成物、化学合成手順の生成物、および真核生物宿主(例えば、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞が挙げられる)から、または代わりに上記に記載されるとおりの原核生物宿主から組換え技術によって生成される生成物を含む。多くの抗体生成システムは、Birch & Radner (2006) Adv. Drug Delivery Rev. 58:671-685に記載される。
【0295】
試験されている抗体が、タンパク質またはポリペプチドと結合する場合、その試験されている抗体および本開示によって提供される抗体は、等価である。試験されている抗体が、本明細書で開示される抗体がそのタンパク質またはポリペプチド(これとその抗体が通常反応性である)と結合するのを妨げるか否かを決定することによって、抗体が本明細書で開示される抗体と同じ特異性を有するか否かを過度に実験なしに決定することはまた、可能である。その試験されている抗体が、本明細書で開示されるモノクローナル抗体による結合における減少によって示されるように、本明細書で開示される抗体と競合する場合、その2つの抗体は、同じまたは密接に関連したエピトープに結合する可能性が高い。あるいは、本明細書で開示される抗体を、これが通常反応性であるタンパク質と予めインキュベートし、その試験されている抗体が、その抗原に結合する結合する能力において阻害されるか否かを決定することが可能である。その試験されている抗体が阻害される場合、おそらく、それは、本明細書で開示される抗体と同じまたは密接に関連したエピトープ的特異性を有する。
【0296】
用語「抗体」はまた、全ての免疫グロブリンアイソタイプおよびサブクラスの抗体を含むことが意図される。モノクローナル抗体の特定のアイソタイプは、最初の融合物から選択することによって直接的に調製され得るか、またはSteplewskiら. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8653またはSpiraら. (1984) J. Immunol. Methods 74:307に記載される手順を使用して、クラススイッチ改変体を単離するために、sib選択技術を使用することによって異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に調製され得るかのいずれかである。あるいは、組換えDNA技術が使用され得る。
【0297】
本明細書で記載されるモノクローナル抗体の特異性を有する他のモノクローナル抗体の単離はまた、抗イディオタイプ抗体を生成することによって、当業者によって達成され得る。Herlynら. (1986) Science 232:100。抗イディオタイプ抗体は、目的のモノクローナル抗体上に存在する特有の決定基を認識する抗体である。
【0298】
本明細書で開示されるいくつかの局面において、抗体を検出可能にまたは治療上標識することは、有用である。適切な標識は、上記に記載される。抗体をこれらの薬剤に結合体化するための方法は当該分野で公知である。例証のみの目的で、抗体は、検出可能な部分(例えば、放射活性原子、発色団、発蛍光団など)で標識され得る。このような標識された抗体は、診断技術のために、インビボで、または単離された試験サンプル中のいずれかで使用され得る。
【0299】
低分子量ハプテンへの抗体のカップリングは、アッセイにおいてその抗体の感度を増大させ得る。そのハプテンは、次いで、第2の反応によって特異的に検出され得る。例えば、ハプテン(例えば、アビジンと反応するビオチン)、またはジニトロフェノール、ピリドキサール、およびフルオレセイン(これらは、特異的抗ハプテン抗体と反応し得る)を使用することは一般的である。Harlow and Lane (1988)(前出)を参照のこと。
【0300】
本開示の抗体の可変領域は、VHおよび/もしくはVLのCDR 1、CDR 2および/もしくはCDR 3領域内のアミノ酸残基を変異させて、その抗体の1もしくはこれより多くの結合特性(例えば、親和性)を改善することによって、改変され得る。変異は、部位指向性変異誘発またはPCR媒介性変異誘発によって導入され得、抗体結合、または目的の他の機能的特性に対する効果は、適切なインビトロアッセイまたはインビボアッセイにおいて評価され得る。ある種の実施形態において、保存的改変が導入され、代表的にはCDR領域内の1個、2個、3個、4個または5個以下の残基が、質変化される。その変異は、アミノ酸置換、付加または欠失であり得る。
【0301】
フレームワーク改変は、例えば、1もしくはこれより多くのフレームワーク残基をその相当する生殖細胞系列配列へと「復帰変異させる(backmutating)」ことによって、免疫原性を減少させるために、抗体に対して行われ得る。
【0302】
さらに、本明細書で開示される抗体は、その抗体の1もしくはこれより多くの機能的特性(例えば、血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合、および/もしくは抗原依存性細胞傷害性)を質変化させるために、Fc領域内に改変を含むように操作され得る。このような改変としては、軽鎖および重鎖のアセンブリを促進するために、またはその抗体の安定性を増大もしくは低下させるためにヒンジ領域におけるシステイン残基の数を変化させること(米国特許第5,677,425号)ならびにその抗体の生物学的半減期を減少させるためにFcヒンジ領域におけるアミノ酸変異の数を変化させること(米国特許第6,165,745号)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0303】
さらに、本明細書で開示される抗体は、化学的に改変され得る。抗体のグリコシル化は、例えば、抗原に対するその抗体の親和性を増大させるために、抗体配列内の1もしくはこれより多くのグリコシル化部位を改変することによって質変化され得る(米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号)。あるいは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性を増大させるために、フコシル残基の低下した量を有する低フコシル化抗体または増大したバイセクト型GlcNac構造を有する抗体が、質変化したグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することによって得られ得る(Shieldsら, 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umanaら, 1999 Nat. Biotech. 17:176-180)。
【0304】
本明細書で開示される抗体は、抗体またはそのフラグメントと、ポリエチレングリコール(PEG)またはPEGの反応性エステルもしくはアルデヒド誘導体とを、1もしくはこれより多くのPEG基がその抗体または抗体フラグメントに付着される条件下で反応させることによって、生物学的半減期を増大させるためにpeg化され得る。抗体peg化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行われ得る。本明細書で使用される場合、用語「ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されたPEGの形態のうちのいずれか(例えば、モノ(C1-C10)アルコキシ-もしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミド)を包含することが意図される。そのpeg化されるべき抗体は、無グリコシル化抗体であり得る。タンパク質をpeg化するための方法は、当該分野で公知であり、本明細書で開示される抗体に適用され得る(EP 0154316およびEP 0401384)。
【0305】
さらに、抗体は、得られた分子の半減期を増大させるために、その抗体の抗原結合領域を血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)に結合体化または融合することによって、化学的に改変され得る。このようなアプローチは、例えば、EP 0322094およびEP 0486525に記載される。
【0306】
本開示の抗体またはそのフラグメントは、診断剤に結合体化され得、例えば、疾患の発生もしくは進行をモニターし、そして所定の処置レジメンの有効性を決定するために、診断上使用され得る。診断剤の例としては、種々のポジトロン断層撮影法を使用する、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射活性物質、陽電子放出金属、および非放射活性常時性金属イオンが挙げられる。その検出可能な物質は、抗体もしくはそのフラグメントに直接的に、またはリンカーを通じて間接的に、のいずれかで、当該分野で公知の技術を使用してカップリングまたは結合体化され得る。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の例としては、ルミノールが挙げられる。生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる。適切な放射活性物質の例としては、以下が挙げられる:125I、131I、インジウム-111、ルテチウム-171、ビスマス-212、ビスマス-213、アスタチン-211、銅-62、銅-64、銅-67、イットリウム-90、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、リン-33、スカンジウム-47、銀-111、ガリウム-67、プラセオジム-142、サマリウム-153、テルビウム-161、ジスプロシウム-166、ホルミウム-166、レニウム-186、レニウム-188、レニウム-189、鉛-212、ラジウム-223、アクチニウム-225、鉄-59、セレン-75、ヒ素-77、ストロンチウム-89、モリブデン-99、ロジウム-1105、パラジウム-109、プラセオジム-143、プロメチウム-149、エルビウム-169、イリジウム-194、金-198、金-199、および鉛-211。モノクローナル抗体は、その抗体に共有結合的に連結される二官能性キレート化剤の使用を通じて、放射性金属イオンと間接的に結合体化され得る。キレート化剤は、アミノ酸残基のアミノ基(amities)(Mearesら, 1984 Anal. Biochem. 142: 68-78);スルフヒドリル基(sulfhydral group)(Koyama 1994 Chem. Abstr. 120: 217262t)および炭水化物グループ(Rodwellら. 1986 PNAS USA 83: 2632-2636; Quadriら. 1993 Nucl. Med. Biol. 20: 559-570)を通じて付着され得る。
【0307】
さらに、本開示の抗体またはそのフラグメントは、治療剤に結合体化され得る。適切な治療剤としては、以下が挙げられる:タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体(例えば、カルボプラチン))、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC))、ジフテリア毒素および関連分子(例えば、ジフテリアA鎖およびその活性フラグメントおよびハイブリッド分子)、リシン毒素(例えば、リシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素)、コレラ毒素、志賀様毒素(SLT-I、SLT-II、SLT-IIV)、LT毒素、C3同素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ダイズBowman-Birkプロテアーゼインヒビター、Pseudomonas外毒素、アロリン()、サポリン、モデシン、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、Momordica charantiaインヒビター、クルシン、クロチン、Sapaonaria officinalisインヒビター、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリエトシン(restrietocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)毒素および混合毒素。
【0308】
さらなる適切な結合体化分子としては、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase、アンチセンス核酸、阻害性RNA分子(例えば、siRNA分子)、免疫刺激性核酸、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、および外部ガイド配列が挙げられる。アプタマーは、規定された二次構造および三次構造(例えば、ステム-ループまたはG-カルテット)へと折りたたまれる15~50塩基長の範囲の小さな核酸であり、小分子(例えば、ATP(米国特許第5,631,146号)およびテオフィリン(米国特許第5,580,737号))、および大分子(例えば、逆転写酵素(米国特許第5,786,462号)およびトロンビン(米国特許第5,543,293号))に結合し得る。リボザイムは、分子内または分子間のいずれかで化学反応を触媒し得る核酸分子である。リボザイムは、代表的には、その標的基質の、その後の切断に伴う認識および結合を通じて、核酸基質を切断する。三重鎖形成機能核酸分子は、三重鎖を形成することによって2本鎖または1本鎖核酸と相互作用し得、ここでDNAの3本の鎖は、ワトソン-クリックおよびフーグスティーン塩基対合の両方に依存する複合体を形成する。三重鎖分子は、高い親和性および特異性で標的領域に結合し得る。適切な結合体化分子は、バイオフィルム構造を作らないかまたは安定化しないことを条件として、DNAに結合する任意のタンパク質をさらに含み得る;このようなタンパク質のうちの少なくとも部分セットが、本明細書で開示される薬剤に対する結合の動態を促進し得ることは、想定される。
【0309】
機能的核酸分子は、標的分子が有する比活性のエフェクター、インヒビター、調節因子、および刺激因子として作用し得るか、またはその機能的核酸分子は、任意の他の分子とは無関係の新規活性を有し得る。
【0310】
治療剤は、非常に多数の利用可能な方法のうちのいずれかを使用して、直接的にまたは間接的に、その抗体に連結され得る。例えば、薬剤は、ジスルフィド結合形成を介して、N-スクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のような架橋剤を使用して、または抗体のFc領域における炭水化物部分を介して、還元された抗体構成要素のヒンジ領域に付着され得る(Yuら. 1994 Int. J. Cancer 56: 244; Upeslacisら, 「Modification of Antibodies by Chemical Methods」, in Monoclonal antibodies: principles and applications, Birchら. (編), 第187~230頁(Wiley-Liss, Inc. 1995); Price, 「Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies」, in Monoclonal antibodies: Production, engineering and clinical application, Ritterら. (編), 第60~84頁(Cambridge University Press 1995))。
【0311】
治療剤を抗体に結合体化するための技術は周知である(Amonら, 「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら. (編), pp. 243-56(Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstromら, 「Antibodies For Drug Delivery」, in Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら. (編), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」, in Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら. (編), pp. 475-506 (1985); 「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら. (編), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpeら, 「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」 1982 Immunol. Rev. 62:119-58)。
【0312】
本明細書で開示される抗体またはその抗原結合領域は、少なくとも2もしくはこれより多くの異なる結合部位もしくは標的分子に結合する二重特異的もしくは多重特異的分子を生成するために、別の機能的分子(例えば、別の抗体またはリガンド)に連結され得る。その抗体を、1もしくはこれより多くの他の結合分子(例えば、別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドもしくは結合模倣物)に連結することは、例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、または非共有結合的会合によって行われ得る。多重特異的分子は、第1および第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含み得る。
【0313】
二重特異的および多重特異的分子は、当該分野で公知の方法を使用して調製され得る。例えば、その二重特異的分子(hi-specific molecule)の各結合ユニットは、別個に生成され得、次いで、互いに結合体化され得る。その結合分子がタンパク質またはペプチドである場合、種々のカップリング剤または架橋剤は、共有結合的結合体化に使用され得る。架橋剤の例としては、以下が挙げられる:プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-I-カルボキシレート(スルホ-SMCC)(Karpovskyら, 1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liuら, 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648)。その結合分子が抗体である場合、それらは、その2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によって結合体化され得る。
【0314】
本明細書で開示される抗体はまた、その標的抗原のイムノアッセイまたは精製に特に有用である固体支持体に付着され得る。このような固体支持体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルクロリドまたはポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0315】
その抗体はまた、多くの異なるキャリアに結合され得る。従って、本開示はまた、その抗体および別の物質(活性または不活性)を含む組成物を提供する。周知のキャリアの例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が挙げられる。そのキャリアの性質は、本明細書で開示される目的のために、可溶性または不溶性のいずれかであり得る。当業者は、モノクローナル抗体を結合するための他の適切なキャリアについて知っているか、または慣用的な実験を使用して確認し得る。
【0316】
本明細書で開示される抗体が、本明細書で開示されるポリペプチドを精製するために、ならびに生物学的に等価なポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを同定するために使用され得る。それらはまた、本明細書で開示されるポリペプチドの機能を改変する薬剤を同定するために使用され得る。これらの抗体は、ポリクローナル抗血清、モノクローナル抗体、および当業者が精通し、上記で記載されるこれらの調製物に由来する種々の試薬が挙げられる。
【0317】
同定される遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を中和する抗体はまた、このような中和抗体をインビボおよびインビトロの試験システムに添加することによって、機能を示すためにインビボおよびインビトロで使用され得る。それらはまた、本明細書で開示されるポリペプチドの活性を調節するために、薬剤として有用である。
【0318】
種々の抗体調製物はまた、インビトロまたはインビボで細胞を試験することによって、同定された遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を示すために、ELISAアッセイまたはウェスタンブロットのような分析法において使用され得る。代謝の間のプロテアーゼ分解によって生成されるこのようなタンパク質のフラグメントはまた、実験サンプルに由来するサンプルととともに適切なポリクローナル抗血清を使用することによって同定され得る。
【0319】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される抗体は、バイオフィルムを可視化および/または検出するために使用され得る。このような実施形態において、その抗体は、例えば、放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素、蛍光タンパク質などで検出可能に標識されてもよいし、他の部分(例えば、特異的結合対のメンバー(例えば、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対のメンバー)など)に結合体化されてもよい。次いで、検出可能に標識された抗体は、バイオフィルムがコロニー形成していると疑われるサンプルに導入され得、そして顕微鏡法または関連した標識を検出することが公知の他の方法(例えば、分光法、サイトメトリー、または他の一般的技術)を通じて可視化および/または検出され得る。結合体化した抗体または非標識抗体は、それぞれ、その結合体化された部分または抗体を標的化する公知の分析法を通じて、同様に同定され得る。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される抗体のアイソタイプに特異的な、検出可能に標識された二次抗体が、バイオフィルムの可視化および/または検出において使用され得る。
【0320】
キット
本明細書で記載されるとおりのインビトロおよびインビボでの方法を行うために必要な薬剤および説明書を含むキットがまた、請求される。よって、本発明は、本明細書で開示される改変high mobility group-box 1ドメイン、および本発明の方法(例えば、組織を集めるおよび/またはスクリーニングを行うおよび/または結果を分析するおよび/または本明細書で定義されるようにその有効量を投与する)を実施するための説明書を含み得る、これらの方法を行うためのキットを提供する。これらは、単独で、または他の適切な抗微生物薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0321】
一実施形態において、本開示は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインを含むポリペプチド、ならびにバイオフィルムを破壊する、またはバイオフィルムを生成する微生物感染を阻害するか、防止するかもしくは処置することにおいて使用するための説明書を含むキットを提供する。C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1ドメインの例は、上記で記載される。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C45Sを含む。いくつかの実施形態において、その改変high mobility group-box 1ドメインは、置換C23S、C45S、およびC106Sを含む。一実施形態において、そのキットはさらに、アジュバント、抗原性ペプチドまたは抗微生物物質のうちの1またはこれより多くを含む。さらに別の実施形態において、上記キットは、液体キャリア、薬学的に受容可能なキャリア、固相キャリア、薬学的に受容可能なキャリア、インプラント、ステント、パスタ剤、ゲル、歯科インプラントまたは医療用インプラントの群から選択されるキャリアをさらに含む。
【0322】
改変high mobility group-box 1ドメインに対する等価物の中には、改変high mobility group box 1のC23S、C45S、およびC106Sに相当する1またはこれより多くのアミノ酸位置においてシステインからセリンへの置換を含む、改変high mobility group-box 2、改変high mobility group-box 3、および改変high mobility group-box 4があることは認識される。改変high mobility group-box 2に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および106位において見出される;改変high mobility group-box 3に関しては、その相当するシステイン残基は、23位、45位、および104位において見出される;そして改変high mobility group-box 4に関しては、その相当するシステイン残基は、45位、104位、164位、および178位において見出される。従って、出願人は、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 1に関して開示されるキット局面が、その言及される位置において1またはこれより多くのシステインからセリンへの置換を有する前述のhigh mobility group-box種(例えば、C23S、C45S、およびC106Sの群から選択される1もしくはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 2;C23S、C45S、およびC104Sの群から選択される1またはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 3;ならびにC45S、C104S、C164S、およびC178Sの群から選択される1またはこれより多くの置換を含む改変high mobility group-box 4)に等しく適用可能であると考える。
【0323】
以下の実施例は、例証することが意図されるが、本発明を限定することは意図されない。
【実施例】
【0324】
実施例1 - mHMGBI(C45S)試験
出願人は、播種時におよび24時間で、0.1μg/ml、1μg/mlおよび5μg/mlのHMGB1を、尿路病原性E. coli UTI89によって形成されたバイオフィルムに添加した。播種時および24時間で添加した場合に、UPECバイオフィルムの用量依存性破壊が観察された。この情報に基づいて、出願人は、これによって、バイオフィルムにおける微生物DNAへのデオキシリボ核酸B II(DNABII)ポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定するための方法を開示し、上記方法は、そのバイオフィルムにおける微生物DNAと、有効量の、C45S置換を含む改変high mobility group-box 1ドメイン(mHMGB1)を含む単離されたポリペプチドもしくは組換えポリペプチドとを接触させる工程であって、それによって、その微生物DNAへのDNABIIポリペプチドの結合を阻害するか、競合させるかまたは力価測定する工程を包含するか、または代わりにその工程から本質的になるか、またはなおさらにその工程からなる。接触させる工程は、インビトロまたはインビボにおいて達成され得る。そのバイオフィルムを促進するかまたは引き起こす生物の非限定的な例としては、Burkholderia cenocepacia、Enterobacter spp.、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium、尿路病原性Escherichia coli(UPEC)、無莢膜型Haemophilus influenzae(NTHI)、および/またはAggregatibacter actinomycetemcomitansのうちの1またはこれより多くが挙げられる。
【0325】
予備的結果
mHMGB1(C45S)は、多数のヒト病原体に対してインビトロでその抗バイオフィルム機能を保持する
改変体HMGB1(mHMGB1(C45S))の抗バイオフィルム機能を決定するために、出願人は、ヒト組換えHMGB1(rHMGB1)および組換え改変体HMGB1(mHMGB1(C45S))を、E.coliにおいて発現および精製した。表1において示されるとおりの多数のヒト病原体によって形成された、インビトロで行った24時間バイオフィルムを、5μg/ml rHMGB1またはmHMGB1(C45S)とともに16時間インキュベートした。Enterococcus faeciumバイオフィルムを、20μg/ml rHMGB1またはmHMGB1(C45S)とともに16時間インキュベートした。バイオフィルムを洗浄し、LIVE/DEAD(登録商標)染色で染色し、共焦点レーザー走査型顕微鏡およびCOMSTAT分析を使用して分析した。出願人は、mHMGB1(C45S)が、コントロールと比較して、平均厚およびバイオマスにおいて有意な低減によって示されるとおり、インビトロで予め形成されたバイオフィルムの各々を破壊するにあたって有効であることを観察した(表1)。表1に示されるように、mHMGB1(C45S)の抗バイオフィルム活性はまた、rHMGB1のものに匹敵した。これらのデータは、45位においてシステインをセリンに置換することは、ヒト組換えHMGB1の抗バイオフィルム活性を質変化させないことを示唆した。
【0326】
mHMGB1(C45S)は、2つの異なる動物モデルにおいてインビボでその抗バイオフィルム機能を保持するが、その炎症応答は有意に弱められる
mHMGB1(C45S)の抗バイオフィルム機能をインビボで試験するために、出願人は、2つの異なる動物モデルを使用した。第1のモデルにおいて、出願人は、rHMGB1およびmHMGB1(C45S)が、実験的OMの、出願人が十分に確立したチンチラモデルにおいて行ったNTHIバイオフィルムを一掃する能力を試験した(Novotnyら. 2011; 2013b; Novotnyら. 2016)。出願人は先ず、チンチラ中耳において4日間にわたってNTHI株86-028NPバイオフィルムを確立した。次いで、出願人は、その4日齢のNTHIバイオフィルムを、2用量(4日目および5日目; 各5μg)のrHMGB1、mHMGB1(C45S)または希釈剤で処置した。6日目に動物を屠殺し、その中耳を、任意の残っているバイオフィルムの存在について盲検的にスコア付けした。希釈剤で処置した動物は、中耳において厚みのある粘膜バイオフィルムを示した(
図1A~1B)。顕著なことに、rHMGB1およびmHMGB1(C45S)は、認識できる骨性隔壁によって示されるように、そのバイオフィルムを中耳から一掃するにあたって非常に有効であった(
図1A~1B)。第2のモデルにおいて、出願人は、rHMGB1およびmHMGB1(C45S)が、マウス気道においてBurkholderia cenocepaciaのバイオフィルム発生を阻害する能力を試験した。C57BL/6マウスに、10
7 CFUのB.cenocepaciaを気道内で感染させ、5μgのrHMGB1またはmHMGB1(C45S)を同時に添加した。18時間後にその動物を屠殺し、気管支肺胞洗浄液(BAL)および肺を集めた。CFU(
図2A)、全炎症性浸潤(
図2B)、および全浸潤好中球(
図2C)を、BALにおいて計数した。rHMGB1およびmHMGB1(C45S)は、コントロールと比較した場合、BALにおける細菌負荷を低減するにあたって有効であった(
図2A)。rHMGB1は、全炎症性浸潤および好中球の増大から明らかであるように強い炎症性応答を起こしたが、mHMGB1(C45S)は、有意に弱い炎症性応答を示した(
図2B、
図2C)。出願人はまた、感染および処置の72時間後における肺損傷を評価したところ、rHMGB1で処置した肺は重篤な炎症および増大した好中球応答を示す一方で、mHMGB1(C45S)で処置した肺は非感染マウス肺により似ていることを観察した(
図2D)。最後に、出願人は、インビボ化学走性モデルにおいてrHMGB1およびmHMGB1(C45S)の炎症活性を検証して、好中球を動員する能力を決定した(Orlovaら. 2007; Penzoら. 2010)。C57BL/6マウスに、mHMGB1(C45S)もしくはrHMGB1のいずれか5μg、または1mlの4% チオグリコレートを注射した。4時間後、マウスを屠殺し、腹腔洗浄液中の全好中球を定量した。
図3において明らかなように、rHMGB1が腹腔への好中球動員を誘導したのに対して、mHMGB1(C45S)は、好中球を動員しなかった。まとめると、これらの結果は、mHMGB1(C45S)が、rHMGB1の望ましくない炎症促進活性なしに、細菌のクリアランスを促進することを示した。
【表1】
【0327】
HMGB1アイソフォーム(5μg/ml)を、24時間において、インビトロで行った細菌バイオフィルムに添加した。接種の16時間後(合計40時間)、バイオフィルムを洗浄し、LIVE/DEAD(登録商標)で染色し、続いて、CLSMを使用して可視化した。バイオフィルムをComstatによって分析して、平均厚a(AT)およびバイオマスa(BM)を計算した。
【0328】
さらなる実験を、mHMGB1(C45S)の効果を確認するために行った(
図4~7)。
【0329】
実施例2 - 三重変異HMGB1(C23S、C45S、およびC106S)および他の改変体
出願人は、C23S、C45S、およびC106S置換を含む三重変異HMGB1および他の改変体(例えば、C23S単独を、C23SおよびC45Sを、C23SおよびC106Sを、C45SおよびC106Sを、ならびにC106S単独を含むHMGB1改変体が挙げられるが、これらに限定されない)を生成する。これらの改変high mobility group-box 1ドメインは、実施例1と同じ方法に従って有効性について試験される。本明細書で開示されるHMGB2改変体、HMGB3改変体、およびHMGB4改変体(すなわち、その配列が本明細書中上記で提供される一重、二重、三重および四重変異体)について同目的の実行が行われる。
【0330】
均等物
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0331】
本明細書で例証として記載される本技術は、本明細書で具体的に開示されないいかなる要素、限定の存在下でも適切に実施され得る。従って、例えば、用語「含む、包含する(comprising)」「含む、包含する、挙げられる(including)」、「含む(containing)」などは、広くかつ限定なしに読まれるものとする。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、説明の用語として使用されているのであって、限定として使用されているのではなく、このような用語および表現の使用において、示され、記載される特徴またはその一部の任意の均等物を排除するという意図は全くないが、種々の改変が、請求される本技術の範囲内で可能であることは認識される。
【0332】
従って、ここで提供される材料、方法、および例は、好ましい局面の代表であり、例示であり、そして本技術の範囲に対する限定として意図されないことは、理解されるべきである。
【0333】
本技術は、本明細書で広くかつ包括的に記載されている。包括的な開示の範囲内に入るより狭い種および下位の包括的グルーピングの各々はまた、本技術の一部を形成する。これは、任意の主題をその属から削除するという但し書きまたは消極的な限定とともに、その削除される材料が本明細書で具体的に記載されているか否かに拘わらず、本技術の包括的記載を含む。
【0334】
さらに、本技術の特徴または局面がマーカッシュグループの表現で記載される場合、当業者は、本技術がまた、それによってマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの表現で記載されることを認識する。
【0335】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、各々が個々に参考として援用されるのと同程度まで、それらの全体において本明細書に参考として明示的に援用される。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先する。
【0336】
他の局面は、以下の請求項の範囲内に記載される。
参考文献
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