(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】判定装置、判定装置を含む携帯端末、および判定装置用のプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241202BHJP
【FI】
G06T7/00 660A
(21)【出願番号】P 2020173696
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2019225100
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516063278
【氏名又は名称】株式会社ELEMENTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岩 良行
(72)【発明者】
【氏名】布目 裕司
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-072861(JP,A)
【文献】特開2017-191374(JP,A)
【文献】特開2007-011456(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017080(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06V 40/16
A61B 5/1171
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の顔を判定する判定装置であって、
前記人の顔の撮像を1回行う撮像装置と、
前記撮像装置が撮像を行う場合に特定の色を欠いた光を発光する発光装置と、
前記撮像装置からの撮像データを分析する分析装置と、
前記撮像装置、前記発光装置、および前記分析装置を制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、前記分析装置により撮像データを各色の成分に分解し、前記発光装置が発光する色の成分データと前記発光装置が発光しない色の成分データとの差分に応じて、前記撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定する、判定装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記人の顔のうちの特定の部分で前記撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定する、請求項1記載の判定装置。
【請求項3】
前記特定の部分は、目、鼻、頬の少なくともいずれかである請求項2記載の判定装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記発光装置から前記特定の色を欠いた光の発光を複数回、または複数の、互いに異なる色を欠いた光の発光を指示する、請求項1から3のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項5】
前記特定の色を欠いた光は、RGBのうち一色を欠いた光、XYZ表色系のうち一色を欠いた光、マンセル表色系のうち一色を欠いた光、のいずれか1つからなる、請求項1から4のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項6】
前記判定装置は、前記各色の成分に分解されたデータのうち、前記発光装置が発光する色の成分データから前記発光装置が発光しない色の成分データを減算したデータから、目の部分の輝度が周囲の部分の輝度よりも大きい場合に、前記撮像データを現実在の人物の顔の撮像データと判定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項7】
前記判定装置は、以下のステップ、
1)前記各色の成分に分解されたデータのうち、前記発光装置が発光する色の成分データから前記発光装置が発光しない色の成分データを減算するステップ、
2)前記減算したデータのピーク値を求めるステップ、
3)前記ピーク値を境界として、前記減算したデータを前半データと後半データとに分割するステップ、
4)前記後半データを境界が最後に来るように順序を反転するステップ、
5)前記前半データと順序を反転された前記後半データとのピアソンの積率相関係数を計算するステップ、
6)前記ピアソンの積率相関係数が0.5以上であれば撮像データを現実在の人物の顔の撮像データと判定するステップ、によって前記撮像データが現実在の人物の顔の撮像データかどうかを判定する、請求項1から6のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項8】
前記判定装置は、前記発光装置が発光する色の成分データと前記発光装置が発光しない色の成分データとの差分を、前記人の顔の部分と背景部分とについて計算し、前記人の顔の部分の差分の大きさと前記背景部分の差分の大きさとを比較して、前記撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定する、請求項1記載の判定装置。
【請求項9】
報知装置をさらに含み、
前記制御装置は、前記判定を実施する前に前記撮像装置により人の顔を撮像させ、前記判定を行うことができる前記人の顔のサイズとなるよう、前記報知装置から前記人に立ち位置を報知させる、請求項1から
8のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記判定を実施する前に前記撮像装置により人の顔を撮像させ、当該撮像された撮像データから最適な前記特定の色を欠いた光を選定させて前記発光装置から発光させる、請求項1から
9のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の判定装置を含む携帯端末。
【請求項12】
人の顔を判定する判定装置用のプログラムであって、
前記人の顔の撮像を1回行う撮像処理と、
前記撮像処理が撮像を行う場合に特定の色を欠いた光を発光する発光処理と、
前記撮像処理からの撮像データを分析する分析処理と、
前記撮像処理、前記発光処理、および前記分析処理を制御する制御処理と、を含み、
前記制御処理は、前記分析処理により撮像データを各色の成分に分解し、発光処理が発光する色の成分データと発光処理が発光しない色の成分データとの差分に応じて、前記撮
像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定処理する、判定装置用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の顔を判定する判定装置、判定装置を含む携帯端末、および判定装置用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の顔を判定する判定装置について研究および開発が行われている。例えば、特許文献1(特開2007-148968号公報)には、利用者に煩雑な操作を強いることなく、利用目的に応じて異なる強度のセキュリティレベルを設定できる顔認証技術について開示されている。
【0003】
特許文献1(特開2007-148968号公報)に記載の顔認証装置は、 登録者の顔画像から特徴量を取得して記憶する記憶手段と、入力された画像から顔の特徴量を取得して、記憶手段に記憶された登録者と一致するかの認証を行う認証手段と、使用目的毎にセキュリティ強度を利用者に設定させるセキュリティ設定手段と、セキュリティ強度に基づいて、登録者の顔画像が所定の撮影条件を満たさない場合には、記憶手段への記憶を制限し、セキュリティ強度に基づいて、記憶手段及び認証手段が行う認証処理の内容を変更する制御手段と、を有するものである。
【0004】
また、特許文献2(特開2004-260240号公報)には、ユーザ毎のセキュリティに関する意識レベルに合わせたセキュリティモードが設定できる携帯電話機について開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2004-260240号公報)に記載の携帯電話機は、携帯電話機であって、携帯電話機のセキュリティ機能を実行する複数のセキュリティ実行手段と、複数のセキュリティ実行手段の中から1つのセキュリティ実行手段を選択する選択手段とを有するものである。
【0006】
また、特許文献3(特開2004-80080号公報)には、使用形態に応じたセキュリティレベルの設定を行うことができる個人認証機能付き携帯電話機について開示されている。
【0007】
特許文献3(特開2004-80080号公報)に記載の個人認証機能付き携帯電話機は、複数の個人認証方法から少なくとも1つの個人認証方法を選択し、当該選択された個人認証方法を記憶する認証方法選択記憶部と、認証方法選択記憶部に記憶された個人認証方法に用いられる入力情報を記憶する情報記憶部と、情報記憶部に記憶された入力情報から特徴情報を認証情報として抽出する特徴抽出部と、予め使用者の特徴情報を記録する特徴記録部と、特徴記録部に予め記録された特徴情報と、特徴抽出部により抽出された認証情報とを比較することにより使用者の個人認証を行う特徴認証部と、を備えたものである。
【0008】
また、特許文献4(特開2002-112340号公報)には、 使用目的に応じて本人が自由に認証手段を変えることができ、したがって使用目的毎に本人の満足するセキュリティレベルを設定することが可能な、移動機の本人認証システム及びその方法について開示されている。
【0009】
特許文献4(特開2002-112340号公報)に記載の移動機の本人認証システムは、親局と交信することにより、移動機の本人認証を行う認証システムであって、移動機の使用者が本人であることの認証を行う複数の本人認証手段と、この本人認証手段と移動機の使用目的との対応関係を本人により設定される認証設定手段と、本人認証手段による判断のための認証情報を移動機から入力される認証情報入力手段と、この手段により入力された認証情報と予め記憶されている認証情報を比較し本人であるか否かの確認を行う本人確認手段とを備え、認証設定手段により設定された対応関係に基づき使用者の使用目的に応じて本人認証の手段を変えるものである。
【0010】
また、特許文献5(特開2000-215308号公報)には、個人認証の性能と快適性のバランス、また環境変動に対する強さなどを状況に応じて調整可能とし、もって利便性を向上させることについて開示されている。
【0011】
特許文献5(特開2000-215308号公報)に記載の生体情報認証装置は、被認証者の生体情報を取得し、その入力情報から被認証者の特徴を抽出して生体特徴情報と成す生体情報受理手段と、該生体特徴情報と予めカテゴリ別に用意されている登録情報とを照合し、該被認証者の属するカテゴリを決定する識別手段とを備えた生体情報認証装置において、生体情報受理手段および識別手段のうち少なくとも一方が複数用意されており、それらを組み合わせることによって構成される認証論理を用いて生体情報認証を行う際、複数の認証論理モードの中から一つを選択することにより生体情報受理手段および識別手段を制御可能なモード管理手段を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2007-148968号公報
【文献】特開2004-260240号公報
【文献】特開2004-80080号公報
【文献】特開2002-112340号公報
【文献】特開2000-215308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1記載の技術においては、利用目的に応じて異なる強度のセキュリティレベルを設定できる技術について開示されているが、撮像回数を何度も実施する必要があるという問題が生じる。
また、特許文献2および3、4に記載の技術においては、認証方法を切り替えたり、認証方法を選択して認証するため、利便性が低いという問題が生じる。
さらに、特許文献5に記載の技術においては、不正使用を防止し難いという問題が生じる。
【0014】
本発明の主な目的は、一度の撮像により不正利用を防止し、人を判定することができる、判定装置、判定装置を含む携帯端末、および判定装置用のプログラムを提供することにある。
本発明の他の目的は、処理スピードを高めるとともに、一度の撮像により不正利用を防止し、人を確実に判定することができる、判定装置、判定装置を含む携帯端末、および判定装置用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)
一局面に従う判定装置は、人の顔を判定する判定装置であって、人の顔の撮像を1回のみ行う撮像装置と、撮像装置が撮像を行う場合に特定の色を欠いた光の発光を行う発光装置と、撮像装置からの撮像データを分析する分析装置と、撮像装置、発光装置、および分析装置を制御する制御装置とを含み、制御装置は、分析装置により撮像データを各色の成分に分解し、発光装置が発光する色の成分データと発光装置が発光しない色の成分データとの差分に応じて、撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定するものである。
【0016】
この場合、人の顔を確実に判定することができる。特に、複数回の撮像を実施する必要が無いので、短時間でかつ大量の人の判定を実施することができる。
また、ここで、人の顔を確実に判定することができるとは、現実在する人物の顔か、写真で撮像されて印刷された人の顔か、を判定することができることを意味する。
また、特定の色を欠いた光は、特定の色のスペクトル、周波数を欠いた光であり、白色光を意味するものではない。
例えば、特定の色を欠いた光とは、RGBのうち、GおよびB、Gのみ、Bのみが、Rに対して支配的な色であればよい。したがって、赤(R)が全く含まれていない状態も含まれるとともに、赤(R)が少々含まれている状態も含まれる。
【0017】
(2)
第2の発明にかかる判定装置は、一局面に従う判定装置において、制御装置は、人の顔のうちの特定の部分で撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定してもよい。
【0018】
この場合、顔のうちの一部分、すなわち、特定の部分である特徴部分のみを用いて、現実在の人の顔を判定することができる。
【0019】
(3)
第3の発明にかかる判定装置は、第2の発明にかかる判定装置において、特定の部分は、目、鼻、頬の少なくともいずれかであってもよい。
【0020】
この場合、顔の全体ではなく、特徴部分である、鼻、口、目、頬、輪郭等で、人の顔を判定することができる。
【0021】
(4)
第4の発明にかかる判定装置は、一局面から第4の発明にかかる判定装置において、制御装置は、発光装置から特定の色を欠いた光の発光を複数回、または互いに異なる色を欠いた光の複数の発光を指示してもよい。
【0022】
この場合、ユーザは、発光装置から種々の発光を受けることで、いずれの色の欠けた発光に応じて判定を実施しているのか認識することができないため、セキュリティを高め、不正利用を防止することができる。
例えば、RGBカラーコードにおいて、色#00FF00、#008000、#0000FF、#FFFF00、#00080、#00FFFF、#800080の順で発光させて、#0000FFの瞬間に撮像したデータのみを用いることで、ユーザは、どの発光タイミングで判定されているのかが、不明となるため、セキュリティを高めることができる。なお、上記RGBカラーコードは、左からRGBの順に光の強さをそれぞれ2桁の16進数で記載したものである。
【0023】
(5)
第5の発明にかかる判定装置は、一局面から第5の発明にかかる判定装置において、特定の色を欠いた光の発光は、RGBのうち一色を欠いた光、XYZ表色系のうち一色を欠いた光、マンセル表色系のうち一色を欠いた光、のいずれか1つからなってもよい。
【0024】
この場合、特定の色を欠いた光の発光は、RGBのうち一色を欠いた光、XYZ表色系のうち一色を欠いた光、マンセル表色系のうち一色を欠いた光、のいずれか1つからなるので、ユーザは、詳細の判定を認識することができないため、セキュリティを高め、不正利用を防止することができる。
【0025】
(6)
第6の発明にかかる判定装置は、一局面から第6の発明にかかる判定装置において、判定装置は、各色の成分に分解されたデータのうち、発光装置が発光する色の成分データから発光装置が発光しない色の成分データを減算したデータから、目の部分の輝度が周囲の部分の輝度よりも大きい場合に、撮像データを現実在の人物の顔の撮像データと判定してもよい。
【0026】
この場合、確実に現実在の人物の顔の撮像データを判定することができる。
【0027】
(7)
第7の発明にかかる判定装置は、一局面から第7の発明にかかる判定装置において、判定装置は、以下のステップ、
1)各色の成分に分解されたデータのうち、発光装置が発光する色の成分データから発光装置が発光しない色の成分データを減算するステップ、
2)減算したデータのピーク値を求めるステップ、
3)ピーク値を境界として、減算したデータを前半データと後半データとに分割するステップ、
4)後半データを境界が最後に来るように順序を反転するステップ、
5)前半データと順序を反転された後半データとのピアソンの積率相関係数を計算するステップ、
6)ピアソンの積率相関係数が0.5以上であれば撮像データを現実在の人物の顔の撮像データと判定するステップ、によって撮像データが現実在の人物の顔の撮像データかどうかを判定してもよい。
【0028】
この場合、容易にかつ短時間で現実在の人物の顔の撮像データか否かを判定することができる。なお、前半と後半とは、同じデータ量であることが前提である。ピーク値が中心値でない場合には、ピーク値から所定のデータ量の相関係数を算出する。
【0029】
(8)
第8の発明にかかる判定装置は、一局面に従う判定装置において、発光装置が発光する色の成分データと発光装置が発光しない色の成分データとの差分を、人の顔の部分と背景部分とについて計算し、人の顔の部分の差分の大きさと背景部分の差分の大きさとを比較して、撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるか否かを判定してもよい。
【0030】
現実在の人物の顔の撮像データの場合、発光装置が発光する色の成分は(発光装置に近い)顔の部分では顔からの反射のために輝度が大きく、(顔の外側の)背景部分では輝度が小さい。これに対して、発光装置が発光しない色の成分は顔の部分と背景部分との差異が少ない。したがって、発光装置が発光する色の成分データと発光装置が発光しない色の成分データとの差分は、顔の部分が背景部分より大きい。
一方、現実在の人の顔ではない、写真などの撮像データの場合は、発光装置の光が背景部分でも反射するため、発光装置が発光する色の成分も、発光装置が発光しない色の成分も、顔の部分と背景部分との差が少ない。したがって、発光装置が発光する色の成分データと発光装置が発光しない色の成分データとの差分の大きさは、顔の部分と背景部分とで差が小さい。
以上により、発光装置が発光する色の成分データと発光装置が発光しない色の成分データとの差分の、人の顔の部分の差分の大きさと背景部分の差分の大きさとを比較し、差分の大きさの比、または差が所定の値以上であれば、撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであると判定することができる。
【0031】
(9)
他の局面に従う発明の判定装置は、人の顔を判定する判定装置であって、人の顔の撮像を行う撮像装置と、撮像装置が撮像を行う場合に特定の色の光を発光する発光装置と、畳み込みニューラルネットワークを備え、撮像装置からの撮像データを分析する分析装置と、撮像装置、発光装置、および分析装置を制御する制御装置とを含み、畳み込みニューラルネットワークは、発光装置が発光している状態での、現実在の人物の顔の撮像データと同一人物の顔の写真の撮像データとを用いて、入力データが現実在の人物の顔の撮像データか否かを判定できるように学習しており、判定装置は、発光装置が発光している状態で、人の顔を撮像し、顔周辺を抽出した撮像データを畳み込みニューラルネットワークに入力して、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを判定する。
【0032】
発光装置が発光している状態での、特定の色の、現実在の人物の顔の撮像データと同一人物の顔の写真の撮像データとの間には、目の部分の輝度の違い、鼻の部分の輝度の違い、顔の部分と背景部分の輝度の違い等があり、発光していない色の撮像データの輝度の違いと比較することで、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを判定することができる。
畳み込みニューラルネットワークでは、現実在の人物の顔の撮像データと同一人物の顔の写真の撮像データとを用いて学習させることで、上記目の部分、鼻の部分、背景部分等の違いを含め、総合的に現実在の人の顔か否かを判定することができる。
ただし、判定の精度を向上させるためには、畳み込みニューラルネットワークの幅(ニューロン数)、層数、学習するサンプル数などを適切に選ぶ必要がある。例えば、幅は3×3のフィルタを64チャンネル、層数は10層以上50層以下、サンプル数は1000以上が望ましい。
また、VGG、ResNet、またはdenseNetなどの公開されている学習済みモデルを、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを判定するために、転移学習して使用しても良い。
【0033】
(10)
第10の発明にかかる判定装置は、他の局面に従う判定装置において、発光装置が発光している状態での撮像データを用いて学習した第1の畳み込みニューラルネットワークと発光装置が発光していない状態での撮像データを用いて学習した第2の畳み込みニューラルネットワークとを備え、
判定装置は、発光装置が発光している状態での撮像データを第1の畳み込みニューラルネットワークに入力し、発光装置が発光していない状態での撮像データを第2の畳み込みニューラルネットワークに入力し、第1の畳み込みニューラルネットワークの判定結果と、第2の畳み込みニューラルネットワークの判定結果とに基づいて、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを判定してもよい。
【0034】
この場合、発光装置が発光していない状態の撮像データでの判定結果と組み合わせることで、以下のような2つの効果があり、より精度の高い判定が可能となる。
第1に、実際の人間を撮像した場合、発光している状態の撮像データでは目および顔の凹凸による反射があるのに対して、発光していない状態の撮像データでは目および顔の凹凸による反射がない。
一方、発光装置が発光している状態で撮像した写真を撮像した場合は、発光している状態の撮像データでは、目および顔の凹凸だけでなく、写真全体も発光装置の光を反射しているのに対して、発光していない状態の撮像データでは目および顔の凹凸による反射のみが見られる。以上の差異から、発光装置が発光している状態で、撮像した写真を撮像した場合にも撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを確実に判定できる。
また、撮像した写真を撮像した場合は、上記目および顔の凹凸による反射以外にも、写真を撮像したことに由来する不自然さが存在する。発光している状態での撮像データを用いて学習した第1の畳み込みニューラルネットワークにおいても当然、この不自然さを差異として認識、判定するが、さらに、発光していない状態での撮像データを用いて学習した第2の畳み込みニューラルネットワークを用いることで、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かをより確実に判定できる。
【0035】
(11)
第11の発明にかかる判定装置は、第10の発明にかかる判定装置において、分析装置は、さらに、発光装置が発光している状態での、現実在の人物の顔の撮像データと同一人物の顔のディスプレイ表示の撮像データとを用いて学習した第3の畳み込みニューラルネットワークと、発光装置が発光していない状態での、現実在の人物の顔の撮像データと同一人物の顔のディスプレイ表示の撮像データとを用いて学習した第4の畳み込みニューラルネットワークとを備え、判定装置は、発光装置が発光している状態での撮像データを第1および第3の畳み込みニューラルネットワークに入力し、発光装置が発光していない状態での撮像データを第2および第4の畳み込みニューラルネットワークに入力し、第1から第4までの畳み込みニューラルネットワークの判定結果に基づいて、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを判定してもよい。
【0036】
最近では、印刷した顔の写真ではなく、液晶ディスプレイまたはモバイルディスプレイなどに表示された顔の撮像データ(ディスプレイアタックデータともいう)と現実在の人物の顔の撮像データとを区別することも必要になっている。この場合には、畳み込みニューラルネットワークを現実在の人物の顔の撮像データと同一人物の顔のディスプレイ表示の撮像データとを用いて学習させた方が、判別の精度を向上させることができる。そして、印刷した顔の写真の撮像データを用いて学習させた第1および第2の畳み込みニューラルネットワークの判定結果と、ディスプレイ表示の撮像データ用いて学習させた第3および第4の畳み込みニューラルネットワークの判定結果とをもとに、総合的に現実在の人の顔か否かを判定することで、入力データにディスプレイアタックデータが含まれている場合でも、より精度の高い判定を行うことができる。
【0037】
(12)
第12の発明にかかる判定装置は、一局面から第11の発明にかかる判定装置において、報知装置をさらに含み、制御装置は、判定を実施する前に撮像装置により人の顔を撮像させ、判定を行うことができる人の顔のサイズとなるよう、報知装置から人に立ち位置を報知させてもよい。
【0038】
この場合、報知装置により人の立ち位置を調整させることができる。また、撮像装置が顔を認識し、撮像された顔の大きさが所定の大きさとなるように自動的に拡大縮小してもよい。
また、報知装置が表示装置を備え、表示装置に撮像画像と枠とを表示し、顔の大きさおよび位置が枠と合致したら、自動的に撮像が行われるようにしてもよい。
【0039】
(13)
第13の発明にかかる判定装置は、一局面から第12の発明にかかる判定装置において、制御装置は、判定を実施する前に撮像装置により人の顔を撮像させ、当該撮像された撮像データから最適な特定の色を欠いた光を選定させて発光装置から発光させてもよい。
【0040】
この場合、発光装置から発光される特定の色を欠いた光を最適にすることができる。例えば、特定の色のコンタクトレンズをしている場合に、当該特定の色のコンタクトレンズのカラーを発色させないように発光させることができる。その結果、適切に判定を行うことができる。
【0041】
(14)
他の局面にかかる携帯端末は、一局面から第13の発明にかかる判定装置を含むものである。
【0042】
この場合、携帯端末は判定装置を含むので、人の判定を容易にかつ確実に実施することができる。その結果、携帯端末の不正利用を防止することができる。
【0043】
(15)
さらに他の局面にかかる判定装置用のプログラムは、人の顔を判定する判定装置用のプログラムであって、人の顔の撮像を1回行う撮像処理と、撮像処理が撮像を行う場合に特定の色を欠いた光を発光する発光処理と、撮像処理からの撮像データを分析する分析処理と、撮像処理、発光処理、および分析処理を制御する制御処理とを含み、制御処理は、分析処理により撮像データを各色の成分に分解し、発光処理が発光する色の成分データと発光処理が発光しない色の成分データとの差分に応じて、前記撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定処理するものである。
【0044】
この場合、人の顔を確実に判定することができる。特に、複数回の撮像を実施する必要が無いので、短時間でかつ大量の人の判定を実施することができる。
また、ここで、人の顔を確実に判定することができるとは、現実在する人物の顔か、写真で撮像されて印刷された人の顔か、を判定することができることを意味する。
また、特定の色を欠いた光は、特定の色のスペクトル、周波数を欠いた光であり、白色光を意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】第1の実施の形態にかかる判定装置を含む携帯端末の構成の一例を示す模式的構造図である。
【
図3】制御部の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図4】制御部の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図5】撮像装置および発光装置により撮像された顔のデータの一例を示す模式図である。
【
図6】
図5のデータを分析装置内で分析したデータの一例を示す模式図である。
【
図7】
図5のデータを分析装置内で分析したデータの一例を示す模式図である。
【
図8】
図5のデータを分析装置内で分析したデータの一例を示す模式図である。
【
図9】分析装置内で分析されたデータの差分の一例を示す模式図である。
【
図10】分析装置内で分析されたデータの差分の一例を示す模式図である。
【
図11】顔写真をプリントアウト(印刷)した紙をステップS1およびステップS2の処理で撮像したデータから、ステップS3からステップS5までの処理を実施したものである。
【
図12】ステップS11において顔の特徴部を抽出する一例を示す図である。
【
図13】現実在の人物の顔にRGBコード#00FFFFのフラッシュ光を照射し撮影した場合の、顔の特徴部のRのみのデータ、Gのみのデータ、Bのみのデータの一例を示す図である。
【
図14】ステップS12の処理の結果の一例を示す図である。
【
図15】ピアソンの積率相関係数を算出した場合の一例を示す図である。
【
図16】フラッシュ光を用いて撮像した顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度、ステップS1およびステップS2の処理で撮像したデータの一例を示す図である。
【
図17】フラッシュ光を用いて撮像した顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度、ステップS1およびステップS2の処理で撮像したデータの一例を示す図である。
【
図18】フラッシュ光を用いて撮像した顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度、ステップS1およびステップS2の処理で撮像したデータの一例を示す図である。
【
図19】制御部の制御フローの他の例を示すフローチャートである。
【
図20】制御部の制御フローのさらに他の例を示すフローチャートである。
【
図21】
図2に示した判定装置の他の例を示す模式図である。
【
図22】
図21に示した判定装置100を用いて、撮像装置200による顔を撮像する場合における人の顔の立ち位置指示の一例を示すフローチャートである。
【
図23】顔の立ち位置指示における報知装置の表示の一例を示す模式図である。
【
図24】
図3に示したステップS1の処理の前に、現実在の人の顔を予め撮像させ、発光装置から発光させる特定の色の欠けた光の選定を行う一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[実施の形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0047】
(判定装置100を含む携帯端末900の全体構成)
図1は、本実施の形態にかかる判定装置100を含む携帯端末900の全体構成の一例を示す模式的構造図であり、
図2は、判定装置100の構成の一例を示す模式図である。
【0048】
図1に示すように、携帯端末900は、判定装置100、表示画面920、操作部930を含む。
また、
図2の判定装置100は、撮像装置200、発光装置300、分析装置400、制御部500を含む。
【0049】
次に、発光装置300から照射される光(以下、フラッシュ光と呼ぶ。)は、RGBカラーコード#00FFFFである。
すなわち、色の三原色であるR,G,Bのうち、少なくともRの光を除去したフラッシュ光である。特にRの光を除去する理由については、後述する。
なお、本実施の形態においては、フラッシュ光をRGBカラーコード#00FFFFを用いることとしているが、これに限定されず、フラッシュ光を#FFFF00、#0000FF、#00FF00のいずれか1つ、または複数を組み合わせて用いても良い。
また、特定の色を欠いた光とは、RGBのうち、GおよびB、Gのみ、Bのみが、Rに対して支配的な色であればよい。したがって、赤(R)が全く含まれていない状態も含まれるとともに、赤(R)が少々含まれている状態も含まれる。
【0050】
図3および
図4は、制御部500の制御フローの一例を示すフローチャートである。
また、
図5は、撮像装置200および発光装置300により撮像された顔のデータの一例を示す模式図である。
次に、
図6、7、8は、
図5のデータを分析装置400内で分析したデータの一例を示す模式図であり、
図9、10は、分析装置400内で分析されたデータの差分の一例を示す模式図である。
【0051】
まず、
図3に示すように制御部500は、撮像装置200および発光装置300に撮像を指示する(ステップS1)。
なお、本実施の形態の当該ステップS1の段階において、制御部500は、撮像装置200により撮像されたデータが、現実在人物の顔か、顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を撮像した顔か、は不明の状態であるが、ここでは、現実在人物の顔であると仮定して説明を行う。
また、制御部500は、撮像時に発光装置300に所定のフラッシュ光で撮像するように指示する(ステップS2)。
なお、ユーザインタフェイスにおいて、顔が所定の位置にある場合にシャッターを自動的に押すシステムを用いても良い。また、顔が所定の位置にない場合には、撮像装置200に近づくように報知させてもよい。
ここで、本実施の形態にかかる所定のフラッシュ光とは、上記で説明した色のカラーコード#00FFFFの光である。
なお、撮像前に現実在人物の顔を認識させて、その顔の色、目の色等に応じて所定のフラッシュ光を変更してもよい。
【0052】
(第1の分析)
制御部500は、ステップS2で撮像したデータを分析装置400に渡し、第1の分析を指示する(ステップS3)。
ここで、
図5に示すように、制御部500の指示に基づいて、発光装置300が、フラッシュ光を色のカラーコード#00FFFFを用いて撮像したデータは、Rの色がほぼ無いデータとなる。なお、周囲の明かり、例えば、蛍光灯等の光が入る場合があるので、フラッシュ光にR(赤色)がない場合でも、R(赤色)が少し含まれる。
【0053】
次に、制御部500は、分析装置400により、撮像装置200から受け取った
図5に示す顔のデータを、Rのみのデータ、Gのみのデータ、Bのみのデータに、それぞれ分割させる(ステップS4)。
図6は、Rのみのデータの一例であり、
図7は、Gのみのデータの一例であり、
図8は、Bのみのデータの一例を示す。
【0054】
次いで、制御部500は、分析装置400に、差分演算を実施させる(ステップS5)。ここで、分析装置400は、
図9に示すように
図8のBのみのデータから
図6のRのみのデータを減算し、
図10に示すように
図9のGのみのデータから
図6のRのみのデータを減算する。
【0055】
ここで、
図11は、顔写真をプリントアウト(印刷)した紙をステップS1およびステップS2の処理で撮像したデータから、ステップS3からステップS5までの処理を実施したものである。このデータは、いわゆるフォトアタックのデータと呼ばれる。
【0056】
ここで、制御部500は、分析装置400からのデータに基づいて、目の反射を確認し、判定を行う(ステップS6)。
例えば、現実在の人物の顔、すなわち、今そこに確実に人が実在してステップS2の処理を実施した場合には、GのみおよびBのみのデータは目の部分の輝度が高いが、Rのみのデータは目の部分の輝度が高くないため、B-R、およびG-Rのデータは、
図9および
図10に示すように、フラッシュ光の目の部分だけが輝度が高くなる。
一方、
図11に示すように、顔写真をプリントアウト(印刷)した紙の場合、目の輝度の高い部分がなくなる。
【0057】
すなわち、現実在の人物の顔の場合は目の部分からの反射が特に大きくなるが、顔写真をプリントアウト(印刷)した紙の場合は、ステップS2の処理で、目の部分とその他の部分の光の反射に差がないため、目の輝度の高い部分がなくなる。
【0058】
以上のことから、制御部500は、撮像装置200により撮像された顔データが、容易に現実在の人物であるか、顔写真をプリントアウト(印刷)した紙であるかを判定することができる。
【0059】
(第2の分析)
次に、第2判定について説明を行う。第1判定においては、顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を除外することとしたが、顔写真をプリントアウト(印刷)した紙のうちでも、そもそも当初の顔写真において同一のフラッシュ光を用いた場合、発明者は、目の輝度の高い部分が残存する可能性を見出だした。
そのため、第2判定を実施する。
【0060】
最初に、
図4に示すように、制御部500は、ステップS6で使用したデータを分析装置400に対して、第2の分析を指示する(ステップS10)。
制御部500は、データから、顔の特徴部を抽出する(ステップS11)。例えば、本実施の形態においては、鼻部分を抽出する。なお、鼻の部分のほかにも、頬を特徴部とする場合、フラッシュ光が両頬に均等に当たることは可能性として少ないため、両頬において、不均一であることを特徴として用いても良い。
なお、上記の実施の形態においては、人の顔部分について抽出することとしているが、これに限定されず、顔の輪郭を抽出し、その外側、いわゆる背景部分を抽出し、以下のステップS12からステップS15の処理を行ってもよい。
【0061】
図12は、ステップS11において顔の特徴部を抽出する一例を示す図であり、
図13は、現実在の人物の顔にRGBコード#00FFFFのフラッシュ光を照射し撮影した場合の、顔の特徴部のRのみのデータ、Gのみのデータ、Bのみのデータの一例を示す図であり、
図14は、ステップS12の処理の結果の一例を示す図である。
【0062】
図12に示すように、制御部500は、鼻の頂点部分P、左端部分L、右端部分Rを抽出する。発明者は、鼻の頂点部分Pにおいて、鏡面反射を起こす領域があることを見出した。
図13に示すように、すなわち、本実施の形態におけるGのみのデータおよびBのみのデータは、鼻の頂点部分P、左端部分L、右端部分Rにおいて山形の輝度分布をもつこととなり、一方、Rのみのデータは、フラッシュ光に含まれておらず、幅広い入射角の背景光が反射して生成されるため、山形の輝度分布を持たないことととなる。
【0063】
次に、制御部500は、分析装置400に、Rのみのデータ,Gのみのデータ,Bのみのデータにおける、各輝度分布の最小値を減算させ、GのみのデータからRのみのデータを減算、または、BのみのデータからRのみのデータを減算させる(ステップS12)。
ここで、ステップS12の処理は、データの平均値を0に調整するための処理であり、同様の手法で、各データの平均値を0に調整する方法を用いても良い。
【0064】
図14に示すように、ステップS12の処理の結果のGのみのデータからRのみのデータを減算した場合、ピーク値が表れることがわかる。
【0065】
次に、
図4に示すように、制御部500は、分析装置400に、ピーク値を検出させ、ピーク値より前半と、ピーク値より後半とに分割させる(ステップS13)。
最後に、制御部500は、分析装置400に、前半データと、後半データを折り返した2系列のデータのピアソンの積率相関係数を計算させる(ステップS14)。
【0066】
ここで、本実施の形態においては、ピーク値に基づいて、前半と後半とを分割したが、これに限定されず、データ量に基づいて任意の位置で前半と後半とを決定しても良い。例えば、データ量の50%ずつとしてもよい。
【0067】
図15は、
図14のグラフのG-Rの平均値を計算して各G-Rのデータから平均値を引き算したうえで、中心点またはピーク値を境に前半と後半とに分割したグラフである。G-R後半のグラフは、
図14のグラフの中心点またはピーク値より右側の部分を中心位置から反対方向に折り返している。
図15の場合、G-R前半とG-R後半との間に正の相関があり、ピアソンの積率相関係数を算出すると0.82となる。
【0068】
また、
図16、17、18は、フラッシュ光を用いて撮像した顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度、ステップS1およびステップS2の処理で撮像したデータの一例を示す図である。
図16は、フラッシュ光を用いて撮像した顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度撮像したデータの顔の特徴部のRのみのデータ、Gのみのデータ、Bのみのデータの一例を示す図であり、
図17は、フラッシュ光を用いて撮像した顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度撮像したデータの顔の特徴部のステップS12の処理の結果の一例を示す図である。また、
図18は、
図17のグラフのG-Rの平均値を計算して各G-Rのデータから平均値を引き算したうえで、中心点を境に前半と後半とに分割したグラフである。G-R後半のグラフは、
図17のグラフの中心より右側の部分を中心位置から反対方向に折り返している。
図18の場合、G-R前半とG-R後半との間の相関が少なく、ピアソンの積率相関係数を算出すると0.08となる。
【0069】
図4に示すように、制御部500は、分析装置400に判定を実施させる(ステップS15)。
ここで、制御部500は、ピアソンの積率相関係数が、0.5以上である場合には、現実在の人物の顔データであると判定する。例えば、
図15の場合のピアソンの積率相関係数は、0.82である。
一方、制御部500は、ピアソン積率相関係数が、0.5未満である場合には、フラッシュ光を用いて撮像した顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度撮像したデータであると判定する。例えば、
図18の場合のピアソン積率相関係数は、0.08である。
したがって、前半のデータと、後半のデータを折り返したデータとのピアソンの積率相関係数を計算し、相関係数が0.5以上であれば、撮像されたデータは現実在の人物の顔のデータであり、相関係数が0.5より小さければ顔写真をプリントアウト(印刷)した紙を再度撮像したデータであると判別する。
【0070】
[他の判定方法の実施の形態]
次に、現実在の人の顔の撮像データか否かを判定する他の実施の形態について説明する。
図19は他の判定方法の実施の形態の模式的フローチャートである。
【0071】
まず制御部500は、撮像装置200および発光装置300に撮像を指示する(ステップS20)。
また、制御部500は、撮像時に発光装置300に所定のフラッシュ光で撮像するように指示する(ステップS21)。
制御部500は、データから、顔の輪郭の内側領域と外側領域とを抽出する(ステップS22)。
次に、
図4のS12と同様、発光装置300が発光する色の成分データと発光装置300が発光しない色の成分データとの減算値、例えばG-RまたはB-Rを求める(ステップS23)。
なお、減算をする前には、発光装置300が発光する色の成分データの最小値と発光装置300が発光しない色の成分データの最小値(または平均値と平均値)が一致するように補正することが望ましい。
次に、輪郭の内側、すなわち顔の部分と、その外側、すなわち背景部分とについて、上記減算値を比較する(ステップS24)。なお、顔の部分と背景部分との比較においては、例えば、それぞれの部分の輝度の平均値同士を比較してもよい。
最後に、顔の部分と背景部分との比較結果、例えばその比、またはその差を所定のしきい値と比較し、その比またはその差が所定のしきい値より大きければ、撮像データは現実在の人物の顔の撮像データであると判定する(ステップS25)。
【0072】
現実在の人物の顔の撮像データの場合、発光装置300が発光する色の成分は(発光装置300に近い)顔の部分では顔からの反射のために輝度が大きく、(顔の外側の)背景部分では輝度が小さい。これに対して、発光装置300が発光しない色の成分は顔の部分と背景部分との差異が少ない。したがって、発光装置300が発光する色の成分データと発光装置300が発光しない色の成分データとの差分は、顔の部分が背景部分より大きい。
一方、現実在の人の顔ではない、写真などの撮像データの場合は、発光装置300の光が背景部分でも反射するため、発光装置300が発光する色の成分も、発光装置300が発光しない色の成分も、顔の部分と背景部分との差が少ない。したがって、発光装置300が発光する色の成分データと発光装置300が発光しない色の成分データとの差分の大きさは、顔の部分と背景部分との間で差が小さい。
以上により、発光装置300が発光する色の成分データと発光装置300が発光しない色の成分データとの差分の、人の顔の部分の大きさと背景部分の大きさとを比較することによって、撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定することができる。
【0073】
[さらに他の判定方法の実施の形態]
さらに他の判定方法の実施の形態では、機械学習を用いて撮像データが現実在の人物の顔の撮像データであるかどうかを判定する。具体的には、まず、畳み込みニューラルネットワークに、現実在の人物の顔の撮像データと同一人物の顔の写真の撮像データ(フォトアタックデータともいう)とを複数入力して学習させる(以降、学習させたネットワークを写真学習ネットワークという)。
その後、写真学習ネットワークに撮像装置200で撮像した顔の撮像データを入力し、入力したデータが現実在の人物の顔の撮像データか、または顔の写真の撮像データかを判定させる。
【0074】
図20はさらに他の判定方法の実施の形態の模式的フローチャートである。
まず、発光装置300がシアンの光を発光したときの人物の顔(以降シアンデータという)と、発光装置300が全く発光しないときの人物の顔(以降ブラックデータという)とを撮像する(ステップS30、S30’)。
次に、顔の輪郭、および目、唇などの特徴部分を用いて顔の輪郭を抽出する(ステップS32、S32’)。
さらに、顔周辺のシアンデータおよびブラックデータをそれぞれ例えば224×224となるようにリサイズする。リサイズしたデータの各画素値を0から1の間に正規化してもよい(ステップS33、S33’)。なお、顔の輪郭の抽出、顔の周辺データのリサイズ、正規化等の前処理については、学習用のデータについても同様な処理を行う必要がある。
シアンデータを入力データとして用いて学習させた畳み込みニューラルネットワーク(以降シアン写真学習ネットワークという)に撮像装置200で撮像した顔のシアンデータを入力して判定させ、ブラックデータを用いて学習させた畳み込みニューラルネットワーク(以降ブラック写真学習ネットワークという)に撮像装置200で撮像した顔のブラックデータを入力して判定させる(ステップS34、S34’)。
【0075】
シアンデータの判定結果とブラックデータの判定結果とに基づいて撮像データが現実在の人物であるか否かを判定する。シアンデータの判定結果とブラックデータの判定結果がともに現実在の人物であるときに、撮像データは現実在の人物であると判定してもよい。あるいは、シアンデータの判定結果とブラックデータの判定結果のうちのどちらかが現実在の人物であるときに、撮像データは現実在の人物であると判定してもよい。また、それぞれの判定結果が0か1かではなく、中間値で出力される場合は、それらの判定結果を加算した値で判定してもよい(ステップS35)。
【0076】
なお、本実施の形態ではシアンデータの判定結果とブラックデータの判定結果とに基づいて撮像データが現実在の人物であるか否かを判定しているが、シアンデータの判定結果だけに基づいて撮像データが現実在の人物であるか否かを判定してもよい。また、発光装置300の発光色をシアンではなく、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、またはグリーンとしてもよい。
【0077】
ブラックデータの判定結果を用いることの目的は以下のとおりである。
第1に、実際の人間を撮像した場合、シアンデータでは目および顔の凹凸による反射があるのに対して、ブラックデータでは目および顔の凹凸による反射がない。一方、発光装置が発光している状態で撮像した写真を撮像した場合は、シアンデータでは、目および顔の凹凸だけでなく、写真全体も発光装置300の光を反射しているのに対して、ブラックデータでは目および顔の凹凸による反射のみが見られる。以上の差異から、発光装置が発光している状態で撮像した写真を撮像した場合にも撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを確実に判定できる。
また、撮像した写真を撮像した場合は、上記目および顔の凹凸による反射以外にも、写真を撮像したことに由来する不自然さが存在する。シアンデータを用いて学習した第1の畳み込みニューラルネットワークにおいても当然、この不自然さを差異として認識、判定するが、さらに、ブラックデータを用いて学習した第2の畳み込みニューラルネットワークを用いることで、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かをより確実に判定できる。
【0078】
また、最近では、印刷した顔の写真ではなく、液晶ディスプレイなどに表示された顔の撮像データ(ディスプレイアタックデータともいう)と現実在の人物の顔の撮像データとを区別することも必要になっている。この場合も同様に、まず、第3の畳み込みニューラルネットワークに、現実在の人物の顔のシアンデータと同一人物のディスプレイに表示された顔のシアンデータとを複数入力して学習させる(シアンディスプレイ学習ネットワーク)。次に、第4の畳み込みニューラルネットワークに、現実在の人物の顔のブラックデータと同一人物のディスプレイに表示された顔のブラックデータとを複数入力して学習させる(ブラックディスプレイ学習ネットワーク)。そして、その後、シアンディスプレイ学習ネットワークに撮像装置200で撮像した顔のシアンデータを入力し、ブラックディスプレイ学習ネットワークに撮像装置200で撮像した顔のブラックデータを入力し、入力したデータが現実在の人物の顔の撮像データか否かを判定させることができる。
【0079】
判定装置100への入力としては現実在の人物の顔の撮像データと印刷した顔の写真の撮像データとに加えて、液晶ディスプレイなどに表示された顔の撮像データが混入されている可能性がある。これらの入力の中から、確実に現実在の人物の顔の撮像データを判定するために、以下の手順で判定を行う。
まず、撮像装置200で撮像したシアンデータとブラックデータとをそれぞれ、シアン写真学習ネットワークおよびブラック写真学習ネットワークに入力する。次に、撮像装置200で撮像したシアンデータとブラックデータとをそれぞれ、シアンディスプレイ学習ネットワークおよびブラックディスプレイ学習ネットワークに入力する。
さらに、上記4つの学習ネットワークの出力を、それぞれ、現実在の人物の顔と判定したとき1、現実在の人物の顔でないと判定したとき0とし、4つの学習ネットワークの出力の合計が所定の値以上である場合に、現実在の人物の顔と判定する。また、それぞれの判定結果が0か1かではなく、中間値で出力される場合は、それらの判定結果を加算した値で判定してもよい。
【0080】
(畳み込みニューラルネットワークの構成)
畳み込みニューラルネットワークの幅(ニューロン数)と層数については、いろいろな構成が可能である。例えば、撮像データを224×224にリサイズし、RGBに分割する場合は、入力信号の数は224×224×3となる。出力信号は現実在の人物の顔と判定する場合に1となり現実在の人物の顔でない判定する場合に0となる信号と、その逆の信号との計2本である。その間の隠れ層の幅と層数については必要な判定精度と許容できる回路規模とに基づいて選択することができる。
最近、ResNet(Deep Residual Network)という新しい形式の畳み込みニューラルネットワークが学習モデルとして公開されており、この実施の形態においても、例えば18層のResNet(ResNet-18)を、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを判定するために転移学習して使用してもよい。また、その他、VGGおよびdenseNetなどの公開されている学習済みモデルを、撮像した人の顔が現実在の人の顔か否かを判定するために、転移学習して使用しても良い。
【0081】
なお、本実施の形態においては、制御部500が全ての判断を実施することとしているが、これに限定されず、分析装置400内に、別の制御部を有し、分析装置400が判定を実施しても良い。
【0082】
[報知装置600の実施の形態]
図21は、
図2に示した判定装置100の他の例を示す模式図である。
図21に示す判定装置100には、
図2の判定装置100にさらに、報知装置600が設けられている。ここで、報知装置600は、音声発生装置を有してもよく、表示装置を有してもよく、それらの両者を含めたものであってもよく、その他任意の報知装置600を含んでもよい。
【0083】
図22は、
図21に示した判定装置100を用いて、撮像装置200により人の顔を撮影する場合における人の顔の立ち位置指示の一例を示すフローチャートである。
【0084】
図22に示すように、制御部500は、撮像装置200に撮像の指示を与える(ステップS41)。撮像装置200は、現実在の人の顔を予め撮像する。この場合、撮像装置200は、現実在の人の顔を連続して撮影してもよく、動画で撮影してもよく、間欠的に複数回撮像しても良い。
【0085】
次に
図22に示すように、制御部500は顔が所定の枠内に入っているかどうかを判定する(ステップS42)。顔が所定の枠内にはいっていない場合は、報知装置600から被撮像者へ対して、立ち位置を変更するよう報知させる(ステップS43)。
次に、
図22に示すように、制御部500は、撮像装置200から撮像された顔の大きさが最適値であるかを判定する(ステップS44)。なお、本実施の形態においては、顔の大きさが最適値であるかを判定しているのみで、現実在かフォトアタックかの判定は行わない。
すなわち、制御部500は、判定結果が、顔の大きさが最適値よりも小さい場合(ステップS44のNo 1)、報知装置600から被撮像者へ対して、撮像装置200に近づくように報知させる(ステップS45)。
図23に報知装置600の表示装置への表示の一例を示す。
図23において、610は表示装置の画面、620は望ましい顔の大きさを示す枠、630は報知装置600からの報知の一例である。
【0086】
このステップS45においては、報知装置600を用いて、撮像された顔が最適値のサイズになるように、報知装置600の音声発生装置から「顔を撮像装置200に近づけてください。」、または報知装置600の表示装置に「表示部に表示された枠のサイズに顔が収まるように近づいてください。」等といずれか、または両方実施させてもよい。
【0087】
一方、制御部500は、判定結果が、顔の大きさが最適値よりも大きい場合(ステップS44のNo 2)、報知装置600から被撮像者へ対して、撮像装置200から遠ざかるように報知させる(ステップS46)。
【0088】
このステップS46においては、報知装置600を用いて、撮像された顔が最適値のサイズになるように、報知装置600の音声発生装置から「顔を撮像装置200から遠ざけてください。」、または報知装置600の表示装置に「表示部に表示された輪のサイズに顔が収まるように遠ざかってください。」等といずれか、または両方実施させてもよい。
【0089】
最後に、制御部500は、判定結果が、顔の大きさが最適値である場合(ステップS44のYes)、制御部500は、
図3に示したステップS1の処理へ移行してもよい(ステップS47)。
また、表示装置の画面610に撮像画像と枠620とを表示し、顔の大きさおよび位置が枠620と合致したら、自動的に撮像が行われるようにしてもよい。
【0090】
[発光装置の特定の色の欠けた光の選定の実施の形態]
図24は、
図3に示したステップS1の処理の前に、現実在の人の顔を予め撮像させ、発光装置300から発光させる特定の色の欠けた光の選定を行う一例を示すフローチャートである。
すなわち、
図24は、撮像装置200による1回の撮像の前に、発光装置300から発光させる特定の色の欠けた光の選定を行う処理を示す。
【0091】
まず、
図24に示すように、制御部500は、撮像装置200により対象となる現実在の撮像を指示する(ステップS51)。制御部500の指示に従い、撮像装置200は、現実在の顔を撮像する。
この場合、撮像装置200は、現実在の人の顔を連続して撮影してもよく、動画で撮影してもよく、間欠的に複数回撮像しても良い。
【0092】
次に、撮像装置200は、撮像データを制御部500へ送る。制御部500は、撮像データを受け取る(ステップS52)。
制御部500は、撮像データから人物の瞳部を抽出する(ステップS53)。制御部500は、撮像データから人物の瞳部の色を選定する(ステップS54)。
【0093】
次に、制御部500は、瞳部の色に応じて発光させる特定の色の欠けた光の選定を行う(ステップS55)。
その後、制御部500は、
図3のステップS2の処理を実施する。
【0094】
ここで、瞳部の色に応じて発光させる特定の色の欠けた光の選定を行う意味合いは、カラーコンタクトを装着しているユーザがいることを考慮して、特定の色の欠けた光の選定を行うものである。例えば、具体的に、#0000FFのカラーコンタクトをしているユーザには、特定の色の欠けた光として、#FFFF00の光、#FF8800の光、#88FF00の光を用いて現実在の人物か否かを判定することが容易となるからである。
なお、カラーコンタクトに限定されず、人種または性別、生まれ故郷に応じて瞳部の色が異なるので、
図24の処理を実施することが好ましい。
【0095】
以上のように、本発明にかかる携帯端末900および判定装置100に含まれる分析装置400および制御部500を用いることで、現実在する人の顔を確実に判定することができる。特に、複数回の撮像を実施する必要が無いので、短時間でかつ大量の人の判定を実施することができる。
さらに、第1の判定で現実の人の顔でないデータを除外することができるので、処理スピードを高めることができる。
【0096】
なお、フラッシュ光を、いろいろな光を用いて照射し、被撮像者にどのデータを携帯端末900および判定装置100が用いているのかを不明にさせることで、さらにセキュリティを高めることができる。
【0097】
本実施の形態においては判定装置100が「判定装置」に相当し、撮像装置200が「撮像装置」に相当し、フラッシュ光が「色の欠けた発光」に相当し、発光装置300が「発光装置」に相当し、分析装置400が「分析装置」に相当し、制御部500が「制御装置」に相当し、報知装置600が「報知装置」に相当し、B-Rデータ、G-Rデータが、「データの差分」に相当し、携帯端末900が「携帯端末」に相当する。
【0098】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施の形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施の形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0099】
100 判定装置
200 撮像装置
300 発光装置
400 分析装置
500 制御部
600 報知装置
900 携帯端末