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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】チップパッケージ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20241202BHJP
   G01R 33/06 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R33/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020008083
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021117004
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-12-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 佳
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】佐々木 祐
【審判官】濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-366771(JP,A)
【文献】特開平11-283834(JP,A)
【文献】特開2006-54207(JP,A)
【文献】特開平10-22545(JP,A)
【文献】特開2008-147509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0037641(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0015249(US,A1)
【文献】特開2008-96261(JP,A)
【文献】特開2005-294469(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141663(WO,A1)
【文献】特開2017-54758(JP,A)
【文献】特開2004-325830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界センサと、
成形回路部品である直方体のチップ筐体と、を有し、
前記チップ筐体は、4つの外面にまたがってソレノイドコイルが巻回され、前記ソレノイドコイルの磁界方向にそった孔があり、前記孔の内部に前記磁界センサが配置されており、前記ソレノイドコイルと接続されている複数の第1の電極パッドと、前記磁界センサと接続されている複数の第2の電極パッドとが、1つの実装面に配設されており、
前記磁界センサは、前記孔の壁面から延設された梁によって支えられているセンサ搭載部の前記磁界方向に垂直な搭載面に実装されており、
前記孔の壁面に、前記磁界センサと前記複数の第2の電極パッドとを接続する複数の配線が配設されていることを特徴とするチップパッケージ。
【請求項2】
前記実装面は、前記ソレノイドコイルが巻回されている前記4つの外面のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のチップパッケージ。
【請求項3】
前記実装面は、前記ソレノイドコイルが巻回されている前記4つの外面と直交する外面であることを特徴とする請求項1に記載のチップパッケージ。
【請求項4】
前記孔に、軟磁性体粉末を含む樹脂が、充填されていることを特徴とする請求項1に記載のチップパッケージ。
【請求項5】
前記ソレノイドコイルに流れる電流を検出する電流検出装置であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチップパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、チップパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、磁界検出型の電流検出装置は、検出すべき電流がコイルに流れると、コイルが発生した磁界を磁界センサにより検出することによって電流を検出する。電流検出装置の検出感度を向上するには、コイルの巻数を増加することが有効である。
【0003】
多層プリント配線板の複数の下層導体線と複数の上層導体線とをそれぞれのスルホールを介して接続することによって、巻数の多いソレノイドコイルを作製することができる。
【0004】
しかし、スルホールを有するソレノイドコイルは、スルホールにおける電気抵抗が高い。このため、発熱したり、電流検出装置の性能が低下したりするおそれがある。また、下層導体層と上層導体層との間に磁界センサを配置することは容易ではない。
【0005】
また、電流検出装置等においては、配線板への配置自由度が高く、実装が容易なチップパッケージ化が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-185914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高性能で小型のチップパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のチップパッケージは、磁界センサと、成形回路部品である直方体のチップ筐体と、を有し、前記チップ筐体は、4つの外面にまたがってソレノイドコイルが巻回され、前記ソレノイドコイルの磁界方向にそった孔があり、前記孔の内部に前記磁界センサが配置されており、前記ソレノイドコイルと接続されている複数の第1の電極パッドと、前記磁界センサと接続されている複数の第2の電極パッドとが、1つの実装面に配設されており、前記磁界センサは、前記孔の壁面から延設された梁によって支えられているセンサ搭載部の前記磁界方向に垂直な搭載面に実装されており、前記孔の壁面に、前記磁界センサと前記複数の第2の電極パッドとを接続する複数の配線が配設されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のチップパッケージの斜視図である。
図2】第1実施形態のチップパッケージのコイルの構成を説明するための斜視図である。
図3】第1実施形態のチップパッケージのチップ筐体を説明するための斜視図である。
図4】第1実施形態のチップパッケージのチップ筐体を説明するための上面図である。
図5】第1実施形態の変形例のチップパッケージのチップ筐体を説明するための上面図である。
図6】第1実施形態の変形例のチップパッケージのチップ筐体を説明するための上面図である。
図7】第2実施形態のチップパッケージの斜視図である。
図8】第3実施形態のチップパッケージの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して第1実施形態のチップパッケージ1について詳細に説明する。
【0011】
なお、実施形態に基づく図面は、模式的であり、各部分の厚さと幅との関係、夫々の部分の厚さの比率および相対角度などは現実のものとは異なる。図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、一部の構成要素の図示および符号の付与を省略する。
【0012】
チップパッケージ1は、電流を検出する電流検出装置である。チップパッケージ1は、例えば、PFC電源等の高周波スイッチング電源、AC/DCアダプタ、インバータまたはモーター可変速機器の制御装置、パワーモジュールに用いられるが、用途はこれらに限定されるものではない。
【0013】
図1および図2に示すように、チップパッケージ1は、磁界センサであるホール素子10と、直方体のチップ筐体(チップケース)20と、を有する。
【0014】
本実施形態のチップ筐体20は、樹脂成形品に配線パターンが形成された回路成形部品(MID:Molded Interconnect Device)である。例えば、金型で射出成形した樹脂の表面に、めっき法によって配線パターンが配設されている。
【0015】
チップ筐体20は、配線パターンであるソレノイドコイル21が、4つの外面20SA1~20SA4にまたがって、螺旋状に巻回されている。ソレノイドコイル21は、例えば、銅めっき膜からなる薄膜コイルである。ソレノイドコイル21は、導体ワイヤが巻回されたソレノイドコイルよりも小型で、かつ、製造が容易である。なお、ソレノイドコイル21の内部における磁界は均一であり、その磁界方向Mは、コイルの巻回方向(図のZ軸方向)である。
【0016】
巻数(ターン数)がNのコイル(Nターンコイル:Nは整数)は、巻数が1のコイル(1ターンコイル)と比べると、電気抵抗RはN倍となるが、同じ電流が流れた時に、N倍の磁界を発生する。磁界強度は、ターン数Nと電流Iとの積に比例する。このため、逆に言えば、1ターンコイルと同じ強さの磁界Bを発生するために、Nターンコイルに流す電流Iは、1ターンコイルに流す電流Iの1/Nでよい。
【0017】
コイルの発熱量(損失)Pと、電流Iと、抵抗Rとは、以下の(式1)の関係がある。
P=IR (式1)
【0018】
このため、巻数が多いコイルは、巻数が少ないコイルよりも、抵抗Rが高いが、電流Iを小さくできるため、発熱量(損失)Pが小さい。このため、巻数が多いコイルは、特に大電流が流れるコイルにおいては効果が顕著である。
【0019】
さらに、スルホール接続部を有していないソレノイドコイル21は、抵抗Rが低いため、損失が小さく高性能である。
【0020】
ホール素子10は、ソレノイドコイル21に流れる電流を検出する。検出する電流は、直流または交流である。
【0021】
ホール素子10に電流を流し、電流の向きと直交方向に磁界が印加されると、電流の担い手であるキャリアがローレンツ力の影響を受ける。ローレンツカにより、電流および磁界の向きに対して直交方向の電圧(ホール電圧)が発生する。ホール素子10は、ホール電圧を検知することにより、磁界を検知する。ホール電圧は、磁界強度に比例して増加する。
【0022】
図3および図4に示すように、本実施形態のチップ筐体20には、ソレノイドコイル21が巻回されている4つの外面20SA1~20SA4と直交する2つの外面20SA5、20SA6に、それぞれ開口のある孔H20がある。なお、図3においては、ソレノイドコイル21等は図示していない。また、図4の斜線領域は、外面20SA5から外面20SA6まで貫通している空間を示しており、孔H20の壁面の配線27(図1図2参照)は図示していない。
【0023】
孔H20は、ソレノイドコイル21の磁界方向Mにそって形成されている。そして、孔H20の中にセンサ搭載部25が配置されている。センサ搭載部25は孔H20の壁面から延設された4本の梁によって支えられている。
【0024】
センサ搭載部25の磁界方向Mに垂直な搭載面25SAにホール素子10が実装されている。すなわち、ホール素子10の複数の外部電極(不図示)がセンサ搭載部25の複数の電極パッド26と接合されている。
【0025】
ソレノイドコイル21の端部と接続されている第1の電極パッド22A、22Bと、ホール素子10と接続されている第2の電極パッド22C~22Fとは、いずれも、チップ筐体20の実装面である外面20SA1に配設されている。
【0026】
ホール素子10と4つの第2の電極パッド22C~22Fとを接続する4本の配線27は、孔H20の壁面H20SAに配設されている。配線27は、例えば、銅めっき膜からなる薄膜配線である。
【0027】
実装面は、ソレノイドコイル21が巻回されている4つの外面20SA1~20SA4のいずれかであればよい。すなわち、チップパッケージ1は、全ての外部接続用の電極パッド22A~22Fが1つの外面に配設されている表面実装型のチップ部品である。
【0028】
第1の電極パッド22A、22Bおよび第2の電極パッド22C~22Fは、例えば、銅からなるソレノイドコイル21の端部に、バリアニッケル層を介して半田層が配設されている。
【0029】
本実施形態のチップパッケージ1は、複数回巻回されているソレノイドコイル21が発生した磁界を検出するため、検出感度が高く、高性能である。また、外面にソレノイドコイル21が巻回されているチップ筐体20の内部の磁界方向Mに垂直な搭載面25SAにホール素子10が実装されているため、チップパッケージ1は、製造が容易である。さらに、チップパッケージ1は小型であり、表面実装型のチップ部品であるため、配線板への配置自由度が高く、実装が容易である。
【0030】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態のチップ筐体20は、ソレノイドコイル21が巻回されている4つの外面20SA1~20SA4と直交する外面20SA5、20SA6が矩形の完全な直方体である。しかし、チップ筐体は、外面20SA5、20SA6の4つの角部の少なくともいずれかが、直線または曲線になるように面取りされている略直方体でもよい。すなわち、本発明における「直方体」は完全な直方体を意味するものではない。面取りされているチップ筐体は、ソレノイドコイル21が角部で断線しにくいため、製造が容易で信頼性が高い。
【0031】
また、図5に示す変形例のチップ筐体20Aのセンサ搭載部25Aは、孔H20の壁面から延設された2本の梁によって支えられている。
【0032】
図6に示す変形例のチップ筐体20Bのセンサ搭載部25Bは、円筒形の孔H20Bの壁面の一部に貫通孔を残すように配設されている。また、ホール素子10Bは、磁界方向Mに対して垂直方向の検出面が円形である。すなわち、センサ搭載部およびホール素子の形状は特に限定されるものではない。
【0033】
なお、ソレノイドコイル21の内部の磁界は均一であるために、磁界の中心軸とホール素子10の中心とが一致していなくともよい。
【0034】
センサ搭載部25Bの電極パッド26の数、すなわち、ホール素子の電極数は4個に限定されるものではない。チップパッケージ1は、外部接続用の電極パッド22A~22Fの領域を除く外面が、絶縁樹脂によって覆われていてもよい。また、ホール素子10を搭載面25SAに実装した後に、孔H20に樹脂が充填されてもよい。
【0035】
<第2実施形態>
本実施形態のチップパッケージ1Aは、チップパッケージ1と類似している。このため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0036】
図7に示すチップパッケージ1Aでは、第1の電極パッド22A、22Bと第2の電極パッド22C~22Fとが配設されているチップ筐体20Aの実装面は、ソレノイドコイル21が巻回されている4つの外面20SA1~20SA4と直交する外面20SA5である。第1の電極パッド22Bとソレノイドコイル21とは孔H20の壁面の配線27によって接続されている。チップ筐体20Aの外面に配線が配設されていてもよい。
【0037】
チップパッケージ1Aは、チップパッケージ1と同じように、いずれか1つの外面に全ての外部接続用の電極パッド22A~22Fが配設されているため、配線板に表面実装できる。なお、チップパッケージの外部接続用の電極パッドの数は6個に限定されるものではなく、6個未満または6個超でもよい。
【0038】
<第3実施形態>
本実施形態のチップパッケージ1Bは、チップパッケージ1と類似している。このため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0039】
図8に示すチップパッケージ1Bでは、孔H20に、軟磁性体粉末を含む樹脂30が充填されている。ソレノイドコイル21が発生する磁界の強度(磁束密度:B)は、内部の透磁率μに比例する。例えば、フェライトからなる軟磁性体粉末を含む樹脂30が充填されているソレノイドコイル21は、空芯または樹脂だけが充填されているソレノイドコイル21(磁場強度:H)よりも大きな磁界Bを発生する(B=μH)。
【0040】
このため、チップパッケージ1Bは、チップパッケージ1よりも、高感度、高効率である。
【0041】
チップパッケージ1Aにおいても、孔H20に、軟磁性体粉末を含む樹脂30が充填されていれば、チップパッケージ1Bと同じ効果を有する。
【0042】
以上述べた少なくともひとつの実施形態または変形例のチップパッケージによれば、4つの外面にまたがってソレノイドコイルが巻回され、内部に前記磁界センサが配置されており、全ての外部接続用の電極パッドが、1つの実装面に配設されているため、高性能で小型のチップパッケージを提供できる。
【0043】
磁界センサとしてホール素子を例に説明したが、磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いてもよいことは言うまでも無い。
【0044】
チップパッケージとして電流検出装置を例に説明したが、チップパッケージ1、1A、1Bは、絶縁カプラとしても使用できる。すなわち、ソレノイドコイル21を含む1次回路と、ホール素子10を含む2次回路とは、電気的に絶縁されている。
【0045】
ソレノイドコイル21と接続されている第1の電極パッド22A、22Bのいずれかを、送受信回路と接続することによって、チップパッケージ1、1A、1Bは、アンテナとしても使用できる。
【0046】
チップ筐体が成形回路部品のチップパッケージを例に説明したが、チップ筐体は、他の製造方法、例えば、3次元プリンタにて製造されてもよい。また、チップ筐体は、樹脂製に限られるものではなく、例えば、フェライト等の磁性体をチップ筐体とし、孔の内部に配置されたホール素子が実装面の電極パッドと導線ワイヤによって接続されていてもよい。
【0047】
発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B … チップパッケージ
10 … ホール素子
20 … チップ筐体
21 … ソレノイドコイル
22A、22B … 第1の電極パッド
22C~22F … 第2の電極パッド
25 … センサ搭載部
26 … 電極パッド
30 … 樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8