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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20241202BHJP
【FI】
B62M6/45
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020183007
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073187
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】中村 行伸
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 充彦
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013624(JP,A)
【文献】特開平08-230754(JP,A)
【文献】特開2000-038187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え
前記予め定める閾値は、予め定める第1閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第1閾値よりも小さくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第1閾値を増加させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車のクランクの回転速度、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項2】
前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が増加するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を増加させるように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え、
前記予め定める閾値は、予め定める第1閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第1閾値よりも小さくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第1閾値を減少させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車のクランクの回転速度、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項4】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え、
前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が増加するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を増加させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車のクランクの回転速度、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項5】
前記予め定める閾値は、予め定める第1閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第1閾値よりも小さくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第1閾値を増加させるように構成される、請求項に記載の制御装置。
【請求項6】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え、
前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が増加するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を減少させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車のクランクの回転速度、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項7】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え、
前記予め定める閾値は、予め定める第1閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第1閾値よりも小さくなると、前記変速比が増加するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第1閾値を減少させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力、前記人力駆動車の傾斜角度、および、前記人力駆動車の走行路の傾斜角度の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項8】
前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を減少させるように構成される、請求項に記載の制御装置。
【請求項9】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え、
前記予め定める閾値は、予め定める第1閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第1閾値よりも小さくなると、前記変速比が増加するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第1閾値を増加させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力、前記人力駆動車の傾斜角度、および、前記人力駆動車の走行路の傾斜角度の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項10】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え、
前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を減少させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力、前記人力駆動車の傾斜角度、および、前記人力駆動車の走行路の傾斜角度の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項11】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータと、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機と、を備え、
前記制御装置は、
前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備え、
前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、
前記制御部は、
前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、
前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を増加させるように構成され、
前記第1パラメータは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力、前記人力駆動車の傾斜角度、および、前記人力駆動車の走行路の傾斜角度の少なくとも1つに関する、制御装置。
【請求項12】
前記モータの出力が低下する場合は、前記モータを停止する場合を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記人力駆動車の走行抵抗に関する第2パラメータが、予め定める第3閾値よりも小さい場合、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下しても前記予め定める閾値を変更しないように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記人力駆動車の走行抵抗に関する第2パラメータに応じて前記予め定める閾値の変更量を異ならせるように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記第2パラメータに応じて前記予め定める閾値の変更量を異ならせるように構成される、請求項13に記載の制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記第2パラメータが、予め定める第3閾値よりも小さい場合、前記第2パラメータが、前記予め定める第3閾値以上の場合よりも、前記予め定める閾値の変更量を小さくするように構成される、請求項14または15に記載の制御装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記人力駆動車が下り坂を走行する場合、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下しても前記予め定める閾値を変更しないように構成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記予め定める閾値を段階的に変更するように構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、予め定める期間内における前記予め定める閾値の変化量が予め定める変化量以下になるように前記予め定める閾値を変更するように構成される、請求項1から18のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項20】
前記制御部は、
前記人力駆動車に入力される人力駆動力に対する前記モータの出力特性が相互に異なる第1制御状態および第2制御状態において前記モータを制御するように構成され、
前記第1制御状態において前記予め定める閾値を変更する場合と、前記第2制御状態において前記予め定める閾値を変更する場合とにおいて、前記予め定める閾値の変更量を異ならせるように構成される、請求項1から19のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項21】
前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御するように構成される、請求項1から20のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項22】
前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、操作装置からの入力に応じて、前記第1制御状態および前記第2制御状態を切り替えるように構成される、請求項20に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示される人力駆動車用の制御装置は、ユーザが走行モードを選択することによって、変速機の変速に用いる閾値を変更したり、人力駆動力の平均値に応じて、変速機の変速に用いる閾値を変更したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-38187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の人力駆動車用の制御装置では、変速機の変速に用いる閾値を変更するためには、ユーザが自ら操作モードを選択したり、ユーザが自ら人力駆動力の平均値を変化させたりする必要がある。
【0005】
本発明の目的の1つは、モータによって推進力が付与される人力駆動車において、モータの出力が低下する場合に変速機を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、前記人力駆動車に推進力を付与するモータ、および、人力駆動力の伝達経路に設けられ、変速比を変更する変速機を備え、前記制御装置は、前記人力駆動車に関連する第1パラメータと予め定める閾値との比較に応じて、前記変速比を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める閾値を変更するように構成される制御部を備える。
第1側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速の上昇に応じてモータの出力が低下する場合、予め定める閾値が変更されて、変速機を好適に制御できる。
【0007】
本開示の第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記モータの出力が低下する場合は、前記モータを停止する場合を含む。
第2側面の制御装置によれば、モータによって推進力が付与される場合と、モータによって推進力が付与されない場合と、において、それぞれ適切な予め定める閾値が設定される。
【0008】
本開示の第1または第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記予め定める閾値は、予め定める第1閾値を含み、前記制御部は、前記第1パラメータが前記予め定める第1閾値よりも小さくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第1閾値を増加させるように構成される。
第3側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速が上昇して、モータの出力が低下する場合、予め定める第1閾値を増加させて、変速比を減少しやすくすることによって、ライダの負荷の増加を抑制できる。
【0009】
本開示の第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制御装置において、前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、前記制御部は、前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が増加するように前記変速機を制御し、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を増加させるように構成される。
第4側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速の上昇に応じてモータの出力が低下する場合、予め定める第2閾値を増加させて、変速比が増加しにくくすることによって、ライダの負荷の増加を抑制できる。
【0010】
本開示の第3または第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記第1パラメータは、前記人力駆動車のクランクの回転速度、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つに関する。
第5側面の制御装置によれば、クランクの回転速度、および、人力駆動車の車速の少なくとも1つに応じて、変速比を好適に変更できる。
【0011】
本開示の第1または第2側面に従う第6側面の制御装置において、前記予め定める閾値は、予め定める第1閾値を含み、前記制御部は、前記第1パラメータが前記予め定める第1閾値よりも小さくなると、前記変速比が増加するように前記変速機を制御し、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第1閾値を減少させるように構成される。
第6側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速が上昇して、モータの出力が低下する場合、予め定める第1閾値を減少させて、変速比を増加しにくくすることによって、ライダの負荷の増加を抑制できる。
【0012】
本開示の第1、第2、および、第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記予め定める閾値は、予め定める第2閾値を含み、前記制御部は、前記第1パラメータが前記予め定める第2閾値よりも大きくなると、前記変速比が減少するように前記変速機を制御し、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下する場合、前記予め定める第2閾値を減少させるように構成される。
第7側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速が上昇して、モータの出力が低下する場合、予め定める第2閾値を減少させて、変速比が減少しやすくすることによって、ライダの負荷の増加を抑制できる。
【0013】
本開示の第6または第7側面に従う第8側面の制御装置において、前記第1パラメータは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力、前記人力駆動車の傾斜角度、および、前記人力駆動車の走行路の傾斜角度の少なくとも1つに関する。
第8側面の制御装置によれば、人力駆動車に入力される人力駆動力、人力駆動車の傾斜角度、および、人力駆動車の走行路の傾斜角度の少なくとも1つに応じて、変速比を好適に変更できる。
【0014】
本開示の第1から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の走行抵抗に関する第2パラメータが、予め定める第3閾値よりも小さい場合、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下しても前記予め定める閾値を変更しないように構成される。
第9側面の制御装置によれば、人力駆動車の走行抵抗に関する第2パラメータに応じて、予め定める閾値を変更したり、予め定める閾値を変更しないようにしたりできるので、人力駆動車の走行状態に応じて変速比を好適に変更できる。
【0015】
本開示の第1から第8側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記人力駆動車の走行抵抗に関する第2パラメータに応じて前記予め定める閾値の変更量を異ならせるように構成される。
第10側面の制御装置によれば、走行抵抗に関する第2パラメータに応じて、予め定める閾値が好適な値に設定される。
【0016】
本開示の第9側面に従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記第2パラメータに応じて前記予め定める閾値の変更量を異ならせるように構成される。
第11側面の制御装置によれば、走行抵抗に関する第2パラメータに応じて、予め定める閾値が好適な値に設定される。
【0017】
本開示の第10または第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記第2パラメータが、予め定める第3閾値よりも小さい場合、前記第2パラメータが、前記予め定める第3閾値以上の場合よりも、前記予め定める閾値の変更量を小さくするように構成される。
第12側面の制御装置によれば、第2パラメータが、予め定める第3閾値よりも小さい場合、第2パラメータが、予め定める第3閾値以上の場合よりも、人力駆動車の車速が上昇に伴うライダの負荷が大きくなるので、ライダの負荷に応じて、予め定める閾値が適切に設定される。
【0018】
本開示の第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車が下り坂を走行する場合、前記人力駆動車の車速の上昇に応じて前記モータの出力が低下しても前記予め定める閾値を変更しないように構成される。
第13側面の制御装置によれば、人力駆動車が下り坂を走行する場合、ライダの負荷の増加が抑制され、不要な変速を抑制できる。
【0019】
本開示の第1から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、前記予め定める閾値を段階的に変更するように構成される。
第14側面の制御装置によれば、予め定める閾値を段階的に変更するため、人力駆動車の走行状態に合わせて適切な変速を実行できる。
【0020】
本開示の第1から第14側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める閾値を変更する場合、予め定める期間内における前記予め定める閾値の変化量が予め定める変化量以下になるように前記予め定める閾値を変更するように構成される。
第15側面の制御装置によれば、予め定める閾値の急激な変化を抑制して、人力駆動車の走行状態に合わせて適切な変速を実行できる。
【0021】
本開示の第1から第15側面のいずれか1つに従う第16側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に対する前記モータの出力特性が相互に異なる第1制御状態および第2制御状態において前記モータを制御するように構成され、前記第1制御状態において前記予め定める閾値を変更する場合と、前記第2制御状態において前記予め定める閾値を変更する場合とにおいて、前記予め定める閾値の変更量を異ならせるように構成される。
第16側面の制御装置によれば、第1制御状態と第2制御状態とのそれぞれに好適な予め定める閾値が設定される。
【0022】
本開示の第1から第16側面のいずれか1つに従う第17側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御するように構成される。
第17側面の制御装置によれば、モータによってライダの負荷が抑制される。
【0023】
本開示の第16側面に従う第18側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、操作装置からの入力に応じて、前記第1制御状態および第2制御状態を切り替えるように構成される。
第18側面の制御装置によれば、ユーザが意図的に第1制御状態と第2制御状態とを切り替えできる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、モータによって推進力が付与される人力駆動車において、モータの出力が低下する場合に変速機を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
図2】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
図3図2の制御部によって実行され、変速機を制御する処理を示すフローチャート。
図4図2の制御部によって実行され、予め定める閾値を変更する処理のフローチャート。
図5図2の制御部によって実行され、モータの制御状態を切り替える処理のフローチャート。
図6】第2実施形態の制御部によって実行され、変速機を制御する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1から図5を参照して、第1実施形態の人力駆動車用の制御装置70が説明される。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力Hによって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力Hのみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力Hだけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、電動アシスト自転車として説明する。
【0027】
人力駆動車10は、人力駆動力Hが入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、車輪14と、車体16と、を、さらに備える。車輪14は、後輪14Aと、前輪14Bと、を含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能な入力回転軸12Aと、入力回転軸12Aの軸方向の第1端部に設けられる第1クランクアーム12Bと、入力回転軸12Aの軸方向の第2端部に設けられる第2クランクアーム12Cとを含む。本実施形態において入力回転軸12Aは、クランク軸である。第1クランクアーム12Bには、第1ペダル20Aが連結される。第2クランクアーム12Cには、第2ペダル20Bが連結される。後輪14Aは、クランク12が回転することによって駆動される。後輪14Aは、フレーム18に支持される。クランク12と後輪14Aとは、駆動機構22によって連結される。駆動機構22は、入力回転軸12Aに連結される第1回転体24を含む。入力回転軸12Aと第1回転体24とは、一体回転するように連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構22は、第2回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1回転体24の回転力を第2回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0028】
第2回転体26は、後輪14Aに連結される。第2回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体26と後輪14Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられる。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体26が前転した場合に、後輪14Aを前転させ、第2回転体26が後転した場合に、第2回転体26と後輪14Aとの相対回転を許容するように構成される。
【0029】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して前輪14Bが取り付けられる。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結される。本実施形態では、後輪14Aが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0030】
好ましくは、人力駆動車10は、バッテリ36をさらに含む。バッテリ36は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ36は、制御装置70に電力を供給するように構成される。バッテリ36は、好ましくは、制御装置70の制御部72と通信ケーブルまたは無線通信装置によって通信可能に接続される。バッテリ36は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部72と通信可能である。
【0031】
人力駆動車10は、モータ38および変速機40を備える。モータ38は、人力駆動車10に推進力を付与するように構成される。モータ38は、1または複数の電気モータを含む。モータ38は、ペダル20A,20Bから後輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路、および、前輪14Bの少なくとも1つに回転を伝達するように構成される。ペダル20A,20Bから後輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路には、後輪14Aも含まれる。本実施形態では、モータ38は、人力駆動車10のフレーム18に設けられ、第1回転体24に回転を伝達するように構成される。モータ38は、ハウジング42Aに設けられる。ハウジング42Aは、フレーム18に設けられる。ハウジング42Aは、例えばフレーム18に着脱可能に取り付けられる。好ましくは、ハウジング42Aは、入力回転軸12Aを回転可能に支持する。モータ38と、モータ38が設けられるハウジング42Aと、を含んで、ドライブユニット42が構成される。モータ38と入力回転軸12Aとの間の動力伝達経路には、好ましくは、入力回転軸12Aを人力駆動車10が前進する方向に回転させた場合にクランク12の回転力がモータ38に伝達されないように第3ワンウェイクラッチが設けられる。後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つにモータ38を設ける場合、モータ38は、ハブモータを含んでもよい。好ましくは、ドライブユニット42は、モータ38と第1回転体24との間の動力伝達経路に設けられる減速機をさらに含む。
【0032】
変速機40は、人力駆動力Hの伝達経路に設けられ、変速比Rを変更するように構成される。変速機40は、複数の変速ステージを有する。各変速ステージに対応する変速比Rは、相互に異なる。変速ステージの数は、例えば3から30の範囲である。変速比Rは、クランク12の回転速度NCに対する駆動輪の回転速度の比率である。本実施形態では、駆動輪は後輪14Aである。変速機40は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラ、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速機40が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪14Aのハブに設けられる。変速機40は、アクチュエータ44によって動作するように構成される電動変速機を含む。変速機40がフロントディレイラを含む場合、変速機40は、第1回転体24を含み、第1回転体24は、複数のフロントスプロケットを含む。変速機40がリアディレイラを含む場合、変速機40は、第2回転体26を含み、第2回転体26は、複数のリアスプロケットを含む。アクチュエータ44は、電気アクチュエータを含む。アクチュエータ44は、例えば、電気モータを含む。変速比Rと、駆動輪の回転速度NWと、クランク12の回転速度NCとの関係は、式(1)によって表される。
式(1):変速比R=回転速度NW/回転速度NC
【0033】
駆動輪の回転速度NWと、クランク12の回転速度NCとは、それぞれ単位時間あたりの回転数であってもよい。駆動輪の回転速度NWを、フロントスプロケットの歯数に置き換え、クランク12の回転速度NCとは、リアスプロケットの歯数に置き換えてもよい。好ましくは、人力駆動車10は、操作装置46をさらに備える。操作装置46は、例えば、ユーザの手または指によって操作可能に構成される。操作装置46は、例えば、ハンドルバー34に設けられる。操作装置46は、例えば、サイクルコンピュータ、携帯型情報通信装置、または、スマートフォンを含む。操作装置46は、電気ケーブルまたは無線通信装置によって、制御装置70と通信可能に接続される。
【0034】
制御装置70は、制御部72を備える。制御部72は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部72は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、制御装置70は、記憶部74をさらに含む。記憶部74には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部74は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0035】
制御装置70は、好ましくは、モータ38の駆動回路76をさらに備える。駆動回路76と、制御部72とは、好ましくは、ドライブユニット42のハウジング42Aに設けられる。駆動回路76と、制御部72とは、例えば同一の回路基板に設けられてもよい。駆動回路76は、インバータ回路を含む。駆動回路76は、バッテリ36からモータ38に供給される電力を制御する。駆動回路76は、制御部72と電気ケーブルまたは無線通信装置によって通信可能に接続される。駆動回路76は、制御部72からの制御信号に応じてモータ38を駆動させる。
【0036】
好ましくは、人力駆動車10は、車速センサ48をさらに含む。好ましくは、人力駆動車10は、クランク回転センサ50、人力駆動力検出部52、傾斜検出部54、風速検出部56、タイヤ空気圧検出部58、および、加速度検出部60の少なくとも1つをさらに含む。
【0037】
車速センサ48は、人力駆動車10の車輪14の回転速度NWに応じた情報を検出するように構成される。車速センサ48は、例えば、人力駆動車10の車輪14に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ48は、例えば、車輪14が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、1である。車速センサ48は、車輪14の回転速度NWに応じた信号を出力する。制御部72は、車輪14の回転速度NWに応じた情報と、車輪14の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の車速Vを算出できる。記憶部74には車輪14の周長に関する情報が記憶される。
【0038】
車速センサ48は、例えばリードスイッチを構成する磁性リード、または、ホール素子などの磁気センサを含む。車速センサ48は、人力駆動車10のフレーム18のチェーンステイに取り付けられ、後輪14Aに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク30に設けられ、前輪14Bに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。本実施形態において、車速センサ48は、車輪14が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を1回検出するように構成される。車速センサ48は、人力駆動車10の車速に関する情報を検出できれば、どのような構成であってもよい。車速センサ48は、車輪14に設けられる磁石を検出する構成に限らず、例えば、ディスクブレーキロータに設けられるスリットを検出するように構成されてもよい。車速センサ48は、磁気センサではなく、光学センサなどを含んで構成されてもよい。車速センサ48は、GPS受信器を含んでいてもよい。車速センサ48がGPS受信器を含む場合、制御部72は、時間と移動距離とに応じて車速Vを算出できる。車速センサ48は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0039】
クランク回転センサ50は、クランク12の回転速度NCに応じた情報を検出するように構成される。クランク回転センサ50は、例えば、人力駆動車10のフレーム18またはドライブユニット42に設けられる。クランク回転センサ50は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、入力回転軸12A、入力回転軸12Aに連動して回転する部材、または、入力回転軸12Aから第1回転体24までの間の動力伝達経路に設けられる。入力回転軸12Aに連動して回転する部材は、モータ38の出力軸を含んでもよい。
【0040】
クランク回転センサ50は、クランク12の回転速度NCに応じた信号を出力する。例えば、入力回転軸12Aと第1回転体24との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、磁石は、第1回転体24に設けられてもよい。クランク回転センサ50は、クランク12の回転速度NCに関する情報を検出できれば、どのような構成であってもよい。クランク回転センサ50は、車速センサ48と同様な構成の磁気センサを含んでいてもよい。クランク回転センサ50は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ50は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0041】
人力駆動力検出部52は、例えば、トルクセンサを含む。トルクセンサは、人力駆動力Hによってクランク12に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサは、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサは、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。
【0042】
トルクセンサは、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、入力回転軸12A、入力回転軸12Aと第1回転体24との間において人力駆動力Hを伝達する部材、クランクアーム12B,12C、または、ペダル20A,20Bである。人力駆動力検出部52は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。人力駆動力検出部52は、人力駆動力Hに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル20A,20Bに与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーンの張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。
【0043】
傾斜検出部54は、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dを検出するように構成される。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dは、人力駆動車10の進行方向における傾斜角度によって検出できる。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dは、人力駆動車10のピッチ角度と対応する。傾斜検出部54は、一例では、傾斜センサを含む。傾斜センサは、ジャイロセンサおよび加速度センサの少なくとも1つを含む。別の例では、傾斜検出部54は、GPS(Global positioning system)受信部を含む。制御部72は、GPS受信部によって取得したGPS情報と、記憶部74に予め記録される地図情報に含まれる路面勾配に関する情報とに応じて、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dを演算してもよい。傾斜検出部54は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0044】
風速検出部56は、風速を検出するように構成される。風速検出部56は、風速センサおよび風圧センサの少なくとも1つを含む。風速検出部56は、例えば、人力駆動車10のハンドルバー34に設けられる。風速検出部56は、人力駆動車10が前方に走行する場合の向かい風および追い風の少なくとも1つを検出可能に構成されることが好ましい。風速検出部56は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0045】
タイヤ空気圧検出部58は、車輪14のタイヤ15の空気圧を検出するように構成される。タイヤ空気圧検出部58は、タイヤ15の内部の空気圧を検出するように構成される。タイヤ空気圧検出部58は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。タイヤ空気圧検出部58は、前輪14Bのタイヤ15Bの空気圧と、後輪14Aのタイヤ15Aの空気圧と、の少なくとも1つを検出する。好ましくは、タイヤ空気圧検出部58は、前輪14Bのタイヤ15Bの空気圧と、後輪14Aのタイヤ15Aの空気圧と、の両方を検出する。
【0046】
加速度検出部60は、人力駆動車10が前進する方向における加速度に応じた信号を検出するように構成される。加速度検出部60は、加速度センサを含んでいてもよく、車速センサ48を含んでいてもよい。加速度検出部60は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。加速度検出部60が車速センサ48を含む場合、制御部72は、車速Vを微分することによって人力駆動車10が前進する方向における加速度に関する情報を取得する。
【0047】
好ましくは、制御部72は、モータ38を制御するように構成される。好ましくは、制御部72は、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hに応じてモータ38を制御するように構成される。人力駆動力Hは、トルクによって表されてもよく、仕事率によって表されてもよい。人力駆動力Hが仕事率によって表される場合、人力駆動力Hは、人力駆動力検出部52によって検出されるトルクと、クランク回転センサ50によって検出されるクランク12の回転速度NCと、を乗算することによって得られる。
【0048】
制御部72は、例えば、人力駆動力Hに対して、モータ38によるアシスト力Mが予め定める比率Aになるように、モータ38を制御するように構成される。予め定める比率Aは、一定ではなく、例えば、人力駆動力Hに応じて変化してもよく、車速Vに応じて変化してもよく、人力駆動力Hおよび車速Vの両方に応じて変化してもよい。人力駆動力Hおよびアシスト力Mは、トルクによって表されてもよく、仕事率によって表されてもよい。人力駆動力Hおよびアシスト力Mをトルクによって表わす場合、人力駆動力Hを人力トルクHTと記載し、アシスト力MをアシストトルクMTと記載する。人力駆動力Hおよびアシスト力Mを仕事率によって表わす場合、人力駆動力Hを人力仕事率HWと記載し、アシスト力Mをアシスト仕事率MWと記載する。
【0049】
人力駆動車10の人力トルクHTに対するアシストトルクMTの比率を、アシスト比率ATと記載する場合がある。人力仕事率HWに対するアシスト仕事率Wの比率を、アシスト比率AWと記載する場合がある。制御部72は、人力トルクHTまたは人力仕事率HWに応じて、制御指令をモータ38の駆動回路76に出力するように構成される。制御指令は、例えばトルク指令値を含む。
【0050】
制御部72は、アシスト力Mが上限値MX以下になるようにモータ38を制御するように構成される。アシスト力Mがトルクによって表される場合、制御部72は、アシストトルクMTが上限値MTX以下になるようにモータ38を制御するように構成される。好ましくは、上限値MTXは、30Nm以上90Nm以下の範囲の値である。上限値MTXは、例えば、85Nmである。上限値MTXは、例えば、モータ38の出力特性によって決定される。アシスト力Mが仕事率によって表される場合、制御部72は、アシスト仕事率MWが上限値MWX以下になるようにモータ38を制御するように構成される。
【0051】
制御部72は、人力駆動力Hに加えて、クランク12の回転速度NCに応じて、モータ38を制御するように構成されてもよい。例えば、制御部72は、入力回転軸12Aの回転速度NCが予め定める回転速度NCX未満の場合、クランク12の回転速度NCおよび人力駆動力Hの少なくとも1つに応じたモータ38の駆動を停止する。予め定める回転速度NCXは、例えば、0rpm以上5rpm以下の範囲の値である。
【0052】
例えば、制御部72は、車速Vが第1車速V1以上になると、モータ38を停止する。第1車速V1は、例えば、時速25Kmである。第1車速V1は、時速25Km未満であってもよく、例えば、時速24Kmであってもよい。第1車速V1は、時速25Kmよりも大きくてもよく、例えば、時速45Kmであってもよい。好ましくは、制御部72は、第1車速V1よりも低い第2車速V2から第1車速V1までの範囲において、車速Vが高くなるほど上限値MXおよび比率Aの少なくとも1つが低下するようにモータ38を制御するように構成される。
【0053】
制御部72は、変速機40を制御するように構成される。制御部72は、人力駆動車10に関連する第1パラメータP1と予め定める閾値P1Xとの比較に応じて、変速比Rを変更するように変速機40を制御するように構成され、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める閾値P1Xを変更するように構成される。好ましくは、予め定める閾値P1Xは、記憶部74に予め記憶される。予め定める閾値P1Xの初期値は、ユーザが設定してもよい。好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、記憶部74に記憶される予め定める閾値P1Xを、予め定める閾値P1Xの初期値から他の値に変更するように構成される。
【0054】
好ましくは、モータ38の出力が低下する場合は、モータ38を停止する場合を含む。好ましくは、車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合は、車速Vが第2車速V2以上において車速Vが上昇する場合を含む。好ましくは、車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合は、車速Vが第1車速V1以上になる場合を含む。好ましくは、制御部72は、予め定める閾値P1Xを変更する場合、予め定める閾値P1Xを段階的に変更するように構成される。好ましくは、制御部72は、予め定める閾値P1Xを変更する場合、予め定める期間内における予め定める閾値P1Xの変化量が予め定める変化量以下になるように予め定める閾値P1Xを変更するように構成される。制御部72は、予め定める閾値P1Xを変更する場合は、予め定める閾値P1Xが急激に変化しないように予め定める閾値P1Xを変更する。予め定める期間は、例えば1秒以上5秒以下の期間である。予め定める変化量は、クランクの回転速度の場合、1rpm以上10rpm以下の範囲である。
【0055】
制御部72は、第1パラメータP1と予め定める閾値P1Xとの比較に応じて変速比Rを変更するように構成される。第1パラメータP1は、クランク12の回転速度NC、および、人力駆動車10の車速Vの少なくとも1つに関する。第1パラメータP1がクランク12の回転速度NCに関する場合、例えば、第1パラメータP1はクランク12の回転速度NCである。第1パラメータP1が車速Vに関する場合、例えば、第1パラメータP1は車速Vである。
【0056】
好ましくは、予め定める閾値P1Xは、予め定める第1閾値P11を含む。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11よりも小さくなると、変速比Rが減少するように変速機40を制御する。好ましくは、予め定める閾値P1Xは、予め定める第2閾値P12を含む。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12よりも大きくなると、変速比Rが増加するように変速機40を制御する。好ましくは、第2閾値P12は、第1閾値P11よりも大きい。第1閾値P11および第2閾値P12の初期値は、ユーザが設定してもよい。第1パラメータP1がクランク12の回転速度NCの場合、第1閾値P11は、例えば30rpm以上70rmp以下の範囲の値である。クランクの回転速度の場合、第2閾値P12は、例えば55rpm以上100rmp以下の範囲の値である。
【0057】
図3を参照して、変速機40を制御する処理が説明される。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部72は、図3のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0058】
制御部72は、ステップS11において、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11よりも小さいか否かを判定する。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11よりも小さい場合、ステップS12に移行する。制御部72は、ステップS12において、現在の変速比Rが変速機40の最小変速比Rminよりも大きいか否かを判定する。制御部72は、現在の変速比Rが最小変速比Rmin以下の場合、処理を終了する。制御部72は、変速比Rが最小変速比Rminよりも大きい場合、ステップS13に移行する。制御部72は、ステップS13において、変速比Rが減少するように変速機40を制御し、処理を終了する。ステップS13において、制御部72は、変速ステージを1段分だけ変更する。
【0059】
制御部72は、ステップS11において、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11以上の場合、ステップS14に移行する。制御部72は、ステップS14において、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12よりも大きいか否かを判定する。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12以下の場合、処理を終了する。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12よりも大きい場合、ステップS15に移行する。
【0060】
制御部72は、ステップS15において、現在の変速比Rが変速機40の最大変速比Rmaxよりも小さいか否かを判定する。制御部72は、現在の変速比Rが最大変速比Rmax以上の場合、処理を終了する。制御部72は、現在の変速比Rが最大変速比Rmaxよりも小さい場合、ステップS16に移行する。制御部72は、ステップS16において、変速比Rが増加するように変速機40を制御し、処理を終了する。ステップS16において、制御部72は、変速ステージを1段分だけ変更する。
【0061】
制御部72は、ステップS12において、現在の変速比Rと、最小変速比Rminと、を比較するのではなく、現在の変速ステージと、最小変速ステージとを比較してもよい。現在の変速ステージと、最小変速ステージとを比較する場合、例えば、各変速ステージに数字を割り振っておき、現在の変速ステージに対応する数字と、最小変速ステージに対応する数字とを比較する。最小変速ステージに対応する数字は、例えば1である。
【0062】
制御部72は、ステップS15において、現在の変速比Rと、最大変速比Rmaxと、を比較するのではなく、現在の変速ステージと、最大変速ステージとを比較してもよい。現在の変速ステージと、最大変速ステージとを比較する場合、例えば、各変速ステージに数字を割り振っておき、現在の変速ステージに対応する数字と、最大変速ステージに対応する数字とを比較する。
【0063】
好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第1閾値P11を増加するように構成される。好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第2閾値P12を増加するように構成される。第1パラメータP1がクランク12の回転速度NCの場合、予め定める閾値P1Xは、例えば、車速が1km/hから5km/hの範囲において上昇する毎に、1rpmから5rpmの範囲において変更されてもよい。
【0064】
好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の走行抵抗Xに関する第2パラメータP2に応じて予め定める閾値P1Xを設定するように構成される。好ましくは、人力駆動車10の走行抵抗Xに関する第2パラメータP2は、走行抵抗Xが増加するほど増加するパラメータである。人力駆動車10の走行抵抗Xに関する第2パラメータP2は、例えば、走行抵抗Xである。走行抵抗Xは、傾斜抵抗、空気抵抗、タイヤ15の転がり抵抗、および、加速抵抗の少なくとも1つを含む。傾斜抵抗は、傾斜角度Dが増加すると増加する。タイヤ15の転がり抵抗は、タイヤ15の空気圧が減少すると増加する。空気抵抗は、人力駆動車10の進行方向の下流側からの風速が増加すると増加する。加速抵抗は、人力駆動車10の進行方向への加速度が増加すると増加する。
【0065】
制御部72は、傾斜検出部54によって検出される傾斜角度D、風速検出部56によって検出される風速、タイヤ空気圧検出部58によって検出されるタイヤ15の空気圧、および、加速度検出部60によって検出される加速度の少なくとも1つに応じて、予め定める閾値P1Xを設定する。好ましくは、第2パラメータP2と、予め定める閾値P1Xの変更量と、の関係に関する情報が予め記憶部74に記憶される。第2パラメータP2と、予め定める閾値P1Xの変更量と、の関係に関する情報は、テーブル、マップ、および、関係式の少なくとも1つを含む。
【0066】
好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の走行抵抗Xに関する第2パラメータP2が、予め定める第3閾値P2Xよりも小さい場合、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下しても予め定める閾値P1Xを変更しないように構成される。
【0067】
好ましくは、制御部72は、予め定める閾値P1Xを変更する場合、第2パラメータP2が、予め定める第3閾値P2Xよりも小さい場合、第2パラメータP2が、予め定める第3閾値P2X以上の場合よりも、予め定める閾値P1Xの変更量を小さくするように構成される。
【0068】
好ましくは、制御部72は、予め定める閾値P1Xを変更する場合、人力駆動車10の走行抵抗Xに関する第2パラメータP2に応じて予め定める閾値P1Xの変更量を異ならせるように構成される。
【0069】
好ましくは、制御部72は、人力駆動車10が下り坂を走行する場合、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下しても予め定める閾値P1Xを変更しないように構成される。
【0070】
を参照して、予め定める閾値P1Xを制御する処理が説明される。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して図に示すフローチャートのステップS31に移行する。制御部72は、図のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS31からの処理を繰り返す。
【0071】
制御部72は、ステップS31において、車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下したか否かを判定する。制御部72は、例えば、車速Vが第1車速V1以上になり、モータ38が停止した場合、車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下したと判定する。制御部72は、車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下していない場合、処理を終了する。制御部72は、車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下した場合、ステップS32に移行する。
【0072】
制御部72は、ステップS32において、人力駆動車10が下り坂を走行しているか否かを判定する。制御部72は、人力駆動車10が下り坂を走行している場合、処理を終了する。制御部72は、人力駆動車10が下り坂を走行していない場合、ステップS33に移行する。
【0073】
制御部72は、ステップS33において、第2パラメータP2が第3閾値P2Xよりも小さいか否かを判定する。制御部72は、第2パラメータP2が第3閾値P2X以上の場合、ステップS34に移行する。制御部72は、ステップS34において、予め定める第1閾値P11を第1値P1Aに変更し、予め定める第2閾値P12を第2値P1Bに変更し、処理を終了する。
【0074】
制御部72は、ステップS33において、第2パラメータP2が第3閾値P2Xよりも小さい場合、ステップS35に移行する。制御部72は、ステップS35において、予め定める第1閾値P11を第3値P1Cに変更し、予め定める第2閾値P12を第4値P1Dに変更し、処理を終了する。
【0075】
第1値P1Aおよび第3値P1Cは、記憶部74に記憶される予め定める第1閾値P11の初期値よりも大きい。第2値P1Bおよび第4値P1Dは、記憶部74に記憶される予め定める第2閾値P12の初期値よりも大きい。好ましくは、第3値P1Cは、第1値P1Aよりも小さい。好ましくは、第4値P1Dは、第2値P1Bよりも小さい。
【0076】
好ましくは、制御部72は、車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下した場合に予め定める閾値P1Xを変更した場合、予め定める条件が成立すると、変更後の予め定める閾値P1Xを変更前の予め定める閾値P1Xに戻す。例えば、制御部72は、予め定める条件が成立すると、予め定める閾値P1Xを記憶部74に記憶される予め定める閾値P1Xの初期値に戻す。予め定める条件は、例えば、車速Vが低下した場合、車速Vが第1車速V1よりも低くなった場合、および、車速Vが第2車速V2よりも低くなった場合の少なくとも1つを含む。
【0077】
好ましくは、制御部72は、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hに対するモータ38の出力特性が相互に異なる第1制御状態および第2制御状態においてモータ38を制御するように構成される。制御部72は、例えば、人力駆動力Hと予め定める比率Aとの対応関係の少なくとも一部が互いに異なる複数の制御状態から選択される1つの制御状態によって、モータ38を制御するように構成される。複数の制御状態は、第1制御状態および第2制御状態を含む。複数の制御状態は、第1制御状態および第2制御状態以外の少なくとも1つの他の制御状態を含んでいてもよい。複数の制御状態は、モータ38を駆動しない制御状態を含んでいてもよい。
【0078】
好ましくは、制御部72は、操作装置46からの入力に応じて、第1制御状態および第2制御状態を切り替えるように構成される。操作装置46は、ユーザによって制御状態を切り替えるための操作が実行されると、制御部72に制御状態の切替要求に関する信号を送信する。制御部72は、操作装置46から制御状態の切替要求に関する信号を受信すると、例えば第1制御状態であれば第2制御状態に切り替え、第2制御状態であれば第1制御状態に切り替える。制御部72は、操作装置46から制御状態の切替要求に関する信号を受信すると、操作装置46から制御状態の切替要求に関する信号を受信回数に応じて、複数の制御状態を切り替えてもよい。
【0079】
操作装置46は、第1制御状態および第2制御状態を切り替えることができれば、どのような構成であってもよい。操作装置46は、第1制御状態に切り替えるための切替要求に関する信号を送信してもよい。制御部72は、第1制御状態に切り替えるための切替要求に関する信号を受信すると、第2制御状態または少なくとも1つの他の制御状態であれば、第1制御状態に切り替える。操作装置46は、第2制御状態に切り替えるための切替要求に関する信号を送信してもよい。制御部72は、第2制御状態に切り替えるための切替要求に関する信号を受信すると、第1制御状態または少なくとも1つの他の制御状態であれば、第2制御状態に切り替える。
【0080】
図5を参照して、制御状態を切り替える処理が説明される。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して図5に示すフローチャートのステップS41に移行する。制御部72は、図5のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS41からの処理を繰り返す。
【0081】
制御部72は、ステップS41において、第1制御状態か否かを判定する。制御部72は、第1制御状態の場合、ステップS42に移行する。制御部72は、ステップS42において、操作装置46から制御状態の切替要求があるか否かを判定する。制御部72は、操作装置46から制御状態の切替要求がない場合、処理を終了する。制御部72は、操作装置46から制御状態の切替要求がある場合、ステップS43に移行する。制御部72は、ステップS43において、第2制御状態に切り替え、処理を終了する。
【0082】
制御部72は、ステップS41において、第1制御状態ではない場合、ステップS44に移行する。制御部72は、ステップS44において、操作装置46から制御状態の切替要求があるか否かを判定する。制御部72は、操作装置46から制御状態の切替要求がない場合、処理を終了する。制御部72は、操作装置46から制御状態の切替要求がある場合、ステップS45に移行する。制御部72は、ステップS45において、第1制御状態に切り替え、処理を終了する。
【0083】
好ましくは、制御部72は、第1制御状態において予め定める閾値P1Xを変更する場合と、第2制御状態において予め定める閾値P1Xを変更する場合とにおいて、予め定める閾値P1Xの変更量を異ならせるように構成される。例えば、第1制御状態における予め定める比率Aの最大値が第2制御状態における予め定める比率Aの最大値よりも小さい場合、第1制御状態において、図4のフローチャートのステップS34およびステップS35の処理によって変更される予め定める閾値P1Xの変更量を、第2制御状態において、図4のフローチャートのステップS34およびステップS35の処理によって変更される予め定める閾値P1Xの変更量よりも小さくする。
【0084】
<第2実施形態>
第2実施形態の制御装置70は、第1実施形態の制御装置70とは、制御部72における処理のみが異なり、他の構成は同じため、異なる部分について説明される。
【0085】
第2実施形態における第1パラメータP1は、第1実施形態における第1パラメータP1と異なる。第2実施形態における第1パラメータP1は、人力駆動車10に入力される人力駆動力H、人力駆動車10の傾斜角度D、および、人力駆動車10の走行路の傾斜角度の少なくとも1つに関する。第1パラメータP1が人力駆動力Hに関する場合、例えば、第1パラメータP1は人力駆動力Hである。第1パラメータP1が人力駆動車10の傾斜角度Dに関する場合、例えば、第1パラメータP1は人力駆動車10の傾斜角度Dである。第1パラメータP1が人力駆動車10の走行路の傾斜角度に関する場合、例えば、第1パラメータP1は人力駆動車10の走行路の傾斜角度である。制御部72は、人力駆動車10の傾斜角度または人力駆動車10の走行路の傾斜角度に関する情報を、傾斜検出部54から取得する。
【0086】
好ましくは、予め定める閾値P1Xは、予め定める第1閾値P11を含む。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11よりも小さくなると、変速比Rが増加するように変速機40を制御する。好ましくは、予め定める閾値P1Xは、予め定める第2閾値P12を含む。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12よりも大きくなると、変速比Rが減少するように変速機40を制御する。好ましくは、予め定める第2閾値P12は、予め定める第1閾値P11よりも大きい。人力トルクの場合、第1閾値P11は、例えば20Nm以上60Nm以下の範囲の値である。人力トルクの場合、第2閾値P12は、例えば40Nm以上80Nm以下の範囲の値である。
【0087】
好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第1閾値P11を小さくするように構成される。好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第2閾値P12を小さくするように構成される。
【0088】
図6を参照して、変速機40を制御する処理が説明される。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して図6に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部72は、図6のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0089】
制御部72は、ステップS21において、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11よりも小さいか否かを判定する。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11よりも小さい場合、ステップS22に移行する。制御部72は、ステップS2において、現在の変速比Rが最大変速比Rmaxよりも小さいか否かを判定する。制御部72は、現在の変速比Rが最大変速比Rmax以上の場合、処理を終了する。制御部72は、現在の変速比Rが最大変速比Rmaxよりも小さい場合、ステップS23に移行する。制御部72は、ステップS23において、変速比Rが増加するように変速機40を制御し、処理を終了する。
【0090】
制御部72は、ステップS21において、第1パラメータP1が予め定める第1閾値P11以上の場合、ステップS24に移行する。制御部72は、ステップS24において、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12よりも大きいか否かを判定する。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12以下の場合、処理を終了する。制御部72は、第1パラメータP1が予め定める第2閾値P12よりも大きい場合、ステップS25に移行する。制御部72は、ステップS25において、現在の変速比Rが最小変速比Rminよりも大きいか否かを判定する。制御部72は、現在の変速比Rが最小変速比Rmin以下の場合、処理を終了する。制御部72は、現在の変速比Rが最小変速比Rminよりも大きい場合、ステップS26に移行する。制御部72は、ステップS26において、変速比Rが減少するように変速機40を制御し、処理を終了する。
【0091】
第1値P1Aおよび第3値P1Cは、記憶部74に記憶される予め定める第1閾値P11の初期値よりも小さい。第2値P1Bおよび第4値P1Dは、記憶部74に記憶される予め定める第2閾値P12の初期値よりも小さい。好ましくは、第3値P1Cは、第1値P1Aよりも大きい。好ましくは、第4値P1Dは、第2値P1Bよりも大きい。
【0092】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0093】
図4のフローチャートから、ステップS32と、ステップS33およびステップS35と、の少なくとも1つの処理を省略してもよい。ステップS32、ステップS33、および、ステップS35の処理を省略する場合、制御部72は、ステップS31における判定がYESの場合、ステップS34に移行する。ステップS32のみを省略する場合、制御部72は、ステップS31における判定がYESの判定の場合、ステップS33に移行する。ステップS33およびステップS35を省略する場合、制御部72は、ステップS32における判定がNOの場合、ステップS34に移行する。要するに、制御部72は、人力駆動車10に関連する第1パラメータP1と予め定める閾値P1Xとの比較に応じて、変速比Rを変更するように変速機40を制御するように構成され、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める閾値P1Xを変更するように構成されていれば、他の構成は省略してもよい。
【0094】
・第1実施形態において、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第1閾値P11を減少させるように構成されてもよい。予め定める第1閾値P11が減少すると、変速比Rが減少にくくなるので、ライダの負荷は減少しにくいが、クランク12の回転数の増加を抑制して、車速Vを維持させやすい。
【0095】
・第1実施形態において、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第2閾値P12を減少させるように構成されてもよい。予め定める第2閾値P12を減少すると、変速比が増加しやすくなるので、ライダの負荷は増加しやすくなるが、クランク12の回転数の増加を抑制して、車速Vを増加させやすくなる。
【0096】
・第1実施形態において、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第1閾値P11および予め定める第2閾値P12の1つのみを変更するようにしてもよい。
【0097】
・第2実施形態において、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第1閾値P11を増加するように構成されてもよい。この場合、変速比Rは、減少しやすくなる。
【0098】
・第2実施形態において、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第2閾値P12を増加するように構成されてもよい。この場合、変速比Rは、増加しにくくなる。
【0099】
・第2実施形態において、制御部72は、人力駆動車10の車速Vの上昇に応じてモータ38の出力が低下する場合、予め定める第1閾値P11および予め定める第2閾値P12の一方のみを変更するようにしてもよい。
【0100】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0101】
10…人力駆動車、12…クランク、38…モータ、40…変速機、46…操作装置、70…制御装置、72…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6