(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】媒体排出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 31/26 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
B65H31/26
(21)【出願番号】P 2020198287
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡野 茂治
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-031259(JP,A)
【文献】特開平09-255210(JP,A)
【文献】特開2017-193392(JP,A)
【文献】特開平05-004771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を排出する排出ローラと、
前記排出ローラによって排出された媒体を積載するトレイと、
前記トレイ上に排出された媒体へ荷重を加えるための荷重押圧部が先端部側に
媒体排出方向と直交する方向において間隔を空けて二つ設けられ、且つ、当該先端部と反対側の基部側に係合部が設けられた媒体規制部材と、
前記係合部と係合する被係合部が設けられ、媒体の排出に伴って、前記トレイの上面に対して上下方向に揺動可能、且つ、前記基部側から前記先端部側に向かう方向の回転軸に沿って旋回可能に、前記媒体規制部材を保持する保持部材と、を有し、
前記荷重押圧部は、所定サイズ以下の媒体が排出された場合に当該媒体の先端を停止させ、前記所定サイズより大きい媒体が排出された場合には当該媒体の先端を通過さ
せ、
前記係合部は、媒体排出方向と直交する方向において前記媒体規制部材の中央部に設けられる、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項2】
前記媒体規制部材には、前記係合部が、媒体排出方向と直交する方向において間隔を空けて二つ設けられ、
前記保持部材には、前記被係合部が、媒体排出方向と直交する方向において間隔を空けて二つ設けられる、請求項1に記載の媒体排出装置。
【請求項3】
前記二つの係合部の間の距離は、前記二つの荷重押圧部の間の距離の1/3以下である、請求項
2に記載の媒体排出装置。
【請求項4】
前記二つの荷重押圧部の間の距離は、前記媒体排出装置がサポートする最小媒体幅より小さい、請求項
1~3の何れか一項に記載の媒体排出装置。
【請求項5】
前記トレイは、媒体排出方向に延伸し、且つ、前記荷重押圧部と当接するリブを有する、請求項1~
4の何れか一項に記載の媒体排出装置。
【請求項6】
前記媒体規制部材及び前記保持部材は、前記媒体排出装置の筐体内に引き出し可能に収納される、請求項1~
5の何れか一項に記載の媒体排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体排出装置に関し、特に、排出された媒体を積載するトレイを有する媒体排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャナ等の媒体排出装置では、名刺、レシート、PPC(Plain Paper Copier)用紙、パスポート等の様々な種類の媒体を搬送させて撮像し、排出することが要求されている。媒体排出装置において複数の媒体が順次搬送されて排出される場合、利用者は、通常、撮像が完了した媒体を整理するために、排出された媒体の先端を揃える。利用者が媒体の先端を揃えやすいように、媒体排出装置において、トレイ上に排出された各媒体、特に特定のサイズより小さい媒体の位置が揃っていることが望ましい。
【0003】
排出原稿積載トレイに排出されたシートを押さえる押さえ部と、排出原稿積載トレイの上方に配置された基部と、押さえ部と基部との間に設けられた節部とを有する原稿押さえ部材を備える排出シート積載装置が開示されている(特許文献1を参照)。この排出シート積載装置において、押さえ部は、排出原稿積載トレイのシート積載方向へ回動可能であり、節部によって排出原稿積載トレイの原稿積載面に沿った方向に揺動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体排出装置では、特定の媒体の先端を良好に揃えつつ、排出された媒体をトレイ上に良好に積載することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、特定の媒体の先端を良好に揃えつつ、排出された媒体をトレイ上に良好に積載することが可能な媒体排出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る媒体排出装置は、媒体を排出する排出ローラと、排出ローラによって排出された媒体を積載するトレイと、トレイ上に排出された媒体へ荷重を加えるための荷重押圧部が先端部側に媒体排出方向と直交する方向において間隔を空けて二つ設けられ、且つ、その先端部と反対側の基部側に係合部が設けられた媒体規制部材と、係合部と係合する被係合部が設けられ、媒体の排出に伴って、トレイの上面に対して上下方向に揺動可能、且つ、基部側から先端部側に向かう方向の回転軸に沿って旋回可能に、媒体規制部材を保持する保持部材と、を有し、荷重押圧部は、所定サイズ以下の媒体が排出された場合にその媒体の先端を停止させ、所定サイズより大きい媒体が排出された場合にはその媒体の先端を通過させ、係合部は、媒体排出方向と直交する方向において媒体規制部材の中央部に設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、媒体排出装置は、特定の媒体の先端を良好に揃えつつ、排出された媒体をトレイ上に良好に積載することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る媒体排出装置100を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る媒体排出装置100を示す斜視図である。
【
図5】媒体規制部材105及び保持部材106の斜視図である。
【
図6A】媒体規制部材105等の動作について説明するための模式図である。
【
図6B】媒体規制部材105等の動作について説明するための模式図である。
【
図7A】媒体規制部材105等の動作について説明するための模式図である。
【
図7B】媒体規制部材105等の動作について説明するための模式図である。
【
図8A】媒体規制部材105等の動作について説明するための模式図である。
【
図8B】媒体規制部材105等の動作について説明するための模式図である。
【
図9】媒体規制部材105の旋回の回転軸について説明するための模式図である。
【
図10A】荷重のバランスについて説明するための模式図である。
【
図10B】荷重のバランスについて説明するための模式図である。
【
図12】上側筐体102の内部を側方から見た模式図である。
【
図13】媒体排出装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一側面に係る媒体排出装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0011】
図1、
図2は、イメージスキャナとして構成された媒体排出装置100を示す斜視図である。
図1は、媒体規制部材105及び保持部材106が収納された状態の媒体排出装置100を示し、
図2は、媒体規制部材105及び保持部材106が引き出された状態の媒体排出装置100を示す。
【0012】
媒体排出装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像し、排出する。媒体は、用紙、厚紙、カード、冊子又はパスポート等である。用紙又は厚紙には、名刺又はレシート等の小型媒体が含まれる。小型媒体は、例えば、長手方向のサイズがA8の縦サイズ(74mm)以下である媒体である。なお、小型媒体は、短手方向のサイズがA8の横サイズ(52mm)以下である媒体、長手方向のサイズがA4の縦サイズ(297mm)以下である媒体、又は、短手方向のサイズがA6の横サイズ(210mm)以下である媒体等でもよい。また、用紙には、A4サイズ又はA3サイズ等のPPC用紙が含まれる。
【0013】
媒体排出装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体排出装置100はプリンタ等でもよい。
【0014】
媒体排出装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、媒体規制部材105及び保持部材106等を備える。
図1、
図2において矢印A1は媒体排出方向を示す。以下では、上流とは媒体排出方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体排出方向A1の下流のことをいう。また、媒体排出方向A1と直交する方向を幅方向A2と称する場合がある。また、排出台104の上面と直交する方向を上下方向A3と称する場合がある。
【0015】
下側筐体101及び上側筐体102は、筐体の一例である。上側筐体102は、媒体排出装置100の上面を覆う位置に配置され、ヒンジにより下側筐体101に係合している。上側筐体102は、媒体つまり時、媒体排出装置100内部の清掃時等に矢印A4の方向に開閉可能に設けられている。下側筐体101及び上側筐体102は、媒体を排出する排出口101aを有する。上側筐体102は、媒体規制部材105及び保持部材106を収納するための収納部107を有する。
【0016】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。
【0017】
排出台104は、トレイの一例であり、排出口101aの下方に設けられ、排出口101aから排出された媒体を積載するように、下側筐体101に係合している。排出台104は、第1トレイ104a、第2トレイ104b、第3トレイ104c及びストッパ104dを有する。
【0018】
第1トレイ104aは、媒体排出装置100が使用されないときには下側筐体101内部に収納され、媒体排出装置100が使用されるときに下側筐体101から媒体排出方向A1に引き出され、排出口101aから排出された媒体を積載する。第2トレイ104bは、サイズが大きい媒体が排出台104に載置されるように、第1トレイ104aから媒体排出方向A1に引き出し可能に設けられる。第3トレイ104cは、さらにサイズが大きい媒体が排出台104に載置されるように、第2トレイ104bから媒体排出方向A1に引き出し可能に設けられる。第1トレイ104a、第2トレイ104b及び第3トレイ104cは、排出される媒体をそれぞれ載置する第1載置面104e、第2載置面104f及び第3載置面104gを有する。
【0019】
第1トレイ104aは、第1載置面104e上に、媒体排出方向A1に延伸する複数のリブ104h、104iを有する。複数のリブ104h、104iにより、排出される媒体と第1載置面104eの間の摩擦力が低減し、媒体が第1載置面104eに引っかかって撓んでしまって媒体のジャムが発生することが抑制される。
【0020】
ストッパ104dは、第3トレイ104cの下流側の端部に、折り畳み可能に設けられる。ストッパ104dは、起立されることにより、排出台104に排出された、媒体排出装置100がサポートする最大サイズ(例えばA4サイズ又はA3サイズ)の媒体の先端を停止させ、各媒体の先端を揃える。一方、ストッパ104dが折り畳まれることにより、第1トレイ104a、第2トレイ104b及び第3トレイ104cは、下側筐体101に収納可能となる。
【0021】
なお、排出台104は、引き出し及び収納可能でないように、下側筐体101に固定されていてもよい。また、第2トレイ104b及び/又は第3トレイ104cは、省略されてもよい。第3トレイ104cが省略される場合、ストッパ104dは、第2トレイ104bに設けられる。第2トレイ104b及び第3トレイ104cが省略される場合、ストッパ104dは、第1トレイ104aに設けられる。
【0022】
媒体規制部材105は、小型媒体用のストッパ(スタッカサポーター)であり、排出台104上で媒体の先端位置、即ち媒体排出方向A1の下流側の端部位置を規制する。保持部材106は、上流側の端部が上側筐体102に係合され且つ下流側の端部が媒体規制部材105に係合されることにより、媒体規制部材105を保持(支持)する。媒体規制部材105及び保持部材106は、上側筐体102内に引き出し可能に収納される。
図1に示すように、媒体規制部材105及び保持部材106は、媒体排出装置100が使用されない場合、又は、小型媒体が搬送及び排出されない場合、上側筐体102に設けられた収納部107に収納される。一方、
図2に示すように、媒体規制部材105及び保持部材106は、媒体排出装置100が使用され、且つ、小型媒体が搬送及び排出される場合、利用者により引き出されて使用される。利用者は、必要な場合に限り、媒体規制部材105及び保持部材106を使用することが可能となり、媒体排出装置100は、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0023】
上側筐体102から引き出されて保持部材106に支持される媒体規制部材105の延在方向は、媒体規制部材105が上側筐体102から引き出される方向と必ずしも一致しない。これにより、媒体規制部材105は、収納部107に沿って上側筐体102から引き出されつつ、上側筐体102から引き出された後は、排出台104の適切な位置に接触することが可能となる。
【0024】
媒体規制部材105は、上側筐体102から引き出された状態で、第1トレイ104aに当接し且つ第2トレイ104bに当接しないように設けられている。これにより、媒体規制部材105が上側筐体102から引き出されたまま、第2トレイ104bが第1トレイ104aに収納されても、媒体規制部材105が第2載置面104fに引きずられることはなく、媒体規制部材105が破損されることが抑制される。
【0025】
媒体規制部材105は、排出台104に小型媒体が排出された場合に小型媒体の先端を停止させるために使用される。したがって、排出口101aから媒体規制部材105が排出台104と当接する位置までの距離は、媒体排出装置100がサポートする媒体の最大サイズ未満であり、且つ、小型媒体のサイズ以上となるように設定される。媒体排出装置100がサポートする媒体の最大サイズは、例えばA4の縦サイズ(297mm)又はA3の縦サイズ(420mm)等である。小型媒体のサイズは、例えばA8の縦サイズ(74mm)又はA8の横サイズ(52mm)等である。これにより、媒体規制部材105は、排出台104に小型媒体が排出された場合に小型媒体の先端を停止させることができる。
【0026】
一方、排出口101aからストッパ104dまでの距離は、媒体排出装置100がサポートする媒体の最大サイズと略同一となるように設定される。これにより、ストッパ104dは、排出台104に媒体排出装置100がサポートする最大サイズの媒体が排出された場合に、その媒体の先端を停止させることができる。
【0027】
図3Aは、媒体規制部材105の斜視図であり、
図3Bは、
図3AにおけるA-A’線断面図である。
【0028】
図3A及び
図3Bに示すように、媒体規制部材105は、二つの荷重押圧部105a、105b、二つの係合部105c、105d、前面部105e、二つの開口部105f、105g、及び、係止部105h等を備える。媒体規制部材105は、樹脂材料又は金属材料等により、一体の部材で形成される。なお、媒体規制部材105は、複数の部材で形成されてもよい。
【0029】
各荷重押圧部105a、105bは、先端部L1側(下流側)に設けられる。各荷重押圧部105a、105bは、媒体排出方向と直交する幅方向A2において間隔を空けて並べて設けられる。各荷重押圧部105a、105bは、排出台104上に排出された媒体へ荷重を加えるとともに、排出台104上で小型媒体の媒体排出方向A1の先端位置を規制可能に設けられる。これにより、荷重押圧部105a、105bは、排出される小型媒体の先端が直線状に整列するように、小型媒体を停止させることが可能となる。
【0030】
また、二つの荷重押圧部105a、105bが用いられることにより、排出される媒体が屈曲している場合でも、媒体規制部材105は、二つの荷重押圧部105a、105bで媒体と確実に接触し、媒体を確実に押圧することができる。荷重押圧部が一つである場合、その荷重押圧部が幅方向A2の両端にわたって延伸していても、幅方向A2の中央部が山折りになった媒体が排出された時に、その山折りになった部分が荷重押圧部に接触して、媒体規制部材が跳ね上がる可能性がある。その場合、外観が損なわれるとともに、媒体と媒体規制部材が衝突する衝突音、又は、跳ね上がった媒体規制部材が着地する着地音が発生する可能性がある。また、その媒体が薄紙である場合、媒体が損傷する可能性もある。媒体排出装置100は二つの荷重押圧部105a、105bの間に隙間を有するため、幅方向A2の中央部が山折りになった媒体が排出された場合でも、その山折りになった部分が媒体規制部材105に接触することが抑制される。また、媒体の先端が幅方向A2に波打ち状態であった場合にも、上記と同様の効果が得られる。
【0031】
また、二つの荷重押圧部105a、105bの間の距離(各荷重押圧部105a、105bの内側端部の間の距離)は、媒体排出装置がサポートする最小サイズの媒体の幅(最小媒体幅)より小さいように設定される。最小媒体幅は、例えば、名刺の長手方向又は短手方向の長さである。これにより、媒体排出装置100は、小型媒体が排出された場合に、小型媒体を二つの荷重押圧部105a、105bに確実に当接させて、確実に停止させることができる。一方、二つの荷重押圧部105a、105bの間の距離が小さすぎると小型媒体の整列性能が低減するため、二つの荷重押圧部105a、105bの間の距離は所定距離(例えば50mm)以上に設定される。なお、二つの荷重押圧部105a、105bの外側端部の間の距離は、最小媒体幅より大きいように設定されてもよい。これにより、媒体排出装置100は、小型媒体を良好に整列させることができる。
【0032】
また、
図2に示したように、各荷重押圧部105a、105bは、第1トレイ104aの第1載置面104e上に設けられた各リブ104h、104iと当接するように設けられる。これにより、第1載置面104e上で各リブ104h、104iの上端は各荷重押圧部105a、105bの下端より高い位置に配置されず、媒体排出装置100は、第1トレイ104aに積載される媒体が幅方向A2に波打つことを抑制できる。その結果、媒体排出装置100は、媒体のジャムの発生を抑制でき、媒体の損傷の発生を抑制できる。
【0033】
各荷重押圧部105a、105bの幅方向A2のサイズが小さすぎると、媒体に擦過傷(こすり跡)が発生する可能性、及び、媒体のジャムが発生する可能性がある。そのため、各荷重押圧部105a、105bの幅方向A2のサイズは、媒体に擦過傷が発生しない程度の大きさ、且つ、媒体のジャムが発生しない程度の大きさに設定される。また、各荷重押圧部105a、105bの幅方向A2のサイズは、媒体規制部材105が第1載置面104eと平行な方向に揺動した場合でも、各荷重押圧部105a、105bが各リブ104h、104iと確実に当接するサイズに設定される。
【0034】
なお、荷重押圧部の数は、二つに限定されず、一つ又は三つ以上でもよい。荷重押圧部の数が一つである場合、荷重押圧部は、幅方向A2の両端にわたって、排出台104に排出された媒体の先端と接触するように、幅方向A2に沿って直線状に形成される。荷重押圧部の数が三つ以上である場合、各荷重押圧部は、幅方向A2において間隔を空けて並べて配置される。
【0035】
各係合部105c、105dは、先端部L1と反対側の基部B1側に設けられる。各係合部105c、105dは、媒体排出方向と直交する幅方向A2において間隔を空けて並べて設けられる。各係合部105c、105dは、突起状に形成され、保持部材106に係合される。
【0036】
また、二つの係合部105c、105dの間の距離は、二つの荷重押圧部105a、105bの間の距離以下、より好ましくは、二つの荷重押圧部105a、105bの間の距離の1/3以下となるように設定される。これにより、媒体排出装置100は、媒体規制部材105の荷重のバランスを適切に保つことが可能となる。二つの係合部105c、105dの間の距離と、媒体規制部材105の荷重のバランスとの関係については後述する。
【0037】
前面部105eは、
図1に示すように、媒体規制部材105が上側筐体102に収納された状態で、上側筐体102の前面102aと面一となるように設けられる。これにより、媒体排出装置100は、媒体規制部材105が収納された状態において一体感のあるデザインを有する。
【0038】
各開口部105f、105gは、中央部、即ち先端部L1と基部B1の間に設けられる。各開口部105f、105gは、各荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重を調整可能に設けられる。即ち、各開口部105f、105gが上流側に設けられているほど媒体規制部材105の重心位置は下流側に位置し、各荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重は大きくなる。一方、各開口部105f、105gが下流側に設けられているほど媒体規制部材105の重心位置は上流側に位置し、各荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重は小さくなる。また、各開口部105f、105gが小さいほど媒体規制部材105全体の重量が大きくなり、各荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重は大きくなる。一方、各開口部105f、105gが大きいほど媒体規制部材105全体の重量が小さくなり、各荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重は小さくなる。
【0039】
媒体規制部材105は、排出台104に小型媒体が排出された場合に、小型媒体の先端を停止させるために使用される。荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重は、後述する排出ローラにより排出された(排出ローラから離れた)小型媒体が媒体排出方向A1に進行する力では荷重押圧部105a、105bが浮き上がらない大きさに設定されることが望ましい。一方、媒体規制部材105は、排出台104に小型媒体より大きいサイズの媒体が排出された場合、媒体が撓まないように、媒体を停止させずに通過させる必要がある。したがって、荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重は、排出ローラにより排出中の(排出ローラと接触している)媒体が媒体排出方向A1に進行する力で荷重押圧部105a、105bが浮き上がる大きさに設定されることが望ましい。媒体規制部材105に開口部105f、105gが設けられることにより、媒体排出装置100は、媒体規制部材105の強度を保ちつつ、荷重押圧部105a、105bから排出台104にかかる荷重を適切に調整することができる。
【0040】
また、媒体規制部材105に開口部105f、105gが設けられることにより、利用者は、開口部105f、105gから媒体が排出される様子を確認することが可能となり、媒体排出装置100は、利用者の利便性を向上させることが可能となる。なお、開口部の数は、二つに限定されず、一つ又は三つ以上でもよい。また、開口部は、省略されてもよい。
【0041】
係止部105hは、基部B1側に設けられる。係止部105hは、媒体規制部材105が保持部材106に対して所定角度以上の角度をなすことを防止するように、ストッパとして機能する。
【0042】
図4Aは、保持部材106の斜視図であり、
図4Bは、保持部材106の側面図である。
【0043】
図4A及び
図4Bに示すように、保持部材106は、二つの被係合部106a、106b、二つの第1突起部106c、106d、二つの第2突起部106e、106f、及び、被係止部106g等を備える。保持部材106は、樹脂材料又は金属材料等により、一体の部材で形成される。なお、保持部材106は、複数の部材で形成されてもよい。
【0044】
各被係合部106a、106bは、先端部L2側(下流側)に設けられる。各被係合部106a、106bは、媒体排出方向と直交する幅方向A2において間隔を空けて並べて設けられる。各被係合部106a、106bは、媒体規制部材105の各係合部105c、105dと係合するための凹部又は穴部である。各被係合部106a、106bは、各係合部105c、105dが各被係合部106a、106bに対して上下方向A3(上下方向A3に対して所定角度傾いた斜め方向の範囲内)に移動可能に、各係合部105c、105dと係合する。これにより、被係合部106a、106bは、媒体規制部材105が上下方向A3に揺動可能に、係合部105c、105dと係合する。
【0045】
例えば、媒体排出方向A1において、各被係合部106a、106bの凹部又は穴部のサイズは、各係合部105c、105dの突起部のサイズと略同一である。一方、第1トレイ104aの第1載置面104eに対する上下方向A3において、各被係合部106a、106bの凹部又は穴部のサイズは、各係合部105c、105dの突起部のサイズより大きい。例えば、側方から見た時に、各係合部105c、105dの突起部は略円形状を有し、各被係合部106a、106bの凹部又は穴部は楕円形状を有する。これにより、各係合部105c、105dは、各被係合部106a、106bに沿って回転可能に設けられつつ、各被係合部106a、106b内で、上下方向A3に移動可能に設けられる。
【0046】
なお、保持部材106の各被係合部が、係合部105c、105dと同様の突起状に形成され、媒体規制部材105の各係合部が、被係合部106a、106bと同様の凹部又は穴部であってもよい。その場合、媒体規制部材105の各係合部は、保持部材106の各被係合部に沿って回転可能に設けられつつ、保持部材106の各被係合部に沿って、上下方向に移動可能に設けられる。
【0047】
また、各係合部及び各被係合部は、幅方向A2に延伸する直線上に配置されるのでなく、幅方向A2に対して上下方向A3に傾いた直線上に配置されてもよい。また、各係合部及び各被係合部は、上下方向A3に延伸する直線上に配置されてもよい。また、係合部及び被係合部の数は、二つに限定されず、それぞれ一つでもよい。その場合、係合部及び被係合部は、例えばユニバーサルジョイント等で形成され、係合部は、被係合部に対して回転可能且つ上下方向に移動可能に設けられる。
【0048】
各第1突起部106c、106d及び各第2突起部106e、106fは、基部B2側(上流側)に設けられる。各第1突起部106c、106d及び各第2突起部106e、106fは、収納部107に設けられたレールと係合し、レールに沿ってスライド移動可能に設けられる。また、各第1突起部106c、106dは、媒体規制部材105及び保持部材106が上側筐体102から引き出された状態で、上側筐体102の前面102aの内側に当接する。これにより、保持部材106は、上側筐体102内に係止される。
【0049】
被係止部106gは、先端部L2側に設けられる。被係止部106gは、媒体規制部材105の係止部105hと当接し、媒体規制部材105が保持部材106に対して所定角度以上の角度をなすことを防止するように、ストッパとして機能する。
【0050】
図5は、係合させた状態の媒体規制部材105及び保持部材106の斜視図である。
【0051】
図5に示すように、各被係合部106a、106bに各係合部105c、105dを係合させることにより、保持部材106は媒体規制部材105を保持する。
【0052】
【0053】
図6Aは、媒体が排出台104に積載されていない場合の媒体規制部材105及び保持部材106を示し、
図6Bは、小型媒体より大きいサイズの媒体M1が排出台104に積載されている場合の媒体規制部材105及び保持部材106を示す。
【0054】
図6Aに示すように、媒体が排出台104に積載されていない場合、荷重押圧部105a(及び105b)が第1トレイ104aの第1載置面104e上に設けられた各リブ104h、104iに当接した状態で、媒体規制部材105は保持部材106に保持される。これにより、媒体規制部材105は、排出台104にかかる荷重を適切な大きさに制限し、小型媒体より大きいサイズの媒体を良好に通過させることが可能となる。
【0055】
一方、
図6Bに示すように、小型媒体より大きいサイズの媒体M1が排出台104に排出された場合、排出された媒体は、荷重押圧部105a(及び105b)と第1載置面104eの間を通過する。上記したように、各係合部105c、105dは、各被係合部106a、106bに沿って回転可能に設けられている。そのため、荷重押圧部105a(及び105b)は、積載された媒体M1によって押し上げられ、媒体規制部材105は、第1トレイ104aの第1載置面104eに対して上方に揺動する。このように、保持部材106は、媒体の排出に伴って、排出台104の上面に対して上下方向A3に揺動可能に、媒体規制部材105を保持している。これにより、媒体規制部材105は、小型媒体より大きいサイズの媒体を良好に通過させることが可能となる。また、媒体規制部材105は、上側筐体102に収納される場合には、収納部107に沿って配置されてコンパクトに収納されつつ、上側筐体102から引き出された場合には、荷重押圧部105a、105bを排出台104に接触させることが可能となる。
【0056】
また、媒体規制部材105は、上側筐体102から引き出された状態で上側筐体102が開けられた場合に、保持部材106に対して上方に揺動可能に設けられている。これにより、媒体規制部材105が上側筐体102から引き出された状態で、利用者が誤って上側筐体102を開いた場合に、媒体規制部材105が上側筐体102と排出台104に挟まれて破損されることが抑制される。
【0057】
図7A及び
図7Bは、幅方向A2の一方側(荷重押圧部105b側)が浮き上がるように折れ曲がっている媒体M2が排出台104に積載されている場合の媒体規制部材105及び保持部材106を示す。
図8A及び
図8Bは、幅方向A2の他方側(荷重押圧部105a側)が浮き上がるように折れ曲がっている媒体M3が排出台104に積載されている場合の媒体規制部材105及び保持部材106を示す。
【0058】
上記したように、各係合部105c、105dは、各被係合部106a、106b内で、上下方向A3に移動可能に設けられている。そのため、
図7A及び
図7Bに示すように、幅方向A2において荷重押圧部105b側が浮き上がるように折れ曲がっている媒体M2が排出台104に排出された場合、荷重押圧部105bは、媒体M2によって荷重押圧部105aより上方に押し上げられる。なお、媒体規制部材105は平面状の剛体であるため、二つの荷重押圧部105a、105bと一方の係合部とで支持され、他方の係合部は理想的な条件を満たす場合以外の場合には、重力方向の下端で支持されないフリー状態となる。即ち、媒体規制部材105は、係合部105c及び係合部105dの内の一方の係合部のみにより支持される。
【0059】
図7Aに示す例では、係合部105cが被係合部106aの下端に支持され、図示しないが、係合部105dはフリー状態となり被係合部106bの上端と下端の間の位置に配置される。これにより、媒体規制部材105は、荷重押圧部105b側が荷重押圧部105a側より上昇するように旋回(回転、揺動)する。なお、媒体M2が各荷重押圧部105a、105bと当接する位置又はタイミング等によっては、係合部105dが被係合部106bの上端に当接し、係合部105cがフリー状態となり被係合部106aの上端と下端の間の位置に配置される可能性もある。その場合も、媒体規制部材105は、荷重押圧部105b側が荷重押圧部105a側より上昇するように旋回する。
【0060】
一方、
図8A及び
図8Bに示すように、幅方向A2において荷重押圧部105a側が浮き上がるように折れ曲がっている媒体M3が排出台104に排出された場合、荷重押圧部105aは、媒体M3によって荷重押圧部105bより上方に押し上げられる。
図8Aに示す例では、係合部105cがフリー状態となり被係合部106aの上端と下端の間の位置に配置され、図示しないが、係合部105dが被係合部106bの下端に支持される。これにより、媒体規制部材105は、荷重押圧部105a側が荷重押圧部105b側より上昇するように旋回する。なお、媒体M3が各荷重押圧部105a、105bと当接する位置又はタイミング等によっては、係合部105cが被係合部106aの上端に当接し、係合部105dがフリー状態となり被係合部106bの上端と下端の間の位置に配置される可能性もある。その場合も、媒体規制部材105は、荷重押圧部105a側が荷重押圧部105b側より上昇するように旋回する。
【0061】
このように、保持部材106は、媒体の排出に伴って、媒体規制部材105の基部B1側から先端部L1側に向かう方向A5の回転軸に沿って旋回可能に、媒体規制部材105を保持している。即ち、媒体規制部材105は、幅方向A2における一端が上方に揺動可能に設けられており、一方の荷重押圧部が第1載置面104eに近付いた時に他方の荷重押圧部が第1載置面104eから離れるように揺動する逃げ形状を有している。これにより、媒体規制部材105は、折れ曲がっている媒体又は写真等が貼付された媒体のように、幅方向A2の各位置における高さが異なる媒体が排出された場合に、その媒体の高さに応じて上下方向A3に揺動することが可能となる。
【0062】
媒体規制部材が媒体の高さに応じて揺動しない場合、幅方向A2の各位置における高さが異なる媒体が排出された時に、媒体規制部材の荷重が一方の荷重押圧部に集中する。これにより、媒体が媒体規制部材を通過する際に傾いてスキューが発生する可能性、又は、媒体が媒体規制部材を通過できずにジャムが発生する可能性がある。媒体規制部材105は、媒体の高さに応じて上下方向A3に揺動することによって、媒体規制部材105の荷重バランスを良好に保ち、媒体のスキュー又はジャムの発生を抑制することができる。
【0063】
図9は、媒体規制部材105の旋回の回転軸について説明するための模式図である。
【0064】
図7Aに示したように、荷重押圧部105b側が上昇し且つ係合部105cが被係合部106aの下端に当接する場合、係合部105cと荷重押圧部105aの幅方向A2の外側端部とを通る直線T1が、荷重押圧部105bにおける媒体規制部材105の旋回の回転軸となる。つまり、荷重押圧部105bの荷重は、直線T1軸周りに作用する自重モーメントに依存する。一方、係合部105cと荷重押圧部105bの幅方向A2の外側端部とを通る直線T3が、荷重押圧部105aにおける媒体規制部材105の旋回の回転軸となる。つまり、そのときの荷重押圧部105aの荷重は、直線T3軸周りに作用する自重モーメントに依存する。
【0065】
また、
図8Aに示したように、荷重押圧部105a側が上昇し且つ係合部105dが被係合部106bの下端に当接する場合、係合部105dと荷重押圧部105bの幅方向A2の外側端部とを通る直線T4が、荷重押圧部105aにおける媒体規制部材105の旋回の回転軸となる。つまり、荷重押圧部105aの荷重は、直線T4軸周りに作用する自重モーメントに依存する。一方、係合部105dと荷重押圧部105aの幅方向A2の外側端部とを通る直線T2が、荷重押圧部105bにおける媒体規制部材105の旋回の回転軸となる。つまり、そのときの荷重押圧部105bの荷重は、直線T2軸周りに作用する自重モーメントに依存する。
【0066】
図10A及び
図10Bは、媒体規制部材105の荷重のバランスついて説明するための模式図である。
【0067】
図10Aに示すように、係合部105cと荷重押圧部105aの外側端部とを通る直線T1が回転軸となる場合、荷重押圧部105aの反対側に配置された荷重押圧部105bには自重モーメント(回転軸T1による回転モーメント)が作用する。この自重モーメントの大きさは、媒体規制部材105の重量mに、回転軸T1と重心位置Mの間の距離D1を乗算した値(m×D1)である。一方、係合部105cと荷重押圧部105bの外側端部とを通る直線T3が回転軸となる場合、荷重押圧部105bの反対側に配置された荷重押圧部105aには自重モーメント(回転軸T3による回転モーメント)が作用する。この自重モーメントの大きさは、媒体規制部材105の重量mに、回転軸T3と重心位置Mの間の距離D2を乗算した値(m×D2)である。
【0068】
回転軸T1による回転モーメントが大きすぎると、荷重押圧部105b側が上昇した時に荷重押圧部105bにかかる荷重が大きくなりすぎ、媒体内で荷重押圧部105bと当接する位置にかかる押圧力が大きくなりすぎる。一方、回転軸T3による回転モーメントが大きすぎると、荷重押圧部105a側が上昇した時に荷重押圧部105aにかかる荷重が大きくなりすぎ、媒体内で荷重押圧部105aと当接する位置にかかる押圧力が大きくなりすぎる。したがって、回転軸T1による回転モーメントの大きさと回転軸T3による回転モーメントの大きさとは、相互に近似するように設定されることが望ましい。係合部105cは、媒体規制部材105の幅方向A2の中央部(中心位置から所定範囲内)に配置されているため、距離D1と距離D2は近似しており、回転軸T1による回転モーメントの大きさと、回転軸T3による回転モーメントの大きさは近似している。
【0069】
図10Bは、係合部105c’が幅方向A2の端部に配置された媒体規制部材105’を示す。媒体規制部材105’では、荷重押圧部105b’側が上昇し且つ係合部105c’が被係合部の下端に当接する場合、係合部105c’と荷重押圧部105a’の幅方向A2の外側端部とを通る直線T1’が、荷重押圧部105b’における媒体規制部材105’の旋回の回転軸となる。つまり、荷重押圧部105b’の荷重は、直線T1’軸周りに作用する自重モーメントに依存する。一方、係合部105c’と荷重押圧部105b’の幅方向A2の外側端部とを通る直線T3’が、荷重押圧部105a’における媒体規制部材105’の旋回の回転軸となる。つまり、そのときの荷重押圧部105a’の荷重は、直線T3’軸周りに作用する自重モーメントに依存する。
【0070】
図10A、
図10Bに示すように、係合部105c’が幅方向A2の端部に配置される場合の回転軸T1’と重心位置M’の間の距離D1’は、係合部105cが幅方向A2の中央部に配置される場合の回転軸T1と重心位置Mの間の距離D1より大きくなる。一方、係合部105c’が幅方向A2の端部に配置される場合の回転軸T3’と重心位置M’の間の距離D2’は、係合部105cが幅方向A2の中央部に配置される場合の回転軸T3と重心位置Mの間の距離D2より小さくなる。距離D1’と距離D2’の差が大きくなることにより、回転軸T1’による回転モーメントの大きさと、回転軸T3’による回転モーメントの大きさの差は大きくなる。
【0071】
媒体排出装置100では、係合部105cが媒体規制部材105の幅方向A2の中央部に配置されているため、荷重押圧部105b側が上昇する場合と荷重押圧部105a側が上昇する場合とで各荷重押圧部にかかる自重モーメントの大きさが近似する。そのため、荷重押圧部105b側が上昇する場合と荷重押圧部105a側が上昇する場合とで各荷重押圧部にかかる荷重が近似する。この場合、荷重押圧部105b側が上昇する場合に各荷重押圧部105a、105bにかかる荷重の差と、荷重押圧部105a側が上昇する場合に各荷重押圧部105a、105bにかかる荷重の差の合計が小さくなる。したがって、媒体規制部材105は、左右のバランスを良好に保つことが可能となる。
【0072】
同様に、係合部105dと荷重押圧部105aの外側端部とを通る直線T2が回転軸となる場合、荷重押圧部105aの反対側に配置された荷重押圧部105bには自重モーメント(回転軸T2による回転モーメント)が作用する。一方、係合部105dと荷重押圧部105bの外側端部とを通る直線T4が回転軸となる場合、荷重押圧部105bの反対側に配置された荷重押圧部105aには自重モーメント(回転軸T4による回転モーメント)が作用する。媒体排出装置100では、係合部105dが媒体規制部材105の幅方向A2の中央部に配置されているため、荷重押圧部105b側が上昇する場合と荷重押圧部105a側が上昇する場合とで反対側の荷重押圧部にかかる自重モーメントの大きさが近似する。そのため、荷重押圧部105b側が上昇する場合と荷重押圧部105a側が上昇する場合とで反対側の荷重押圧部にかかる荷重が近似し、媒体規制部材105は、左右のバランスを良好に保つことが可能となる。
【0073】
なお、重心位置Mが先端部L1に近い程、距離D1と距離D2の比は1に近くなり、重心位置Mが基部B1に近い程、距離D1と距離D2の比は1から離れる。そのため、媒体規制部材105の左右のバランスを良好に保つためには、重心位置Mは先端部L1の近傍に配置されることが望ましい。但し、重心位置Mが先端部L1に近い程、媒体規制部材105の先端の荷重が増大し、媒体規制部材105の強度及び剛性が低減する(媒体規制部材105が損傷しやすくなり且つ変形しやすくなる)。そのため、重心位置Mは、媒体排出方向A1において媒体規制部材105の中心位置に配置されることが望ましい。
【0074】
図11は、重心位置Mが媒体排出方向A1の中心位置に配置された媒体規制部材105において各荷重押圧部にかかる荷重の比を示すグラフ1100である。
【0075】
グラフ1100の横軸は、幅方向A2における各荷重押圧部105a、105bの間の距離に対する、各係合部105c、105dの間の距離の比を示す。グラフ1100の縦軸は、荷重押圧部105aが上昇した場合に荷重押圧部105aにかかる荷重に対する、荷重押圧部105bが上昇した場合に荷重押圧部105bにかかる荷重の比を示す。グラフ1100に示すように、距離の比が小さい程、荷重の比が小さくなり、距離の比が大きい程、荷重の比が大きくなる。グラフ1100に示すように、各係合部105c、105dの間の距離を各荷重押圧部105a、105bの間の距離の1/3以下にすることにより、荷重の比を1/2以下にすることが可能となる。これにより、媒体規制部材105は、左右のバランスを良好に保つことが可能となる。
【0076】
図12は、媒体規制部材105及び保持部材106が上側筐体102に収納された状態の上側筐体102の内部を側方から見た模式図である。
【0077】
図12に示すように、収納部107は、直線状に形成されたレールによる案内部材107aを有する。媒体規制部材105及び保持部材106は、収納部107に収納される場合、案内部材107aに沿って直線状に配置される。一方、媒体規制部材105及び保持部材106は、収納部107から引き出される場合、第1突起部106c、106d及び第2突起部106e、106fが107aに沿って移動することにより、スライド移動する。これにより、媒体排出装置100は、収納部107の高さ方向のスペースを十分に小さくすることが可能となり、装置サイズを低減させることが可能となる。
【0078】
また、上記したように、媒体規制部材105が上側筐体102に収納された状態で、媒体規制部材105の前面部105eと、上側筐体102の前面102aとは面一となるように配置されている。これにより、媒体排出装置100は、媒体規制部材105が収納された状態において一体感のあるデザインを有する。
【0079】
図13は、媒体排出装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0080】
媒体排出装置100内部の搬送経路は、給送ローラ111、ブレーキローラ112、第1搬送ローラ113、第2搬送ローラ114、第1撮像装置115a、第2撮像装置115b、第1排出ローラ116及び第2排出ローラ117等を有している。なお、各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。下側筐体101の上面は、媒体の搬送路の下側ガイド108aを形成し、上側筐体102の下面は、媒体の搬送路の上側ガイド108bを形成する。
【0081】
第1撮像装置115aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置115aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置115aは、不図示の処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の表面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0082】
同様に、第2撮像装置115bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置115bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置115bは、不図示の処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の裏面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0083】
なお、媒体排出装置100は、第1撮像装置115a及び第2撮像装置115bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0084】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ111が
図13の矢印A11の方向に回転することによって、下側ガイド108aと上側ガイド108bの間を媒体排出方向A1に向かって搬送される。ブレーキローラ112は、媒体搬送時、矢印A12の方向に回転する。給送ローラ111及びブレーキローラ112の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ111と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限される(重送の防止)。
【0085】
媒体は、下側ガイド108aと上側ガイド108bによりガイドされながら、第1搬送ローラ113と第2搬送ローラ114の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ113及び第2搬送ローラ114がそれぞれ矢印A13及び矢印A14の方向に回転することによって、第1撮像装置115aと第2撮像装置115bの間に送り込まれ、第1撮像装置115a及び第2撮像装置115bにより読み取られる。第1排出ローラ116及び第2排出ローラ117は、それぞれ矢印A15及び矢印A16の方向に回転することによって媒体を排出台104上に排出する。排出台104は、第1排出ローラ116及び第2排出ローラ117によって排出された媒体を積載する。
【0086】
以上詳述したように、媒体排出装置100には、排出台104上に排出される媒体の先端位置を規制する媒体規制部材105を、上下方向A3に揺動可能、且つ、延伸方向の回転軸に沿って旋回可能に保持する。これにより、媒体規制部材105は、特定のサイズ以上の媒体が排出された場合にその媒体を通過させつつ、その媒体内の幅方向A2の各位置における高さが異なる場合に、その高さに応じて上下方向A3に揺動する。したがって、媒体排出装置100は、特定の媒体、特に特定のサイズより小さい媒体の先端を良好に揃えつつ、排出された媒体をトレイ上に良好に積載することが可能となった。
【0087】
特に、媒体排出装置100は、装置内の各部品の公差又は装置組み立て時に発生する公差等の影響を受けることなく、媒体規制部材105を、排出される媒体にバランスよく接触させることが可能となり、媒体のスキュー又はジャムの発生を抑制することができる。また、媒体排出装置100は、薄紙等が搬送される場合にも、媒体規制部材105を、排出される媒体にバランスよく接触させることが可能となり、媒体のジャムの発生を抑制することができる。
【0088】
特に、媒体排出装置100は、媒体規制部材105により小型媒体を停止させるため、先に排出されていた小型媒体が、後から排出された小型媒体によって押し出されることが抑制される。さらに、先に排出されていた小型媒体が押し出された結果、押し出された小型媒体の下に後から排出された小型媒体が潜り込み、媒体の順序が入れ替わることが抑制される。また、媒体規制部材105により、排出される小型媒体が排出台104から飛び出してしまうことが抑制される。これらにより、利用者は、排出された複数の媒体を揃えやすくなり、媒体排出装置100は、利用者の利便性を向上させるとともに、媒体読取処理に要するトータル時間を低減させることが可能となった。
【0089】
また、媒体規制部材105は、非使用時に上側筐体102に収納可能であるため、媒体排出装置100は、非使用時に媒体規制部材105が紛失される可能性を低減させることが可能となる。また、利用者は、上側筐体102を開閉する際に媒体規制部材105を収納することができるため、媒体排出装置100において、媒体規制部材105によって上側筐体102の開閉が妨げられることが抑制される。
【符号の説明】
【0090】
100 媒体排出装置、102 上側筐体、104 排出台、104h、104i リブ、105 媒体規制部材、105a、105b 荷重押圧部、105c、105d 係合部、106 保持部材、106a、106b 被係合部、116 第1排出ローラ、117 第2排出ローラ