IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図1
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図2
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図3
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図4
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図5
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図6
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図7
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図8
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図9
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図10
  • 特許-融着方法および電気融着継手 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】融着方法および電気融着継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/03 20060101AFI20241202BHJP
   B29C 65/34 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
F16L47/03
B29C65/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020138817
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034892
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕三
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 愛美子
(72)【発明者】
【氏名】北側 文夏
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-141787(JP,A)
【文献】実開平05-019789(JP,U)
【文献】特開2020-091004(JP,A)
【文献】特開平09-280466(JP,A)
【文献】特開2006-029568(JP,A)
【文献】特開平05-087286(JP,A)
【文献】特開平10-281383(JP,A)
【文献】特開平11-051279(JP,A)
【文献】国際公開第2009/033603(WO,A1)
【文献】特開平05-157190(JP,A)
【文献】特開平05-318596(JP,A)
【文献】特開2007-040385(JP,A)
【文献】特開2008-163957(JP,A)
【文献】特開2019-002428(JP,A)
【文献】特開平07-186276(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2014-0005001(KR,U)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0103360(KR,A)
【文献】中国実用新案第211550872(CN,U)
【文献】国際公開第2021/065776(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/149832(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/03
B29C 65/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む管が内側に挿入可能な継手受口部を有する筒状部と、
前記筒状部の内面に内側に突出するように設けられ、前記継手受口部の内側に前記管が挿入された際に前記管の管端の挿入位置を規制可能なストッパ部と、
前記継手受口部に配置された電熱線を含む受口発熱部と、
前記ストッパ部に配置された電熱線を含むストッパ発熱部と、を備えた電気融着継手と、前記管を融着する融着方法であって、
前記電気融着継手の前記継手受口部の内側に、前記管を挿入する挿入工程と、
前記ストッパ発熱部に通電を開始する第1通電工程と、
前記ストッパ発熱部への通電の開始後、前記ストッパ部と前記管の間のクリアランスが熱可塑性樹脂で埋まってから前記第1通電工程の終了前に前記受口発熱部に通電を開始する第2通電工程と、を備えた、
融着方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を含む管が内側に挿入可能な継手受口部を有する筒状部と、
前記筒状部の内面に内側に突出するように設けられ、前記継手受口部の内側に前記管が挿入された際に前記管の管端の挿入位置を規制可能なストッパ部と、
前記継手受口部に配置された電熱線を含む受口発熱部と、
前記ストッパ部に配置された電熱線を含むストッパ発熱部と、を備えた電気融着継手と、前記管を融着する融着方法であって、
前記電気融着継手の前記継手受口部の内側に、前記管を挿入する挿入工程と、
前記受口発熱部に通電を開始する第1通電工程と、
前記受口発熱部への通電の開始後、前記受口発熱部と前記管の間のクリアランスが熱可塑性樹脂で埋まってから前記第1通電工程の終了前に前記ストッパ発熱部に通電を開始する第2通電工程と、を備えた、
融着方法。
【請求項3】
前記管端を前記ストッパ部に押し付けるように前記管を前記ストッパ部の方向に加圧する加圧工程を更に備え、
前記第1通電工程は、前記管で前記ストッパ部が加圧された状態において行われ、
前記第2通電工程は、前記管で前記ストッパ部が加圧された状態において行われる、
請求項1または2に記載の融着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融着方法および電気融着継手に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂管や、樹脂層および金属補強層を有する金属補強複合管などの樹脂が用いられた管どうしを接続する際に、電気融着継手が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に示す電気融着継手には、両端部それぞれに接続対象の管が挿し込まれる管受口が形成された熱可塑性樹脂製の継手本体と、継手本体の内周面に内側に向かって突出したストッパ部が設けられている。ストッパ部は、管受口に差し込まれた管の位置を規制する。管受口とストッパ部の各々に発熱体が設けられており、発熱体を発熱させることによって、発熱体周囲の樹脂と管の樹脂とが融着し、電気融着継手と管が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-87286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ストッパ部と管受口における2か所で融着を行うため融着の制御が困難となり、ストッパ部と管の端の間において融着して内側に盛り上がった樹脂の高さが周方向において不均一となる場合や、ストッパ部と管の端との間に隙間(クレビス)が形成される場合があった。
【0006】
不均一な樹脂の盛り上がりやクレビスが形成されると乱流が生じるため、一部の水や薬液が配管内に滞留しやすくなる。これにより、微生物が繁殖し水質悪化を引き起こしたり、薬液の劣化によって純度低下を引き起こしたりする可能性があるため、半導体製造用配管等では製品歩留まり悪化を引き起こすおそれがある。
【0007】
本発明は、隙間の形成や、不均一な樹脂の盛り上がりを抑制することが可能な融着方法および電気融着継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の態様にかかる融着方法は、筒状部と、ストッパ部と、受口発熱部と、ストッパ発熱部と、を備えた電気融着継手と管を融着する融着方法であって、挿入工程と、第1通電工程と、第2通電工程と、を備える。筒状部は、熱可塑性樹脂を含む管が内側に挿入可能な継手受口部を有する。ストッパ部は、筒状部の内面に内側に突出するように設けられ、継手受口部の内側に管が挿入された際に管の管端の挿入位置を規制可能である。受口発熱部は、継手受口部に配置された電熱線を含む。ストッパ発熱部は、ストッパ部に配置された電熱線を含む。挿入工程は、電気融着継手の継手受口部の内側に、管を挿入する。第1通電工程は、ストッパ発熱部に通電を開始する。第2通電工程は、ストッパ発熱部への通電の開始後に受口発熱部に通電を開始する。
【0009】
ストッパ発熱部への通電により管の端とストッパ部の間が融着し、受口発熱部への通電により管の外周面と継手受口部の内周面の間が融着する。管と電気融着継手の間に形成されるクリアランス(管の端とストッパ部の間のクリアランス、および管の外周面と継手受口部の内周面の間のクリアランスを含む)は不均一であり、広範囲であるため、溶融した樹脂が流れやすい場所に流れ込むことになる。例えば、管の外周面と継手受口部の内周面で溶けた樹脂が、管の端とストッパ部の間側に不均一に流れ込むと、ストッパ部と管の端の間において融着した樹脂の内側への盛り上がりが周方向において不均一となり、場合によっては盛り上がらすに隙間が形成される場合がある。
【0010】
対して、第1の態様では、ストッパ発熱部を受口発熱部より先に通電することによって、継手受口部の内周面と管の外周面との間で溶けた樹脂が、ストッパ部と管の端との間に不均一に流れ込まないように、ストッパ部と管の端の間を溶けた又は固まった樹脂で埋めることができる。そのため、周方向における樹脂の盛り上がりの不均一を抑制することができる。また、ストッパ部と管の端の互いに対向する部分は狭い範囲であるため、溶ける樹脂量が少なく、樹脂が内側に盛り上がる量を小さくすることができ、圧力損失を抑えることが可能となる。なお、上述した溶けた樹脂は、樹脂の流れ込みを防ぐことが出来る程度には固まっている方が好ましい。また、盛り上がりの不均一を抑制できるため、樹脂の凹みが生じず、管の端が流体に接しないようにすることができる。
【0011】
第2の態様にかかる融着方法は、筒状部と、ストッパ部と、受口発熱部と、ストッパ発熱部と、を備えた電気融着継手と管を融着する融着方法であって、挿入工程と、第1通電工程と、第2通電工程と、を備える。筒状部は、筒状であって、熱可塑性樹脂を含む管が内側に挿入可能な継手受口部を有する。ストッパ部は、筒状部の内面に内側に突出するように設けられ、継手受口部の内側に管が挿入された際に管の管端の挿入位置を規制可能である。受口発熱部は、継手受口部に配置された電熱線を含む。ストッパ発熱部は、ストッパ部に配置された電熱線を含む。挿入工程は、電気融着継手の継手受口部の内側に、管を挿入する。第1通電工程は、受口発熱部に通電を開始する。第2通電工程は、受口発熱部への通電の開始後にストッパ発熱部に通電を開始する。
【0012】
例えば、管の端とストッパ部との間で溶けた樹脂が、継手受口部の内面と管の外周面との間のクリアランスに流れ込むと、ストッパ部と管の端の間において融着した樹脂の盛り上がりが周方向において不均一となり、場合によっては盛り上がらすに隙間が形成される場合がある。
【0013】
対して、第2の態様では、継手受口部の内周面と管の外周面との間の広範囲のクリアランスを溶けた又は固まった樹脂で埋めるため、ストッパ部と管の端の間において溶融した樹脂が継手受口部の内周面と管の外周面との間に流れ込まないようにすることができる。そのため、周方向における樹脂の盛り上がりの不均一を抑制することができる。また、管の端が流体に接しないようにすることができる。また、盛り上がりの不均一を抑制できるため、樹脂の凹みが生じず、管の端が流体に接しないようにすることができる。なお、上述した溶けた樹脂は、樹脂の流れ込みを防ぐことが出来る程度には固まっている方が好ましい。
【0014】
第3の態様にかかる電気融着継手は、筒状部と、ストッパ部と、受口発熱部と、ストッパ発熱部と、一対の第1端子と、一対の第2端子と、を備える。筒状部は、筒状であって、熱可塑性樹脂を含む管が内側に挿入可能な継手受口部を有する。ストッパ部は、筒状部の内面に内側に突出するように設けられ、継手受口部の内側に管が挿入された際に管の管端の挿入位置を規制可能である。受口発熱部は、継手受口部に配置された電熱線を含む。ストッパ発熱部は、ストッパ部に配置された電熱線を含む。一対の第1端子は、受口発熱部に通電を行うために受口発熱部の電熱線に接続されている。一対の第2端子は、ストッパ発熱部に通電を行うためにストッパ発熱部の電熱線に接続されている。
【0015】
このように、ストッパ発熱部の電熱線と受口発熱部の電熱線が繋がっておらず、別々に通電のための一対の端子を有しているため、ストッパ発熱部への通電タイミングと、受口発熱部への通電タイミングをずらすことができる。
【0016】
このため、ストッパ発熱部による融着と受口発熱部による融着を個別に制御することができ、電気融着継手および管の素材・大きさによって、ストッパ発熱部への通電タイミングと受口発熱部への通電タイミングのいずれか一方のタイミングを早くすることで、隙間の形成や、不均一な樹脂の盛り上がりを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、隙間の形成や、不均一な樹脂の盛り上がりを抑制することが可能な電気融着継手、および融着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示にかかる実施の形態1における電機融着継手と電気融着継手に接続される樹脂管および樹脂管を示す外観図。
図2図1の電気融着継手を示す断面構成図。
図3図1の電気融着継手に樹脂管および樹脂管を挿入した状態を示す断面構成図。
図4図3の受口発熱部およびストッパ発熱部と第1コネクタ取付部および第2コネクタ取付部との接続関係を示す電気融着継手の模式図。
図5】電気融着装置によって電気融着継手に通電を行っている状態を示す模式図。
図6図1の電気融着継手を用いた融着方法を説明するためのフロー図。
図7図6の融着方法に用いられる加圧冶具を示す斜視図。
図8図7の加圧冶具に樹脂管、電気融着継手、および樹脂管を取り付けた状態を示す図。
図9】(a)樹脂が不均一に盛り上がった状態を示す模式図、(b)樹脂が均一に盛り上がった状態を示す模式図。
図10】ストッパ発熱部の発熱によって電気融着継手のストッパ部と樹脂管の管端が融着された状態を示す断面図。
図11】本開示の実施の形態の変形例における融着方法を説明するためのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、発明にかかる実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
<構成>
(電気融着継手1の概要)
図1は、本発明の実施の形態における電気融着継手1と、電気融着継手1によって接続される樹脂管11(熱可塑性樹脂を含む管の一例)と、樹脂管12(熱可塑性樹脂を含む管の一例)とを示す図である。図1は、配管構造100の分解図ともいえる。配管構造100は、例えば、電気融着継手1と、樹脂管11と、樹脂管12と、を有する。
【0021】
図に示すように、電気融着継手1は、樹脂管11および樹脂管12と融着され、樹脂管11と樹脂管12を接続する。
【0022】
樹脂管11、及び樹脂管12は、それぞれ熱可塑性樹脂で形成されている。
【0023】
樹脂管11及び樹脂管12には、内部に断面円形状の流路11f、12fが延びている。電気融着継手1には、内部に断面円形状の流路1fが延びている。樹脂管11と樹脂管12が電気融着継手1によって接続された状態では、樹脂管11と樹脂管12と電気融着継手1の各々の流路の軸線は、同一直線上に配置される。
【0024】
なお、電気融着継手1、樹脂管11、および樹脂管12の流路に対して、それぞれの軸線が延びる方向を軸線方向Aとする。また、電気融着継手1、樹脂管11、および樹脂管12において、それぞれの軸線に直交して近接・離間する方向を径方向Bとし、それぞれの軸線回りに回る方向を周方向Cとする。
【0025】
樹脂管11は軸線方向Aのうち電気融着継手1に対して矢印A1方向に相対移動して電気融着継手1に接続される。また、樹脂管12は軸線方向Aのうち電気融着継手1に対して矢印A2方向に相対移動して電気融着継手1に接続される。電気融着継手1に樹脂管11および樹脂管12が接続された状態が、配管構造100を構成する。
【0026】
図2は、電気融着継手1の断面構成を示す図である。
【0027】
電気融着継手1は、図1及び図2に示すように、本体部2と、受口発熱部3と、ストッパ発熱部4と、第1コネクタ取付部5と、第2コネクタ取付部6と、を有する。
【0028】
(本体部2)
本体部2は、熱可塑性樹脂で形成されており、図2に示すように、筒状部21と、ストッパ部22と、を有する。筒状部21は、筒状であって、継手受口部23と、継手受口部24と、連設部25と、を有する。継手受口部23の内側には、樹脂管11が挿入される。継手受口部24の内側には、樹脂管12が挿入される。
【0029】
本体部2で用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、230℃未満の融点のものが好ましい。
【0030】
図3は、電気融着継手1の継手受口部23の内側に樹脂管11を挿し込み、継手受口部24の内側に樹脂管12を挿し込んだ状態を示す断面構成図である。
【0031】
継手受口部23の内径は、樹脂管11の外径以上に形成されている。また、継手受口部24の内径は、樹脂管12の外径以上に形成されている。
【0032】
連設部25は、図2に示すように継手受口部23と継手受口部24に連なっており、継手受口部23と継手受口部24を接続する。連設部25は、継手受口部23と継手受口部24の間を繋ぐ部分であり、後述するストッパ部22が径方向Bの内側に設けられている。
【0033】
(ストッパ部22)
ストッパ部22は、円環状部分である。ストッパ部22は、筒状部21の内面21aに周方向Cに沿って突条であり、全周にわたって形成されている。ストッパ部22も熱可塑性樹脂が含まれ、好ましくは筒状部21で用いられる熱可塑性樹脂と同一の樹脂で形成される。
【0034】
ストッパ部22は、図2に示すように、筒状部21の内面21aから径方向の内側に向かって突出するように形成されている。また、ストッパ部22は、筒状部21の連設部25の径方向Bの内側に配置されている。なお、ストッパ部22は、筒状部21と一つの部材として形成されてもよいし、筒状部21と別部材として形成されてもよい。
【0035】
ストッパ部22は、第1側面22aと、第2側面22bと、周面22cとを有する。周面22cは、ストッパ部22の径方向内側の端面である。
【0036】
第1側面22aは、筒状部21の内面21aから径方向Bの内側に向かって軸線方向Aに対して略垂直に形成されている。
【0037】
第2側面22bは、筒状部21の内面21aから径方向Bの内側に向かって軸線方向Aに対して略垂直に形成されている。
【0038】
周面22cは、第1側面22aの径方向内側の端と、第2側面22bの径方向内側の端を繋ぐ。周面22cは、筒状部21の内面21aと概ね平行に形成されている。
【0039】
継手受口部23の内側に樹脂管11が挿入されると、図3に示すように、ストッパ部22が管端11aの挿入位置を規制する。なお、管端11aの挿入位置を規制するとは、図3に示すようにストッパ部22の第1側面22aに管端11aが接触してストッパ部22が直接規制する場合と、管端11aがストッパ発熱部4の電熱線41(後述する)に接触してストッパ部22が間接的に規制する場合を含む。
【0040】
継手受口部24の内側に樹脂管12が挿入されると、図3に示すように、ストッパ部22が管端12aの挿入位置を規制する。なお、管端12aの挿入位置を規制するとは、図3に示すようにストッパ部22の第2側面22bに管端12aが接触してストッパ部22が直接規制する場合と、管端12aがストッパ発熱部4の電熱線41(後述する)に接触してストッパ部22が間接的に規制する場合を含む。
【0041】
なお、本実施の形態では、管端11aと第1側面22aの間および管端12aと第2側面22bの間(位置P参照)にクレビスが発生することが抑制される。
【0042】
(受口発熱部3)
図4は、受口発熱部3およびストッパ発熱部4と、第1コネクタ取付部5および第2コネクタ取付部6との接続関係を示す電気融着継手1の模式図である。図4では、理解を容易にするために、受口発熱部3における電熱線31の巻き回しの構成は簡略化されている。
【0043】
受口発熱部3は、図2および図4に示すように、継手受口部23および継手受口部24に設けられている。
【0044】
受口発熱部3は、継手受口部23および継手受口部24において内面21aに埋め込まれた電熱線31を有している。
【0045】
電熱線31は、継手受口部23および継手受口部24において内面21aに沿って周方向に巻き回されるように配置されている。電熱線31は、内面21aの近傍に配置されている。なお、電熱線31は、一部が流路1f側に露出するように筒状部21に埋められていてもよいし、完全に埋設されていてもよい。
【0046】
分かり易くするために、電熱線31のうち継手受口部23に配置されている部分を電熱線部分31aとし、電熱線31のうち継手受口部24に配置されている部分を電熱線部分31bとする。
【0047】
電熱線31のうち電熱線部分31aと電熱線部分31bを繋ぐ電熱線部分31cは、連設部25に埋め込まれている。
【0048】
電熱線部分31cは、ストッパ発熱部4よりも外周側に位置している。電熱線部分31cは、ストッパ発熱部4に設けられている電熱線41とは接触しないように配置されている。
【0049】
なお、一本の電熱線31が、継手受口部23と継手受口部24と連設部25に亘って配置されているが、電熱線部分31aと電熱線部分31bと電熱線部分31cの各々が別々の電熱線によって構成されて、それらの電熱線が接続されていてもよい。
【0050】
電熱線31は、例えば導線と、絶縁皮膜と、を有してもよい。導線は、例えばニクロム線、鉄クロム2種線,鉄クロム1種線,ニッケルクロム線などを用いることができる。絶縁皮膜は、導線の周囲を覆うように設けられている。絶縁皮膜は、融点が230度以上である。これは、本実施の形態において熱可塑性樹脂が溶融する温度(例えばポリエチレンの場合、電熱線は220度まで加熱する)でも溶融しない温度に設定されている方が好ましい。絶縁皮膜は、例えばフッ素系樹脂またはイミド系樹脂で形成することができるが、ポリイミド系樹脂で形成する方がより好ましい。例えば、導線の厚みは0.1mm以上10mm以下に設定してもよい。また、電熱線31は、180度~230度ぐらいで発熱される。
【0051】
受口発熱部3における電熱線31の配置について説明する。受口発熱部3は、ストッパ部22を基準に左右対称に設けられているため、継手受口部23に配置されている電熱線31を用いて説明する。
【0052】
継手受口部23における電熱線密度は、後述するストッパ発熱部4における電熱線密度よりも小さくなるように電熱線部分31aが配置されている。
【0053】
継手受口部23では、電熱線31が接触するように2周巻き回し、軸線方向Aに沿って所定間隔を空けて電熱線31が接触するように2周巻き回すことが繰り返されている。本実施の形態では、図2に示すように、例えば、電熱線31が8周巻き回されている。
【0054】
また、図2において、電熱線31が配置されている領域の軸線方向Aに沿った長さをLとすると、本実施の形態では長さLに8本分の電熱線31が配置されていることなる。なお、長さLは、軸線方向Aに沿った受口発熱部3の長さ、または軸線方向Aに沿った電熱線31の長さともいえる。
【0055】
ここで、電熱線31の外径を1mmとし、所定間隔を5mmとすると、L=23mmに8本分の電熱線が存在することから受口発熱部3における電熱線密度は、8(本)/23(mm)≒0.35(本/mm)となる。
【0056】
このように、電熱線密度は、単位長さ(例えば1mm)あたりの電熱線の本数として定義される。電熱線密度は、電熱線31が配置されている領域の軸線方向Aに沿った長さLに配置されている電熱線31の本数を、その長さLで割った値として求めることができる。
【0057】
受口発熱部3を発熱させることにとって、継手受口部23の内周面と樹脂管11の外周面との間のクリアランスW1(図3参照)と、継手受口部24の内周面と樹脂管12の外周面との間のクリアランスW1が、溶融した樹脂によって埋められ、継手受口部23と樹脂管11、並びに継手受口部242と樹脂管12は融着される。
【0058】
(第1コネクタ取付部5)
第1コネクタ取付部5は、図2に示すように、2本のピン51b、51c(一対の第1端子の一例)を有する。2本のピン51b、51cは、筒状部21の外面21dから径方向の外側に向かって突出するように設けられている。2本のピン51b、51cのうち一方のピン51bは、図2に示すように、筒状部21の端21bの近傍に配置され、他方のピン51cは端21cの近傍に配置されている。
【0059】
図4に示すように、受口発熱部3の電熱線31の継手受口部23側の一方の端は、ピン51bに接続されている。受口発熱部3の電熱線31の継手受口部24側の端は、ピン51cに接続されている。ピン51bとピン51cに電気融着装置8の第1コネクタ81を取り付けて通電を行うことによって、受口発熱部3を発熱させることができる。
【0060】
なお、受口発熱部3への通電時間は、例えば呼び径50mmの場合、1分間に設定し、呼び径300mmの場合、10分間に設定してもよい。
【0061】
(ストッパ発熱部4)
ストッパ発熱部4は、ストッパ部22に設けられている。ストッパ発熱部4は、電熱線41を有している。電熱線41は、軸線方向Aに沿って周方向Cに巻き回されるようにストッパ部22に設けられている。電熱線41は、本実施の形態では、ストッパ部22に、たとえば3周巻き回されている。本実施の形態のストッパ発熱部4では、隣り合う電熱線41は全て接触している。
【0062】
電熱線41は、電熱線31と同様の材料および構成のものを用いることができる。電熱線41は、180度~230度ぐらいで発熱される。
【0063】
ストッパ発熱部4では、電熱線41が接触するように3周巻き回されている。このため、電熱線41が配置されている領域の軸線方向Aに沿った長さL(ストッパ発熱部4の長さともいえる)には、3本分の電熱線41が配置されている。
【0064】
ストッパ発熱部4における巻き回された電熱線41の径は、受口発熱部3における巻き回された電熱線31の径よりも小さく設定されている。
【0065】
また、ストッパ発熱部4における巻き回された電熱線41の径は、電熱線41の位置が差し込まれる樹脂管11、12の管壁厚みの間に納まるように設定されている。
【0066】
上述のように、電熱線の直径を1mmとすると、ストッパ発熱部4における電熱線密度は、3(本)/3(mm)=1(本/mm)に設定されている。
【0067】
上述したように受口発熱部3における電熱線密度は、約0.35であるため、本実施の形態では受口発熱部3における電熱線密度は、ストッパ発熱部4における電熱線密度よりも小さく設定されている。
【0068】
なお、ストッパ発熱部4における電熱線41の配置は、本実施の形態の構成に限られるものではなく、電熱線41が接触していなくてもよい。また、軸線方向Aに沿って3本分の電熱線41が配置されていなくてもよく、真ん中の1本が設けられておらず、その部分がストッパ部22を形成する樹脂で埋められていてもよい。
【0069】
なお、上述した受口発熱部3における電熱線密度は図2に示す構成に限られるものではなく、本実施の形態では、2周分が接触するように電熱線31が巻き回されているが、これに限らなくてもよい。例えば、3周分が接触するように電熱線31が巻き回されてもよいし、接触しないように1周ずつ間隔を空けて電熱線31を巻き回してもよい。
【0070】
ストッパ発熱部4を発熱させることにとって、ストッパ部22の第1側面22aと樹脂管11の管端11aとの間のクリアランスW2(図3参照)と、ストッパ部22の第2側面22bと樹脂管12の管端12aとの間のクリアランスW2が、溶融した樹脂によって埋められ、ストッパ部22と樹脂管11、並びにストッパ部22と樹脂管12は融着される。
【0071】
(第2コネクタ取付部6)
第2コネクタ取付部6は、図2に示すように、2本のピン61b、61c(一対の第2端子の一例)を有する。2本のピン61b、61cは、筒状部21の外面21dから径方向の外側に向かって突出するように設けられている。2本のピン61b、61cは、筒状部21の中央近傍に軸線方向Aに沿って並んで配置されている。
【0072】
2本のピン61b、61cのうち一方のピン61bは、端21b側に配置され、他方のピン61cは端21c側に配置されている。
【0073】
図4に示すように、電熱線41の一方の端がピン61bに接続されており、電熱線41の他方の端がピン61cに接続されている。ピン61bとピン61cに電気融着装置のコネクタを取り付けて通電を行うことによって、受口発熱部3を発熱させることができる。
【0074】
なお、ストッパ発熱部4への通電時間は、受口発熱部3への通電時間の約5分の一であり、例えば呼び径50mmの場合、20秒間に設定し、呼び径300mmの場合、2分間に設定してもよい。
【0075】
このように、受口発熱部3を発熱するための第1コネクタ取付部5と、ストッパ発熱部4を発熱するための第2コネクタ取付部6とが、別々に設けられているため、受口発熱部3への通電タイミングと、ストッパ発熱部4への通電タイミングをずらすことができる。すなわち、ストッパ発熱部4に通電を開始した後に、受口発熱部3に通電を開始し、または、受口発熱部3に通電を開始した後にストッパ発熱部4に通電を開始することができる。
【0076】
(電気融着装置8)
次に、電気融着継手1に通電を行う電気融着装置8について説明する。図5は、電気融着装置8によって電気融着継手1に通電を行っている状態を示す模式図である。
【0077】
電気融着装置8は、例えば、ピン51b、51cに取り付ける一対の第1コネクタ81と、ピン61b、61cに取り付ける一対の第2コネクタ82と、を有している。
【0078】
電気融着装置8は、例えば、一対の第1コネクタ81に通電を行う第1通電スイッチと、一対の第2コネクタ82に通電を行う第2通電スイッチとが設けられていてもよい。この場合、第2通電スイッチを操作してストッパ発熱部4への通電開始した後に、第1通電スイッチを操作して受口発熱部3への通電を開始することができる。また、第1通電スイッチを操作して受口発熱部3への通電を開始した後に、第2通電スイッチを操作してストッパ発熱部4への通電を開始してもよい。
【0079】
ストッパ発熱部4と受口発熱部3のうちのいずれか一方の発熱部への通電の開始から他方の発熱部への通電の開始までの時間は、一方の発熱部が設けられた側のクリアランスが樹脂で埋まってからの方が好ましい。なお、樹脂で埋まるとは、溶けた樹脂で埋まっていてもよい、固まった樹脂で埋まっていることに限らなくてもよい。また、電気融着継手1の性能、コイルおよび呼び径にもよるが、一方の発熱部への通電の開始から10~20秒後ぐらいで他方の発熱部への通電を開始してもよい。また、一方の発熱部側において樹脂が固まってから、他方の発熱部への通電を開始してもよい。
【0080】
また、電気融着装置8が予め設定されたプログラムに基づいて自動で第1コネクタ81と第2コネクタ82への通電を行ってもよい。制御をスタートさせると、ストッパ発熱部4と受口発熱部3のうちのいずれか一方の発熱部への通電を開始してから、予め設定された時間の後に、他方の発熱部への通電が開始される。そして、電気融着装置8は、各々の発熱部に対して予め設定された通電時間が経過すると、通電を停止する。
【0081】
この場合、電気融着装置8は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従って通電を制御するための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、電気融着装置8を制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。記憶装置は、例えば、後述する終端範囲や、操作速度の所定閾値のデータを記憶している。
【0082】
<融着方法>
次に、本発明にかかる実施の形態の融着方法を説明する。なお、図6は、本実施の形態の融着方法を説明するためのフロー図である。
【0083】
本実施の形態では、ストッパ発熱部4への通電開始の後に受口発熱部3への通電を開始する場合について説明する。
【0084】
はじめに、ステップS1において、ストッパ部22によって樹脂管11の管端11aの相対的な移動が規制されるまで、電気融着継手1の継手受口部23の内側に樹脂管11が挿入される。
【0085】
また、ストッパ部22によって樹脂管12の管端12aの相対的な移動が規制されるまで、電気融着継手1の継手受口部24の内側に樹脂管12が挿入される。電気融着継手1に樹脂管11および樹脂管12が差し込まれた状態が図3に示されている。ステップS1が、挿入工程の一例に対応する。
【0086】
次に、ステップS2において、管端11aをストッパ部22の第1側面22aに押し付けるように樹脂管11がストッパ部22の方向(図8に示す矢印A1方向)に加圧される。また、管端12aをストッパ部22の第2側面22bに押し付けるように、樹脂管12がストッパ部22の方向(図8に示す矢印A2方向)に加圧される。
【0087】
ここで、加圧に用いられる加圧冶具について説明する。図7は、加圧冶具200を示す図である。図8は、樹脂管11、電気融着継手1、および樹脂管12を加圧冶具200に取り付けた状態を示す図である。
【0088】
加圧冶具200は、第1クランプ部210と、第2クランプ部220と、3つのガイド部材230と、加圧ネジ部材240とを有する。
【0089】
第1クランプ部210は、第1半環状部211と、第2半環状部212と、ヒンジ部213と、締結部214と、位置固定部215と、を有する。
【0090】
第1半環状部211と第2半環状部212は、概ね円環の半分の形状であり、樹脂管11の外周を挟み込むことができる。第1半環状部211は、周方向にガイド支持部211bと、ネジ部211cを有する。ガイド支持部211bには、貫通孔が形成されており、棒状のガイド部材230が挿通されている。
【0091】
第2半環状部212は、周方向に2つのガイド支持部212b、212cを有する。ガイド支持部212bおよびガイド支持部212cの各々には、貫通孔が形成されており、棒状のガイド部材230が挿通されている。
【0092】
ヒンジ部213は、第1半環状部211と第2半環状部212の周方向の端同士を回動可能に連結する。ヒンジ部213を中心に、第1半環状部211と第2半環状部212の間を開いた状態で、樹脂管11が第1半環状部211と第2半環状部212の間に配置される。
【0093】
締結部214は、例えばネジであって、第1半環状部211と第2半環状部212のヒンジ部213とは反対側の周方向の端に設けられている。第1半環状部211のヒンジ部213とは反対側の周方向の端は、外側に向かって突出しており、その突出部211aには貫通孔が形成されている。また、第2半環状部212のヒンジ部213とは反対側の周方向の端は、外側に向かって突出しており、その突出部212aには貫通孔が形成されている。
【0094】
第1半環状部211と第2半環状部212が閉じられた状態において、2つの貫通孔は対向しており、ネジである締結部214が挿入されている。突出部212aの貫通孔の内周面にはネジ形状が形成されており、突出部211aの貫通孔にはネジ形状が形成されていない。締結部214は、突出部211aの貫通孔を挿通し、突出部212aの貫通孔に螺合している。
【0095】
これにより、締結部214を回転させることによって、締結部214のヘッドによって、突出部211aが突出部212aに押し付けられ、樹脂管11を第1クランプ部210によって挟持することができる。なお、締結部214は、ネジに限らず、例えばボルトとナットなどであってもよく、第1半環状部211と第2半環状部212を締め付けることができさえすれば構成が限定されるものではない。
【0096】
位置固定部215は、ネジ部材であり、ガイド支持部211bに設けられている。詳細には、ガイド支持部211bには、ガイド部材230が挿入されている貫通孔に向かってネジ孔が形成されており、そのネジ孔に位置固定部215が挿入されている。
【0097】
位置固定部215を締めると、位置固定部215の先端が、ガイド部材230に接触するため、第1クランプ部210のガイド部材230に対する位置が固定される。
【0098】
第2クランプ部220は、第1半環状部221と、第2半環状部222と、ヒンジ部223と、締結部224と、を有する。
【0099】
第1半環状部221は、第1半環状部211と同様の形状であり、突出部221a、ガイド支持部221bと、ネジ部221cを有する。ガイド支持部221bには、ガイド支持部211bと異なり、ガイド部材230が固定されている。
【0100】
また、第2半環状部222は、第2半環状部212と同様の形状であり、突出部222aと、ガイド支持部222bと、ガイド支持部222cと、を有する。ガイド支持部222b、222cには、ガイド支持部212b、212cと異なり、ガイド部材230が固定されている。
【0101】
ヒンジ部223は、ヒンジ部213と同様であり、第1半環状部221と第2半環状部222の周方向の端同士を回動可能に連結する。締結部224は、締結部214と同様であり、突出部221aと突出部222aに設けられている。
【0102】
ガイド部材230は、ガイド支持部211bを挿通して、ガイド支持部221bに固定されている。ガイド部材230は、ガイド支持部212bを挿通して、ガイド支持部222bに固定されている。ガイド部材230は、ガイド支持部212cを挿通して、ガイド支持部222cに固定されている。
【0103】
加圧ネジ部材240は、ボールネジであり、ネジ部211cとネジ部221cに挿通されている。ネジ部211c、ネジ部221cには、加圧ネジ部材240が挿通するネジ孔が形成されており、ネジ部211cとネジ部221cでは、ネジ孔が逆に形成されている。すなわち、加圧ネジ部材240を回転させると、第1クランプ部210と第2クランプ部220は、ガイド部材230に沿って、互いに接近または離間する。
【0104】
図8に示すように、樹脂管11を第1クランプ部210によって挟み込んで固定し、樹脂管12を第2クランプ部220によって挟み込んで固定し、その後、加圧ネジ部材240を回転させることによって、第1クランプ部210と第2クランプ部220を互いに接近させる(矢印A1、A2参照)。
【0105】
これによって、樹脂管11の管端11aをストッパ部22の第1側面22aに押し付け、樹脂管12の管端12aをストッパ部22の第2側面22bに押し付けるように、樹脂管11および樹脂管12を加圧することができる。
【0106】
また、加圧した状態で位置固定部215を締め付けることによって、第1クランプ部210と第2クランプ部220による加圧状態を保持することができる。
【0107】
次に、ステップS3において、加圧された状態において、第2コネクタ取付部6の2本のピン61b、61cに電気融着装置8の第2コネクタ82が取り付けられて通電が開始される。なお、通電しながら、加圧ネジ部材240を回転させて樹脂管11と樹脂管12を電気融着継手1に押し込んでもよい。通電時の電熱線温度は本体部2を溶融させ得る温度であればよく、ポリオレフィンの場合は220度以下が好ましい。この通電によって電熱線41が発熱する。ステップS3が、第1通電工程の一例に対応する。
【0108】
次に、ステップS4において、加圧された状態において、第1コネクタ取付部5の2本のピン51b、51cに電気融着装置8の第1コネクタ81が取り付けられ、通電が所定時間行われる。ステップS3の開始後からステップS4を開始するまでの時間は、上述したように電気融着継手1の性能、電熱線のコイル、管の呼び径によるが、10~20秒程度が好ましい。ステップS4が、第2通電工程の一例に対応する。
【0109】
次に、ステップS3から所定時間経過後に、ステップS5において、電気融着装置8による2本のピン61b、61cへの通電が終了する。
【0110】
そして、ステップS4から所定時間経過後に、ステップS6において、電気融着装置8による2本のピン51b、51cへの通電が終了する。
【0111】
<特徴>
本実施の形態における融着方法は、筒状部21と、ストッパ部22と、受口発熱部3と、ストッパ発熱部4と、を備えた電気融着継手1と樹脂管11、12(管の一例)を融着する融着方法であって、ステップS1(挿入工程の一例)と、ステップS3(第1通電工程の一例)と、ステップS4(第2通電工程の一例)と、を備える。筒状部21は、熱可塑性樹脂を含む樹脂管11、12が内側に挿入可能な継手受口部23、24を有する。ストッパ部22は、筒状部21の内面に内側に突出するように設けられ、継手受口部23、24の内側に樹脂管11、12が挿入された際に樹脂管11、12の管端11a、12aの挿入位置を規制可能である。受口発熱部3は、継手受口部23、24に配置された電熱線31を含む。ストッパ発熱部4は、ストッパ部22に配置された電熱線41を含む。ステップS1は、電気融着継手1の継手受口部23、24の内側に、樹脂管11、12を挿入する。ステップS3は、ストッパ発熱部4に通電を開始する。ステップS4は、ストッパ発熱部4への通電の開始後に受口発熱部3に通電を開始する。
【0112】
ストッパ発熱部4への通電により樹脂管11、12の管端11a、12aとストッパ部22の間が融着し、受口発熱部3への通電により樹脂管11、12の外周面と継手受口部23、24の内周面の間が融着する。樹脂管11、12と電気融着継手1の間に形成されるクリアランス(樹脂管11、12の管端11a、12aとストッパ部22の間のクリアランスW2、および樹脂管11、12の外周面と継手受口部23、24の内周面の間のクリアランスW1を含む)は不均一であり、広範囲であるため、溶融した樹脂が流れやすい場所に流れ込むことになる。例えば、樹脂管11、12の外周面と継手受口部23、24の内周面で溶けた樹脂が、樹脂管11、12の管端11a、12aとストッパ部22の間側に不均一に流れ込むと、ストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aの間において融着した樹脂の盛り上がりが周方向において不均一となり、場合によっては盛り上がらすに隙間(凹みともいえる)が形成される場合がある。図9(a)に樹脂の盛り上がりRが周方向Cにおいて不均一な状態を示す。図9(a)では、ストッパ部22および樹脂管11の内周面から内側に盛り上がった樹脂がRで示されており、凹みがQで示されている。
【0113】
対して、本実施の形態では、ストッパ発熱部4を受口発熱部3より先に通電することによって、継手受口部23、24の内周面と樹脂管11、12の外周面との間で溶けた樹脂が、ストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aとの間に不均一に流れ込まないように、ストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aの間を溶けた又は固まった樹脂で埋めることができる。そのため、周方向における樹脂の盛り上がりの不均一を抑制することができる。なお、上述した溶けた樹脂は、樹脂の流れ込みを防ぐことが出来る程度には固まっている方が好ましい。図9(b)は、樹脂の盛り上がりRが周方向Cにおいて均一な状態を示す。図10は、ストッパ発熱部4の発熱によって電気融着継手1のストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aが融着された状態を示す断面図である。なお、ストッパ部22の融着を分かり易くするため、図10では、受口発熱部3の発熱による電気融着継手1と樹脂管11、12の間の融着は示していない。
【0114】
本実施の形態のように、周方向Cにおいて全周に亘って樹脂を盛り上がらせることによって、凹みを抑制し死に水の発生を防ぐことが出来るため、超純水に関する分野に好適に用いることができる。特に、半導体の洗浄用水に用いられる超純水の分野に好適である。また、樹脂の凹みが生じないため、樹脂管11、12の端が流体に接しないようにすることができる。また、盛り上がりを均一にすることによって、部分的に樹脂が取れたり、変流が発生したりすることを抑制することができる。
また、図10に示すように、融着によってストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aとの突き当て部分は、軸線方向Aに沿う断面で見て、樹脂で覆われており(図における樹脂の盛り上がりR参照)、水の滞留が発生しないように形成される。
【0115】
また、ストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aの互いに対向する部分は狭い範囲であるため、溶ける樹脂量が少なく、樹脂が内側に盛り上がる量を小さくすることができ、圧力損失を抑えることが可能となる。
【0116】
また、本実施の形態の電気融着継手1は、筒状部21と、ストッパ部22と、受口発熱部3と、ストッパ発熱部4と、一対のピン51b、51cと、一対のピン61b、61cと、を備える。筒状部21は、筒状であって、熱可塑性樹脂を含む樹脂管11、12が内側に挿入可能な継手受口部23、24を有する。ストッパ部22は、筒状部21の内面21aに内側に突出するように設けられ、継手受口部23、24の内側に樹脂管11、12が挿入された際に樹脂管11、12の管端11a、12aの挿入位置を規制可能である。受口発熱部3は、継手受口部23、24に配置された電熱線31を含む。ストッパ発熱部4は、ストッパ部22に配置された電熱線41を含む。一対のピン51b、51cは、受口発熱部3に通電を行うために受口発熱部3の電熱線31に接続されている。一対のピン61b、61cは、ストッパ発熱部4に通電を行うためにストッパ発熱部4の電熱線41に接続されている。
【0117】
このように、ストッパ発熱部4の電熱線41と受口発熱部3の電熱線31が繋がっておらず、別々に通電のための一対の端子であるピン51b、51cとピン61b、61cを有しているため、ストッパ発熱部4への通電タイミングと、受口発熱部3への通電タイミングをずらすことができる。
【0118】
このため、ストッパ発熱部4による融着と受口発熱部3による融着を個別に制御することができ、電気融着継手1および管の素材・大きさによって、ストッパ発熱部4への通電タイミングと受口発熱部3への通電タイミングのいずれか一方のタイミングを早くすることで、隙間の形成や、不均一な樹脂の盛り上がりを抑制することが可能となる。
【0119】
<他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0120】
(A)
上記実施の形態では、ストッパ発熱部4に通電を開始した後に受口発熱部3の通電を開始したが逆であってもよい。すなわち、受口発熱部3の通電を開始した後にストッパ発熱部4に通電してもよい。
【0121】
この場合の融着方法を図11のフロー図に示す。図11に示すように、ステップS2の次に、ステップS30において、受口発熱部3に通電が開始される。その後、ストッパ発熱部4に通電が開始される。また、受口発熱部3とストッパ発熱部4の各々における通電時間にもよるが、上述したように、ステップS30とステップS40の間隔を10~20秒とすると、ステップS40の次のステップS50において、ストッパ発熱部4の通電が停止される。そして、最後にステップS60において、受口発熱部3の通電が停止される。
【0122】
例えば、樹脂管11、12の管端11a、12aとストッパ部22との間で溶けた樹脂が、継手受口部23、24の内面と樹脂管11、12の外周面との間のクリアランスに流れ込むと、ストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aの間において融着した樹脂の盛り上がりが周方向において不均一となり、場合によっては盛り上がらすに隙間が形成される場合がある。
【0123】
対して、上述のように、ステップS30(第1通電工程の一例)において、受口発熱部3に通電を開始した後に、ステップS40(第2通電工程の一例)において、ストッパ発熱部4に通電を開始することにより、継手受口部23、24の内周面と樹脂管11、12の外周面との間の広範囲のクリアランスを溶けた樹脂または固まった樹脂で埋めるため、ストッパ部22と樹脂管11、12の管端11a、12aの間において溶融した樹脂が継手受口部23、24の内周面と樹脂管11、12の外周面との間に流れ込まないようにすることができる。そのため、周方向における樹脂の盛り上がりの不均一を抑制することができる。また、盛り上がりの不均一を抑制できるため、樹脂の凹みが生じず、管の端が流体に接しないようにすることができる。
【0124】
(B)
上記実施の形態では、軸線方向Aに沿って視た場合、ストッパ部22の外径は円形状であるが、円に限らなくても良く、多角形状であってもよい。
【0125】
(C)
上記実施の形態では、受口発熱部3は、ストッパ部22を挟んで左右対称に設けられているが、これに限らなくてもよい。例えば、ストッパ部22を挟んで一方の継手受口部23では電熱線31が3周ずつ接触するように設けられており、他方の継手受口部24では電熱線31が2周ずつ接触するように設けられていてもよい。
【0126】
(D)
上記実施の形態では、電気融着継手1の流路はいずれも直線状に形成されているが、流路が曲がっているエルボ継手であってもよい。
【0127】
(E)
上記実施の形態では、受口発熱部3の電熱線31とストッパ発熱部4の電熱線41に同じものを使用しているため、すべての電熱線31、41に絶縁皮膜が設けられているが、これに限らなくてもよい。しかしながら、少なくとも電熱線41に絶縁皮膜が設けられているほうが好ましい。これは、樹脂管11および樹脂管12によって加圧される場合があり、電熱線41同士が接触しやすいためである。
【0128】
(F)
上記実施の形態では、樹脂管11の管端11aと樹脂管12の管端12aをストッパ部22に押圧しているが、押圧しなくてもよい。ただし、クレビスの発生を抑制するためには、押圧する方が好ましく、施工時間を短くすることもできる。
【0129】
(G)
上記実施の形態では、受口発熱部3において同じ巻き数(2周)ずつ接触しているが、これに限らなくてもよく、例えば、2周接触した後に所定間隔を空けて3周接触するように接触するように接触している巻き数が異なっていてもよい。
【0130】
(H)
上記実施の形態では、樹脂管11、12が用いられているが、これに限らず、金属補強層を有する金属補強複合管などの樹脂が用いられた管であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の電気融着継手は、隙間の形成や、不均一な樹脂の盛り上がりを抑制することが可能な効果を有し、例えば超純水用の配管構造などとして有用である。
【符号の説明】
【0132】
1 :電気融着継手
3 :受口発熱部
4 :ストッパ発熱部
11 :樹脂管
12 :樹脂管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11