(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】O/D型組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20241202BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241202BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241202BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20241202BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241202BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241202BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20241202BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241202BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/06
A61Q5/00
A61Q5/06
A61Q5/12
A61K8/39
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/31
(21)【出願番号】P 2020116286
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
(72)【発明者】
【氏名】久野 萌子
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113405(JP,A)
【文献】特開2009-196909(JP,A)
【文献】特開2017-222594(JP,A)
【文献】特開2009-184949(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213660(WO,A1)
【文献】特開2019-011272(JP,A)
【文献】特開平11-189526(JP,A)
【文献】鷺谷広道ら,D相乳化法による微細O/Wエマルションの調製法開発と工業化,油化学,1991、第40巻、第11号,第988-994頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状油、ノニオン界面活性剤、二価アルコール、及び水が配合され
、
前記液状油として、液状シリコーン、液状炭化水素、液状エステル油、液状油脂、及び液状高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上が配合され、
前記ノニオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルから選ばれた一種又は二種以上が配合され、
前記二価アルコールとして、1,2-プロパンジオール又は1,3-プロパンジオールが配合され、
毛髪に塗布し、洗い流さない態様で使用される
O/D型組成物
(但し、グリチルレチン酸を含有するO/D型乳化組成物であって、高級アルコールおよびエステル油の少なくとも1種を含む油剤(a);ノニオン界面活性剤(b);および多価アルコール(c);を含有し、前記油剤(a)の含有量に対する前記ノニオン界面活性剤(b)の含有量の比(b)/(a)が0.26~3.5であり、前記ノニオン界面活性剤(b)の含有量に対する前記多価アルコール(c)の含有量の比(c)/(b)が0.75~6であり、水(d)の含有量が0~15質量%であることを特徴とするO/D型乳化組成物、を除く。)。
【請求項2】
粘度が200Pa以上2000Pa以下である請求項1に記載のO/D型組成物。
【請求項3】
前記液状油の配合量が50質量%以上である請求項
1又は2に記載のO/D型組成物。
【請求項4】
前記液状油として揮発性液状油が配合され、前記揮発性液状油の配合量が50質量%以上である請求項
1~3のいずれか1項に記載のO/D型組成物。
【請求項5】
前記ノニオン界面活性剤として、HLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はHLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルケニルエーテルが配合された請求項
1~4のいずれか1項に記載のO/D型組成物。
【請求項6】
前記ノニオン界面活性剤として、HLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はHLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルケニルエーテルと、HLBが13.0以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが配合された請求項
1~4に記載のO/D型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用途などに使用されるO/D型組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪に適用する組成物においては、毛髪のしっとり感、艶、滑かさ、纏りなどを付与する目的で、液状油が配合されることが一般的に知られている。そのような毛髪用組成物の例として、特許文献1には、ジグリセリン、グリセリン、ベヘントリモニウムメトサルフェートなどのカチオン界面活性剤、及びベヘニルアルコールなど高級アルコールと共に、デカメチルシクロペンタシロキサン、流動パラフィン、オレイン酸オレイルといった液状油が配合されたものが開示されている(実施例1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛髪用組成物に限らず市場流通させる組成物においては、消費者、使用者に品質上の安心感を与えるためにも、外観上の変化を抑えることが求められる。これはO/Wエマルション、W/Oエマルションといった剤型でも求められる上に、界面活性剤相に油相が含まれるO/D型組成物でも同様である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、液状油が配合され、安定性に優れたO/D型組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、液状油を配合するO/D型組成物において、多価アルコールとして二価アルコールを配合すれば、安定性に優れたO/D型組成物が得られる知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るO/D型組成物は、液状油、ノニオン界面活性剤、二価アルコール、及び水が配合されたものである。この組成物は、D相(界面活性剤相)に液状油が含まれるものであるからこそ、粘度が高まる。本発明に係るO/D型組成物の粘度は、例えば200Pa以上2000Pa以下である。
【0008】
本発明に係るO/D型組成物は、上記の通り液状油が配合されるので、毛髪に塗布して、洗い流さない態様で使用するものが好適である。このような使用態様の場合、二価アルコールの配合が手の平における伸びを良好とする。また、同使用態様の場合、本発明に係るO/D型組成物における前記液状油の配合量は、50質量%以上であると良い。また、同使用態様の場合、本発明に係るO/D型組成物において、前記液状油として揮発性液状油が配合され、前記揮発性液状油の配合量は50質量%以上が好適である。
【0009】
本発明に係るO/D型組成物を、毛髪に塗布して、洗い流さない態様で使用する場合、前記ノニオン界面活性剤として、HLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はHLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルケニルエーテルを配合すると良い。この配合するノニオン界面活性剤の選定が、毛髪のべたつきの抑制に好適である。
【0010】
また、本発明に係るO/D型組成物を、毛髪に塗布して、洗い流さない態様で使用する場合、前記ノニオン界面活性剤としてHLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はHLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルケニルエーテルを配合するときには、前記ノニオン界面活性剤としてHLBが13.0以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルも配合すると良い。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルのHLBが13.0以上であれば、HLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はHLBが15.0未満のポリオキシエチレンアルケニルエーテルによる毛髪のべたつき抑制の低下を抑えつつ、毛髪への塗布する際の組成物の伸びが向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るO/D型組成物によれば、液状油、ノニオン界面活性剤、水と共に、二価アルコールが配合されるから、安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る組成物は、液状油、ノニオン界面活性剤、二価アルコール、及び水が必須成分として配合され(水の配合量は、例えば1質量%以上10質量%以下)、任意成分が必要に応じて配合される。そして、本実施形態に係る組成物は、D相中油型(O/D型)の組成物である。
【0013】
本実施形態のO/D型組成物の用途例としては、整髪剤、洗い流さないトリートメントなどの毛髪に塗布し、洗い流さない態様で使用されるものである。使用する際には、公知の整髪剤又は洗い流さないトリートメントと同様、水で濡れた毛髪又は乾燥した毛髪に本実施形態の組成物を塗布し、そのまま放置又は温風乾燥させると良い。
【0014】
本実施形態の組成物に配合される液状油は、20℃で液状の公知の液状油であり、水と混合したときに油相と水相の二相に分離するといった水に不溶性又は難溶性の性質を有する。
【0015】
上記液状油は、例えば、液状シリコーン、液状炭化水素、液状エステル油、液状油脂(脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするもの)、液状高級アルコールであり、液状シリコーンとしては、メチルポリシロキサン(例えば、化粧品原料基準一般試験法粘度測定法第1法に準拠して測定した粘度が10mm2/s以上100mm2/s以下のメチルポリシロキサン)、環状シリコーン(例えばデカメチルシクロペンタシロキサン)などが挙げられ、液状炭化水素としては、ミネラルオイル、水添ポリイソブテン(軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィンなど)、スクワランなどが挙げられ、液状エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピルなどの直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル、カプリル酸セチルなどの直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、ミリスチン酸オクチルドデシルなどの直鎖脂肪酸と分枝アルコールとのエステル、イソステアリン酸イソプロピルなどの分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル、イソステアリン酸ヘキシルなどの分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコールなどの脂肪酸と多価アルコールとのエステル、イソステアリン酸イソステアリルなどの分枝脂肪酸と分枝アルコールとのエステル、安息香酸アルキル(C12-14)などの安息香酸アルキルエステルなどが挙げられ、液状油脂としては、オリーブ油、コメヌカ油、ヒマワリ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油などが挙げられ、液状高級アルコールとしては、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどが挙げられる。
【0016】
本実施形態の組成物において、一種又は二種以上の液状油が配合される。そして、本実施形態の組成物における液状油の配合量は、50質量%以上が良く、60質量%以上が好ましい。50質量%以上であると、毛髪用のO/D型組成物として適する。
【0017】
本実施形態の組成物に配合する液状油として、揮発性液状油を配合すると良い。揮発性液状油は、その揮発性との性質から、揮発しない他の配合成分により毛髪に付与される感触が得られやすい。
【0018】
上記揮発性液状油は、例えば、揮発性シリコーン、揮発性炭化水素であり、揮発性シリコーンとしては、例えば、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサン(0.65~5cp程度の低粘度のもの)などの直鎖状ジメチルシリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン;が挙げられる。また、揮発性炭化水素としては、常圧における沸点が260℃以下のものが良く、例えば、ミネラルオイル、水添ポリイソブテン(軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン)、イソドデカンが挙げられる。
【0019】
本実施形態の組成物には、一種又は二種以上の揮発性液状油を配合すると良い(例えば、揮発性シリコーン、揮発性炭化水素、又は、揮発性シリコーン及び揮発性炭化水素を配合すると良い。)。本実施形態の組成物における揮発性液状油の配合量は、50質量%以上が良く、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。揮発性液状油の配合量が50質量%以上であれば、他の配合成分により毛髪に付与される感触が得られやすい。
【0020】
本実施形態の組成物に配合されるノニオン界面活性剤は、D相形成のために配合され、配合されるノニオン界面活性剤は、公知のノニオン界面活性剤であると良く、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミドが挙げられる。
【0021】
上記ノニオン界面活性剤は、一種又は二種以上が本実施形態の組成物に配合される。当該組成物におけるノニオン界面活性剤の配合量は、安定なO/D型組成物を調製するための必要量であると良く、例えば0.5質量%以上である。また、その配合量の上限は、例えば10質量%である。
【0022】
上記ノニオン界面活性剤として、HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル、HLBが15.0未満のPOEアルケニルエーテル、又は、HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル及びHLBが15.0未満のPOEアルケニルエーテルを配合すると良い(ここで「POE」は、「ポリオキシエチレン」を意味する。以下、同じ。)。POEアルキルエーテル及びPOEアルケニルエーテルについて、HLBが15.0未満のものを配合すれば、HLBが15.0以上のものよりも、O/D型組成物において一般的に生じやすい毛髪のべたつく感触が抑えられ、そのHLBは、13.0未満が良く、11.0未満が好ましく、10.0未満がより好ましく、9.0未満が更に好ましい。
【0023】
なお、上記HLBは、「Hydrophile-Lipophile Balance値」と同義であり、次の乳化試験により算出される。当該HLBは、(1)HLBを定めようとするノニオン界面活性剤a質量部と、b質量部のソルビタンモノステアリン酸エステル(日光ケミカル社製「NIKKOLSS -10MV」、HLB値=4.7)を使用し、aとbを様々な比率とした下記組成、調製法で複数の乳化物を得る、(2)一日放置した後のこれら乳化物における油滴の粒径が最小となるaとbの比率に基づき、HLB値を「(10.5-4.7×b/4)4/a」により算出する。
乳化物の組成:
流動パラフィン(油相) 40質量%
乳化剤 a+b=4質量%
水 56質量%
乳化物の調製法:
流動パラフィンを80℃程度に加温して、攪拌しながら80℃以上の水相を加エーテル乳化する。その後、冷却しながら、攪拌を続けて40℃で放置する。
【0024】
HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテルとしては、例えば、POEセチルエーテル(2E.O.)、POEセチルエーテル(8E.O.)、POEセチルエーテル(7E.O.)、POEセチルエーテル(10E.O.)、などのPOEセチルエーテル;POEステアリルエーテル(2E.O.)、POEステアリルエーテル(4E.O.)、などのPOEステアリルエーテル;POEアルキル(12~14)エーテル(3E.O.)、POEアルキル(12~14)エーテル(5E.O.)、POEアルキル(12~14)エーテル(7E.O.)、POEアルキル(12~14)エーテル(9E.O.)、POEアルキル(12~14)エーテル(12E.O.)などのPOEアルキル(12~14)エーテル;が挙げられる(「E.O.」の前に記載した数値は、POEの平均付加モル数を表す。以下、同じ。)。市販のPOEセチルエーテルとしては、日光ケミカル社製の「NIKKOL BC-2」、「NIKKOL BC-5.5」、「NIKKOL BC-7」、「NIKKOL BC-10」などが挙げられ、市販のPOEステアリルエーテルとしては、日光ケミカル社製の「NIKKOL BS-2」、「NIKKOL BS-4」などが挙げられ、市販のPOEアルキル(12~14)エーテルとしては、日光ケミカル社製の「NIKKOL BT-3」、「NIKKOL BT-5」、「NIKKOL BT-7」、「NIKKOL BT-9」、「NIKKOL BT-12」などが挙げられる。また、HLBが15.0未満のPOEアルケニルエーテルとしては、例えば、POEオレイルエーテル(2E.O.)、POEオレイルエーテル(7E.O.)、POEオレイルエーテル(10E.O.)などのPOEオレイルエーテルが挙げられ、市販のPOEオレイルエーテルとしては、日光ケミカル社製の「NIKKOL BO-2V」、「NIKKOL BO-7V」、「NIKKOL BO-10V」などが挙げられる。
【0025】
上記HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル及びHLBが15.0未満のPOEアルケニルエーテルから選ばれた一種又は二種以上を本実施形態の組成物に配合すると良く、本実施形態の組成物におけるHLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル及びHLBが15.0未満のPOEアルケニルエーテルの配合量は、例えば0.1質量%以上5.0質量%以下である。
【0026】
本実施形態の組成物には、POE・POPアルキルエーテルを配合しても良い(ここで「POE・POP」は、「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン」を意味する。以下、同じ。)。そして、HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル及び/又はHLBが15.0未満のPOEアルケニルエーテルと共に、POE・POPアルキルエーテルを配合する場合、POE・POPアルキルエーテルは、HLBが13.0以上のものを選択すると良い。HLBが13.0以上のPOE・POPアルキルエーテルの配合により、毛髪のべたつき抑制の低下を抑えつつ、毛髪への塗布する際の組成物の伸びが向上する。そして、そのHLBは、14.0以上が好ましく、15.0以上がより好ましく、HLBの上限は、例えば20.0である。
【0027】
HLBが13.0以上のPOE・POPアルキルエーテルとしては、例えば、POE・POPセチルエーテル(20E.O.)(4P.O.)などのPOE・POPセチルエーテルが挙げられる(「E.O.」の前に記載した数値は、上記と同じくPOEの平均付加モル数を表し、「P.O.」の前に記載した数値は、POPの平均付加モル数を表す。以下、同じ。)。市販のPOE・POPセチルエーテルとしては、日光ケミカル社製の「NIKKOL PBC-44」、「NIKKOL SG-C420」などが挙げられる。
【0028】
上記HLBが13.0以上のPOE・POPアルキルエーテルから選ばれた一種又は二種以上を本実施形態の組成物に配合すると良く、本実施形態の組成物におけるHLBが13.0以上のPOE・POPアルキルエーテルの配合量は、例えば0.1質量%以上5.0質量%以下であり、0.3質量%以上3.0質量%以下が良く、0.5質量%以上2.0質量%以下が好ましい。そして、毛髪のべたつく感触の抑制、及び伸びの良さの観点から、「HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル及びHLBが15.0未満のPOEアルケニルエーテル配合量」に対する「HLBが13.0以上のPOE・POPアルキルエーテルの配合量」の比は、2.0以下が良く、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
【0029】
本実施形態の組成物に配合される二価アルコールは、安定なO/D型組成物を調製するために配合される炭素数4以下の公知の二価アルコールである。当該二価アルコールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール(化粧品表示名称:PG)、1,3-プロパンジオール(化粧品表示名称:プロパンジオール)、1,3-ブチレングリコール(化粧品表示名称:BG)が挙げられる。この二価アルコールの本実施形態における配合量は、例えば2質量%以上10質量%以下である。
【0030】
本実施形態の組成物に配合される任意原料は、公知の毛髪用組成物に配合されている成分から、本実施形態の組成物の用途、目的に応じて適宜選定される。当該任意成分としては、カチオン界面活性剤(配合量は、例えば0.5質量%以下)、カチオン性高分子化合物(配合量は、例えば0.3質量%以下)、有機酸、有機酸塩、高重合メチルポリシロキサンなどの非液状シリコーン(配合量は、例えば0.5質量%以上5質量%以下)、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0031】
本実施形態の組成物の粘度は、毛髪に塗布し、洗い流さない態様で使用する場合における手の平や毛髪表面での伸ばしやすさの観点から、200Pa以上2000Pa以下が良く、300Pa以上1000Pa以下が好ましい。ここで、上記粘度は、応力制御型レオメーター(例えば、HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径35mm及び傾斜角2°、待ち時間を1分とし、測定モードの条件を、応力依存動的粘弾性測定、応力0.1Pa~1000Pa、周波数:1Hzとしたときの応力が2.4PaのときのG’の値を採用する。
【0032】
本実施形態の組成物を製造するには、公知のO/D型組成物の製法を採用すると良い。O/W型エマルションを得るための公知D相乳化法の途中過程においてO/D型組成物を得ることが可能であり、ノニオン界面活性剤、二価アルコール、及び水を配合したD相と、液状油との混合によりO/D型組成物が得られる。
【0033】
本実施形態の組成物の25℃におけるpHは、例えば4以上6以下である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例等に基づき本発明を詳述するが、この実施例等の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。実施例及び比較例のO/D型組成物を製造し、これらO/D型組成物の評価を行った。詳細は、次の通りである。
【0035】
(O/D型組成物)
実施例1、比較例、実施例2a~2c、実施例3a~3eのO/D型組成物を、HLBが7.5のPOEオレイルエーテル(2E.O.)、HLBが14.5のPOEアルキル(C12-14)エーテル(12E.O.)、HLBが17.0のPOEセチルエーテル(20E.O.)、HLBが19.0のPOEラウリルエーテル(21E.O.)、HLBが16.5のPOE・POPセチルエーテル(20E.O.)(4P.O.)、HLBが12.5のPOE・POPセチルエーテル(20E.O.)(8P.O.)、1,2-プロパンジオール、グリセリン、水、メチルポリシロキサン、安息香酸アルキル(C12-14)、デカメチルシクロペンタシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、ポリクオタニウム-11、pH調整剤、防腐剤、香料を使用して製造した。使用した成分の配合量は、下記表1~3の通りとした(pH調整剤の配合量は、pH5程度に調整する量とした。)。
【0036】
(安定性)
実施例及び比較例のO/D型組成物のいずれかを充填した100ml透明ポリエチレンテレフタレート容器を密栓してから、50℃の恒温槽内に1カ月放置した。放置後の各O/D型組成物を目視観察し、50℃・1カ月放置前と比較して、以下の基準で評価した。
○:外観上の変化なし
×:相分離又は濁度が変化
【0037】
(伸びの良さ)
評価者が、実施例及び比較例のO/D型組成物のいずれかを採取し、両手の平で伸ばし、その伸ばす際の滑らかさについて評価した。この評価では、評価者3名により、実施例3cと、他の実施例及び比較例との比較評価を行った。評価基準は、以下の通りとした。
○:評価者3名が、実施例3cと同等以上の滑らかさと評価
△:評価者1名が、実施例3cよりも滑らかさに劣ると評価
×:評価者2名又は3名が、実施例3cよりも滑らかさに劣ると評価
【0038】
(べたつきの抑制)
評価者が、実施例及び比較例のO/D型組成物のいずれかを採取し、両手の平で伸ばしてから、ヘッドマネキンに植毛された毛髪表面に薄く塗布した。この塗布後の毛髪のべたつく感触の評価について、評価者3名により、実施例3cと、他の実施例及び比較例との比較評価を行った。評価基準は、以下の通りとした。
○:評価者3名が、実施例3cと同等以下のべたつきと評価
△:評価者1名が、実施例3cよりもべたつくと評価
×:評価者2名又は3名が、実施例3cよりべたつくと評価
【0039】
下表1~3に、各実施例、比較例のO/D型組成物に配合した成分、配合量と共に、評価結果を示す。
【0040】
【0041】
上記表1において、二価アルコール(1,2-プロパンジオール)を配合した実施例1は、三価アルコール(グリセリン)を配合した比較例よりも、「安定性」及び「伸びの良さ」に優れていたことを確認できる。
【0042】
【0043】
上記表2において、HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル(POEアルキル(C12-14)エーテル(12E.O.))及びHLBが15.0未満のPOEエーテル(POEオレイルエーテル(2E.O.))を配合した実施例2aは、HLBが15.0以上のPOEアルキルエーテル(POEセチルエーテル(20E.O.)、POEラウリルエーテル(21E.O.))を配合した実施例2b、2cよりも、「べたつきの抑制」に優れていたことを確認できる。
【0044】
【0045】
上記表3において、HLBが15.0未満のPOEアルキルエーテル(POEアルキル(C12-14)エーテル(12E.O.))又はHLBが15.0未満のPOEエーテル(POEオレイルエーテル(2E.O.))を配合する実施例3a~3eにおいて、POE・POPアルキルエーテルも配合する場合、HLBが13.0以上のPOE・POPアルキルエーテル(POE・POPセチルエーテル(20E.O.)(4P.O.))を配合した実施例3b~3dは、HLBが13.0未満のPOE・POPアルキルエーテル(POE・POPセチルエーテル(20E.O.)(8P.O.))を配合した比較例3eよりも、「べたつきの抑制」及び「伸びの良さ」に優れていたことを確認できる。