(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】検体検査支援装置、方法およびプログラム、
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
G01N33/543 521
(21)【出願番号】P 2020069072
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】水野 祐介
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛典
(72)【発明者】
【氏名】堀池 里美
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534557(JP,A)
【文献】国際公開第2019/215199(WO,A1)
【文献】特表2015-509594(JP,A)
【文献】特表2018-500557(JP,A)
【文献】特表2012-524279(JP,A)
【文献】特表2016-532077(JP,A)
【文献】特表2010-515877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 21/85-21/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の検体を抽出物により抽出して検査に供する状態にした検体液を受容する受容部と、
前記検体液の前記検体中
に検査対象物が含まれている場合に発色する少なくとも1つの検出部位と、当該検出部位に対し予め定められた位置関係を有して配置され、前記検体中の前記検査対象物の有無にかかわらず前記検体液に反応して発色する確認部位とを有する検出部と
を備える検査媒体から、前記検体中の前記検査対象物の検出結果を読み取る検体検査支援装置であって、
撮影装置により撮影された前記検査媒体を含む画像を取得する取得部と、
取得された前記画像から当該画像内における前記検出部位の位置を特定する位置特定部と、
特定された前記検出部位の位置に対応する画像から前記発色の状態を判定する判定部と、
前記発色の状態の判定結果に基づいて、前記検体中の前記検査対象物の検査結果を含む報告情報を生成する生成部と
を具備し、
前記検査媒体は、前記検出部の前記確認部位と所定の位置関係を有する位置に配置されたマーカを備え、
前記位置特定部は、取得された前記画像から前記マーカを認識し、認識された前記マーカの位置を基準に前記確認部位を認識し、認識された前記確認部位の位置を基準に前記検出部位の位置を特定する
検体検査支援装置。
【請求項2】
前記
判定部は、前記確認部位において前記発色が検出されたか否かを判定し、前記発色が検出されなかった場合には
、前記生成部による処理を行わずに、検査のやり直しを促すメッセージを出力する、
請求項1に記載の検体検査支援装置。
【請求項3】
前記検査媒体は、前記検出部が配置される検出領域を周辺部から区画する窓枠部を有し、前記マーカは前記窓枠部のエッジ部分に配置される、請求項1に記載の検体検査支援装置。
【請求項4】
前記マーカは、前記被検者を識別するためのコード情報を含み、
前記生成部は、認識された前記マーカの画像から前記コード情報を読み取り、読み取られた前記コード情報を前記報告情報に含める、
請求項1に記載の検体検査支援装置。
【請求項5】
前記検出部の発色の色見本となる複数の基準色データを記憶する第1の記憶媒体を、さらに具備し、
前記判定部は、特定された前記検出
部位の位置に対応する前記画像から前記検出
部位の発色の状態を示す色データを検出し、検出された前記色データを前記第1の記憶媒体に記憶された前記複数の基準色データと照合することにより、前記発色の状態を判定する、
請求項1に記載の検体検査支援装置。
【請求項6】
前記第1の記憶媒体は、前記複数の基準色データに対し、前記撮影装置または前記検体検査支援装置の画像処理性能に応じて設定された検出下限値を表す情報を、さらに記憶し、
前記判定部は、検出された前記色データが前記検出下限値に満たない場合に前記色データに対し判定不能と判定する、
請求項5に記載の検体検査支援装置。
【請求項7】
使用が想定される複数種の前記検査媒体の各々について、その構成の特徴および前記検出部の発色の仕様を表す仕様情報を記憶する第2の記憶媒体を、さらに具備し、
前記位置特定部は、前記仕様情報をもとに前記検査媒体の種類を判別し、判別された検査媒体の種類に対応する仕様情報に含まれる前記マーカと前記検出
部位との位置関係を表す情報に基づいて前記検出
部位の位置を特定し、
前記判定部は、判別された検査媒体の種類に対応する仕様情報に含まれる前記発色の仕様に基づいて前記発色の状態を判定する、
請求項1に記載の検体検査支援装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記発色の状態の判定結果に基づいて、前記被検者に前記検査結果を通知するための第1の報告情報を生成して出力する処理と、前記発色の状態の判定結果に基づいて、医療機関および前記検査媒体の製造または販売者の少なくとも一方に前記検査結果を通知するための第2の報告情報を生成する処理とを実行する、請求項1に記載の検体検査支援装置。
【請求項9】
前記生成部は、前記第1の報告情報として、前記発色の状態の判定結果に基づく前記検体中の検査対象物の検査結果を表す情報と、前記被検者に対する行動の支援情報とを含む報告情報を生成する、
請求項8に記載の検体検査支援装置。
【請求項10】
前記生成部は、前記第2の報告情報として、前記発色の状態の判定結果に基づく前記検体中の検査対象物の検出結果を表す情報と、前記被検者の識別情報と、前記被検者により入力される問診情報とを含む報告情報を生成する、
請求項8に記載の検体検査支援装置。
【請求項11】
前記受容部が前記検体液を受容した時点から前記検出
部位が発色するまでに要する反応時間よりも長く設定された待機時間を表す情報を記憶する第3の記憶媒体と、
前記取得部に対する動作開始要求が入力された時点から前記待機時間が経過した後に前記取得部による処理を開始させる待機制御部と
を、さらに具備する請求項1に記載の検体検査支援装置。
【請求項12】
被検者の検体を抽出物により抽出して検査に供する状態にした検体液を受容する受容部と、
前記検体液の前記検体中
に検査対象物が含まれている場合に発色する少なくとも1つの検出部位と、当該検出部位に対し予め定められた位置関係を有して配置され、前記検体中の前記検査対象物の有無にかかわらず前記検体液に反応して発色する確認部位とを有する検出部と、
前記検出部の前記確認部位と所定の位置関係を有する位置に配置されたマーカと
を備える検査媒体から、前記検体中の前記検査対象物の検出結果を読み取る検体検査支援装置が実行する検体検査支援方法であって、
前記検体検査支援装置は、
撮影装置により撮影された前記検査媒体を含む画像を取得し、
取得された前記画像から前記マーカを認識し、認識された前記マーカの位置を基準に前記確認部位を認識し、認識された前記確認部位の位置を基準に前記検出部位の位置を特定し、
特定された前記検出部位の位置に対応する画像から前記発色の状態を判定し、
前記発色の状態の判定結果に基づいて、前記検体中の検査対象物の検査結果を報告するための報告情報を生成する
検体検査支援方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかに記載の検体検査支援装置が具備する前記取得部、前記位置特定部、前記判定部
または前記生成
部の処理を、前記検体検査支援装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項11に記載の検体検査支援装置が具備する前記待機制御部の処理を、前記検体検査支援装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、例えばウィルス等の検体を判定するために用いられる検体検査支援装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インフルエンザウィルスの感染が疑われる場合、医療機関において早期に感染の有無を診断し適切な治療を受ける必要がある。ところが、多忙だったり、幼児や子供、高齢者のように連れ添いが必要な場合には、患者が医療機関を早期に受診できない場合がある。
【0003】
そこで、例えば、試験サンプルを試薬に反応させた試験片/筐体をスマートフォン等の携帯端末を利用して撮影し、その画像データをもとに試験結果を認識し出力する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。この技術を使用すると、感染が疑われる人が、例えば医療機関を受診する前に、自宅や職場等においてインフルエンザに感染しているか否かを確認することが可能となる。この結果、感染が確認された場合には、医療機関を受診するように即時行動を起こすことができ、重症化を防ぐことができる。一方、感染が確認されなければ、そのまま様子見をするといった対応が可能となり、これにより幼児や子供、高齢者の通院による負担および感染リスクを軽減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載された技術は、試薬を含む試験片/筐体の画像を取り込んで当該画像から試験結果を検出する際に、単に筐体内の試験結果領域をその輪郭をもとに特定し、この試験結果領域から試験結果を検出するようにしている。しかしながら、画像中試験片/筐体の回転位置が基準位置から大きくずれていたり、画像にゆがみがあると、上記試験結果領域の輪郭だけでは試験結果領域を特定することができず、試験結果の検出精度が低下するという課題がある。
【0006】
また、試験片/筐体を構成する素材等によっては、試験結果領域を撮影する際に反射が発生し、これにより試験結果を正しく検出できなくなるという課題もある。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、撮影画像から精度のよい検査結果を効率良く得ることを可能にした技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためにこの発明の一態様は、被検者の検体を抽出物により抽出して検査に供する状態にした検体液を受容する受容部と、受容された前記検体液の前記検体中に検査対象物が含まれる場合に当該検査対象物と反応して発色する少なくとも1つの検出部位、および当該検出部位に対し予め定められた位置関係を有して配置され前記検体中の前記検査対象物の有無にかかわらず前記検体液に反応して発色する確認部位を有する検出部と、前記検出部の前記確認部位と所定の位置関係を有する位置に配置されたマーカとを備える検査媒体から、前記検体中の前記検査対象物の検出結果を読み取る際に、検体検査支援装置が、撮影装置により撮影された前記検査媒体を含む画像を取得し、取得された前記画像から前記マーカを認識し、認識された前記マーカの位置を基準に前記確認部位を認識し、認識された前記確認部位の位置を基準に前記検出部位の位置を特定し、特定された前記検出部位の位置に対応する画像から前記発色の状態を判定し、前記発色の状態の判定結果に基づいて前記検体中の前記検査対象物の検査結果を含む報告情報を生成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の一態様によれば、検査媒体に配置されたマーカに基づいて先ず検出部の確認部位の位置が認識され、認識された前記確認部位の位置を基準に前記検出部位の位置が特定され、この検出部位の位置に対応する画像から発色の状態が判定される。このため、例えば検査媒体と撮影装置の位置関係により、撮影された画像中の検査媒体の位置や向きが基準位置または向きから大きくずれていたり、また画像にゆがみが生じていたとしても、上記検出部の位置を短時間に精度良く特定することが可能となる。
【0010】
すなわちこの発明の一態様によれば、撮影画像から精度のよい検査結果を効率良く得ることを可能にした技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る検体検査支援装置の一例である携帯端末を含む遠隔医療システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、検査媒体の一例である検査プレートの構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した携帯端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した携帯端末のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、
図3および
図4に示した携帯端末による検体検査処理の全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5に示した全体の処理手順のうち検査処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6に示した検査処理のうち判定対象部位特定処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図6に示した検査処理のうちライン色判定、判定結果保存処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図6に示した検査処理のうち検査報告情報生成・出力処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図2に示した検査プレートに設けられる検出窓部の複数の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、
図2に示した検査プレートに設けられる検出窓部の他の複数の構成を示す図である。
【
図12】
図12は、判定ラインの色判定に使用するしきい値の設定の根拠を説明するための、色見本に対する端末機種別の解析処理前の感度の測定例を示す図である。
【
図13】
図13は、判定ラインの色判定に使用するしきい値の設定の根拠を説明するための、色見本に対する端末機種別の解析処理後の感度の測定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0013】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る検体検査支援装置を含む遠隔医療システムの概略構成を示す図である。なお、一実施形態では、鼻汁等の生体由来試料を検体とし、当該検体中のインフルエンザウィルスの有無を判定することで、インフルエンザに対する罹患の有無を検査する場合を例にとって説明を行う。なお、インフルエンザウィルスの有無を検査する方法については、公知のイムノクロマト方式による検査キットを用いた方法が適宜使用できる。
【0014】
一実施形態のシステムは、検査媒体としての検査プレートTPと、検体検査支援装置としての機能を有する携帯端末TAと、当該携帯端末TAとの間でネットワークNWを介して通信が可能な医療機関の端末装置MTおよび検査薬メーカのサーバ装置DTとを備える。
【0015】
医療機関の端末装置MTは、例えばクラーク等が使用する受付端末、または医師または看護師等の医療スタッフが使用する医療端末からなり、携帯端末TAから送信される検査結果の報告情報(後に詳しく述べる)等を受信し、必要に応じて送信元の携帯端末TAに対し被検者の受診に係る種々の指示情報または注意情報を送信するために用いられる。なお、医療機関の端末装置MTには、据置型の端末に限らず、タブレット型端末やスマートフォン等の携帯型の端末が使用されてもよい。
【0016】
検査薬メーカのサーバ装置DTは、携帯端末TAから送信される検査結果の報告情報を収集して蓄積する。蓄積された各報告情報は、検査薬メーカが例えば報告情報に含まれる位置情報をもとに地域別のインフルエンザの流行予測を行ったり、検査プレートの製造または出荷の適正化を図るために使用される。
【0017】
なお、ネットワークNWは、例えばインターネットを中核とする広域ネットワークと、当該広域ネットワークに対しアクセスするためのアクセスネットワークとから構成される。アクセスネットワークとしては、例えば無線LAN(Local Area Network)や通信事業者が提供する公衆移動通信ネットワークが用いられるが、これに限るものではない。
【0018】
(2)装置
(2-1)検査プレートTP
検査プレートTPは、短冊状をなす筐体11の表面部に、検体液を滴下する滴下部12と、窓枠部13により周囲から区画された窓状の判定部14と、被検者の識別情報等を記載するID記載部15を配置したものとなっている。筐体11内には、滴下部12の下方位置にサンプルパッド(図示省略)が配置され、滴下部12とこのサンプルパッドにより受容部が構成される。また、筐体11内の上記判定部14の下方位置には、メンブレン(図示省略)が配置されている。メンブレンはその一端部が上記サンプルパッドに接触し、これにより上記滴下部12に滴下された検体液がサンプルパッドから毛細管現象によりメンブレンに移動するようになっている。
【0019】
メンブレンの判定部14に対応する部位には、A、B、Cの3つの領域が形成され、このうち領域A、BにはそれぞれAウィルス抗体およびBウィルス抗体が固定化されたA判定ラインおよびB判定ラインが形成されている。A判定ラインは、上記検体液にインフルエンザAウィルスが含まれている場合に、当該Aウィルスを捕捉して例えば赤紫色に発色する。同様にB判定ラインは、上記検体液にインフルエンザBウィルスが含まれている場合に、当該Bウィルスを捕捉して同様に赤紫色に発色する。また、C領域には確認用のCラインが形成されている。Cラインは、ウィルスの有無にかかわらず検体液に反応して同様に赤紫色に発色する。なお、発色の色合いについては、赤紫色を例示して説明したが、赤紫色に限定されるものではなく、各検査キットにおいて適宜選択可能である。
【0020】
また、メンブレンの判定部14は、被検出物を捕捉するために必要なタンパク質などの固相化に必要なメンブレン部材であり、発色に大きな重大な影響を及ぼす。さらに、被検者の検体を抽出物により抽出して検査に供する状態にした検体液を展開させた際に、例えば、上記メンブレンの判定部14が反射して、携帯端末TAにより上記検体中の上記ウィルスの検出結果を良好に読み取れなくなったり、あるいは検体液を展開させた際にメンブレンの判定部14が反射せずとも撮影時に反射してしまい、撮影画像から正しく検査を行えなくなることが予想される。
【0021】
そのため、メンブレンの判定部14を構成している材料は特に限定されるものではないが、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、セラミックス及びその複合体などの材料により構成されることが好ましい。例えば、セルロース類メンブレンなどのニトロセルロース複合体、ナイロンメンブレンおよび多孔質プラスチック布類(ポリエチレン、ポリプロピレン)などである。ニトロセルロース複合体とはニトロセルロースが50%以上含まれているものである。さらに好ましくは、ニトロセルロースである。
【0022】
また、メンブレンの判定部14は、被検者の検体を抽出物により抽出して検査に供する状態にした検体液を良好に展開し、携帯端末TAが上記検体中のインフルエンザウィルスの検出結果を良好に読み取るには、ニトロセルロースメンブレンの厚みは100μm以上が好ましく、特に好ましくは150μm~450μmである。
【0023】
さらにメンブレンの判定部14は、被検者の検体を抽出物により抽出して検査に供する状態にした検体液が進行方向に展開することを妨げない性能を有する必要がある。このため、メンブレンの判定部14は、毛細管作用を有する多孔性薄膜であり、検体液中に含まれている検査対象物を吸収して展開させることが可能な材料が好ましく、適切なキャピラリーフロータイムを有することが必要である。
【0024】
この毛細管現象の指標は、吸水速度(吸水時間:capillary flow time)を測ることで確認できる。吸水速度は、検出感度と検査時間に影響する。上記の処理によって調製された長さ4cmのニトロセルロースメンブレンの場合、吸水時間は例えば140秒以下が好ましく、さらに好ましくは125秒以下であり、最も好ましくは95秒以下である。この検査時間は、平均値であり、±10%以内である。例えば、日本ミリポア株式会社のHi‐Flow Plus(商品名)メンブレンはHF120、HF90、またはHF75であり、HF75が最も好ましい。
【0025】
また検査プレートTPの筐体11または上記窓枠部13には、検査プレートTPの撮影画像から上記判定部14およびその各判定ラインの位置を特定するために使用されるマーカが配置されている。マーカの具体例については種々のものが考えられ、後に詳しく説明する。
【0026】
なお、検査プレートTPの構成および形状は上記の構成および形状に限るものではなく、種々のものが考えられる。また確認ラインおよび各判定ラインの発色についても、赤紫色に限らず種々の色が考えられる。
【0027】
また、検査プレートTPは、未使用の状態では、個別に包装体に収容された状態で、例えば検体抽出液および付属品と共に箱状または袋状の収容体に収容されている。上記検査プレートTP、検体抽出液および付属品を収容体に収容したものを、検査キットと称する。付属品には、例えば検体(鼻汁)を採取するための部材として検体採取用紙(鼻紙)や、検体を採取するための滅菌された綿棒と、ノズルが含まれる。ノズルは、採取された検体を検体抽出液に混合させた検体液を検査プレートTPの受容部に滴下するために用いられる。そして、検体採取時には、例えば、検体採取用紙を使って鼻をかみ、検体採取用紙にて得られた鼻汁を綿棒で十分量をぬぐい取り、その綿棒を検体抽出液に差し込み、抽出液中で綿棒を上下させることで、検体液を得る。その検体液をノズルを介して検査プレートTPに適量滴下し、インフルエンザウィルスに対する罹患の有無の検査を行う。
【0028】
(2-2)携帯端末TA
携帯端末TAは、例えば被検者が所持するスマートフォンからなる。なお、携帯端末TAはスマートフォンに限らず、タブレット型端末やウェアラブル端末等のその他の携帯端末であってもよい。
【0029】
図3および
図4は、それぞれ携帯端末TAのハードウェア構成およびソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
携帯端末TAは、例えば、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部21を備え、この制御部21に対しバス26を介して、プログラム記憶部22、データ記憶部23、入出力インタフェース部(入出力I/F)24および通信インタフェース部(通信I/F)25を接続したものとなっている。
【0030】
入出力I/F24には、操作部241、表示部242、カメラ243および音声入出力部244が接続されている。操作部241および表示部242は、例えば、液晶又は有機ELを用いたディスプレイパネル上に静電容量式又は感圧式の入力シートを配置したタブレット型のデバイスからなり、主として被検者による操作データの入力と、表示データの表示を行うために使用される。
【0031】
なお、入力I/F24と、操作部241、表示部242、カメラ243および音声入出力部244との間の接続手段としては、信号線により直接接続するもの以外に、Bluetooth(登録商標)等の無線インタフェースが使用されてもよい。また入力I/F24に外部接続端子を設け、この外部接続端子に外部デバイスとして用意される操作部241、表示部242、カメラ243および音声入出力部244が接続されるようにしてもよい。
【0032】
カメラ243は、例えばCMOSイメージセンサと光学系とを組み合わせたもので、この実施形態では検査プレートTPを撮影するために使用される。なお、カメラ243はフラッシュを備えたものが望ましい。
【0033】
音声入出力部244は、マイクとスピーカとを備え、この実施形態では被検者の音声入力と、被検者に対し検査ガイダンス情報の音声メッセージや検査結果を含む報告情報の音声メッセージや、医療の端末装置MTから送信された指示情報や注意情報等を出力するために使用される。
【0034】
通信I/F25は、制御部21の制御の下、主として検査結果を含む報告情報を、ネットワークNWを介して医療機関の端末装置MTおよび検査薬メーカのサーバ装置DTへ送信するために使用される。通信インタフェースとしては、例えばWiFi(登録商標)等の小電力データ通信規格を採用したインタフェース、または通信事業者が提供する公衆移動通信用のインタフェースが使用される。また通信I/F25はGPS(Global Positioning System)信号を受信する機能を有していてもよい。GPS受信機能を利用することで、被検者の現在位置を測定して検査結果報告情報に含めることが可能となる。また通信I/F25は、医療機関の端末装置MTから送信され.指示情報や注意情報を受信するためにも使用可能である。
【0035】
プログラム記憶部22は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納する。
【0036】
データ記憶部23は、例えば、記憶媒体として、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと組み合わせたもので、この発明の一実施形態を実施するために使用される記憶領域として、検査ガイダンス情報記憶部231と、画像データ記憶部232と、検査プレート仕様情報記憶部233と、色見本・判定しきい値記憶部234と、ライン色判定データ記憶部235と、問診情報記憶部236と、検査報告情報記憶部237とを備えている。
【0037】
検査ガイダンス情報記憶部231は、検査プレートの仕様に対応して予め作成された複数種類の検査ガイダンス情報を記憶する。検査ガイダンス情報は、検査の手順とその内容を紹介するもので、例えば動画像または静止画像からなる画像データおよび音声データにより構成される。なお、検査ガイダンス情報はテキストデータにより構成されてもよい。
【0038】
画像データ記憶部232は、カメラ243により撮影された検査プレートTPを含む画像データを記憶するために使用される。画像データは例えば静止画像からなる。
【0039】
検査プレート仕様情報記憶部233は、複数の検査薬メーカが提供する複数種類の検査プレートTPの各々について、その構成や判定ラインの発色等に係る仕様情報を、検査薬メーカの識別情報(メーカID)と紐づけて記憶する。構成に係る仕様には、検査プレートTPの外形状と寸法、マーカの特徴量、判定部14とマーカとの位置関係を示す情報、A、B、C各判定ライン相互の位置関係を示す情報が含まれる。
【0040】
色見本・判定しきい値記憶部234は、上記検査プレートの種類毎に、判定ラインの発色の色見本を表す複数の基準色データを記憶する。また色見本・判定しきい値記憶部234は、上記色見本の複数の基準色データのうち、カメラ243または携帯端末TAが有する画像処理性能により検出限界(下限)となる基準色データを判定しきい値として記憶する。なお、判定しきい値は、使用が想定される携帯端末TA毎に、上記色見本を実際に撮影し、撮影された上記色見本の色データを評価することにより事前に決定される。
【0041】
ライン色判定データ記憶部235は、A、B、C各判定ラインの発色の判定結果を表す情報を、例えば後述する問診情報に含まれる被検者の名前またはIDと対応付けて記憶するために使用される。
【0042】
問診情報記憶部236は、操作部241において被検者が入力した問診情報を記憶するために使用される。問診情報には、例えば、被検者の名前と属性情報、現在の症状、病歴、服薬中の薬物などの問診結果の情報と、被検者が別途計測した体温や血圧等のバイタル情報が含まれる。なお、問診情報には携帯端末TAが発行した被検者IDが付加されるようにしてもよい。
【0043】
検査報告情報記憶部237は、制御部21で生成される検査結果を含む検査報告情報を記憶するために使用される。検査報告情報には、例えば、被検者向けの検査報告情報と、医療機関向けの検査報告情報と、検査薬メーカ向けの検査報告情報とがある。
【0044】
制御部21は、この発明の一実施形態を実施するための処理機能として、検査ガイダンス出力処理部211と、検査プレート画像取得処理部212と、判定対象部位特定処理部213と、ライン色判定処理部214と、問診情報取得処理部215と、検査報告情報生成処理部216と、検査報告処理部217とを備えている。これらの処理部211~217は、何れもプログラム記憶部22に格納された検査用のアプリケーションプログラムを、制御部21のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0045】
検査ガイダンス出力処理部211は、操作部241において検査ガイダンス情報の表示要求が入力された場合に、検査ガイダンス情報記憶部231から検査ガイダンス情報を読み出し、読み出された検査ガイダンス情報を入出力I/F24から表示部242および音声入出力部244へ出力して表示および拡声出力させる処理を行う。
【0046】
また検査ガイダンス出力処理部211は、検査プレートの仕様に応じて検査ガイダンスの内容が異なるため、上記検査ガイダンス情報を読み出す際に、検査プレート仕様情報記憶部233に記憶された検査プレート仕様情報に対応する検査ガイダンス情報を検査ガイダンス情報記憶部231から選択的に読み出す。
【0047】
検査プレート画像取得処理部212は、操作部241において検査開始要求が入力された場合に、予め設定されている待機時間が経過した後にカメラ243を動作させ、カメラ243により撮影された検査プレートTPを含む画像データを入出力I/F24を介して取り込んで、画像データ記憶部232に記憶させる処理を行う。なお、上記待機時間は、例えば、先に述べたメンブレン部材における検査対象物の吸水速度により定まる検査時間に応じて設定される。
【0048】
判定対象部位特定処理部213は、上記画像データ記憶部232から画像データを読み出し、当該画像データから検査プレートTPの判定対象部位を特定する処理を行う。この判定対象部位を特定する処理には、検査プレートTPの種類に対応する仕様情報を判別する仕様判別処理と、マーカの位置を検出する処理と、判定部14内の各判定ラインの位置を特定する処理とが含まれる。
【0049】
なお、判定対象部位特定処理部213には、撮影時に判定対象部位の形状を認識して、正面から撮影したように補正する機能を含めてもよい。この補正機能を備えることで、仮に判定対象部位が斜め上方向から撮影されたとしても、窓枠部および確認部位を含めた判定対象部位のゆがみが補正され、真上から撮影された画像と同等の条件で判定処理に供することができる。なお、上記「ゆがみ補正機能」を実現するアプリケーションプログラムとしては、例えばMicrosoft社が提供するComputer vision等を使用することができる。
【0050】
仕様判別処理は、例えば、上記画像データに含まれる検査プレートTPの画像から検査プレートTPの特徴量(例えば縦横サイズの比)を検出し、検出された特徴量をもとに検査プレート仕様情報記憶部233から該当する検査プレート仕様情報を選択する。マーカ検出処理は、例えば、上記画像データから、上記仕様情報に含まれるマーカの特徴量をもとにその画像を検出する。判定ラインの位置を特定する処理は、例えば、上記マーカの検出位置と、上記仕様情報に含まれるマーカと判定ラインとの位置関係を表す情報と、各判定ライン相互の位置関係を示す情報とに基づいて、各判定ラインの位置を特定する。
【0051】
ライン色判定処理部214は、特定された上記各判定ラインの位置における画像の色データを検出する。そして、色見本・判定しきい値記憶部234に記憶された色見本を表す複数の基準色データと、色の検出限界(下限)となる基準色データを示す判定しきい値とに基づいて、上記各判定ラインの色データに対応する検査結果を判定し、判定された検査結果を表す情報をライン色判定データ記憶部235に記憶させる処理を行う。なお、上記色データに基づく検査結果の判定には、発色の有無を判定する処理も含まれる。
【0052】
問診情報取得処理部215は、操作部241において問診情報入力要求が入力された場合に、問診情報記憶部236から問診テンプレートを読み出して表示部242に表示させる。そして、当該問診テンプレートに従って被検者が操作部241により入力した、問診情報、および体温や血圧等のバイタル情報をそれぞれ取り込んで問診情報記憶部236に記憶させる処理を行う。
【0053】
検査報告情報生成処理部216は、ライン色判定データ記憶部235に記憶された各判定ラインの色データに対応する検査結果を示すデータに基づいて、当該検査結果を被検者、医療機関および検査薬メーカに報告するための検査報告情報をそれぞれ生成し、生成された各検査報告情報を検査報告情報記憶部237に記憶させる処理を行う。なお、検査報告情報生成処理部216は、医療機関向けの検査報告情報を生成する際には、当該検査報告情報に、問診情報記憶部236に記憶された問診情報およびバイタル情報を含める。
【0054】
検査報告処理部217は、検査終了後に、上記検査報告情報記憶部237に記憶された被検者向けの検査報告情報を表示部242に表示させる処理を行う。また検査報告処理部217は、上記検査報告情報記憶部237に記憶された医療機関および検査薬メーカ向けの各検査報告情報を、例えば検査終了後の被検者の操作に応じて、通信I/F25から医療機関の端末装置MTおよび検査薬メーカのサーバ装置DTへそれぞれ送信する処理を行う。
【0055】
また検査報告処理部217は、医療機関の端末装置MTから被検者の受診に係る種々の指示情報または注意情報が送られた場合には、これらの情報を通信I/F25を介して受信し、受信された情報を入出力I/F24を介して表示部242に表示させる処理も行う。
【0056】
(動作例)
次に、以上のように構成された携帯端末TAによる検査支援動作を説明する。なお、この例では、被検者に発熱等のようなインフルエンザへの感染が疑われる症状が現れ、被検者が自宅またはオフィスにおいて自身で検査を行う場合を例にとって説明を行う。
【0057】
図5は、携帯端末TAの制御部21による全体の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
検査に先立ち、被検者が自身の携帯端末TAにおいて、例えばアイコンのタッチ操作することで検査アプリケーションの起動要求を入力すると、携帯端末TAの制御部21はステップS10において上記検査アプリケーションの起動要求を検知し、ステップS11においてメニュー画面を表示させる。メニュー画面には、メニューとして例えば「検査ガイダンス確認」、「問診情報の登録」、「検査の実行」、「検査アプリケーション終了」が表示される。この状態で、携帯端末TAの制御部21は、ステップS12,S13,S14,S28により、上記各メニューに対する被検者の選択操作を待ち受ける。
【0058】
(1)検査ガイダンス情報の再生
上記待受状態において、被検者が「検査ガイダンス確認」メニューを選択すると、携帯端末TAの制御部21は、検査ガイダンス出力処理部211の制御の下、ステップS12により当該メニューの選択操作を検出してステップS15に移行し、検査ガイダンス情報記憶部231から検査ガイダンス情報を読み出す。
【0059】
検査ガイダンス情報は、例えば動画像データと音声データとを組み合わせたものからなり、このうち動画像データは、入出力I/F24から表示部242へ出力されて表示される。また音声データは、入出力I/F24から音声入出力部244のスピーカへ出力され、音声メッセージとして出力される。なお、上記検査ガイダンスの再生処理は、ステップS16により終了操作が検知された時点で終了する。
被検者は、上記検査ガイダンス情報を視聴することにより検査の手順とその内容を事前に確認することが可能となる。
【0060】
(2)問診情報の登録受付
上記待受状態において、被検者が「問診情報の登録」メニューを選択すると、携帯端末TAの制御部21は、問診情報取得処理部215の制御の下、ステップS13により当該メニューの選択操作を検出してステップS17に移行し、問診情報記憶部236から問診テンプレートを読み出して表示部242に表示させる。
【0061】
この状態で、被検者が、表示された上記問診テンプレートに従い、その各項目に対し操作部241により自身の名前や属性、症状等の問診情報を入力し、さらに別途体温計や血圧計により測定した体温や血圧等のバイタル情報を入力したとする。そうすると、問診情報取得処理部215は、ステップS18において、入力された上記問診情報およびバイタル情報を入出力I/F24を介して受け取り、当該問診情報およびバイタル情報を項目に紐づけて問診情報記憶部236に記憶させる。この問診情報およびバイタル情報の登録処理は、ステップS19により終了操作が検知された時点で終了し、ステップS11のメニュー画面表示に戻る。なお、上記問診情報およびバイタル情報の登録処理の終了後、ステップS11のメニュー画面表示に戻らずに、ステップS20による検査処理に移行するようにしてもよい。また、上記問診情報およびバイタル情報の登録処理の終了後、ステップS11のメニュー画面表示に戻らずに、ステップS15による検査ガイダンス情報の表示処理に移行するようにしてもよい。
【0062】
(3)検査処理の実行
被検者が、先に視聴した検査ガイダンス情報に従い、検査プレートTPの滴下部12に自身の検体液を所定量(この例では3滴)滴下し、しかる後「検査の実行」メニューを選択操作すると、携帯端末TAの制御部21は、ステップS14により上記メニューの選択操作を検出してステップS20に移行し、以後このステップS20において検査処理を実行する。
【0063】
図6は、携帯端末TAの制御部21による検査処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0064】
(3-1)検査プレートTPの撮影および画像データの取得
携帯端末TAの制御部21は、先ずステップS27において待機時間が経過したか否かを判定する。ここで、待機時間は、検査プレートTPの滴下部12に検体液が滴下された時点から各判定ラインが発色するまでに要する反応時間よりも長い時間に設定されている。上記待機時間が経過すると、携帯端末TAの制御部21は、検査プレート画像取得処理部212の制御の下、ステップS21においてカメラ243を起動して検査プレートTPを撮影する。
【0065】
ところで、検査プレートTPの撮影において、検査プレートTPに対する携帯端末TAの撮影位置を固定する支持具を使用しない場合、つまり被検者が手で携帯端末TAを把持して検査プレートTPを撮影する場合も考えられる。この場合、検査プレート画像取得処理部212は、上記待機時間が経過した時点で、撮影が可能になったことを報知する音声メッセージまたはアラームを、音声入出力部244のスピーカから出力させる。被検者は、上記音声メッセージまたはアラームにより撮影可能になったことを確認し、携帯端末TAを検査プレートTPに向けてカメラ243のシャッタを操作し検査プレートTPを撮影する。
【0066】
検査プレート画像取得処理部212は、上記ステップS21において、カメラ243により撮影された検査プレートTPの画像データを入出力I/F24を介して取り込み、当該画像データを画像データ記憶部232に記憶させる。
【0067】
(3-2)判定対象部位の特定
画像データの記憶処理が終了すると、携帯端末TAの制御部21は、続いて判定対象部位特定処理部213の制御の下、ステップS22において、上記画像データから検査プレートTPの判定対象部位を特定する処理を以下のように実行する。
【0068】
図7は、携帯端末TAの制御部21による判定対象部位を特定する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
すなわち、判定対象部位特定処理部213は、先ず検査プレートTPの種類に対応する仕様情報を判別する処理を行う。この処理では、先ずステップS221において、画像データから当該画像データに含まれる検査プレートTPの画像の特徴量(例えば縦横サイズの比)を検出する。そして、検出された上記特徴量をもとに検査プレート仕様情報記憶部233から該当する検査プレート仕様情報を読み出す。続いてステップS222において、読み出された上記検査プレートTPの仕様情報から検査薬メーカを判別する。この検査薬メーカの情報は後に検査薬メーカに検査報告情報を送信するために使用される。
【0069】
なお、上記検査プレート仕様情報および検査薬メーカの判別は、例えば被検者が検査プレートの製品種別またはメーカ名を撮影前に操作部241から入力しておき、入力された上記検査プレートの製品種別またはメーカ名をもとに検査プレート仕様情報記憶部233から該当する検査プレート仕様情報を読み出すことにより行われるようにしてもよい。
【0070】
判定対象部位特定処理部213は、次にステップS223において、マーカの位置を検出する処理を行う。このマーカ位置検出処理は、例えば、上記画像データから、上記仕様情報に含まれるマーカの特徴量をもとにマーカを示す画像を認識し、当該画像の座標値を検出することにより行われる。マーカの画像の認識処理は、例えば画像のパターンマッチング技術を適用することにより行われる。
【0071】
ここで、
図10(a)~(f)にマーカの一例を示す。この例は、いずれも判定部14の窓枠部13のテーパ状に形成されたエッジ部分に線状パターンからなるマーカを設けたもので、(a)は窓枠部13の4か所の角部すべてに、(b)は3か所の角部に、(c)は対角線上に対向する2か所の角部に、それぞれ細い線状パターンを配置したものである。また(d)は(c)の線状パターンの一つを二重線とし、(e)は(a)の線状パターンの形状を判定部14の底部から開口部に向かって徐々に線幅が太くなるようなパターンとし、(f)は(c)の線状パターンの一つを破線としたものである。
【0072】
これらのマーカの形状、数および配置位置は、マーカの特徴量として検査プレートTPの仕様情報に予め記憶されている。そして判定対象部位特定処理部213は、検査プレートTPの種類別に、上記仕様情報に含まれるマーカの特徴量に基づいて、画像データ中からマーカの位置を検出する。
【0073】
判定対象部位特定処理部213は、次にステップS224、S225において、検査プレートTPの判定部14の各判定ラインの位置を特定する処理を行う。この処理では、先ず、検出された上記マーカの座標値と、上記仕様情報に含まれるマーカと判定ラインとの位置関係を表す情報とに基づいて判定部14を認識する。この例では、判定部14の位置としてC判定ラインを認識する。そして、認識された上記C判定ラインの位置と、上記仕様情報に含まれる各判定ライン相互の位置関係を示す情報とに基づいて、A、Bの各判定ラインの位置を特定する。
【0074】
(3-3)判定ラインによる検査結果の判定
各判定ラインの位置が特定されると、携帯端末TAの制御部21は、続いてライン色判定処理部214の制御の下、ステップS23において、各判定ラインの発色に基づく検査結果の判定を行う。
【0075】
図8は、携帯端末TAの制御部21による、判定ラインから検査結果を判定する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
ライン色判定処理部214は、先ずステップS230において、特定された上記各判定ラインの位置における画像の色データを検出する。次にライン色判定処理部214は、ステップS231において、色見本・判定しきい値記憶部234から色見本を表す複数の基準色データと、色の検出限界(下限)となる基準色データを示す判定しきい値を読み込む。そして、ステップS233において、先ずCラインの色データを上記判定しきい値と比較し、Cラインが携帯端末TAの色の検出限界(下限)を超える色で発色しているか否かを判定する。
【0076】
ところで、色見本を表す複数の基準色データに対する携帯端末TAの感度は、携帯端末TAの機種ごとに異なる。
図12および
図13は、10機種の携帯端末TAa~TAjについて、色見本に対する携帯端末TAの機種毎の検出感度を測定した結果の一例を示したもので、
図13は得られた画像データに対し鮮やか度=400%、コントラスト=-40%、シャープネス=100%とする解析処理を行った場合の結果を、また
図12は上記解析処理を行う前の結果をそれぞれ示している。図中の太い実線で示した位置が、携帯端末TAa~TAjにおいて検出可能な色の限界(下限)、つまり判定しきい値を示している。
【0077】
本実施形態の携帯端末TAでは、上記10機種の測定データが色見本・判定しきい値記憶部234に記憶されている。そして、ライン色判定処理部214により、自己の携帯端末TAの機種に対応する色見本となる基準色データと判定しきい値を、色見本・判定しきい値記憶部234から選択して読み込むようにしている。従って、被検者が使用している携帯端末TAa~TAjがいずれの機種であっても、機種毎に適切にCラインの発色を判定することが可能となる。
【0078】
ライン色判定処理部214は、上記判定処理によりCラインが発色していないと判定されると、ステップS238により判定不可メッセージを生成し、生成されたメッセージを表示部242に表示すると共に、アラーム音を音声入出力部244のスピーカから出力する。このとき、判定不可メッセージには、例えば検査プレートTPの撮影処理を時間をおいてやり直すか、または検査プレートTPへの検体液の滴下からやり直すことを奨める内容が含まれる。
【0079】
一方、上記判定処理によりCラインが発色していると判定されると、ライン色判定処理部214は、ステップS234において、色見本・判定しきい値記憶部234から読み込んだ判定しきい値をもとに、A判定ラインおよびB判定ラインにおいて検出された色データを判定する。そして、ステップS235において、A判定ラインおよびB判定ラインが発色しているか否かを判定する。その結果、A判定ラインおよびB判定ラインのいずれも発色していなければ、ステップS237において「発色なし」または「発色なし」と判断し、その結果を被検者の名前またはIDに紐づけた状態で、ライン色判定データ記憶部235に記憶させる。
【0080】
これに対し、A判定ラインまたはB判定ラインのいずれか一方が発色していたとする。この場合ライン色判定処理部214は、ステップS26において、上記発色の色データを色見本・判定しきい値記憶部234から読み込んだ上記色見本となる基準色データと比較し、発色のレベルを判定する。そして、その判定結果を被検者の名前またはIDに紐づけた状態で、ライン色判定データ記憶部235に記憶させる。このとき、判定結果としては、例えば、発色が検出された判定ラインにより、検出されたウィルスが「A型」または「B型」のいずれであるかを示し、かつ発色レベルにより「ラインが検出されました」、「感染の疑いがあります」、「受診を勧告します」のような具体的なメッセージが用いられる。
【0081】
なお、上記色見本・判定しきい値を示す情報は、使用が想定される複数種類の検査プレートTPの各々、或いは複数の検査薬メーカの各々に対応して用意し、色見本・判定しきい値記憶部234に記憶しておくことが望ましい。
【0082】
(3-4)検査報告情報の生成およびその出力
ライン色判定処理部214により各判定ラインの発色状態に基づく検査結果が得られると、携帯端末TAの制御部21は、検査報告情報生成処理部216および検査報告処理部217の制御の下、ステップS24において検査結果の報告情報を生成し、出力する処理を実行する。
【0083】
図9は、携帯端末TAの制御部21による検査報告情報生成処理および出力処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0084】
検査報告情報生成処理部216は、先ずステップS241において、上記ライン色判定データ記憶部235に記憶された検査結果を表すデータに基づいて、被検者向けの報告情報を生成する。この被検者向けの報告情報には、例えば、上記検査結果を表すデータ、つまり検出されたウィルスが「A型」または「B型」のいずれであるかを示し、さらに「ラインが検出されました」、「感染の疑いがあります」、「受診を勧告します」のような具体的なメッセージが挿入される。
【0085】
また、被検者向けの報告情報には、最寄りの医療機関を選択して当該医療機関に関する案内情報を受診予約情報と共に含めるようにしてもよい。この医療機関の案内情報には、例えば、最寄りの医療機関の名称や診療時間を表す情報と、当該医療機関へのルートと所要時間、現在の混雑状況を表す情報等が含まれる。なお、最寄りの医療機関は、例えば携帯端末TAのGPS受信機能により測定された現在位置に基づいて検索可能であり、また医療機関の混雑状況は例えば当該医療機関のWeb情報を検索することで取得可能である。
【0086】
生成された上記検査結果の報告情報は、ステップS241において、検査報告処理部217の制御の下、検査報告情報記憶部237から即時読み出される。そして、読み出された検査結果報告情報のうち画像データとテキストデータは、入出力I/F24を介して表示部242へ出力され、表示される。また、上記検査結果報告情報のうち音声メッセージは、入出力I/F24から音声入出力部244へ出力され、スピーカから拡声出力される。
【0087】
なお、被検者向けの検査結果報告情報を生成する際には、検査結果と問診情報に含まれる申告内容およびバイタル情報に基づいて、例えば症状が重い順に複数段階の受診勧告レベルを設定し、設定された上記受診勧告レベルを被検者に報知するようにしてもよい。
【0088】
また検査報告情報生成処理部216は、続いてステップS242において、上記検査結果を表すデータに基づいて医療機関向けおよび検査薬メーカ向けの報告情報を生成する。医療機関向けの報告情報には、例えば、上記検査結果を表すデータに加え、問診情報記憶部236に記憶されている被検者の問診情報を含める。問診情報には、被検者の名前や属性情報、連絡先情報が含まれるが、受信履歴のある医療機関の場合にはその診察券番号や健康保険証番号等も含めるようにしてもよい。そして、生成された上記医療機関向けの検査結果の報告情報は、ステップS242において、検査報告処理部217の制御の下、通信I/F25から医療機関の端末装置MTへ送信される。
【0089】
なお、医療機関向けの報告情報には、例えば被検者による検査ガイダンス情報の視聴の有無やC判定ラインの発色の状態等をもとに検査結果に対する信頼度を判定し、判定された上記信頼度を示す情報を加えるようにしてもよい。
【0090】
一方、検査薬メーカ向けの検査結果報告情報には、上記検査結果を表すデータに加え、被検者の現在位置情報および検査日時を表す情報を含める。そして、生成された上記検査薬メーカ向けの検査結果報告情報は、ステップS242において、検査報告処理部217の制御の下、通信I/F25から検査薬メーカのサーバ装置DTへ送信される。
【0091】
また、上記医療機関向けの報告情報の送信後、医療機関の端末装置MTから被検者の受診に係る種々の指示情報または注意情報が送られる場合がある。そこで、検査報告処理部217は、ステップS243において上記指示情報または注意情報が受信されたか否かを監視する。そして、指示情報または注意情報が受信されると、検査報告処理部217はステップS24において、上記受信された指示情報または注意情報を入出力I/F24から表示部242へ出力し、表示させる。
【0092】
(3-5)検査後の記憶データの処理
携帯端末TAの制御部21は、上記検査結果報告情報の送信処理が終了すると、検査報告処理部217の制御の下、ステップS25において、検査が終了してから所定期間が経過しているか否かを判定する。そして、所定期間が経過していたとすると検査報告処理部217は、ステップS26において、検査報告情報生成処理部216に対し検査結果報告情報の消去指示を与える。この結果、検査報告情報生成処理部216により、検査報告情報記憶部237に記憶されている該当する検査報告情報が消去される。なお、ステップS25において所定期間が経過していないと判定された場合には、検査報告処理部217はそのまま処理を終了する。
【0093】
また、検査報告処理部217はライン色判定処理部214および検査プレート画像取得処理部212に対し、それぞれ該当するライン色判定データおよび検査プレートTPの画像データの消去指示を与える。この結果、ライン色判定処理部214および検査プレート画像取得処理部212の制御の下、それぞれライン色判定データ記憶部235および画像データ記憶部232から該当するライン色判定データおよび画像データが消去される。
【0094】
以上の消去処理により、一度使用された検査報告情報およびその元になるライン色判定データおよび画像データが再度使用される不具合は防止される。なお、上記各データは消去せずに例えば検診報告済フラグを付しておき、これにより再使用が行えないようにしてもよい。
【0095】
(3-6)全体処理の終了
メニュー画面が表示されている状態で、「検査アプリケーション終了」が選択されると、制御部1はステップS28により上記選択操作を検出し、検査アプリケーションを終了する。
【0096】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態では、携帯端末TAを用いて検査プレートTPを撮影し、その画像データから検査プレートTPの検査結果を読み取って携帯端末TAの表示部242に表示するようにしている。従って、被検者は自宅またはオフィス等においてインフルエンザウィルスに感染した疑いがあるか否かを確認することが可能となり、感染の有無に応じた適切な対応を行うことができる。
【0097】
また、検査プレートTPの画像データから判定ラインの位置を特定する際に、検査プレートTPの所定位置に設けられたマーカを認識し、このマーカを基準にC判定ラインの位置を特定し、さらにこのC判定ラインの位置を基準にA判定ラインおよびB判定ラインの位置を特定するようにしている。このため、各判定ラインの位置、つまり判定対象部位の位置を効率良くかつ正確に特定することが可能となり、これにより携帯端末TAの処理負荷を低く抑えた上で検体の検査結果を精度良く読み取ることができる。
【0098】
さらに、使用が想定される複数種類の検査プレートTP、あるいは検査キットの包装体等の各々についてその構成および発色の仕様を表す検査プレート仕様情報を予め記憶しておき、使用される検査プレートTPに対応する仕様情報を選択的に読み出して、上記マークの認識、各判定ラインの特定および発色の判定処理を行うようにしている。このため、被検者がいずれの検査プレートを使用しても、検査結果を効率良くかつ正確に読み取ることができる。
【0099】
しかも、携帯端末TAの機種別に色見本に対応する基準色データと検出限界(下限)を表す判定しきい値を記憶しておき、これらのデータをもとに判定ラインの色を判定するようにしている。このため、携帯端末TAの機種によらず、判定ラインの発色を高精度に判定することが可能となる。
【0100】
また一実施形態では、検査プレートTPにおいて検体液の滴下から判定ラインが発色するまでの反応時間よりも一定時間だけ長く設定された待機時間を設定し、この待機時間が経過した後に携帯端末TAによる検査プレートTPの撮影動作が行われるようにしている。このため、検査プレートTPにおいてC判定ラインが確実に発色した後の画像データをもとに検査結果を読み取ることができ、これにより常に精度のよい検査結果を得ることが可能となる。
【0101】
さらに、仮にC判定ラインの発色が検出されなかった場合には、判定処理を中止して判定不可メッセージを出力するようにしている。このため、例えば検査プレートTPの取り扱い、或いは携帯端末TAによる撮影条件の設定に誤りがあり、これにより判定に適さない画像データが得られても、そのまま誤った検査結果が得られないようにすることができる。
【0102】
また一実施形態では、検査結果の報告情報として、被検者向けの報告情報の他に、医療機関向けの報告情報および検査薬メーカ向けの報告情報をそれぞれ生成し、送信するようにしている。このため、医療機関は患者の受診受付の準備を事前に行うことが可能となり、また検査薬メーカは報告情報とそれに含まれる位置情報をもとに、地域別のインフルエンザの流行予測を行ったり、検査プレートの製造または出荷の適正化を図ることが可能となる。
【0103】
さらに、検査結果の送信が終了した後所定期間が経過した時点で、検査報告情報記憶部237に記憶されている該当する検査報告情報、ライン色判定データ記憶部235および画像データ記憶部232に記憶されている該当するライン色判定データおよび画像データを消去するようにしている。これにより、一度使用された検査報告情報や、その生成の元になるライン色判定データおよび画像データが再度使用される不具合を防止することができる。
【0104】
[変形例]
(1)マーカとしては、例えば
図11(a)~(f)に示すような種々変形例が考えられる。
例えば、(a),(b),(d)は、判定部14の窓枠部13に1個または複数のQRコード(登録商標)16,17またはバーコード18を印刷したものである。QRコード16,17またはバーコード18には、例えば当該コードの位置と判定対象部位となるC判定ライン、さらにはA判定ラインおよびB判定ラインの位置との関係を示す情報が含まれる。判定対象部位特定処理部213は、上記QRコードを読み取ることで、判定対象部位となるC判定ライン、さらにはA判定ラインおよびB判定ラインの位置を特定することが可能となる。
【0105】
また、上記QRコード16,17またはバーコード18に、検査プレートTPの識別情報または検査薬メーカの識別情報を含めておき、この識別情報により対応する検査プレート仕様情報を選択するようにしてもよい。さらに、上記QRコード16,17またはバーコード18に、被検者の識別情報(例えば名前や属性、掛かり付けの医療機関に登録されている診察券番号等)を含めるようにしてもよい。
【0106】
さらに、上記QRコード16,17またはバーコード18に、検査プレートTPまたは検査キットの有効期限を含めるようにしてもよい。そして、上記QRコード16,17またはバーコード18から検査プレートTPまたは検査キットの有効期限を示す情報を読み取り、有効期限が経過している場合には、検査結果の読み取り処理を中止し、有効期限切れのメッセージを生成して出力するようにしてもよい。
【0107】
(c)は、判定部14の窓枠部13に、A、B、Cの各判定ラインの位置の各々に対応して線状のマーカ135を印刷したものである。判定対象部位特定処理部213は、これらのマーカ135を認識することで、それぞれ対応するA、B、Cの各判定ラインの位置を特定することができる。
【0108】
(e)は、窓枠部13の対角線上の角部のエッジ部分にそれぞれ実線からなるマーカ131および破線からなるマーカ134を印刷し、これらのマーカ131,134の延長線上にA判定ラインLA、B判定ラインLBが配置されるように構成したものである。このようにすると、判定対象部位特定処理部213は、上記各マーカ131,134を認識すれば、その延長線上にあるA判定ラインLA、B判定ラインLBの位置を特定することが可能となる。なお、(e)では説明の便宜上、A判定ラインLA、B判定ラインLBが両方とも発色しているように示しているが、実際には両方とも発色しないか、またはいずれか一方しか発色しない。
【0109】
(f)は、
図10(e)の変形例であり、窓枠部13の四隅のエッジ部に設けられる各マーカ133を、検査プレートTPの判定ラインにおける発色の色見本で着色したものである。このようにすると、ライン色判定処理部214は判定ラインの発色を判定する際に、上記マーカ133の発色の色データを基準に判定を行うことが可能となる。
また、四隅のエッジ部に設けられる各マーカ133の色を異ならせることにより、画像データ内の各マーカ133の検出位置から窓枠部13の向きを認識することが可能となる。
【0110】
さらに、
図11(a),(b),(d)に示した例では、QRコード16,17またはバーコード18に、マーカと判定ラインとの位置関係を表す情報と検査プレートの仕様情報の少なくとも一方を含める場合について説明した。しかし、検査プレートTPの包装体または検査キットの収容体に上記QRコードまたはバーコードを表示し、上記位置関係を表す情報と検査プレートの仕様情報の少なくとも一方を、上記コードに含めるようにしてもよい。この場合、検体検査支援装置は、検査に先立ち、上記検査プレートTPの包装体または検査キットの収容体に表示された上記QRコードまたはバーコードをカメラにより撮影して、位置関係を表す情報と検査プレートの仕様情報を検出し、検出された各情報に基づいて判定ラインの位置の特定および発色等の仕様を識別する。
【0111】
(2)一実施形態では、インフルエンザウィルスに対する罹患の有無を検査する場合を例にとって説明したが、この発明はその他のウィルス検査や尿検査や妊娠検査、排卵日予測検査等にも適用可能である。その他、検査媒体の構成や形状、判定ライン等の検体検出部の形状や位置関係、発色の色種、検体検査支援装置の種類や構成、その処理手順および処理内容などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。また、単回の検査、測定によらず、例えば一定期間継続して検査し、測定データを蓄積する必要がある検査対象に対しては、当該システムに測定したデータを記憶させる機能を設けてもよい。
【0112】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0113】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0114】
TP…検査プレート
TA…携帯端末
NW…ネットワーク
MT…医療機関の端末装置
DT…検査薬メーカのサーバ装置
11…検査プレートの筐体
12…滴下部
13…窓枠部
14…判定部
15…ID記載部
21…制御部
22…プログラム記憶部
23…データ記憶部
24…入出力I/F
25…通信I/F
26…バス
211…検査ガイダンス出力処理部
212…検査プレート画像取得処理部
213…判定対象部位特定処理部
214…ライン色判定処理部
215…問診情報取得処理部
216…検査報告情報生成処理部
217…検査報告処理部
231…検査ガイダンス情報記憶部
232…画像データ記憶部
233…検査プレート仕様情報記憶部
234…色見本・判定しきい値記憶部
235…ライン色判定データ記憶部
236…問診情報記憶部
237…検査報告情報記憶部
241…操作部
242…表示部
243…カメラ
244…音声入出力部