(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】半導体集積回路、受信装置、およびDCオフセットキャンセル方法
(51)【国際特許分類】
H04L 25/06 20060101AFI20241202BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20241202BHJP
H04B 3/04 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H04L25/06
H04L25/03 C
H04B3/04 A
(21)【出願番号】P 2020156324
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 崇也
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-172693(JP,A)
【文献】米国特許第06606359(US,B1)
【文献】特開2000-332835(JP,A)
【文献】特開2005-110080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/06
H04L 25/03
H04B 3/04
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を受信する半導体集積回路であって、
初段増幅器と前記初段増幅器の後段に直列に接続される複数の後段増幅器とを備え、前記受信した信号の減衰を補償するイコライザと、
前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端に接続される複数のフィルタと、
前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端に接続され、前記複数のフィルタのそれぞれの出力に応じて前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルする複数のキャンセル回路と、
前記複数のフィルタのそれぞれの出力に基づき前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルするように前記複数のキャンセル回路を制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、前記イコライザが第1の状態の場合に前記初段増幅器をオフ状態にし、且つ前記複数のフィルタの時定数を第1の時定数に設定して前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせ、前記イコライザが第2の状態の場合に前記初段増幅器をオン状態にし、且つ前記複数の後段増幅器のうち最終段の後段増幅器の前記フィルタの時定数を前記第1の時定数よりも大きい第2の時定数に設定して前記最終段の後段増幅器の出力端のDCオフセットをキャンセルさせるように構成されており、
前記処理回路は、前記第1の状態において前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせる際に、前記複数の後段増幅器のうち、前記DCオフセットをキャンセルした後段増幅器の状態を維持したまま、次段の後段増幅器のDCオフセットをキャンセルさせるように前記複数のキャンセル回路を制御する、
半導体集積回路。
【請求項2】
前記最終段の後段増幅器に接続される前記フィルタは、可変抵抗を含んで構成され、前記最終段以外の前記後段増幅器に接続される前記フィルタは、固定抵抗を含んで構成される、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記処理回路は、前記初段増幅器を前記オフ状態にし、且つ前記
複数のフィルタの時定数を前記第1の時定数に設定している間に、前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットをキャンセルさせた後、前記初段増幅器を前記オン状態にし、且つ
前記最終段の後段増幅器の前記フィルタの時定数を前記第2の時定数に設定している間に、前記最終段の後段増幅器の前記出力端のDCオフセットをキャンセルさせる、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記初段増幅器と前記複数の後段増幅器とはそれぞれ、2入力端と2出力端を備えた差動増幅器として構成され、前記複数の後段増幅器のそれぞれの2出力端には前記複数のキャンセル回路がそれぞれ接続され、前記複数のフィルタはそれぞれ第1のフィルタと第2のフィルタを含み、
前記第1のフィルタは、前記後段増幅器の各々の一方の出力端に接続され、
前記第2のフィルタは、前記後段増幅器の各々の他方の出力端に接続され、
前記複数のフィルタの各々について、前記第1のフィルタの出力と第2のフィルタの出力とを比較し、比較出力を前記処理回路に出力する比較器とを備え、
前記処理回路は、前記初段増幅器を前記オフ状態にし、且つ前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタをそれぞれの時定数を前記第1の時定数に設定している間に、前記比較器からの比較出力に基づき前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットをキャンセルさせた後、前記初段増幅器を前記オン状態にし、且つ前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタをそれぞれの前記時定数を前記第2の時定数に設定している間に、前記比較器からの比較出力に基づき前記複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルさせる、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1の状態は、前記イコライザに入力される前記信号の振幅が閾値未満の状態であり、
前記第2の状態は、前記イコライザに入力される前記信号の振幅が前記閾値以上の状態である、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記イコライザに入力する前記信号の振幅を検出する振幅検出回路を備え、
前記処理回路は、
前記振幅検出回路で検出された前記信号の振幅が前記閾値以上の場合に、
前記最終段の後段増幅器の前記フィルタの時定数を前記第2の時定数に設定し、
前記信号の振幅が前記閾値未満の場合に、
前記最終段の後段増幅器の前記フィルタの前記時定数を前記第1の時定数に設定する、
請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記イコライザに入力される前記信号の振幅を検出する振幅検出回路を備え、
前記処理回路は、
前記初段増幅器を前記オフ状態にし、且つ前記
複数のフィルタの時定数を前記第1の時定数に設定している間に、前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットをキャンセルさせた後、
前記初段増幅器を前記オン状態にし、
前記振幅検出回路で検出された前記信号の振幅が閾値以上の場合に、
前記最終段の後段増幅器の前記フィルタの前記時定数を前記第2の時定数に設定し、
前記信号の振幅が前記閾値未満の場合に、
前記最終段の後段増幅器の前記フィルタの前記時定数を前記第1の時定数に設定する、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
信号を受信する半導体集積回路であって、
初段増幅器と前記初段増幅器の後段に接続される複数の後段増幅器とを備え、前記受信した信号の減衰を補償するイコライザと、
単一のフィルタと、
前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端に接続され、前記単一のフィルタの出力に応じて前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルする複数のキャンセル回路と、
前記単一のフィルタの出力に基づき前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルするように前記複数のキャンセル回路を制御する処理回路と、を備え、
前記複数の後段増幅器は、前記初段増幅器に接続される第1の後段増幅器から最後に接続される第2の後段増幅器まで直列に接続され、
前記第2の後段増幅器の出力端には前記単一のフィルタが接続され、
前記第1の後段増幅器から前記第2の後段増幅器までの各々の出力端には前記複数のキャンセル回路が各々接続され、
前記処理回路は、
前記
イコライザが第1の状態
の場合に前記複数の後段増幅器のうちキャンセル処理の対象となる後段増幅器の1つ前の後段増幅器をオフ状態にし、且つ前記
単一のフィルタの時定数を
第1の時定数に設定している間に、前記第2の後段増幅器
から前記第1の後段増幅器まで
順に前記キャンセル処理の対象となる後段増幅器それぞれの出力端のDCオフセットをキャンセルさせる処理を行った後、
前記
イコライザが第2の状態
の場合に前記初段増幅器をオン状態にし、且つ前記
単一のフィルタの時定数を前記
第1の時定数よりも大きい第2の時定数に設定している間に、前記第2の後段増幅器のDCオフセットをキャンセルさせるように構成されており、
前記処理回路は、前記第1の状態において前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせる際に、前記複数の後段増幅器のうち、前記DCオフセットをキャンセルした後段増幅器の状態を維持したまま、1つ前の後段増幅器のDCオフセットをキャンセルさせるように前記複数のキャンセル回路を制御する、
半導体集積回路。
【請求項9】
入力端と、
カップリングコンデンサと、
初段増幅器と前記初段増幅器の後段に直列に接続される複数の後段増幅器とを備え、前記カップリングコンデンサから受信される信号の減衰を補償するイコライザと、
前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端に接続される複数のフィルタと、
前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端に接続され、前記複数のフィルタのそれぞれの出力に応じて前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルする複数のキャンセル回路と、
前記複数のフィルタのそれぞれの出力に基づき前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルするように前記複数のキャンセル回路を制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、前記イコライザが第1の状態の場合に前記初段増幅器をオフ状態にし、且つ前記複数のフィルタの時定数を第1の時定数に設定して前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせ、前記イコライザが第2の状態の場合に前記初段増幅器をオン状態にし、且つ前記複数の後段増幅器のうち最終段の後段増幅器の前記フィルタの時定数を前記第1の時定数よりも大きい第2の時定数に設定して前記
最終段の後段増幅器のDCオフセットをキャンセルさせるように構成されており、
前記処理回路は、前記第1の状態において前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせる際に、前記複数の後段増幅器のうち、前記DCオフセットをキャンセルした後段増幅器の状態を維持したまま、次段の後段増幅器のDCオフセットをキャンセルさせるように前記複数のキャンセル回路を制御する、
受信装置。
【請求項10】
初段増幅器と前記初段増幅器の後段に直列に接続される複数の後段増幅器とを備え、受信した信号の減衰を補償するイコライザのDCオフセットをキャンセルするDCオフセットキャンセル方法であって、
前記イコライザが第1の状態の場合に前記初段増幅器をオフ状態にし、且つ前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端に接続される複数のフィルタの時定数を第1の時定数に設定して、前記複数のフィルタの出力に基づき前記イコライザの前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせ、
前記イコライザが第2の状態の場合に前記初段増幅器をオン状態にし、且つ前記複数の後段増幅器のうち最終段の後段増幅器の前記フィルタの時定数を前記第1の時定数よりも大きい第2の時定数に設定して、
前記最終段の後段増幅器の前記フィルタの出力に基づき
前記最終段の後段増幅器の出力端のDCオフセットをキャンセルさせ、
前記第1の状態において前記複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせる際に、前記複数の後段増幅器のうち、前記DCオフセットをキャンセルした後段増幅器の状態を維持したまま、次段の後段増幅器のDCオフセットをキャンセルさせる、
DCオフセットキャンセル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体集積回路、受信装置、およびDCオフセットキャンセル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送信回路との間でデータ伝送を行う受信回路を含む半導体集積回路において、イコライザ回路の前段にシリーズスイッチを挿入し、シリーズスイッチをオフさせて、イコライザ回路の出力のDCオフセットをキャンセルする技術がある。しかし、高速のサーデス(SERDES)、すなわち、シリアライザ/デシリアライザ(Serializer/Deserializer)では、シリーズスイッチが、伝送されるテータの信号特性の劣化を引き起こす。
【0003】
シリーズスイッチを挿入しない場合、振幅の大きい信号がイコライザ回路へ入力された状態でイコライザ回路の出力のDCオフセットをキャンセルする必要がある。この場合、振幅の大きい信号の高周波成分を除去するために、イコライザ回路に直列に、時定数が大きいフィルタ回路を配置することが考えられる。しかし、フィルタ回路の時定数を大きくすると、DCオフセットをキャンセルする所要時間が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態が解決しようとする課題は、イコライザのDCオフセットを好適にキャンセルすることができる半導体集積回路、受信装置、およびDCオフセットキャンセル方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の半導体集積回路は、信号を受信する。半導体集積回路は、イコライザと、複数のフィルタと、複数のキャンセル回路と、処理回路とを備える。イコライザは、初段増幅器と初段増幅器の後段に直列に接続される複数の後段増幅器とを備え、受信した信号の減衰を補償する。複数のフィルタは、複数の後段増幅器のそれぞれのイコライザの出力端に接続される。複数のキャンセル回路は、複数の後段増幅器のそれぞれの出力端に接続され、複数のフィルタのそれぞれの出力に応じてイコライザの複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットをキャンセルする。処理回路は、複数のフィルタのそれぞれの出力に基づきイコライザの複数の後段増幅器のそれぞれの前記出力端のDCオフセットをキャンセルするように複数のキャンセル回路を制御する。処理回路は、イコライザが第1の状態の場合に初段増幅器をオフ状態にし、且つ複数のフィルタの時定数を第1の時定数に設定して複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせ、イコライザが第2の状態の場合に初段増幅器をオン状態にし、且つ複数の後段増幅器のうち最終段の後段増幅器のフィルタの時定数を第1の時定数よりも大きい第2の時定数に設定して最終段の後段増幅器の出力端のDCオフセットをキャンセルさせるように構成されている。処理回路は、第1の状態において複数の後段増幅器のそれぞれの出力端のDCオフセットを順次キャンセルさせる際に、複数の後段増幅器のうち、DCオフセットをキャンセルした後段増幅器の状態を維持したまま、次段の後段増幅器のDCオフセットをキャンセルさせるように複数のキャンセル回路を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る受信装置の概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る半導体集積回路のステートST1の動作を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る半導体集積回路のステートST2の動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る半導体集積回路のステートST3の動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る半導体集積回路のステートST4の動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る半導体集積回路によるDCオフセットキャンセル方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る受信装置の概略的な構成図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る半導体集積回路のステートST1の動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る半導体集積回路のステートST2の動作を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る半導体集積回路のステートST3の動作を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る半導体集積回路のステートST4の動作を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る半導体集積回路によるDCオフセットキャンセル方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第3の実施形態に係る半導体集積回路の構成図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態に係る半導体集積回路の動作を説明するフローチャートである。
【
図15】
図15は、第4の実施形態に係る受信装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分にはそれぞれ同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なものである。
【0009】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、部品の構造、配置等を特定するものではない。実施の形態は、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施形態に係る半導体集積回路の構成)
図1は、第1の実施形態に係る受信装置RXの概略的な構成図である。受信装置RXは、半導体集積回路100を備える。受信装置RXは、受信装置RXの外部からの入力信号として差動信号を受信する。このため、受信装置RXが備える半導体集積回路100は、差動信号に対する処理を実行する。
【0011】
受信装置RXは、
図1に示すように、入力端IT、マッチング回路MG、カップリングコンデンサC0、半導体集積回路100を備える。半導体集積回路100は、イコライザ1、ショートスイッチ3a~3f、比較器4、処理回路5、デジタルアナログ変換器DAC1~3、固定抵抗R1~R4、可変抵抗R5,R6、コンデンサC1,C2を備える。
【0012】
入力端ITは、受信装置RXの外部からの差動信号を入力する。マッチング回路MGは、例えばインダクタを含む。マッチング回路MGは、受信装置RXの外部の回路を含む入力端IT側のインピーダンスとイコライザ1の入力インピーダンスとのインピーダンス整合を行う。カップリングコンデンサC0は、マッチング回路MGから出力される差動信号に含まれる直流成分をカットして差動信号の交流成分をイコライザ1に出力する。なお、入力端ITからイコライザ1の間は、
図1においてはマッチング回路MGとカップリングコンデンサC0とが1系統で図示されている。入力端ITは、差動信号を入力するので、実際には入力端ITからイコライザ1の間は、差動信号に対応して、マッチング回路MGとカップリングコンデンサC0とが2系統設けられている。
【0013】
イコライザ1は、カップリングコンデンサC0から入力された差動信号の減衰を補償する。イコライザ1は、初段増幅器CTLEと、初段増幅器CTLEに直列に接続される3つの後段増幅器PGA1~PGA3と、ショートスイッチ2a,2bと、を含んで構成されている。初段増幅器CTLEは、例えば連続時間線形等化器(Continuous Time Linear Equalizer)である。後段増幅器PGA1~PGA3は、可変利得増幅器(Variable Gain Amplifier)である。後段増幅器PGA1~PGA3は、3つに限定されることなく、例えば1つでも4つ以上でもよい。初段増幅器CTLE、3つの後段増幅器PGA1~PGA3の各々の増幅器は、差動信号を入力する2入力端と差動信号を出力する2出力端を備えた差動増幅器として構成される。
【0014】
初段増幅器CTLEは、一方の入力端に入力される差動信号VL1と他方の入力端に入力される差動信号VL2を差動増幅する。初段増幅器CTLEは、一方の出力端に差動信号VP(正極信号)を出力し、他方の出力端に差動信号VN(負極信号)を出力する。後段増幅器PGA1は、一方の入力端に入力される差動信号VPと他方の入力端に入力される差動信号VNを差動増幅する。後段増幅器PGA1は、一方の出力端に差動信号VP1を出力し、他方の出力端に差動信号VN1を出力する。後段増幅器PGA2は、一方の入力端に入力される差動信号VP1と他方の入力端に入力される差動信号VN1を差動増幅する。後段増幅器PGA2は、一方の出力端に差動信号VP2を出力し、他方の出力端に差動信号VN2を出力する。後段増幅器PGA3は、一方の入力端に入力される差動信号VP2と他方の入力端に入力される差動信号VN2を差動増幅する。後段増幅器PGA3は、一方の出力端に差動信号VP3を出力し、他方の出力端に差動信号VN3を出力する。
【0015】
初段増幅器CTLEの一方の出力端とバイアス端子BTとの間にはショートスイッチ2aが接続される。初段増幅器CTLEの他方の出力端とバイアス端子BTとの間には入力ショートスイッチ2bが接続される。
【0016】
後段増幅器PGA1の一方の出力端にはショートスイッチ3bと固定抵抗R2との直列回路が接続される。後段増幅器PGA1の他方の出力端にはショートスイッチ3aと固定抵抗R1との直列回路が接続される。
【0017】
固定抵抗R2の一端にはコンデンサC2の一端が接続される。コンデンサC2の他端は基準電位、例えばグランドに接続される。固定抵抗R1の一端にはコンデンサC1の一端が接続される。コンデンサC1の他端は基準電位に接続される。
【0018】
固定抵抗R1とコンデンサC1とは、第1のローパスフィルタを構成している。第1のローパスフィルタは、入力される差動信号VN1の低域周波数の成分を通過させる。固定抵抗R2とコンデンサC2とは、第2のローパスフィルタを構成している。第2のローパスフィルタは、入力される差動信号VP1の低域周波数の成分を通過させる。固定抵抗R2の値とコンデンサC2の値との積である時定数は、固定抵抗R1の値とコンデンサC1の値との積である時定数と略等しく、その値は、後述する可変抵抗R7の値とコンデンサC1の値との積である時定数の設定可能な値の上限値に対して、比較的小さい。このため、入力信号に対する出力の立ち上がり時間が短くなる。
【0019】
比較器4は、ショートスイッチ3a,3bがオン時に、コンデンサC1の一端の電圧とコンデンサC2の一端の電圧との差電圧をDCオフセットとして検出する。比較器4は、検出したDCオフセットを処理回路5に出力する。処理回路5は、例えばCPUを含んで構成される。また処理回路5は、トランジスタを含むアナログ回路で構成されてもよい。処理回路5は、一定期間の入力信号(すなわち入力されたDCオフセット)を平均化処理する。処理回路5は、比較器4からのDCオフセットに応じたDAC(デジタルアナログ変換)コードを演算する。処理回路5は、演算したDACコードをデジタルアナログ変換器DAC1に出力する。
【0020】
デジタルアナログ変換器DAC1は、キャンセル回路に相当する。デジタルアナログ変換器DAC1は、可変電流源Iaと、可変電流源Ibとを含む。可変電流源Iaは、後段増幅器PGA1の一方の出力端に接続される。可変電流源Ibは、後段増幅器PGA1の他方の出力端に接続される。
【0021】
デジタルアナログ変換器DAC1は、処理回路5からのDACコードに基づき、可変電流源Iaと可変電流源Ibとの電流を調整する。処理回路5からのDACコードにより、後段増幅器PGA1の2出力端間のオフセット電圧がゼロになるように、可変電流源Iaの電流と可変電流源Ibの電流とが調整される。後段増幅器PGA1の2出力端間のオフセット電圧は、差動信号VP1の電圧と差動信号VN1の電圧との差である。すなわち、デジタルアナログ変換器DAC1は、電流調整により後段増幅器PGA1の2出力端間のDCオフセットをキャンセルする。例えば、差動信号VP1の電圧が差動信号VN1の電圧よりも高い場合、デジタルアナログ変換器DAC1は、可変電流源Iaの電流を増加させることで電流を基準電位側に引き込む。デジタルアナログ変換器DAC1は、この電流引き込みにより、差動信号VP1の電圧を下げて、オフセット電圧がゼロになるようにする。
【0022】
なお、デジタルアナログ変換器DAC1は、バイナリサーチを用いて、可変電流源Iaと可変電流源Ibとの電流を調整することでDCオフセットをキャンセルしてもよい。このバイナリ―サーチによる調整では、可変電流加算前のオフセット電圧と可変電流加算後のオフセット電圧との大小比較を逐次実施し、その差がゼロとなる方向に可変電流を増加又は減少させて、所望の電流値を探索する。より具体的には、可変電流加算後のオフセット電圧の極性判定を逐次実施し、オフセット電圧がゼロとなる方向に、可変電流の増加又は減少の幅を逐次の比較毎に1/2に減少させながら、可変電流を調整する。これにより、高速、高精度に所望の電流値を得ることができる。
【0023】
後段増幅器PGA2の一方の出力端にはショートスイッチ3dと固定抵抗R4との直列回路が接続される。後段増幅器PGA2の他方の出力端にはショートスイッチ3cと固定抵抗R3との直列回路が接続される。固定抵抗R4の一端にはコンデンサC2の一端が接続され、固定抵抗R3の一端にはコンデンサC1の一端が接続される。
【0024】
固定抵抗R3とコンデンサC1とは、第3のローパスフィルタを構成している。第3のローパスフィルタは、入力される差動信号VN2の低域周波数の成分を通過させる。固定抵抗R4とコンデンサC2とは、第4のローパスフィルタを構成している。第4のローパスフィルタは、入力される差動信号VP2の低域周波数の成分を通過させる。固定抵抗R4の値とコンデンサC2の値との積である時定数は、固定抵抗R3の値とコンデンサC1の値との積である時定数と略等しく、その値は、可変抵抗R7の値とコンデンサC1の値との積である時定数の設定可能な値の上限値に対して、比較的小さい。このため、入力信号に対する出力の立ち上がり時間が短くなる。
【0025】
比較器4は、ショートスイッチ3c,3dがオン時に、コンデンサC1の一端の電圧とコンデンサC2の一端の電圧との差電圧をDCオフセットとして検出する。比較器4は、検出したDCオフセットを処理回路5に出力する。処理回路5は、一定期間の入力信号(すなわち入力されたDCオフセット)を平均化処理する。処理回路5は、比較器4からのDCオフセットに応じたDAC(デジタルアナログ変換)コードを演算する。処理回路5は、演算したDACコードをデジタルアナログ変換器DAC2に出力する。
【0026】
デジタルアナログ変換器DAC2は、キャンセル回路に相当する。デジタルアナログ変換器DAC2は、可変電流源Icと、可変電流源Idとを含む。可変電流源Icは、後段増幅器PGA2の一方の出力端に接続される。可変電流源Idは、後段増幅器PGA1の他方の出力端に接続される。
【0027】
デジタルアナログ変換器DAC2は、処理回路5からのDACコードに基づき、可変電流源Icと可変電流源Idとの電流を調整する。処理回路5からのDACコードにより、後段増幅器PGA2の2出力端間のオフセット電圧がゼロになるように、可変電流源Icの電流と可変電流源Idの電流とが調整される。後段増幅器PGA2の2出力端間のオフセット電圧は、差動信号VP2の電圧と差動信号VN2の電圧との差である。すなわち、デジタルアナログ変換器DAC2は、電流調整により後段増幅器PGA2の2出力端間のDCオフセットをキャンセルする。
【0028】
後段増幅器PGA3の一方の出力端にはショートスイッチ3fと可変抵抗R6との直列回路が接続される。後段増幅器PGA3の他方の出力端にはショートスイッチ3eと可変抵抗R5との直列回路が接続される。可変抵抗R6の一端にはコンデンサC2の一端が接続され、固定抵抗R5の一端にはコンデンサC1の一端が接続される。
【0029】
可変抵抗R5とコンデンサC1とは、第5のローパスフィルタを構成している。第5のローパスフィルタは、入力される差動信号VN3の低域周波数の成分を通過させる。可変抵抗R6とコンデンサC2とは、第6のローパスフィルタを構成している。第6のローパスフィルタは、入力される差動信号VP3の低域周波数の成分を通過させる。可変抵抗R6の値とコンデンサC2の値との積である時定数は、可変抵抗R5の値とコンデンサC1の値との積である時定数と略等しい。この時定数の値は可変で、可変の範囲内で小さく設定することで入力信号に対する出力の立ち上がり時間が短くなる。
【0030】
比較器4は、ショートスイッチ3e,3fがオン時に、コンデンサC1の一端の電圧とコンデンサC2の一端の電圧との差電圧をDCオフセットとして検出する。比較器4は、検出したDCオフセットを処理回路5に出力する。処理回路5は、一定期間の入力信号(すなわち入力されたDCオフセット)を平均化処理する。処理回路5は、比較器4からのDCオフセットに応じたDAC(デジタルアナログ変換)コードを演算する。処理回路5は、演算したDACコードをデジタルアナログ変換器DAC3に出力する。
【0031】
デジタルアナログ変換器DAC3は、DCオフセットキャンセル回路に相当する。デジタルアナログ変換器DAC3は、可変電流源Ieと、可変電流源Ifとを含む。可変電流源Ieは、後段増幅器PGA3の一方の出力端に接続される。可変電流源Ifは、後段増幅器PGA3の他方の出力端に接続される。
【0032】
デジタルアナログ変換器DAC3は、処理回路5からのDACコードに基づき、可変電流源Ieと可変電流源Ifとの電流を調整する。処理回路5からのDACコードにより、後段増幅器PGA3の2出力端間のオフセット電圧がゼロになるように、可変電流源Ieの電流と可変電流源Ifの電流とが調整される。後段増幅器PGA3の2出力端間のオフセット電圧は、差動信号VP3の電圧と差動信号VN3の電圧との差である。すなわち、デジタルアナログ変換器DAC3は、電流調整により後段増幅器PGA3の2出力端間のDCオフセットをキャンセルする。
【0033】
処理回路5は、イコライザ1が第1の状態の場合に、上述した第1~第6のローパスフィルタそれぞれの値を第1の時定数に設定する。固定抵抗R1~R4を含んで構成される第1~第4のローパスフィルタは、第1の時定数となる固定値に設定されている。可変抵抗R5,R6を含んで構成される第5,第6ローパスフィルタは、第1の時定数に設定される。第1の状態は、初段増幅器CTLEがオフ状態である。初段増幅器CTLEのオフ状態は、例えば、初段増幅器CTLEの出力段において、電源ノードと出力ノードとの間およびグランドノードと出力ノードとの間の電流経路をオープン状態にすることで実現できる。
【0034】
処理回路5は、イコライザ1が第2の状態の場合、可変抵抗R5および可変抵抗R6の値を固定抵抗R1~R4の値より大きくして、第5のローパスフィルタの時定数と第6のローパスフィルタの時定数とを第1の時定数よりも大きい第2の時定数に設定する。第2の状態は、初段増幅器CTLEがオン状態である。初段増幅器CTLEのオン状態は、例えば、初段増幅器CTLEの出力段において、電源ノードと出力ノードとの間およびグランドノードと出力ノードとの間の電流経路をオープン状態にはしないことで実現できる。処理回路5は、イコライザが第2の状態の場合、さらに、スイッチ3a~3dをオフする。
【0035】
処理回路5は、イコライザ1を第1の状態又は第2の状態に設定する。処理回路5は、イコライザ1に備えられたスイッチ2a,2bのオンとオフを切り替え、スイッチ3a,3b,3c,3d,3e,3fのオンとオフを切り替える。また処理回路5は、可変抵抗R5,R6の抵抗値を設定する。さらに処理回路5は、比較器4からの比較出力に基づき、後段増幅器PGA1~3それぞれの2出力端間のDCオフセットをキャンセルさせる。具体的には処理回路は、初段増幅器CTLEをオフ状態にし、スイッチ3a,3bをオンし、第1ローパスフィルタおよび第2ローバスフィルタを第1の時定数に設定し、比較器4からの比較出力に基づき後段増幅器PGA1の2出力端間のDCオフセットをキャンセルさせる。処理回路5は、スイッチ3a,3bをオフし、スイッチ3c,3dをオンし、第3ローパスフィルタおよび第4ローバスフィルタを第1の時定数に設定し、比較器4からの比較出力に基づき後段増幅器PGA2の2出力端間のDCオフセットをキャンセルさせる。処理回路5は、スイッチ3c,3dをオフし、スイッチ3e,3fをオンし、初段増幅器CTLEをオフ状態にし、第5ローパスフィルタおよび第6ローパスフィルタを第1の時定数に設定し、比較器4からの比較出力に基づき後段増幅器PGA3の2出力端間のDCオフセットをキャンセルさせる。処理回路5は、初段増幅器CTLEをオン状態にし、第5ローパスフィルタおよび第6ローバスフィルタを第2の時定数に設定して、初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA3とのDCオフセットをキャンセルさせる。
【0036】
(第1の実施形態に係る半導体集積回路の動作)
次にこのように構成された第1の実施形態に係る半導体集積回路の動作を
図2-
図5を参照して説明し、第1の実施形態におけるDCオフセットキャンセル方法を
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0037】
まず、
図2に示すステートST1において、処理回路5は、初段増幅器CTLEとDAC2,3をオフさせ、ショートスイッチ2a,2b,3a,3bをオンさせ、ショートスイッチ3c,3d,3e,3fをオフさせる(S11)。デジタルアナログ変換器DAC2,3のオフは、例えば、デジタルアナログ変換器DAC2,3が、処理回路5から、可変電流源Icおよび可変電流源Idの電流を流さない又は0とするDACコードを入力することにより実現される。このとき、初段増幅器CTLEは、オフ状態となる。これにより、後段増幅器PGA1の2入力端は、共にバイアス端子BTの電位となる。また、第1および第2のローバスフィルタそれぞれを構成する抵抗とコンデンサとの積であるR1×C1,R2×C2は、熱雑音を除去できる程度に小さい時定数(第1の時定数に相当)に予め設定されている。比較器4は、この小さい時定数のフィルタを通過した後段増幅器PGA1のDCオフセットを検出する(S12)。比較器4は、検出したDCオフセットを処理回路5に出力する。
【0038】
処理回路5は、比較器4からのDCオフセットに応じたDACコードを演算し、DACコードをデジタルアナログ変換器DAC1に出力する。次に、デジタルアナログ変換器DAC1は、処理回路5からのDACコードに基づき後段増幅器PGA1の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Iaと可変電流源Ibとの電流を調整する。そして、デジタルアナログ変換器DAC1は、電流源Iaの電流と可変電流源Ibの電流とを保持(Hold)する(S13)。
【0039】
次に、
図3に示すステートST2において、処理回路5は、初段増幅器CTLEとデジタルアナログ変換器DAC3をオフさせ、ショートスイッチ3c,3dをオンさせ、ショートスイッチ3a,3b,3e,3fをオフさせる(S14)。このとき、後段増幅器PGA1の2入力端は、共にバイアス端子BTの電位となっている。また、デジタルアナログ変換器DAC1は、後段増幅器PGA1の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、電流源Iaの電流と可変電流源Ibの電流とを設定している。これにより、後段増幅器PGA2の2入力端のDCオフセットがない状態(キャンセルされた状態)となっている。また、比較器4の前段の第3および第4のローバスフィルタを構成する抵抗とコンデンサとの積であるR3×C1,R4×C2は、熱雑音を除去できる程度に小さい時定数(第1の時定数に相当)に予め設定されている。比較器4は、この小さい時定数のフィルタを通過した後段増幅器PGA1と後段増幅器PGA2とのDCオフセットを検出する(S15)。比較器4は、検出したDCオフセットを処理回路5に出力する。
【0040】
処理回路5は、比較器4からのDCオフセットに応じたDACコードを演算し、DACコードをデジタルアナログ変換器DAC2に出力する。次に、デジタルアナログ変換器DAC2は、処理回路5からのDACコードに基づき後段増幅器PGA2の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Icと可変電流源Idとの電流を調整する。そして、デジタルアナログ変換器DAC2は、可変電流源Icの電流と可変電流源Idの電流とを保持(Hold)する(S16)。
【0041】
次に、
図4に示すステートST3において、ショートスイッチ3c,3dをオフさせ、ショートスイッチ3e,3fをオンさせる(S17)。このとき、後段増幅器PGA2の2入力端は、共にバイアス端子BTの電位となっている。また、デジタルアナログ変換器DAC2は、後段増幅器PGA2の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、電流源Icの電流と可変電流源Idの電流とを設定している。これにより、後段増幅器PGA3の2入力端のDCオフセットがない状態(キャンセルされた状態)となっている。また、比較器4の前段の第5および第6のローパスフィルタを構成する抵抗とコンデンサとの積であるR5×C1,R6×C2は、熱雑音を除去できる程度の時定数(第1の時定数に相当)に設定される。比較器4は、この小さい時定数のフィルタを通過した後段増幅器PGA1と後段増幅器PGA2と後段増幅器PGA3とのDCオフセットを検出する(S18)。比較器4は、DCオフセットを処理回路5に出力する。
【0042】
処理回路5は、比較器4からのDCオフセットに応じたDACコードを演算し、DACコードをデジタルアナログ変換器DAC3に出力する。次に、デジタルアナログ変換器DAC3は、処理回路5からのDACコードに基づき後段増幅器PGA3の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Ieと可変電流源Ifとの電流を調整する。そして、デジタルアナログ変換器DAC3は、可変電流源Ieの電流と可変電流源Ifの電流とを保持(Hold)する(S19)。
【0043】
次に、
図5に示すステートST4において、処理回路5は、初段増幅器CTLEをオンさせ、ショートスイッチ2a,2bをオフさせるS20)。また、処理回路5は、ショートスイッチ2a,2b以外のスイッチ3a~3dをオフさせ、スイッチ3e,3fをオンさせる。デジタルアナログ変換器DAC1~3は電流値を保持している。
【0044】
処理回路5は、可変抵抗R5,R6の値それぞれを大きな値に変更する。ここで、大きな値となった可変抵抗R5,R6を、可変抵抗R7,R8とする。このため、時定数R7×C1,R8×C2(第2の時定数)が時定数R5×C1,R6×C2(第1の時定数)よりも大きくなる(S21)。
【0045】
デジタルアナログ変換器DAC3は、後段増幅器PGA3の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、電流源Ieの電流と可変電流源Ifの電流とを設定している。これにより、後段増幅器PGA3の2出力端のDCオフセットがない状態(キャンセルされた状態)となっている。比較器4は、この大きい時定数のフィルタを通過した初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA1と後段増幅器PGA2と後段増幅器PGA3とのDCオフセットを検出する(S22)。比較器4は、検出したDCオフセットを処理回路5に出力する。
【0046】
処理回路5は、比較器4からのDCオフセットに応じたDACコードを演算し、DACコードをデジタルアナログ変換器DAC3に出力する。次に、デジタルアナログ変換器DAC3は、処理回路5からのDACコードに基づき後段増幅器PGA3の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Ieと可変電流源Ifとの電流を調整する(S23)。
【0047】
(第1の実施形態に係る半導体集積回路の効果)
第1の実施形態に係る半導体集積回路によれば、処理回路5は、初段増幅器CTLEをオフ状態にし、測定対象の信号を通過させるフィルタを小さい時定数に設定する。この状態で、処理回路5は、後段増幅器PGA1~PGA3のDCオフセットをキャンセルさせる。その後、処理回路5は、初段増幅器CTLEをオン状態にする。処理回路5は、最終段の後段増幅器PGA3の出力端に接続されたフィルタを大きい時定数に設定する。処理回路5は、初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA1~PGA3とのDCオフセットをキャンセルさせる。
【0048】
即ち、処理回路5は、初段増幅器をオフ状態にし、フィルタを小さい時定数に設定して、後段増幅器のDCオフセットのキャンセルを事前に行う。このため、DCオフセットをキャンセルする所要時間を短縮することができる。
【0049】
(第2の実施形態に係る半導体集積回路の構成)
図7は、第2の実施形態に係る受信装置RXaの概略的な構成図である。受信装置RXaは、半導体集積回路100aを備える。受信装置RXaは、受信装置RXaの外部からの入力信号として差動信号を受信する。このため、受信装置RXaが備える半導体集積回路100aは、差動信号に対する処理を実行する。受信装置RXaは、
図7に示すように、入力端IT、マッチング回路MG、カップリングコンデンサC0、半導体集積回路100aを備える。半導体集積回路100aは、イコライザ1a、ショートスイッチ3g~3h、比較器4a、処理回路5a、デジタルアナログ変換器DAC4~6、可変抵抗R9,R10、コンデンサC3,C4を備える。
【0050】
初段増幅器CTLEの一方の出力端とバイアス端子BTとの間にはショートスイッチ2aが接続される。初段増幅器CTLEの他方の出力端とバイアス端子BTとの間には入力ショートスイッチ2bが接続される。
【0051】
後段増幅器PGA1の一方の出力端とバイアス端子BTとの間にはショートスイッチ2cが接続される。後段増幅器PGA1の他方の出力端とバイアス端子BTとの間にはショートスイッチ2dが接続される。
【0052】
後段増幅器PGA2の一方の出力端とバイアス端子BTとの間にはショートスイッチ2eが接続される。後段増幅器PGA2の他方の出力端とバイアス端子BTとの間にはショートスイッチ2fが接続される。
【0053】
デジタルアナログ変換器DAC4~6は、それぞれキャンセル回路に相当する。デジタルアナログ変換器DAC4は、可変電流源Ihと可変電流源Igとを含む。デジタルアナログ変換器DAC5は、可変電流源Ikと可変電流源Ilとを含む。デジタルアナログ変換器DAC6は、可変電流源Iiと可変電流源Ijとを含む。
【0054】
後段増幅器PGA1の一方の出力端にはデジタルアナログ変換器DAC6の可変電流源Iiが接続される。後段増幅器PGA1の他方の出力端にはデジタルアナログ変換器DAC6の可変電流源Ijが接続される。後段増幅器PGA2の一方の出力端にはデジタルアナログ変換器DAC5の可変電流源Ikが接続される。後段増幅器PGA2の他方の出力端にはデジタルアナログ変換器DAC5の可変電流源Ilが接続される。後段増幅器PGA3の一方の出力端にはデジタルアナログ変換器DAC4の可変電流源Igが接続される。後段増幅器PGA3の他方の出力端にはデジタルアナログ変換器DAC4の可変電流源Ihが接続される。
【0055】
後段増幅器PGA3の一方の出力端にはショートスイッチ3hと可変抵抗R10との直列回路が接続される。後段増幅器PGA3の他方の出力端にはショートスイッチ3gと可変抵抗R9との直列回路が接続される。
【0056】
可変抵抗R9の一端にはコンデンサC3の一端が接続される。可変抵抗R10の一端にはコンデンサC4の一端が接続される。
【0057】
可変抵抗R9とコンデンサC3とは、第7のローパスフィルタを構成している。第7のローパスフィルタは、入力される差動信号VN3の低域周波数の成分を通過させる。可変抵抗R10とコンデンサC4とは、第8のローパスフィルタを構成している。第8のローパスフィルタは、入力信号VP3の低域周波数の成分を通過させる。可変抵抗R9,R10を小さくすることで、第7および第8のローパスフィルタの時抵抗を小さくすることができる。可変抵抗R9,R10を大きくすることで、第7および第8のローパスフィルタの時定数を大きくすることができる。
【0058】
比較器4aは、ショートスイッチ3g,3hがオン時に、コンデンサC3の一端の電圧とコンデンサC4の一端の電圧との差電圧をDCオフセットとして検出する。比較器4aは、検出したDCオフセットを処理回路5aに出力する。処理回路5aは、比較器4aからのDCオフセットに応じたDACコードを演算する。処理回路5aは、演算したDACコードをデジタルアナログ変換器DAC4,DAC5,DAC6に出力する。
【0059】
(第2の実施形態に係る半導体集積回路の動作)
次にこのように構成された第2の実施形態に係る半導体集積回路の動作を
図8-
図11を参照して説明する。第2の実施形態におけるDCオフセットキャンセル方法を
図12のフローチャートを参照しながら説明する。
【0060】
まず、
図8に示すステートST1aにおいて、処理回路5aは、後段増幅器PGA2とデジタルアナログ変換器DAC5,6とショートスイッチ2a,2b,2c,2dをオフさせる。また、処理回路5aは、後段増幅器PGA3とショートスイッチ2e,2f,3g,3hとをオンさせる(S31)。このとき、後段増幅器PGA2は、オフ状態となる。後段増幅器PGA2のオフ状態は、初段増幅器CTLEのオフ状態と同じようにして実現できる。これにより、後段増幅器PGA3の2入力端は、共にバイアス端子BTの電位となる。また、第7および第8のローパスフィルタそれぞれを構成する抵抗とコンデンサとの積であるR9×C3,R10×C4は、熱雑音を除去できる程度に小さい時定数(第1の時定数に相当)に設定されている。比較器4aは、この小さい時定数のフィルタを通過した後段増幅器PGA3のDCオフセットを検出する(S32)。比較器4aは、検出したDCオフセットを処理回路5aに出力する。
【0061】
処理回路5aは、比較器4aからのDCオフセットに応じたDACコードを演算する。処理回路5aは、DACコードをデジタルアナログ変換器DAC4に出力する。次に、デジタルアナログ変換器DAC4は、処理回路5aからのDACコードに基づき後段増幅器PGA3の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Igと可変電流源Ihとの電流を調整する。そして、デジタルアナログ変換器DAC4は、可変電流源Igの電流と可変電流源Ihの電流とを保持(Hold)する(S33)。
【0062】
次に、
図9に示すステートST2aにおいて、処理回路5aは、後段増幅器PGA1とデジタルアナログ変換器DAC6とショートスイッチ2a,2b,2e,2fとをオフさせる。また、処理回路5aは、後段増幅器PGA3とショートスイッチ2c,2dとをオンさせる(S34)。このとき、後段増幅器PGA1は、オフ状態となる。後段増幅器PGA1のオフ状態は、初段増幅器CTLEのオフ状態と同じようにして実現できる。これにより、後段増幅器PGA2の2入力端は、共にバイアス端子BTの電位となる。また、第7および第8のローパスフィルタそれぞれは、熱雑音を除去できる程度に小さい時定数(第1の時定数に相当)に設定されている。比較器4aは、この小さい時定数フィルタを通過した後段増幅器PGA2のDCオフセットを検出する。比較器4aは、検出したDCオフセットを処理回路5aに出力する。
【0063】
処理回路5aは、比較器4aからのDCオフセットに応じたDACコードを演算する。処理回路5aは、DACコードをデジタルアナログ変換器DAC5に出力する。デジタルアナログ変換器DAC5は、処理回路5aからのDACコードに基づき後段増幅器PGA5の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Iiと可変電流源Ijとの電流を調整し、その後可変電流Ig,Ihを再度調整する。そして、デジタルアナログ変換器DAC5,DAC6は、各可変電流源Ii,Ij,Ig,Ihの電流を保持(Hold)する(S35)。
【0064】
次に、
図10に示すステートST3aにおいて、処理回路5aは、初段増幅器CTLEとショートスイッチ2c,2d,2e,2fとをオフさせる。処理回路5aは、ショートスイッチ2a,2bをオンさせる(S36)。このとき、初段増幅器CTLEは、オフ状態となる。これにより、後段増幅器PGA1の2入力端は、共にバイアス端子BTの電位となる。また、第7および第8のローパスフィルタそれぞれは、熱雑音を除去できる程度に小さい時定数(第1の時定数に相当)に設定されている。比較器4aは、この小さい時定数フィルタを通過した後段増幅器PGA1のDCオフセットを検出する。比較器4aは、検出したDCオフセットを処理回路5aに出力する。
【0065】
処理回路5aは、比較器4aからのDCオフセットに応じたDACコードを演算する。デジタルアナログ変換器DAC6は、DACコードに基づき後段増幅器PGA1の2出力端間のDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Ikと可変電流源Ilとの電流を調整し、その後Ii,Ijを再度調整し、さらにその後Ig,Ihを再調整する(S37)。そして、デジタルアナログ変換器DAC6,DAC5,DAC4は、各可変電流源Ik,Il,Ig,Ih,Ii,Ijの電流を保持する(S38)。
【0066】
次に、
図11に示すステートST4aにおいて、処理回路5aは、初段増幅器CTLEをオンさせる。また、処理回路5aは、ショートスイッチ2a~2fをオフさせる(S39)。そして、処理回路5aは、可変抵抗R9,R10の値それぞれを大きな値に変更する。ここで、大きな値となった可変抵抗R9,R10を、可変抵抗R11,R12とする。これにより、処理回路5aは、時定数R11C3,R12C4を大に切り替える(S40)。このため、時定数R11×C3,R12×C4(第2の時定数)が時定数R9×C3,R10×C4(第1の時定数)よりも大きくなる。
【0067】
比較器4aは、時定数の大きいフィルタを通過した初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA1と後段増幅器PGA2と後段増幅器PGA3とのDCオフセットを検出する(S41)。比較器4aは、検出したDCオフセットを処理回路5aに出力する。
【0068】
処理回路5aは、比較器4aからのDCオフセットに応じたDACコードを演算する。デジタルアナログ変換器DAC4は、処理回路5aからのDACコードに基づきDCオフセットをキャンセルするように、可変電流源Igと可変電流源Ihとの電流を調整する(S42)。
【0069】
(第2の実施形態に係る半導体集積回路の効果)
第2の実施形態に係る半導体集積回路によれば、処理回路5aは、複数の後段増幅器の内の最後から2つ目の後段増幅器PGA2をオフ状態にする。処理回路5aは、フィルタを小さい時定数に設定する。処理回路5aは、後段増幅器PGA1~PGA3のDCオフセットをキャンセルさせる。その後、処理回路5aは、初段増幅器CTLEをオン状態にする。処理回路5aは、フィルタを大きい時定数に設定する。処理回路5aは、初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA1~PGA3とのDCオフセットをキャンセルさせる。
【0070】
即ち、処理回路5aは、後段増幅器の後段から初段増幅器に向けて順にオフ状態にする。また、処理回路5aは、フィルタを小さい時定数に設定して、後段増幅器のDCオフセットのキャンセルを事前に行う。このため、イコライザ1aのDCオフセットをキャンセルする所要時間を短縮することができる。
【0071】
また、第2の実施形態に係る半導体集積回路は、第1の実施形態に係る半導体集積回路に比べて、固定抵抗R1,R2,R3,R4が設けられていない。このため、半導体集積回路をさらに小型化できる。
【0072】
(第3の実施形態に係る半導体集積回路の構成)
図13は、第3の実施形態に係る半導体集積回路の構成図である。半導体集積回路は、他の半導体集積回路からの差動信号を受信する。
【0073】
半導体集積回路は、
図13に示すように、イコライザ1b、比較器4b、処理回路5b、振幅検出回路6、RCフィルタ7、デジタルアナログ変換器DAC8を備える。イコライザ1bは、差動増幅器から構成される。
【0074】
処理回路5bは、イコライザ1bが第1の状態の場合にRCフィルタ7を第1の時定数に設定する。処理回路5bは、イコライザ1bが第2の状態の場合にRCフィルタ7を第1の時定数よりも大きい第2の時定数に設定する。第1の状態は、イコライザ1bに入力される信号の振幅がしきい値未満の状態である。第2の状態は、イコライザ1bに入力される信号の振幅がしきい値以上の状態である。
【0075】
振幅検出回路6は、イコライザ1bに入力する差動信号の振幅を検出する。処理回路5bは、振幅検出回路6で検出された信号の振幅がしきい値以上の場合に、RCフィルタ7を第2の時定数に設定する。処理回路5bは、信号の振幅がしきい値未満の場合に、RCフィルタ7を第1の時定数に設定する。RCフィルタ7は、抵抗RとコンデンサCとを含んで構成されるローパスフィルタである。
【0076】
処理回路5bは、比較器4bの比較出力に基づきデジタルアナログ変換器DAC8を制御する。デジタルアナログ変換器DAC8は、処理回路5bからの指示によりイコライザ1bのDCオフセットをキャンセルさせる。
【0077】
(第3の実施形態に係る半導体集積回路の動作)
次に、
図14に示すフローチャートを参照しながら、第3の実施形態に係る半導体集積回路の動作を説明する。
【0078】
まず、処理回路は、振幅検出回路6をオンさせる。振幅検出回路6は、イコライザ1bに入力する差動信号の振幅を検出する(S51)。振幅検出回路6は、検出結果を示す振幅検出信号を処理回路5bに出力する。処理回路5bは、振幅検出回路6から出力された振幅検出信号に基づいて、検出された振幅がしきい値以上かどうかを判定する(S52)。処理回路5bは、検出された信号の振幅がしきい値以上であった場合(S52のYES)には、S54の処理に進む。
【0079】
処理回路5bは、検出された信号の振幅がしきい値未満である場合(S52のNO)には、振幅検出回路6、イコライザ1b(アンプ)、比較器4b、デジタルアナログ変換器DAC8、RCフィルタ7をオンさせる。また、処理回路5bは、RCフィルタ7の時定数を、第1の時定数に設定、即ち時定数を小にする(S53)。
【0080】
次に、比較器4bは、第1の時定数に設定されたRCフィルタ7を通過したイコライザ1bの出力を比較する。比較器4bは、第1の時定数に応じた比較出力を処理回路5bへ出力する(S55a)。処理回路5bは、比較器4bの比較出力に基づきデジタルアナログ変換器DAC8を制御する(S56a)。
【0081】
次に、処理回路5bは、振幅検出回路6で検出された振幅検出信号の振幅がしきい値以上となることがあったかどうかを判定する(S57)。処理回路5bは、振幅検出信号の振幅がしきい値以上となることがあった場合(S57のYES)には、S54の処理に進む。
【0082】
一方、振幅検出信号の振幅がしきい値未満であった場合(S57のNO)には、デジタルアナログ変換器DAC8は、処理回路5bからの指示によりイコライザ1bのDCオフセットをキャンセルさせる(S58a)。そして、DCオフセットキャンセル処理が終了する。
【0083】
一方、処理回路5bは、(S52のYES)および(S57のYES)の判断の後、振幅検出回路6をオフさせ、イコライザ1b(アンプ)、比較器4b、デジタルアナログ変換器DAC8、RCフィルタ7をオンさせる。また、処理回路5bは、RCフィルタ7の時定数を、RCフィルタ7を第2の時定数に設定、即ち時定数を大にする(S54)。
【0084】
次に、比較器4bは、第2の時定数に設定されたRCフィルタ7を通過したイコライザ1bの出力を比較する。比較器4bは、第2の時定数に応じた比較出力を処理回路5bへ出力する(S55b)。処理回路5bは、比較器4bの比較出力に基づきデジタルアナログ変換器DAC8を制御する(S56b)。デジタルアナログ変換器DAC8は、処理回路5bからの指示によりイコライザ1bのDCオフセットをキャンセルさせる(S58b)。そして、DCオフセットキャンセル処理が終了する。
【0085】
(第3の実施形態に係る半導体集積回路の効果)
第3の実施形態に係る半導体集積回路によれば、処理回路5bは、振幅検出回路6からの振幅検出信号の振幅が所定値未満の場合には、RCフィルタ7の時定数を小にする。このため、イコライザ1bのDCオフセットをキャンセルする所要時間を短縮することができる。
【0086】
また、第1および第2の実施形態に係る半導体集積回路では、処理回路5は、初段増幅器CTLEをオフ状態にする。処理回路5は、フィルタを小さい時定数に設定する。処理回路5は、後段増幅器PGA1~PGA3のDCオフセットをキャンセルさせる。その後、処理回路5は、初段増幅器CTLEをオン状態にする。処理回路5は、フィルタを大きい時定数に設定する。処理回路5は、初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA1~PGA3とのDCオフセットをキャンセルさせる。
【0087】
これに対して、第3の実施形態に係る半導体集積回路では、処理回路5bは、イコライザ1bに入力される信号の振幅の大小を、判定する。処理回路5bは、振幅の大小に応じてRCフィルタ7の時定数を大小に切り替える。
【0088】
(第4の実施形態に係る半導体集積回路の構成)
図15は、第4の実施形態に係る受信装置RXbの概略的な構成図である。第4の実施形態に係る受信装置RXbは、
図1に示す第1の実施形態に係る受信装置RXの構成に、さらに、
図13に示す第3の実施形態に係る半導体集積回路を加えた。
【0089】
受信装置RXbは、入力端IT、マッチング回路MG、カップリングコンデンサC0、半導体集積回路100bを備える。半導体集積回路100bは、イコライザ1、ショートスイッチ3a~3f、比較器4c、処理回路5c、デジタルアナログ変換器DAC1~3、固定抵抗R1~R4、可変抵抗R5,R6、コンデンサC1,C2、振幅検出回路6aを備える。
【0090】
処理回路5cは、初段増幅器CTLEをオフ状態にする。処理回路5cは、フィルタを小さい時定数に設定する。処理回路5cは、
図2~
図4に示す方法で、後段増幅器PGA1~PGA3のDCオフセットをキャンセルさせる。
【0091】
振幅検出回路6aは、イコライザ1に入力する差動信号の振幅を検出する。処理回路5cは、初段増幅器CTLEをオン状態にする。その後、処理回路5cは、振幅検出回路6aで検出された信号の振幅が所定値以上かどうかを判定する。処理回路5cは、信号の振幅が所定値以上の場合に、フィルタの時定数を大きな時定数に設定する。処理回路5cは、
図5に示す方法で、初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA1~PGA3とのDCオフセットをキャンセルさせる。
【0092】
処理回路5cは、振幅検出回路6aで検出された信号の振幅が所定値未満の場合に、フィルタの時定数を小さい時定数に設定する。処理回路5cは、初段増幅器CTLEと後段増幅器PGA1~PGA3とのDCオフセットをキャンセルさせる。
【0093】
(第4の実施形態に係る半導体集積回路の効果)
このように第4の実施形態に係る半導体集積回路によれば、処理回路5cは、初段増幅器CTLEをオフ状態にする。処理回路5cは、フィルタを小さい時定数に設定する。処理回路5cは、DCオフセットをキャンセルさせる。処理回路5cは、振幅検出回路6aで検出された信号の振幅が所定値未満の場合に、フィルタを小さい時定数に設定する。処理回路5cは、DCオフセットをキャンセルさせる。このため、イコライザ1のDCオフセットキャンセルの所要時間を大幅に短縮することができる。
【0094】
以上のように、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1,1a,1b…イコライザ
2a,2b,3a~3f…ショートスイッチ
4,4a,4b…比較器
5,5a,5b…処理回路
6…振幅検出回路
100,100a,100b 半導体集積回路
CTLE…初段増幅器
PGA1,PGA2,PGA3,PGA4…後段増幅器
RX,RXa,RXb…受信装置
R1~R4…固定抵抗
R5,R6,R9,R10…可変抵抗
C0…カップリングコンデンサ
C1,C2…コンデンサ
DAC1~DAC6…デジタルアナログ変換器