(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
A61M25/09 510
A61M25/09 516
A61M25/09 514
(21)【出願番号】P 2020086270
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】浪間 聡志
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153546(JP,A)
【文献】特開2012-223256(JP,A)
【文献】特開2008-194185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
コアシャフトと、
前記コアシャフトの外側に配置された金属製の筒状体と、
前記コアシャフトの先端と、前記筒状体の先端とが固定された先端チップと、
前記筒状体の先端から後端側に向かって第1距離だけ離れた位置から、さらに第2距離離れた位置までの範囲に配置される樹脂と、を備え、
前記ガイドワイヤの先端から基端側に向かって、前記樹脂を備えていない第1区間と、前記樹脂を備える第2区間と、が連接しており、
前記樹脂は、前記第2区間において、前記筒状体の外表面に配置され、
前記樹脂の外表面には、前記筒状体は配置されて
おらず、
前記筒状体は、コイル体であり、前記第2区間において、互いに隣接する素線が接触する密巻きである、
ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記筒状体は、前記第1区間に位置する第1
コイル体と、前記第2区間に位置する第2
コイル体とを含み、
前記第1
コイル体と前記第2
コイル体は、互いに接している、
ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記樹脂の厚さは、前記第2区間に位置する前記
コイル体の外径の10~40%の値である
ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記第2
コイル体の外径は、前記第1筒
コイル体の外径よりも小さい
ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体内に挿入されたガイドワイヤ等の医療デバイスの先端位置を、外部からの超音波や磁界によって特定するために、デバイスの先端にマーカを取り付ける技術が知られている(特許文献1、2)。特許文献1には、先端に造影マーカが配置されたダイレータが開示されている。特許文献2には、先端に強磁性体の薄膜を設けたカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-51328号公報
【文献】特開平10-314137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の先行技術によっても、超音波画像や磁界画像に表示される医療デバイスの視認性の向上を図る技術については、なお、改善の余地があった。例えば、人体内に挿入されたガイドワイヤ先端の向きや位置によって、超音波画像(エコー画像)に、ガイドワイヤ先端の一部が明確に現れないことがあった。一例としては、先端が下方向に屈曲したガイドワイヤを上方から超音波プローブ(探触子)で観察すると、ガイドワイヤのうち、屈曲した部分より先が検出範囲から外れてエコー画像に明確に現れず、屈曲部がガイドワイヤの先端位置のように表示される場合があった。この場合、屈曲部の位置をガイドワイヤの先端と誤認するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、超音波画像に表示されるガイドワイヤの視認性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ガイドワイヤが提供される。このガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトの外側に配置された金属製の筒状体と、前記コアシャフトの先端と前記筒状体の先端とが固定された先端チップと、前記筒状体の先端から後端側に向かって第1距離だけ離れた位置から、さらに第2距離離れた位置までの範囲に配置される樹脂と、を備え、前記ガイドワイヤの先端から基端側に向かって、前記樹脂を備えていない第1区間と、前記樹脂を備える第2区間と、が連接している。
【0008】
この構成によれば、ガイドワイヤの先端から基端側に向かって、樹脂を備えていない第1区間と、樹脂を備える第2区間と、が連接しているため、超音波画像において第1区間と第2区間の位置を容易に識別することができる。この第1区間と第2区間の位置から人体内におけるガイドワイヤの位置を容易に特定することができる。よって、この構成によれば、超音波画像に表示されるガイドワイヤの視認性の向上を図ることができる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記樹脂は、前記第2区間において、前記筒状体の外表面に配置されていてもよい。この構成によれば、筒状体の外表面に配置された樹脂によって、超音波画像に表示される第1区間と第2区間をさらに容易に識別することができる。よって、この構成によれば、超音波画像に表示されるガイドワイヤの視認性をさらに向上させることができる。
【0010】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記筒状体は、前記第1区間に位置する第1筒状体と、前記第2区間に位置する第2筒状体とを含んでいてもよい。この構成によれば、第1筒状体と第2筒状体の構成の差異によって、超音波画像に表示される第1区間と第2区間をさらに容易に識別することができる。
【0011】
(4)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第2筒状体の外径は、前記第1筒状体の外径よりも小さくてもよい。この構成によれば、第1筒状体と第2筒状体の外径の差異によって、超音波画像に表示される第1区間と第2区間をさらに容易に識別することができる。また、第2筒状体の外側に樹脂が形成された第2区間の外径と、第1区間の第1筒状体の外径との差を低減し、第1区間と第2区間との境界部における段差の発生を抑制できる。
【0012】
(5)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記樹脂は、前記第2区間において、前記筒状体の内側に配置されていてもよい。この構成によれば、筒状体の内側に配置された樹脂によって、超音波画像に表示される第1区間と第2区間をさらに容易に識別することができる。よって、この構成によれば、超音波画像に表示されるガイドワイヤの視認性をさらに向上させることができる。
【0013】
(6)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記筒状体は、コイル体であってもよい。この構成によれば、ガイドワイヤ先端の柔軟性を確保しつつ、超音波画像に表示されるガイドワイヤの視認性の向上を図ることができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤを含む医療デバイス、カテーテル、ガイドワイヤの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態のガイドワイヤの全体構成を例示した説明図である。
【
図2】第1実施形態のガイドワイヤの断面構成を例示した説明図である。
【
図4】ガイドワイヤの部位によるエコー反射強度の違いを例示した説明図である。
【
図5】血管内のガイドワイヤを超音波で観察した様子を例示した図である。
【
図6】比較例のガイドワイヤを超音波で観察した様子を例示した図である。
【
図7】第2実施形態のガイドワイヤの全体構成を例示した説明図である。
【
図8】第2実施形態のガイドワイヤの断面構成を例示した説明図である。
【
図9】ガイドワイヤの部位によるエコー反射強度の違いを例示した図である。
【
図10】第2実施形態のガイドワイヤを超音波で観察した様子を示した図である。
【
図11】第3実施形態のガイドワイヤの断面構成を例示した説明図である。
【
図12】第4実施形態のガイドワイヤの断面構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の全体構成を例示した説明図である。
図2は、ガイドワイヤ1の断面構成を例示した説明図である。
図3は、
図2のX部分を拡大した説明図である。以下では、
図1の左側をガイドワイヤ1および各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側をガイドワイヤ1および各構成部材の「基端側」と呼ぶ。ガイドワイヤ1の先端側は、体内に挿入される側(遠位側)であり、ガイドワイヤ1の基端側は、医師等の手技者によって操作される側(近位側)である。また、
図1の左右方向をガイドワイヤ1および各構成部材の「延伸方向」または「軸線方向」とも呼ぶ。
図2は、ガイドワイヤ1の延伸方向に沿った縦断面を示している。ガイドワイヤ1は、例えば、血管や消化器官にカテーテルを挿入する際に用いられる医療器具であり、コアシャフト10と、第1コイル体20と、第2コイル体30と、先端接合部(先端チップ)40と、基端側接合部50と、樹脂チューブ60と、を備えている。
【0017】
コアシャフト10は、基端側から先端側に向かって外径が小さくなるように構成された(先細りした)長尺形状の部材である。コアシャフト10は、例えば、ステンレス合金(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の材料で形成することができる。コアシャフト10は、上記以外の公知の材料によって形成されていてもよい。コアシャフト10は、先端側から基端側に向かって順に、細径部13と、テーパー部14と、太径部15とを有している。
【0018】
細径部13は、コアシャフト10の先端側に配置され、先端に先端接合部(先端チップ)40が形成されている。テーパー部14は、細径部13と太径部15との間に形成されており、基端から先端に向かって外径が細くなっている。太径部15は、コアシャフト10において外径が最大となる最大外径部であり、コアシャフト10の基端から先端側に向かって外径が一定となっている。コアシャフト10の先端から所定の距離だけ離れた基端側の外周には、基端側接合部50が形成されている。先端接合部40と基端側接合部50との間には、第1コイル体20と、第2コイル体30が配置されている。
【0019】
先端接合部40は、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだによって形成され、この金属はんだにより第1コイル体20の先端とコアシャフト10の先端とが固着されている。なお、先端接合部40は、エポキシ系接着剤などの接着剤によって形成され、接着剤により第1コイル体20の先端とコアシャフト10の先端とが固着されていてもよい。基端側接合部50は、コアシャフト10の外周に設けられた環形状(リング状)の部位であり、ここでは、先端接合部40と同じ材料によって形成されている。なお、基端側接合部50は、先端接合部40と異なる材料によって形成されていてもよい。
【0020】
第1コイル体20は、1つまたは複数のコイルによって構成された金属製の筒状体であり、コアシャフト10の先端側の外周を覆うようにコアシャフト10に巻回されている。ここでは、第1コイル体20は、コアシャフト10の細径部13に巻き回されている。第1コイル体20を構成するコイルは、円形断面の1本の素線を螺旋状に巻いて円筒形状に形成した単コイルであってもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚線を円筒形状に形成した中空撚線コイルであってもよい。また、第1コイル体20は、単コイルと中空撚線コイルを組み合わせて構成されていてもよい。第1コイル体20は、例えば、ステンレス合金(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成することができる。第1コイル体20は、上記以外の公知の金属材料(合金組成物を含む)によって形成されていてもよい。第1コイル体20の先端は、先端接合部40によってコアシャフト10の先端と接合されている。第1コイル体20の基端は、第2コイル体30の先端と接している。第1コイル体20の基端と第2コイル体30の先端は図示しない固定部材によってコアシャフト10に固定されていてもよい。第1コイル体20の長さは任意の長さとすることができるが、例えば、10mm~15mmの範囲とすることができる。
【0021】
第2コイル体30は、第1コイル体20の基端側に配置された金属製の筒状体であり、コアシャフト10の外周を覆うようにコアシャフト10に巻回されている。ここでは、第1コイル体20は、コアシャフト10の細径部13に巻き回されている。
図3に示すように、第2コイル体30の外径(最大の外径)D2は、第1コイル体20の外径(最大の外径)D1よりも小さい(D1>D2)。第2コイル体30を構成するコイルの種類や材料は、第1コイル体20と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2コイル体30の基端は、基端側接合部50によってコアシャフト10に接合されている。
【0022】
樹脂チューブ60は、樹脂によって形成された筒状の部材であり、第2コイル体30の全体を覆っている。樹脂チューブ60は、加熱によって第2コイル体30の外表面に溶着している。樹脂チューブ60の先端は第1コイル体20の基端と接続されている。樹脂チューブ60は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂、シリコン樹、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン等によって形成されている。
【0023】
樹脂チューブの厚さは、第2区間にある筒状体の外径の10%以上の値にすることができる。樹脂チューブの厚さは、第2区間にある筒状体の外径の10~40%の範囲内の値にすることができ、15~40%の範囲内の値にすることができる。具体的には、
図3に示すように、樹脂チューブ60の厚さ(肉厚)T1は、第2コイル体30の外径D2の10%以上の値にすることができる。エコー画像の分解能を向上させるため、樹脂チューブ内での超音波の音速や周波数に基づき、樹脂チューブの厚さを、30μm以上の値とすることができ、詳細には、40~100μm(例えば、50~90μm)の範囲内の値に設定することができる。これにより後述するエコー画像において、第1区間S1と第2区間S2の差異をより明確にすることができる。また、樹脂チューブ60の厚さ(肉厚)T1は、第1コイル体20の外径D1と第2コイル体30の外径D2との差分((D1―D2)の1/2)±10%以内の値にすることができる。これにより、後述する第1区間S1と第2区間S2との間の段差を低減させることができる。なお、樹脂チューブ(第2区間に配置される樹脂)の厚さとは、第2区間にある筒状体の外径が最大となる位置における樹脂チューブ(第2区間に配置される樹脂)の厚さを意味する。
【0024】
本実施形態では、ガイドワイヤ1において、ガイドワイヤ1の先端から樹脂チューブ60の先端までの区間を「第1区間S1」と呼び、樹脂チューブ60の先端から樹脂チューブ60の基端までの区間を「第2区間S2」と呼ぶ。第1区間S1は、先端接合部40および第1コイル体20が配置されている区間であり、ガイドワイヤ1の先端から基端側に向かって樹脂チューブ60を備えていない区間ともいえる。第2区間S2は、第2コイル体30および樹脂チューブ60が配置されている区間であり、第1区間S1の後端側において第1区間S1と連接した区間ともいえる。
【0025】
図4は、ガイドワイヤ1の部位によるエコー反射強度の違いを説明するための図である。
図4には、図示しない超音波プローブ(探触子)から照射された超音波USがガイドワイヤ1の第1区間S1および第2区間S2において反射する様子を模式的に示している。ガイドワイヤ1の第1区間S1に照射された超音波USは、例えば、第1コイル体20の外表面等において反射し、それぞれの部位から反射波RWが生じる。第1区間S1の第1コイル体20は樹脂チューブ60で覆われていないため、第1コイル体20の外表面における音響インピーダンスの変化(第1コイル体20の音響インピーダンスと、第1コイル体20の外表面と接する媒体(例えば血液)の音響インピーダンスと、の差)が相対的に大きく、反射波RWが相対的に強くなる(エコー反射強度が高くなる)。
【0026】
ガイドワイヤ1の第2区間S2に照射された超音波USは、第1区間S1と同様に、第2コイル体30の外表面等において反射し、それぞれの部位から反射波RWが生じる。第2コイル体30の外表面は樹脂チューブ60で覆われているため、第2コイル体30の外表面における音響インピーダンスの変化(第1コイル体20の音響インピーダンスと、樹脂チューブ60の音響インピーダンスと、の差)が相対的に小さく、反射波RWが相対的に弱くなる(エコー反射強度が低くなる)。
【0027】
なお、
図4のコイル体20、30では、各々の素線が密巻きされている。例えば、コイル体20では、その素線が、
図4において互いに隣接する素線部分が接触するように、螺旋状に巻かれている(密巻きされている)。同様にコイル体30では、その素線が、
図4において互いに隣接する素線部分が接触するように、螺旋状に巻かれている(密巻きされている)。なお、前記の各コイルにおいて、各々の素線を疎巻きすることもできる。例えば、各コイルでは、その素線が、
図4において互いに隣接する素線部分が接触しないように(隙間を生じるように)に、螺旋状に巻かれてもよい(疎巻きされていてもよい)。この場合、各コイル体の互いに隣接する素線間の隙間から、超音波は各コイル体の内部へと伝わり、各コイル体の内部において反射波が生じる。コイル体の内部での超音波の反射については、後に
図9を用いて説明する。
【0028】
図5は、ガイドワイヤ1を血管BV内に配置した状態で超音波エコーによって観察した様子を例示した説明図である。
図5(A)は、血管BV内で直線状のガイドワイヤ1と、超音波プローブ(探触子)90とを例示した説明図である。
図5(B)は、血管BV内で下方向に屈曲したガイドワイヤ1と、超音波プローブ90とを例示した説明図である。
図5(C)は、ガイドワイヤ1が
図5(A)の状態のときに超音波プローブ90による超音波エコーによって生成された超音波画像(エコー画像)EIである。
図5(D)は、ガイドワイヤ1が
図5(B)の状態のときに超音波プローブ90による超音波エコーによって生成されたエコー画像EIである。
【0029】
本実施形態のガイドワイヤ1は、
図4で示したとおり、第1区間S1と第2区間S2のそれぞれのエコー反射強度が異なっている。そのため、
図5(C)および
図5(D)に示すように、エコー画像EIにおいて、ガイドワイヤ1を表すガイドワイヤ画像GWIには、第1区間S1に対応する相対的に明るい部分と、第2区間S2に対応する相対的に暗い部分が生じる。第1区間S1に対応する部分と、第2区間S2に対応する部分の明度の違いにより、第1区間S1と第2区間S2の位置を特定し、ここからガイドワイヤ1の先端位置を容易に推定することができる。従来から、ガイドワイヤの先端が下方に屈曲すると、ガイドワイヤ先端が超音波プローブ(探触子)の検出範囲から外れ、エコー画像において屈曲位置がガイドワイヤの先端位置のように表示される問題があった。しかし、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、
図5(B)のように、ガイドワイヤ1の先端が下方向に屈曲していると、
図5(D)に示すように、第1区間S1に対応する部分が第2区間S2に対応する部分に対して相対的に短く表示される。これにより、ガイドワイヤ1の屈曲位置を先端位置と誤認することを抑制できる。また、術者であれば、
図5(D)における第1区間S1の短さから、ガイドワイヤ1が下方向に屈曲していることを認識することができる。このように、エコー画像EIに表示される第1区間S1と第2区間S2のそれぞれの状態から、ガイドワイヤ1の状態を容易に認識することができる。
【0030】
なお、以上の説明では、第1区間S1と第2区間S2のエコー画像の明暗に基づき、ガイドワイヤの状態を識別できることを説明した。これ以外にも、第2区間S2では、樹脂チューブの外周面における反射波と、内周面における反射波が生じ、あるいは樹脂チューブ内での超音波の減衰が生じる。これらの反射波を超音波プローブが受信すると、例えば、第2区間S2のエコー画像が二重に見えるなど、第1区間S1のエコー画像との相違が生じる。このような相違に基づいて、ガイドワイヤ1の状態を認識することもできる。
【0031】
図6は、比較例のガイドワイヤ1Aを血管BV内に配置した状態で超音波エコーによって観察した様子を例示した説明図である。
図6(A)~
図6(D)は、
図5(A)~
図5(D)にそれぞれ対応している。比較例のガイドワイヤ1Aは、先端部のコイル体が樹脂チューブに覆われていない。言い換えると、比較例のガイドワイヤ1Aは、第1実施形態の第1区間S1と同様の構成の第1区間S1Aのみを有しており、第1実施形態の第2区間S2に対応する部分を有していない。
【0032】
比較例のガイドワイヤ1Aは、第1区間S1Aの先端から基端までエコー反射強度が一定となっている。また、ガイドワイヤ1Aは、第1区間S1Aと、第1区間S1Aよりも基端側のコアシャフト部分のエコー反射強度もほぼ一定となっている。そのため、
図6(C)および
図6(D)に示すように、ガイドワイヤ1Aを表すガイドワイヤ画像GWIには、第1区間S1Aに対応する部分と、それよりも基端側の部分は、同程度の明度で表示されるため、区別がつきにくい。よって、
図6(A)のようにガイドワイヤ1Aの先端が真っ直ぐの場合と、
図6(B)のようにガイドワイヤ1Aの先端が下方向に屈曲している場合とで、エコー画像EIが同様に表される(
図6(C)および
図6(D))。その結果、
図6(D)において、ガイドワイヤ1Aの屈曲位置をガイドワイヤ1Aの先端位置と誤認するおそれがあった。
【0033】
一方、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、樹脂チューブ60を備えていない第1区間S1と、樹脂チューブ60を備える第2区間S2と、が連接しているため、
図5(C)、
図5(D)に示すように、超音波画像(エコー画像)EIのガイドワイヤ画像GWIにおいて第1区間S1と第2区間S2の位置を容易に識別することができる。よって、エコー画像EIに表示されるガイドワイヤ1の先端位置の状態を把握しやすくする(視認性の向上を図る)ことができる。また、
図4に示すように、樹脂チューブ60は、第2コイル体30の外表面に配置されているため、第2コイル体30の外表面におけるエコー反射強度を低減させることができる。これにより、エコー画像EIに表示される第1区間S1と第2区間S2の差異より明確にすることができる。
【0034】
本実施形態のガイドワイヤ1によれば、第2コイル体30の外径D2が第1コイル体20の外径D1よりも小さいため、エコー画像EIにおいて、第2コイル体30に対応する部分が第1コイル体20に対応する部分よりも小さく目立たなくなり、第1区間S1と第2区間S2との差異をより大きく(明確に)することができる。また、第2コイル体30の外径D2が第1コイル体20の外径D1よりも小さいため、第2コイル体30の外側に樹脂チューブ60を配置しても、第2区間S2の外径(D2+(T1×2))と、第1区間S1の外径(D1)との差を低減でき、第1区間S1と第2区間S2との境界部における段差の発生を抑制することができる。
【0035】
本実施形態のガイドワイヤ1によれば、コイル体(第1コイル体20および第2コイル体30)を、エコー画像EIにおいてガイドワイヤ先端を特定するためのマーカとして利用している。そのため、コイル体によって、ガイドワイヤ先端の柔軟性を確保しつつ、エコー画像に表示されるガイドワイヤの視認性の向上を図ることができる。
【0036】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のガイドワイヤ1Bの全体構成を例示した説明図である。
図8は、ガイドワイヤ1Bの断面構成を例示した説明図である。第2実施形態のガイドワイヤ1Bは、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)と比較すると、第1実施形態の樹脂チューブ60に対応する樹脂チューブ80がコイル体の内側に配置されている点と、第1実施形態の2つのコイル体(第1コイル体20および第2コイル体30)の代わりに、単一のコイル体20bが配置されている点と、このコイル体20bでは、その素線が、
図9において互いに隣接する素線部分が接触しないように(隙間を生じるように)に、螺旋状に巻かれている(疎巻きされている)点が主に異なる。
【0037】
ガイドワイヤ1Bは、コアシャフト10と、コイル体20bと、先端接合部(先端チップ)40と、基端側接合部50と、樹脂チューブ80と、樹脂被膜70と、を備えている。コアシャフト10、先端接合部40、および、基端側接合部50は、第1実施形態と同様のため説明を省略する。コイル体20bは、第1実施形態の第1コイル体20と比較すると、長さのみが異なり、それ以外の点は同様である。第2実施形態のコイル体20bの先端は、先端接合部40によってコアシャフト10の先端と接合されている。コイル体20bの基端は、基端側接合部50によってコアシャフト10に接合されている。
【0038】
樹脂チューブ80は、樹脂によって形成された筒状の部材であり、コイル体20bの内側において、コアシャフト10を覆っている。樹脂チューブ80は、加熱によってコイル体20bの内表面およびコアシャフト10の外表面に溶着している。樹脂チューブ80の長さは、コイル体20bの長さよりも短く、コイル体20bの内側のうち、コイル体20bの後端側にのみ配置されている。樹脂チューブ80の基端は、コイル体20bの基端と同様に基端側接合部50に接続されている。樹脂チューブ80は、第1実施形態の樹脂チューブ60と同様の材料によって形成されている。
【0039】
樹脂被膜70は、コイル体20bの外表面を被覆する光透過性を有する樹脂の薄膜層である。樹脂被膜70は、ここでは透明の被膜であり、ガイドワイヤ1Bの全体を被覆している。樹脂被膜70は、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン等を用いてもよい。樹脂被膜70の外表面は、平坦であってもよいし、延伸方向に沿って凹凸部が形成されていてもよい。
【0040】
ガイドワイヤ1Bにおいて、ガイドワイヤ1Bの先端から樹脂チューブ80の先端までの区間を「第1区間S1B」と呼び、樹脂チューブ80の先端から樹脂チューブ80の基端までの区間を「第2区間S2B」と呼ぶ。第1区間S1Bは、先端接合部40およびコイル体20bのうちの先端側が配置されている区間であり、ガイドワイヤ1Bの先端から基端側に向かって樹脂チューブ80を備えていない区間ともいえる。第2区間S2Bは、コイル体20bのうちの後端側および樹脂チューブ80が配置されている区間であり、第1区間S1Bの後端側において第1区間S1Bと連接した区間ともいえる。
【0041】
図9は、ガイドワイヤ1Bの部位によるエコー反射強度の違いを説明するための図である。
図9は、第1実施形態の
図4に対応しており、図示しない超音波プローブ(探触子)から照射された超音波USがガイドワイヤ1Bの第1区間S1Bおよび第2区間S2Bにおいて反射する様子を模式的に示している。ガイドワイヤ1Bの第1区間S1Bに照射された超音波USは、例えば、コイル体20bの外表面や内表面、コアシャフト10の外表面等において反射し、それぞれの部位から反射波RWが生じる。第1区間S1Bのコイル体20bの内側には樹脂チューブ80が配置されていないため、コイル体20bの内表面、および、コアシャフト10の外表面における音響インピーダンスの変化(コイル体20bと、コイル体20bに接する媒体(例えば血液)との音響インピーダンスの差、および、コアシャフト10と、コアシャフト10に接する媒体との音響インピーダンスの差)が相対的に大きく、反射波RWが相対的に強くなる(エコー反射強度が高くなる)。
【0042】
ガイドワイヤ1Bの第2区間S2Bに照射された超音波USは、第1区間S1Bと同様に、コイル体20bの外表面や内表面、コアシャフト10の外表面等において反射し、それぞれの部位から反射波RWが生じる。第2区間S2Bのコイル体20bの内側には樹脂チューブ80が配置されているため、コイル体20bの内表面、および、コアシャフト10の外表面における音響インピーダンスの変化(コイル体20bと、樹脂チューブ80との音響インピーダンスの差、および、コアシャフト10と、樹脂チューブ80との音響インピーダンスの差)が相対的に小さく、反射波RWが相対的に弱くなる(エコー反射強度が低くなる)。
【0043】
このように、粗巻きされたコイル体20bを用いることで、コイル体20bの内部においても反射波RWを生じるため、第1区間と第2区間での反射波の強弱に違いを生じる。
【0044】
図10は、第2実施形態のガイドワイヤ1Bを血管BV内に配置した状態で超音波エコーによって観察した様子を例示した説明図である。
図10は、第1実施形態の
図5に対応している。
図10(A)は、血管BV内で直線状のガイドワイヤ1Bと、超音波プローブ(探触子)90とを例示した説明図である。
図10(B)は、血管BV内で下方向に屈曲したガイドワイヤ1Bと、超音波プローブ90とを例示した説明図である。
図10(C)は、ガイドワイヤ1Bが
図10(A)の状態のときに超音波プローブ90による超音波エコーによって生成された超音波画像(エコー画像)EIである。
図10(D)は、ガイドワイヤ1Bが
図10(B)の状態のときに超音波プローブ90による超音波エコーによって生成されたエコー画像EIである。
【0045】
ガイドワイヤ1Bは、
図9で示したとおり、第1区間S1Bと第2区間S2Bのそれぞれのエコー反射強度が異なっている。そのため、
図10(C)および
図10(D)に示すように、ガイドワイヤ1Bを表すガイドワイヤ画像GWIには、第1区間S1Bに対応する相対的に明るい部分と、第2区間S2Bに対応する相対的に暗い部分が生じる。第1区間S1Bに対応する部分と、第2区間S2Bに対応する部分の明度の違いにより、第1区間S1Bと第2区間S2Bの位置を特定し、ここからガイドワイヤ1Bの先端位置を容易に推定することができる。ガイドワイヤ1Bによれば、
図10(B)のように、ガイドワイヤ1Bの先端が下方向に屈曲していると、
図10(D)に示すように、第1区間S1Bに対応する部分が第2区間S2Bに対応する部分に対して相対的に短く表示される。これにより、ガイドワイヤ1Bの屈曲位置を先端位置と誤認することを抑制できる。また、術者であれば、
図10(D)における第1区間S1Bに対応する部分の短さから、ガイドワイヤ1Bが下方向に屈曲していると認識することができる。このように、エコー画像EIに表示される第1区間S1Bと第2区間S2Bのそれぞれの状態から、ガイドワイヤ1Bの状態を容易に認識することができる。
【0046】
以上説明した、第2実施形態のガイドワイヤ1Bのように、樹脂チューブ80をコイル体20bの内側に配置しても、エコー画像におけるガイドワイヤの視認性の向上を図ることができる。すなわち、第2実施形態のガイドワイヤ1Bであっても、樹脂チューブ80を備えていない第1区間S1Bと、樹脂チューブ80を備える第2区間S2Bと、が連接しているため、
図10(C)、
図10(D)に示すように、超音波画像(エコー画像)EIのガイドワイヤ画像GWIにおいて第1区間S1Bと第2区間S2Bの位置を容易に識別することができる。よって、エコー画像EIに表示されるガイドワイヤ1Bの先端位置の状態を把握しやすくする(視認性の向上を図る)ことができる。
【0047】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態のガイドワイヤ1Cの断面構成を例示した説明図である。第3実施形態のガイドワイヤ1Cは、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)と比較すると、第1実施形態の2つのコイル体(第1コイル体20および第2コイル体30)の代わりに、単一のコイル体20cが配置されている点と、コイル体20cおよび樹脂チューブ60cの表面に樹脂被膜70が形成されている点が主に異なる。
【0048】
ガイドワイヤ1Cは、コアシャフト10と、コイル体20cと、先端接合部40と、基端側接合部50と、樹脂チューブ60cと、樹脂被膜70と、を備えている。コアシャフト10、先端接合部40、基端側接合部50は、および、樹脂被膜70は、第1、2実施形態と同様のため説明を省略する。コイル体20cは、第1実施形態の第2コイル体30と比較すると、長さのみが異なり、それ以外の点は同様である。第3実施形態のコイル体20cの先端は、先端接合部40に接合され、基端は、基端側接合部50に接合されている。
【0049】
樹脂チューブ60cは、樹脂によって形成された筒状の部材であり、コイル体20cのうちの基端側を覆い、加熱によって第2コイル体30の基端側の外表面に溶着している。樹脂チューブ60cの長さは、コイル体20cよりも短く、コイル体20cのうち、コイル体20cの基端側のみを覆い、コイル体20cの先端側を覆っていない。樹脂チューブ60cは、第1実施形態の樹脂チューブ60と同様の材料によって形成されている。
【0050】
ガイドワイヤ1Cにおいて、ガイドワイヤ1Cの先端から樹脂チューブ60cの先端までの区間を「第1区間S1C」と呼び、樹脂チューブ60cの先端から樹脂チューブ60cの基端までの区間を「第2区間S2C」と呼ぶ。第1区間S1Cは、ガイドワイヤ1Cの先端から基端側に向かって樹脂チューブ60cを備えていない。第2区間S2Cは、樹脂チューブ60cを備え、第1区間S1Cの後端側において第1区間S1Cと連接している。ガイドワイヤ1Cは、第1区間S1Cと第2区間S2Cのそれぞれのエコー反射強度が異なっている。そのため、エコー画像において、第1区間S1Cに対応する相対的に明るい部分と、第2区間S2Cに対応する相対的に暗い部分が生じる。第1区間S1Cに対応する部分と、第2区間S2Cに対応する部分の明度の違いにより、第1区間S1Cと第2区間S2Cの位置を特定し、ここからガイドワイヤ1Cの先端位置を容易に推定することができる。
【0051】
以上説明した、第3実施形態のガイドワイヤ1Cのように、先端部のコイルが単一のコイル体20cによって構成されていても、エコー画像に表示されるガイドワイヤの視認性の向上を図ることができる。なお、第1実施形態のガイドワイヤ1は、2つのコイル体の外径の違いによって樹脂チューブによって生じる段差の低減を図ることができるためより好ましい。
【0052】
<第4実施形態>
図12は、第4実施形態のガイドワイヤ1Dの断面構成を例示した説明図である。第4実施形態のガイドワイヤ1Dは、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)と比較すると、第1実施形態の樹脂チューブ60に対応する樹脂チューブ80dがコイル体の内側に配置されている点と、第1実施形態の2つのコイル体(第1コイル体20および第2コイル体30)の代わりに、単一のコイル体20dが配置されている点が主に異なる。第2実施形態のガイドワイヤ1B(
図8)と比較すると、樹脂チューブ80dがコイル体20dの内表面に接触していない点と、樹脂チューブ80dの基端が基端側接合部50と接触していない点と、コイル体20dが密巻きである点が主に異なる。コイル体20dは疎巻きであってもよい。
【0053】
ガイドワイヤ1Dは、コアシャフト10と、コイル体20dと、先端接合部40と、基端側接合部50と、樹脂チューブ80dと、樹脂被膜70と、を備えている。コアシャフト10、コイル体20d、先端接合部40、基端側接合部50は、および、樹脂被膜70は、第2実施形態と同様のため説明を省略する。樹脂チューブ80dは、樹脂によって形成された筒状の部材であり、コイル体20dの内側において、コアシャフト10を覆っている。樹脂チューブ80の外径は、コイル体20dの内径よりも小さく、樹脂チューブ80の外表面とコイル体20d内表面との間には隙間がある。樹脂チューブ80dの長さは、コイル体20dの長さよりも短く、樹脂チューブ80dはコイル体20dの内側のうち、コイル体20dの中央付近に配置され、コイル体20dの先端および後端との間にそれぞれ所定の距離の隙間を有している。樹脂チューブ80dは、第1実施形態の樹脂チューブ60と同様の材料によって形成されている。
【0054】
ガイドワイヤ1Dにおいて、ガイドワイヤ1Dの先端から樹脂チューブ80dの先端までの区間を「第1区間S1D」と呼び、樹脂チューブ80dの先端から樹脂チューブ80dの基端までの区間を「第2区間S2D」と呼ぶ。このとき、第1区間S1Dは、ガイドワイヤ1Dの先端から基端側に向かって樹脂チューブ80dを備えていない。第2区間S2Dは、樹脂チューブ80dを備え、第1区間S1Dの後端側において第1区間S1Dと連接している。ガイドワイヤ1Dは、第1区間S1Dと第2区間S2Dのそれぞれのエコー反射強度が異なっている。そのため、エコー画像において、第1区間S1Dに対応する相対的に明るい部分と、第2区間S2Dに対応する相対的に暗い部分が生じる。第1区間S1Dに対応する部分と、第2区間S2Dに対応する部分の明度の違いにより、第1区間S1Dと第2区間S2Dの位置を特定し、ここからガイドワイヤ1Dの先端位置を容易に推定することができる。
【0055】
以上説明した、第4実施形態のガイドワイヤ1Dのように、コイル体20dの内側に配置された樹脂チューブ80dの基端がコイル体20dの基端よりも先端側に位置していても、エコー画像におけるガイドワイヤの先端の視認性の向上を図ることができる。また、樹脂チューブ80dの外表面がコイル体20dの内表面と接触していなくても、エコー画像に表示されるガイドワイヤの視認性の向上を図ることができる。
【0056】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
[変形例1]
第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)において、第1コイル体20および樹脂チューブ60の外表面に樹脂被膜70(
図8)が形成されていてもよい。この場合であっても、樹脂被膜70の音響インピーダンスと樹脂チューブ60の音響インピーダンスが異なっていれば、エコー画像に表示されるガイドワイヤ1の視認性の向上を図ることができる。例えば、樹脂被膜70の音響インピーダンスが樹脂チューブ60の音響インピーダンスよりも小さい場合、第1コイル体20の外表面における音響インピーダンスの変化(第1コイル体20の音響インピーダンスと、樹脂被膜70の音響インピーダンスと、の差)が相対的に大きく、反射波RWが相対的に強くなる(エコー反射強度が高くなる)。一方、第2コイル体30の外表面における音響インピーダンスの変化(第1コイル体20の音響インピーダンスと、樹脂チューブ60の音響インピーダンスと、の差)が相対的に小さく、反射波RWが相対的に弱くなる(エコー反射強度が低くなる)。これにより、エコー画像において、第1区間S1に対応する部分と第2区間S2に対応する部分の明度に差異が生じる。ここからガイドワイヤ1の先端位置を容易に推定することができる。
【0058】
[変形例2]
第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)において、樹脂チューブ60の基端は、第2コイル体30の基端よりも先端側に位置し、基端側接合部50に接触していなくてもよい。または、樹脂チューブ60の基端は、第2コイル体30の基端よりも基端側に位置し、基端側接合部50やテーパー部14を覆っていていてもよい。
【0059】
[変形例3]
第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)において、第1コイル体20と第2コイル体30の代わりに、先端側と基端側とで外径の異なる単一のコイルを使用してもよい。また、第1コイル体20と第2コイル体30の少なくとも一方を、2つ以上のコイル体で構成してもよい。また、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)において、第1コイル体20と第2コイル体30の代わりに、金属製のチューブを使用してもよい。第2~4実施形態においても同様に、コイル体の代わりに金属製のチューブを使用してもよい。
【0060】
[変形例4]
第1~4実施形態の樹脂チューブ60、80、60c、80dは、複数種類の樹脂によって形成されていてもよい。また、樹脂チューブ60、80、60c、80dは、複数のチューブによって構成されていてもよい。また、第1~4実施形態において、樹脂チューブ60、80、60c、80dの代わりに、チューブ状ではない樹脂を用いてもよい。この場合、樹脂は、横断面形状が環形状になっていなくてもよい。
【0061】
[変形例5]
第1~4実施形態のガイドワイヤの構成は、適宜、組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態の樹脂チューブ80(
図8)に対して、第4実施形態の樹脂チューブ80d(
図12)の構成を組合せ、第2実施形態の樹脂チューブ80の外表面がコイル体20bの内表面に接触しないように構成してもよい。または、第2実施形態の樹脂チューブ80の基端が基端側接合部50と接触しないよいにしてもよい。また、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図2)に対して、第2実施形態の樹脂チューブ80の構成を組合せ、第1実施形態のガイドワイヤ1は、樹脂チューブがコイル体の内側と外側の両方に配置されていてもよい。第1~4実施形態のコイル体は、全体が密巻きであってもよいし、疎巻きであってもよい。また、一部が疎巻きで残部が密巻きであってもよい。
【0062】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A~1D…ガイドワイヤ
10…コアシャフト
13…細径部
14…テーパー部
15…太径部
20…第1コイル体
20b~20d…コイル体
30…第2コイル体
40…先端接合部
50…基端側接合部
60、60c、80、80d…樹脂チューブ
70…樹脂被膜
90…超音波プローブ
BV…血管
EI…エコー画像
US…超音波
RW…反射波
GWI…ガイドワイヤ画像