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特許7596084多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020107144
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022002281
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】メクテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】小島 渉
(72)【発明者】
【氏名】中込 誠治
(72)【発明者】
【氏名】大庭 久恵
(72)【発明者】
【氏名】豊島 明彦
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-232665(JP,A)
【文献】特開2015-177164(JP,A)
【文献】特開平11-046063(JP,A)
【文献】特開2016-103586(JP,A)
【文献】特開2013-038280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層の上に設けられた導電パターンを、フィラーの含有率が所定値以下であり、熱硬化性を有し、光硬化性を有しない第1の接着剤層で埋設する工程と、
前記第1の接着剤層の上に、フィラーの含有率が前記所定値より大きく、熱硬化性を有し、光硬化性を有しない第2の接着剤層のみを介して、金属箔張積層板または金属箔であるビルドアップ層を積層する工程と、
加熱処理により、前記第1の接着剤層および前記第2の接着剤層を硬化させる工程と、
少なくとも前記第2の接着剤層および前記第1の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
前記ブラインドビアホールを介して前記導電パターンと前記金属箔を電気的に接続する層間接続路を形成する工程と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記第1の接着剤層は、フィラーを含有しないことを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記フィラーの含有率の前記所定値は5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記第2の接着剤層は前記第1の接着剤層よりも厚いことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記フィラーは難燃性を有する無機フィラーであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記層間接続路を形成する工程は、
前記ブラインドビアホール内に導電ペーストを充填する工程と、
前記充填された導電性ペーストを加熱して硬化させることにより、前記導電パターンと前記金属箔を電気的に接続するフィルドビアを形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記層間接続路を形成する工程は、
前記ブラインドビアホールの内壁に金属めっき層を形成することにより、前記導電パターンと前記金属箔を電気的に接続するめっきビアを形成する工程を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記層間接続路は、前記導電パターンが有するグランド配線と、前記金属箔がパターニングされてなるグランド層とを接続するように形成されることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項9】
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する第1の絶縁基材と、前記第1の主面に設けられた第1の金属箔と、前記第2の主面に設けられた第2の金属箔と、を有する両面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第1の金属箔をパターニングして導電パターンを形成する工程と、
前記導電パターンを埋設するように前記第1の主面に、フィラーの含有率が所定値以下であり、熱硬化性を有し、光硬化性を有しない第1の接着剤層を形成する工程と、
前記第1の接着剤層の上にフィラーの含有率が前記所定値より大きく、熱硬化性を有し、光硬化性を有しない第2の接着剤層を形成する工程と、
第3の主面、および前記第3の主面と反対側の第4の主面を有する第2の絶縁基材と、前記第3の主面に設けられた第3の金属箔と、を有する片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第4の主面が前記第2の接着剤層に接するように前記片面金属箔張積層板を前記第2の接着剤層の上に積層する工程と、
加熱処理により、前記第1の接着剤層および前記第2の接着剤層を硬化させる工程と、
少なくとも前記第2の接着剤層および前記第1の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項10】
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する第1の絶縁基材と、前記第1の主面に設けられた第1の金属箔と、を有する第1の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第1の金属箔をパターニングして導電パターンを形成する工程と、
前記導電パターンを埋設するように前記第1の主面に、フィラーの含有率が所定値以下である第1の接着剤層を形成する工程と、
前記第1の接着剤層の上にフィラーの含有率が前記所定値より大きい第2の接着剤層を形成する工程と、
第3の主面、および前記第3の主面と反対側の第4の主面を有する第2の絶縁基材と、前記第3の主面に設けられた第2の金属箔と、を有する第2の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第4の主面が前記第2の接着剤層に接するように前記第2の片面金属箔張積層板を前記第2の接着剤層の上に積層する工程と、
前記第1の絶縁基材の前記第2の主面にフィラーの含有率が前記所定値より大きい第3の接着剤層を形成する工程と、
第5の主面、および前記第5の主面と反対側の第6の主面を有する第3の絶縁基材と、前記第6の主面に設けられた第3の金属箔と、を有する第3の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第5の主面が前記第3の接着剤層に接するように前記第3の片面金属箔張積層板を前記第3の接着剤層の上に積層する工程と、
少なくとも前記第2の接着剤層および前記第1の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項11】
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する第1の絶縁基材と、前記第1の絶縁基材の前記第2の主面にフィラーの含有率が所定値より大きい第1の接着剤層を介して設けられた第1の金属箔と、を有する第1の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第1の絶縁基材の前記第1の主面に、フィラーの含有率が前記所定値以下である第2の接着剤層を形成する工程と、
前記第2の接着剤層の上に第2の金属箔を設ける工程と、
前記第2の金属箔をパターニングして導電パターンを形成する工程と、
前記導電パターンを埋設するように前記第2の接着剤層の上に、フィラーの含有率が前記所定値以下である第3の接着剤層を形成する工程と、
第3の主面、および前記第3の主面と反対側の第4の主面を有する第2の絶縁基材と、前記第2の絶縁基材の前記第3の主面にフィラーの含有率が前記所定値より大きい第4の接着剤層を介して設けられた第3の金属箔と、を有する第2の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第4の主面が前記第3の接着剤層に接するように前記第2の片面金属箔張積層板を前記第3の接着剤層の上に積層する工程と、
少なくとも前記第4の接着剤層、前記第2の絶縁基材および前記第3の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する誘電体層と、
前記誘電体層の前記第1の主面に設けられた導電パターンと、
前記導電パターンを埋設するように前記誘電体層の上に設けられ、フィラーの含有率が所定値以下である熱硬化性を有し光硬化性を有しない第1の接着剤層と、
前記第1の接着剤層の上に設けられ、フィラーの含有率が前記所定値より大きい熱硬化性を有し光硬化性を有しない第2の接着剤層と、
前記第2の接着剤層の上に積層された、金属箔張積層板または金属箔であるビルドアップ層と、
前記金属箔から前記第1の接着剤層までを貫通するブラインドビアホールを介して前記導電パターンと前記金属箔を電気的に接続する層間接続路と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項13】
前記層間接続路は、前記導電パターンが有するグランド配線と、前記金属箔がパターニングされてなるグランド層とを電気的に接続することを特徴とする請求項12に記載の多層プリント配線板。
【請求項14】
前記誘電体層の前記第2の主面に接着剤層を介して積層された、金属箔張積層板または金属箔であるビルドアップ層をさらに備えることを特徴とする請求項12または13に記載の多層プリント配線板。
【請求項15】
前記第1の接着剤層におけるフィラー含有率は5重量%以下であることを特徴とする請求項12~14のいずれかに記載の多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板に関し、より詳しくは、内層の導電パターンと外層の導電パターンがブラインドビアホールに形成された層間接続路で電気的に接続された構造を有する多層プリント配線板の製造方法、および多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、ノートパソコン、デジタルカメラ、ゲーム機などの電子機器においては、小型化および高速化の進展に伴い、情報処理量が急増している。このため、プリント配線板の信号伝送速度はますます高速化する傾向にある。
【0003】
スマートフォン等の携帯通信端末は、2019年から次世代通信規格5Gへの移行が始まっている。5Gでは、信号周波数が数GHzから20~30GHzになる。さらに2022年頃には、通信端末が送受信する信号の周波数は50GHz程度にまで高まる見込みである。
【0004】
周波数が高くなるにつれて信号の伝送損失が大きくなることから、信号線路における伝送損失を抑えることがますます重要となる。
【0005】
なお、信号の伝送損失を低減するために、誘電率、誘電正接(tanδ)等の誘電特性に優れた材料をプリント配線板の絶縁基材に用いることが望まれる。例えば特許文献1には、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)を適用したプリント配線板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-66293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ストリップライン構造等を有する高速伝送用の多層プリント配線板においては、内層の信号線と外層のグランド層との間の誘電体層(絶縁基材および接着剤層)を厚くすることが望ましい。信号線とグランド層間のキャパシタンスが低下するため、信号線幅を太くすることができ、導体抵抗損を低減できるからである。また、近年、優れた誘電特性(低誘電率、低誘電正接)を有する接着剤が開発されている。
【0008】
そこで、接着剤層の厚さを増やすことで、多層プリント配線板の伝送特性を向上させることが考えられる。たとえば接着剤層の厚みを絶縁基材の厚みと同程度にする等、接着剤層の厚さを従来よりも厚くすることが考えられる。接着剤層の厚みを増やそうとする場合、接着剤層の剛性や弾性を確保するために、フィラー(充填剤)を含有する接着剤を用いる必要がある。
【0009】
しかしながら、接着剤は、フィラーの含有率が高くなるにつれて流動性が低下する。このため、フィラー含有率の高い接着剤を用いる場合、内層の導電パターンの埋め込み性が低下し、多層プリント配線板の厚みの均一性を確保することが困難になる。その結果、層間距離の変動が多層プリント配線板の信号伝送特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0010】
また、フィラー含有率の高い接着剤を用いる場合、内層の導電パターンと外層の導電パターンを電気的に接続する層間接続路(フィルドビア、めっきビア等)の信頼性を確保することが困難となる。これは、レーザ光で穿孔された層間接続用のブラインドビアホールの底面に露呈した金属箔上に、フィラーを多く含む接着剤が残存することに起因する。金属箔上に残存した接着剤(樹脂残渣)にはフィラーが多く含まれるため、デスミア処理(プラズマ処理、薬液による化学処理)を行っても十分に除去することができない。その結果、金属箔と層間接続路の導電材料とが電気的に接続されず、層間接続路の信頼性を確保できないおそれがある。
【0011】
また、接着剤に多くのフィラーが添加されると、誘電特性が悪化し、多層プリント配線板の伝送特性が悪化する場合がある。
【0012】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、接着剤層の厚みを増やしても、多層プリント配線板の厚みの均一性を確保することが可能な高速伝送に適した多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板を提供することである。
【0013】
また、本発明のさらなる目的は、接着剤層の厚みを増やしても、層間接続路の信頼性を確保することが可能な高速伝送に適した多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様に係る多層プリント配線板の製造方法は、
誘電体層の上に設けられた導電パターンを、フィラーの含有率が所定値以下である第1の接着剤層で埋設する工程と、
前記第1の接着剤層の上に、フィラーの含有率が前記所定値より大きい第2の接着剤層を介して、金属箔張積層板または金属箔であるビルドアップ層を積層する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記多層プリント配線板の製造方法において、
前記第1の接着剤層は、フィラーを含有しないようにしてもよい。
【0016】
また、前記多層プリント配線板の製造方法において、
前記フィラーの含有率の前記所定値は5重量%であるようにしてもよい。
【0017】
また、前記多層プリント配線板の製造方法において、
前記第2の接着剤層は前記第1の接着剤層よりも厚いようにしてもよい。
【0018】
また、前記多層プリント配線板の製造方法において、
前記フィラーは難燃性を有する無機フィラーであるようにしてもよい。
【0019】
また、前記多層プリント配線板の製造方法において、
少なくとも前記第2の接着剤層および前記第1の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
前記ブラインドビアホールを介して前記導電パターンと前記金属箔を電気的に接続する層間接続路を形成する工程と、
をさらに備えてもよい。
【0020】
また、前記多層プリント配線板の製造方法において、
前記層間接続路は、前記導電パターンが有するグランド配線と、前記金属箔がパターニングされてなるグランド層とを接続するように形成されてもよい。
【0021】
本発明の第2の態様に係る多層プリント配線板の製造方法は、
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する第1の絶縁基材と、前記第1の主面に設けられた第1の金属箔と、前記第2の主面に設けられた第2の金属箔と、を有する両面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第1の金属箔をパターニングして導電パターンを形成する工程と、
前記導電パターンを埋設するように前記第1の主面に、フィラーの含有率が所定値以下である第1の接着剤層を形成する工程と、
前記第1の接着剤層の上にフィラーの含有率が前記所定値より大きい第2の接着剤層を形成する工程と、
第3の主面、および前記第3の主面と反対側の第4の主面を有する第2の絶縁基材と、前記第3の主面に設けられた第3の金属箔と、を有する片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第4の主面が前記第2の接着剤層に接するように前記片面金属箔張積層板を前記第2の接着剤層の上に積層する工程と、
少なくとも前記第2の接着剤層および前記第1の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の態様に係る多層プリント配線板の製造方法は、
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する第1の絶縁基材と、前記第1の主面に設けられた第1の金属箔と、を有する第1の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第1の金属箔をパターニングして導電パターンを形成する工程と、
前記導電パターンを埋設するように前記第1の主面に、フィラーの含有率が所定値以下である第1の接着剤層を形成する工程と、
前記第1の接着剤層の上にフィラーの含有率が前記所定値より大きい第2の接着剤層を形成する工程と、
第3の主面、および前記第3の主面と反対側の第4の主面を有する第2の絶縁基材と、前記第3の主面に設けられた第2の金属箔と、を有する第2の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第4の主面が前記第2の接着剤層に接するように前記第2の片面金属箔張積層板を前記第2の接着剤層の上に積層する工程と、
前記第1の絶縁基材の前記第2の主面にフィラーの含有率が前記所定値より大きい第3の接着剤層を形成する工程と、
第5の主面、および前記第5の主面と反対側の第6の主面を有する第3の絶縁基材と、前記第6の主面に設けられた第3の金属箔と、を有する第3の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第5の主面が前記第3の接着剤層に接するように前記第3の片面金属箔張積層板を前記第3の接着剤層の上に積層する工程と、
少なくとも前記第2の接着剤層および前記第1の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の態様に係る多層プリント配線板の製造方法は、
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する第1の絶縁基材と、前記第1の絶縁基材の前記第2の主面にフィラーの含有率が所定値より大きい第1の接着剤層を介して設けられた第1の金属箔と、を有する第1の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第1の絶縁基材の前記第1の主面に、フィラーの含有率が前記所定値以下である第2の接着剤層を形成する工程と、
前記第2の接着剤層の上に第2の金属箔を設ける工程と、
前記第2の金属箔をパターニングして導電パターンを形成する工程と、
前記導電パターンを埋設するように前記第2の接着剤層の上に、フィラーの含有率が前記所定値以下である第3の接着剤層を形成する工程と、
第3の主面、および前記第3の主面と反対側の第4の主面を有する第2の絶縁基材と、前記第2の絶縁基材の前記第3の主面にフィラーの含有率が前記所定値より大きい第4の接着剤層を介して設けられた第3の金属箔と、を有する第2の片面金属箔張積層板を用意する工程と、
前記第4の主面が前記第3の接着剤層に接するように前記第2の片面金属箔張積層板を前記第3の接着剤層の上に積層する工程と、
少なくとも前記第4の接着剤層、前記第2の絶縁基材および前記第3の接着剤層をレーザ光で除去して底面に前記導電パターンが露出したブラインドビアホールを形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る多層プリント配線板は、
第1の主面、および前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する誘電体層と、
前記誘電体層の前記第1の主面に設けられた導電パターンと、
前記導電パターンを埋設するように前記誘電体層の上に設けられ、フィラーの含有率が所定値以下である第1の接着剤層と、
前記第1の接着剤層の上に設けられ、フィラーの含有率が前記所定値より大きい第2の接着剤層と、
前記第2の接着剤層の上に積層された、金属箔張積層板または金属箔であるビルドアップ層と、
を備えることを特徴とする。
【0025】
また、前記多層プリント配線板において、
前記金属箔から前記第1の接着剤層までを貫通するブラインドビアホールを介して前記導電パターンと前記金属箔を電気的に接続する層間接続路をさらに備えてもよい。
【0026】
また、前記多層プリント配線板において、
前記層間接続路は、前記導電パターンが有するグランド配線と、前記金属箔がパターニングされてなるグランド層とを電気的に接続してもよい。
【0027】
また、前記多層プリント配線板において、
前記誘電体層の前記第2の主面に接着剤層を介して積層された、金属箔張積層板または金属箔であるビルドアップ層をさらに備えてもよい。
【0028】
また、前記多層プリント配線板において、前記第1の接着剤層におけるフィラー含有率は5重量%以下であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、接着剤層の厚みを増やしても、多層プリント配線板の厚みの均一性を確保することが可能な高速伝送に適した多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態に係る高周波信号伝送部品の平面図である。
図2】実施形態に係る多層プリント配線板の領域Rにおける内層の信号線およびグランド配線を示す平面図である。
図3A】第1の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図3B図3Aに続く、第1の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図3C図3Bに続く、第1の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図4A】第2の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図4B図4Aに続く、第2の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図4C図4Bに続く、第2の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図4D図4Cに続く、第2の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図5A】第3の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図5B図5Aに続く、第3の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図5C図5Bに続く、第3の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図5D図5Cに続く、第3の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図6】残膜および難燃性に係る試験に用いた試験片の構成を示す図である。
図7】試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係(縦横比)、各層の厚みの比率等は現実のものと必ずしも一致しない。
【0032】
<高周波信号伝送部品100>
まず、図1を参照して、実施形態に係る高周波信号伝送部品100について説明する。図1は、高周波信号伝送部品100の平面図を示している。この高周波信号伝送部品100は、スマートフォンやタブレット端末等の情報処理端末の筐体内に設けられ、無線信号を送受信するアンテナと、信号処理チップが実装された本体基板とを電気的に接続する。
【0033】
高周波信号伝送部品100は、図1に示すように、細長い帯状のケーブル部を構成する多層プリント配線板110と、この多層プリント配線板110の端部に設けられたコネクタ120とを備えている。
【0034】
多層プリント配線板110は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板(FPC)であり、信号線が上下のグランド層により誘電体層を介して挟まれた3層ストリップライン構造を有する。
【0035】
図2に示すように、多層プリント配線板110の内層配線パターンとして、信号線112とグランド配線113が多層プリント配線板110の長手方向に延在するように設けられている。信号線112とグランド配線113は、誘電体層111上に交互に設けられている。信号線112には、例えば数GHz~数十GHzの高周波信号が入力される。グランド配線113は、フィルドビアまたはめっきビア等の層間接続路114を介して外層のグランド層(図示せず)に電気的に接続されている。なお、信号線112の本数は図示のものに限られない。
【0036】
コネクタ120は、多層プリント配線板110の端部に設けられており、例えばメイン基板またはアンテナに電気的に接続される。このコネクタ120は、信号線112に電気的に接続された接続ピン121と、グランド配線113に電気的に接続された接続ピン122と、を有している。
【0037】
なお、多層プリント配線板110の信号線は差動線路として設けられてもよい。この場合、2本の信号線がグランド配線を挟まずに並走するように設けられる。また、一対の差動線路がグランド配線を隔てて複数組設けられてもよい。あるいは、シングルエンド構造の伝送線路と差動線路が混在して設けられてもよい。
【0038】
また、信号線112やグランド配線113の平面形状は図2に示すような直線状に限らない。例えば、特開2019-106508号公報に記載されているような形状であってもよい。
【0039】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るプリント配線板の製造方法について、図3A図3Cの工程断面図を参照しつつ説明する。
【0040】
まず、図3A(1)に示すように、両面金属箔張積層板10を用意する。この両面金属箔張積層板10は、絶縁基材11と、この絶縁基材11の上面に設けられた金属箔12と、絶縁基材11の下面に設けられた金属箔13と、を有する。金属箔12,13は、絶縁基材11の主面に形成されたシード層(図示せず)を介して絶縁基材11上に形成されている。
【0041】
絶縁基材11の材料は、特に限定されないが、たとえば、ポリイミド(PI)、変性ポリイミド(MPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂(PFA、PTFE等)などである。高速信号の伝送損失を低減する観点から、比誘電率および誘電正接(tanδ)が小さい絶縁材料が望ましい。
【0042】
絶縁基材11の厚みは、たとえば25μmである。金属箔12,13は、たとえば12μm厚の銅箔である。なお、金属箔12,13は、銅以外の金属(銀、アルミニウムなど)からなるものでもよい。
【0043】
次に、図3A(2)に示すように、両面金属箔張積層板10の金属箔12を公知のフォトファブリケーション手法によりパターニングして、導電パターン12aを形成する。この導電パターン12aは、前述の信号線112に相当する信号線のパターンと、グランド配線113に相当するグランド配線のパターンとを含む。
【0044】
次に、図3A(3)に示すように、導電パターン12aを埋設するように絶縁基材11の上面に接着剤層14を形成する。接着剤層14の厚みは、たとえば17μmである。
【0045】
接着剤層14は、絶縁基材11上に接着剤を塗布して形成してもよいし、あるいは、保護フィルム(カバーレイ)の片面に接着剤層が形成された接着剤層付き保護フィルム(図示せず)を絶縁基材11にラミネートした後、保護フィルムを剥離することで形成してもよい。
【0046】
接着剤層14のフィラーの含有率は所定値以下(たとえば5重量%以下)である。好ましくは、接着剤層14はフィラーを全く含まない。フィラーの含有率が低い接着剤は流動性が高いため、導電パターン12aの埋め込み性を向上させることができる。その結果、多層プリント配線板の厚みの均一性を向上させることができる。
【0047】
次に、図3A(4)に示すように、接着剤層14の上に接着剤層15を形成する。接着剤層15は、接着剤を接着剤層14上に塗布して形成してもよいし、あるいは、保護フィルムの片面に接着剤層が形成された接着剤層付き保護フィルム(図示せず)を接着剤層14にラミネートした後、保護フィルムを剥離することで形成してもよい。
【0048】
接着剤層15はフィラーを含む接着剤層であり、フィラーの含有率が所定値より大きい。フィラーの含有率は、接着剤層15の厚さ、多層プリント配線板に要求される厚みの均一性の程度等により決定される。たとえば、接着剤層15のフィラーの含有率は、25重量%である。接着剤層15の厚みは、たとえば20μmである。
【0049】
なお、フィラーの材料は特に限定されないが、多層プリント配線板の耐熱性、難燃性を向上させるため、耐熱性、難燃性を有する無機フィラーを用いてもよい。この場合、たとえば、ホスフィン酸金属塩系難燃剤(ホスフィン酸アルミニウム塩等)を含むフィラーが用いられる。
【0050】
接着剤層14,15の材料としては、熱硬化性を有し、十分な接着強度を確保できるものを用いる。たとえば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド等を主成分とする接着剤を用いる。なお、絶縁基材11の誘電特性と同等もしくはそれ以上の誘電特性を有する接着剤を用いてもよい。
【0051】
次に、図3B(1)に示すように、片面金属箔張積層板20からなるビルドアップ層を接着剤層15上に積層する。片面金属箔張積層板20は、絶縁基材21と、この絶縁基材21の上面に設けられた金属箔22と、を有する。金属箔22は、シード層(図示せず)を介して絶縁基材21上に形成されている。
【0052】
絶縁基材21の材料は、特に限定されないが、絶縁基材11と同様の材料が適用可能である。高速信号の伝送損失を低減する観点から、比誘電率および誘電正接が小さい絶縁材料が望ましい。
【0053】
絶縁基材21の厚みは、たとえば25μmである。金属箔22は、たとえば12μm厚の銅箔である。なお、金属箔22は、銅以外の金属(銀、アルミニウムなど)からなるものでもよい。
【0054】
ビルドアップ層を積層する工程は、絶縁基材21が接着剤層15と対向するように片面金属箔張積層板20を接着剤層15の上に積層した後、真空プレス装置または真空ラミネータ装置を用いて加熱加圧することで行われる。本工程の加熱処理により、接着剤層14,15は硬化し、図3B(1)に示す積層体が得られる。
【0055】
次に、図3B(2)に示すように、金属箔22にレーザ光を照射することにより、金属箔22、絶縁基材21、接着剤層15および接着剤層14を除去して、底面に導電パターン12a(グランド配線)が露出したブラインドビアホール(BVH)H1を形成する。なお、金属箔22を予めパターニングして、ブラインドビアホールを形成する位置に開口を有するコンフォーマルマスクを形成しておき、当該コンフォーマルマスクを用いてブラインドビアホールH1を形成してもよい。
【0056】
より詳しくは、まず、COレーザ加工機を用いてレーザパルスを積層体の所定位置に照射して穿孔する。ブラインドビアホールH1の径は、例えばφ150μm~200μmである。その後、デスミア処理を行い、導電パターン12aの樹脂残渣(残膜)を除去する。前述のように、導電パターン12aを埋設する接着剤層14のフィラー含有率が所定値以下であるため、デスミア処理により残膜を除去することができる。
【0057】
同様にして、図3B(2)に示すように、金属箔13にレーザ光を照射することにより、金属箔13および絶縁基材11を除去して、底面に導電パターン12a(グランド配線)が露出したブラインドビアホールH2を形成する。ブラインドビアホールH2の径は、例えばφ150μm~200μmである。ブラインドビアホールH2のデスミア処理では、導電パターン12aの裏面処理膜(Ni/Cr膜等)を除去する。
【0058】
次に、図3C(1)に示すように、スクリーン印刷等の印刷手法により、ブラインドビアホールH1内に導電ペースト31を充填し、ブラインドビアホールH2内に導電ペースト32を充填する。導電ペースト31,32は、ペースト状の熱硬化性樹脂である樹脂バインダーに金属粒子を分散させたものである。
【0059】
導電ペースト31,32の充填後、導電ペースト31,32に加熱処理を施す。これにより、導電ペースト31,32に含まれる金属粒子が互いに金属結合するととともに、導電ペースト31,32のバインダー樹脂の熱硬化反応が完了する。このようにして、図3C(2)に示すように、層間接続路としてのフィルドビア31c,32cが形成される。
【0060】
次に、図3C(2)に示すように、公知のファブリケーション手法により金属箔13,22をパターニングして、導電パターン13a,22aを形成する。導電パターン13a,22aは、フィルドビア31c,32cと電気的に接続されるグランド層を含む。
【0061】
その後、必要に応じて、外側に露出した配線層の表面処理、表面保護膜の形成、および外形加工等を行う。
【0062】
上記の工程を経て、図3C(2)に示すように、第1の実施形態に係る多層プリント配線板1が得られる。
【0063】
なお、上記の製造方法では、接着剤層15を接着剤層14上に形成した後に片面金属箔張積層板20を積層したが、これに限られない。たとえば、接着剤層15を片面金属箔張積層板20の絶縁基材21の下面に形成しておき、その片面金属箔張積層板20を接着剤層14上に積層してもよい。
【0064】
また、絶縁基材11の厚みを絶縁基材21と接着剤層15の厚みの和程度としてもよい。これにより、導電パターン12aを中心に厚み方向にほぼ対称な構造有する多層プリント配線板1が得られる。
【0065】
また、両面金属箔張積層板10としては、金属箔12,13が接着剤層(図示せず)を介して絶縁基材11上に形成されたものを用いてもよい。同様に、片面金属箔張積層板20としては、金属箔22が接着剤層(図示せず)を介して絶縁基材21上に形成されたものを用いてもよい。
【0066】
なお、上記の製造方法では、ビルドアップ層として片面金属箔張積層板20を用いたが、これに限らず、金属箔をビルドアップ層として用いてもよい。この場合、接着剤層15の上に金属箔が直接積層される。
【0067】
また、上記の製造方法では、層間接続路として導電ペーストを硬化させてなるフィルドビアを形成したが、これに限らず、めっきビアを形成してもよい。この場合、ブラインドビアホールH1,H2の内壁に金属めっき層(たとえば銅めっき層)を形成することにより、導電パターン12aと金属箔13,22を電気的に接続するめっきビアを形成する。
【0068】
上記のように、第1の実施形態では、絶縁基材11上に形成された導電パターン12aはフィラー含有率が所定値以下の接着剤層14で被覆される。そして、接着剤層14の上に、フィラー含有率が所定値より大きい接着剤層15を介して、ビルドアップ層(金属箔張積層板または金属箔)が積層される。
【0069】
これにより、第1の実施形態によれば、導電パターン12aと導電パターン22a間の誘電体層を厚くするために接着剤層15の厚みを増やした場合でも、多層プリント配線板1の厚みの均一性を確保することができる。その結果、高速信号の伝送に適した多層プリント配線板を提供することができる。
【0070】
さらに、導電パターン12aが接着剤層14により埋設されているため、ブラインドビアホールH1を形成する際に導電パターン12aに残膜が発生することを防止できる。すなわち、従前のように穿孔後のデスミア処理によって、導電パターン12a上の残膜を除去することができる。よって、本実施形態によれば、フィラー含有率の高い接着剤層を形成した場合であっても、層間接続路の信頼性を確保することができる。
【0071】
また、接着剤層15が難燃性を有するフィラーを所定値以上の含有率で含有するため、耐熱性、難燃性に優れた多層プリント配線板を提供することができる。
【0072】
さらに、導電パターン12aを埋設する接着剤層14のフィラー含有率が低いため、接着剤層14と絶縁基材11との間の接着強度を十分に確保することができる。その結果、曲げに強い多層フレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【0073】
さらに、第1の実施形態では、導電パターン12aの信号線をフィラー含有率の低い(すなわち、誘電率の低い)接着剤層で埋設するので、高速信号の伝送特性の向上を図ることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るプリント配線板の製造方法について、図4A図4Dの工程断面図を参照しつつ説明する。各図において第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。第1の実施形態との相違点の一つは、第2の実施形態では、片面金属箔張積層板を出発材料とし、その上面側だけでなく、下面側にもビルドアップ層を積層する点である。
【0075】
まず、図4A(1)に示すように、片面金属箔張積層板10Aを用意する。この片面金属箔張積層板10Aは、絶縁基材11と、この絶縁基材11の上面に設けられた金属箔12と、を有する。金属箔12は、絶縁基材11の主面に形成されたシード層(図示せず)を介して絶縁基材11上に形成されている。
【0076】
次に、図4A(2)に示すように、片面金属箔張積層板10Aの金属箔12を公知のフォトファブリケーション手法によりパターニングして、導電パターン12aを形成する。
【0077】
次に、図4A(3)に示すように、導電パターン12aを埋設するように絶縁基材11の上面に接着剤層14を形成する。
【0078】
次に、図4A(4)に示すように、接着剤層14の上に接着剤層15を形成する。
【0079】
次に、図4B(1)に示すように、片面金属箔張積層板20からなるビルドアップ層を接着剤層15上に積層する。本実施形態では、本工程において、加熱加圧処理を行わない。
【0080】
次に、図4B(2)に示すように、絶縁基材11の下面に接着剤層15Aを形成する。接着剤層15Aは、接着剤を絶縁基材11の下面に塗布して形成してもよいし、あるいは、保護フィルムの片面に接着剤層が形成された接着剤層付き保護フィルム(図示せず)を絶縁基材11の下面にラミネートした後、保護フィルムを剥離することで形成してもよい。
【0081】
接着剤層15Aはフィラーを含む接着剤層であり、フィラーの含有率が所定値より大きい。フィラーの含有率は、接着剤層15Aの厚さ、多層プリント配線板に要求される厚みの均一性の程度等により決定される。たとえば、接着剤層15Aのフィラーの含有率は、25重量%である。接着剤層15Aの厚みは、たとえば20μmである。なお、接着剤層15Aのフィラーの材料は、第1の実施形態で説明した接着剤層15のフィラーの場合と同様である。難燃性フィラーを含有する接着剤を用いてもよい。
【0082】
次に、図4C(1)に示すように、片面金属箔張積層板20Aからなるビルドアップ層を接着剤層15A上に積層する。片面金属箔張積層板20Aは、絶縁基材23と、この絶縁基材23の上面に設けられた金属箔24と、を有する。金属箔24は、シード層(図示せず)を介して絶縁基材23上に形成されている。
【0083】
絶縁基材23の材料は、特に限定されないが、絶縁基材11,21と同様の材料が適用可能である。金属箔24の材料は、第1の実施形態で説明した金属箔22と同様である。
【0084】
ビルドアップ層を積層する工程は、絶縁基材23が接着剤層15Aと対向するように片面金属箔張積層板20Aを接着剤層15Aの上に積層した後、真空プレス装置または真空ラミネータ装置を用いて加熱加圧することで行われる。本工程の加熱処理により、接着剤層14,15,15Aは硬化し、図4C(1)に示す積層体が得られる。なお、ここでは、上下のビルドアップ層(片面金属箔張積層板20および20A)を積層した後に加熱加圧処理を一度にまとめて行ったが、これに限られず、各ビルドアップ層の積層後、加熱加圧処理を個別に行ってもよい。
【0085】
次に、図4C(2)に示すように、金属箔22にレーザ光を照射することにより、金属箔22、絶縁基材21、接着剤層15および接着剤層14を除去して、底面に導電パターン12a(グランド配線)が露出したブラインドビアホールH1Aを形成する。本工程の詳細は第1の実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。なお、金属箔22を予めパターニングして、ブラインドビアホールを形成する位置に開口を有するコンフォーマルマスクを形成しておき、当該コンフォーマルマスクを用いてブラインドビアホールH1Aを形成してもよい。
【0086】
同様にして、図4C(2)に示すように、金属箔24にレーザ光を照射することにより、金属箔24、絶縁基材23,接着剤層15Aおよび絶縁基材11を除去して、底面に導電パターン12a(グランド配線)が露出したブラインドビアホールH2Aを形成する。なお、金属箔24を予めパターニングして、ブラインドビアホールを形成する位置に開口を有するコンフォーマルマスクを形成しておき、当該コンフォーマルマスクを用いてブラインドビアホールH2Aを形成してもよい。
【0087】
次に、図4D(1)に示すように、スクリーン印刷等の印刷手法により、ブラインドビアホールH1A内に導電ペースト31Aを充填し、ブラインドビアホールH2A内に導電ペースト32Aを充填する。導電ペースト31A,32Aは、第1の実施形態で説明した導電ペースト31,32と同様のものである。
【0088】
導電ペースト31A,32Aの充填後、導電ペースト31A,32Aに加熱処理を施す。これにより、図4D(2)に示すように、層間接続路としてのフィルドビア31Ac,32Acが形成される。
【0089】
次に、図4D(2)に示すように、公知のファブリケーション手法により金属箔22,24をパターニングして、フィルドビア31c,32cと電気的に接続されるグランド層を含む導電パターン22a,24aを形成する。
【0090】
その後、必要に応じて、外側に露出した配線層の表面処理、表面保護膜の形成、および外形加工等を行う。
【0091】
上記の工程を経て、図4D(2)に示すように、第2の実施形態に係る多層プリント配線板1Aが得られる。
【0092】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、多層プリント配線板1の厚みの均一性を確保することができるとともに、層間接続路の信頼性を確保することができる。
【0093】
さらに、第2の実施形態によれば、片面金属箔張積層板10A,20,20Aとして同じもの(すなわち、絶縁基材11,21,23の厚みが同じ)を使用しても、導電パターン12a(信号線)を中心に厚み方向にほぼ対称な構造を有する多層プリント配線板が得られる。これにより、曲げ特性に優れた多層プリント配線板を提供することができる。
【0094】
また、接着剤層15,15Aが難燃性を有するフィラーを所定値以上の含有率で含有するため、耐熱性、難燃性に優れた多層プリント配線板を提供することができる。
【0095】
なお、上記の製造方法では、接着剤層15Aを絶縁基材11の下面に形成した後に片面金属箔張積層板20Aを積層したが、これに限られない。たとえば、接着剤層15Aを片面金属箔張積層板20Aの絶縁基材23に形成しておき、その片面金属箔張積層板20Aを絶縁基材11に積層してもよい。
【0096】
また、上記の製造方法では、ビルドアップ層として片面金属箔張積層板20,20Aを用いたが、これに限らず、金属箔をビルドアップ層として用いてもよい。この場合、金属箔が接着剤層15,15Aの上に直接積層される。
【0097】
また、上記の製造方法では、層間接続路として導電ペーストを硬化させてなるフィルドビアを形成したが、これに限らず、めっきビアを形成してもよい。この場合、ブラインドビアホールH1A,H2Aの内壁に金属めっき層(たとえば銅めっき層)を形成することにより、導電パターン12aと金属箔22,24を電気的に接続するめっきビアを形成する。
【0098】
また、片面金属箔張積層板10Aとしては、金属箔12が接着剤層(図示せず)を介して絶縁基材11上に形成されたものを用いてもよい。同様に、片面金属箔張積層板20としては、金属箔22が接着剤層(図示せず)を介して絶縁基材21上に形成されたものを用いてもよい。片面金属箔張積層板20Aとしては、金属箔24が接着剤層(図示せず)を介して絶縁基材23上に形成されたものを用いてもよい。
【0099】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るプリント配線板の製造方法について、図5A図5Dの工程断面図を参照しつつ説明する。各図において第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。第1の実施形態との相違点の一つは、第3の実施形態では、導電パターン12aが接着剤層の上に形成される点である。
【0100】
まず、図5A(1)に示すように、片面金属箔張積層板10Bを用意する。片面金属箔張積層板10Bは、絶縁基材11と、この絶縁基材11の下面に接着剤層11aを介して設けられた金属箔13と、を有する。接着剤層11aはフィラーの含有率が所定値より大きい(たとえば25重量%)。なお、接着剤層11aのフィラーの材料は、第1の実施形態で説明した接着剤層15のフィラーの場合と同様である。接着剤層11aは難燃性フィラーを含有してもよい。
【0101】
次に、図5A(2)に示すように、片面金属箔張積層板10Bの絶縁基材11の上面に、フィラーの含有率が所定値(たとえば5重量%)以下である接着剤層16を形成する。接着剤層16は、接着剤を絶縁基材11の上面に塗布して形成してもよいし、あるいは、保護フィルムの片面に接着剤層が形成された接着剤層付き保護フィルム(図示せず)を絶縁基材11の上面にラミネートした後、保護フィルムを剥離することで形成してもよい。接着剤層16はフィラーを含まなくてもよい。
【0102】
次に、図5A(3)に示すように、接着剤層16の上に金属箔17を設ける。この金属箔17は、たとえば銅箔であり、好ましくは低粗度銅箔である。なお、金属箔17の材料は銅に限られない。本工程では、より詳しくは、接着剤層16上に金属箔17を載置し、その後、真空プレス装置または真空ラミネータ装置を用いて加熱加圧処理を施すことで接着剤層16を硬化させ金属箔17を接着剤層16に接着させる。
【0103】
次に、図5A(4)に示すように、金属箔17をパターニングして導電パターン17aを形成する。この導電パターン17aは、前述の信号線112に相当する信号線のパターンと、グランド配線113に相当するグランド配線のパターンとを含む。
【0104】
次に、図5B(1)に示すように、導電パターン17aを埋設するように接着剤層16の上に、フィラーの含有率が所定値(たとえば5重量%)以下である接着剤層18を形成する。接着剤層18は、接着剤を接着剤層16上に塗布して形成してもよいし、あるいは、保護フィルムの片面に接着剤層が形成された接着剤層付き保護フィルム(図示せず)を接着剤層16にラミネートした後、保護フィルムを剥離することで形成してもよい。なお、接着剤層18はフィラーを含まなくてもよい。
【0105】
次に、図5B(2)に示すように、片面金属箔張積層板20Bからなるビルドアップ層を接着剤層18上に積層する。この片面金属箔張積層板20Bは、絶縁基材21と、絶縁基材21の上面に接着剤層21aを介して設けられた金属箔22と、を有する。接着剤層21aはフィラーの含有率が所定値より大きい(たとえば25重量%)。なお、接着剤層21aのフィラーの材料は、第1の実施形態で説明した接着剤層15のフィラーの場合と同様である。接着剤層21aは難燃性フィラーを含有してもよい。
【0106】
ビルドアップ層を積層する工程は、絶縁基材21が接着剤層18と対向するように片面金属箔張積層板20Bを接着剤層18の上に積層した後、真空プレス装置または真空ラミネータ装置を用いて加熱加圧することで行われる。本工程の加熱処理により、接着剤層18は硬化し、図5B(2)に示す積層体が得られる。
【0107】
次に、図5C(1)に示すように、金属箔22にレーザ光を照射することにより、金属箔22、接着剤層21a、絶縁基材21および接着剤層18を除去して、底面に導電パターン17a(グランド配線)が露出したブラインドビアホールH1Bを形成する。同様にして、金属箔13にレーザ光を照射することにより、金属箔13、接着剤層11a、絶縁基材11および接着剤層16を除去して、底面に導電パターン17aが露出したブラインドビアホールH2Bを形成する。なお、金属箔22,13を予めパターニングして、ブラインドビアホールを形成する位置に開口を有するコンフォーマルマスクを形成しておき、当該コンフォーマルマスクを用いてブラインドビアホールH1B,H2Bを形成してもよい。
【0108】
ブラインドビアホールH1B,H2Bの形成方法の詳細は第1および第2の実施形態と同様である。導電パターン17aはフィラー含有率が所定値以下の接着剤層18で埋設されているため、レーザによる穿孔加工後のデスミア処理により導電パターン17aの表面の残膜を除去することができる。同様に、導電パターン17aはフィラー含有率が所定値以下の接着剤層16上に形成されているため、レーザによる穿孔加工後のデスミア処理により導電パターン17aの裏面の残膜を除去することができる。
【0109】
次に、図5C(2)に示すように、スクリーン印刷等の印刷手法により、ブラインドビアホールH1B内に導電ペースト31Bを充填し、ブラインドビアホールH2B内に導電ペースト32Bを充填する。導電ペースト31B,32Bは、ペースト状の熱硬化性樹脂である樹脂バインダーに金属粒子を分散させたもので、第1の実施形態の導電ペースト31,32と同様のものである。
【0110】
導電ペースト31B,32Bの充填後、導電ペースト31B,32Bに加熱処理を施す。これにより、導電ペースト31B,32Bに含まれる金属粒子が互いに金属結合するととともに、導電ペースト31B,32Bのバインダー樹脂の熱硬化反応が完了する。このようにして、図5Dに示すように、層間接続路としてのフィルドビア31Bc,32Bcが形成される。
【0111】
次に、図5Dに示すように、公知のファブリケーション手法により金属箔13,22をパターニングして、導電パターン13a,22aを形成する。導電パターン13a,22aは、フィルドビア31Bc,32Bcと電気的に接続されるグランド層を含む。
【0112】
その後、必要に応じて、外側に露出した配線層の表面処理、表面保護膜の形成、および外形加工等を行う。
【0113】
上記の工程を経て、図5Dに示すように、第3の実施形態に係る多層プリント配線板1Bが得られる。
【0114】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、多層プリント配線板1の厚みの均一性を確保することができるとともに、層間接続路の信頼性を確保することができる。
【0115】
さらに、第3の実施形態によれば、片面金属箔張積層板10B,20Bとして同じもの(すなわち、絶縁基材11,21の厚みが同じ)を使用しても、導電パターン17a(信号線)を中心に厚み方向にほぼ対称な構造を有する多層プリント配線板が得られる。これにより、曲げ特性に優れた多層プリント配線板を提供することができる。
【0116】
さらに、第3の実施形態によれば、導電パターン17aの信号線をフィラー含有率の低い(すなわち、誘電率の低い)接着剤層16および接着剤層18で上下挟まれているので、高速信号の伝送特性の向上を図ることができる。
【0117】
さらに、第3の実施形態によれば、導電パターン17aは低粗度銅箔から構成されるため、高速信号の信号損失を低減することができる。
【0118】
なお、上記の製造方法では、層間接続路として導電ペーストを硬化させてなるフィルドビアを形成したが、これに限らず、めっきビアを形成してもよい。この場合、ブラインドビアホールH1B,H2Bの内壁に金属めっき層(たとえば銅めっき層)を形成することにより、導電パターン17aと金属箔13,22を電気的に接続するめっきビアを形成する。
【0119】
<残膜および難燃性に係る試験>
図6(1)は、ブラインドビアホール形成時の残膜発生の有無を試験するための試験片の構成を示す断面図である。試験片は、絶縁基材と、絶縁基材上に設けられた銅箔と、銅箔の上に形成された第1接着剤層および第2接着剤層とからなる。絶縁基材として、25μm厚のポリイミドフィルムを用いた。銅箔の厚みは12μmである。第1接着剤層および第2接着剤層は、ポリオレフィン系耐熱樹脂を主成分とする接着剤を用いて形成した。フィラーとして、ホスフィン酸アルミニウム塩を含むものを使用した。試験は、第2接着剤層にCOレーザ加工機のレーザパルスを照射して穿孔を行った後、デスミア処理を施し、ブラインドビアホールの底部に露呈した銅箔上に樹脂残渣が有るかどうかを確認することにより行った。
【0120】
図6(2)は、プリント配線板の難燃性を試験するための試験片の構成を示す断面図である。試験片は、第1絶縁基材の上に、第1接着剤層、第2接着剤層および第2絶縁基材がこの順で積層され、第1絶縁基材と第2絶縁基材の外面がカバーレイ(25μm厚)で被覆保護された構成を有する。第1絶縁基材および第2絶縁基材として、25μm厚の液晶ポリマーフィルムを用いた。第1接着剤層および第2接着剤層については図6(1)の構成と同じである。試験は、UL94規格による20mm炎垂直燃焼試験(V試験)を行った。具体的には、試験片の一端を10秒間接炎させ、残炎時間を測定した。
【0121】
図7は、実施例1,2および比較例1~4について、残膜および難燃性に係る試験の結果を示している。実施例1,2および比較例1~4のいずれも、第1接着剤層と第2接着剤層の厚みの和が25μmとしている。
【0122】
残膜試験については、第1接着剤層が設けられていない比較例1と、第1接着剤層のフィラー含有率が高い比較例2において、デスミア処理後においても銅箔上に残膜が見られた。他方、難燃剤の添加量が低い(0または5重量%)の実施例1,2および比較例3,4においては、樹脂残渣は見られなかった。この試験結果から、第1接着剤層のフィラー含有率を少なくとも5重量%以下にすることで、ブラインドビアホールの底面における樹脂残渣の発生を防止することができるといえる。
【0123】
難燃性試験については、フィラー含有率が高い第2接着剤層の厚みが20μm以上の実施例1,2および比較例1,2において、残炎時間が10秒未満であり、V-0クラスの難燃性を満足した。他方、第2接着剤層の厚みが15μmの比較例3では残炎時間が10秒程度であり、第2接着剤層が設けられていない比較例4では残炎時間が10秒より長かった。この試験結果から、フィラー含有率が25重量%以上であり、厚みが20μm以上の第2接着剤層を設けることで、フィラー含有率が低い第1接着剤層を設けた場合でも、所定の難燃性(V-0クラス)を確保することができるといえる。
【0124】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1,1A,1B 多層プリント配線板
10 両面金属箔張積層板
10A,10B 片面金属箔張積層板
11 絶縁基材
11a,21a 接着剤層
12,13 金属箔
12a,13a 導電パターン
14,16,18 接着剤層
17 金属箔
15,15A 接着剤層
20,20A,20B 片面金属箔張積層板
21,23 絶縁基材
22,24 金属箔
22a 導電パターン
31,32 導電ペースト
31c,32c フィルドビア
100 高周波信号伝送部品
110 多層プリント配線板
111 誘電体層
112 信号線
113 グランド配線
114 層間接続路
120 コネクタ
121,122 接続ピン
H1,H2 ブラインドビアホール
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7